説明

エポキシドに基づく接着フィルムまたは接着テープ

本発明は、0.1〜5ミリの範囲の厚みを有し、(a)少なくとも1種の反応性エポキシプレポリマー、(b)エポキシに対する少なくとも1種の潜在性硬化剤、および(c1)熱可塑性ポリウレタン、(c2)熱可塑性イソシアネート、および(c3)熱可塑性ポリマーブロックを含むブロックコポリマーから選択される1種以上のエラストマー(c)を含有する帯状またはフィルム状の熱硬化性接着剤に関する。また、この接着剤は、発泡用の発泡剤などのさらなる成分も含み得る。この接着剤は柔軟であり、22℃で未硬化であって、かつ破断することなく少なくとも100%伸長することができる。前記接着剤はフィルムに適用し得る。前記接着剤は、例えば、平面状、管状または円筒状部材、好ましくは金属製、木製、セラミック製またはフェライト製部材の接着に使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性エポキシドおよび対応する硬化剤に基づく、屈曲可能な(柔軟性および伸張性)熱硬化性接着フィルムに関する。このフィルムは、接合すべき対象物に容易に手で巻付けることができ、例えば、パイプを他方のパイプに接着接合するのに適している。
【背景技術】
【0002】
帯状の接着剤を使用するパイプの接着接合は、例えば独国出願DE2538061A1により既知である。この文献によれば、接着フィルムを一方のパイプの末端部分に巻付け、その後この末端部分を他方のパイプの張り出した末端部分に挿入する。加熱により初めに接着剤が液化し、2つのパイプの壁面の隙間に充満し、その後硬化する。この発明においては、室温で固体であって、不織ダクロン繊維の束を含むエポキシ接着剤が好ましく用いられる。
【0003】
同様に、US5,274,006は、例えば2ミリの厚みを有する帯状に製造し得るエポキシ系接着剤を記載する。この接着剤は液体エポキシ樹脂プレポリマー、エポキシ樹脂の潜在性硬化剤、発泡用の発泡剤、およびゴム様エラストマーおよび熱可塑性樹脂から選択されるさらなるポリマーを含有する。
【0004】
WO00/27920は、それぞれ、複数の熱可塑性樹脂とエポキシ樹脂の混合物である伸張可能な封止用組成物および制振用組成物を開示する。以下の熱可塑性樹脂が例示されている:スチレン−ブタジエンゴムおよびニトリル−ブタジエンゴムなどの固形ゴム、または、例えばSBSブロックコポリマーなどのポリスチレンポリマー。エポキシ樹脂は、好ましくは液体である。
【0005】
独国特許出願DE10 2006 048739は、少なくとも1種のエポキシ樹脂、少なくとも1種の室温で固体であるポリエステル、少なくとも1種の発泡剤、少なくとも1種の硬化剤、および少なくとも1種のフィラーを含有する発泡性熱硬化性成形品の製造用の結合剤を記載する。さらに「柔軟剤」を含有し得る。柔軟剤として、例えば固体ゴムが挙げられている。適当な固体ゴムは、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、EPDM、合成または天然イソプレンゴム、ブチルゴム、またはポリウレタンゴムである。イソプレン−アクリロニトリルコポリマーまたはブタジエン−アクリロニトリルコポリマーに基づく部分的に架橋した固体ゴムが特に好適である。
【0006】
WO2007/004184は、以下の成分:実質的に液体エポキシ樹脂または半固体エポキシ樹脂を含まない固体エポキシ樹脂、衝撃改良剤、硬化剤、および加熱活性化発泡剤を含有する熱発泡性材料を記載する。この文献において衝撃改良剤は、熱可塑性物質であり得る。例えば、エポキシ−ポリウレタンハイブリッドおよび1000〜10,000g/モルの範囲の分子量を有するイソシアネートプレポリマー(例えばイソシアネート末端ポリエーテルポリオール)が挙げられている。衝撃改良剤として、多数のブロックコポリマーも列挙されている。これらはコア−シェル構造を有し得る。
【0007】
WO2007/025007は、以下の成分:少なくとも1種のエポキシ樹脂、コア−シェル構造を有するゴム粒子、別の衝撃改良剤/靱性改良剤、および熱活性化潜在性硬化剤を含有する組成物を記載する。この組成物は、さらに発泡剤を含有していてよく、これにより構造フォームとして使用し得る。衝撃改良剤/靱性改良剤としては、例えば、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラヒドロフランジオールなどのようなヒドロキシ末端ポリオキシアルキレンに由来するポリウレタンが挙げられている。これらは熱可塑性挙動を示すべきである。これらのポリウレタンに代わり、または加えて、ブロックコポリマー〔例えば20℃以下(好ましくは0℃以下、または−30℃以下、または−50℃以下)のガラス転移温度を有し、例えばポリブタジエンブロックまたはポリイソプレンブロックのような、少なくとも1つのポリマーブロックである〕が存在していてよい。ブロックコポリマーの少なくとも1つの別のブロックは、20℃より高い(好ましくは50℃より高いまたは70℃より高い)ガラス転移温度を有し、例えばポリスチレンブロックまたはポリメチルメタクリレートブロックである。具体例として、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレートブロックコポリマー、メチルメタクリレート−ブタジエン−メチルメタクリレートブロックコポリマー、およびブタジエン−メチルメタクリレートブロックコポリマーが挙げられている。
【0008】
現在までに未公開の独国特許出願DE10 2008 053518は、
(a)少なくとも1種のエポキシプレポリマー、
(b)プレポリマーに対する少なくとも1種の熱活性化硬化剤、
(c)少なくとも1種の発泡剤、
(d)少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンまたはイソシアネート、
(e)少なくとも1種のブロックコポリマー
を含有する熱膨張性および硬化性化合物を記載する。この化合物は、さらに構成成分として、
(f)ゴム粒子、好ましくはコア−シェル構造を有するゴム粒子、および/または
(g)有機ポリマーでできたシェルを含む無機粒子
を含有し得る。
【0009】
現在までに未公開の独国特許出願DE10 2008 053520は、
(a)少なくとも1種のエポキシプレポリマー、
(b)プレポリマーに対する少なくとも1種の熱活性化硬化剤、
(c)少なくとも1種の発泡剤、
(d)ポリエステル鎖を含むポリウレタンから選択される少なくとも1種の熱可塑性非反応性ポリウレタン
を含有する熱膨張性および硬化性化合物を記載する。
【0010】
上述した2つの独国特許出願はいずれも、それらに記載された化合物を屈曲可能なまたは巻付け可能なフィルム状で使用可能にすることについて何らの示唆も与えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願第2538061号明細書
【特許文献2】米国特許第5,274,006号明細書
【特許文献3】国際特許出願第00/27920号パンフレット
【特許文献4】独国特許出願第10 2006 048739号明細書
