説明

エマルジョン型粘着剤組成物および粘着シート

【課題】環境にやさしく、かつ粘着シートの表面基材として炭酸カルシウムを含む、中性紙や光沢紙を使用しても、良好なオレフィン接着力を示し、保持力や曲面貼付性の良いものが得られ、さらに長期保存後においても、保持力や曲面貼付性の粘着性能が経時的に低下することのない、エマルジョン型粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 下記一般式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体(a1)を含有するエチレン性不飽和単量体(A)を、粘着付与剤(B)の存在下に乳化重合してなるエマルジョン[I]を含有してなることを特徴とするエマルジョン型粘着剤組成物。
【化1】


(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2はエチレン基または−CONH−基であり、iは0または1であり、R3は炭素数1〜6のアルキレン基である。kは0または1であり、Y+は水素イオンまたは対イオンである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン型粘着剤組成物およびそれを用いた粘着シートに関する。さらに詳しくは、環境にやさしく、かつ粘着シートの表面基材として炭酸カルシウムを含む中性紙や光沢紙を使用しても、長期保存後において、保持力や曲面貼付性の低下がなく、かつ良好なオレフィン接着力を示すエマルジョン型粘着剤組成物、およびこの粘着剤組成物を用いて得られる粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、粘着シートは、通常の接着剤のような、実用的な接着力を得るための高い圧力またはエネルギーを必要とせず、指圧程度の圧力で貼合わせると直ちに実用に耐える接着力を発揮する(感圧性タック)という使用上の簡便さや、使用に当たり良好な作業性などを有することから、多くの分野において用いられている。
【0003】
前記粘着剤層を構成する粘着剤としては、従来溶剤型のものが主として用いられてきたが、近年、塗工時における有機溶剤の揮発が環境衛生や安全面で問題となっており、また、粘着シートにした場合でも、粘着剤層に僅かながら有機溶剤が含まれ、環境衛生面で問題となっていた。これに対し、エマルジョン型のものは、環境衛生、安全面については特に問題はなく、また、高濃度化による高速塗工および脱溶剤による低コスト化が可能であることから、最近では、溶剤型に代えて、エマルジョン型のものが使用されるようになってきた。特に、食品関係に使用されるラベルには、無溶剤型の粘着剤を用いたラベルが好んで使用されている。
【0004】
一方、粘着シートは、表面基材と剥離性シートとの間に粘着剤層が挟まれた構成が一般に知られている。その表面基材は、プラスチックフィルム、合成紙、紙、金属ホイル等が用いられている。その中で主流である紙基材を用いる粘着シートは、食品や製品の物流管理用ラベル、配送用の宛名表示ラベル、控え表等のフォーム印刷用原反、粘着テープ等に幅広く用いられている。粘着シートの基材として用いられる紙は、従来、溶剤型ロジンサイズ剤の定着に硫酸アルミニウムを使用して酸性抄紙した紙(以下、酸性紙とする)が主流であった。しかし、硫酸アルミニウムは弱酸性を示すので、繊維の主成分であるセルロースを加水分解し、紙が経時的に劣化してしまう問題があった。そのため最近では保存性を意識して、アルキルケテンダイマー(AKD)やアルケニル無水コハク酸(ASA)などの中性サイズ剤を使用して抄紙した紙(以下、中性紙とする)が広く使用されている。
【0005】
ところで、炭酸カルシウムは、粒子径、粒度分布、粒子形状を制御しやすく、白色度や不透明度も高く、コストも安い。しかし、酸性下では溶解してしまうので、これまでの酸性紙には使用されてはいなかったのであるが、中性紙の場合、このような炭酸カルシウムを填料として使用できるようになった。
【0006】
また、最近の環境問題意識の高まりや、森林資源の保護のため、印刷用紙や複写用紙などでは原料に古紙を含有した再生紙が幅広く流通している。これらの再生紙を抄造する場合、古紙原料中には炭酸カルシウムを含有する中性紙が非常に多く含まれる。しかし、上記したように炭酸カルシウムは酸性下で溶解するので酸性抄紙できないため、再生紙の抄造は必然的に中性抄紙となり、紙全体に占める中性紙の割合はますます多くなっている。
【0007】
粘着シートにおいても、表面基材として酸性紙から中性紙を使用することへの転換は避けられず、特に再生紙である中性紙を表面基材や剥離性シートの基材として使用することが必要となっている。
【0008】
しかしながら、従来のエマルジョン系粘着剤は、これらを炭酸カルシウムの含有する中性紙や光沢紙を表面基材や剥離性シートの基材に使用すると、被着体に貼着する前の粘着シートを保存している間に、また被着体に貼着した後、経時的に粘着剤層の凝集力が変化し、酸性紙を用いた場合に比べ、粘着力が大きく低下し、曲面貼付性が著しく悪くなる欠点があった。これは、粘着剤中の含有成分、例えばカルボキシル基等が炭酸カルシウムのカルシウムイオンと反応して粘着剤ポリマーが架橋されることが原因と考察されている。
【0009】
そして、このような中性紙による粘着特性への悪影響(以下、中性紙劣化ともいう)は、高温高湿度下に炭酸カルシウムの含有紙/粘着剤層という積層物を保存すると顕著に現れる。
【0010】
このような中性紙劣化を解決する方法として、重合性不飽和カルボン酸を含有しない重合性単量体(a)から形成される共重合体(A)と5〜25重量%の重合性不飽和カルボン酸を必須成分とする重量平均分子量が1000〜20000の重合性単量体(b)から形成される共重合体(B)とを含有する樹脂組成物水性分散体を含有する水性エマルジョン型粘着剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
しかしながら、上記方法では、中性紙劣化対策としては有効ではあるが、その反面、(b)成分の分子量制御が必要であり、かついわゆるシード重合法を用いているため、(b)成分を予め製造する煩雑さがある。さらに、該粘着剤においては、保持力や曲面貼付性の性能も充分なものではない。
【0012】
【特許文献1】特開2005−232335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者等は、粘着剤の塗布量が少量でも十分な性能を有する粘着剤を研究したが、表面基材として基材中に炭酸カルシウム等の金属化合物が含まれている上質紙、クラフト紙、アート紙、あるいはキャスト塗被紙等や合成紙を用いると、粘着シートの構成で高温高湿下に保存すると粘着性能が著しく低下するという難点や粘着剤が紙基材中にしみ込んでしまい十分な粘着性能を発揮し得ないということが分かった。
【0014】
上記のような実状から、本発明は、粘着シートを高湿度下で保存しても粘着性能の低下が少なく、さらに粘着剤の塗布量が少なくても十分な粘着性能を発揮し、かつ簡便なエマルジョン重合法で、炭酸カルシウムの含有紙を表面基材として用いた場合にも、経時にて曲面貼付性および保持力の変化が起こらず、かつ良好なオレフィン接着力を示す粘着シートを形成し得る粘着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、エマルジョン型粘着剤組成物中のエマルジョンを構成するエチレン性不飽和単量体成分として、下記一般式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体(a1)を用いるとともに、さらに、粘着付与剤(B)を存在下で乳化重合を行うことにより、カルボキシル基と炭酸カルシウムのカルシウムイオンとの反応が抑制され、経時にて曲面貼付性および保持力の変化が起こらない粘着シートを得ることができ、更に、オレフィン接着力にも優れることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明の要旨は、下記一般式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体(a1)を含有するエチレン性不飽和単量体(A)を、粘着付与剤(B)の存在下に乳化重合してなるエマルジョン[I]を含有してなるエマルジョン型粘着剤組成物に関するものである。
