説明

エラストマー不織布積層体を製造するための方法及び装置

制御された分布で不織布ウェブに接合された複数の弾性ストランドを包含するエラストマー不織布積層体を製造するための装置及び方法が提供される。この装置は、複数の弾性ストランドを、回転するドラムの冷却表面上に押し出すための押出機を備え、この押出機は、ストランドを平行な配列で、平行な軸の周りを回転する2つのローラーの間に形成されたニップまで移送する。ドラムは、複数のストランドを制御された分布でニップまで移送し、そこでストランドは不織布と結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー不織布積層体を製造するための方法及び装置に関する。より詳細には、本発明は、複数の弾性ストランドと、不織布材料とを含むエラストマー不織布積層体を製造するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨て流体処理物品は、布地、フィルム、発泡体、弾性体などの連続するウェブを用いて、高速の変換ライン上で製造されることが多い。これら物品の多くは、好ましくは、弾性領域又は構成要素を包含する。典型的には、弾性構成要素は、少なくとも一方側、好ましくは両側を不織布に被覆されている。以下、この不織布及び弾性体の結合体をエラストマー不織布積層体と呼ぶ。
【0003】
エラストマー不織布積層体は、典型的には、不織布に結合された弾性体を包含する。この弾性体としては弾性フィルム又は弾性ストランドが挙げられるが、一般には弾性ストランドの方が弾性フィルムよりも好ましい。その理由は、ストランドは必要とする材料がより少なく、配置の柔軟性及び延伸特性を有するからである。1つのかかる積層体において、複数の弾性ストランドは、延伸した状態のままで不織布に接合され、それにより、弾性ストランドが弛緩すると、不織布には、それが弾性ストランドに結合される位置の間に皺が寄り、波形部を形成する。結果生じた積層体は、波形部が弾性体の伸長を許容する程度まで延伸可能である。かかる積層体は、米国特許第4,720,415号(ヴァンダー・ウィーレン(Vander Wielen)ら、1988年1月19日発行)に開示されている。
【0004】
弾性ストランドを有するエラストマー不織布積層体は、加熱された複数のフィラメントをコンベア又はローラー上に押し出し、そこでフィラメントが冷却され、不織布まで移送されることにより製造されてもよい。あるいは、複数のストランドは、供給ロールから巻き出され、不織布に接合されてもよい。いずれの場合も、不織布上にストランドを均一に配置することは困難であり得る。弾性ストランドは、典型的には不織布まで移送され、その結合体を2つのロールの間に形成されたニップに通すことにより接合される。不織布までの移送中、典型的には、弾性ストランドは支えられていない。作業の振動及び速度により、ストランドは、隣り合うストランドとの整列、重なり、交絡及びまとまりを欠く傾向にある。更に、支えられていないストランドは破断するか、又はコンベアに貼着し、不織布のところまで全く移動しない場合もある。破断したストランドは、コンベア又は移送ロールなどの機器上に蓄積され、最終的には機器の動作不能時間を生じさせ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、複数の連続する弾性ストランドを、制御された分布で、接合する不織布上に配置することができるエラストマー不織布積層体を製造するための方法及び装置を提供することが有益である。更に、不織布まで移送することができなかった弾性ストランドを自動的に捕捉し、通す(threading)ことができる方法及び装置を提供することが有益である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、制御された分布で不織布ウェブに結合された複数の弾性ストランドを包含するエラストマー不織布積層体を製造するための方法及び装置を提供する。この装置は、複数の弾性ストランドをドラムの冷却表面上に押し出すための押出機を備え、この押出機は、複数のストランドを、第2ロールと共にニップを形成する第1ローラーまで運ぶ。第1不織布は、第1不織布供給源から第2ローラーまで供給される。第1ローラーは、ドラムの冷却表面の近くに配置され、移送中の支えられていないストランドの最小スパンを許容しつつ、複数の弾性ストランドを受け取る。装置は、第2接合面を有する第2不織布を、第2ローラーと共にニップを形成する第1ローラーに供給する第2不織布供給源を備えてもよい。この実施形態の場合、複数の弾性ストランドは、第2不織布が第1ローラーを通り過ぎる時に、第2接合面上に直接運ばれる。第1不織布及び第2不織布は、第1の速度V1でドラムの冷却表面から運ばれた弾性ストランドをその間に挟んだ状態で、第2の速度V2で向かい合わせの配置でニップを通過する。ここで、V2はV1よりも大きい。
