説明

エリスロマイシンおよびそれらの調製法

14員アグリコン鋳型を提供し、およびこれを14位および/または15位でそれをヒドロキシル化することが可能な菌株へ供給することによる、官能基を14位および/または15位に有する、エリスロマイシンのような14員マクロライド化合物を提供する。この菌株は、スクリーニングにより、公知の菌株から選択されるか(例えば、ストレプトミセス・エウリセルマス(Streptomyces eurythermus)DSM 40014)、またはシトクロムP450酵素を発現するように菌株を遺伝子操作することにより作出されることにより見出されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一連の14員マクロライド;特に、エリスロノリドおよびエリスロマイシンを含むものの組成物および生成法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
エリスロマイシンは、多くの重要な抗生物質、抗真菌剤、抗癌剤および免疫抑制の化合物も含む、天然の生成物ポリケチドクラスの一員である(Staunton and Wilkinson、Chem. Rev. (1997) 97:2611-2629)。このクラスの化合物は、広範な生物活性を有し、および広範な病態にわたる治療薬を提供する可能性があるので、これらの化合物はかなり興味深く魅力的である。
【0003】
より最近になって、これらの化合物は、長さおよび置換が変動する鎖を生成する脂肪酸生合成に類似した様式でのアシル-チオエステルの繰返しの段階的縮合により合成されるという発見は、これらの分子が組立てられる(put together)酵素機構を明らかにするための研究にとって魅力的である。図1は、エリスロマイシンがこれらの基本的ケチド単位から集成される方法を示している。天然のポリケチド間で認められる構造の多様性は一部、「開始物(starter)」または「伸長物(extender)」単位としての、(通常)アセテート(マロニル-CoA)またはプロピオネート(メチルマロニル-CoA)の選択から生じている(しかし場合によっては、様々な他の種類の単位のひとつが選択されても良い)。更なる構造の多様性は、各縮合後に形成されたβ-ケト基のプロセッシングの程度の異なりによりもたらされる。プロセッシング工程の例は、β-ヒドロキシアシル-への還元、還元に続く2-エノイル-への脱水、および飽和したアシル-チオエステルへの完全な還元を含む。これらのプロセッシング工程の立体化学上の結果は、鎖伸長の各サイクルについても特定される。α-炭素または酸素置換基でのメチル化も、時折観察される。これらの過程は、ポリケチドシンターゼにより、触媒され、制御される。その他の酵素は、例えば、メチル化、酸化またはグリコシル化など、完成されたポリケチド鎖がPKSから放出される後に、更に構造多様性を追加する。多くのポリケチドシンターゼの種類が同定されており、これらのシンターゼが広範に類似反応を触媒する間に、これらは非常に異なる方法で作用し、および著しく異なるタンパク質四次構造を有する。
【0004】
広範なポリケチドが、天然の給源から同定されており、および天然のプールからの可能性のある多様性の小さい画分のみが、今日までにサンプリングされていると考えられている。新規構造のポリケチドを見つけるかまたは生成する代替経路を発見することは、明確な関心がある。I型ポリケチドの生合成は、秩序のある様式で生じるという発見(Cortes et al., Nature (1990) 348, 176-178, Donadio et al., Science (1991) 252,675-679, Donadio et al., Gene (1992) 111,51-60, Donadio PNAS (1992) 90,7119-7123, W093/13663)、およびこれらの巨大な多機能性タンパク質をコードしている遺伝子の一部は、タンパク質間で交換され、「ハイブリッドPKS」を生成することを示した引き続きの実験は、生物学的経路で生成することができる分子の可能性のあるレパートリーを大きく拡大している(US 6,271,255;WO 98/01546)。例えば、エリスロマイシンクラスターのメチルマロニル-CoAに特異的なアセチルトランスフェラーゼを、マロニル-CoAに特異的なATと交換し、予想された位置にメチル基を欠いているマクロライドポリケチドコアを生合成することができるハイブリッドPKS含有菌株を作出することが可能である(WO 98/01546, Petkovic, H et al, 2003, J Antibiot, (Tokyo) 56(6):543-51)。同様に、環の周りの位置に変更された酸化状態を残すために、還元ループを置換または変更することは可能である(WO 98/01546, WO 98/01571, およびWO 00/01827)。このようなI型PKSの遺伝子操作に関連する技術は、そのようなI型酵素により合成された全てのポリケチドに適用することができる。
【0005】
市販の有用な化合物を得るための多くの場合において、ポリケチドは、半合成的誘導体化のための鋳型として使用される。分子の活性の変更/修飾に加え、そのような誘導体化は、例えば変更されたバイオアベイラビリティまたは安定性であるが、これらに限定されるものではないその薬理学的特性へ影響を及ぼす一連の特性を分子へ付与する。
【0006】
そのような分子を生合成するこれらのシステムの遺伝子操作の重要な局面のひとつは、例えば還元ループの成分の置換によるメチレン基のヒドロキシル基との交換のような、そのような誘導体基の付加のために化学的「操作」を提供する能力である。このような修飾されたポリケチドをコンビナトリアルケミストリープログラムへ供給する能力は、生成され、かつ最適活性についてまたは実際完全に異なる特性/活性についてスクリーニングすることができるよう変更された分子の数を大きく増加する。しかし加えて誘導体化されない操作された分子も、当初の分子に勝る望ましい特性を有することがある。
【0007】
エリスロマイシンは、14員マクロライド環を含むポリケチド分子のクラスの重要なメンバーのひとつである。このクラスの他のメンバーは、オレアンドマイシン、メガロマイシン、ナルボマイシンおよびピクロマイシンを含むが、これらに限定されるものではない(Shiomi, K & Omura S, 2002, Macrolide Antibiotics: Chemistry, Biology and Practice, Ed. Omura S, Academic Press, 2nd Edition, pp1-56)。14員マクロライドのクラスの様々なメンバーは、環の周囲の位置で一連の酸化状態をおよび環の周囲に一連の置換基(例えば、H-、メチル-、メトキシ-またはエチル-であるが、これらに限定されるものではない)を示すことができる。14員マクロライドは、グリコシル基のような他の基の付加またはその他の修飾(例えば、メチル化、アセチル化など)により修飾することができる。その他の修飾は、化学的に導入されている(Sunazuka, T et al., 2002, Macrolide Antibiotics: Chemistry, Biology and Practice, Ed. Omura S, Academic Press, 2nd Edition, pp99-180)。
【0008】
エリスロマイシン分子に対する天然の利用可能な化学操作の多くは、変更されたエリスロマイシンを生成するために、既に使用されている。例えば、6-ヒドロキシ基はメチル化され、市販の抗生物質クラリスロマイシンを生成する。同じ位置で、一連の他の基を用い修飾され、C6-O-アリル中間体を経由しABT-773などの化合物を生成する(WO 98/09978;Ma et al., J. Med Chem (2001) 44:4137-4156)。加えて、11-および12-ヒドロキシ基が誘導体化されることが報告されている(Ku et al., J. Antibiotics, (1999) 52:908-912)。C11およびC12での第2級および第3級ヒドロキシル基を使用し、各々、例えばテリスロマイシンにおいて認められるような、C11,C12-環状カルバメート構造を生成する(Bryskier A., (2000) Clin Microbiol Infect., 6(12):661-9)。9-ケト基は、アジスロマイシン誘導体を生成するために使用され、およびC9アミノケトリドを調製するために使用される(Ballow CH & Amsden GW, 1992, Ann Pharmacother.;26(10):1253-61;Retsema J and Wenchi F;2001, International Journal of Antimicrobial Agents, 18, ppS3-S10)。C3のデオキシヘキソロース部分の除去および得られる第2級ヒドロキシ基のケト基への酸化は、一連のケトリドを生じる。加えて糖部分に対する利用可能な化学操作も修飾されている。Kanekoとその同僚は(Kaneko et al., Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10,1-23)、マクロライド系抗生物質の分野における最新の開発のいくつかを検証し、その分子の周囲の多くの他の同様の修飾を説明しているが、これは可能な修飾の包括的なリストではあり得そうもない。
【0009】
分子の周囲の化学操作の数を更に増加する能力は、半合成的誘導体化のためにそのような操作を利用することにより、新たなエリスロマイシン化合物のシリーズを生じると考えられる。実際現在の現存する操作を利用する多くの化学的方法は、それらが分子に組込まれ得るならば、新規化学操作を誘導するために使用することもできる。加えてこれまでに存在しない種類の化学操作を分子に組込むことが可能である場合は、化学の異なるアレイを使用することが可能であると思われる。例えば化学者が、第1級アルコール基に特異的な化学的方法を用い、第1級ヒドロキシル基を特異的に誘導体化することを可能にするように、分子が第2級または第3級ヒドロキシル基のみを含む場合に、第1級ヒドロキシル基を導入することは恩恵があることは理解されると思われる。
【0010】
特に興味深い一連の化合物は、分子の開始単位領域において変更を含むものである(US 6,271,255;WO 98/01546)。天然のエリスロマイシン分子において、この開始単位は、C13-エチル基を含む。これは一般に、分子の非反応領域と考えられ、従って特に多くの他のより不安定な化学基を含むような分子の状況において、通常の化学修飾には利用できない。結果的に、代わりのポリケチド14員マクロライド分子、および、特に変更された開始単位を有するエリスロマイシンを生成するために、多くの新規技術が考案されており、例えば:負荷モジュール(loading module)の交換(US 6,271,255, US 6,437,151, WO 98/01571, Marsden et al., Science (1998) 279:199-202;Pacey et al., J. Antibiotics, (1998) 51:1029-1034)、またはN-アセチルシステアミンエステル供給(Jacobsen et al., Science (1997) 277:367-369)である。これらの技術は、場合によっては新規基質を許容するように修飾される菌株へ、前駆体を供給することが必要であることがある。場合によっては、天然の基質の供給は阻害され、新規基質の受け入れを可能にする。しかし、細胞内の天然の分解経路(例えば、β-酸化、リパーゼ)は、二次代謝経路と競合し、利用可能な前駆体化合物の有効量を低下し、その結果細胞内の所望の化合物の最終収量を低下するので、これらの技術は、限定される(Frykman et al., Biotechnol. Bioeng., (2001) 76:303-310)。これらの方法論の更なる欠点は、供給された開始物の天然の内在性開始物の基質との競合は、生成物の混合物を生じ得ることである(Pacey et al., J. Antibiotics, (1998) 51:1029-1034)。
【0011】
ヒドロキシル化された開始物により14員マクロライドを生成するために使用される他の方法は、14員マクロライドの形成に関与するI型PKSが実行する伸長サイクル数の増加を含む。これは環化し、伸長された環外部分を伴う14員マクロライドを形成するオクタケチド分子の形成につながる。このような分子の生成法は、詳細に例証されている(WO 93/13663, US 6,271,255;WO 98/01546;WO 99/36546;Rowe et al., Chem. Biol. (2001) 8:475-485)。しかしRoweら(Chem. Biol. (2001) 8:475-485)は、導入された伸長サイクルは時にスキップされること、ならびにポリケチド鎖終結(termination)/環化ドメイン(チオエステラーゼ)により触媒される直鎖状ポリケチド分子について可能である環化パターンの異なる可能性のために、14-および16員の両方の分子を含む分子混合物が生成されることを指摘している。
【0012】
従って、変更された開始単位を作製する、または変更された抗菌活性もしくは他の薬学的活性を伴う分子または分子鋳型を提供するために、エリスロマイシンのような、14員マクロライドの開始単位誘導された部分を活性化する、別の方法を開発する必要性が存在する。
【0013】
ポリケチドの開始単位を活性化する代替法のひとつは、ポリケチドの開始単位を特異的にヒドロキシル化する酵素を使用すると考えられる。この種の酵素のひとつの可能性のある候補は、シトクロムP450である。これらの酵素は、強力な酸化能を有し、およびそのような酵素の一部は、ポリケチド生合成のより遅い段階で作用することができることがわかっている。広い範囲のシトクロムP450ヒドロキシラーゼが同定されており、これはポリケチド生合成経路において特異的に作用する多くのものを含んでいる。シトクロムP450は、哺乳類システムでの薬物-様物質の分解において、重要な役割を果たし、およびそれらは細菌細胞において同化/異化経路を介し同様に作用することもわかっている。これらは、農薬および環境汚染物質に作用することもわかっている。このアプローチで重要なことは、有効であり、かつ開始単位に比較的特異的に作用することができるようなシステムの開発である。他の酸化的酵素、例えばフラビン依存型モノオキシゲナーゼおよび非ヘム鉄依存型ジオキシゲナーゼが存在する。
【0014】
シトクロムP450は、高度の立体および位置特異性を示し、これはスタチン類およびコルチコステロイド類の生成を含む、広範な産業用途を有することができる。シトクロムP450は、価値のある薬物代謝産物の調製に使用され、およびヒトシトクロムP450の構造試験は薬物設計を補助する。
【0015】
14員マクロライドに作用する多くのシトクロムP450が、同定されかつクローニングされている。これらは酵素特異性に応じて、グリコシル化されたまたはグリコシル化されないマクロライド基質に作用することが示されている。例えば:
・EryF−これは、エリスロマイシンアグリコン6-dEBのC6位置に作用する(6-デオキシエリスロノリドB, Andersen, J. F. and C. R. Hutchinson (1992). Journal of Bacteriology, 174(3):725-735)。
・EryK−これは、エリスロマイシンDのC12位、すなわちC3およびC5ヒドロキシ基のグリコシル化後に作用する(Stassi, D., S. Donadio, et al., (1993). Journal of Bacteriology, 175(1):182-189)。
・OleP−これは、オレアンドマイシンの生合成時に、C8、C8a位でのエポキシド基の導入に作用する(Shah, S., Q. Xue, et al. (2000). Journal of Antibiotics, 53(5):502-508)。
・PikCヒドロキシラーゼ−これは、14員のナルボノライド(narbonolide)構造のC12ならびに12員の10-デオキシメチノリド構造のC10およびC12に作用する、二重特異性を有する(Xue, Y. Q., D. Wilson, et al. (1998). Chemistry & Biology, 5:661-667)。この酸化は、12員メチノリドの開始単位領域のヒドロキシル化を生じるが、14員のナルボノライド上には生じないように見えることに注意。
【0016】
タイロシンのような16員マクロライド環上の様々な位置に作用するシトクロムP450は良く説明されており;再度該酸化は、グリコシル化の前後に生じることができる。しかし今日まで、エリスロマイシンなどの、グリコシル化された14員マクロライドの開始単位領域に作用する少数のシトクロムP450が同定されているが、これらは充分には説明されていない。加えて今日まで、エリスロノリドのような、グリコシル化されない14員マクロライドの開始単位領域をヒドロキシル化するように作用するシトクロムP450は説明されていない。開始単位領域がヒドロキシル化されるように見える14員マクロライドの天然物の例が存在する;例えば、CP-63693(US 4,543,334)およびランカマイシン。しかし、そのような酸化が、グリコシル化の前または後に生じるかどうかは不明であり、実際ランカマイシンの場合、このヒドロキシルは、原則としてポリケチド由来である(ポリケチド形成後に導入されたものとは対照的に)。近年ランカマイシンの全生合成クラスターが公表され、ふたつのコードされたシトクロムP450の存在が明らかになったが、これらの各々が作用する位置(C8またはC15)は不明であり、PKSの分析は、2-メチルブチラートがおそらく開始単位であることを示している(Mochizuki et al., Mol. Microbiol. (2003) 48:1501-1510)。
【0017】
最近、リボソームの50Sサブユニットの構造決定は、それらの結合糖の性質は、マクロライド系抗生物質のリボソームへの結合に強力な影響を有することを示した(Harms et al., Cell, (2001) 107:679-688;Schlunzen et al., Nature (2001) 413:814-821;Hansen et al., Mol. Cell, (2002) 10:117-128)。従って変更されたグリコシル化パターンを有する14員マクロライドを生成する方法を開発する必要性が存在する。そのようなマクロライドのリボソームへの結合に関する情報は、リボソーム内の残基/ヌクレオチドのメチル化または修飾のような、典型的に遭遇される耐性の機構を克服することができるマクロライド系抗生物質の理論的デザインを大きく補助することも考えられる。このような研究は、分子の開始単位由来の部分からの結合への著しい貢献も明らかにし、その結果開始単位由来の部分および/または結合されたグリコシル基の性質を変更することができることは利点である。
【0018】
本発明は、開始単位領域の官能基変化(例えば、14員マクロライドの14位または15位でのヒドロキシル化)を、一連の異なるグリコシル基を転移する能力と組合わせる方法を提供する。この方法は、多様な範囲の新規マクロライド分子の生成および単離を可能にし、これはその後任意に最適な官能性について試験される。
【0019】
ひとつの局面において、本発明は、ヒドロキシル化された14員マクロライド化合物を生成する方法を提供し、該方法は、14員アグリコン鋳型を生成する工程、および該14員アグリコン鋳型を一種の菌株または一連の菌株へ供給し、開始単位領域のヒドロキシル化状態とは異なる一連の新規化合物を生成する工程を含む。ひとつの態様において、アグリコン鋳型は、単一の菌株へ供給される。代わりの態様において、アグリコン鋳型は、一連の菌株へ供給される。
【0020】
更なる局面において、本発明は更に、14員マクロライド化合物を生成する方法を提供し、該方法は、先に説明されたように生成されたヒドロキシル化されたアグリコン前駆体を、一種の菌株または一連の菌株へ供給し、グリコシル化された化合物または一連の糖部分を含む化合物の範囲を生成する工程を含む。
【0021】
15位でヒドロキシル化された化合物を生成するためのエリスロノリドBの生体内転換が、先に示されている(Spagnoli et al., J. Antibiotics, (1983) 36:365-375;US 4,429,115)。このシステムは、ストレプトミセス・アンチバイオチクスス(S. antibioticus)(通常14員マクロライドのオレアンドマイシンを生成する)のブロックされた変異体を、生体内転換する生物として使用した。3-O-オレアンドロシル-5-O-デソサミニル-15-ヒドロキシエリスロノリドB、3-O-オレアンドロシル-5-O-デソサミニル-エリスロノリドB、3-O-オレアンドロシル-5-O-デソサミニル-(8S)-8-ヒドロキシエリスロノリドB、および3-O-オレアンドロシル-5-O-デソサミニル-(8R)-8,19-エポキシエリスロノリドBの4種の化合物の混合物が生成された(US 4,429,115)。この場合、ヒドロキシル化は、グリコシル化の後に生じることが決定された(Spagnoli et al., J. Antibiotics, (1983) 36:365-375)。ヒドロキシル化は、マクロライド環のC8およびC15の両位置で観察されることは、注目に値する。
【0022】
エリスロマイシンを産生する生物ストレプトミセス・エリスレウス(サッカロポリスポラ・エリスラエアとして再分類されるので)のブロックされた変異体を使用する14員マクロライド11-アセチルランコリド(14員マクロライドアグリコン)の生体内転換は、15-デオキシ-15-オキソ-11-アセチルランコリドの生成を生じた(Goldstein et al., J. Antibiotics, (1978) 31:63-69)。この場合、開始単位領域の酸化は、グリコシル化されない14員アグリコン上で生じるが、この開始単位領域は、15位に存在するヒドロキシ基で既に官能基化されており;酸化は、このヒドロキシ基をケト基へ転換する。
【0023】
14-ヒドロキシクラリスロマイシンは、肝臓における主要なシトクロムP450のひとつの作用により生成されたクラリスロマイシンの代謝産物として認められる。明らかにインビボにおけるクラリスロマイシンのヒドロキシル化は、グリコシル化の後に生じる。加えて、14-ヒドロキシクラリスロマイシンおよび関連化合物の合成に関して説明された方法は、活性のあるグリコシル化された化合物のヒドロキシル化に関連している(EP 0 222 186, US 4,672,056, Adachi et al., J. Antibiotics, (1988) 16:966-975)。これらの場合において、一連の化合物が生成され、およびこの化合物への経路(エリスロマイシンAをヒト志願者へ投与し、および彼等の尿から代謝産物を抽出する)は、大規模生成経路を説明することはないと考えられる。EP 0 222 186の発明者らの知識のように、これは例えば、ラット肝ホモジネートを使用しては生じず、更にこれは費用効果のある経路を生じる可能性を低減する。14-ヒドロキシクラリスロマイシンを、真菌ムコール・シルシネロイデス(Mucor circinelloides)を使用する生体内転換によりクラリスロマイシンから生成する経路が示されている(Sasaki et al., J. Antibiotics, (1988) 41:908-915)。
【0024】
14員マクロライドの14-または15-ヒドロキシル化のふたつの前例において、グリコシル化はヒドロキシル化の前に生じ、その結果ヒドロキシル化されたアグリコン前駆体はどの時点でも形成されない。加えて、これらの事象の順序は、当業者が各場合に結合される糖を選択する能力を限定することとなる。対照的に本発明は、ヒドロキシル化されたアグリコン鋳型の合成を提供し、これはその後広範な天然または組換えの菌株に供給され、一連の糖の付加および広範な化合物の生成を生じる。本発明者らの知る限り、本発明は、後にグリコシル化されるアグリコン鋳型のヒドロキシル化を介した開始単位領域にヒドロキシル化を有するエリスロマイシンアナログの生成に関する最初の例である。先行する研究は、グリコシル化が最初に生じるように仮定されており、従って本方法は考えられていない。
【0025】
本方法は、分解され得る前駆体の添加は必要ではなく、および14員マクロライドはヒドロキシル化前に既に形成されているので、環化が発生し16員環を生成する機会が減少するので、ポリケチドシンターゼを操作することによりヒドロキシル化された化合物を生成する方法に勝る利点がある。
【0026】
本発明は更に、14員アグリコンの開始単位領域をヒドロキシル化することが可能であるシトクロムP450が一旦同定され、シトクロムP450をコードしている遺伝子をクローニングし、ならびにこの遺伝子を代替宿主において発現することが可能であることを説明している。従って14員アグリコンの生成が可能である宿主におけるこのような遺伝子の発現により、直接適切にヒドロキシル化された14員アグリコンを生成することができる菌株を作出することは可能である。同様に、開始単位領域のヒドロキシル化およびそれに続くヒドロキシル化された14員アグリコンのグリコシル化の両方を行うことができる菌株を操作することは可能であると考えられる。
【0027】
本発明は、生体内転換による、14員マクロライド生合成経路のアグリコンの開始単位領域を転換し、および任意に1個または複数の糖部分の付加による、そのように生成された分子のグリコシル化された形へ引き続き処理する方法;ならびに本発明の方法により生成された分子を提供する。
【0028】
本発明の14員マクロライドアナログは更に、抗菌性のC14-もしくはC15-ヒドロキシエリスロマイシンまたは他の14員マクロライドの誘導体の合成および半合成のための中間体としての有用性も有する。
【発明の開示】
【0029】
発明の概要
本発明は、生体内転換および任意にそのように生成された分子のグリコシル化された形へのプロセッシングにより、エリスロマイシン前駆体の開始単位領域を転換する方法;ならびに、該方法により生成された化合物を提供する。
【0030】
ひとつの局面において、本発明は、マクロライド化合物の生成法を提供し、該方法は、14員マクロライドアグリコン(アグリコン前駆体)を一種の菌株または一連の菌株に供給し、開始単位領域のヒドロキシル化状態がアグリコン前駆体と異なる化合物を1種または複数生成することを含む。従ってひとつの局面において、本発明は、ヒドロキシル化された14員マクロライド化合物を生成する方法を提供し、該方法は:
(a)14員のアグリコン鋳型を生成する工程;ならびに
(b)該アグリコン鋳型を、14位および/または15位でアグリコン鋳型をヒドロキシル化することが可能である菌株に供給する工程を含む。
【0031】
ひとつの態様において、この菌株は、14位および/または15位でアグリコン鋳型をヒドロキシル化することが可能であるものを同定するための、原核生物および真菌の株のライブラリーのスクリーニングにより同定される。別の態様において、この菌株は、放線菌ライブラリーのスクリーニングにより同定される。ひとつの態様において、この菌株は、ストレプトミセス・エウリセルマスDSM 40014、ストレプトミセス・アベルミチリスATCC(登録商標)31272およびストレプトミセス・ロケイATCC(登録商標)21250からなる群より選択される。
【0032】
態様の特定のファミリーにおいて、これらの化合物は、14または15位のヒドロキシル化の状態が異なる。ひとつの態様において、アグリコン前駆体は下記式により示される。