【0017】
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2はエチレン基または−CONH−基であり、iは0または1であり、R3は炭素数1〜6のアルキレン基である。kは0または1であり、Y+は水素イオンまたは対イオンである。)
【0018】
また、本発明は、前記エマルジョン型粘着剤組成物からなる粘着剤層を、基材シートの少なくとも片面に設けた粘着シートをも提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエマルジョン型粘着剤組成物及びそれを用いて得られる粘着シートは、環境にやさしく、かつ従来技術の問題点を解決し、粘着シートの表面基材として炭酸カルシウムを含む中性紙や光沢紙を使用しても、長期保存後において、保持力や曲面貼付性の低下がない、かつ良好なオレフィン接着力を示すといった効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明で用いられるエチレン性不飽和単量体(A)は、上記一般式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体(a1)とその他の共重合性単量体からなる単量体混合物である。
【0021】
一般式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体(a1)としては、例えば、(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドエタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドメチルエタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドブタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドジメチルエタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドペンタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドメチルブタンスルホン酸(塩)、アクリルアミドジメチルプロパンスルホン酸(塩)、アクリルアミドエチルプロパンスルホン酸(塩)、アクリルアミドエチルメチルエタンスルホン酸(塩)およびアクリルアミドプロピルエタンスルホン酸(塩)などの炭素数1〜6の分岐または直鎖のアルキレン基を有する化合物があげられ、これらを単独あるいは2種以上使用することができる。これらの中でも、重合が安定に進行するともに、効率的に効果を発揮できる点から、(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドエタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドメチルエタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドブタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(塩)および(メタ)アクリルアミドペンタンスルホン酸(塩)が好ましく、1−(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸(塩)、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸(塩)、2−アクリルアミド−n−ブタンスルホン酸(塩)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸(塩)がより好ましく、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸(塩)がさらに好ましい。
【0022】
一般式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体(a1)は、酸であっても、部分中和塩または中和塩のいずれであっても使用することができる。中和塩を形成するのに使用できるイオン種(Y+)としては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン等があげられ、これらの2種以上を併用いてもよい。
【0023】
一般式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体(a1)の含有量は、エチレン性不飽和単量体(A)の合計量100重量部に対して0.05〜10重量部であることが好ましく、特には0.08〜5重量部、更には0.1〜3重量部であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると充分な保持力や曲面貼付性が得られない傾向があり、多すぎると重合が不安定になったり、粘着力が低下したりする傾向がある。
【0024】
また、後述する反応性界面活性剤を用いる場合は、一般式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体(a1)の含有量を少なくすることができる。これは、フリーの界面活性剤が粘着剤中に含まれると、粘着剤の凝集力や粘着力を低下させるため、結果として保持力や曲面貼付性が低下するが、反応性界面活性剤を用いる際にはフリーの界面活性剤が無いあるいは少なくなるため、エチレン性不飽和単量体(a1)を少なくすることができる。反応性界面活性剤を用いる場合のエチレン性不飽和単量体(a1)の含有量は、エチレン性不飽和単量体(A)の合計量100重量部に対して0.05〜5重量部であることが好ましく、特には0.08〜3重量部、更には0.1〜2重量部であることが好ましい。
【0025】
エチレン性不飽和単量体(a1)以外の共重合性単量体としては、従来エマルジョン型粘着剤の原料として慣用されている単量体、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび所望により官能性単量体やその他の単量体をあげることができる。
【0026】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香族(メタ)アクリル酸アルキルエステルがあげられる。これらの中でも脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、さらには、アルキル基の炭素数が1〜12、特には1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
また、他の官能性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどのヒドロキシ基含有不飽和単量体;(メタ)アクリル酸アセトアセトキシメチル、アリルアセトアセテートなどのアセトアセチル基含有不飽和単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアミド基含有不飽和単量体;(メタ)アクリル酸モノまたはジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノまたはジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノまたはジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノまたはジエチルアミノプロピルなどのアミノ基含有不飽和単量体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのカルボキシル基含有不飽和単量体などがあげられる。これらの中でも特にヒドロキシ基含有不飽和単量体やカルボキシル基含有不飽和単量体を用いることが、重合を安定に行いやすくなる点で好ましい。また、これらの単量体は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