【0007】
好ましい実施形態において、装置は、ドラムの冷却表面に近接し、複数のストランドが第1ローラーに移送される点から反時計周りに配置されるアイドラーローラーを備える。アイドラーローラーは、第1不織布の第1接合面をドラムの冷却表面に接触させ、第1接合面が、ドラムの冷却表面に貼着して、第1ローラーまで移送することができなかった弾性ストランドを除去することを可能にする。ドラムの冷却表面を一掃した後、ニップを形成する第2ローラーに隣接して配置されたピボットローラーは、第1不織布の方向を反転させ、第1接合面上に集められたストランドがそこから排除されることを可能とする。一連のローラーは、まず第1接合面をピボットローラーの下に送ることにより、第1不織布を、初めにピボットローラーから離間させ、次いでニップを形成する第2ローラーの辺りまで戻し、ピボットローラーで排除された弾性ストランドを再収集する。ドラムの冷却表面を一掃することは、ドラム表面を、弾性ストランドのない状態に保つだけでなく、始動中、複数の弾性ストランドを第1ローラーまで通すための手段を提供する。
【0008】
代替実施形態において、複数の弾性ストランドを間に挟んだ第1及び第2不織布を含むエラストマー不織布積層体は、ニップから、S字状を形成する少なくとも2対のローラーまで進められることができる。S字状を形成する第1ロール対は、V2にほぼ等しい表面速度を付与する速度で回転する。S字状を形成する第2ロール対は、V2よりも大きい表面速度V3を付与する速度で回転する。加速は、積層体に対して過度な歪みを与え、更なる延伸を引き起こす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書は、本発明と見なされる主題を特に指摘し明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本発明は、添付の図面と関連させた次の説明から更によく理解されると考えられる。いずれの図面も必ずしも一律の縮尺に従ってはいない。
【0010】
本発明の方法及び装置は、使い捨て流体処理物品を含む様々な物品での使用に適する、消費者にとってより望ましいエラストマー不織布積層体を提供するべく設計される。エラストマー不織布積層体は、複数の弾性ストランドからなる少なくとも1つの層と、不織布材料からなる少なくとも1つの層とから構成された不織布及び弾性体を含む。本方法及び装置は、制御された分布の弾性ストランドを有するエラストマー不織布積層体を効果的に製造することができる。
【0011】
(定義)
以下の専門用語は、本明細書において、各用語の明らかな意味と矛盾せず、本明細書に示される更なる詳細を伴って使用される。
【0012】
「ライブ延伸」は、弾性体を延伸し、延伸した弾性体を不織布に結合することを包含する。結合の後、延伸した弾性体は解放され、それにより弾性体が収縮し、結果として「波形化された」不織布が得られる。不織布が少なくとも1つの元来のフラットな寸法に達する点近くまで、波形化された部分が引っ張られると、波形化された不織布は延伸し得る。
【0013】
「連続するフィラメント」は、連続して成形されたポリマーフィラメントのストランドを指す。かかるフィラメントは、ある一定の種類及び構成の毛管孔を内部に有するダイヘッドを通して溶融材料を押し出すことによって成形される。
【0014】
「制御された分布」は、ストランドの重なり又は束を有さない弾性ストランドの平行な配置を指し、弾性ストランド間の距離の変化は、押出点から積層点までが最小である。
【0015】
「変換設備」は、順次組立てられて使い捨て流体処理物品の完成品となる、使い捨て流体処理物品の1つ以上の構成要素を製造するあらゆる製造機器を指す。それはまた、消費者が使用するのに完全である使い捨て流体処理物品の完成品を製造してもよい。
【0016】
「弾性体」、「エラストマー」又は「エラストマーの」は、弾性的な特性を呈するポリマーを指す。それらは、その弛緩した状態の初期の長さに力を加えると、初期の長さよりも10%を超えて長い伸長された長さへと延伸又は伸長することができ、加えられた力を解放すると、ほぼその初期の長さまで実質的に回復するあらゆる材料を含む。
【0017】
「押出装置」又は「押出機」は、本明細書において、1つ以上の押出ダイを通してポリマーのような材料の溶融流を押出すことができるあらゆる機械を指す。
【0018】
用語「押し出す」又は「押し出し」は、本明細書において、加熱されたエラストマーが1つ以上の押出しダイに入れられて、弾性体の溶融流を形成し、この弾性体の溶融流が冷却して固体となるプロセスを指す。
【0019】