【特許文献5】国際特許出願第2007/004184号パンフレット
【特許文献6】国際特許出願第2007/025007号パンフレット
【特許文献7】独国特許出願第10 2008 053518号明細書
【特許文献8】独国特許出願第10 2008 053520号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、意図する用途に応じて、熱膨張性(「発泡性」)のまたは非熱膨張性の屈曲可能なまたは巻付け可能なフィルム状で使用可能な熱硬化性接着剤を製造するという課題に取り組む。この接着剤は、容易な取り扱いを確保するために未硬化の状態で少なくとも100%伸張可能であることを狙いとする。硬化した状態においては、衝撃荷重下で破壊しないよう、脆弱でなく、十分な衝撃靱性/柔軟性を有していることを狙いとする。さらに、この接着剤が硬化後良好な接着性〔例えば引張剪断(またはラップ剪断)の高い値で示されるような接着性〕を示すべきであるという事実は自明である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの主題は、0.1〜5ミリの範囲の厚みを有し、
(a)少なくとも1種の反応性エポキシプレポリマー、より好ましくは22℃で少なくとも一部が固体であるエポキシプレポリマー、
(b)エポキシに対する少なくとも1種の潜在性硬化剤、および
(c)1種以上のエラストマー
を含有し、該エラストマーが
(c1)熱可塑性ポリウレタン
(c2)熱可塑性イソシアネート
(c3)熱可塑性ポリマーブロックを含むブロックコポリマー
から選択される帯状またはフィルム状の熱硬化性接着剤である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
エポキシプレポリマー(以下「エポキシ樹脂」ともいう)は、原則として、飽和、不飽和、環状または非環状、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式ポリエポキシド化合物であってよい。
【0015】
本発明では、適するエポキシ樹脂系は、例えば、好ましくは、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、ビスフェノールS型のエポキシ樹脂、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンと様々なフェノールとの反応によって得られる様々なジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシド生成物、2,2’,6,6’−テトラメチルビフェノールのエポキシド生成物、芳香族エポキシ樹脂、例えばナフタレン基本構造を有するエポキシ樹脂およびフルオレン基本構造を有するエポキシ樹脂等、脂肪族エポキシ樹脂、例えばネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルおよび1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、脂環式エポキシ樹脂、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、およびヘテロ環を有するエポキシ樹脂、例えばトリグリシジルイソシアヌレート等から選択される。
【0016】
エポキシ樹脂として、具体的には、例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応生成物、フェノールおよびホルムアルデヒド(ノボラック樹脂)とエピクロロヒドリン、グリシジルエステルの反応生成物、エピクロロヒドリンとp−アミノフェノールの反応生成物が挙げられる。
【0017】
エピクロロヒドリン(またはエピブロモヒドリン)との反応により適当なエポキシ樹脂を生じるさらなるポリフェノールは、レゾルシノール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、ヒドロキノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、および1,5−ヒドロキシナフタレンである。
【0018】
さらなる好適なエポキシプレポリマーは、多価アルコールまたはジアミンのポリグリシジルエーテルである。この種のポリグリシジルエーテルは、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、またはトリメチロールプロパン等に由来する。
【0019】
市販されているさらなる好ましいエポキシ樹脂として、特に、オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、メタクリル酸グリシジル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル[例えば、市販名称「Epon 828」、「Epon 825」、「Epon 1004」および「Epon 1010」(Hexion Specialty Chemicals Inc.製)、「DER−331」、「DER−332」、「DER−334」、「DER−732」および「DER−736」(Dow Chemical Co.製)のもとで入手可能]、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ポリプロピレングリコールで修飾した脂肪族エポキシド、ジペンテンジオキシド、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、SartomerのKrasol製品)、エポキシド官能性を含むシリコーン樹脂、難燃性エポキシ樹脂(例えば、「DER−580」、Dow Chemical Co.から入手可能なビスフェノール型の臭素化エポキシ樹脂)、フェノール/ホルムアルデヒドノボラックの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、Dow Chemical Co.の「DEN−431」および「DEN−438」)、ならびに、レゾルシノールジグリシジルエーテル(例えば、Koppers Company Inc.