説明

エポキシ樹脂組成物及び片面モールド型半導体装置

【課題】α2/α1の値を小さくして1に近づけることで反りの温度依存性を小さくすることによって片面モールド型半導体装置に反りが発生するのを防止することができるエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】1分子内に3個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂、硬化剤、無機フィラーを含有する。硬化剤として少なくとも下記式1で表される化合物を用いる。この化合物を除く他の硬化剤の当量がエポキシ樹脂の当量に対して0.20以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片面モールド型半導体装置の製造に用いられるエポキシ樹脂組成物及び片面モールド型半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、片面モールド型半導体装置等の半導体装置は、エポキシ樹脂組成物を用いて基材の片面をモールドすることによって製造されている。
【0003】
そして、上記エポキシ樹脂組成物としては、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び無機充填材を含有するものが用いられている(例えば、特許文献1−3参照。)。
【特許文献1】特開2003−246839号公報
【特許文献2】特開2003−277486号公報
【特許文献3】特開2003−286328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のエポキシ樹脂組成物にあっては、ガラス転移点以上の領域における線膨張係数(α2)とガラス転移点未満の領域における線膨張係数(α1)の比(α2/α1)の値が大きく、具体的には2.5以上のものであった。そしてこのようにα2/α1の値が大きいエポキシ樹脂組成物を用いて半導体装置を製造した場合、この半導体装置の反りの温度依存性が大きくなるため、リフローはんだ付け時においてこの半導体装置に反りが発生し、表面実装が困難となるものであった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、α2/α1の値を小さくして1に近づけることで反りの温度依存性を小さくすることによって片面モールド型半導体装置に反りが発生するのを防止することができるエポキシ樹脂組成物及び片面モールド型半導体装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るエポキシ樹脂組成物は、1分子内に3個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂、硬化剤、無機フィラーを含有し、硬化剤として少なくとも下記式1で表される化合物を用いると共に、この化合物を除く他の硬化剤の当量がエポキシ樹脂の当量に対して0.20以下であることを特徴とするものである。
【0007】
【化1】