式中、X=-C(=O)-、-CH(OH)-または-CH2-であり、R1、R4、R6、R9、R10およびR12は、各々独立してH、OH、CH3、CH2CH3もしくはOCH3であり;R2=OH;R3=H;または、R2およびR3はともに=Oであり;R5=OH;R7=H、OHまたはOCH3;R8=H、OHまたはケト;R11=H、OH;R13=H、OH、ならびに

であり;ここで、R15は、HもしくはC1-C7アルキル基もしくはC4-C7シクロアルキル基であり;R16は、H、C1-C7アルキル基もしくはC4-C7シクロアルキル基であり;R17、R18およびR19は、各々独立してHもしくはC1-C7アルキル基であり;または、R20もしくはR21は、式中、x=2-5である(CH2)Xであり、ならびにR22は、Hであるか;または、1個もしくは複数の>CHOHもしくは>CHOR基がケト基により置換されることにより修飾された先に定義された化合物、または1個もしくは複数のケチド単位の酸化状態が異なる先に定義された化合物(すなわち、以下の群からの代替物の選択:-CO-、-CH(OH)-、アルケン-CH-(=CH-または-CH=)、およびCH2)である。一般に、この式および類似した式は、状況がそうでないことを必要としない限りは、全ての立体化学型を包含している。特に任意の-CH(OH)-の立体化学は一般に独立して選択される。
【0033】
好ましい態様において、X=-C(=O)-、R1=R4=R6=R9=R10=R12=CH3、R2=OH、R7=H、OH;R8=H、OH、OCH3;R11=H、OH;R13=H、OH;