の「Kopoxite」)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、1,2−エポキシヘキサデカン、アルキルグリシジルエーテル、例えば、C−C10アルキルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 7」)、C12−C14アルキルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 8」)、ブチルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 61」)、クレジルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 62」)、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 65」)、多官能グリシジルエーテル、例えば、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 67」)、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 68」)、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 107」)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 44」)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 48」)、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 84」)、ポリグリコールジエポキシド(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「HELOXY Modifier 32」)、ビスフェノールFエポキシド(例えば、Huntsman Int.LLCの「EPN−1138」または「GY−281」)、9,9−ビス−4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニルフルオレノン(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.の「Epon 1079」)が挙げられる。
【0020】
さらなる好ましい市販化合物は、例えば、以下のものから選択する:AralditeTM 6010、AralditeTM GY−281、AralditeTM ECN−1273、AralditeTM ECN−1280、AralditeTM MY−720、RD−2(Huntsman Int.LLC製);DENTM 432、DENTM 438、DENTM 485(Dow Chemical Co.製)、EponTM 812、826、830、834、836、871、872、1001、1031など(Hexion Specialty Chemicals Inc.製)、同様にHPTTM 1071、HPTTM 1079(Hexion Specialty Chemicals Inc.製)、ノボラック樹脂としてさらに、例えば、Epi−RezTM 5132(Hexion Specialty Chemicals Inc.製)、ESCN−001(Sumitomo Chemical製)、Quatrex 5010(Dow Chemical Co.製)、RE 305S(Nippon Kayaku製)、EpiclonTM N673(DaiNipon Ink Chemistry製)、またはEpicoteTM 152(Hexion Specialty Chemicals Inc.製)。
【0021】
少なくとも一部において、以下のポリエポキシドを使用し得る:ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、例えばグリシドールまたはエピクロロヒドリンと脂肪族ポリカルボン酸または芳香族ポリカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸またはダイマー脂肪酸)との反応生成物。
【0022】
好適なポリエポキシドのエポキシ当量は、150〜50,000、より好ましくは170〜5000の間で変化し得る。例えば、475〜550g/当量のエポキシ当量、1820〜2110mmol/gの範囲のエポキシ基含量を有するエピクロロヒドリン/ビスフェノールAに基づくエポキシ樹脂が好適である。RPM 108−Cに従って測定した軟化点は75〜85℃の範囲である。
【0023】
成分(a)として、好ましくは、反応性エポキシ基を有し、22℃で固体である少なくとも1種のエポキシ樹脂が存在する。これは柔軟性の調整に有益であり、さらに、22℃で液体またはペースト状の反応性エポキシ樹脂を提供するのに有益である。
【0024】
エポキシ樹脂接着剤系用の熱活性化硬化剤または潜在的硬化剤を、硬化剤として使用する。これらは、例えば以下の化合物から選択し得る:グアニジン、置換グアニジン、置換尿素、メラミン樹脂、グアナミン誘導体、環状第三アミン、芳香族アミンおよび/またはそれらの混合物。硬化剤は、化学量論的に硬化反応に関係しているかもしれないが、それらは、触媒的に活性であってもよい。置換グアニジンとしては、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、メチルイソビグアニジン、ジメチルイソビグアニジン、テトラメチルイソビグアニジン、ヘキサメチルイソビグアニジン、ヘプタメチルイソビグアニジン、特にシアノグアニジン(ジシアンジアミド)が挙げられる。適当なグアナミン誘導体の典型例として、アルキル化ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂またはメトキシメチルエトキシメチルベンゾグアナミンを挙げ得る。ジシアンジアミドが特に好適である。
【0025】
上記の硬化剤に加えてまたは代えて、触媒活性置換尿素を用いることができる。それらは、具体的には、p−クロロフェニル−N,N−ジメチルウレア(モニュロン)、3−フェニル−1,1−ジメチルウレア(フェヌロン)または3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチルウレア(ジウロン)である。原則として、触媒活性第三アクリルアミンまたはアルキルアミン(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノ)フェノール、ピペリジンまたはピペリジン誘導体)をも用いることができる。また、種々のイミダゾール誘導体(好ましくは固体イミダゾール誘導体)を、触媒活性促進剤として使用することができる。その例として、2−エチル−2−メチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール、ベンズイミダゾールおよびN−C〜C12−アルキルイミダゾールまたはN−アリールイミダゾールが挙げられる。また、エポキシ樹脂とアミノ化合物の付加物は、上述した硬化剤への適当な促進剤添加物である。適当なアミノ化合物は、第三脂肪族、芳香族、環状アミンである。典型的な好適なエポキシ化合物は、例えばビスフェノールAまたはFあるいはレゾルシノールのグリシジルエーテルに基づくポリエポキシドである。そのような付加物の具体例は、第三アミン(例えば、2−ジメチルアミノエタノール、N−置換ピペラジン、N−置換ホモピペラジン、ビスフェノールAまたはFあるいはレゾルシノールのジグリシジルエーテルまたはポリグリシジルエーテルにおけるN−置換アミノフェノール)である。
【0026】
エラストマー成分(c)は、反応性または非反応性であり得る熱可塑性ポリウレタン(c1)であってよい。好ましい態様において、さらに架橋可能でないという意味において熱可塑性ポリウレタンは非反応性である。本発明におけるポリウレタンは、具体的にはポリエステル鎖を含むポリウレタンである。
【0027】