前記官能性単量体の含有量は、エチレン性不飽和単量体(A)の合計量100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましく、特には0.1〜5重量部、更には0.3〜3重量部であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると重合安定性が悪くなる傾向があり、多すぎると接着性の経時変化が大きくなる傾向がある。
【0029】
また本発明では、ビニルエステル、ビニルピリジン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、クロロプレン等も共重合体の形成の際にエチレン性不飽和単量体成分として使用することができる。
【0030】
さらにまた本発明においては、エチレン性不飽和単量体(A)として多官能エチレン性不飽和単量体(a2)を含有することが接着力、保持力、曲面貼付性のバランスが向上する点で好ましい。
【0031】
かかる多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジアルキレングリコール(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のトリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシフォスフェート、ジアリルテレフタレート、テトラアリルオキシエタン、ジビニルベンゼン、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等等が挙げられる。中でもエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が常温で流動性があることから取り扱い易い点で好ましい。又、これらは1種又は2種以上併用して用いられる。
【0032】
前記多官能エチレン性不飽和単量体(a2)の含有量としては、エチレン性不飽和単量体(A)の合計量100重量部に対して、0.005〜5重量部が好ましく、特には0.01〜3重量部、さらに好ましくは0.02〜1重量部であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると保持力が低下する傾向があり、多すぎると造膜性が悪くなる傾向となり、逆に保持力が低下したり、曲面貼付性が低下する傾向がある。
【0033】
本発明で用いられる粘着付与剤(B)とは、従来から一般的に用いられるものであり、通常分子量が数百から数千の無定形オリゴマー(2量体以上、分子量約1万までの重合体)で、常温で液体または固形の熱可塑性樹脂であり、粘着付与剤はそれ自身接着性を持たない樹脂で単独で用いられることはほとんどなく、通常は粘着性の付与、接着性の向上、粘度低下を目的に高分子ポリマーに配合されるものである。
【0034】
このような粘着付与剤(B)としては、例えば、ロジン系樹脂やテルペン系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノール系樹脂(アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、等)、スチレン系樹脂、キシレン樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、等が挙げられ、中でも特に、ロジン系樹脂及びテルペン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0035】
前記ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等の変性ロジン、変性ロジンのグリセリンエステルやペンタエリスリトールエステル等のロジンエステル、等が挙げられる。
【0036】
前記テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、等が挙げられる。
【0037】
本発明で用いられる粘着付与剤(B)の具体例としては、エチレン性不飽和単量体(A)に溶解又は分散するものであればよく、例えば、スーパーエステルA−75(荒川化学社製)、スーパーエステルA−100(荒川化学社製)、スーパーエステルA−125(荒川化学社製)等のロジンエステル、ペンセルD−125(荒川化学社製)、ペンセルD−135(荒川化学社製)、ペンセルD−160(荒川化学社製)、リカタックPCJ(理化ファインテック社製)等の重合ロジンエステル、パインクリスタルKE−100(荒川化学社製)、パインクリスタルKE−604(荒川化学社製)等の水添ロジンエステル、ニカノールHP−100(三菱ガス化学社製)、ニカノールHP−150(三菱ガス化学社製)、ニカノールH−80等のキシレン樹脂、YSポリスターT−115(ヤスハラケミカル社製)、YSポリスターT−130(ヤスハラケミカル社製)、YSポリスターT−145(ヤスハラケミカル社製)等のテルペンフェノール樹脂、YSレジンTO−115(ヤスハラケミカル社製)、YSレジンTO−125(ヤスハラケミカル社製)等の変性テルペン樹脂、クリアロンP−115(ヤスハラケミカル社製)、クリアロンP−125(ヤスハラケミカル社製)等の水添テルペン樹脂、FTR−6120(三井石油化学社製)、FTR−6100(三井石油化学社製)等の石油樹脂、等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。
【0038】
又、エラストマーと呼ばれるスチレン−ブタジエンブロックポリマー、スチレン−イソプレンブロックポリマー、エチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー、塩ビ/酢ビ系ポリマー、アクリルゴム等も用いることができる。
上記の中でもペンセルD−125、ペンセルD−135、ペンセルD−160が曲面貼付性が向上する点で好ましく、特には、YSポリスターT−130、YSレジンTO−125、クリアロンP−125などを更に併用することが好ましい。
【0039】
また、粘着付与剤(B)としてはその軟化点が100℃以上のものが曲面貼付性の点で好ましく、特には120℃以上のものが好ましい。かかる軟化点が低すぎると曲面貼付性が低下する傾向がある。なお、粘着付与剤(B)の軟化点の上限は通常170℃付近である。
【0040】
前記粘着付与剤(B)の含有量としては、エチレン性不飽和単量体(A)の合計量100重量部に対して、1〜10重量部であることが好ましく、特には2〜7重量部、更には3〜6重量部であることが特に好ましい。粘着付与剤(B)が少なすぎると十分な接着力が得られない傾向があり、多すぎると重合安定性が低下する傾向がある。
【0041】
本発明のエマルジョン型粘着剤組成物は、上記エチレン性不飽和単量体(A)を、粘着付与剤(B)の存在下で乳化重合して製造する。また、この乳化重合の際には、界面活性剤を使用することが安定に重合できる点で好ましく、かかる界面活性剤としては、重合性不飽和結合を1個以上有する反応性界面活性剤を用いることが、一般式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体(a1)の含有量を少なくすることができる点から好ましい。
【0042】
かかる重合性不飽和結合を1個以上有する反応性界面活性剤については、特に限定されるものではなく、従来公知のイオン性、非イオン性の界面活性剤の中から、適宜選択して用いることができる。
【0043】
反応性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(2)〜(12)のような構造をもつものがあげられる。
【0044】
【化2】