であり;ここでR15=H、CH3、もしくはCH2CH3;R16はHであり;または、R17およびR18は、各々独立してHもしくはCH3であり;R19およびR22はHである。
【0034】
より高度に好ましい態様において、アグリコン前駆体は、エリスロノリドBであり、生成された化合物は、14-ヒドロキシおよび/または15-ヒドロキシエリスロノリドBである。別の好ましい本発明の態様において、アグリコン前駆体は、6-デオキシエリスロノリドB(6-dEB)であり、そのように生成された化合物は、14-ヒドロキシ6-dEBおよび/または15-ヒドロキシ6-dEBである。別の好ましい本発明の態様において、アグリコン前駆体は、WO 98/01546に開示された方法により操作されたPKSに由来し、ならびにこれはC14位および/またはC15位にヒドロキシル化を受ける。好ましい態様において、PKSは、引き続きヒドロキシル化され得る代替の開始単位を組込むように操作される。更に好ましい態様において、操作されたPKSにより形成されたアグリコン前駆体は、例えば、伸長サイクルのひとつで、メチルマロニル-CoAの代わりにマロニル-CoA部分の組込みにより、この分子のいくつか他の点で異なるか、あるいはエリスロノリド(もしくは、操作されないPKSにより生成される他のマクロライド)において典型的に認められるものとは異なる酸化状態、あるいはそのような変化の組合せを示す。
【0035】
ひとつの型の態様において、菌株は、開始単位領域でアグリコンをヒドロキシル化する能力を自然に含む野生型菌株である。別の型の態様において、菌株は、提供されたアグリコン鋳型の開始単位領域をヒドロキシル化することが可能であるシトクロムP450を発現するように遺伝子操作されている。特に、この菌株に挿入されるシトクロムP450をコードしている遺伝子は、14員マクロライドの開始単位領域をヒドロキシル化することが可能であるような、本明細書に説明されたように同定された菌株からのシトクロムP450遺伝子のクローニングにより同定することができる。従っていかにこれを行うことができるかの例として、本発明者らは、S.ロケイにおけるランカマイシンクラスター由来のシトクロムP450の同定を説明している。本発明者らは、このシトクロムP450は、ランカマイシンPKSにより明らかに組込まれる2-メチル-ブチラート開始単位に加え、エリスロノリドBのプロピオネート開始単位をヒドロキシル化することが明らかにできることを示している(Mochizuki et al., Mol. Microbiol., (2003) 48:1501-1510)。
【0036】
ひとつの態様において、工程(b)で使用される菌株は、原核生物または真菌の株である。好ましい態様において、この菌株は、大腸菌(E. coli)である。より好ましい態様において、この菌株は、放線菌である。別の好ましい態様において、この菌株は、以下からなる群より選択される:サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythraea)、ストレプトミセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)、ストレプトミセス・アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトミセス・グリセオフスカス(Streptomyces griseofuscus)、ストレプトミセス・シンナモネンシス(Streptomyces cinnamonensis)、ストレプトミセス・フラジエ(Streptomyces fradiae)、ストレプトミセス・エウリセルマス(Streptomyces eurythermus)、ストレプトミセス・ロンギスポロフラブス(Streptomyces longisporoflavus)、ストレプトミセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)、サッカロポリスポラ・スピノサ(Saccharopolyspora spinosa)、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ(Micromonospora griseorubida)、ストレプトミセス・ラサリエンシス(Streptomyces lasaliensis)、ストレプトミセス・ベネズエラ(Streptomyces venezuelae)、ストレプトミセス・アンチビオチクス(Streptomyces antibioticus)、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトミセス・リモサス(Streptomyces rimosus)、ストレプトミセス・アルバス(Streptomyces albus)、アミコラトプシス・メジテラナイ(Amycolatopsis mediterranei)、ノカルジア(Nocardia)種、ストレプトミセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)およびアクチノプラーネス(Actinoplanes)種N902-109。
【0037】
別の態様において、本発明の方法は加えて、(c)得られるヒドロキシル化されたアグリコンを、1個または複数の糖部分を追加することができる第二の菌株へ供給する工程を含む。
【0038】
ひとつの態様において、シトクロムP450は、14員アグリコンを生成する菌株へクローニングされ、その結果単一の菌株においてヒドロキシル化された14員アグリコンの生成を可能にする。
【0039】
代わりの本発明の態様において、ヒドロキシル化されたアグリコン生成物は、工程(b)の後で単離される。別の態様において、生成された該ヒドロキシル化されたアグリコンは、精製工程なしで、工程(c)の菌株へ直接供給される。
【0040】
追加の局面において、本発明は、マクロライド化合物を生成する方法を提供し、該方法は、開始単位領域−先に説明されたように生成されたヒドロキシル化された14員アグリコン前駆体を、一種の菌株または一連の菌株へ供給し、グリコシル化された化合物または一連の糖部分を含有する一連の化合物を生成することを含む。従って本発明は、開始単位領域の官能基変化を、一連の異なるグリコシル基を転移する能力と組合わせる方法を提供する。この方法は、多様なマクロライド分子の生成および単離が可能である。
【0041】
特定の局面において、本発明は、14-ヒドロキシエリストノリドBを生成する方法、および任意に天然の糖によるかまたは代替もしくは修飾された糖による、そのグリコシル化を提供する。ひとつの態様において、本発明の方法は、所望の糖の、合成に関与する生合成遺伝子を含む該菌株遺伝子カセットへの導入を含む。
【0042】
特定の局面において、本発明は、15-ヒドロキシエリスロノリドBを生成する方法、および任意に天然の糖によるかまたは代替もしくは修飾された糖による、そのグリコシル化を提供する。
【0043】
特定の局面において、本発明は、14-ヒドロキシ-6-デオキシエリスロノリドBを生成する方法、および任意に天然の糖によるかまたは代替もしくは修飾された糖による、そのグリコシル化を提供する。
【0044】
特定の局面において、本発明は、15-ヒドロキシ-6-デオキシエリスロノリドBを生成する方法、および任意に天然の糖によるかまたは代替もしくは修飾された糖による、そのグリコシル化を提供する。
【0045】
ひとつの態様において、14-ヒドロキシまたは15-ヒドロキシアグリコンのグリコシル化は、天然の糖のC3およびC5位への転移を生じる(例えば、エリスロマイシンシリーズにおいて、C3ミカロースは、引き続きメチル化され、クラジノースおよびC5でデソサミンを形成する)。別の態様において、非天然の糖(すなわち、エリスロマイシン分子上で天然に認められない糖、例えばラムノースおよびそれらのメチル化された誘導体(2'-O-メチル、2',3'-ビス、または2',3',4'-トリス-O-メチル)、ジギトキソース、オリボース、オリオース、オレアンドロース、ミカミノースまたはアンゴロサミン)であるが、これらに限定されるものではないものは、C3位またはC5位へ転移される。更なる態様において、非天然の糖は、C3位に付加されるが、C5糖は天然のままである。更なる態様において、C5糖は非天然であるが、C3糖は天然である。更に別の態様において、ヒドロキシル化されたアグリコン鋳型は、別の部位で、すなわちC3および/またはC5のみではなく、グリコシル化される。更なる態様において、1個または複数の追加のグリコシル基は、存在するグリコシル基上に転移され、二糖類を形成する。
【0046】
別の局面において、本発明は、C14-ヒドロキシル化されたまたはC15-ヒドロキシル化されたエリスロマイシンの合成の中間体としての、14-または15-ヒドロキシエリスロリドB、または14員マクロライド誘導体を含むが、これらに限定されるものではない、14員のヒドロキシル化されたアグリコンの使用を提供する。特に式Iの化合物の単離は、本発明により企図されている。
【0047】
更なる局面において、本発明は、式Iの化合物の半合成修飾による、新規14員マクロライド誘導体の生成を企図している。
【0048】
定義:
本明細書において使用される「14員マクロライド」という用語は、天然のエリスロノリドおよびそれらのアナログ、例えばUS 6,271,255およびWO 98/01546に説明されたもの、天然のエリスロマイシン、ピクロマイシン、オレアンドマイシン、メガロマイシン、ナルボマイシンおよびそれらのアナログを含む。マクロライドという用語は、グリコシル化された最終生成物およびグリコシル化されないアグリコンの両方を包含している。
【0049】
本明細書において使用される「14員アグリコン」という用語は、特に結合されたグリコシル基を有さない先に説明されたような14員マクロライドを意味する。
【0050】
本明細書において使用される「ヒドロキシル化されたアグリコン」という用語は、開始単位領域のヒドロキシル化状態(すなわち、14員アグリコン鋳型については、C14位または15位)における天然の鋳型とは異なるアグリコンを意味する。
【0051】
本明細書において使用される「開始単位」という用語は、14員マクロライドにおいてC13位に結合した基を意味する。天然のエリスロマイシン分子において、これはエチル基(炭素を14個および15個含む)であり;これは、それらの第3の炭素が炭素13である、プロピオニルCoAに由来する。
【0052】
発明の詳細な説明
本発明において、エリスロマイシンなどの化合物の前駆体である14員マクロライドアグリコンをヒドロキシル化することが可能である生物を同定するために、生物のライブラリーがスクリーニングされた。特に菌株が、エリスロマイシンのアグリコン前駆体、すなわちエリスロノリドBをヒドロキシル化するそれらの能力について、スクリーニングされた。この方法を用いて同定されたひとつの菌株は、ストレプトミセス・エウリセルマスDSM 40014である。引き続きのMS法およびNMR法による生成された化合物の単離および構造特徴決定は、このヒドロキシル化が、この分子の14位または15位で生じ、14-および15-ヒドロキシEBの混合物を生じることを明らかにした。
【0053】
従ってひとつの局面において、本発明は、14員アグリコンのインビボにおける生体内転換による開始単位領域のヒドロキシル化の方法を提供し、該方法は、該アグリコンを菌株へ供給し、および任意に生成された化合物を単離することを含む。特定の態様において、ヒドロキシル化は、14員マクロライド上の14位または15位のいずれかで生じる。好ましい態様において、アグリコンはエリスロノリドBである。
【0054】
S.エウリセルマスは、エリスロノリドBを14-および15-ヒドロキシEBの両方へ生体内転換し、14-および15-ヒドロキシエリスロマイシンシリーズの両方の生成を可能にすることがわかっており;その結果、特定の態様において、この方法は、このアグリコンをS.エウリセルマスへ供給することを含む。
【0055】
S.エウリセルマスは、14-ヒドロキシおよび15-ヒドロキシエリスロノリドを生成することが可能であるが、場合によっては、単一の化合物を生成する菌株を有することが好ましい。これは、所望でない成分から単一の所望の成分を単離するためまたは所望の化合物を分離するために必要である精製工程の数を減少する点で、下流のプロセッシングの利点または経費上の恩恵がある。このような菌株を同定するために、放線菌生物のライブラリーを更にスクリーニングし、14員のアグリコン前駆体を、特にEBをヒドロキシエリスロノリドの単一の集団に転換することができる菌株を見つけた。一連の培地を使用し、条件を最適化した。2種の菌株ストレプトミセス・アベルミチリスATCC 31272およびストレプトミセス・ロケイATCC 21250は、15-ヒドロキシEBを生成するが、14-ヒドロキシEBは有意なレベルで生成しないことが同定された。
【0056】
従って追加の局面において、本発明は、EBを、S.アベルミチリスATCC 31272またはS.ロケイATCC 21250へ供給し、および任意に生成された化合物を単離することを含む、15-ヒドロキシEBを生成する方法を提供する。
【0057】
当業者は、生物ライブラリーの同様のスクリーニングラウンドを使用し、14-ヒドロキシEBを特異的に生成する菌株を同定するために使用することができることを理解すると思われる。加えて当業者には、本明細書に明らかにされた方法を使用し、EBを14-および15-ヒドロキシエリスロノリドへ転換することが可能である代替菌株を同定することができることは明らかであり;これらの菌株も、本発明の範囲内である。このような菌株は、原核生物または真菌株を含む真核生物であることができる。
【0058】
代替の局面において、ヒドロキシル化されたアグリコンを生成することが可能な菌株は、適当な宿主細胞において、14員アグリコン前駆体の開始単位領域をヒドロキシル化するように作用するシトクロムP450をコードしているDNAを発現することにより生成することができる。この状況において、好ましい宿主細胞株は、哺乳類細胞株、真菌細胞株または原核生物である。より好ましくは宿主細胞株は、シュードモナス菌(Pseudomonas)、粘液細菌(mxyobacteria)または大腸菌である。更により好ましい態様において、宿主細胞株は、放線菌であり、更により好ましくは、サッカロポリスポラ・エリスラエア、ストレプトミセス・コエリコロル、ストレプトミセス・アベルミチリス、ストレプトミセス・グリセオフスカス、ストレプトミセス・シンナモネンシス、ストレプトミセス・フラジエ、ストレプトミセス・エウリセルマス、ストレプトミセス・ロンギスポロフラブス、ストレプトミセス・ヒグロスコピクス、サッカロポリスポラ・スピノサ、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ、ストレプトミセス・ラサリエンシス、ストレプトミセス・ベネズエラ、ストレプトミセス・アンチビオチクス、ストレプトミセス・リビダンス、ストレプトミセス・リモサス、ストレプトミセス・アルバス、アミコラトプシス・メジテラナイ、ノカルジア種、ストレプトミセス・ツクバエンシスおよびアクチノプラーネス種N902-109からなるを含むが、これらに限定されるものではない。
【0059】
好ましい宿主細胞の別のシリーズは、真核生物であり、特に好ましい宿主は哺乳類、植物、酵母または真菌細胞である。更により好ましい真核生物の細胞は、真菌株、より好ましい菌株はアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)およびアスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)である。
【0060】
別の局面において、シトクロムP450は、14員アグリコンを生成する菌株へクローニングされ、その結果単一の菌株においてヒドロキシ14員アグリコンの生成が可能になる。
【0061】
より更なる局面において、アグリコンをヒドロキシル化することがわかっているシトクロムP450は、ヒドロキシル化されない開始単位領域で、14員のグリコシル化されたマクロライドを生成する菌株へクローニングされる。これは、ヒドロキシル化が、グリコシル化工程の前に起こることを可能にする。1個または複数の糖をヒドロキシル化後に転移することが可能である。多くの場合、アグリコンおよびヒドロキシアグリコンは、様々なグリコシルトランスフェラーゼにより同等に認識されるので、最大のヒドロキシル化がグリコシル基が転移される前に起こり得ることを確実にするために、開始物のヒドロキシル化、および/またはグリコシル化の時期を制御することは恩恵があると思われる。
【0062】
別の局面において、シトクロムP450は、細胞から単離され、および基質をインビトロにおいてヒドロキシル化するために使用される。あるいはタンパク質は、固相支持体に結合され、基質をヒドロキシル化するために使用される。
【0063】
更なる本発明の局面において、本発明者らは、関連したエリスロノリド6-デオキシエリスロノリドB(6-dEB)をヒドロキシル化するためにこれらの菌株を使用することを、特に企図している。この化合物は、EBと同じ構造を有するが、EryFの作用により結合されているC6-ヒドロキシル基は欠いている。この化合物をEBが供給されたものと同様の条件下で増殖したS.ロケイまたはS.アベルミチリスに供給した後、15-ヒドロキシ6-dEBの存在と一致するm/zのより極性のあるピークが同定され、当業者は、標準技術を用い形成された一連の生成物から所望の化合物を同定しおよび単離することができる。このことは、開始単位領域のヒドロキシル化は、C6ヒドロキシ基の存在に左右されないことを明らかにし、ならびに本明細書に説明された技術は、PKS操作により生成されたものおよび/または別の開始単位を組込んでいるものを含む一連の6-dEBにも適用可能であることを指摘している。6-dEB化合物の先に説明されたS.エウリセルマス菌株への供給は、おそらく14-および15-ヒドロキシ-6-dEBの両種を生成すると考えられる。
【0064】
なお更なる本発明の局面において、通常EB上に認められるものとは異なる開始単位を伴う組換えアグリコンが、C14またはC15をヒドロキシル化することが可能な菌株に供給され、開始単位領域でのヒドロキシル化を明らかにしている。
【0065】
更なる本発明の局面において、その分子のアグリコン環部分で変更された(例えば、メチル基を欠いているか、または環周囲のいずれかの点で変更された酸化状態を示している)アグリコンは、C14位またはC15位でヒドロキシル化が可能な菌株に供給され、開始単位領域でのヒドロキシル化を明らかにしている。
【0066】
本発明は更に、先に説明された方法を用い生成されたヒドロキシル化されたアグリコンのグリコシル化された誘導体の生成を企図している。ひとつの態様において、ヒドロキシル化されたアグリコンは、S.エリスラエアへ供給され、これはグリコシル化された化合物の生成をもたらす。特定の態様において、アグリコン鋳型はEBであり、得られる14-ヒドロキシEBおよび15-ヒドロキシEBは、S.エリスラエアへ供給され、各々、14-ヒドロキシおよび15-ヒドロキシエリスロマイシンを生成する。
【0067】
更なる態様において、アグリコンを生成する能力がブロックされたS.エリスラエア変異体を使用し、ヒドロキシル化されたアグリコン鋳型がグリコシル化された14員マクロライドエリスロマイシンへ生体内転換される。S.エリスラエアJC2(Rowe et al., Gene, (1998) 216:215-223)は、そこから、TEドメインを終結する部分をコードしている小型の断片とは別に、全PKS領域が特異的に欠失されている、S.エリスラエアNRRL2338株の誘導体である。この菌株は、エリスロノリドマクロラクトンをグリコシル化およびヒドロキシル化する能力は維持しているので、これを使用し、14-および15-ヒドロキシEBを、それらの各エリスロマイシンへ生体内転換することができる。
