説明

エポキシ樹脂組成物及びこれを用いたプリント配線板用層間絶縁フィルム

【課題】精密な導体配線パターンを形成できるエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
活性水素含有官能基と反応し得る官能基(x)を有する重量平均分子量5,000〜100,000のポリマー(A1)及び活性水素含有官能基(y)を有する樹脂(A2)を反応させて製造され得るバインダーポリマー(A)、
又は活性水素含有官能基(y)を有する重量平均分子量5,000〜100,000のポリマー(B1)及び活性水素含有官能基と反応し得る官能基(x)を有する樹脂(B2)を反応させて製造され得るバインダーポリマー(B)と、
エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)とを含有してなり、
エポキシ樹脂(C)のSP値と樹脂(A2)若しくは樹脂(B2)のSP値との差(ΔSPC)又は硬化剤(D)のSP値と樹脂(A2)若しくは樹脂(B2)のSP値との差(ΔSPD)が2.0(cal/cm31/2以下であるエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ樹脂組成物に関する。さらに詳しくはプリント配線板用層間絶縁フィルムに好適なエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
重量平均分子量5,000〜100,000のバインダーポリマーを含むエポキシ樹脂組成物及びこのエポキシ樹脂組成物からなるプリント配線板用層間絶縁フィルムが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−87927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のエポキシ樹脂組成物からなるプリント配線板用層間絶縁フィルムは、粗化(プリント配線板の製造において、後工程で形成される導体と樹脂との密着性を向上させるために、酸化剤等を用いて樹脂の一部を分解して樹脂表面に凹凸を形成させる処理)後の表面の凹凸(表面粗度)が大きくなりすぎるばかりでなく、凹凸の大きさも不均一となるため(極端に大きい凹部も発生する)、精密な導体配線パターンを形成しにくいという問題がある。
本発明の目的は、表面の凹凸が微小かつ均一な粗化面を形成できるエポキシ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のエポキシ樹脂組成物の特徴は、活性水素含有官能基と反応し得る官能基(x)を有する重量平均分子量5,000〜100,000のポリマー(A1)及び活性水素含有官能基(y)を有する樹脂(A2)を反応させて製造され得るバインダーポリマー(A)、
又は活性水素含有官能基(y)を有する重量平均分子量5,000〜100,000のポリマー(B1)及び活性水素含有官能基と反応し得る官能基(x)を有する樹脂(B2)を反応させて製造され得るバインダーポリマー(B)と、
エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)とを含有してなり、
エポキシ樹脂(C)のSP値と樹脂(A2)若しくは樹脂(B2)のSP値との差(ΔSPC)又は硬化剤(D)のSP値と樹脂(A2)若しくは樹脂(B2)のSP値との差(ΔSPD)が2.0(cal/cm31/2以下であるエポキシ樹脂組成物からなることを要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いると、微小かつ均一な粗化面を形成できる。したがって、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いると、精密な導体配線パターンを容易に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
ポリマー(A1)の重量平均分子量は5,000〜100,000であり、好ましくは6,000〜95,000、さらに好ましくは8,000〜90,000、特に好ましくは10,000〜80,000である。この範囲より小さいと、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び可とう性が不足する傾向がある。また、この範囲を超えると、バインダーポリマーのエポキシ樹脂組成物中での分散性が悪くなる傾向があり、エポキシ樹脂組成物をプリント配線板用層間絶縁フィルムとして適用した場合に粗化後の凹凸が大きくなりすぎる傾向がある。
【0007】
本発明において、重量平均分子量(以下、Mwで表す場合もあるが同じ意味である)は、JIS K0124−2002(分離機構:サイズ排除クロマトグラフィー)に準拠してゲルパーミエーションクロマトグラフィー法{合成高分子充填剤(ポリスチレンゲル等)を使用した非水系サイズ排除クロマトグラフィー}により測定され、例えば、次のような条件で測定できる。
装 置:HLC−802A(東ソー株式会社)
カ ラ ム:TSK gel GMH6×2本(東ソー株式会社)を直列に結合したカラム
カラム温度:40℃
展開溶媒 :テトラヒドロフラン(試薬特級)
試料濃度 :0.25重量%
注 入 量:10μl
流 速:1.0(ml/min)
検 出 器:示差屈折率検出器
標準物質 :標準ポリスチレン(分子量842万、448万、289万、109万、35.5万、19万、9.64万、3.79万、1.96万、9.1千、2.98千、870、500)
【0008】
活性水素含有官能基は、活性水素を含有する官能基であり、アミノ基及び水酸基等が含まれる。
アミノ基としては、第1級アミノ基及び第2級アミノ基が含まれる。
水酸基としては、フェノール性水酸基及びアルコール性水酸基が含まれる。
【0009】
活性水素含有官能基と反応し得る官能基(x)としては、エポキシ基、カルボキシ基、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基、イソシアナト基及びハロゲン原子等が例示できる。
これらのうち、バインダーポリマー(A)の製造の容易さの観点等から、エポキシ基、カルボキシ基、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基及びイソシアナト基が好ましく、さらに好ましくはエポキシ基、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基及びイソシアナト基、特に好ましくはエポキシ基である。
官能基(x)は、樹脂(A2)との反応性の観点等から、ポリマー(A1)の末端に存在することが好ましい。
【0010】
官能基(x)の平均個数は、ポリマー(A1)1分子あたり、1〜50が好ましく、さらに好ましくは1.5〜35、特に好ましくは2〜20である。この範囲であると、バインダーポリマー(A)の製造がさらに容易となる。
なお、官能基(x)の平均個数は、フェノキシ樹脂及びハロゲン化フェノキシ樹脂等のようにポリマー(A1)の構造が理論的に推定できる場合には、ポリマー(A1)の重量平均分子量と理論構造とから算出する。
一方、アクリル樹脂等のようにポリマー(A1)の構造が理論的に推定できない場合、重量平均分子量と官能基(x)の当量とから算出する。
官能基(x)の当量は、官能基(x)がエポキシ基の場合、JIS K7236−2001に準拠して、また官能基(x)がカルボキシ基の場合、JIS K0070−1992、3.酸価に準拠して、また官能基(x)が1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基の場合、JIS K1352−1993、3.7.1モルホリン法{ただし、同法の「(5)計算」の項に準じて純分を計算する際に、無水酢酸の量(g)に替えてポリマー(A1)の量(g)を使用する}に準拠して、また官能基(x)がイソシアナト基の場合、JIS K7301−1995、6.3イソシアネート基含有率に準拠して、また官能基(x)が塩素原子の場合、JIS K7229−1995に準拠して、それぞれ求めることができる。
【0011】
ポリマー(A1)としては特に限定されないが、フェノキシ樹脂、ハロゲン化フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂及びポリスルフォン樹脂等が挙げられる。
フェノキシ樹脂は、ビスフェノールとエピクロルヒドリンとが反応して製造され得る樹脂であり、公知のフェノキシ樹脂{たとえば、「14705の化学商品、化学工業日報社、2005年1月25日発行、1128〜1133頁」}等が使用できる。
フェノキシ樹脂は、公知の方法{たとえば、「14705の化学商品、化学工業日報社、2005年1月25日発行、1128〜1133頁」}により製造でき、例えば、温度60〜120℃で、水酸化ナトリウム等の触媒を用いてエピクロルヒドリンとビスフェノールとを反応させる方法等により製造することができる。
ビスフェノールとしては、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールAF及びビスフェノールF等が挙げられる。
ポリマー(A1)がフェノキシ樹脂の場合、製造の容易さ等の観点からは、官能基(x)としては、エポキシ基が好ましい。エポキシ基であると、ポリマー(A1)をビスフェノールとエピクロルヒドリンとの反応により製造することで、ポリマー(A1)に官能基(x)を容易に導入することができる。この場合、エピクロルヒドリンをビスフェノールのモル数に比べて過剰に反応させることが好ましい。エピクロルヒドリンを過剰に用いることで、ポリマー(A1)の末端をエポキシ基とすることが容易である。
【0012】
ポリマー(A1)がフェノキシ樹脂の場合、市販品をそのまま使用できる。
市販品としては、「14705の化学商品 化学工業日報社、2005年1月25日発行、1129〜1133頁」に記載のビスフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられ、具体的には、「エピコート E1256」(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、エポキシ当量7800)、「エピコート E4010P」(ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、エポキシ当量4200)等が挙げられる。
【0013】
ハロゲン化フェノキシ樹脂は、ハロゲン化ビスフェノールとエピクロルヒドリンとが反応して製造され得る樹脂であり、フェノキシ樹脂と同様にして製造できる。ハロゲン化フェノキシ樹脂は、ハロゲン化ビスフェノール及びエピクロルヒドリン以外に、ハロゲン原子を含有しないビスフェノールを反応させて製造され得る樹脂でもよい。
ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を意味する。
ハロゲン原子を含有しないビスフェノールとしては、前記のビスフェノールが例示できる。
ハロゲン化ビスフェノールは、芳香環の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子で置換されたビスフェノールである。したがって、ハロゲン化ビスフェノールとしては、フッ素化ビスフェノール、塩素化ビスフェノール、臭素化ビスフェノール及びヨウ素化ビスフェノール等が挙げられる。これらのうち、製造コスト等の観点から、臭素化ビスフェノールが好ましく、さらに好ましくはビスフェノールAの芳香環の水素原子1〜8個が臭素原子で置換された臭素化ビスフェノールA、特に好ましくはテトラブロモビスフェノールAである。
ポリマー(A1)がハロゲン化フェノキシ樹脂の場合、官能基(x)としては、製造の容易さ及び反応性等の観点から、エポキシ基及びハロゲン原子が好ましく、さらに好ましくはエポキシ基及び臭素原子、特に好ましくはエポキシ基である。エポキシ基であると、ポリマー(A1)をハロゲン化ビスフェノールとエピクロルヒドリンとの反応により製造することで、ポリマー(A1)に官能基(x)を容易に導入することができる。この場合、エピクロルヒドリンをハロゲン化ビスフェノールのモル数に比べて過剰に反応させることが好ましい。エピクロルヒドリンを過剰に用いることで、ポリマー(A1)の末端をエポキシ基とすることが容易である。
【0014】
ポリマー(A1)がハロゲン化フェノキシ樹脂の場合、市販品をそのまま使用できる。
市販品としては、「14705の化学商品 化学工業日報社、2005年1月25日発行、1133頁」に記載の臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられ、具体的には、「エピコート 5580BPX40」(ビスフェノールA/テトラブロモビスフェノールA混合型フェノキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、エポキシ当量13000)等が挙げられる。
【0015】
アクリル樹脂としては、官能基(x)を有する(メタ)アクリルモノマーの単独重合体及び共重合体が挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリ・・・」とは、「アクリ・・・」及び「メタクリ・・・」を表す。
官能基(x)を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸及びエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル及び(メタ)アクリル酸の3,4−エポキシシクロヘキシルエステル等が挙げられる。