【0045】
【化3】

【0046】
【化4】

【0047】
【化5】

【0048】
【化6】

【0049】
【化7】

【0050】
【化8】

【0051】
【化9】

【0052】
【化10】

【0053】
【化11】

【0054】
【化12】

【0055】
(ここで、一般式(2)〜(12)において、R4はアルキル基、R5は水素原子またはメチル基、R6はアルキレン基、n、m、lは1以上の整数(ただし、m+l=3である)であり、Xは水素原子、SO3NH4またはSO3Naである。)
【0056】
4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、セチル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、アラキル基などの炭素数1〜20のアルキル基をあげることができる。
【0057】
6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、アミレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、セチレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、アラキレン基などの炭素数1〜20のアルキレン基をあげることができる。
【0058】
上記界面活性剤として、具体的には、
アデカリアソープSE−10N(アニオン性)、アデカリアソープSE−20N(アニオン性)、アデカリアソープSR−10(アニオン性)、アデカリアソープSR−20(アニオン性)、アデカリアソープNE−10(ノニオン性)、アデカリアソープNE−20(ノニオン性)、アデカリアソープNE−30(ノニオン性)、アデカリアソープNE−40(ノニオン性)、アデカリアソープER−10(ノニオン性)、アデカリアソープER−20(ノニオン性)、アデカリアソープER−30(ノニオン性)、アデカリアソープER−40(ノニオン性)、アデカリアソープSDX−730(アニオン性)、アデカリアソープSDX−731(アニオン性)、アデカリアソープPP−70(アニオン性)、アデカリアソープPP−710(アニオン性)(以上、旭電化(株)製);
エレミノールJS−2(アニオン性)、エレミノールJS−20(アニオン性)、エレミノールRS−30(アニオン性)(以上、三洋化成(株)製);
ラテムルS−180A(アニオン性)、ラテムルS−180(アニオン性)、ラテムルPD−104(アニオン性)(以上、花王(株)製);
アクアロンBC−05(アニオン性)、アクアロンBC−10(アニオン性)、アクアロンBC−20(アニオン性)、アクアロンHS−05(アニオン性)、アクアロンHS−10(アニオン性)、アクアロンHS−20(アニオン性)、アクアロンRN−10(ノニオン性)、アクアロンRN−20(ノニオン性)、アクアロンRN−30(ノニオン性)、アクアロンRN−50(ノニオン性)、アクアロンKH−05(アニオン性)、アクアロンKH−10(アニオン性)、ニューフロンティアS−510(アニオン性)(以上、第一工業製薬(株)製);
フォスフィノ−ルTX(アニオン性)(東邦化学工業(株)製))
等の市販品があげられる。
【0059】
反応性界面活性剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体(A)の合計量100重量部に対して0.1〜5重量部であることが好ましく、特には0.3〜4重量部、更には0.5〜3重量部であることが特に好ましい。かかる使用量が少なすぎると重合が不安定になる傾向があり、多すぎると保持力や曲面貼付性が低下する傾向がある。
【0060】
本発明においては、上記反応性界面活性剤の替わりに、ラジカル重合性不飽和結合を有さない通常の界面活性剤(以下、非反応性界面活性剤ということがある)を用いることもでき、また、上記反応性界面活性剤に加えて、必要に応じて、非反応性界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
非反応性界面活性剤としては、例えば、アルキルもしくはアルキルアリル硫酸塩、アルキルもしくはアルキルアリルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル等のノニオン性界面活性剤があげられる。
【0062】
非反応性界面活性剤の具体例としては、アニオン型として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ソーダがあげられ、ノニオン型として、例えば、ポリオキシエチレンアルキル型、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレングリコール型、ポリオキシエチレンプロピレングリコール型のものがあげられる。
【0063】
非反応性界面活性剤の配合量としては、本発明の効果を損なわない程度の量を用いることができ、通常は、エチレン性不飽和単量体(A)の合計量100重量部に対して3重量部以下であることが好ましい。
【0064】
本発明において、乳化重合の際には重合開始剤を用いることが好ましく、かかる重合開始剤としては、特に限定されず、水溶性、油溶性のいずれのものも用いることが可能である。具体的には、アルキルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2'−アゾビス(2−メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕−プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、各種レドックス系触媒(この場合酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メタンハイドロパーオキサイド等が、還元剤としては亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が用いられる。)等があげられ、これらの中でも重合安定性に優れる点で、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、レドックス系触媒(酸化剤:過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、還元剤:亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸)等が好ましい。