【0068】
当業者により、S.エリスラエア株のアグリコンを生成する能力は損なわれるが、例えばアグリコン鋳型の各エリスロマイシンへの転換を生じるグリコシル化などであるが、これらに限定されるものではない下流プロセッシング活性は依然維持しているような代替の菌株を、構築または生成することができることは理解されると思われる。このような菌株は、例えばPKS KS1の活性部位システインが非官能性アミノ酸残基、例えばアラニンに変異されているような、KS1ノックアウト株を含むと考えられる。UV変異誘発を使用し、PKSの変異を引き起こし、生物学的スクリーニングによりエリスロマイシン非生産者をスクリーニングし、引き続きアグリコンの合成に関与する染色体領域に変異を保持するそれらの菌株を識別するためにスクリーニングすることができ、そのような菌株は全て、本発明の範囲内である。グリコシル化は代わりに、ヒドロキシル化されたアグリコンをアグリコン産生能が損なわれていない菌株(すなわち、野生型S.エリスラエア)に供給することにより実現することができるが、これは、生成物の混合物を生じる。
【0069】
本発明のひとつの態様において、ヒドロキシル化されたアグリコンは、最初に単離され、その後第二の菌株へ供給される。これは、特にヒドロキシル化について選択された菌株が14位または15位のいずれかでヒドロキシル化することができる場合に、それらの各ヒドロキシ-14員のグリコシル化されたマクロライドを分離するよりも、ヒドロキシル化されたエリスロノリドまたはヒドロキシル化された 14員アグリコンを分離および精製することの方がおそらく容易である点が利点である。しかし当業者には、生体内転換過程を加速するためにヒドロキシアグリコンが精製されないか、またはグリコシル化工程の前に単に半精製される代替法が考案され得ることは明らかである。
【0070】
C14またはC15ヒドロキシル化されたアグリコンは、更なる生体内転換の前に、化学的に誘導体化することができることは、当業者に明らかである。このような誘導体化は、アルキル化、アシル化またはグリコシル化を含むが、これらに限定されるものではない。このような修飾の例は、更なる生体内転換前の、14-または15-メトキシEBもしくは14-または15-アセトキシEBの形成に関連しているが、これらに限定されるものではない。あるいは、14-または15-ヒドロキシ基は、ヒドロキシル基のF、Cl、BrもしくはIのようなハロゲン原子との交換、または置換されたアミンとの交換を含むが、これらに限定されるものではない、置換反応により修飾することができる。同様の方法で、14-ヒドロキシ基の立体化学は、例えばMitsunobu反転反応の使用により、反転される。当業者には更に、14-または15-ヒドロキシ基は、酸化により修飾され、14-ケトエリスロノリドまたは15-ホルミルエリスロノリドまたは15-カルボキシエリスロノリドを提供することも明らかであると思われる。更に当該技術分野において、C14またはC15で酸化された官能性を伴う得られるエリスロノリドは、例えばアセタール、チオアセタール、ケタール、エステルまたはアミド基を形成することにより保護されることも明らかである。第1級アルコールを選択的に誘導体化、置換、酸化および保護する方法は、当業者に周知である。
【0071】
当業者は、誘導体化の同様の方法を、グリコシル化されたマクロライドに適用し、例えば14-または15-ヒドロキシル化された14員マクロライドの半合成誘導体を生成することを理解すると思われる。
【0072】
本発明の更なる局面において、このシステムからの更なる多様性は、マクロライドへ付加されたグリコシル基の性質を変更するかおよび/または他のポスト-PKSプロセッシング工程を変更することのいずれかにより作製される。
【0073】
例えば、追加の変異は、グリコシル化後にミカロース糖へ作用する糖メチル基転移酵素EryGの活性を欠失するように、JC2株において作出することができる。この菌株の15-ヒドロキシEBへの供給は、15-ヒドロキシエリスロマイシンCを生成し、これはエリスロマイシンAにおいて通常認められるクラジノースの代わりにミカロース糖を含む。当業者には、C12位に作用するシトクロムP450ヒドロキシラーゼである、EryKの同様の変異は、15-ヒドロキシエリスロマイシンBのみの生成を引き起こすことが理解されると思われる。
【0074】
本発明者らの実験は、C12位をヒドロキシル化するEryKの能力は、開始単位領域上のヒドロキシル基の存在により阻害される可能性があることを示した。開始基の性質、および特にこの基のサイズは、これらのシステムにより生成されたA型の割合に影響することが示されている(Pacey et al., J. Antibiotics, (1998) 51:1029-1034)。例えば発酵条件の変更など、多くの方法を使用し、所望の型の生成を増加する。実際本発明者らの実験は、菌株が振盪フラスコ条件から発酵槽へ移動される時に、より大きい割合のA型を生成することができ、これはおそらくそのような容器内で実現することができる酸化のより良い制御を反映していることを示した。あるいはEryKシトクロムP450を、actI/actII-orf4プロモーター-アクチベーターシステムの制御下に置き、およびこの遺伝子をグリコシル化宿主において過剰発現することが可能である。これは、遺伝子を直接アップレギュレーションする(それ自身のプロモーターと交換する)ことにより行うことができるか、あるいはこの遺伝子の追加のコピーを染色体の中間の位置(neutral position)に配置することにより実行することができ;プリスチナマイシンに抵抗性のあるプロモーターまたはermE*プロモーターのような、代わりのプロモーターを使用することもできる。
【0075】
本発明は、C3位に単一の糖のみを有する14-または15-ヒドロキシル化された14員マクロライドを生成することが可能であることも明らかにしている。例えば、ヒドロキシル化されたエリスロノリドは、デソサミン経路に追加の変異を有するS.エリスラエアJC2株に供給される。これはこの菌株がデソサミンを生成する能力を排除し、このデオキシアミノ糖は、3-O-ミカロシルEBのC5位に通常転移されると考えられる。本発明者らは、14-および15-ヒドロキシEBをこれらの菌株へ供給する際に、14-および15-ヒドロキシ-3-O-ミカロシルEB両化合物の生成を検出し、これが開始単位領域にヒドロキシル化を伴うが、単一の糖のみを有する化合物の生成を明らかにすることを期待している。
【0076】
PKSの変異と組合せたデソサミン経路の他の変異を使用し、同様の結果を生じることができることは、当業者には明らかであると思われる。実施例10は、JC2においてEryCIII活性(デソサミンを転移するグリコシル転移酵素)を欠失しており、同じ結果を実現する。単一の糖を有するこのような化合物は、前駆体化合物として使用することもでき、第二の糖の付加が可能な菌株へ供給することができる。例えば、このような化合物の先に説明された菌株JC2への供給は、14-または15-ヒドロキシエリスロマイシンを生じると考えられる。
【0077】
加えて当業者は、変異は、ミカロース経路に作製することができ、これは、デソサミン部分を有するがヒドロキシルアグリコンと共に供給された場合には、C-3に結合された糖は有さないヒドロキシル化されたエリスロマイシンアナログの生成を生じることを理解すると思われる。しかし加えて、このような化合物の生成は、デソサミンをエリスロノリドへ容易に結合することができるグリコシル転移酵素の選択に頼っていることが、当業者により理解されると思われる。例えば、DesVIIは、デソサミンを一連の6-dEBアナログへ転移することが知られており(Tang and McDaniel, Chem. Biol. (2001) 8:547-555)、おそらくデソサミンを開始物領域でヒドロキシル化された6-dEBへ転移すると考えられる。これらの著者は、この場合の生体内転換のレベルは低いことを知っているが、当業者は、これらは、このグリコシル転移酵素(もしくはそれらの変異体)、または天然のもしくは環の周りの様々な位置で修飾された基質をより良く受容するように操作されたかのいずれかの、一連の他のグリコシル転移酵素のC6-ヒドロキシ基を有するものを、更に試験することにより改善されることを理解すると思われる。
【0078】
あるいは、14-または15-ヒドロキシル化されたアグリコンは、他のアミノ糖、例えばミカミノースまたはアンゴロサミンを生成しC5位へ転移するように操作されたS.エリスラエア株に供給される。これは単一であるかまたは環上のどこかに結合した糖に追加することができる(すなわち、この菌株は最初にミカロースをC3へ転移し、その後ミカミノースをC5へ結合する)。
【0079】
同様のプロセッシングを行い、14-ヒドロキシ3-O-ミカロシルEBおよび14-ヒドロキシ5-O-ミカミノシルエリスロマイシンなどの化合物を生成することができること、ならびにこれらの過程は、本発明の範囲内と見なされることは、当業者には明らかであると思われる。
【0080】
単一の糖を有する化合物の更なるセットは、14-または15-ヒドロキシEBを、一連の中性糖を生合成する能力を付与する遺伝子カセットを有する一連の菌株へ供給することにより生成することができる。このような実験は、EBのそのような菌株への供給を開示しているWO 03/048375に開示されたものに関係している。例えば(実施例10)は、本発明者らは、15-ヒドロキシEBを菌株S.エリスラエアSGT2 pSGOLEG2(Gaisser et al., Mol. Microbiol. (2000) 36:391-401)へ供給することにより、15-ヒドロキシ-3-O-ラムノシルEBの生成を明らかにしている。EryBVにより触媒された糖のC3位への転移は、14/15位での変更により影響を受けるようには見えない。同様にこのような化合物は更に、例えば、デソサミンの添加により生体内転換され、15-ヒドロキシ-3-O-ラムノシルエリスロマイシンのシリーズを生成する。このような過程は、14-ヒドロキシEBシリーズに適用可能である。例えば、クラジノース、ラムノースおよびそれらのメチル化された誘導体(2'-O-メチル、2',3'-ビスもしくは2',3',4'-トリス-O-メチル)、ジギトキソース、オリボース、オリオース、オレアンドロースまたはロジノースなどの、広範な類似性のある糖類も、C3位に導入される。当業者は、この方法を、ふたつの代替糖を14-または15-ヒドロキシEBへ転移する菌株の構築、ならびに非中性糖を14-および15-ヒドロキシEBのC5位へ転移する菌株の構築に適用することができる。
【0081】
他のグリコシル化パターンが、14員マクロライドについて示されていることは当業者に公知である。限定でない例として、メガロマイシンは、エリスロマイシンに類似しているがC6位に追加のグリコシル基を有する14員マクロライドである。従って更なる局面において、本発明は、分子の異なる点で作用することが可能であり、および糖経路(sugar pathway)に関連したグリコシル転移酵素(または全てが必要でない場合はその一部)の宿主株への導入により、ならびに14-もしくは15-ヒドロキシアグリコンの供給により、アグリコンの周囲の一連の様々な部位でグリコシル化されている14-および15-ヒドロキシル化された14員マクロライドの生成法を提供する。これは分子上の望ましい点に適当なヒドロキシル基を必要とすることは、当業者により理解されると思われる。
【0082】
本発明の追加の局面において、14-または15-ヒドロキシエリスロノリドは、14員マクロライドをグリコシル化することが可能である他の野生型株に供給することができる。これらの菌株は、例えば所望のデオキシ糖経路を含み、および追加的にこの糖をヒドロキシル化されたアグリコンへ転移することができるグリコシル転移酵素を有する。あるいはこれらの菌株は、適当なグリコシル転移酵素を発現し、宿主のデオキシ糖経路を利用することができるように操作される。これらの菌株は、ヒドロキシル化されたアグリコンをグリコシル化することができる一方で、同時にこの菌株により生成された天然物を生成するか、または他の方法でこのような未変性の化合物の生成を抑制するように変異誘発もしくは修飾され得る。あるいはこの宿主は、中間の(neutral)生体内転換宿主であることができ、ならびに糖経路(またはその一部)および/またはグリコシル転移酵素のいずれかを前述のように宿主へ導入することができる。これらの菌株にヒドロキシル化されたアグリコンが供給される条件下で、所望の経路が発現されることを確実にすることは必要であると考えられる。
【0083】
前述のように、14-および15-ヒドロキシル化された14員アグリコンは、第二の生体内転換工程の前に、標準の化学単離法により、互いに容易に精製することができる。しかし場合によっては、第二工程前に抽出物を完全に精製することは不要であり、簡単な粗抽出とそれに続く生体内転換で、アグリコンを対応するエリスロマイシン化合物へ処理するのに十分なことがある。場合によっては、ヒドロキシル化されたアグリコンを含有する培地の第二の生体内転換への単純な転移、あるいは第二の生体内転換株による培地の接種、あるいはC14-および/またはC15-ヒドロキシル化を行う菌株と所望のグリコシル基および他の基を追加する菌株との同時発酵実験の実行が可能なことがある。
【0084】
前述の2工程生体内転換過程の特別な利点は、これは、変更された生体内転換宿主を使用することにより、14-または15-ヒドロキシEBのポストPKSプロセッシングを変更することが可能なことである。これらは、異なる糖類を生成するように操作された菌株、糖の生合成の工程のひとつをブロックするように操作された菌株、異なる糖の組込みを生じる糖の生合成の工程のひとつをブロックするように操作された菌株のいずれかであることができるか、または代わりの糖経路およびそのような糖を14員アグリコンへ結合することができるグリコシル転移酵素を有することがわかっている菌株であることができる。あるいはこれらの菌株は、そのような活性を伴うグリコシル転移酵素を発現するように操作することができる。
【0085】
従って、前述のような2工程法、すなわちヒドロキシル化されたエリスロノリドの生成、それに続く所望の糖および他の基を添加する生体内転換工程を使用することにより、異なるグリコシル基を有する一連の14-または15-ヒドロキシ14員マクロライドを生成することが可能である。
【0086】
しかし先に説明された方法は、各供給は、この方法において個別の工程であってよいことを示しているが、当業者は、場合によっては2種の菌株の同時発酵を行うことが利点であり得ることを理解すると思われる。特にこれは、必要な全体の発酵時間の短縮を可能にすると考えられる。従って更なる局面において、本発明は、14-および15-ヒドロキシ14員グリコシル化されたマクロライドの生合成の方法を提供し、該方法は、S.エウリセルマス、S.ロケイおよびS.アベルミチリスまたは14員アグリコンの開始単位領域をヒドロキシル化することが可能である他の菌株からなる群より選択される第一の菌株、ならびにインサイチュー生成されたヒドロキシルアグリコン鋳型をグリコシル化することが可能な第二の菌株の、2種の菌株の同時発酵へアグリコン鋳型を供給する工程、ならびに任意に生成された化合物を単離する工程を含む。
【0087】
本発明の方法を使用し、組換え株由来のアグリコンを使用することにより、この方法で生成された一連の分子を拡張することが可能である。例えば、C13のエチル置換基が、天然のエリスロマイシンPKS負荷モジュールを、アベルメクチンPKS由来の負荷モジュールと交換するようにデザインされ、デザインされた構築体によりEB生成体を転換することによりイソプロピルまたはセクブチルのいずれかへ変更されているエリスロノリドの合成が可能である菌株は、開始単位として分枝鎖カルボン酸を組込むことがわかっている(Marsden et al., Science, (1998) 279:199-202;US 6,271,255;WO 98/01546)。この菌株由来のエリスロノリド生成物は、S.エウリセルマスへ供給され、これらは、この手法により開始単位領域でヒドロキシル化され得ることを明らかにしている。非天然の開始単位エリスロノリドBアナログは、例えば、シクロブタンカルボン酸アナログのアベルメクチン負荷モジュールを含有する菌株への供給により生成することができる。これらの新規アグリコンを、S.エウリセルマスもしくはS.ロケイなどの菌株または14員マクロライド開始単位領域をヒドロキシル化することが可能である代替の菌株へ供給することは、開始単位領域のヒドロキシル化された14員アグリコンを生じると考えられる。
【0088】
同様に組換え技術を用い、環の周りの位置で異なる14員アグリコンを生成することができる。これらの化合物の14員アグリコンの開始単位領域をヒドロキシル化することが可能な菌株への供給は、対応するヒドロキシル化された14員アグリコンの形成を生じると考えられる。
【0089】
別の本発明の特定の局面において、14員マクロライドの異なる形を、アグリコン鋳型の代わりの型を供給することにより生成することができる。例えば、14-および15-ヒドロキシエリスロマイシンのA型は、エリスロマイシンの分解により化学的に生成されたエリスロノリドAの供給により生成することができる。EBからの14-および15-ヒドロキシEBの生成に使用されるものと同じ条件下でS.エウリセルマス株を使用するこの化合物の生体内転換は、14-および15-ヒドロキシエリスロノリドAの生成を生じると考えられる。この化合物は更に、菌株JC2を用い、グリコシル基デソサミンおよびクラジノース(ミカロースを介し)を結合するように生体内転換され、この株はアグリコンを生成する能力がブロックされており、化合物14-ヒドロキシエリスロマイシンAおよび15-ヒドロキシエリスロマイシンAの生成を生じる。あるいは異なる範囲のグリコシル基が、ヒドロキシル化されたエリスロノリドAアグリコンに結合され得る。本明細書に説明された方法により、活性化された開始単位領域を含まない(すなわち、開始単位領域に結合されたヒドロキシ基またはケト基を欠いている)多くの天然の14員マクロライド、特に中性糖を含むものを取り込み(take)、ならびにこの分子からグリコシル基を加水分解し、開始単位領域上でヒドロキシル化され得るアグリコンを放出することが可能であることは当業者に理解されると思われる。得られるヒドロキシル化されたアグリコンは、望ましいようにグリコシル化され得る。
【0090】
本発明者らが行ったように、放線菌ライブラリーの更なるスクリーニング、および別の方法での14員アグリコンの活性化されない開始単位領域のヒドロキシル化/酸化が可能な菌株のスクリーニングが可能であることは、当業者に理解されると思われる。例えば、シトクロムP450の作用は、エポキシド基の生成を生じること、または同様に近傍のジヒドロキシ官能性を生成することができることは周知である。同様に単一のシトクロムP450の作用は、活性化されない開始単位領域のケト官能性への直接の酸化を生じることができる。同様の方法において、代わりのシトクロムP450は、活性化されない末端メチル基をアルデヒド部分またはカルボン酸へ転換するように作用することができる。更に場合によっては、ヒドロキシル化されたアグリコンを生成する酸化に、ケトまたはアルデヒド官能性を生成する更なる酸化が続くことがある(正確な化学的状況に応じて)。
【0091】
ひとつの局面において、本発明は、下記式Iの化合物を合成する方法を提供する。