官能基(x)を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、活性水素含有官能基との反応性の観点等から、(メタ)アクリル酸及びエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、さらに好ましくはエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、特に好ましくは(メタ)アクリル酸グリシジルエステルである。
ポリマー(A1)がアクリル樹脂の場合、官能基(x)としては、製造の容易さ及び反応性等の観点から、カルボキシ基及びエポキシ基が好ましく、さらに好ましくはエポキシ基である。
【0016】
アクリル樹脂が共重合体である場合には、官能基(x)を有する(メタ)アクリルモノマーを2種類以上用いて共重合したものでもよいが、官能基(x)を有する(メタ)アクリルモノマーと、官能基(x)を有さない(メタ)アクリルモノマー又は官能基(x)を有さないビニルモノマーとの共重合体であってもよい。
官能基(x)を有さない(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキルの炭素数が1〜8のものが好ましい。アルキルの炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステルが好ましい。
官能基(x)を有さないビニルモノマーとしては、ビニルアルキルエーテル、酢酸ビニル及びスチレン等が挙げられる。
ビニルアルキルエーテルとしては、アルキルの炭素数が1〜8のものが好ましい。アルキルの炭素数が1〜8のビニルアルキルエーテルとしては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル及びビニル2−エチルヘキシルエーテルが好ましい。
これらのアクリル樹脂は、特開2004−277734号公報(例えば、製造例1)に記載の方法等で製造することができる。
【0017】
ポリイミド樹脂としては、脂肪族ポリイミド樹脂及び芳香族ポリイミド樹脂等が挙げられる。
脂肪族ポリイミド樹脂としては、脂肪族カルボン酸二無水物と脂肪族ジアミンとから製造され得る脂肪族ポリイミド樹脂等が挙げられる。
芳香族ポリイミド樹脂としては、芳香族カルボン酸二無水物と脂肪族ジアミン若しくは芳香族ジアミンとから製造され得る芳香族ポリイミド樹脂、又は脂肪族カルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとから製造され得る芳香族ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0018】
脂肪族カルボン酸二無水物としては、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物及びブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物及びメチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物等の炭素数8〜11の脂肪族カルボン酸二無水物等が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、1,2−エチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジシクロヘキシル、ジアミノシクロヘキサン及びイソホロンジアミン等の炭素数2〜14の脂肪族ジアミン等が挙げられる。
芳香族カルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、1.4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物及び1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物等の炭素数10〜14の芳香族カルボン酸二無水物等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、1,4−フェニレンジアミン、1,2−フェニレンジアミン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジフェニルメタン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン及び3,3´,5,5´−テトラエチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン等の炭素数6〜20の芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0019】
ポリマー(A1)がポリイミド樹脂の場合、官能基(x)は、製造の容易さの観点等から、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基及びカルボキシ基が好ましい。特に好ましくは、反応性等の観点から、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基である。1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基であると、ポリマー(A1)をカルボン酸二無水物とジアミンとの反応により製造することで、ポリマー(A1)に官能基(x)を容易に導入することができる。この場合、カルボン酸二無水物をジアミンのモル数に比べて過剰に反応させることが好ましい。カルボン酸二無水物を過剰に用いることで、ポリマー(A1)の末端を1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基とすることが容易である。1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基は加水分解等により、容易にカルボキシ基とすることができる。
【0020】
ポリイミド樹脂は、ジアミンとカルボン酸二無水物とからポリアミドカルボン酸を生成し、これを脱水閉環する製造方法、又はジイソシアネートとカルボン酸二無水物とを反応させて直接ポリイミドを生成させる製造方法等により製造できる。ポリアミド酸は、そのまま官能基(x)としてカルボキシ基を有するポリマー(A1)としてもよい。
ジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等の炭素数4〜14の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及び4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート等の炭素数8〜15の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
これらのポリイミド樹脂は、特開平05−078485号公報に記載の方法等で製造することができる。
【0021】
ポリマー(A1)がポリイミド樹脂の場合、市販品をそのまま使用できる。
市販品としては、「14705の化学商品 化学工業日報社、2005年1月25日発行、1145〜1146頁」に記載のポリイミド等が挙げられ、具体的には、「リカコートPN−20」(新日本理化株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
ポリウレタン樹脂としては、脂肪族ポリウレタン樹脂及び芳香族ポリウレタン樹脂が挙げられる。
脂肪族ポリウレタン樹脂としては、脂肪族ジイソシアネートと脂肪族ジオールとから製造され得る脂肪族ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
芳香族ポリウレタン樹脂としては、芳香族ジイソシアネートと脂肪族ジオール若しくは芳香族ジオールとから製造され得る芳香族ポリウレタン樹脂、又は脂肪族ジイソシアネートと芳香族ジオールとから製造され得る芳香族ポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0023】
脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等の炭素数4〜14の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,14−テトラデカンジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の炭素数2〜14の脂肪族ジオール等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及び4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート等の炭素数8〜15の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ジオールとしては、レソルシノール、ピロカテコール、ヒドロキノン及び前記のビスフェノール等が挙げられる。
【0024】
ポリマー(A1)がポリウレタン樹脂の場合、官能基(x)は、製造の容易さの観点等から、イソシアナト基が好ましい。イソシアナト基であると、ポリマー(A1)をジイソシアネートとジオールとの反応により製造することで、ポリマー(A1)に官能基(x)を容易に導入することができる。この場合、ジイソシアネートをジオールのモル数に比べて過剰に反応させることが好ましい。ジイソシアネートを過剰に用いることで、ポリマー(A1)の末端をイソシアナト基とすることが容易である。
これらのポリウレタン樹脂は、特開平9−31412号公報(例えば、製造例4及び製造例5)に記載の方法等で製造できる。
【0025】
ポリエステル樹脂としては、芳香族ポリエステル樹脂及び脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
脂肪族ポリエステル樹脂としては、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとから製造され得る脂肪族ポリエステル樹脂、及びラクトンの開環重合物が挙げられる。
芳香族ポリエステル樹脂としては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオール若しくは芳香族ジオールとから製造され得る芳香族ポリエステル樹脂、又は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジオールとから製造され得る芳香族ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0026】
脂肪族ジカルボン酸としては、エタン二酸、ブタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、ドデカン二酸等の炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び1,8−オクタンジオール、1,14−テトラデカンジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の炭素数2〜14の脂肪族ジオール等が挙げられる。
ラクトンとしては、β−プロピオクラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン及びγ−バレロラクトン等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フェニルマロン酸、ホモフタル酸、フェニルコハク酸、β−フェニルグルタル酸、α−フェニルアジピン酸、β−フェニルアジピン酸、ビフェニル−2,2´−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4´−ジカルボン酸及びナフタレンジカルボン酸等の炭素数8〜14の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
芳香族ジオールとしては、レソルシノール、ピロカテコール、ヒドロキノン及び前記のビスフェノール等が挙げられる。
【0027】
脂肪族ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリβ−プロピオクラクトン、ポリγ−ブチロラクトン、ポリε−カプロラクトン、ポリγ−カプロラクトン及びポリγ−バレロラクトンが挙げられる。
芳香族ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートが挙げられる。
【0028】
ポリマー(A1)がポリエステル樹脂の場合、官能基(x)は、製造の容易さの観点等から、カルボキシ基が好ましい。カルボキシ基であると、ポリマー(A1)をジカルボン酸とジオールとの反応により製造することで、ポリマー(A1)に官能基(x)を容易に導入することができる。この場合、ジカルボン酸をジオールのモル数に比べて過剰に反応させることが好ましい。ジカルボン酸を過剰に用いることで、ポリマー(A1)の末端をカルボキシ基とすることが容易である。また、ラクトンを開環重合しても末端にカルボキシ基を導入することができるため好ましい。