【0065】
重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体(A)100重量部に対して、0.01〜5重量部であることが好ましく、特には0.03〜3重量部であることが好ましい。かかる使用量が少なすぎると重合速度が遅くなる傾向があり、多すぎると保持力が低下する傾向がある。
【0066】
なお、該重合開始剤の添加時期は、特に限定されず、例えば、重合缶内に予め加えておいてもよいし、重合開始直前に加えてもよいし、必要に応じて、重合途中に追加添加してもよい。また、単量体混合物に予め添加したり、該単量体混合物からなる乳化液に添加してもよい。添加に当たっては、重合開始剤を別途溶媒や上記単量体に溶解して添加したり、溶解した重合開始剤をさらに乳化状にして添加してもよい。
【0067】
また、必要に応じて、重合時にpH調整のため、pH緩衝剤を併用してもよく、該pH緩衝剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体(A)100重量部に対して10重量部以下であることが好ましく、特には5重量部以下であることが好ましい。
【0068】
かかるpH緩衝剤としては、pH緩衝作用を有するものであれば特に制限されないが、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム、クエン酸三ナトリウム等があげられる。
【0069】
水の使用量は、エチレン性不飽和単量体(A)100重量部に対して、20〜400重量部であることが好ましく、特には25〜200重量部であることが好ましく、更には30〜150重量部であることが好ましい。水の使用量が少なすぎると得られる樹脂組成物が高粘度となり、また、重合安定性も低下する傾向があり、多すぎると得られる組成物の濃度が低くなり、皮膜化する際の乾燥性が低下する傾向がある。
【0070】
上記エチレン性不飽和単量体(A)の重合方法としては、例えば、(1)反応缶に水を仕込んでおき昇温した後、単量体混合物を全量滴下または分割添加して重合する、(2)反応缶に水、界面活性剤等を仕込んでおき昇温した後、単量体混合物を全量滴下または分割添加して重合する、等が挙げられるが、重合安定性が良好である点で、(1)の方法が好ましい。
【0071】
上記重合方法における重合条件としては、例えば、(1)または(2)の方法では重合缶に水を仕込み、40〜90℃に昇温し、単量体混合物を2〜7時間程度かけて滴下または分割添加し、その後同温度で1〜3時間程度熟成することが好ましい。
【0072】
上記重合方法において、界面活性剤(または界面活性剤の一部)を単量体混合物に溶解しておくか、または、予めO/W型の乳化液の状態としておいたほうが重合安定性の点から好ましい。
【0073】
乳化液の調整方法としては、例えば、水に界面活性剤を溶解した後、上記粘着付与剤を溶解した単量体を仕込み、この混合液を撹拌乳化する方法、あるいは水に界面活性剤を溶解した後、撹拌しながら上記粘着付与剤を溶解した単量体を仕込む方法等があげられる。
【0074】
上記乳化液の乳化の際の撹拌は、各成分を混合し、ホモディスパー、パドル翼等の撹拌翼を取り付けた撹拌装置を用いて行うことができる。
【0075】
乳化時の温度は、乳化中に混合物が反応しない程度の温度であれば問題なく、通常5〜60℃程度が適当である。
【0076】
かくしてエマルジョン[I]が得られるが、本発明においては、かかるエマルジョン[I]の平均粒子径については、放置安定性の点で1000nm以下であることが好ましく、特には100〜700nmであることが好ましい。平均粒子径が大きすぎると重合安定性が悪化し、粗粒子が多く発生する傾向がある。
【0077】
また、エマルジョン[I]中のアクリル系樹脂のガラス転移温度は、粘着力やタックと保持力や曲面接着性のバランスの点から、−30℃以下であることが好ましく、特には−40〜−70℃であることが好ましい。ガラス転移温度が高すぎるとタックや接着力が低くなったり、曲面貼付性が悪化する傾向がある。
【0078】
さらに、エマルジョン[I]の固形分濃度は、乾燥性、塗工性の点から、10〜75重量%であることが好ましく、20〜70重量%であることがより好ましい。
【0079】
本発明では、上記で得られるエマルジョン[I]自体で粘着剤組成物とすることもできるが、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂の被着体に対する接着性や曲面貼付性を上げることができる点から、さらに水分散型の粘着付与樹脂[II]を含有することが好ましい。
【0080】
かかる水分散型の粘着付与樹脂[II]としては、例えば、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、アクリル化ロジン等の変性ロジン、不均化や二量化、水素化などを施した安定化ロジン、さらに前記ロジンをグリセリンやペンタエリスリトールなどによりエステル化したもの等のロジン系樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂等があげられる。
【0081】
エマルジョン化したものとしては、例えば、