用語「溶融流」は、本明細書において、押出装置を出たポリマーのような加熱された液体材料の直線的な溶着物を指す。この溶融流は、ポリマー材料の連続するフィラメント、不連続的な繊維又は連続するフィルムが挙げられる。冷却されると、溶融流は弾性ストランドを形成する。
【0020】
用語「接合された」は、本明細書において、材料又は構成要素が、別の材料又は構成要素に直接的又は(1つ以上の中間部材により)間接的に固定される構成を包含する。間接的な接合の例は接着剤である。直接的な結合としては、熱及び/又は圧力結合が挙げられる。接合には、例えば接着剤、熱結合、圧力結合、超音波結合などの当該技術分野において既知のあらゆる手段が含まれる。
【0021】
用語「不織布」は、本明細書において、スパンボンド、メルトブロウンなどの方法によって、連続する(長い)フィラメント(繊維)及び/又は不連続の(短い)フィラメント(繊維)から作成された材料を指す。不織布は、織った又は編んだフィラメントパターンを有さない。
【0022】
不織布は、典型的には、機械方向及び機械横方向を有するものとして記載される。機械方向は、不織布が製造される方向である。横断方向は、機械方向に直交する方向である。不織布は、典型的には、製造時の長い方向又はロールされる方向に相当する機械方向を伴って形成される。機械方向はまた、不織布における繊維の配向の主たる方向である。
【0023】
図1は、エラストマー不織布積層体20を製造するための、本発明による装置100の側面図を示す。装置100は、軸114の周りを回転し、表面速度Vを有するドラム110を備える。ドラム110はグリコール冷却され、冷却された外側表面112を提供する。冷却された外側表面の温度は、0℃〜5℃に維持される。配向の目的で、ドラム110は、12時から3時の間の第1の四分円111aと、3時から6時の間の第2の四分円111bと、6時から9時の間の第3の四分円111cと、9時から12時の間の第4の四分円111dとを有する。
【0024】
ドラム110は、あらゆるサイズの積層体又は加工設備(process set up)に適応するようなサイズに形成され得る。例えば、エラストマー不織布積層体が今後の使用のためにロール上又はボックス内に保管されるオフラインの材料製造作業用に、より大きなドラム110を利用してもよい。変換作業の上流工程が組み込まれたオンライン作業には、より小さなドラムサイズが必要とされることもある。オフライン作業の場合、ドラムの直径はおよそ1m以上であってもよく、一方、オンライン作業の場合、ドラムの直径はおよそ0.5m以下であってもよい。同様に、オフライン作業の場合、ドラムの幅はおよそ1m以上であってもよく、一方、オンライン作業の場合、ドラムの幅はおよそ1m以下に制限されてもよい。ドラム110の回転は、作業者の需要に応じて速度の増減(ramping up or down)が可能な変速モータにより駆動され得る。
【0025】
装置100は、エラストマーポリマーの溶融流を押し出すための押出機120を備える。押出機120は、複数のノズル122を通してポリマーの溶融流を押し出して、複数の弾性ストランド23を形成し、それらストランド23は平行な配列で、回転するドラム110の冷却表面112上に流出する。好ましくは、弾性ストランドは、隣接する任意の2つのストランド間の距離が約1mm〜約3mmであるように、ドラム110の冷却表面112上に押し出される。より好ましくは、任意の隣り合う2つのストランド間の距離は、約1.5mmである。押出機120は、第1四分円111aと第4の111dの間に設置され、複数のストランド23を12時近くのドラム110の冷却表面112上に配列する。
【0026】
押出機120は、好ましくは、内蔵型計量ポンプ、バルブ及びノズル構成を包含し、計量ポンプ及びバルブは、ポリマーの制御された排出を行うために、ノズルに近接して配置される。ポリマーの制御された排出は、特に始動及び停止中、十分な供給量のポリマーがドラムの冷却表面に供給されることを保証する。停止中の過剰なポリマーの流出は、ドラムの冷却表面の局部的な加熱を引き起こす可能性があり、ドラムの表面に貼着した弾性ストランドによるポリマーの蓄積につながり得る。
【0027】
第1及び第2ローラー130、132は、第3の四分円111cのドラム110の冷却表面112の近くに設置される。第1及び第2ローラー130、132は、2つの平行な軸の周りを回転し、それらの間にニップ134を形成し、各々は表面速度V2を付与する。各ローラーの表面速度V2は、ドラムの表面速度V1よりも大きい。
【0028】