用語「熱可塑性ポリウレタン」(「TPU」と略す場合がある)は、当業者に既知である。TPUは、下記の3つの初期成分の重合反応より形成される少なくとも実質上直鎖のポリマーである。
1.ジイソシアネート、
2.短鎖ジオール〔一般式OH−R−OH(式中、Rは炭素数1〜4の炭化水素基である)の鎖延長剤と称する場合がある〕、
3.長鎖ジオールOH−Z−OH(基Zは 得られるポリウレタンのいわゆる「ソフトセグメント」をもたらすポリマー鎖を表す)。基Zは、例えばポリエーテル鎖またはポリエステル鎖であり得る。ポリエーテル鎖は、例えばエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドの開環重合により形成することができ、あるいは、例えばテトラヒドロフランなどの飽和の酸素含有ヘテロ環の対応する反応により形成することができる。ポリエステル鎖は、2価アルコールを二塩基カルボン酸と反応させることにより作製できる。好適なポリエステル鎖はポリカプロラクトンポリエステルからなる。
【0028】
上記三成分の反応は、ソフトセグメントとハードセグメントを交互に含むポリウレタンを産生する。ソフトセグメントは基Zにより形成され、ハードセグメントはジイソシアネートと短鎖ジオールに起因する。
【0029】
ハードセグメントの極性はそれらに強い引力をもたらし、それによりポリマーの固体相に高い凝集度および秩序度をもたらす。これは、ソフトセグメントの柔らかく柔軟なマトリックスの一部となる結晶領域または疑似結晶領域を作り出す。このハードセグメントの結晶領域および疑似結晶領域は物理結合として機能し、TPUに高い弾性率を付与する。ソフトセグメントの柔軟な鎖は、ポリマーの伸び挙動に寄与する。
【0030】
熱可塑性ポリウレタン(c1)は、好ましくは室温(22℃)で固体であり、−20℃より低い、より好ましくは−25℃より低いガラス転移温度を有する。さらに、熱可塑性ポリウレタン(c1)は、好ましくは室温で固体であり、(コフラーで)100℃を越える、好ましくは115℃を越える融解範囲または軟化範囲を有する。好ましくは室温で固体である好適なポリウレタン(c1)は、さらに、純物質として少なくとも300%の、好ましくは少なくとも400%の破断伸度を有するという事実が着目される。これらの特徴を有する特に好適な熱可塑性ポリウレタン(c1)は、ポリカプロラクトン−ポリエステル鎖またはポリエーテル鎖を含むものである。
【0031】
適当なポリウレタン(c1)のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量(Mw)は、好ましくは50,000g/mol〜120,000g/molの範囲、特に55,000g/mol〜90,000g/molの範囲である。
【0032】
上述した基準に適合する適当な熱可塑性ポリウレタンは市販されており、それらの仕様書に基づき、例えばスペインのMerquinsa companyまたはドイツのDanquinsa GmbHから入手し得る。
【0033】
反応性(架橋性)熱可塑性ポリウレタンまたは非反応性(非架橋性)熱可塑性ポリウレタン(c1)の代わりに、またはそれとともに、接着剤は熱可塑性イソシアネートを含有し得る。これらはさらに架橋することができ、例えばアルコールと反応して、成分(c1)の基準に適合し得る熱可塑性ポリウレタンを産生する。これらの熱可塑性イソシアネートは、例えば、イソシアネート末端ポリエーテルポリオール、特に1000〜10,000g/molの範囲の分子量を有するイソシアネート末端ポリエーテルポリオールであってよい。
【0034】
反応性(架橋性)熱可塑性ポリウレタンまたは非反応性(非架橋性)熱可塑性ポリウレタン(c1)および/または熱可塑性イソシアネート(c2)の代わりに、またはそれとともに、接着剤は成分(c3)として熱可塑性ポリマーブロックを有するブロックコポリマーを含有し得る。このブロックコポリマーは、好ましくは、15℃より低い、特に0℃より低いガラス転移温度を有する第1ポリマーブロックおよび25℃を越える、特に50℃を越えるガラス転移温度を有する第2ポリマーブロックを含有するブロックコポリマーから選択される。第1ポリマーブロックがポリブタジエンブロックまたはポリイソプレンブロックから選択され、第2ポリマーブロックがポリスチレンまたはポリメチルメタクリレートブロックから選択されるブロックコポリマーから選択されるブロックコポリマーも好適である。
【0035】
ブロックコポリマー(c3)は、例えば下記のブロック構造を有するコポリマーから選択される:スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリレート、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−グリシジル(メタ)アクリル酸エステル、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸エステル−ブチルアクリレート−(メタ)アクリル酸エステル、好ましくは、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート。
【0036】
これらのブロックポリマーの組成は、各ブロックのモノマー単位を示すことにより上記で定義される。これは、各ブロックコポリマーが列挙されたモノマーからなるポリマーブロックを含んでいることを意味すると理解される。個々のポリマーブロックにおいて、列挙されたモノマーの最大20モル%までのモノマーが他のコモノマーにより置き換えられていてもよい。このことは、特にポリメチルメタクリレートのブロックに対していえる。
【0037】
上記のブロックコポリマーは、WO2007/025007の発明において用いられるブロックコポリマーに相当する。より詳細な情報、および本発明にも好適なさらなるブロックコポリマーは、この文献の第25頁21行〜第26頁9行に集約されている。また、そのようなブロックコポリマーの製造について記載する関連文献についてもこの文献中に記載されている。
【0038】
上記成分に加えて本発明の接着剤は、さらなる成分として、
(d)ゴム粒子、好ましくはコア−シェル構造を有するゴム粒子
を含有し得る。
【0039】
本発明においては、コア−シェル構造を有するゴム粒子が、0℃より低いガラス転移温度を有するポリマー材料でできたコアと、25℃を越えるガラス転移温度を有するポリマー材料でできたシェルを含むことが好ましい。コア−シェル構造を有する特に適当なゴム粒子は、ジエンホモポリマー、ジエンコポリマー、またはポリシロキサンエラストマーでできたコアと、アルキル(メタ)アクリレートホモポリマーまたはコポリマーでできたシェルを含み得る。
【0040】
これらのコア−シェル粒子のコアは、例えば、ブタジエンまたはイソプレンのホモポリマー、ブタジエンまたはイソプレンと1種以上のエチレン性不飽和モノマー〔例えばビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタアクリレート)〕あるいは同様のモノマーとのコポリマーから選択され得るジエンホモポリマーまたはコポリマーを含有し得る。シェルのポリマーまたはコポリマーは、モノマーとして、例えば以下のものを含有し得る:(メタ)アクリレート(具体的にはメチルメタクリレート)、ビニル芳香族モノマー(例えばスチレン)、ビニルシアン化物(例えばアクリロニトリル)、不飽和酸または無水物(例えばアクリル酸)、(メタ)アクリルアミド、および適当に高いガラス転移温度を有するポリマーを生じる同様のモノマー。