スーパーエステルE−720、スーパーエステルE−730−55、スーパーエステルE−625、スーパーエステルE−650、スーパーエステルE−865、スーパーエステルE−865NT、スーパーエステルNS−100H、スーパーエステルNS−120A、スーパーエステルNS−125A、タマノルE−100、タマノルE−200NT、エマルジョンAM−1002、エマルジョンSE−50(以上、荒川化学(株)製);
ハリスターSK−508、ハリスターSK−70D、ハリスターSK−822E、ハリスターSK−816E、ハリスターSK−532D、ハリスターSK−508H、ハリスターSK−90D−55、ハリスターSK−501、ハリスターSK−218NS、ハリスターSK−370N、ハリスターSK−385NS、ハリスターSK−501NS(以上、ハリマ化成(株)製);
ナノレットN−1250、ナノレットN−1050(ヤスハラケミカル(株)製);
エチレン/酢酸ビニル樹脂としてスミカフレックス205HQ、スミカフレックス305HQ、スミカフレックス401HQ、スミカフレックス510HQ(以上、住友化学工業(株)製)
等を用いることができる。これらの中でもスーパーエステルE−650、スーパーエステルE−865、スーパーエステルE−865NT、タマノルE−100、タマノルE−200NT(荒川化学(株)製);ナノレットN−1050(ヤスハラケミカル(株)製)等が、耐候性に優れ、経時での粘着力変化が小さく、保持力、曲面貼付性に優れる点で好ましい。また、スミカフレックス205HQ、スミカフレックス401HQ(住友化学工業(株)製)等は、ポリオレフィンに対する接着性に優れる点で好ましい。
【0082】
前記水分散型の粘着付与樹脂[II]の含有量としては、エマルジョン[I]の固形分100重量部に対して、水分散型の粘着付与樹脂[II]の固形分として30重量部以下であることが好ましく、特には1〜20重量部であることが好ましく、更には2〜15重量部であることが好ましい。かかる含有量が多すぎると、タックや保持力が低下する傾向がある。
【0083】
さらに、本発明では必要に応じて、可塑剤(例えば、液状ポリブテン、鉱油、ラノリン、液状ポリイソプレンおよび液状ポリアクリレート等)、防腐・防黴剤、防錆剤、凍結防止剤、高沸点溶剤、顔料、着色剤、充填剤(亜鉛華、チタン白、炭酸カルシウム、クレー等)、金属粉末、消泡剤、増粘剤、濡れ剤、接着力コントロール剤、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性付与剤、酸化防止剤、架橋剤等を適宜添加したり、また、上記の乳化重合の重合前や重合途中に添加したりすることもできる。
【0084】
かくして本発明のエマルジョン型粘着剤組成物が得られるが、かかるエマルジョン型粘着剤組成物は、通常、基材シート等に粘着剤層として設けられて粘着シートや粘着テープ等として実用に供されることが多く、かかる粘着シートや粘着テープ等を製造する方法としては、まず本発明のエマルジョン型粘着剤組成物をそのまま、または適当な増粘剤や濡れ剤を使用し粘度と表面張力を調整し、シリコーン処理等が施された離型紙や離型フィルムに塗工し、紙や合成紙等の基材シートに転写する方法や、あるいは直接紙や合成紙等の基材フィルムに塗工し、例えば80〜120℃、5秒〜10分間加熱処理等により乾燥させて粘着剤層を形成する方法などが挙げられる。
【0085】
なお、粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどを用いる方法をあげることができる。
【0086】
形成される粘着剤層は、基材シートの少なくとも片面に設けていればよく、形成される粘着剤層の乾燥重量は、5〜50g/m2であることが好ましく、特には10〜30g/m2であることが好ましい。粘着剤量が少なすぎると粘着力や曲面貼付性が低下する傾向があり、多すぎると塗工後の乾燥性が低下する傾向がある。
【0087】
基材シートとしては、特に限定されるものではなく、紙、合成紙、プラスチックフィルム、金属ホイルなどをあげることができるが、紙および合成紙基材が好ましく、紙および合成紙基材としては、例えば、上質紙、キャストコート紙、コート紙、中性紙、アート紙、ユポ、感熱紙等紙材料等があげられる。本発明においては特に、炭酸カルシウムを含む中性紙や光沢紙を用いるときに顕著な効果を発揮する。
【0088】
本発明のエマルジョン型粘着剤組成物は、金属板、ガラス板、プラスチック板等の運搬、加工、切断等の際の識別、表示等のための粘着シートやラベルの粘着剤として、また、食品や製品の物流管理用ラベル、配送用の宛名表示ラベル、控え表等のフォーム印刷用原反などの粘着シートまたは粘着テープとして非常に有用である。
【実施例】
【0089】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0090】
<粘着シートの作製>
得られたエマルジョン型粘着剤組成物を、市販のシリコーン離型紙に乾燥重量で16g/m2となるように塗工し、100℃の電気オープンにて乾燥させた後、市販の炭酸カルシウムを含むキャストコート紙(秤量84.9g/m2、商品名、「ミラーコートゴールド(73)」、王子製紙(株)製)を25N/cm2の圧力にてラミネートロールで積層し、粘着シートを得た。
【0091】
上記で得られた粘着シート、及び、かかる粘着シートを60℃×95%の雰囲気で72時間保存した後の粘着シートについて、下記方法にて保持力と曲面貼付性を測定した。
【0092】
<評価方法>
(オレフィン粘着力)
粘着シートを、ポリエチレン(PE)板に23℃、50%RHにて、2kgローラーを2往復させて接着させてから、(1)直ちに(直後)、および(2)24時間後に、JIS Z 0237の接着力の測定法に準じて180度剥離強度(N/25mm)をそれぞれ測定した。
【0093】
(曲面貼付性)
20mm幅の粘着シートを、径15mmのポリエチレン製丸棒に、円周の7/10が蔽われるように(粘着シートの長さ:15mm×φ×7/10=33mm)、23℃、50%RH環境下にて貼付したのち、23℃、50%RH環境下にて7日間放置後の浮き(ポリエチレン製丸棒から剥がれた粘着シートの端からの長さ:片側)を測定し、曲面貼付性を評価した。