第1ローラー130は、ドラム110の冷却表面112から第1ローラー130まで移動する、支えられていないストランドのスパン150を最小にするべく、ドラム110の冷却表面112に近接して配置される。好ましくは、第1ローラーは、実際に接触することなく、できる限りドラムの冷却表面の近くに配置される。実際に測定された2つを隔てる距離は、ドラム及び第1ローラーのサイズによって変わる。例えば、ドラムの直径が1mであり、且つ第1ローラーの直径が150mmである場合、ドラム110の冷却表面112と第1ローラー130との距離は、約0.5mm〜約5mmであり得る。支えられていないストランドのスパン150の対応する長さは、約18mm〜約75mmであり得る。より小さいサイズのドラムの場合、支えられていないストランドのスパン150の長さはより短くなり得る。例えば、150mmの第1ローラー130と直径0.5mのドラムは、第1ローラー130が、ドラム110の冷却表面112までほぼ1mmのところに配置されることを可能とし、支えられていないストランドのスパン150の長さを約22mmに制限することができる。
【0029】
第1ローラー130は、ドラム110の冷却表面112の近くで複数のストランド23を受け取り、ドラム110の冷却表面112と第1ローラー130の間の支えられていないストランドのスパン150を最小にする。好ましくは、複数のストランド23は、ドラム110の冷却表面112から第1ローラーまで移動し、それにより、ストランドは、ドラムの冷却表面及び第1ローラー130の表面の両方にほぼ接触し、支えられていない弾性ストランド23のスパン150の長さは、約10mm〜約200mmと最小である。好ましくは、移動中の支えられていない弾性ストランド23のスパン150の長さは、約20mm〜約50mmである。移動中の支えられていないストランドのスパンの長さを最小にすることにより、弾性ストランドは、制御された分布で第1ローラーまで移動されることができ、隣接する任意の2つのストランド間の測定距離は、押出点から積層点までの間30%以下で変化する。例えば、押出機での元来の間隔が1mmに設定されている場合、隣接する任意の2つのストランドの間隔は、0.7mm〜1.3mmである。
【0030】
第1不織布供給源140は、第1接合面32を有する第1不織布21を、第1ローラー130と共にニップ134を形成する第2ローラー132に供給する。第1不織布供給源140と第2ローラー132の間に位置する第1接着剤供給源142は、第1接合面22に接着剤を供給する。第1不織布21及び複数の弾性ストランド23は、第1ローラー130及び第2ローラー132により形成されるニップ134を通過し、積層体を形成する。ドラム110の冷却表面112の表面速度V1と、第1ローラー130及び第2ローラー132の表面速度V2の速度差により、複数の弾性ストランド23はニップのところで歪みを与えられる。ストランドから歪みが軽減されると、不織布に波形部が形成され、エラストマー不織布積層体20を提供する。
【0031】
ニップ134を出ると、エラストマー不織布積層体20は変換作業に直接運ばれてもよく、この変換作業は、積層体を処理して、弾性ウエストバンド、弾性カフ又は弾性サイドパネルのような使い捨て吸収性物品の構成要素を形成する。あるいは、エラストマー不織布積層体20は、第2不織布又は他の材料と接合され、今後の使用のためにロール上又はボックス内に保管されてもよい。
【0032】
複数のストランド23を第1接合面22に接合する工程から生じた、弾性ストランド23間における第1接合面22上の露出した接着剤は、下流の変換作業を妨害し、エラストマー不織布積層体がロール上に保管されるのを実質的に不可能にする可能性がある。従って、第1不織布21の第1接合面22上に曝される弾性ストランド23を被覆することが好ましい。かかる被覆としては、ニップ134の下流で第1接合面22に接合される可撓性剥離紙が挙げられる。この剥離紙は、積層体がロール上に保管されることを可能とし、また、後続の作業で除去され得る。
【0033】
あるいは、第1不織布21及び複数の弾性ストランド23と接合されるべき第2不織布24を供給するべく、第2不織布供給源160が設けられてもよい。図2に示すように、第2不織布供給源160は、第2接合面25を有する第2不織布24を、第2ロール132と共にニップ134を形成する第1ローラー130に供給する。第1不織布21及び第2不織布24は、複数の弾性ストランド23を間に挟んで、第1ローラー130及び第2ローラー132によって形成されたニップ134を通過する。ニップ134において、機械方向40に伸張された結果として、第1の歪みが弾性ストランド23上に生じる。この歪みは、第1速度V1でドラム110の冷却表面112上を移動する弾性ストランド23と、第2速度V2で第2ローラー132及び第1ローラー130のそれぞれの上を移動する第1不織布21及び第2不織布24との速度差の結果として誘発される。第1速度V1と第2速度V2との速度差が大きい程、結果生じる歪みも大きい。本発明の場合、速度差は、約20%〜約500%の歪みを複数の弾性ストランド23上に生成する。
【0034】