式中、X=-C(=O)-、-CH(OH)-または-CH2-であり、R1、R4、R6、R10およびR12は、各々独立してH、OH、CH3、CH2CH3もしくはOCH3であり;R2=OH、または任意のグリコシルもしくは二糖類の基であり、好ましくはO-クラジノース、O-ミカロース、O-ラムノースもしくはそれらのメチル化された誘導体(2'-O-メチル、2',3'-ビスもしくは2',3',4'-トリス-O-メチル)、O-ジギトキソース、O-オリボース、O-オリオースまたはO-オレアンドロースから選択され;R3=H;または、R2およびR3はともにケトであり;R5=OH、または任意のグリコシル基であり、好ましくは、O-デソサミン、O-ミカミノース、もしくはO-アンゴロサミンから選択され;R7=H、OH、OCH3;R8=H、OHまたはケト;R9=H、OH、CH3、CH2CH3もしくはOCH3、O-メゴサミン、O-クラジノース、O-ミカロース、O-ラムノースもしくはそれらのメチル化された誘導体(2'-O-メチル、2',3'-ビスもしくは2',3',4'-トリス-O-メチル)、O-ジギトキソース、O-オリボース、O-オリオースまたはO-オレアンドロースであり;O-デソサミン、O-ミカミノース、もしくはO-アンゴロサミンであり;R11=H、OH;R13=H、OH、ならびに