これらのポリエステル樹脂は、特開2001−330994号公報(例えば、実施例1)に記載の方法等で製造できる。
【0029】
ポリスルフォン樹脂としては、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォン等が挙げられる。 ポリスルフォンは、スルホニル基、イソプロピリデン基、オキシ基及びフェニレン基から構成される樹脂であり、特開平05−156015号公報の0007段落に記載の繰り返し単位を有するもの等が挙げられる。ポリスルフォンであると、バインダーポリマー(A)の耐熱性及び可とう性が優れる。
ポリエーテルスルフォンは、スルホニル基及びフェニレン基から構成される樹脂であり、特開平05−156015号公報の0008〜0014段落に記載の繰り返し単位を有するもの等が挙げられる。ポリエーテルスルフォンであると、バインダーポリマー(A)の耐熱性及び機械的強度が優れる。
【0030】
ポリマー(A1)がポリスルフォン樹脂の場合、官能基(x)は、製造の容易さの観点等から、ハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子であると、ポリマー(A1)を4,4´−ジクロロジフェニルスルホンと、ビスフェノールとの反応等により製造することで、ポリマー(A1)に官能基(x)を容易に導入することができる。ここで、4,4´−ジクロロジフェニルスルホンに代えて、4,4´−ジブロモジフェニルスルホン、4,4´−ジフルオロジフェニルスルホン又は4,4´−ジヨードジフェニルスルホン等を用いれば、ハロゲン原子をそれぞれ、臭素原子、フッ素原子又はヨウ素原子にすることができる。ハロゲン原子としては、反応性及びコスト等の観点から、塩素原子及び臭素原子が好ましく、さらに好ましくは塩素原子である。
ポリスルフォンの場合、ビスフェノールとしては、イソプロピリデン基を導入する観点等から、ビスフェノールAが好ましい。
ポリエーテルスルフォンの場合、耐熱性の観点等から、ビスフェノールとしてはビスフェノールSが好ましい。
ポリマー(A1)に官能基(x)を導入する観点からは、4,4´−ジクロロジフェニルスルホンをビスフェノールのモル数に比べて過剰に反応させることが好ましい。4,4´−ジクロロジフェニルスルホンを過剰に用いることで、ポリマー(A1)の末端を塩素原子とすることが容易である。
これらのポリスルフォン樹脂は、特開平05−156015号公報に記載の方法等で製造できる。
【0031】
ポリマー(A1)がポリスルフォン樹脂の場合、市販品をそのまま使用できる。
市販品としては、「14705の化学商品 化学工業日報社、2005年1月25日発行、1109〜1111頁」に記載のポリスルフォン及びポリエーテルスルフォン等が挙げられ、具体的には、「PES 4100P」(ポリエーテルスルフォン、三井化学株式会社製)及び「PES 4800P」(ポリエーテルスルフォン、三井化学株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
ポリマー(A1)が主鎖にアルキレン基、オキシ基、スルホニル基又はスルフィニル基を含むと、バインダーポリマー(A)の有機溶剤への溶解性が優れ、ワニスの製造がさらに容易となるため好ましい。
アルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、さらに好ましくは2〜8、特に好ましくは3〜6である。この範囲であると、ワニスの製造がさらに容易となる上に、ポリマー(A1)の製造もさらに容易となる。
【0033】
これらのうち、ポリマー(A1)としては、バインダーポリマー(A)の製造の容易さ及び有機溶剤への溶解性の観点等から、フェノキシ樹脂、ハロゲン化フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、アルキレン基を有するポリウレタン樹脂及びアルキレン基を有するポリエステル樹脂が好ましく、さらに好ましくはフェノキシ樹脂、ハロゲン化フェノキシ樹脂及びアクリル樹脂、特に好ましくはアクリル樹脂及びフェノキシ樹脂、最も好ましくはフェノキシ樹脂である。これらのものであると、バインダーポリマー(A)の可とう性がさらに優れ、プリント配線板用層間絶縁フィルムとした場合に強靭なフィルムを得ることができる。
【0034】
樹脂(A2)が有する活性水素含有官能基(y)としては、反応性等の観点から、アミノ基及び水酸基が好ましく、さらに好ましくは水酸基、特に好ましくはフェノール性水酸基である。これらのものであると、官能基(x)との反応性が高いため好ましい。
【0035】
官能基(x)と活性水素含有官能基(y)との組み合わせとしては、官能基(x)がエポキシ基、カルボキシ基、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基又はイソシアナト基、活性水素含有官能基(y)がフェノール性水酸基又はアミノ基である組み合わせが好ましく、さらに好ましくは官能基(x)がエポキシ基、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基又はイソシアナト基、活性水素含有官能基(y)がフェノール性水酸基又はアミノ基である組み合わせ、特に好ましくは官能基(x)がエポキシ基、活性水素含有官能基(y)がフェノール性水酸基である組み合わせである。これらの組み合わせであると、バインダーポリマーの製造がさらに容易となる上に、バインダーポリマー(A)のエポキシ樹脂組成物中での分散性がさらに優れる。
【0036】
活性水素含有官能基(y)の平均個数は樹脂(A2)1分子あたり1〜50が好ましく、さらに好ましくは1.5〜30、特に好ましくは2〜20である。この範囲であると、バインダーポリマー(A)の製造がさらに容易となる上に、エポキシ樹脂組成物の機械的強度がさらに優れる。
なお、活性水素含有官能基(y)の平均個数は、活性水素含有官能基(y)の等量から求めることができる。活性水素含有官能基(y)の当量は、活性水素含有官能基(y)がアミノ基の場合、JIS K7237−1995、4.1電位差滴定法に準拠して、活性水素含有官能基(y)が水酸基の場合、JIS K0070−1992、7.水酸基価に準拠して、それぞれ求めることができる。
【0037】
樹脂(A2)は、エポキシ樹脂組成物の機械的強度及び耐熱性の観点等から、芳香族化合物が好ましく、さらに好ましくは芳香族アミン及びフェノール樹脂、特に好ましくはフェノール樹脂である。フェノール樹脂であると、機械的強度及び耐熱性が優れる上に、バインダーポリマーの分散性がさらに優れる。
芳香族アミンとしては、ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)メタン(SP値:11.1)等が挙げられる。
フェノール樹脂としては、クレゾールノボラック樹脂(SP値:15.2)及びフェノールノボラック樹脂(SP値:16.4)等が挙げられる。
樹脂(A2)は市販品をそのまま使用することができ、例えば「PSM4326」(フェノールノボラック樹脂、群栄化学工業株式会社製、Mw850、水酸基価105、SP値16.4)等が使用できる。
【0038】
樹脂(A2)の重量平均分子量は100以上5,000未満が好ましく、さらに好ましくは200〜4,500、特に好ましくは300〜4,000、最も好ましくは400〜3,500である。この範囲であると、バインダーポリマーのエポキシ樹脂中での分散性がよく、エポキシ樹脂組成物をプリント配線板用層間絶縁フィルムとして適用した場合に粗化後の凹凸が小さくなり、さらに精密な導体配線パターンを形成できる。
【0039】
バインダーポリマー(A)は、ポリマー(A1)及び樹脂(A2)が反応して製造され得るポリマーである。バインダーポリマー(A)の構造としては特に限定されないが、線状高分子、枝分かれ高分子、櫛形高分子、星型高分子及びそれらの組み合わせからなるポリマーが好ましく、さらに好ましくは線状高分子、特に好ましくは、末端が樹脂(A2)が反応して製造され得る構成単位である線状高分子である。バインダーポリマー(A)が線状高分子であると、バインダーポリマー(A)が有機溶剤に溶解しやすいためにプリント配線板用層間絶縁フィルムの製造が容易であり、末端が樹脂(A2)が反応して製造され得る構成単位であると、バインダーポリマー(A)の分散性がさらに優れるため、プリント配線板用層間絶縁フィルムに適用した場合、表面の凹凸が微小な粗化面を形成することができる。
【0040】
バインダーポリマー(A)が、ポリマー(A1)と樹脂(A2)との反応で製造される場合、ポリマー(A1)と樹脂(A2)との反応比[樹脂(A2)の分子数]/[ポリマー(A1)全分子に含まれる官能基(x)の個数]は、1.0〜100が好ましく、さらに好ましくは1.2〜75、特に好ましくは1.5〜50である。この範囲であると、バインダーポリマー(A)のエポキシ樹脂組成物への分散性が優れる上に、有機溶剤への溶解性が優れるためワニスの製造がさらに容易となる。
【0041】
バインダーポリマー(A)の重量平均分子量は5,100〜1,000,000が好ましく、さらに好ましくは8,000〜500,000、特に好ましくは10,000〜100,000である。この範囲であるとバインダーポリマー(A)のエポキシ樹脂組成物中での分散性がさらに優れる。
【0042】
ポリマー(B1)の重量平均分子量は5,000〜100,000であり、好ましくは6,000〜95,000、さらに好ましくは8,000〜90,000、特に好ましくは10,000〜80,000である。この範囲より小さいと、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び可とう性が不足する傾向がある。また、この範囲を超えると、バインダーポリマーのエポキシ樹脂組成物中での分散性が悪くなる傾向があり、エポキシ樹脂組成物をプリント配線板用層間絶縁フィルムとして適用した場合に粗化後の凹凸が大きくなりすぎる傾向がある。
【0043】
活性水素含有官能基(y)は、樹脂(B2)との反応性の観点等から、ポリマー(B1)の末端に存在することが好ましい。
活性水素含有官能基(y)の平均個数はポリマー(B1)1分子あたり1〜50が好ましく、さらに好ましくは1.5〜35、特に好ましくは2〜20である。この範囲であるとバインダーポリマー(B)の製造がさらに容易となる。
なお、活性水素含有官能基(y)の平均個数は、フェノキシ樹脂及びハロゲン化フェノキシ樹脂等のようにポリマー(B1)の構造が理論的に推定できる場合には、ポリマー(B1)の重量平均分子量と理論構造とから算出する。
一方、アクリル樹脂等のようにポリマー(B1)の構造が理論的に推定できない場合、重量平均分子量と活性水素含有官能基(y)の当量とから算出する。
【0044】
ポリマー(B1)は、官能基(x)が活性水素含有官能基(y)である以外は、ポリマー(A1)と同じである。すなわち、フェノキシ樹脂、ハロゲン化フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂及びポリスルフォン樹脂等が例示できる。
ポリマー(B1)がフェノキシ樹脂の場合、製造の容易さ等の観点からは、活性水素含有官能基(y)としては、フェノール性水酸基が好ましい。フェノール性水酸基であると、ポリマー(B1)をビスフェノールとエピクロルヒドリンとの反応により製造することで、ポリマー(B1)に活性水素含有官能基(y)を容易に導入することができる。この場合、ビスフェノールをエピクロルヒドリンのモル数に比べて過剰に反応させることが好ましい。ビスフェノールを過剰に用いることで、ポリマー(B1)の末端をフェノール性水酸基とすることが容易である。
【0045】
ポリマー(B1)がハロゲン化フェノキシ樹脂の場合、活性水素含有官能基(y)としては、製造の容易さ及び反応性等の観点から、フェノール性水酸基が好ましい。フェノール性水酸基であると、ポリマー(B1)をハロゲン化ビスフェノールとエピクロルヒドリンとの反応により製造することで、ポリマー(B1)に官能基(y)を容易に導入することができる。この場合、ハロゲン化ビスフェノールをエピクロルヒドリンのモル数に比べて過剰に反応させることが好ましい。ハロゲン化ビスフェノールを過剰に用いることで、ポリマー(B1)の末端をフェノール性水酸基とすることが容易である。
【0046】
アクリル樹脂としては、活性水素含有官能基(y)を有する(メタ)アクリルモノマーの単独重合体及び共重合体が挙げられる。
活性水素含有官能基(y)を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、アルコール性水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
アルコール性水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、製造の容易さ及び反応性の観点等から、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が好ましい。
炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基及びヒドロキシブチル基等が挙げられる。これらのうち、反応性等の観点から、ヒドロキシエチル基が好ましい。