【0041】
シェルのポリマーまたはコポリマーは、金属カルボキシレート構造によって(例えば二価金属カチオンと塩を形成することによって)架橋し得る酸基を有していてよい。さらに、シェルのポリマーまたはコポリマーは、1分子につき2個以上の二重結合を含むモノマーにより共有結合的に架橋することもできる。
【0042】
他のゴム用ポリマー、例えばポリ(ブチルアクリレート)、またはポリシロキサンエラストマー、例えばポリジメチルシロキサン、特に架橋ポリジメチルシロキサンをコアとして使用し得る。
【0043】
これらのコア−シェル粒子は、一般的には、コア−シェル粒子の50〜95重量%がコアからなり、コア−シェル粒子の5〜50重量%がシェルからなるように構成される。
【0044】
好ましくは、これらのゴム粒子は比較的小さい。例えば、その平均粒子径(例えば、光散乱法による測定)は、約0.03〜約2μmの範囲、特に約0.05〜約1μmの範囲であってよい。しかしながら、より小さいコア−シェル粒子、例えば平均粒子径が約500nm未満、特に約200nm未満のものも使用することができる。例えば、平均粒子径は、約25〜約200nmの範囲であってもよい。
【0045】
そのようなコア−シェル粒子の製品は、例えばWO2007/025007の第6頁第16〜21行に示されるように先行技術において既知である。この種のコア−シェル粒子の購買先は、この文献の第6頁の最終段落から第7頁の第1段落に記載されている。この購買先についてここに参照する。さらに、上記文献の第7頁第2段落から第8頁の第1段落に記載されたこのような粒子の製造方法もここに参照する。適当なコア−シェル粒子に関するより詳細な情報は、同様に上記文献WO2007/025007(第8頁15行〜第13頁15行に豊富な情報が記載されている)を参照する。
【0046】
有機ポリマーのシェルを含む無機粒子は、コア−シェル構造を有する上記ゴム粒子と同様の機能を有し得る。したがって、本発明の別の好ましい態様は、本発明の化合物がさらなる成分として、
(e)有機ポリマーのシェルを有する無機粒子
を含有することを特徴とする。
【0047】
この態様において、本発明の接着剤は、有機ポリマーのシェルを有する無機粒子を含有し、有機ポリマーは、好ましくはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルのホモポリマーまたはコポリマーから選択され、重合した少なくとも30重量%がアクリル酸および/またはメタクリル酸エステルからなる。
【0048】
アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルは、好ましくはメチルエステルおよび/またはエチルエステルであり、特に好ましくは、エステルの少なくとも一部がメチルエステルとして存在する。さらに、このポリマーは、非エステル化アクリル酸および/またはメタクリル酸を含有していてよく、無機粒子の表面上への有機ポリマーの結合を改善することができる。したがって、非エステル化アクリル酸および/またはメタクリル酸のモノマー単位が、無機粒子の表面に結合するポリマー鎖の末端または末端近くに位置する場合が特に好ましい。
【0049】
本発明において、有機ポリマーの少なくとも80重量%がアクリル酸および/またはメタクリル酸のエステルから構成されていることが好ましい。特に、90重量%の、95重量%のアクリル酸および/またはメタクリル酸のエステルを含むことができ、あるいは完全にアクリル酸および/またはメタクリル酸のエステルから構成されていてもよい。有機ポリマーがアクリル酸および/またはメタクリル酸のエステル、非エステル化アクリル酸および/またはメタクリル酸以外のモノマーを含む場合、モノマーは、好ましくはエポキシ基、ヒドロキシ基および/またはカルボキシル基を有するコモノマーから選択される。
【0050】
シェルの有機ポリマーは、非架橋あるいは極弱い架橋(一方の鎖のモノマー単位の5%未満が他方の鎖のモノマー単位と架橋する)であることが好ましい。本発明において、ポリマーが、シェルのさらに外側よりも無機粒子の表面付近においてより多く架橋することは有利であり得る。特に好ましくは、シェルは、ポリマー鎖の少なくとも80%、特に少なくとも90%、特に好ましくは95%が無機粒子の表面に一方の末端で結合するように構成されている。
【0051】
無機粒子が、有機ポリマーのシェルの適用前に1〜1000nmの範囲の、特に5〜30nmの範囲の平均粒子径を有することが好ましい。この粒子径を光散乱法により、および電子顕微鏡により測定し得ることは既知である。
【0052】
有機ポリマーのシェルは、無機粒子自身より低い密度を有する。有機ポリマーのシェルは、無機コアと有機ポリマーのシェルの重量比が2:1〜1:5の範囲、好ましくは3:2〜1:3の範囲になるような厚みを有することが好ましい。この厚みは、無機粒子上の有機ポリマーのシェルの成長において、反応条件を選択することにより調節することができる。
【0053】
一般的に、無機粒子は、金属、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩およびリン酸塩から選択することができる。酸化物、水酸化物、および炭酸塩からなる混合形態、例えば、塩基性炭酸塩または塩基性酸化物も存在し得る。金属製の無機粒子が、鉄、コバルト、ニッケルまたは少なくとも50重量%が前記金属の1つからなる合金から選択される場合が特に好適である。酸化物、水酸化物またはそれらの混合物は、好ましくは、ケイ素、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、チタン、鉄、イットリウム、ジルコニウムおよび/またはアルミニウムの酸化物、水酸化物またはそれらの混合物から選択される。これらの混合形態(例えば、アルミノケイ酸塩またはケイ酸塩ガラス)も使用可能である。酸化亜鉛、酸化アルミニウムまたは水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、および二酸化ケイ素あるいは「ケイ酸」または「シリカ」と称されるケイ素の酸化物が特に好ましい。さらに、無機粒子は炭酸塩(例えば炭酸カルシウム)、硫酸塩(例えば硫酸バリウム)から構成されていてもよい。当然、異なる組成の無機コアを有する粒子が一緒に存在していてもよい。
【0054】