なお、貼付して7日までに全開(33mm/2=16.5mm)したものについては「×n日」と記載した。nは貼付開始日からの日数を示す。
【0094】
(保持力)
粘着シートを、ステンレス板に貼り付け面積が25mm×25mmになるように貼り付け、40℃の条件下にて1kgの荷重をかけて、JIS Z 0237の保持力測定法に準じて、24時間後のズレ(mm)または落下時間(分)を測定し、評価した。
【0095】
表1〜4に示される材料については、下記に示す通りである。
〔エチレン性不飽和単量体(A)〕
MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸n−ブチル
2−EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
AA:アクリル酸
アクリエステルED:三菱レイヨン社製(エチレングリコールジメタクリレート)
ライトアクリレート14EG−A:共栄社化学社製(ポリエチレングリコールジアクリレート、n=14)
ライトアクリレートTMP−A:共栄社化学社製(トリメチロールプロパントリアクリレート)
ライトアクリレートPE−4A:共栄社化学社製(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)
TBAS−Q:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
ATBS−Na:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム
【0096】
〔粘着付与剤(B)〕
ペンセルD−160:荒川化学社製(重合ロジンエステル)
ペンセルD−135:荒川化学社製(重合ロジンエステル)
ペンセルD−125:荒川化学社製(重合ロジンエステル)
クリアロンP−125:ヤスハラケミカル社製(水添テルペン樹脂)
YSポリスターT−130:ヤスハラケミカル社製(テルペンフェノール樹脂)
YSレジンTO−125:ヤスハラケミカル社製(変性テルペン樹脂)
【0097】
〔界面活性剤〕
アクアロンKH−10:第一工業製薬社製(アニオン性反応性界面活性剤)
アデカリアソープSR−10:ADEKA社製(アニオン性反応性界面活性剤)
ラテムルPD−104:花王社製(アニオン性反応性界面活性剤)
ラテムルE−118B:花王製(アニオン性非反応性界面活性剤)
ペレックスSS−L:花王社製(アニオン性非反応性界面活性剤)
【0098】
〔粘着付与樹脂[II]〕
スーパーエステルE−865:荒川化学社製(ロジン系樹脂エマルジョン)
タマノル E−100:荒川化学社製(テルペンフェノール系樹脂エマルジョン)
【0099】
実施例1
メタクリル酸メチル10部、アクリル酸n−ブチル60部、アクリル酸2−エチルヘキシル30部、アクリル酸0.8部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム0.6部、多官能エチレン性不飽和単量体(三井化学社製、「アクリエステルED」)0.05部に、ロジン系粘着付与剤(荒川化学社製、「ペンセルD−160」)2部、テルペン系粘着付与剤(ヤスハラケミカル社製、「クリアロンP−125」)1部を添加し溶解した後、アニオン型反応性界面活性剤(第一工業製薬社製、「アクアロンKH−10」)0.5部、アニオン型界面活性剤(花王社製、「ラテムルE−118B」)3.7部、水30部、連鎖移動剤として1−ドデカンチオール0.03部を混合撹拌し、単量体混合物からなる乳化液を得た。
【0100】
次に、冷却管、撹拌翼を備えたフラスコに、水18部を仕込み、撹拌下80℃に昇温した後、5%過硫酸アンモニウム水溶液を1.2部添加し、15分後に上記乳化液および5%過硫酸アンモニウム水溶液の2.9部の混合液を5時間かけて滴下し滴下重合を行った。滴下終了後、80℃に保持したまま0.5時間攪拌を続けた後、10%アンモニア水の2部を添加し、酸基を中和した。その後1.5時間撹拌を続けた後、55℃まで冷却し、t−ブチルハイドロパーオキサイド(日本油脂社製、「パーブチルH−69」)の10%水溶液0.5部と5%アスコルビン酸水溶液0.5部をそれぞれ添加し、30分間反応させた後、再度、t−ブチルハイドロパーオキサイド(日本油脂社製、「パーブチルH−69」)の10%水溶液0.5部と5%アスコルビン酸水溶液0.5部をそれぞれ添加し、30分間反応させた。その後、30℃まで冷却した後、10%アンモニア水溶液にて、pHを8.5〜9.5に調整して、200メッシュの金網でろ過し、エマルジョン[I]を得た(固形分64%、粘度800mPa・s、ガラス転移温度(Tg):−49℃)。
【0101】
さらに、得られたエマルジョン[I]固形分100部に対して水分散型の粘着付与樹脂[II]として「スーパーエステルE−865」(荒川化学社製、固形分:50%)10部(固形分として5部)、濡れ剤として「ペレックス OTP」(花王社製、有効成分:70%)0.6部、消泡剤として「ノプコ8034L」(サンノプコ社製)0.42部、増粘剤として「モビニール7010」(ニチゴー・モビニール社製、有効成分:25%)2.8部と「アデカノールUH−420」(ADEKA社製、有効成分30%)0.4部を添加し、エマルジョン型粘着剤組成物を得た。得られたエマルジョン型粘着剤組成物について、上記方法で粘着シートを作製し、上記評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
実施例2〜18、比較例1〜3
表1〜4に示される配合にして、実施例1と同様にエマルジョン型粘着剤組成物を得た。得られたエマルジョン型粘着剤組成物について、上記方法で粘着シートを作製し、上記評価を行った。
実施例及び比較例の評価結果を表1〜4に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