活性水素含有官能基(y)を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、反応性の観点等から、アルコール性水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミドが好ましく、さらに好ましくはアルコール性水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、特に好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステルである。
ポリマー(B1)がアクリル樹脂の場合、活性水素含有官能基(y)としては、アミノ基及びアルコール性水酸基が好ましく、さらに好ましくはアルコール性水酸基である。
【0047】
アクリル樹脂が共重合体である場合には、活性水素含有官能基(y)を有する(メタ)アクリルモノマーを2種類以上用いて共重合したものでもよいが、活性水素含有官能基(y)を有する(メタ)アクリルモノマーと活性水素含有官能基(y)を有さない(メタ)アクリルモノマー又は活性水素含有官能基(y)を有さないビニルモノマーとの共重合体であってもよい。
活性水素含有官能基(y)を有さない(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキルの炭素数が1〜8のものが好ましい。アルキルの炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステルが好ましい。
活性水素含有官能基(y)を有さないビニルモノマーとしては、ビニルアルキルエーテル、酢酸ビニル及びスチレン等が挙げられる。
ビニルアルキルエーテルとしては、アルキルの炭素数が1〜8のものが好ましい。アルキルの炭素数が1〜8のビニルアルキルエーテルとしては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル及びビニル2−エチルヘキシルエーテルが好ましい。
これらのアクリル樹脂は、特開2004−277734号公報に記載の方法等で製造することができる。
【0048】
ポリマー(B1)がポリイミド樹脂の場合、活性水素含有官能基(y)は、製造の容易さの観点等から、アミノ基が好ましい。アミノ基であると、ポリマー(B1)をカルボン酸無水物とジアミンとの反応により製造することで、ポリマー(B1)に活性水素含有官能基(y)を容易に導入することができる。この場合、ジアミンをカルボン酸酸無水物のモル数に比べて過剰に反応させることが好ましい。ジアミンを過剰に用いることで、ポリマー(B1)の末端をアミノ基とすることが容易となる。
【0049】
ポリマー(B1)がポリウレタン樹脂の場合、活性水素含有官能基(y)は、製造の容易さ等の観点から、水酸基が好ましく、さらに好ましくは、フェノール性水酸基である。フェノール性水酸基であると、反応性が高いためポリマー(B1)の製造がさらに容易となる。
ポリマー(B1)をジオールとジイソシアネートとの反応により製造することで、ポリマー(B1)に活性水素含有官能基(y)を容易に導入することができる。この場合、ジオールをジイソシアネートのモル数に比べて過剰に反応させることが好ましい。ジオールを過剰に用いることで、ポリマー(B1)の末端を水酸基とすることがさらに容易となる。
これらのポリウレタン樹脂は、特開平9−31412号公報に記載の方法等で製造できる。
【0050】
ポリマー(B1)がポリエステル樹脂の場合、活性水素含有官能基(y)は、製造の容易さの観点等から、水酸基が好ましい。水酸基であると、ポリマー(B1)をジオールとジカルボン酸との反応により製造することで、ポリマー(B1)に活性水素含有官能基(y)を容易に導入することができる。この場合、ジオールをジカルボン酸のモル数に比べて過剰に反応させることが好ましい。ジオールを過剰に用いることで、ポリマー(B1)の末端基を水酸基とすることがさらに容易となる。また、ラクトンを開環重合しても末端に水酸基を導入することができるため好ましい。
これらのポリエステル樹脂は、特開2001−330994号公報に記載の方法等で製造できる。
【0051】
ポリマー(B1)がポリスルフォン樹脂の場合、ポリマー(B1)が有する活性水素含有官能基(y)は、製造の容易さの観点等から、フェノール性水酸基が好ましい。フェノール性水酸基であると、ポリマー(B1)をビスフェノールと4,4´−ジクロロジフェニルスルホンとの反応により製造することで、ポリマー(B1)に活性水素含有官能基(y)を容易に導入することができる。この場合、ビスフェノールを4,4´−ジクロロジフェニルスルホンのモル数に比べて過剰に反応させることが好ましい。ビスフェノールを過剰に用いることで、ポリマー(B1)の末端基をフェノール性水酸基とすることが容易である。
【0052】
ポリマー(B1)がポリスルフォン樹脂の場合、市販品をそのまま使用できる。
市販品としては、「14705の化学商品 化学工業日報社、2005年1月25日発行、1109〜1111頁」に記載のポリスルフォン及びポリエーテルスルフォン等が挙げられ、具体的には、「ユーデル P−1700」(ポリスルフォン、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)、「レーデルA A−200A」(ポリエーテルスルフォン、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)、「ウルトラゾーン E−1010」(ポリエーテルスルフォン、三井化学株式会社製)等が挙げられる。
【0053】
ポリマー(B1)が主鎖にアルキレン基、オキシ基、スルホニル基又はスルフィニル基を含むと、エポキシ樹脂組成物の有機溶剤への溶解性が優れ、ワニスの製造がさらに容易となるため好ましい。
アルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、さらに好ましくは2〜8、特に好ましくは3〜6である。この範囲であると、ワニスの製造がさらに容易となる上に、ポリマー(B1)の製造もさらに容易となる。
【0054】
これらのうち、ポリマー(B1)としては、バインダーポリマー(B)の製造の容易さ及び有機溶剤への溶解性の観点等から、フェノキシ樹脂、ハロゲン化フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、アルキレン基を有するポリウレタン樹脂及びアルキレン基を有するポリエステル樹脂が好ましく、さらに好ましくはフェノキシ樹脂、ハロゲン化フェノキシ樹脂及びアクリル樹脂、特に好ましくはアクリル樹脂及びフェノキシ樹脂、最も好ましくはフェノキシ樹脂である。これらのものであると、エポキシ樹脂組成物の可とう性がさらに優れるため、プリント配線板用層間絶縁フィルムとした場合に強靭なフィルムを得ることができる。
【0055】
樹脂(B2)が有する官能基(x)としては、バインダーポリマー(B)の製造の容易さ等の観点から、エポキシ基、カルボキシ基、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基、イソシアナト基及びハロゲン原子等が好ましく、さらに好ましくはエポキシ基、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基及びイソシアナト基、特に好ましくはエポキシ基である。
【0056】
官能基(x)の平均個数は樹脂(B2)1分子あたり1〜50が好ましく、さらに好ましくは1.5〜30、特に好ましくは2〜20である。この範囲であるとバインダーポリマー(B)の製造が容易であり、エポキシ樹脂組成物の機械的強度がさらに優れる。
【0057】
樹脂(B2)は、エポキシ樹脂組成物の機械的強度及び耐熱性の観点等から、芳香族化合物が好ましく、芳香族酸無水物及び芳香族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのものであるとエポキシ樹脂組成物の機械的強度を高くすることができるため好ましい。
芳香族酸無水物としては、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(SP値:14.3)等が挙げられる。
芳香族エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型グリシジルエーテル(SP値:11.6)、クレゾールノボラック型グリシジルエーテル(SP値:11.3)、及びナフタレン型グリシジルエーテル(SP値:12.8)等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは芳香族エポキシ樹脂である。これらのものであると、機械的強度及び耐熱性が優れる上に、バインダーポリマーの分散性も優れる。
樹脂(B2)は市販品をそのまま使用することができ、例えば、「エピコ−ト EP−154」(フェノールノボラックエポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、Mw650、エポキシ当量 176、SP値11.6)等が使用できる。
【0058】
樹脂(B2)の重量平均分子量は100以上5,000未満が好ましく、さらに好ましくは200〜4,500、特に好ましくは300〜4,000、最も好ましくは400〜3,500である。この範囲であると、バインダーポリマーのエポキシ樹脂中での分散性がよく、エポキシ樹脂組成物をプリント配線板用層間絶縁フィルムとして適用した場合に粗化後の凹凸が小さくなり、さらに精密な導体配線パターンを形成できる。
【0059】
バインダーポリマー(B)は、ポリマー(B1)及び樹脂(B2)が反応して製造され得るポリマーである。バインダーポリマー(B)の構造としては特に限定されないが、例えば、ポリマー(B1)と樹脂(B2)とからなる線状高分子、枝分かれ高分子、櫛形高分子、星型高分子及びそれらの組み合わせからなるポリマーが挙げられる。好ましくは線状高分子、さらに好ましくはバインダーポリマー(B)の末端が樹脂(B2)が反応して製造され得る構造である線状高分子である。バインダーポリマー(B)が線状高分子であると、バインダーポリマー(B)が有機溶剤に溶解しやすいためにプリント配線板用層間絶縁フィルムの製造が容易であり、末端が樹脂(B2)が反応して製造され得る構造であると、バインダーポリマー(B)の分散性が優れるため、プリント配線板用層間絶縁フィルムに適用した場合、表面の凹凸が微小な粗化面を形成することができる。
【0060】
バインダーポリマー(B)が、ポリマー(B1)と樹脂(B2)との反応で製造される場合、ポリマー(B1)と樹脂(B2)との反応比[樹脂(B2)の分子数]/[ポリマー(B1)全分子に含まれる活性水素含有官能基(y)の個数]は、1.0〜100が好ましく、さらに好ましくは1.2〜75、特に好ましくは1.5〜50である。この範囲であると、バインダーポリマー(B)のエポキシ樹脂組成物への分散性がさらに優れる上に、有機溶剤への溶解性が優れるためワニスの製造がさらに容易となる。
【0061】
バインダーポリマー(B)の重量平均分子量は5,100〜1,000,000が好ましく、さらに好ましくは8,000〜500,000、特に好ましくは10,000〜100,000である。この範囲であるとバインダーポリマー(B)のエポキシ樹脂組成物中での分散性がさらに優れる。
【0062】
本発明において、エポキシ樹脂(C)のSP値と樹脂(A2)若しくは樹脂(B2)のSP値との差(ΔSPC)又は硬化剤(D)のSP値と樹脂(A2)若しくは樹脂(B2)のSP値との差(ΔSPD)が2.0(cal/cm31/2以下であるとエポキシ樹脂組成物中へのバインダーポリマーの分散性が優れるため好ましい。さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下、次に好ましくは0.5以下、その次に好ましくは0.2以下、最も好ましくは0.0である。この範囲であると、バインダーポリマーのエポキシ樹脂組成物中への分散性が優れるために、エポキシ樹脂組成物をプリント配線板用層間絶縁フィルムとして適用した場合に粗化後の凹凸が小さくなり精密な導体配線パターンを形成できるため好ましい。
そして、ΔSPC及びΔSPDが2.0(cal/cm31/2以下であると、さらに分散性が優れるため好ましい。
なお、ΔSPC又はΔSPDは、SP値の大きいものから小さいものを引いて求めるため、0.0以上の数値である。
本発明において、SP値は、Fedorsの方法[R.T.Fedors,Polymer Engineering and Science,14,147(1974)]に基づいて計算する。
【0063】
バインダーポリマー(A)が官能基(x)を有する場合、官能基(x)はポリマー(A1)が有する官能基(x)のうち、樹脂(A2)と反応しなかった未反応の官能基(x)からなる。同様に、バインダーポリマー(A)が活性水素含有官能基(y)を有する場合、活性水素含有官能基(y)は、樹脂(A2)が有する活性水素含有官能基(y)のうち、ポリマー(A1)と反応しなかった未反応の官能基(y)からなる。
【0064】
バインダーポリマー(B)が官能基(x)を有する場合、官能基(x)は樹脂(B2)が有する官能基(x)のうち、ポリマー(B1)と反応しなかった未反応の官能基(x)からなる。同様に、バインダーポリマー(B)が活性水素含有官能基(y)を有する場合、活性水素含有官能基(y)は、ポリマー(B1)が有する活性水素含有官能基(y)のうち、樹脂(B2)と反応しなかった未反応の活性水素含有官能基(y)からなる。
【0065】