であり;ここで、R15は、HもしくはC1-C7アルキル基もしくはC4-C7シクロアルキル基であり;R16は、H、C1-C7アルキル基もしくはC4-C7シクロアルキル基であり;R17、R18およびR19は、各々独立してHもしくはC1-C7アルキル基であり;または、R20もしくはR21は、式中、x=2-5である(CH2)Xであり、ならびにR22は、式中、R23=HまたはC1-C7アルキル基またはC1-C7シクロアルキル基であるO-R23であり;もしくは、R22およびR16はともにケト基であり;もしくは、R22およびR19はともにケト基であり;または、1種もしくは複数のケチド単位の酸化状態が異なる先に定義された化合物の変種であり(すなわち、以下の群からの代替物の選択:-CO-、-CH(OH)-、アルケン-CH-(=CH-または-CH=)、およびCH2)、ここで任意の-CH(OH)-の立体化学も独立して選択可能である。
【0092】
好ましい態様において、本発明は、下記式Iの新規化合物を提供する。

式中、X=-C(=O)-、-CH(OH)-または-CH2-であり、R1、R4、R6、R9、R10およびR12は、各々独立してH、CH3、もしくはCH2CH3であり;R2=OH、または任意のグリコシル基であり、好ましくはO-クラジノース、O-ミカロース、O-ラムノースもしくはそれらのメチル化された誘導体(2'-O-メチル、2',3'-ビスもしくは2',3',4'-トリス-O-メチル)、O-ジギトキソース、O-オリボース、O-オリオースまたはO-オレアンドロースであり;R3=H;または、R2およびR3はともにケトであり;R5=OH、または任意のグリコシル基であり、好ましくはO-デソサミン、O-ミカミノース、もしくはO-アンゴロサミンから選択され;R7=H、OH、OCH3;R8=H、OH;R11=H、OH;R13=H、OH、ならびに

であり;ここで、R15は、HもしくはC1-C7アルキル基もしくはC4-C7シクロアルキル基であり;R16は、H、C1-C7アルキル基もしくはC4-C7シクロアルキル基であり;R17、R18およびR19は、各々独立してHもしくはC1-C7アルキル基であり;または、R20もしくはR21は、式中、x=2-5である(CH2)Xであり、ならびにR22は、式中、R23=HまたはC1-C7アルキル基またはC1-C7シクロアルキル基であるO-R23であり;もしくは、R22=ハロゲンもしくはNR24R25であり、ここでR24およびR25は、各々独立してH、C1-C7アルキル基またはC1-C7アシル基であり;または、R22およびR16はともにケト基であり;または、R22およびR19はともにケト基であり;好ましい態様において、R22はOHであり;または、1種もしくは複数のケチド単位の酸化状態が異なる先に定義された化合物の変種であり(すなわち、以下の群からの代替物の選択:-CO-、-CH(OH)-、アルケン-CH-、およびCH2)、ここで任意の-CH(OH)-の立体化学も独立して選択可能であり;但し、以下の化合物は除外する:
(a)R2=OH、O-クラジノースまたはO-ミカロース、およびR5はOHまたはO-デソサミンである場合;
(b)R1=R4=R6=R9=R10=R12=CH3、R3=H、R2=O-オレアンドロース、R5=O-デソサミン、R7=OH、R8=R13=H、ならびに

であり、ここでR17=R18=R19=Hである場合。更なる態様において、以下の化合物が除外される:
(i)R2またはR5=O-ミカミノースである場合;
(ii)R2またはR5=O-アンゴロサミンである場合。
【0093】
好ましい態様において、本発明は、式Iの新規化合物を提供する。

式中、R1=R4=R6=R9=R10=R12=CH3、R2=OH、O-ラムノースもしくはそれらのメチル化された誘導体(2'-O-メチル、2',3'-ビスもしくは2',3',4'-トリス-O-メチル)、O-ジギトキソース、O-オリボース、O-オリオースまたはO-オレアンドロース;R3=H;R5=OH、O-ミカミノースもしくはO-アンゴロサミン;R7=H、OH;R8=H、OH、OCH3;R11=H、OH;R13=H、OH;

であり;ここで、R15=H、CH3、もしくはCH2CH3であり;R16は、Hであり;または、R17およびR18は各々独立してHもしくはCH3であり;R19=H;および、R22はOHである。好ましい態様において、R2および/もしくはR5は、O-ミカミノースではないか、またはR2および/もしくはR5は、O-アンゴロサミンである。
【0094】
より高度に好ましい態様において、本発明は、式Iの新規化合物を提供する。

式中、R1=R4=R6=R9=R10=R12=CH3、R2=OH、O-ラムノースもしくはそれらのメチル化された誘導体(2'-O-メチル、2',3'-ビスもしくは2',3',4'-トリス-O-メチル)、O-ジギトキソース、O-オリボース、O-オリオースまたはO-オレアンドロース;R3=H;R5=OH、O-ミカミノースもしくはO-アンゴロサミン;R7=H、OH;R8=H、OH、OCH3;R11=H、OH;R13=H、OH;

であり;ここで、R15=CH3;R16は、Hであり;または、R17=R18=R19=H;および、R22はOHである。好ましい態様において、R2および/もしくはR5は、O-ミカミノースではないか、またはR2および/もしくはR5は、O-アンゴロサミンである。
【0095】
いくつかまたは全ての位置において「天然の」立体化学(本明細書の他所において示されたような)を含む、全ての可能性が対象とされているので、式Iにおいては立体化学は示されていない。
【0096】
代わりの宿主において14員アグリコンの開始単位領域のヒドロキシル化が可能であるシトクロムP450をクローニングしおよび発現することは恩恵でもある。例えば、天然の宿主においてシトクロムP450を発現し、およびアグリコンを当初の宿主の代わりにこの操作された宿主に供給することも恩恵があると考えられる。これは、生物の倍加時間、培地調製の容易さまたは下流のプロセッシングを実行する上での理由のために利点を有すると考えられる。シトクロムP450を公知のプロモーター下に配置し、シトクロムP450が宿主(例えば大腸菌)において過剰発現され、ならびにインビトロにおいて精製および使用されるか、またはこのタンパク質を固相に結合することにより使用することができるようにすることもできる。
【0097】
時には14-または15-ヒドロキシアグリコンを直接生成するために発酵することができる菌株を作出することは有益であることも当業者に理解されると思われる。このような菌株の作出は、必要な発酵、化学的単離または構造特徴決定などの工程の数を減少し、および大規模でこれらの分子を生成する経費を有意に低下することができる。従って本発明の特定の態様において、本発明者らは、アグリコンまたはグリコシル化された同等のマクロライドのいずれかを生成する菌株においてアグリコンの開始単位領域のヒドロキシル化が可能であるシトクロムP450の発現により、所望のヒドロキシル化されたアグリコンを生成することが可能であるような菌株の作出を考察した。これがどのように実行されるかの例(実施例9)として、本発明者らは、ランカマイシン生合成遺伝子クラスターからのシトクロムP450のクローニングを明らかにしている。ランカマイシンの生成に関与する遺伝子クラスターは、ランカマイシンの生合成のためにこの菌株により使用される2-メチルブチラート開始単位をヒドロキシル化する能力を有するシトクロムP450を含むように見える。この研究以前に、このシトクロムP450は、ランカマイシンのグリコシル化の前後に作用するかどうかは不明であったが、当業者の入手可能な証拠を基に、ヒドロキシル化工程は、先に認められたものに類似した様式でポスト-グリコシル化で生じることが推定された。加えて、このシトクロムP450は、エリスロマイシンの前駆体であるエリスロノリドBに作用することがわかっていなかった。このシトクロムP450は、プローブとしてS.ロケイ由来の公表された部分的PKS遺伝子配列を利用し、S.ロケイATCC21250からクローニングされた(Suwa et al., Gene, (2000) 246:123-131)。シトクロムP450をコードしている遺伝子は、プロモーターの制御下に配置され、およびEB生産者であるS.エリスラエアDMにおいて発現された(Gaisser et al., Mol. Microbiol., (2000) 36:391-401)。得られる菌株は、標準条件下で増殖された。この菌株の抽出物は、ヒドロキシル化されたEBを含むことが示された。この場合、この菌株は予想外に、著しい量の未修飾のEBを生成した。しかし当業者には、導入されたシトクロムP450の発現およびEB基質の生成の時期をより良く一致することは、所望の15-ヒドロキシEB生成物のより多くの生成レベルを生じることがわかっている。加えて導入されたシトクロムP450のための同族フェレドキシン/フェロドキシン還元酵素システムの同時発現も、その触媒効率を増大する。
【0098】
本発明のこの局面の更なる態様において、ランカマイシンシトクロムP450は、野生型S.エリスラエア菌株において発現された。得られる菌株は、標準条件下で増殖されかつ抽出された。菌株の抽出物は、小さい割合の15-ヒドロキシエリスロマイシンBの生成を示したが、これはおそらくA型のレベルが、eryKをアップレギュレーションするために先に説明された方法を用い増加されると考えられる。このシステムは、この菌株により天然に生成されるエリスロマイシンAを著しい量生成した。明らかにこの場合、シトクロムP450は、グリコシル転移酵素EryBVと、それらの基質EBについてより少なく競合することができる。この菌株により生成された15-ヒドロキシエリスロマイシンの割合を増加するために、多くの方法が考案されている。第一に、前述の方法によるシトクロムP450の触媒効率の増加である。第二に、この菌株により生成されたより大きい割合のEBが、例えば開始単位領域のヒドロキシル化が完了するまで発現が遅延されることを可能にする誘導性プロモーターの制御下へのeryBV遺伝子の配置による、C15位でヒドロキシル化されるまでの、引き続きのグリコシル化工程の活性の制御による。
【0099】
この種の方法で生成されたヒドロキシル化されたEBまたはヒドロキシル化されたエリスロマイシンの生成レベルは、クローニングされたS.ロケイ ランカマイシンシトクロムP450よりも、エリスロノリドについてより大きい優先性を示すシトクロムP450の選択により増加され得る。それらの同族フェレドキシン/フェロドキシン還元酵素システムの同時発現も、より多くの収量を生じることができる。熟練した研究者が、細胞ゲノムによりコードされたシトクロムP450の補体を試料採取することを可能にする方法は当業者に公知である。例えば、ゲノムDNAから一連のシトクロムP450を増幅することができるシトクロムP450の保存領域を超える縮重オリゴプライマーをデザインすることが可能である。細胞において潜在的に発現された全ての範囲を適宜試料採取するために、一連の縮重オリゴプライマーを試験することも必要であると考えられる。このような方法が、エリスロノリドの開始単位領域のヒドロキシル化を可能にするシトクロムP450を同定しない場合は、従来のタンパク質生化学技術を使用しこの活性を精製することも可能であると考えられる。最近S.アベルミチリスの全体のゲノム配列が公表された(Omura et al., PNAS (2001) 98,12215-12220)。このゲノムにおいて、33種のシトクロムP450の遺伝子配列がコードされている。本発明者らの実験は、これらのシトクロムの1種は、15位でEBをヒドロキシル化することが可能であることを明らかにしている。これは、これらの遺伝子の各々をポリメラーゼ連鎖反応により増幅し、およびそれらのEBをヒドロキシル化する能力を試験し、その結果この菌株においてこれらのシトクロムのどれが、観察された活性の原因であるかを正確に決定する比較的簡単な実験であることは、当業者により理解されると思われる。再度活性を最大化する同族フェレドキシン/フェロドキシン還元酵素システムを同時発現することが必要であると考えられる。このような発現試験は、先に説明されたように、放線菌宿主において行うことができるが、代わりの宿主、例えば大腸菌を選択することも可能であると考えられる。
【0100】
実施例
実施例1−エリスロノリドBの生成
エリスロノリドBは、S. エリスラエアDM株の発酵により生成された(Gaisser et al., Mol. Microbiol. (2000) 36:391-401)。S.エリスラエアDMは、凍結栄養型(frozen vegetative)作業ストック(1:1, TSB培養液:凍結保存剤;TSB-Trypticダイズブロス(Difco) 30g/L、凍結保存剤は、蒸留水中20%グリセロール:10%乳糖(w/v)である)から培養した。初代のプレ培養物を、250rpmで振盪したTSB(250mlフラスコ中50ml)中で30℃で増殖した。2日後、TSB(2Lのフラスコ中400ml)の二次プレ培養物を接種する(5%v/v)ために用い、これを同じ条件下で更に2日間培養した。12LのEry-P(EryP培地は、デキストロース5%、Nutrisoy粉末3%、硫酸アンモニウム0.3%、炭酸カルシウム0.6%、塩化ナトリウム0.5%を含有、pH7.0)生産培地に、二次プレ培養物(5%v/v)を接種し、20Lの攪拌しているバイオリアクター(Applikon)において30℃で5日間、曝気速度6L/分で発酵させた。ブロスを、pH4に調整し、細胞を除去するために遠心した(3500rpm、30分間、10℃)。上清を、酢酸エチルで2回抽出し、および細胞を、メタノール:酢酸エチル(1:1)で抽出した。有機相を一緒にし、真空乾燥し、濃縮した水性抽出物を得、これを酢酸エチルに対して分配した。酢酸エチル相を真空乾燥し、粗抽出物を得た。エリスロノリドBを、粗抽出物から冷アセトンで結晶化した。生成されたエリスロノリドBを、LCMS分析(m/z=425.5, (M+Na)+)により、標準試料に対し確認し、引き続きその構造をNMRにより確認した。
【0101】
実施例2−14-および15-ヒドロキシEBの小規模生成
S.エウリセルマス(DSM40014)を、25mlフラスコ中のTSB培地10ml中に接種した。このフラスコを、回転振盪機上で250rpmで攪拌しながら、30℃でインキュベーションした。24時間インキュベーションした後、全ブロス1.5mlを、250mlフラスコ中にAngolo培地25mlを含有するフラスコへ接種した(Angolo培地は、グルコース2%、Arkasoy 2.5%、カザミノ酸0.2%、ジャガイモデンプン2%、トウモロコシ浸漬固形物0.25%、炭酸カルシウム0.7%を含有する、pH7.2)。このフラスコを、250rpm、30℃で24時間インキュベーションした。24時間インキュベーションした後、フラスコに、メタノール100μl中のエリスロノリドB 1mgを供給し、更に72時間インキュベーションした。この時点で、培養物1mlを除去し、酢酸エチル0.5mlで2回抽出した。一緒にした抽出物を蒸発乾固した。残渣を、メタノールに溶解し、LCMSにより分析した。2本の接近したランニング(close running)極性ピーク、m/z=441.5, (M+Na)+を同定し、これはヒドロキシル化されたエリスロノリドBの予想された質量と一致している。
【0102】
実施例3−14-および15-ヒドロキシEBの大規模生成
S.エウリセルマス(DSM40014)を、25ml-バッフルなしフラスコにおいて、TSB培地10mlに接種した。このフラスコを、回転振盪機上で250rpmで攪拌しながら、30℃でインキュベーションした。24時間インキュベーションした後、全ブロス1.5mlを、250ml-バッフルなしフラスコ中にAngolo培地25mlを含有するフラスコへ接種した。このフラスコを、250rpm、30℃で24時間インキュベーションした。24時間インキュベーションした後、フラスコに、メタノール100μl中のエリスロノリドB 20mgを供給し、更に72時間インキュベーションした。この時点で、培養物1mlを除去し、酢酸エチル0.5mlで2回抽出した。一緒にした抽出物を蒸発乾固した。残渣を、メタノールに溶解し、LCMSにより分析した。同じく2本の極性ピーク、m/z=441.5, (M+Na)+を同定し、これはヒドロキシル化されたエリスロノリドBの予想されたものと一致している。
【0103】
実施例4−14-および15-ヒドロキシEBを生成する発酵
S.エウリセルマス(DSM40014)の凍結バイアル(1mL)を、250ml-バッフルなしフラスコ中のTSB培地50mLに接種した。このフラスコを、回転振盪機上で250rpmで攪拌しながら、30℃でインキュベーションした。この培養物10mlを、各々、TSB培地220mlを含有する2X2Lのバッフルなしフラスコへ接種した。これらのフラスコを、回転振盪機上で250rpmで攪拌しながら、30℃でインキュベーションした。各培養物約200mlを使用し、各々、Applicon 7L(作業容積)の攪拌している発酵槽中の2x4LのAngolo培地に接種した。これらの発酵槽を、500〜900rpmで攪拌し、発酵の間、最大の可能性のある酸素添加を維持した。消泡剤(SAG471)の液滴を、必要に応じて添加した。24時間後、各発酵槽へ、〜8ml DMSO中のエリスロノリドBの2mgを供給した。発酵を更に48時間継続し、試料を定期的に採取し、LCMSおよびELSにより14-および15-ヒドロキシEBの生成をモニタリングした。
【0104】
実施例5−14-および15-ヒドロキシEBの精製
ひとつの発酵槽(〜3.5L)のブロスを、遠心し(3500rpm、30分間、10℃)、細胞を除去した。上清を、HP20樹脂の直径20cmx長さ15cmのカラムに負荷し、水2.5L、その後100%メタノール2.5Lおよび最後に100%アセトン2.5Lで洗浄した。ヒドロキシル化されたEBが、メタノール画分で認められた。メタノール画分を真空乾燥し、粗抽出物を得た。両方のヒドロキシル化されたEBを、シリカクロマトグラフィー(2.5cmx30cm)で精製した。14-ヒドロキシEBは酢酸エチルを溶媒とする3%アセトン中に溶離し、および15-ヒドロキシEBは酢酸エチルを溶媒とする5〜10%アセトン中に溶離することを認めた。精製したヒドロキシル化された化合物は、LCMSにより分析し、およびNMRにより構造を特徴決定した。構造データを以下に報告する。同じく図2および3を参照のこと。
【0105】
14-ヒドロキシエリスロノリドBのCD3ODにおけるNMRデータ