【0106】
【表4】

【0107】
上記の通り、実施例では、貼付け直後から良好なオレフィン接着力を示し、曲面貼付性が良好で高い保持力を示し、かつ高温高湿下に長時間保存されても粘着物性の低下が小さいものであるのに対して、比較例では、常態及び高温高湿下での長期間保存後においてもオレフィン接着力が低く、かつ曲面貼付性と保持力のバランスが取れていないものであり、本発明のエマルジョン型粘着剤組成物が優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明のエマルジョン型粘着剤組成物は、金属板、ガラス板、プラスチック板等の運搬、加工、切断等の際の識別、表示等のための粘着シートやラベルの粘着剤として、また、食品や製品の物流管理用ラベル、配送用の宛名表示ラベル、控え表等のフォーム印刷用原反などの粘着シートまたは粘着テープとして非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体(a1)を含有するエチレン性不飽和単量体(A)を、粘着付与剤(B)の存在下に乳化重合してなるエマルジョン[I]を含有してなることを特徴とするエマルジョン型粘着剤組成物。
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2はエチレン基または−CONH−基であり、iは0または1であり、R3は炭素数1〜6のアルキレン基である。kは0または1であり、Y+は水素イオンまたは対イオンである。)
【請求項2】
さらに反応性界面活性剤の存在下に、エチレン性不飽和単量体(A)を乳化重合してなることを特徴とする請求項1記載のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項3】
一般式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体(a1)が、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸またはその塩であることを特徴とする請求項1または2記載のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項4】
一般式(1)で示されるエチレン性不飽和単量体(a1)の含有量が、エチレン性不飽和単量体(A)の合計量100重量部に対して0.05〜10重量部であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項5】
粘着付与剤(B)が、ロジン系樹脂及びテルペン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項6】
粘着付与剤(B)の含有量が、エチレン性不飽和単量体(A)の合計量100重量部に対して、1〜10重量部であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項7】
反応性界面活性剤の使用量が、エチレン性不飽和単量体(A)の合計量100重量部に対して、0.1〜5重量部であることを特徴とする請求項2〜6いずれか記載のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項8】
エチレン性不飽和単量体(A)が、多官能エチレン性不飽和単量体(a2)を含むことを特徴とする請求項1〜7いずれか記載のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項9】
多官能エチレン性不飽和単量体(a2)の含有量が、エチレン性不飽和単量体(A)の合計量100重量部に対して、0.001〜1重量部であることを特徴とする請求項8記載のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項10】
さらに、水分散型の粘着付与樹脂エマルジョン[II]を含有してなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のエマルジョン型粘着剤組成物。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか記載のエマルジョン型粘着剤組成物からなる粘着剤層を、基材シートの少なくとも片面に設けたことを特徴とする粘着シート。

【公開番号】特開2009−256481(P2009−256481A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107918(P2008−107918)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】