したがって、バインダーポリマー(A)又はバインダーポリマー(B)が有する官能基(x)としては、ポリマー(A1)及び樹脂(B2)と同じものが含まれる。官能基(x)としては、製造の容易さ及び硬化剤(D)との反応性等の観点から、エポキシ基、カルボキシ基、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基及びイソシアナト基が好ましく、さらに好ましくはエポキシ基、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基及びイソシアナト基、特に好ましくはエポキシ基である。
同様に、バインダーポリマー(A)又はバインダーポリマー(B)が有する活性水素含有官能基(y)としては、樹脂(A2)及びポリマー(B1)と同じものが例示できる。活性水素含有官能基(y)としては、製造の容易さ及びエポキシ樹脂(C)との反応性の観点等から、アミノ基及び水酸基が好ましく、さらに好ましくは水酸基、特に好ましくはフェノール性水酸基である。
【0066】
バインダーポリマー(A)又はバインダーポリマー(B)中の、官能基(x)又は活性水素含有官能基(y)の平均個数は、バインダーポリマー1分子あたり1〜200が好ましく、さらに好ましくは2〜100、特に好ましくは3〜50である。この範囲であると、バインダーポリマーがさらに優れた分散性を有し、精密な導体配線パターンを形成できる。
【0067】
バインダーポリマー(A)又はバインダーポリマー(B)の含有量(重量%)は、エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)の合計重量に基づいて、5〜50が好ましく、さらに好ましくは7〜40、特に好ましくは10〜30である。この範囲であるとプリント配線板用層間絶縁フィルムに用いた場合にフィルムの強度がさらに強くなる上に、エポキシ樹脂組成物のプリント配線板用層間絶縁フィルムの基板への密着性がさらに優れる。
【0068】
バインダーポリマー(A)又はバインダーポリマー(B)は有機溶剤に可溶であることが好ましい。有機溶剤に可溶であると、バインダーポリマー(A)又はバインダーポリマー(B)と、エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)を含むエポキシ樹脂組成物を有機溶剤に溶解させることができ、バインダーポリマーがさらに均一にエポキシ樹脂組成物中に分散する傾向がある。
【0069】
エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)としては、エポキシ樹脂及び硬化剤として通常使用される公知のもの(例えば、「実用プラスチック辞典」、株式会社産業調査会、1993年5月1日発行、211〜225頁に記載のもの)が使用できる。
エポキシ樹脂(C)としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシド(C1)、グリシジルエステル型エポキシド(C2)、グリシジルアミン型エポキシド(C3)及び脂環型エポキシド(C4)等が挙げられる。
【0070】
グリシジルエーテル型エポキシド(C1)としては、フェノールのグリシジルエーテル及びアルコールのグリシジルエーテル等が挙げられる。
フェノールのグリシジルエーテルとしては、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(SP値:10.8)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(SP値:10.4)、ビスフェノールSジグリシジルエーテル(SP値:13.0)、ジヒドロキシナフチルクレゾールトリグリシジルエーテル(SP値:11.5)、トリス(ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル(SP値:11.1)、フェノールノボラックグリシジルエーテル(SP値:11.6)及びクレゾールノボラックグリシジルエーテル(SP値:11.3)等が挙げられる。
【0071】
アルコールのグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル(SP値:9.6)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(SP値:9.5)、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(SP値:9.4)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(SP値:9.3)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(SP値:9.9)、グリセリントリグリシジルエーテル(SP値:9.9)及びペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(SP値:11.2)等が挙げられる。
【0072】
グリシジルエステル型エポキシド(C2)としては、グリシジルメタクリレート(SP値:9.8)、フタル酸ジグリシジルエステル(SP値:11.6)、イソフタル酸ジグリシジルエステル(SP値:11.6)、テレフタル酸ジグリシジルエステル(SP値:11.6)及びトリメリット酸トリグリシジルエステル(SP値:11.9)等が挙げられる。
【0073】
グリシジルアミン型エポキシド(C3)としては、N,N−ジグリシジルアニリン(SP値:10.4)、N,N−ジグリシジルトルイジン(SP値:10.6)、N,N,N´,N´−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(SP値:10.9)、N,N,N´,N´−テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン(SP値:12.5)及びN,N,N´,N´−テトラグリシジルジエチルジフェニルメタン(SP値:10.6)等が挙げられる。
【0074】
脂環型エポキシド(C4)としては、ビニルシクロヘキセンジオキシド(SP値:9.7)、リモネンジオキシド(SP値:9.2)、ジシクロペンタジエンジオキシド(SP値:10.5)、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル(SP値:10.1)、3´,4´−エポキシ−6´−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシメチルシクロヘキサンカルボネート(SP値:9.9)等が挙げられる。
【0075】
これらのエポキシ樹脂(C)のうち、価格及び耐熱性等の観点からグリシジルエーテル型エポキシド(C1)、グリシジルエステル型エポキシド(C2)及びグリシジルアミン型エポキシド(C3)が好ましく、より好ましくはグリシジルエーテル型エポキシド(C1)及びグリシジルエステル型エポキシド(C2)である。これらのエポキシ樹脂としては、これらを単独で使用してもよいし、これらから選ばれる二種以上を混合して使用してもよい。
【0076】
エポキシ樹脂(C)のエポキシ基の個数は、1分子あたり平均で少なくとも2個であり、好ましくは2〜500個、より好ましくは3〜300個、特に好ましくは4〜100個である。エポキシ基の個数が2個以上であるとエポキシ樹脂組成物の耐熱衝撃性等がさらに良好となる。なお、エポキシ基の数は、エポキシ当量と重量平均分子量とから計算する値である。
エポキシ樹脂(C)の重量平均分子量は、耐熱衝撃性等の観点から、300〜10,000が好ましく、より好ましくは400〜9,000、特に好ましくは500〜5,000以下である。
このようなエポキシ樹脂(C)は市販品がそのまま使用でき、例えば「エピコ−ト 154」(フェノールノボラックエポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、Mw650、エポキシ当量 176、SP値11.6)が挙げられる。
【0077】
硬化剤(D)としては、例えば、カルボン酸(D1)、酸無水物(D2)、アミン化合物(D3)及びフェノール化合物(D4)等が使用できる。
カルボン酸(D1)としては、フタル酸(SP値:13.8)、テレフタル酸(SP値:13.8)、トリメリット酸(SP値:15.2)、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸(SP値:12.1)及びシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸(SP値:12.1)等が挙げられる。
【0078】
酸無水物(D2)としては、無水フタル酸(SP値:12.4)、無水マレイン酸(SP値:11.5)及び4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物(SP値:10.3)等が挙げられる。
【0079】
アミン化合物(D3)としては、芳香族アミン化合物及び脂肪族アミン化合物が含まれる。
芳香族アミン化合物としては、1,3−フェニレンジアミン(SP値:12.3)、1,4−フェニレンジアミン(SP値:12.3)及び4,4´−ジフェニルメタンジアミン(SP値:11.9)等が挙げられる。
脂肪族アミン化合物としては、エチレンジアミン(SP値:10.9)、プロピレンジアミン(SP値:10.5)、テトラメチレンジアミン(SP値:10.2)、ジエチレントリアミン(SP値:10.9)及びメチルイミノビスプロピルアミン(SP値:9.8)等が挙げられる。
【0080】
フェノール化合物(D4)としては、クレゾールノボラック樹脂(重量平均分子量:320〜32,000,SP値:15.2)、フェノールノボラック樹脂(重量平均分子量:360〜36,000,SP値:16.4)、ナフチルクレゾール(SP値:19.0)、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン(SP値:15.6)、ジナフチルトリオール(SP値: )、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(SP値:15.7)及び4,4´−オキシビス(1,4−フェニルエチル)テトラクレゾール(SP値:20.1)等が挙げられる。
【0081】
これらの硬化剤(D)のうち、耐薬品性及び電気絶縁性の観点から、フェノール化合物(D4)が好ましい。硬化剤(D)は、単独で使用してもよいが、二種以上を併用してもよい。硬化剤(D)は市販品がそのまま使用でき、例えば、フェノール化合物(D4)として「レヂトップ PSM4326」(フェノールノボラック樹脂、群栄化学工業株式会社製、Mw850、水酸基価105、SP値16.4)等が挙げられる。
【0082】
バインダーポリマー(A)若しくはバインダーポリマー(B)及びエポキシ樹脂(C)に含まれるエポキシ基の合計モル数(ME)と、バインダーポリマー(A)若しくはバインダーポリマー(B)及び硬化剤(D)に含まれるエポキシ基と反応する官能基(アミノ基、フェノール性水酸基、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基及びカルボキシ基)の合計モル数(MH)との比(MH/ME)は、0.5〜1.5が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.3、特に好ましくは0.8〜1.2である。この範囲であるとエポキシ樹脂組成物の硬化物のTgが高くなり、プリント配線板用層間絶縁フィルムとして使用した場合にさらに高い強度を得ることができる。
【0083】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、バインダーポリマー、エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)以外に、さらに必要により他の添加剤を含有させることができる。
他の添加剤としては、硬化促進剤、フィラー、難燃剤及びレベリング剤等が挙げられる。他の添加剤を含有する場合、単独で使用してもよいし、複数の添加剤を併用してもよい。
【0084】
硬化促進剤としては、イミダゾール、第3級アミン及びこれらの塩が使用できる。
イミダゾールとしては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール及び1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等が挙げられる。
第3級アミンとしては、ベンジルメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノ)フェノール、トリエチルアミン及び1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン等が挙げられる。
これらの塩としては、有機酸(炭素数1〜30の脂肪酸等)塩及び無機酸(塩酸及び硫酸等)塩等が挙げられる。好ましくは有機酸塩であり、さらに好ましくは炭素数1〜30の脂肪酸塩、特に好ましくは2−エチルヘキサン酸塩である。
【0085】
硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量(重量%)は、バインダーポリマー、エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)の合計重量に基づいて、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.3〜7、特に好ましくは0.5〜5である。
【0086】