ニップ134を出ると、エラストマー不織布積層体の伸張性は、ウェブに対して過度な歪みを与えることにより、更に大きくなり得る。例えば、図2に示す実施形態において、ニップ134の下流でS字状を形成する少なくとも2対の回転するローラー210、220に積層体を通すことにより、エラストマー不織布積層体20は第2の歪みに曝される。第1S字状212を形成する第1ローラー対210は表面速度V2を付与し、第2S字状222を形成する第2ローラー対220はV2よりも大きい表面速度V3を付与する。積層体がS字状212、222を通って運ばれる時に経験する速度の増加は、積層体20に対して過度な歪みを与え、積層体の伸張性を少なくとも20%増加させることができる。
【0035】
破断し、ドラムの表面に貼着して、第1ローラーまで移動し損なう傾向を有する弾性ストランドによって引き起こされるドラム上での蓄積の結果として、弾性ストランドを押出機から回転ドラムを介して第1ローラーまで運ぶことを長時間にわたって継続するのは困難である。更に、軽量の弾性ストランドがドラムの表面に貼着するので、始動時には、第1ローラー上への移送を自動的に行うのではなく、弾性ストランドをドラムの冷却表面から第1ローラーまで手で通すことがしばしば必要とされる。従って、通常作業中はロールの清潔さを維持し、始動中はストランドを自動で通すための更なる装置を包含する代替実施形態が図3に示される。図3に例証する実施形態は、第1不織布21と、第2不織布24とを含むエラストマー積層体を生成するが、この装置は、単一の不織布を含むエラストマー不織布積層体を製造するための、図1に例証される装置に等しく適用可能である。
【0036】
図3に示すように、アイドラーローラー170は、第1不織布供給源140と第2ローラー132の間に位置し、ドラム110の冷却表面112の第2の四分円111bに近接して配置される。アイドラーローラー170は、第1不織布21の第1接合面22を、第2ローラー132に到達する前に、ドラム110の冷却表面112と接触させる。ドラム110の冷却表面112と接触させることにより、第1接合面22は、ドラム110の冷却表面112に貼着し、第1ローラー130及び第2ローラー132により形成されたニップ134まで移送することができなった弾性ストランドを除去することができる。
【0037】
ドラム110の冷却表面112から浮遊ストランドを除去した後、第1不織布21はピボットローラー180まで進められることができ、このピボットローラー180は、ニップ134を形成する第2ローラー132に近接し、アイドラーローラー170から選択距離をもって配置される。ピボットローラー180は、第2ローラー132の近くで第1不織布21を反転方向に押しやり、それによってドラム110の冷却表面112から集められた浮遊ストランドを、第1接合面22から排除するように配置され得る。ピボットローラーは、約20mm未満の直径を有する小さいものが好ましい。代替実施形態において、ピボットローラーの代わりに静電板又はシートを使用することができるが、静電板又はシートは不織布上に歪みを誘発してネッキングを引き起こす可能性があるので、ローラーが好ましい。
【0038】
ピボットローラー180から、第1不織布24は、一連のローラー190まで進められることができる。一連のローラー190は、ピボットローラー180に近づく第1不織布21と、ピボットローラー180から離れる第1不織布21との角度185が0°〜90°になるように、ピボットローラー180に対して配置される。図3に示すように、一連のローラー190は、ピボットローラー180の下に第1接合面22を送る経路に沿って、第1不織布21を、初めにピボットローラー180から離間させ、次いでニップ134を形成する第2ローラー132まで戻し、それにより、ピボットローラー180で第1接合面22から排除されたストランドは、第2ローラー132に到達する前に、第1接合面22上に再収集されることができる。一連のローラー190はまた、ピボットローラー180の下を通る前に、第1接合面22に第1接着剤を供給する第1接着剤アプリケータ142まで第1不織布21を導くように配置されることができる。
【0039】
第1不織布21の第1接合面22を押しやり、第2の四分円111bのドラム110の冷却表面112と接触させることは、初期始動中に装置がそれ自身で自動的に通すことを可能にするなどの他の利点を有する。初期始動中、弾性ストランド23は、自動的にドラム110の冷却表面112から離間させ、第1ローラー130まで移動する程重くはない。結果として、弾性ストランド23は、第3の四分円111cにある第1ローラー130を迂回して、ドラム110の冷却表面112に貼着する。第1接合面22を、第2の四分円111bのドラム110の冷却表面112と接触させることにより、弾性ストランド23は、ドラム110の冷却表面112から除去され、第1ローラー130及び第2ローラー132の間に形成されたニップ134の方に再び導かれる。