有機ポリマーのシェルを含んでなる無機粒子を製造するために、例えば、WO2004/111136A1に記載されるようなアルキレンエーテルカルボン酸により酸化亜鉛を被覆する例を用いて製造を実施することができる。この方法によると、未処理の無機粒子を非極性または低極性溶媒に懸濁し、その後シェルのモノマーまたはプレポリマー成分を添加し、溶剤を除去し、例えばラジカル的にまたは光化学的に重合を開始する。また、シェル材料のモノマーまたはプレポリマーを粒子の有機コーティング成分として使用するEP1469020A1に記載される製造方法と同様の方法により製造を実施することができる。また、ケイ酸ナノ粒子におけるn−ブチルアクリレートの重合の例を用いるG.Carrot、S.Diamanti、M.Manuszak、B.Charleux、J.−P.Vairon、「Atom transfer radical polymerization of n−butyl acrylate from silica nanoparticles」、J. Polym. Sci.、パートA:Polymer Chemistry、第39刊、第4294〜4301頁(2001)に記載されるような「原子移動ラジカル重合」により被覆粒子の製造をすることもできる。
【0055】
WO2006/053640に記載されるような製造方法も使用し得る。本発明のために選択される無機コアは、WO2006/053640の第5頁24行〜第7頁15行にそれらの製造方法とともに記載された無機コアである。これらのコアのコーティングは、この文献の題10頁22行〜第15頁7頁に記載されるような方法により成し遂げられる。シェルが重合する前に無機コアに前処理を施すことができるというこの文献の提言(第15頁9〜24行)に従うこともできる。そこではこの主題に関して以下のように述べられている:
【0056】
「とりわけ無機コアの使用については、シェルが重合する前にシェルと結合することを可能にする前処理をコアが受けることも好ましい。これは通常粒子表面の化学官能化から成り、非常に広範な種類の無機材料について文献により知られている。特に好ましくは反応性の鎖末端としてシェルポリマーのグラフト化を可能にする化学官能基の表面への適用を伴ってもよい。ここでとりわけ言及される例としては、末端二重結合、エポキシ官能基および重縮合性基が挙げられる。ポリマーによる水酸基を有する表面への官能基付与は、例えばEP−A−337144に開示されている。」
【0057】
本発明の接着剤は、上述したゴム粒子のみを含有していてもよく、または上述した被覆された無機粒子のみを含有していてもよく、あるいは同時に両方のタイプの粒子を含有していてもよい。
【0058】
本発明の接着剤が、滑らかで平面的な物質(例えば金属パネル)の接着結合のために使用される場合、または一般に修復目的で使用される場合、本発明の接着剤は硬化中または硬化前に加熱発泡性である必要はない。したがって、本発明の接着剤に必ずしも発泡剤を含有する必要はない。デコボコした物質または多孔質物質を接続する場合または、例えば接合前に他方に挿入して機械的に接続するパイプのような部材の場合、接着剤が加熱発泡性であることは接合するパイプ同士の間の空洞または隙間を満たすために有益である。そのような用途に対して、接着剤は少なくとも1種の発泡剤(f)をさらに含有することが好ましい。
【0059】
例えば分解によってガスを放出する「化学的発泡剤」または中空球を膨張させる「物理的発泡剤」などの全ての既知の発泡剤は、原則的に発泡剤として適当である。発泡剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホン酸ヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホヒドラジド、ベンゼン−1,3−ジスルホヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジドが挙げられる。ポリビニリデンクロライドコポリマーまたはアクリロニトリル−(メタ)アクリレートコポリマーに基づく膨張性中空プラスチック微小球が特に好ましい。これらは、例えば、Pierce & Stevens社またはCasco Nobel社より「Dualite(登録商標)」または「Expancel(登録商標)」の商品名で市販されている。
【0060】
発泡剤の量は、活性化温度(または膨張温度)まで加熱することにより、接着剤の体積が少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、特に少なくとも10%不可逆的に増加するよう選択することが好ましい。このことは、その熱膨張率による通常の可逆的な熱膨張に加えて、接着剤を活性化温度まで加熱することにより、室温(22℃)における初期体積と比較して不可逆的にその体積が増加し、室温まで冷却した後に、冷却前より少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、特に少なくとも10%大きくなることを意味すると理解されるべきである。したがって、上記の膨張率は、活性化温度への一時的な加熱の前後における、室温での接着剤の体積に関する。膨張率(すなわち不可逆的体積増加)の上限を300%未満、特に200%未満となるように発泡剤の量を選択することにより設定し得る。
【0061】
接着剤における熱伝導、これによるその硬化挙動は、容易に熱を伝導する粒子、例えば金属粉末(金属合金の粉末を含む)を添加することにより改善されうる。したがって、本発明の接着剤の一態様は、接着剤が(g)金属粉末をさらに含有するという事実からなる。
【0062】
好ましい金属粉末は、鉄(特に鋼鉄)、アルミニウム、亜鉛、銅、またはこれらの元素を少なくとも50重量%含む合金から選択され得る。90重量%の粒子が10〜100μmの粒子径(ふるい分析により測定し得る)を有する金属を用いることが好ましい。
【0063】
一般的に、本発明の接着剤は、それ自身既知であるフィラー、例えば種々の粉砕または沈降チョーク、カーボンブラック、炭酸カルシウム−マグネシウム、タルク、バライト、ケイ酸またはシリカ、および特にケイ酸アルミニウム−マグネシウム−カルシウム型のケイ酸塩フィラー(例えば、珪灰石、緑泥石)をさらに含有する。
【0064】
重量を減らすために接着剤は、前記の「通常」フィラーに加えて、いわゆる軽量フィラーを含有し得る。軽量フィラーは、例えば中空鋼鉄球などの中空金属球、中空ガラス球、フライアッシュ(フィライト)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂またはポリエステルに基づく中空プラスチック球、(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、ポリスチレン、スチレン/(メタ)アクリレートコポリマーでできた壁材を有する膨張中空微小球、特にポリ塩化ビニリデンならびに塩化ビニリデンとアクリロニトリルおよび/または(メタ)アクリル酸エステルのコポリマーでできた壁材を有する膨張中空微小球、あるいは粉砕した木の実の殻(例えば、カシューナッツ、ココナッツまたは落花生の殻)およびコルク粉末またはコルクパウダーのような天然物の有機軽量フィラーの群から選択され得る。本発明において特に好ましいものは、硬化した接着剤において高い圧縮強度を確保する中空微小球に基づく軽量フィラーである。
【0065】