フィラーとしては、有機フィラー及び無機フィラー等が使用できる。
有機フィラーとしては、ナイロンパウダー、フッ素樹脂パウダー及びポリエーテルスルフォンパウダー等が挙げられる。
無機フィラーとしては、無機酸化物及び無機塩等が挙げられる。
無機酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素及び酸化アルミニウム等が挙げられる。
無機塩としては、例えば、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等が挙げられる。
これらの中で、電気特性(湿熱信頼性・誘電特性)、耐熱性及び耐薬品性等の観点から、無機フィラーが好ましく、さらに好ましくは無機酸化物、特に好ましくは酸化ケイ素及び酸化チタン、最も好ましくは酸化ケイ素である。
【0087】
フィラーの平均粒子径(μm)は、0.05〜30が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.2〜5である。この範囲であると、エポキシ樹脂組成物の塗工性がさらによくなり、プリント配線板用層間絶縁フィルムの表面平滑性がさらに優れる。
【0088】
フィラーの平均粒子径は、JIS Z8825−1:2001に準拠したレーザー回折法で測定することができる。測定装置としてはLA−700(株式会社堀場製作所製)、セルとしてはバッチセル、溶媒としてはメチルエチルケトンを使用し、透過率70〜90%の範囲で測定する。なお、屈折率設定はフィラーの種類により適宜決定するが、例えば酸化ケイ素(シリカ)の場合には1.1を用いて測定する。
【0089】
フィラーを含有する場合、フィラーの含有量(重量%)は、バインダーポリマー、エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)の合計重量に基づいて、5〜70が好ましく、さらに好ましくは10〜60、特に好ましくは15〜50である。この範囲であるとフィルムの製造がさらに容易となる上に、粗化面の形成性がさらに優れる。
【0090】
難燃剤としては、リン含有難燃剤及びハロゲン含有難燃剤等が使用できる。
リン含有難燃剤としては、トリアルキル(アルキル基の炭素数1〜12)ホスフェート(トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート及びトリブトキシホスフェート等)及びトリアリールホスフェート(トリフェニルホスフェート等)等が挙げられる。
ハロゲン含有難燃剤としては、ヘキサクロロペンタジエン、ヘキサブロモジフェニル、オクタブロモジフェニルオキシド、トリブロモフェノキシメタン、デカブロモジフェニル、デカブロモジフェニルオキシド、テトラブルモフタルイミド、ヘキサブロモブテン及びヘキサブロモシクロドデカン等が挙げられる。
難燃剤を含有する場合、難燃剤の含有量(重量%)は、十分な難燃性を発現させる観点等から、バインダーポリマー、エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)の合計重量に基づいて、0.5〜30が好ましく、さらに好ましくは1〜15、特に好ましくは2〜10である。
【0091】
レベリング剤としては、シリコーンレベリング剤、ポリエーテルレベリング剤及びアルコールレベリング剤等が使用できる。
シリコーンレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル及びフルオロシリコーンオイル等が挙げられる。
ポリエーテルレベリング剤としては、数平均重合度3〜250のポリエチレングリコール及び数平均重合度3〜250のポリプロピレングリコール等が挙げられる。
アルコールレベリング剤としては、メチルアルコール、オクチルアルコール及びヘキサデシルアルコール等が挙げられる。
レベリング剤を含有する場合、レベリング剤の含有量は、バインダーポリマー、エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)の合計重量に基づいて、0.01〜10が好ましく、さらに好ましくは0.1〜7、特に好ましくは0.5〜5である。
【0092】
本発明において、エポキシ樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散したものをワニスという。
ワニスが含有する有機溶剤としては、エポキシ樹脂組成物を溶解又は分散することができるものであれば特に限定されない。
有機溶剤としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、ジオキサン、ベンゼン、エタノール、シクロヘキサノン、メタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン及びキシレン等が使用できる。
これらの有機溶剤のうち、好ましくは常圧(1.013×105Pa)での沸点が50〜200℃のもの、さらに好ましくは沸点が70〜160℃のものである。このようなものとしては、酢酸エチル、ジオキサン、ベンゼン、メチルエチルケトン、トルエン及びシクロヘキサノン等が挙げられる。さらに安全性(毒性及び引火性等)等を考慮すれば、メチルエチルケトン、トルエン及びシクロヘキサノン等が特に好ましい。
沸点がこの範囲であるとワニスに含まれる有機溶剤の揮発性が適度となり、ワニスをフィルム化した場合に工程途中で最適な塗工条件が変わらず、乾燥も充分に速く進み作業効率がよい。これらの溶剤は、単独又は2種類以上組み合わせで使用してもよい。
【0093】
本発明のプリント配線板用層間絶縁フィルムはベースフィルム上にエポキシ樹脂組成物が積層されてなる。
ベースフィルムとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、及びポリカーボネート等が挙げられる。ベースフィルムの厚さは10〜150μmが好ましい。ベースフィルムの幅は、フィルム塗工装置及びフィルム圧着装置等のフィルムを使用する装置に入るものであれば、特に限定はないが30〜300cmが好ましい。
なお、ベースフィルムにはマット処理、コロナ処理及び離型処理等の少なくとも一種の処理が施してあってもよい。エポキシ樹脂組成物はラミネート時に樹脂組成物のしみ出しが生じる場合があるため、ベースフィルムの両端部又は片端部に樹脂組成物を塗布しない部分を5mm以上設けることが好ましい。このようにすると、ラミネート時のラミネート装置への樹脂付着防止及びラミネート後のベースフィルムの剥離が容易になる等の利点がある。
ベースフィルムの厚さが、{導体厚+(0〜40)}μmであると、さらに好ましい。この範囲であると、ラミネート後のエポキシ樹脂組成物の表面平滑性が優れる上に、回路パターン環にボイドなく樹脂を埋め込むことができる。
なお、導体厚とは配線パターンに使用される導体の厚さ(μm)であり、好ましくは2〜80、さらに好ましくは3〜70、特に好ましくは5〜50である。この範囲であると、プリント配線板を薄くできるとともに、回路の信頼性が優れる。
導体としては、銅及び金等が挙げられる。
【0094】
プリント配線板用層間絶縁フィルムを構成するエポキシ樹脂組成物層の厚さはラミネートする導体厚以上である。導体よりも薄いと、導体間に充分に樹脂を充填することができず絶縁不良となる場合がある。導体厚以上であれば特に厚さに限定は無く、内層回路パターン、板厚、スルーホール径、表面ビアホール径及び穴(スルーホール及びビアホール)の数により異なるが、{導体厚+(10〜120)}μmの範囲が好ましい。
このような観点から、エポキシ樹脂組成物層の厚さ(μm)は12〜200が好ましく、さらに好ましくは13〜190、特に好ましくは15〜170である。この範囲であると、プリント配線板を薄くできるとともに、導体間へのエポキシ樹脂組成物の充填性がさらに優れる。
このようにして得られるエポキシ樹脂組成物及びベースフィルムからなる本発明のプリント配線板用層間絶縁フィルムは、そのままで、又はエポキシ樹脂組成物層に保護フィルムをさらに積層(フィルムの構成としては、ベースフィルム−エポキシ樹脂組成物層−保護フィルムの順に積層される)した後で、ロール上に巻き取って貯蔵することが好ましい。
保護フィルムとしては、ベースフィルムと同じものが使用できるが、特に離型性が要求される場合は、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリ塩化ビニル及びポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)及び離型紙等が好ましい。保護フィルムの厚みとしては5〜100μmが好ましい。なお保護フィルムにはマット処理、エンボス加工の他、離型処理を施してあってもよい。
【0095】
本発明の、プリント配線板用層間絶縁フィルムの含有溶剤量(重量%)は、プリント配線板用層間絶縁フィルムのハンドリング性等の観点から、プリント配線板用層間絶縁フィルムの重量に基づいて、0.1〜5.0が好ましく、より好ましくは0.2〜4.0、特に好ましくは0.3〜3.0である。この範囲であると、樹脂が硬化する際にボイド等が発生しにくく、プリント配線板用層間絶縁フィルムのハンドリング性が良好である(フィルムが割れにくい)。
【0096】
含有溶剤量は、以下の方法で測定する。
プリント配線板用層間絶縁フィルム(硬化前)をベースフィルムと共に10cm×10cmに切り抜いて測定サンプルとし、この重量(W1)を測定する。別途作成した10cm×10cmのベースフィルムの重量(W2)を測定する。この測定サンプル及びベースフィルムを130℃の循風乾燥機(PH−210、エスペック株式会社製)にて10分間乾燥させる。乾燥後の測定サンプルの重量(W3)及びベースフィルムの重量(W4)を測定し、次式から算出した値を求める。5回の測定の平均値を含有溶剤量とする。
[1−(W3−W4)/(W1−W2)]×100 [%]
なお、この測定法において、プリント配線板用層間絶縁フィルムのエポキシ樹脂組成物の厚さは、10〜200μmであるのが好ましい。この範囲内であれば、上記乾燥条件で充分に乾燥でき、測定誤差が少ない。厚さが200μmを越える場合、乾燥時間を測定サンプルの重量変化が無くなるまで長くすることができる。
【0097】
本発明のプリント配線板に使用できる基板は特に限定されない。基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板及びポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。
【0098】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物の製造方法について説明する。
バインダーポリマー(A)は、ポリマー(A1)と樹脂(A2)とを反応(付加反応、重付加反応又は縮合反応等)させることで製造することができる。例えば、ポリマー(A1)及び樹脂(A2)を有機溶剤に溶解し、反応装置内で反応温度100〜130℃で撹拌混合しながら反応させる方法である。
有機溶剤としては、ポリマー(A1)及び樹脂(A2)が溶解するものであれば特に限定されないが、前記のワニスに含有する有機溶剤として例示したものが好ましく使用できる。
反応装置には特に限定がなく、撹拌機を備え、かつ100〜130℃に反応溶液を温度制御できる装置であればよい。
同様に、バインダーポリマー(B)は、ポリマー(A1)及び樹脂(A2)に代えて、ポリマー(B1)及び樹脂(B2)とを反応(付加反応、重付加反応又は縮合反応等)させることで製造することができる。有機溶剤としては、ポリマー(B1)及び樹脂(B2)が溶解するものであれば特に限定されない。
【0099】
これらの反応には、反応触媒(CA)を用いてもよい。
反応触媒(CA)としては、酸触媒及び塩基触媒等が使用できる。
酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、トリフルオロ酢酸及びp−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
塩基触媒としては、アンモニア及び有機アミン等が挙げられる。
有機アミンとしては、イミダゾール及び第3級アミンが挙げられる。
これらのうち、反応性の観点等からは塩基触媒が好ましい。さらに好ましくは有機アミン、特に好ましくはイミダゾール及び第3級アミンである。
【0100】
イミダゾールとしては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール及び1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0101】
第3級アミンとしては、ベンジルメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール、トリエチルアミン及び1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン等が挙げられる。
反応触媒(CA)を使用する場合、反応触媒(CA)の使用量は活性水素含有官能基と反応し得る官能基(x)及び活性水素含有官能基(y)の種類及びそれらの数により調整することができる。反応性等の観点から、活性水素含有官能基と反応し得る官能基(x)のモル数に対して、0.01〜10モル%が好ましい。
【0102】
エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)は、製造しても良いが、市販品をそのまま使用することができる。製造法は公知であり、例えば、エポキシ樹脂(C)は、「実用プラスチック辞典」、株式会社産業調査会、1993年5月1日発行、211〜215頁に記載されている方法で製造できる。
【0103】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、バインダーポリマー、エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)と、必要によりその他の前記添加剤を混合装置により均一混合すること等により得られる。
均一混合する際の温度(℃)としては、0〜150が好ましく、さらに好ましくは10〜130、特に好ましくは20〜110、最も好ましくは30〜100である。この範囲であると、混合性がさらに優れる。
混合装置としては、混練機及び撹拌装置等が使用できる。混合物が高粘度となる場合(樹脂を有機溶剤に溶解せずに混合する場合等)には混練機が好ましく、混合物が低粘度となる場合(樹脂を有機溶剤に溶解した後混合する場合等)には、撹拌装置が好ましい。
混練機としては、プラネタリーミキサー、ビーズミル、3本ロール及び2本ロール等が使用できる。
撹拌装置としては、ナウターミキサー、リボンミキサー、コニカルブレンダー、モルタルミキサー、万能混合ミキサー、ヘンシェルミキサー等が使用できる。
混合時間としては、例えば、エポキシ樹脂組成物が均一に混ざるまでの時間であり、使用する混合装置等により適宜決定する。エポキシ樹脂組成物が凝集物等の粗大粒子を含む場合は、必要により、濾過等により粗大粒子を除去することができる。
【0104】
本発明のエポキシ樹脂組成物を含有するワニスは、本発明のエポキシ樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散することによって製造することができる。
エポキシ樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散させる方法としては、特に限定されないが、有機溶剤中にエポキシ樹脂組成物を投入し撹拌混合する方法、エポキシ樹脂組成物に有機溶剤を添加して撹拌混合する方法等が挙げられる。
均一に溶解又は分散する際の温度(℃)としては、0〜150が好ましく、さらに好ましくは10〜130、特に好ましくは20〜110、最も好ましくは30〜100である。
溶解又は分散する装置としては、撹拌混合できる装置であればよく、前記の撹拌装置等が使用できる。
撹拌混合時間としては、エポキシ樹脂組成物が均一に分散又は溶解する時間であればよく、適宜決定する。ワニスは、必要により、濾過により粗大粒子を除去してもよい。
【0105】
本発明のプリント配線板用層間絶縁フィルムはベースフィルムを支持体としてエポキシ樹脂組成物のワニスをカーテンコート、ロールコート、スプレーコート又はスクリーン印刷等により塗布した後、加熱により溶剤を乾燥させて常温で固体とする方法等により製造できる。
加熱方法としては、ヒーター加熱及び空気加熱等の通常プリント配線板用層間絶縁フィルムの製造に用いられる方法が適用できる。乾燥条件は使用する溶剤により異なるが50〜150℃で2〜30分の範囲で実施するのが生産性の観点等から好ましい。
【0106】
本発明のプリント配線板用層間絶縁フィルムをパターン加工された内層回路基板にラミネートする方法としては、ベースフィルム側から加圧及び加熱の少なくとも一方を行いつつラミネートする方法等が挙げられる。
保護フィルムがある場合、ラミネートする前に保護フィルムを剥離することが好ましい。
ラミネートは圧着時に空気がかみこまないように減圧条件下で行うことが好ましい。ラミネートの方式はバッチ式又は連続式(ロール式等)の何れでもよい。
ラミネート条件は、圧着温度が70〜130℃、圧着圧力が0.01〜10MPa、及び2.5kPa以下の気圧に減圧して積層することが好ましい。
ラミネートした後、ベースフィルムは必要により剥離する。絶縁性の観点等からは、剥離するのが好ましい。
【0107】
本発明のプリント配線板は、プリント配線板用層間絶縁フィルムを内層回路上にラミネートした後、エポキシ樹脂組成物を熱硬化させ、必要によりスルーホール部及びビアホール部の少なくとも一方にレーザー又はドリル等により穴あけを行った後、エポキシ樹脂組成物硬化物表面を湿式粗化法により粗化し、乾式メッキ法及び湿式メッキ法の少なくとも一方の方法により導体を形成して製造することができる。粗化した後、必要により形成した導体とは逆パターンのメッキレジストを形成し、湿式メッキ(例えば無電解メッキ)で導体を形成することもできる。
【0108】
プリント配線板用層間絶縁フィルムのエポキシ樹脂組成物の熱硬化条件は、生産性の観点等から、130〜200℃で10〜120分が好ましい。
【0109】
エポキシ樹脂組成物硬化物表面の湿式粗化法としては過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素、硫酸、及び硝酸等の酸化剤による酸化処理法が挙げられる。これらの酸化剤は、過酸化水素と硫酸との混合物のように、必要により混合したものを使用することもできる。
エポキシ樹脂組成物硬化物表面を粗化することで、エポキシ樹脂組成物硬化物表面に凹凸のアンカーを形成できるため、導体とエポキシ樹脂組成物硬化物との密着性が向上する。凹凸が大きすぎると導体配線パターンの形成時にパターンの欠陥が発生するが、本発明のエポキシ樹脂組成物は樹脂表面の凹凸が微細となるため、微細で欠陥の少ない良好な導体配線パターンを形成することができる。
【0110】
乾式メッキ法としては、蒸着、スパッタリング及びイオンプレーティング等の方法が挙げられる。
湿式メッキ法としては、無電解メッキ及び電解メッキ等の方法が挙げられる。
導体が形成された後、導体を熱処理(アニール処理)(好ましい条件は130〜200℃で10〜90分)を行うことにより、熱硬化性樹脂の硬化が進行し導体とエポキシ樹脂組成物硬化物との密着性をさらに向上させることができる。
【0111】
本発明のプリント配線板用層間絶縁フィルムは、基板へのプリント配線板用層間絶縁フィルムのラミネートから導体の形成に至る工程を複数回繰り返し(ビルドアップし)、ビルドアップ層を多段に積層し多層プリント配線板を製造することができる。
【実施例】
【0112】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に注記しない場合は、部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0113】
<製造例1>
窒素置換した反応容器内にポリマー(A11){エピコート E1256(ビスフェノノールA型フェノキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン株式会社製、Mw50,000、エポキシ当量7800}30部、樹脂(A21){PSM4326(フェノールノボラック樹脂)、群栄化学工業株式会社製、Mw850、水酸基価105、SP値16.4 }30部、及びシクロヘキサノン70部を入れ、撹拌混合して均一化した後に、触媒{SA−102(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7の2−エチルヘキサン酸塩)、サンアプロ株式会社製}1部を添加し、120℃で撹拌しながら12時間反応させた。この反応物の溶液をメタノール300部に投入し不溶分を遠心分離により回収した。この不溶分を70℃で真空乾燥しバインダーポリマー(BP1){ポリマー(A11)と樹脂(A21)との反応比=9.2}を得た。このバインダーポリマー(BP1)のエポキシ当量は390,000、Mwは60,000であった。
【0114】
実施例において、エポキシ当量はJIS K7236:2001の方法に基づいて、指示薬法で測定した。
水酸基価はJIS K0070:1992 7.3に記載のピリジン−塩化アセチル法により測定した。
重量平均分子量(Mw)は、次の条件により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した。
装置:HLC−802A(東ソー株式会社)
カラム:TSK gel GMH6×2本(東ソー株式会社)を直列に結合したカラム
カラム温度:40℃
展開溶媒:THF(試薬特級)
試料濃度:0.25重量%
注入量:10μl
流速:1.0(ml/min)
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:標準ポリスチレン(分子量842万、448万、289万、109万、35.5万、19万、9.64万、3.79万、1.96万、9.1千、2.98千、870、500)
【0115】
<製造例2>
ポリマー(A11)30部に替えて、ポリマー(A12){エピコートE1010(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン株式会社製、Mw9,000、エポキシ当量3,700}30部を使用した以外は、製造例1と同様にしてバインダーポリマー(BP2){ポリマー(A12)と樹脂(A21)との反応比=4.3}を得た。このバインダーポリマー(BP2)のエポキシ当量は45,000、Mwは10,000であった。
【0116】
<製造例3>
ポリマー(A11)30部に替えて、ポリマー(B11){製造例1の樹脂(A21)30部をビスフェノールA5部に変更した以外は同様にして製造したフェノール性水酸基末端のビスフェノールA型フェノキシ樹脂、Mw65,000}30部を使用し、さらに樹脂(A21)30部に替えて、樹脂(B21){エピコート−154(フェノールノボラックエポキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン株式会社製、Mw650、エポキシ当量 176、SP値11.6}30部を使用した以外は、製造例1と同様にしてバインダーポリマー(BP3){ポリマー(B11)と樹脂(B21)との反応比=12}を得た。このバインダーポリマー(BP3)のエポキシ当量は13,000、Mwは80,000であった。
【0117】
<製造例4>
ポリマー(A11)30部に替えて、ポリマー(A13){特開2004−277734号公報記載の製造例1のグリシジルメタクリレート20部を5部に変更し、スチレン20部を35部に変更した以外は同様にして製造したアクリル樹脂、Mw33,000、エポキシ当量1,200}30部を使用した以外は、製造例1と同様にしてバインダーポリマー(BP4){ポリマー(A13)と樹脂(A21)との反応比=2.8}を得た。このバインダーポリマー(C4)のエポキシ当量は4,5000、Mwは65,000であった。
【0118】
<実施例1>
プラネタリーミキサーに製造例1で得られたバインダーポリマー(BP1)15部、エポキシ樹脂(C){エピコート−154(フェノールノボラックエポキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン株式会社製、Mw650、エポキシ当量 176、SP値11.6}35部、硬化剤(D1)(PSM−4326)20部、「SA−102」0.1部を入れ、さらにメチルエチルケトン40部を添加して25〜35℃で1時間混合して本発明のエポキシ樹脂組成物(1)(ΔSPC=4.8、ΔSPD=0.0)のワニスを得た。
このワニスを厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに塗工速度0.3m/分で乾燥後のエポキシ樹脂組成物の厚みが40μmとなるようにロールコーター(株式会社ヒラノテクシード製)にて全面塗布した後、ロールコーターと一体型の乾燥炉で、90℃で4分間乾燥することによりエポキシ樹脂組成物(1)層がポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された本発明のプリント配線板用層間絶縁フィルム(F1)(含有溶剤量2.1%、エポキシ樹脂組成物の厚さ40μm)を得た。
【0119】
ガラスエポキシ基板に、プリント配線板用層間絶縁フィルム(F1)を真空ラミネーター(スライド式真空ヒータープレスMKP−400TV−WH−ST、ミカドテクノス株式会社)により温度90℃、プレス圧力0.1MPa、プレス時間60秒、及び気圧0.2kPaの条件でラミネートした。25℃になるまで冷却した後にPETフィルムを剥離し、循風乾燥機(PH−210、エスペック株式会社製)内で150℃で20分間硬化させた。
ついで過マンガン酸塩からなるアルカリ性酸化剤(「Concentrate Compact CP」、アトテック株式会社製)でエポキシ樹脂組成物硬化物の表面を80℃で15分間粗化処理(ただし、ここでの粗化時間は銅メッキ後の剥離強度が0.8kN/m以上となるように調整する。)した後、基板全面に無電解メッキ及び電解メッキにより導体を形成した。さらに、導体の密着性を安定させるために170℃で60分アニール処理を行い基板(Z1)を得た。
【0120】
なお、銅メッキ後の剥離強度は、以下の方法により測定した。
粗化処理後、基板にパラジウム触媒(商品名:Neo ganth834、アトテック株式会社製)を浸漬付与してパラジウム触媒を活性化した後、無電解メッキ液(硫酸銅12g/L、ホルムアルデヒド7.5g/L)中で32℃で20分間浸漬し、メッキ膜の厚さ2μmの無電解メッキ層を形成した。その後、さらに、硫酸銅電解メッキ浴中で厚さ32μmの電解メッキを施した。このように作成した基板について、基板と導体(銅メッキ膜)との密着性を、JIS C6481−1996「5.7引きはがし強さ」に記載された方法で測定した。