【0040】
1つの実施形態において、ニップ134の下流に位置し、S字状(S字経路)を形成する少なくとも2対の回転するローラー200にエラストマー積層体を通すことにより、第1不織布21と第2不織布24の間に挟まれた複数の弾性ストランド23は、第2の歪みに曝される。第1のS字状212を形成する第1ローラー対210は表面速度V2を付与し、第2のS字状222を形成する第2ローラー対220は、V2よりも大きい表面速度V3を付与する。速度の増加は積層体20に対して過度な歪みを与え(overstrains)、積層体の伸張性を少なくとも20%増加させることができる。
【0041】
本発明の装置及び方法を使用して製造されたエラストマー不織布積層体が、図4a及び図4bに例証されている。図4aは、第1不織布21及び第2不織布24が弾性ストランド23に接合された後に生じる波形部の丘28と波形部の谷29を有する、第1不織布21及び第2不織布24の波形部を誇張した形で示している。波形部は、交互に並ぶ不規則な波形部の丘28及び波形部の谷29を説明するのに用いられる。示すように、第1不織布21及び第2不織布24は、波形部の丘28及び波形部の谷29が機械方向40に交互に並んだ状態で、横断方向45に波形化されている。エラストマー積層体20上において機械方向40に歪みが生じると、波形部は、第1不織布21及び第2不織布24が複数の弾性ストランド23と共に少なくとも力の壁(force wall)に到達する点まで伸張することを可能とし、この力の壁は、ほぼ、波形部が平らになるところである。歪みが除去されると、複数の弾性ストランド23は、概ね元来の弛緩した長さまで収縮して戻る。この収縮が、観察された第1不織布21及び第2不織布24の波形部を生じさせる。
【0042】
歪みは、負荷を受けた複数の弾性ストランド23における長さの増加分の百分率として測定される。例えば、延伸可能なストランドの自由長さが15センチメートル(cm)であるストランドが負荷を受けると、15cmのストランド弾性体は18cm長になる。この3cmという長さの増加分は、15cmの20%(3/15)、即ち、20%の歪みである。本発明に従って製造されたエラストマー不織布20は、約20%〜約500%、好ましくは約100%〜約400%、より好ましくは約200%〜約400%の歪みを有し得る。
【0043】
エラストマー不織布積層体20の主要な機能は延伸可能であることであり、エラストマー不織布積層体20は、力の壁に到達する前、少なくとも50%の歪みを有することができる。力の壁は、一般に、波形部がほぼ平らになる点として記載されているが、力の壁は、典型的には、歪みが10%増加するのに必要とされる力が、少なくとも約20%増加する時に生じる。設計上の選択及びエラストマー不織布積層体の特定用途に応じて、エラストマー不織布積層体20は、力の壁に到達する前、50%、100%、200%又は300%よりも大きい歪みに耐えるように作成されることができる。好ましくは、本発明に従って製造されたエラストマー不織布積層体20は、力の壁に到達する前、少なくとも100%の歪みを有することができる。より好ましくは、エラストマー不織布積層体20は、力の壁に到達する前、少なくとも200%の歪みを有することができる。
【0044】
第1不織布21及び第2不織布24は、当該技術分野において既知のあらゆる不織布材料を含んでもよい。第1不織布21及び第2不織布24は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、セルロース、ポリアミド又はかかる材料の組み合わせから作成される繊維を含んでもよい。1つの材料の繊維、又は異なる材料若しくは材料の組み合わせの繊維が、第1不織布21及び/又は第2不織布24に使用されてもよい。
【0045】
第1不織布21及び/又は第2不織布24を作成するために、当該技術分野において既知のいかなる方法を使用してもよい。代表的な方法としては、スパンボンド、スパンボンド・メルトブロウン・スパンボンド(SMS)、スパンボンド・メルトブロウン・メルトブロウン・スパンボンド(SMMS)、カードなどが挙げられる。特に許容可能な不織布としては、高伸長カード(HEC)不織布及び深活性化(deep activation)ポリプロピレン(DAPP)不織布などが挙げられる。
【0046】
第1不織布21及び第2不織布24は、内的に結合される繊維を含み、これらの繊維には、ニードルパンチ繊維、水交絡繊維、スパンボンド繊維、熱結合繊維、ラテックス結合、粉末結合などの様々な種類の化学的結合によって結合される繊維が含まれる。好ましくは、第1不織布21及び/又は第2不織布24の坪量は、約10gsm〜約30gsmの範囲にある。
【0047】