【0106】
15-ヒドロキシエリスロノリドBのCD3ODにおけるNMRデータ

【0107】
実施例6−15-ヒドロキシEBを生成するための小規模でのS.ロケイを使用する生体内転換
Bennett寒天上に画線したS.ロケイATCC21250のよく増殖した培養物を、25mlフラスコ中のYEME培地6mlへ接種した(YEMEは、Difco酵母抽出物0.3%、Difco Bactoペプトン0.5%、Difcoモルト抽出物0.3%、グルコース1%、ショ糖34%を含有する)。48時間250rpmおよび30℃でインキュベーションした後、菌株を250mlフラスコ中のYEME培地30mlへ継代培養し(5%)、250rpmおよび30℃で24時間インキュベーションした。この時点で、菌株に、2.2mg EBを供給し、更に5日間インキュベーションした。試料1mlを、メタノールで1:1希釈し、LCMSにより分析した。1本の極性ピーク、m/z=441.5, (M+Na)+で同定した。更なる試験は、この保持時間が、15-ヒドロキシEBの標準試料のそれと等しいことを示した。
【0108】
S.ロケイATCC21250を、250mlフラスコ中のYEME培地30mlへ接種し、48時間250rpmおよび30℃でインキュベーションした。10mlを、2Lフラスコ中のYEME培地200mlへ接種し、48時間250rpmおよび30℃でインキュベーションした。この培養物200mlを使用し、7Lの攪拌している発酵槽(Applicon)中のYEME培地4Lに接種した。発酵槽を、500〜700rpmで30℃で攪拌した。24時間後、この培養物に、200mg EBを供給し、更に3〜4日間発酵した。発酵期間を通じ試料を採取し、15-ヒドロキシEBの存在について、LCMSおよびELSで分析した。実施例5と同じ方法で、15-ヒドロキシEBを単離した。
【0109】
実施例7−14-および15-ヒドロキシエリスロマイシンの小規模生成
実施例2の培養物の残余を、酢酸エチルで2回抽出し、一緒にした抽出物を蒸発乾固し、メタノールに溶解し、LCMSにより分析し、14-および15-ヒドロキシEBの存在を確認した。サッカロポリスポラ・エリスラエアJC2(Rowe et al., Gene (1998) 216:25-223)を、TSB 7ml(バネ付き25mlフラスコ)に接種し、回転振盪機上で250rpm、30℃で48時間振盪した。0.5mlを用い、25mlフラスコ(バネなし)中のEryP培地10mlに播種した(EryP培地は、デキストロース5%、Nutrisoy粉末3%、硫酸アンモニウム0.3%、炭酸カルシウム0.6%、塩化ナトリウム0.5%を含有する、pH7.0)。24時間後、14-および15-ヒドロキシEBの両方を含有する抽出物を添加し、更に48時間増殖した。試料1mlを採取し、pH>9に調整し、酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした抽出物を、蒸発乾固し、メタノールに溶解し、LCMSにより分析した。14-および15-ヒドロキシエリスロマイシンBの存在と一致した2本のピーク、m/z=734.5 (M+H)+で同定した。他のデソサミン含有ピークも同定した。
【0110】
サッカロポリスポラ・エリスラエアJC2を、TSB 7ml(バネなし25mlフラスコ)に接種し、回転振盪機上で250rpm、30℃で48時間振盪した。この培養物を使用し、250mlフラスコ(バネなし)中のEryP培地30mlに播種した。48時間で、精製した15-ヒドロキシEB(先に説明したように精製された)を添加し、発酵を更に48〜72時間継続した。試料1mlを採取し、アセトニトリルで1:1希釈し、LCMSにより分析した。15-ヒドロキシエリスロマイシンD、B、CおよびAの存在と一致した新たなピーク、m/z=720.5, 734.5, 736.5, および750.5(M+H)+で、同定した。
【0111】
サッカロポリスポラ・エリスラエアJC2を、TSB 7ml(バネ付き25mlフラスコ)に接種し、回転振盪機上で250rpm、30℃で48時間振盪した。この培養物を使用し、250mlフラスコ中EryP培地30mlに接種した。48時間で、精製した14-ヒドロキシEB(先に説明したように精製された)を添加し、発酵を更に48〜72時間継続した。試料1mlを採取し、アセトニトリルで1:1希釈し、LCMSにより分析した。14-ヒドロキシエリスロマイシンD、B、CおよびAの存在と一致した新たなピーク、m/z=720.5, 734.5, 736.5, および750.5(M+H)+で、同定した。
【0112】
実施例8−15-ヒドロキシエリスロマイシンAのeryK作用の増強による生成
S.エリスラエアJC2菌株により生成された15-ヒドロキシエリスロマイシンAの割合を増大するために、本発明者らは、actI/actII orf4プロモーターシステムの制御下でエリスロマイシンのC12でヒドロキシル化に関与するEryKシトクロムP450をコードしている遺伝子eryKを配置した。EryKは、標準条件ならびに開始コドンにNdeI部位および停止コドンを超えてXbaIを組込んだオリゴヌクレオチドを使用するPCRにより増幅した。得られた増幅産物を、SmaI切断したpUC18にクローニングし、増幅過程時にエラーが導入されなかったことを確実にするために配列決定した。シトクロムP450コードの挿入断片を、NdeIおよびXbaIによる消化により除去し、同じ酵素で消化したpLSB2(WO 03/070908)へ連結した。得られたプラスミドを、pSGK016と称し;これは、アプラマイシン-ベースのベクター上の、actI/actII orf4プロモーターシステムの制御下に、eryKを含んだ。このプラスミドを、標準条件下で、S. エリスラエア JC2を形質転換するために使用し;形質転換体は、24時間後に、100μg/mlアプラマイシンを積層することにより、R2T20上で選択した。得られた菌株は、エリスロマイシンをC12でヒドロキシル化する増強された能力を有することが示された。この菌株は、バネおよび50μg/mlアプラマイシンを含有する25mlフラスコ中のTSB 7mlに接種し、48時間増殖した。この時点で、菌株を、50μg/mlアプラマイシンを含む250mlフラスコ中のEryP培地(5%)30mlへ継代培養した。48時間後に、培養物に、15-ヒドロキシEB(50mg/l)を供給し、更に48〜72時間増殖した。試料1mlを、この期間中一定間隔で採取した。試料を、アセトニトリルで1:1希釈し、LCMSにより分析した。15-ヒドロキシエリスロマイシンA(m/z=750.5)(大きい)、15-ヒドロキシエリスロマイシンB(m/z=734.5)、15-ヒドロキシエリスロマイシンC(m/z=736.5)および15-ヒドロキシエリスロマイシンD(m/z=720.5)に対応するピークが、全て[M+H]+として観察された。
【0113】
更に調べるために、前記試料のこれらの化合物100μlのグリコシル化を、バイオアッセイした。溶融した2TY寒天250mlに、M.ルテウス(luteus)(NCIMB8553)の活発に増殖している培養物と共に接種し、24.3x24.3cmの正方形バイオアッセイプレートへ注いだ。一旦寒天を設定した後、寒天に孔をあけ、15-ヒドロキシエリスロマイシンを含有する試料100μlを充填した。プレートを、37℃で一晩インキュベーションした。15-ヒドロキシEBを供給している培養物によってのみ阻害ゾーンが認められた。
【0114】
実施例9−シトクロムP450の異種発現
ストレプトミセス・ロケイATCC21250由来のゲノムDNAを、プライマー