1つの可能な実施態様において、接着剤はさらに、例えばアラミド繊維、炭素繊維、金属繊維(例えばある無ニウム製)、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、またはポリエステル繊維に基づく繊維を含有する。これらの繊維は、好ましくは0.5〜6mmの繊維長および5〜20μmの直径を有するパルプ繊維またはステープル繊維である。アラミド繊維型のポリアミド繊維またはポリエステル繊維が、本発明において特に好ましい。
【0066】
本発明の硬化性化合物は、さらに、例えば可塑剤、レオロジー助剤、湿潤剤、粘着促進剤、老化防止剤、安定化剤および/または着色顔料などの一般的なさらなる助剤および添加剤を含有し得る。
【0067】
本発明の接着剤は、好ましくは個々の成分を以下に示す量で含む。この量は、接着剤の総重量に基づく重量%で示されるものとして理解されるべきであり、その量は合計100重量%となるよう選択されるべきである。
【0068】
(a)反応性エポキシプレポリマー:少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%であり、80重量%以下、好ましくは70重量%以下、特に60重量%以下である。本発明において、エポキシプレポリマーの全割合は22℃で固体であるか、エポキシプレポリマーの一部が22℃で固体であり、エポキシプレポリマーの一部が22℃で液体またはペースト状である反応性エポキシプレポリマーの混合物が使用される。(「ペースト状」とはフィルム内にこの化合物が広がり得ることを意味する。)22℃で固体と液体であるエポキシプレポリマーの混合比率により、接着剤が22℃で粘着性であるか否かを調節し得る(液体のエポキシプレポリマーの使用量が少なければ、粘着性は低くなる)。例えば、22℃で液体のエポキシプレポリマーと、22℃で液体またはペースト状のエポキシプレポリマーの量比は、10:1〜1:10の範囲であり得る。
【0069】
(b)エポキシに対する潜在性硬化剤:少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%であり、10重量%以下、好ましくは8重量%以下である。さらに硬化促進剤を加えることができる。必要に応じて、硬化促進剤を少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%であり、6重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に3重量%以下の範囲の量で含有することができる。
【0070】
(c)(c1)熱可塑性ポリウレタン、(c2)熱可塑性イソシアネート、(c3)熱可塑性ポリマーブロックを含むブロックコポリマーから選択される1種以上のエラストマー:総量で少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%、特に少なくとも10重量%であり、70重量%以下、好ましくは50重量%以下である。成分(c1)〜(c3)の中のただ1つの成分が存在していてよく、前記成分の中の2つの成分が存在していてもよく、または3つ全ての成分が存在していてもよい。特に好ましくは、成分(c1)および(c2)の少なくとも1つ、特に好ましくは成分(c1)が存在する。これらとともに成分(c3)を好ましくは付加的に使用する。この場合、成分(c1)および/または(c2)が、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%で、35重量%以下、好ましくは25重量%以下の割合で存在し、成分(c3)が、少なくとも1重量%で、35重量%以下、好ましくは25重量%以下の割合で存在する。これらのエラストマーに加えて、本発明の接着剤は、エラストマー特性を有する別のポリマーおよびコポリマー、または、好ましくはコア−シェル構造を有するゴム粒子(d)、例えばジエン(ブタジエン、イソプレンなど)と(メタ)アクリル酸またはそのエステルのコポリマーを含有し得る。これらは、(接着剤の総重量に基づき)20重量%以下、特に10重量%以下、好ましくは1重量%より多い、特に4重量%より多い量で存在し得る。
【0071】
(e)有機ポリマーのシェルを有する無機粒子:存在する場合、総量で好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%で、45重量%以下、好ましくは35重量%以下、特に25重量%以下の量である。0〜5重量%の量であってもよい。
【0072】
(f)発泡剤:接着剤に熱膨張性を求めない場合は必要ない。熱膨張性接着剤を意図する場合、所望する膨張率に応じた割合の発泡剤が必要となり、その割合は実験的に確定し得る。開始点として、0.2〜1.5重量%の範囲の発泡剤含量が役立ち得る。しかしながら、5重量%までの、および10重量%までの発泡剤含量も可能である。
【0073】
(g)金属粉末:必ずしも必要でない。存在する場合には、好ましくは少なくとも0.1重量%、特に少なくとも5重量%であり、40重量%以下、好ましくは25重量%以下である。
【0074】
フィラーや着色含量などのさらなる助剤:0重量%〜総量で60重量%、好ましくは40重量%以下、特に総量で20重量%以下であり、好ましくは少なくとも5重量%、特に少なくとも10重量%である。
【0075】
上述した接着剤を、意図する用途に応じて、室温(22℃)で粘着性または非粘着性となるように構成することができる。先に説明したように、粘着性は、特に液体エポキシプレポリマーと固体エポキシプレポリマーの量比により調整することができる。
【0076】
本発明の原料の組み合わせの結果として、帯状またはフィルム状の接着剤は、室温(22℃)で未硬化状態において、屈曲可能(すなわち、容易に手で90℃以上曲げることができる)または巻付け可能(すなわち、内部に空洞を生じる必要なくロール状に巻き上げることができる)である。22℃で未硬化の状態において、接着剤は破断前に少なくとも100%伸張することができる。したがって、この接着剤は、異なる基板形状、特に円柱形物体の周りに巻付けるのに適し得る。
【0077】
容易な作業性のため、帯状またはフィルム状の接着剤を基板(例えばキャリア箔)上に重ねることができる。この目的に特に適するのは、例えば、アルミニウムなどの金属製のキャリア箔である。意図する用途に応じて、この箔は、硬直〜容易に屈曲可能であり得る種々の剛性を有し得る。本発明において「キャリア箔」は、硬化後接着剤上に残留する物質として理解される。それらにかかわりなく、容易な作業性のため、剥離フィルム、例えば、使用前または硬化前に剥離される剥離紙(例えばシリコーン処理紙)の片側または両側に接着剤を被覆することが好ましい。また、帯状またはフィルム状で用いられる接着剤の一方を例えば金属箔などの箔で被覆し、他方を剥離紙で被覆する態様も可能である。特にこれは、接着剤が室温で粘着性であるように調整されている場合の態様である。
【0078】
本発明の接着剤を製造するために個々の成分を互いに、(工程段階により)好ましくは50〜120℃の範囲の温度で、混合する。混合を攪拌容器または混練機で行う場合、混合物を基材(例えば剥離紙)上に注入し、帯状またはフィルム状に伸張または延伸することができる。あるいは、構成成分を押出機の混合室で混合した後、帯状の対応する形の押出金型により、必要に応じて剥離紙上に、押出すことができる。いずれの場合も、金属箔などのキャリア箔を、剥離紙に変えて使用することができる。