弾性ストランド23は、好ましくは、第1不織布21及び第2不織布24の間に、平行且つ均一に離間した配置で延在する。しかしながら、弾性ストランド23は、あらゆる所望の構成で配置されてもよい。例えば、ストランドは、個々のストランドの厚さ又はそれらの間の間隔を変えることにより、エラストマー不織布積層体20に特定の力特性を付与するように配置されてもよい。
【0048】
更に、弾性ストランド23の形状は制限されない。例えば、典型的な弾性ストランド23は円形の横断面形状を有するが、それら複数の弾性ストランドは、三葉形状又は平坦な(即ち、「リボン」状の)形状などの異なる形状を有する場合もある。更に、弾性ストランド23の厚さ又は直径は、特定用途に適応するべく変更してもよい。
【0049】
複数の弾性ストランド23は、好ましくは、弾力的な弾性熱可塑性材料から作成される。弾性ストランドは液状弾性体から作成されてもよく、この液状弾性体は、ダイを通して押し出され、ストランド弾性体の所望の直径及び/又は形状を達成することができる。弾性ストランドは、好ましくは、スチレンブロックコポリマー、ポリウレタン又はラテックスゴムであって、約0.15mm〜約0.5mmの直径及び約600kg/m〜約1250kg/mの密度を有する。
【0050】
第1不織布21、第2不織布24及び複数の弾性ストランド23は接着剤で結合されるものとして記載されているが、それらは、当該技術分野において既知のあらゆる接合手段により接合されてもよい。適した接合手段及び/又は接合方法の幾つかの例として、接着剤、粘着剤、熱結合、圧力結合、機械的結合、超音波結合、高周波結合及び/又はかかる材料を接合する既知の方法のあらゆる組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で引用される全ての文献は、その関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いかなる文献の引用も、それが本発明に関する先行技術であるということの容認として解釈されるべきでない。
【0052】
本発明の特定の実施形態について説明し記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、その他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には自明である。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】不織布と複数の弾性体のストランドを積層し、本発明によるエラストマー不織布積層体を形成するための装置の概略的な側面立面図。
【図2】複数の弾性ストランドが間に挟まれた状態で、第1不織布及び第2不織布を積層するための装置の概略的な側面立面図。
【図3】図2の装置の概略的な側面立面図であり、この装置は、ニップで複数の弾性ストランドと接合する前に、第1不織布が、残った弾性ストランドをドラムから一掃することを可能とする機構を包含する。
【図4a】図1〜図3に示す装置上で製造されたエラストマー不織布積層体の側面図。
【図4b】図4aに示すエラストマー不織布積層体の横断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの不織布と複数の弾性ストランドとを備えた不織布エラストマー積層体を製造するための装置であって、
a)表面速度Vで軸の周りを回転する表面が冷却されたドラムであって、12時から3時の間の第1の四分円と、3時から6時の間の第2の四分円と、6時から9時の間の第3の四分円と、9時から12時の間の第4の四分円と、を有する表面が冷却されたドラムと、
b)前記第1の四分円と第2の四分円との間の前記ドラムの冷却された表面上に複数の弾性ストランドを平行な配列で押し出す押出機と、
c)前記ドラムの冷却表面に近接して配置された第1ローラー、および前記第1ローラーとの間でニップを形成する第2ローラーであって、それぞれ前記表面速度Vよりも大きい表面速度Vを有する第1ローラー及び第2ローラーと、
d)第1接合面を有する第1不織布を、前記ニップを形成する前記第2ローラーに供給する第1不織布供給源と、
e)前記ニップの前に、前記第1接合面に接着剤を供給するための第1接着剤供給源と、を備え、
前記ドラムは、前記複数の弾性ストランドを前記第1ローラーまで移送し、前記ドラムの冷却表面と前記第1ローラーとの間の支えられていないストランドのスパンは、前記ニップに進入し前記第1不織布の第1接合面に接合する弾性ストランドの制御された分布を付与するべく最小化される装置。
【請求項2】