【0121】
<実施例2>
硬化剤(D1)20部の替わりに硬化剤(D2){フェノライト VH−4170(ビスフェノールA型フェノール樹脂)、大日本インキ化学工業株式会社 、Mw750、水酸基価118、SP値14.9}22部を使用した以外は実施例1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物(2)(ΔSPC=4.8、ΔSPD=1.5)層がポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された本発明のプリント配線板用層間絶縁フィルム(F2)(含有溶剤量2.1%、エポキシ樹脂組成物の厚さ40μm)及び基板(Z2)を得た。基板(Z2)を得る際の粗化時間は15分であった。
【0122】
<実施例3>
ワニスの製造において、「SA−102」0.1部を0.2部にし、バインダーポリマー(BP1)15部、エポキシ樹脂(C)35部及び硬化剤(D1)20部に加えて、さらにフィラー{アドマファインSO−C3(シリカ、平均粒子径0.8μm、アドマテックス株式会社製)}30部を使用した以外は、実施例1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物(3)(ΔSPC=4.8、ΔSPD=0.0)層がポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された本発明のプリント配線板用層間絶縁フィルム(F3)(含有溶剤量2.3%、エポキシ樹脂組成物の厚さ40μm)及び基板(Z3)を得た。基板(Z3)を得る際の粗化時間は10分であった。
【0123】
なお、シリカの平均粒子径は、以下の条件で測定した。
測定装置:LA−700(株式会社堀場製作所製)
セル:バッチセル
溶媒:メチルエチルケトン(試薬1級)
透過率:70〜90%
屈折率設定:1.1
【0124】
<実施例4>
バインダーポリマー(BP1)15部の替わりにバインダーポリマー(BP2)15部を使用し、硬化剤(D1)20部の替わりに硬化剤(D2)22部を使用した以外は実施例1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物(4)(ΔSPC=4.8、ΔSPD=1.5)層がポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された本発明のプリント配線板用層間絶縁フィルム(F4)(含有溶剤量2.2%、エポキシ樹脂組成物の厚さ40μm)及び基板(Z4)を得た。基板(Z4)を得る際の粗化時間は20分であった。
【0125】
<実施例5>
バインダーポリマー(BP1)15部の替わりにバインダーポリマー(BP3)15部を使用した以外は実施例1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物(5)(ΔSPC=0.0、ΔSPD=4.8)層がポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された本発明のプリント配線板用層間絶縁フィルム(F5)(含有溶剤量2.4%、エポキシ樹脂組成物の厚さ40μm)及び基板(Z5)を得た。基板(Z5)を得る際の粗化時間は15分であった。
【0126】
<実施例6>
バインダーポリマー(BP1)15部の替わりにバインダーポリマー(BP4)10部を使用し、硬化剤(D1)20部の替わりに硬化剤(D2)22部を使用した以外は実施例1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物(2)(ΔSPC=4.8、ΔSPD=1.5)層がポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された本発明のプリント配線板用層間絶縁フィルム(F6)(含有溶剤量2.4%、エポキシ樹脂組成物の厚さ40μm)及び基板(Z6)を得た。基板(Z6)を得る際の粗化時間は15分であった。
【0127】
<比較例1>
バインダーポリマー(BP1)15部の替わりにポリマー(A11)15部を使用した以外は実施例1と同様にして、比較用のエポキシ樹脂組成物(H1)層がポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された比較用のプリント配線板用層間絶縁フィルム(HF1)(含有溶剤量2.1%、エポキシ樹脂組成物の厚さ40μm)及び基板(HZ1)を得た。比較例1のバインダーポリマーにはポリマー(A11)が相当する。基板(HZ1)を得る際の粗化時間は15分であった。
【0128】
<比較例2>
硬化剤(D1)20部を硬化剤(D3){DPP−3H(フェノール系硬化剤、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノール樹脂)、日本石油化学株式会社製 、Mw520、水酸基当量178、SP値13.0}27部に変更し、「エピコート−154」35部を28部に変更した以外は実施例1と同様にして比較用のエポキシ樹脂組成物(H2)(ΔSPC=4.8、ΔSPD=3.4)層がポリエチレンテレフタレートフィルム上に形成された比較用のプリント配線板用層間絶縁フィルム(HF2)(含有溶剤量2.3%、エポキシ樹脂組成物の厚さ40μm)及び基板(HZ2)を得た。基板(HZ2)を得る際の粗化時間は15分であった。
【0129】
<評価>
プリント配線板用層間絶縁フィルム(F1)〜(F6)及び(HF1)〜(HF2)を硬化した後のエポキシ樹脂組成物中のバインダーポリマーの分散径と、基板(Z1)〜(Z6)及び(HZ1)〜(HZ2)を粗化後のエポキシ樹脂組成物硬化物表面の穴及び表面粗度について以下の方法で評価した。
【0130】
<バインダーポリマーの分散径>
硬化後のエポキシ樹脂組成物硬化物表面を、形状測定顕微鏡(デジタルHFマイクロスコープ VH−8000、株式会社キーエンス製)を用いて、倍率2000倍の条件でエポキシ樹脂組成物中のバインダーポリマーの分散を観察し、モニター画面内で最も大きい分散粒子から大きい順に5番目までの分散粒子の直径の平均値を求めた。この操作を5箇所で行い、これらの平均値を分散径とした。なお、分散径が小さいほど分散性が優れていることを示している。
【0131】
<粗化後のエポキシ樹脂組成物硬化物表面の穴>
銅メッキ後の剥離強度が0.8kN/m以上となるような条件で粗化した後のエポキシ樹脂組成物硬化物表面を、SEM(JSM−5310、日本電子株式会社製)を用いて、倍率2000倍の条件で500μm×500μmの範囲を観察し、5μm以上の幅を持つ極端な凹部(穴)の有無について観察した。
判定方法:穴無し・・・○
穴有り・・・×
【0132】
<粗化後のエポキシ樹脂組成物硬化物表面の表面粗度>
銅メッキ後の剥離強度が0.8kN/m以上となるような条件で粗化した後のエポキシ樹脂組成物硬化物表面を、形状測定顕微鏡(超深度形状測定顕微鏡VK−8550、株式会社キーエンス製)を用いて、倍率1250倍の条件でJIS B0601:2001の付属書2に記載された中心線平均粗さ(Ra)を5箇所測定し、これらの平均値を指標とした。なお、数値は小さいほど表面粗さが小さいことを示している。
【0133】
実施例及び比較例で得たエポキシ樹脂組成物、プリント配線板用層間絶縁フィルム及び基板について、特徴及び評価結果を表1に示す。なお、表1において、MH/MEは、{(バインダーポリマー及び硬化剤に含まれるフェノール性水酸基の合計モル数)/(バインダーポリマー及びエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の合計モル数)}である。
【表1】

【0134】
実施例1〜6の結果から、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いると、バインダーポリマーのエポキシ樹脂組成物中での分散径が小さく、粗化後のエポキシ樹脂組成物硬化物表面に極端な凹部が生じることがなく、さらに表面粗度(Ra)が小さいことが分かる。したがって、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いると、樹脂表面の凹凸が微小かつ均一であり、精密な導体配線パターンを形成することができる。
一方、比較例1及び2の結果から、本発明のバインダーポリマーを使用しない場合、バインダーポリマーのエポキシ樹脂組成物中での分散径が大きく、分散性が悪いために粗化後の樹脂面に極端な凹部が生じ、粗化後の表面粗度も大きいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、バインダーポリマーの分散性が優れるため、本発明のエポキシ樹脂組成物を含有するプリント配線板用層間絶縁フィルムは表面の凹凸が微小な粗化面を形成でき、極端に大きな凹部が生じることもないために、精密な導体配線パターンを形成できる層間絶縁材料として好適である。
本発明のプリント配線板用層間絶縁フィルムを使用し、ビルドアップ法により多段に積層した多層プリント配線板は、パソコン、カメラ一体型VTR、デジタルビデオカメラ、携帯電話、カーナビ及びデジタルカメラ等の電気製品に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素含有官能基と反応し得る官能基(x)を有する重量平均分子量5,000〜100,000のポリマー(A1)及び活性水素含有官能基(y)を有する樹脂(A2)を反応させて製造され得るバインダーポリマー(A)、
又は活性水素含有官能基(y)を有する重量平均分子量5,000〜100,000のポリマー(B1)及び活性水素含有官能基と反応し得る官能基(x)を有する樹脂(B2)を反応させて製造され得るバインダーポリマー(B)と、
エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)とを含有してなり、
エポキシ樹脂(C)のSP値と樹脂(A2)若しくは樹脂(B2)のSP値との差(ΔSPC)又は硬化剤(D)のSP値と樹脂(A2)若しくは樹脂(B2)のSP値との差(ΔSPD)が2.0(cal/cm31/2以下であるエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
活性水素含有官能基と反応し得る官能基(x)が、エポキシ基、カルボキシ基、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基、イソシアナト基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
活性水素含有官能基(y)が、水酸基及びアミノ基の少なくとも一方である請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
バインダーポリマー(A)又はバインダーポリマー(B)が、活性水素含有官能基と反応し得る官能基(x)又は活性水素含有官能基(y)を有する請求項1〜3の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
活性水素含有官能基と反応し得る官能基(x)がエポキシ基、活性水素含有官能基(y)が水酸基である請求項1〜4の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
バインダーポリマー(A)又はバインダーポリマー(B)の重量平均分子量が5,100〜1,000,000である請求項1〜4の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
ポリマー(A1)又はポリマー(B1)がフェノキシ樹脂又はアクリル樹脂である請求項1〜6の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
バインダーポリマー(A)を含有してなり、樹脂(A2)がフェノール樹脂である請求項1〜7の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
バインダーポリマー(B)を含有してなり、樹脂(B2)がエポキシ樹脂である請求項1〜7の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
バインダーポリマー(A)又はバインダーポリマー(B)の含有量がエポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)の合計重量に基づいて5〜50重量%である請求項1〜9の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物及び有機溶剤を含有するワニス。
【請求項12】
請求項1〜10の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物を含有するプリント配線板用層間絶縁フィルム。
【請求項13】
請求項12に記載のプリント配線板用層間絶縁フィルムの硬化物と導体とが積層してなるプリント配線板。

【公開番号】特開2007−197616(P2007−197616A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19831(P2006−19831)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】