【0079】
物質を接合するために、接着剤を、互いに隣り合って接合すべき2つの物質の片側または両側に塗布し、あるいは、接合される表面の間に塗布する。接着剤が室温で粘着性である場合、初期の固定化はこの塗布によりすでになし得る。硬化するために接着剤を塗布した接合部位を、約60〜約200℃、特に100〜180℃の範囲の温度まで加熱する。加熱時間は約1〜120分、好ましくは約5分〜約45分であり得る。接着剤が発泡剤を含有する場合、硬化と同時に膨張する。
【0080】
したがって、この接着剤は一般的に平面状、管状または円筒状部材の接着接合に適している。これらの部材は、例えば金属、木材、セラミックまたはフェライトなどの種々の材料から製造され得る。接合部分が異なる材料群に属していてもよい。
【0081】
本発明の接着剤は、特にパイプの接合に適している。したがって、本発明は、第1パイプが第2パイプの末端部分と接合可能な末端部分を有しており、接着フィルムを第2パイプの末端部分に塗布し、塗布された接着フィルムを有する第2パイプの末端部分を第1パイプの末端部分に挿入し、この接着フィルムを加熱により硬化するパイプの接合方法に関する。
【0082】
パイプ接合および同様の適用のための可能な手段は、互いに固定すべきパイプ末端を(好ましくは電子的に)加熱可能なクランプを用いて互いに固定すること、クランプの加熱装置を活性化すること、それにより互いに固定したパイプの末端部分を、接着剤を硬化させるような方法で加熱することである。加熱可能なクランプに代えて、加熱可能なスリーブ等をパイプの末端部分周辺または他の部分に取付け、互いに固定した後、互いに固定したパイプ末端を加熱することも可能である。結合する部分の性質により、当然、加熱オーブンでの加熱も可能である。
【0083】
しかしながら、本発明の接着剤は、部材の接合のみならず、部材の片面被覆にも適している。これは、例えば音響減衰の目的のための部材の振動挙動に望ましい影響を与えることができる。
【実施例】
【0084】
下記表の原料1〜7を、プラネタリーミキサー中、120℃の温度で互いに混合した。他の工程段階は、最大60℃の温度で行った。
【0085】
加熱可能なプレス機を使用して、混合した物質を厚さ0.2mmの帯状に成形した。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
試験結果
【0089】
【表3】

【0090】
結合領域=2510mm、接着層の厚さ=0.2mm
【0091】
全ての例で、100%結着した断片が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1〜5ミリの範囲の厚みを有し、
(a)少なくとも1種の反応性エポキシプレポリマー、
(b)エポキシに対する少なくとも1種の潜在性硬化剤、および
(c)1種以上のエラストマー
を含有し、該エラストマーが
(c1)熱可塑性ポリウレタン
(c2)熱可塑性イソシアネート
(c3)熱可塑性ポリマーブロックを含むブロックコポリマー
から選択される帯状またはフィルム状の熱硬化性接着剤。
【請求項2】
22℃で固体である、反応性エポキシ基を有するエポキシ樹脂が成分(a)として少なくとも一部に存在する請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
成分(c1)として、熱可塑性非反応性ポリウレタンを含有する請求項1または2に記載の接着剤。
【請求項4】
熱可塑性非反応性ポリウレタン(c1)は、少なくとも下記条件の1つを満たす請求項3に記載の接着剤:
(i)22℃で固体であって、−20℃より低い、好ましくは−25℃より低いガラス転移温度を有する;
(ii)22℃で固体であって、(コフラーで)100℃を越える、好ましくは115℃を越える融解範囲または軟化範囲を有する;
(iii)22℃で固体であって、純物質として、少なくとも300%の、好ましくは少なくとも400%の破断伸度を有する。
【請求項5】
成分(c3)として、15℃より低いガラス転移温度を有する第1ポリマーブロックおよび25℃より高いガラス転移温度を有する第2ポリマーブロックを含んでなるブロックコポリマーから選択されるブロックコポリマーを含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤。
【請求項6】
ブロックコポリマー(c3)は、下記のブロック構造:
スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリレート、
スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル、
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−グリシジル(メタ)アクリル酸エステル、
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸、
メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート
を有するコポリマーから選択される請求項5に記載の接着剤。
【請求項7】
(d)ゴム粒子
をさらに含有する請求項1〜6のいずれかに記載の接着剤。
【請求項8】
(e)有機ポリマーからできたシェルを含んでなる無機粒子
をさらに含有する請求項1〜7のいずれかに記載の接着剤。
【請求項9】
(f)少なくとも1種の発泡剤
をさらに含有する請求項1〜8のいずれかに記載の接着剤。
【請求項10】
(g)金属粉末
をさらに含有する請求項1〜9のいずれかに記載の接着剤。
【請求項11】
22℃で未硬化の状態において、屈曲可能または巻付け可能であり、かつ破断前に少なくとも100%伸長することができる請求項1〜10のいずれかに記載の接着剤。
【請求項12】
基板上に、好ましくは金属製基板上に重ねる請求項1〜11のいずれかに記載の接着剤。
【請求項13】
平面状、管状または円筒状部材、好ましくは金属製、木製、セラミック製またはフェライト製部材の接着接合のための、請求項1〜12のいずれかに記載の接着剤の使用。
【請求項14】
第1パイプが第2パイプの末端部分と接合可能な末端部分を有し、接着フィルムを第2パイプの末端部分に塗布し、塗布された接着フィルムを有する第2パイプの末端部分を第1パイプの末端部分に挿入し、該接着フィルムを加熱により硬化させるパイプの接続方法であって、接着フィルムとして請求項1〜12のいずれかに記載の接着剤を使用する方法。

【公表番号】特表2012−528205(P2012−528205A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512219(P2012−512219)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066346
【国際公開番号】WO2010/136086
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】