前記押出機は、内蔵型計量ポンプ、バルブ及びノズル構成を備え、前記計量ポンプ及びバルブは、制御されたポリマーの排出を行うべく前記ノズルに近接して配置され、始動及び停止中にポリマーの流出を制限する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ドラムの冷却表面と前記第1ローラーとの間の前記支えられていないストランドのスパンは、前記ドラムの冷却表面及び前記第1ローラーの両方に接触している請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ドラムの冷却表面と前記第1ローラーとの間の前記支えられていないストランドのスパンは、約10mm〜約200mmである請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ドラムの冷却表面と前記第1ローラーとの間の支えられていないストランドのスパンは、約20mm〜約50mmである請求項1に記載の装置。
【請求項6】
第2接合面を有する第2不織布を、前記ニップを形成する前記第1ローラーに供給する第2不織布供給源をさらに備え、前記第1不織布及び第2不織布の第1接合面及び第2接合面は、前記ニップのところで、前記複数の弾性ストランドを前記制御された分布で間に挟み、向かい合わせの配置で接合される請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第2不織布供給源と前記ニップを形成する前記第1ローラーとの間に配置され、前記ニップに到達する前に前記第2接合面に接着剤を供給する第2接着剤供給源をさらに備えた請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ニップに続いて配置され2つのS字状を形成する少なくとも2対のローラーをさらに備え、前記第1ローラー対の回転は表面速度V2を付与し、前記第2ローラー対の回転は、V2よりも大きい表面速度V3を付与し、前記S字状は前記エラストマー不織布積層体に対して過度な歪みを与え、その伸張性を少なくとも20%増加させる請求項6に記載の装置。
【請求項9】
a)前記第1不織布供給源と前記第2ローラーとの間に、前記ドラムの冷却表面に近接して配置されたアイドラーローラーであって、前記第1接合面を前記ドラムの冷却表面と接触させ、これにより、何らかの理由により前記ニップを形成する前記第1ローラーへ移送することができなかったストランドを、前記第1接合面によって前記ドラムの冷却表面から取り除く、アイドラーローラーと、
b)前記ニップを形成する前記第2ローラーに近接し前記アイドラーローラーから選択距離をもって配置されたピボットローラーであって、前記第2ローラーの近くで前記第1不織布の方向を反転させ、前記ドラムの冷却表面から集められたストランドを前記第1接合面から除去するピボットローラーと、
c)前記ピボットローラーの近くに配置された一連のローラーであって、前記第1不織布を、初めに前記ピボットローラーから離間させ、次いで前記ニップを形成する前記第2ローラーまで戻して、前記第1接合面を前記ピボットローラーの下方に送り、これにより、前記ニップに進入する前に、前記ピボットローラーで除去された破断した弾性ストランドを前記第1接合面上に集めるように構成された一連のローラーと、をさらに備えた請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記アイドラーローラー及びピボットローラーは、前記第1不織布の第1接合面が、前記アイドラーローラーと前記ピボットローラーとの間の前記第2の四分円における前記ドラムの冷却表面と接触するように、連続して配置される請求項10に記載の装置。
【請求項11】
前記一連のローラーは、前記ピボットローラーに近づく第1不織布と、前記ピボットローラーから離れる前記第1不織布の角度と、が0°〜90°であるように、前記ピボットローラーに対して配置される請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第1不織布の第1接合面に接合された任意の2つの隣り合う弾性ストランド間の測定距離は、押出機から平行な配列で前記ドラムの冷却表面上に押し出された該2つの隣り合う弾性ストランド間の測定距離から30%未満で変化する請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−525895(P2006−525895A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515060(P2006−515060)
【出願日】平成16年6月2日(2004.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/017254
【国際公開番号】WO2004/110749
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】