【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、エポキシ樹脂組成物全量に対して無機フィラーが60〜95質量%含有されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項3に係る片面モールド型半導体装置は、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物を用いて成形されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に係るエポキシ樹脂組成物によれば、α2/α1の値を小さくして1に近づけることで反りの温度依存性を小さくすることができ、その結果、片面モールド型半導体装置に反りが発生するのを防止することができるものである。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、成形時においては十分な流動性を確保して容易に成形することができると共に、基材の片面をモールドする場合には硬化物のα1を基材の線膨張係数に容易に合わせることができ、反りの発生を防止することができるものである。
【0012】
本発明の請求項3に係る片面モールド型半導体装置によれば、α2/α1の値の小さいエポキシ樹脂組成物で基材の片面がモールドされていることによって、反りの温度依存性が小さくなり、反りの発生を防止することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明においてエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機フィラーを含有するものである。
【0015】
エポキシ樹脂としては、1分子内に3個以上のエポキシ基を持つものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等を用いることができる。なお、エポキシ樹脂には1分子内に2個以上のエポキシ基を持つものが含有されていてもよい。
【0016】
また硬化剤としては、少なくとも上記式1で表される化合物を用いるものである。この化合物としては、例えば、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(R1が水素原子、R2がフェニル基、R3が水素原子、R4がメチル基)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(R1が水素原子、R2がエチル基、R3が水素原子、R4がメチル基)等を用いることができる。このような化合物の含有量は、エポキシ樹脂組成物全量に対して0.5〜10質量%に設定することができる。なお、この化合物は、エポキシ樹脂のホモ重合の硬化触媒としても作用することができる。
【0017】
他方、上記式1で表される化合物を除く他の硬化剤としては、例えば、トリフェニルメタン型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂等を用いることができる。ただし、他の硬化剤の当量はエポキシ樹脂の当量に対して0.20以下(下限は0)である。他の硬化剤の当量が0.20を超えると、α2/α1の値が大きくなり、これに起因して反りの温度依存性も大きくなり、その結果、片面モールド型半導体装置に反りが発生してしまうものである。なお、エポキシ樹脂の当量に対する他の硬化剤の当量は次式により求めることができる。
【0018】
(エポキシ樹脂の当量に対する他の硬化剤の当量)=(他の硬化剤のグラム数/他の硬化剤の水酸基当量)/(エポキシ樹脂のグラム数/エポキシ樹脂のエポキシ当量)
また無機フィラーとしては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、金属水酸化物等を用いることができる。このような無機フィラーはエポキシ樹脂組成物全量に対して60〜95質量%含有されていることが好ましい。これにより、成形時においては十分な流動性を確保して容易に成形することができると共に、基材の片面をモールドする場合には硬化物のα1を基材の線膨張係数に容易に合わせることができ、反りの発生を防止することができるものである。しかし、無機フィラーの含有量が60質量%未満であると、α1及びα2の絶対値が増加するので、基材の片面をモールドする場合に、硬化物のα1を基材の線膨張係数に合わせるのが困難となり、反りの発生を防止することができなくなるおそれがある。逆に95質量%を超えると、成形時の流動性が大幅に低下し、成形が困難となるおそれがある。
【0019】
そして、上記のエポキシ樹脂、硬化剤、無機フィラーを配合することによってエポキシ樹脂組成物を調製することができる。このとき、本発明の目的を損なわない範囲で、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ワックス、カーボンブラック等を添加することができる。このようにして得られたエポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移点は120〜220℃となり、またα2/α1の値は小さく、具体的には2.0以下となる。なお、上記ガラス転移点は、熱機械分析装置を用いて測定されるものである。
【0020】
次に上記のようにして得られたエポキシ樹脂組成物を用いて片面モールド型半導体装置を製造することができる。例えば、半導体素子をプリント配線板等の基材の片面に搭載し、この基材を金型にセットした後、上記エポキシ樹脂組成物を用いてトランスファー成形によって上記片面をモールドすることによって、片面モールド型半導体装置を製造することができる。
【0021】
上記のようにして得られた片面モールド型半導体装置にあっては、α2/α1の値の小さいエポキシ樹脂組成物で基材の片面がモールドされていることによって、反りの温度依存性が小さくなり、反りの発生を防止することができるものである。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0023】
エポキシ樹脂として、ナフタレン型エポキシ樹脂である大日本インキ化学工業(株)製「HP4700」(エポキシ当量166)、ビフェニル型エポキシ樹脂であるジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000H」(エポキシ当量195)、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂である日本化薬(株)製「EPPN502H」(エポキシ当量170)を用いた。
【0024】
また硬化剤である上記式1で表される化合物として、2−フェニル−4−メチルイミダゾールである四国化成工業(株)製「2P4MZ」、2−エチル−4−メチルイミダゾールである四国化成工業(株)製「2E4MZ」を用いた。
【0025】
また他の硬化剤として、トリフェニルメタン型フェノール樹脂である明和化成(株)製「MEH7500」(水酸基当量97)、フェノールノボラック樹脂である明和化成(株)製「H−1」(水酸基当量105)を用いた。
【0026】
また無機フィラーとして、溶融シリカである電気化学工業(株)製「FB60」を用いた。
【0027】
さらにγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBE403」)、トリフェニルホスフィン(北興化学工業(株)製「TPP」)、ワックス(大日化学工業(株)製「F1−100」)、カーボンブラック(三菱化学(株)製「MA600」)を用いた。
【0028】
そして、下記[表1]に示す配合量で、エポキシ樹脂、硬化剤、無機フィラー、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ワックス、カーボンブラックを配合することによってエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0029】
次に上記のようにして得られたエポキシ樹脂組成物をトランスファー成形することによって硬化させ、さらにアフターキュアーを行うことによって硬化物を得た。このときトランスファー成形の条件は、成形温度175℃、トランスファー圧力7MPa、トランスファー成形用金型に樹脂が充填されるのに要する時間10秒、キュアー時間100秒とし、またアフターキュアーの条件は175℃で6時間とした。
【0030】
そして、熱機械分析装置((株)リガク製「TMA8310」)を用いて上記硬化物の膨張曲線を求め、50〜100℃における線膨張係数をα1、270〜300℃における線膨張係数をα2として、α2/α1を算出した。その結果を下記[表1]に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
上記[表1]にみられるように、比較例1〜4ではα2/α1が2.5以上であるものや硬化しないものであるのに対し、実施例1〜5ではα2/α1は2.0以下であることが確認される。よって、実施例1〜5のエポキシ樹脂組成物を用いて片面モールド型半導体装置を製造すれば、反りの温度依存性が小さくなり、反りの発生を防止することができると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子内に3個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂、硬化剤、無機フィラーを含有し、硬化剤として少なくとも下記式1で表される化合物を用いると共に、この化合物を除く他の硬化剤の当量がエポキシ樹脂の当量に対して0.20以下であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
エポキシ樹脂組成物全量に対して無機フィラーが60〜95質量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物を用いて成形されていることを特徴とする片面モールド型半導体装置。

【公開番号】特開2009−235211(P2009−235211A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82094(P2008−82094)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】