と共に、鋳型として使用し、シトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードしている約1.2kb DNA断片を増幅した。この断片を、標準技術を用い、pUC19へクローニングし、その後以下のように構築されたpSG144のベクター骨格への挿入断片の連結のために、NdeIおよびXbaIで消化した。
【0115】
プラスミドpSG114は、pSG142の誘導体であり(Gaisser et al., Mol. Microbiol., (2000) 36,391-401)、ここではチオストレプトン遺伝子とeryRHS(組込みのための相同性として使用される中間領域)の間のXbaI部位が、pSG142のXbaIによる消化により除去され、および標準プロトコールを使用し補充され、および再連結され、pSG143を生じる。加えてeryBVの末端のHisタグを、pSG142から除去し、eryBVの末端でXbaI部位により交換した。このpSG142ベクター内のeryBV遺伝子を、XbaI部位を伴うeryBVと交換するために、一連の中間体ベクターを構築した。PUC18eryBVcasを、遺伝子eryBVを、プライマー

および鋳型としてpSG142(Gaisser et al., Mol. Microbiol. (2000) 36,391-401)を用いるPCRにより増幅することにより構築した。PCR断片は、標準手法、ならびにeryBVの開始コドンを重複しているNdeI部位ならびに停止コドンに続くXbaIおよびBglII部位を伴う単離されたプラスミドpUC18eryBVcasを用いクローニングした。この構築体は、配列解析により証明した。遺伝子eryBVを、プライマー

を用いるPCRにより増幅し、これはeryBVの5'末端にDamメチル化に感受性のあるXbaI部位を、および3'末端にBglII部位を導入した。プラスミドpUC18eryBVcasを、鋳型として使用した。標準技術を使用するT4ポリヌクレオチドキナーゼによる処理後、増幅産物を、SmaI切断したpUC18に連結し、大腸菌DH10Bの形質転換に使用した。その後この構築体を、BamHI/BglIIを用いて消化し、およそ1.3kb DNAバンドを単離し、標準手法を用いBamHI/BglIIで先に消化したLitmus 28へクローニングした。ベクターpSGLit1を単離し、挿入断片のDNA配列を、配列解析により証明した。プラスミドpSGLit1を、NdeI/BglIIで消化し、約1.3kbバンドを単離し、同じ酵素で消化されているpSG143へクローニングした。この連結物は、大腸菌DH10Bへ形質転換し、プラスミドpSG144を配列解析により証明した。
【0116】
プラスミドpLSB150を使用し、化合物エリスロノリドBの生産者であるS.エリスラエアDMを形質転換した(Gaisser et al., Mol. Microbiol., (2000) 36:391-401)。形質転換体を、40μg/mlチオストレプトンを伴う積層したR2T20寒天上で24時間で選択した。得られた株S.エリスラエアNRRL2338 DM/pLSB150を、5μg/mlチオストレプトンを含有するTSB液体培地7mlにおいて48時間増殖し、その後5μg/mlチオストレプトンを含有するEryP培地30mlへ継代培養した(5%)。培養物を更に5〜6日間増殖し、その後分析した。培養物上清1mlを、酢酸エチルで3回抽出した。一緒にした有機層を、真空乾燥し、試料を、同時に増殖した対照試料S. エリスラエア DMに対し、LCMSにより分析した。ヒドロキシル化されたEBに対応するm/z=441.5 [M+Na]+の極性ピークの存在が同定され;従って、このシトクロムP450はEBアグリコンに作用することを表している。
【0117】
プラスミドpLSB150を、標準プロトコールを用いて単離し、サッカロポリスポラ・エリスラエアNRRL2338を形質転換するために使用した。形質転換体を、40μg/mlチオストレプトンを伴う積層したR2T20寒天上で24時間選択した。得られた株S.エリスラエアNRRL2338/pLSB150を、5μg/mlチオストレプトンを含有するTSB液体培地7mlにおいて48時間増殖し、その後5μg/mlチオストレプトンを含有するEryP培地30mlへ継代培養した(5%)。培養物を更に5〜6日間増殖し、その後分析した。培養物上清1mlを、pH>9とし、酢酸エチルで3回抽出した。一緒にした有機層を、真空乾燥し、試料を、同時に増殖した対照試料S.エリスラエアNRRL2338に対し、LCMSにより分析した。ヒドロキシル化されたエリスロマイシンBに対応するm/z=734.5 [M+H]+の極性ピークの存在が観察されたことに加え、より少ない極性のエリスロマイシンピークが通常、S.エリスラエアの発酵時に観察された。
【0118】
実施例10−代替糖の付加
S.エリスラエアJC2 ΔCIIIを、菌株JC2(Rowe et al., Gene, (1998) 216,25-223)から、形質転換、それに続くeryCIII染色体欠失を作製するために使用したプラスミドの分解により作製した(Gaisser et al., Mol. Microbiol., (2000) 36,391-401)。菌株S.エリスラエアJC2 ΔCIIIは、ミカロース糖をエリスロノリドのC-3ヒドロキシ基へ転移する能力を保持している。S.エリスラエアJC2ΔCIIIを、25mlフラスコ中のTSB 7mlに接種し、30℃、250rpmで48時間増殖した。この時点で、この菌株は、250mlフラスコ中においてEryP培地(5%)25mlに継代培養し、30℃、250rpmで発酵した。48時間後、培養物に、50mg/lの15-ヒドロキシEBを供給し、更に72時間増殖した。試料を一定間隔で採取し、アセトニトリルで1:1に希釈し、遠心し、LCMSにより分析した。ピークm/z=585.5 [M+Na]+を同定し、これは3-O-ミカロシル-15-ヒドロキシEBの存在と一致した。
【0119】
S.エリスラエアSGT2 pSGOLEG2 (Gaisser et al., Mol. Microbiol. (2000) 36,391-401)を、25mlフラスコ中のTSB 7mlに接種し、30℃、250rpmで48時間増殖した。この時点で、この菌株は、250mlフラスコ中においてEryP培地(5%)25mlに継代培養し、30℃で48時間増殖した。48時間後、培養物に、50mg/lの15-ヒドロキシEBを供給し、更に72時間増殖した。試料を一定間隔で採取し、アセトニトリルで1:1に希釈し、遠心し、LCMSにより分析した。ピークm/z=587.5 [M+Na]+および585.5 [M+Na]+を同定し、これは3-O-ラムノシル-15-ヒドロキシEBおよび3-O-ミカロシル-15-ヒドロキシEBの存在と一致した。
【0120】
実施例12−15-ヒドロキシエリスロノリドBの生体内転換
S.エリスラエアJC2/ΔCIII(前記参照)を、2Lのエーレンマイヤーフラスコ中のTSB 200mlに接種し、28℃、250rpmでインキュベーションした。48時間後、菌株をSSDM培地4L(5%v/v)に継代培養し、48時間インキュベーションした(SSDM培地は、1Lにつき以下を含有する:ショ糖69g;硝酸カリウム10g;コハク酸2.63g;KH2PO4 2.7g;MgSO4・7H2O 1.2g;微量元素溶液10ml(g/L ZnCl2 1g;MnCl2・4H2O、0.62g;CuCl2・2H2O、0.053g;CoCl2、0.055g;FeSO4・7H2O、2.5g;CaCl2・2H2O、3.8g);pH6.2へ1M KOHで調整)。その後これらの培養物に、15-ヒドロキシEB(最終濃度50mg/ml)を添加し、更に88時間インキュベーションした。生体内転換をモニタリングするために、試料を一定間隔で採取し、メタノールで1:1(v/v)希釈し、10分間振盪し、その後遠心し、LC/ESI-MSにより分析した。
【0121】
実施例13−3-O-ミカロシル-15-OH EBの精製
1個の発酵槽からのブロス(約3.5L)を遠心し(3500rpm、30分間)、上清を、HP20樹脂のカラム(直径20cm x 高さ15cm)へ移した。この樹脂を、水で洗浄し(2X2.5L)、およびメタノール(2.5L)を使用し、3-O-ミカロシル-15-ヒドロキシエリスロノリドBを溶離した。有機画分を、減圧下で乾燥し、粗3-O-ミカロシル-15-ヒドロキシエリスロノリドBを得た。この抽出物を更に、溶離液として酢酸エチル、引き続き酢酸エチル/メタノール(v:v;1:1)を使用するフラッシュシリカ上のカラムクロマトグラフィーにより精製した。逆相C18-カラムを使用し、ならびに水/アセトニトリル(v:v, 70:30)で溶離するHPLCによる精製は、3-O-ミカロシル-15-ヒドロキシエリスロノリドBを、無色の固形物として生じた。
【0122】
3-O-ミカロシル-15-OH EBのCD3ODにおけるNMRデータ


【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】エリスロマイシンが、基本的ケチド単位から集成される方法を示す。
【図2】CD3ODにおける14-ヒドロキシエリスロノリドのNMRに関する構造を示す。
【図3】CD3ODにおける15-ヒドロキシエリスロノリドのNMRに関する構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル化された14員マクロライド化合物を生成する方法であって:
(a)14員アグリコン鋳型を生成する工程;ならびに
(b)該アグリコン鋳型を、14位および/または15位でアグリコン鋳型をヒドロキシル化することが可能である菌株に供給する工程を含む、方法。
【請求項2】
菌株が、原核生物および真菌の株のライブラリーをスクリーニングし、14位および/または15位でアグリコン鋳型をヒドロキシル化することが可能であるそれらを同定することにより同定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
菌株が、放線菌ライブラリーのスクリーニングにより同定される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
菌株が、ストレプトミセス・エウリセルマス(Streptomyces eurythermus)、ストレプトミセス・アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)およびストレプトミセス・ロケイ(Streptomyces rochei)からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
菌株が、ストレプトミセス・エウリセルマスDSM 40014、ストレプトミセス・アベルミチリスATCC 31272およびストレプトミセス・ロケイATCC 21250からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
工程(b)において使用される菌株が、該菌株が提供されたアグリコン鋳型の開始単位領域をヒドロキシル化することが可能であるシトクロムP450を発現するように遺伝子操作されている、請求項1記載の方法。
【請求項7】
工程(b)において使用される組換え株が、原核生物である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
工程(b)において使用される組換え株が、大腸菌(E. coli)である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
工程(b)において使用される組換え株が、放線菌である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
工程(b)において使用される組換え株が、サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythraea)、ストレプトミセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)、ストレプトミセス・アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトミセス・グリセオフスカス(Streptomyces griseofuscus)、ストレプトミセス・シンナモネンシス(Streptomyces cinnamonensis)、ストレプトミセス・フラジエ(Streptomyces fradiae)、ストレプトミセス・エウリセルマス(Streptomyces eurythermus)、ストレプトミセス・ロンギスポロフラブス(Streptomyces longisporoflavus)、ストレプトミセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)、サッカロポリスポラ・スピノサ(Saccharopolyspora spinosa)、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ(Micromonospora griseorubida)、ストレプトミセス・ラサリエンシス(Streptomyces lasaliensis)、ストレプトミセス・ベネズエラ(Streptomyces venezuelae)、ストレプトミセス・アンチビオチクス(Streptomyces antibioticus)、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトミセス・リモサス(Streptomyces rimosus)、ストレプトミセス・アルバス(Streptomyces albus)、アミコラトプシス・メジテラナイ(Amycolatopsis mediterranei)、ノカルジア(Nocardia)種、ストレプトミセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)およびアクチノプラーネス(Actinoplanes)種N902-109からなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ヒドロキシル化された14員アグリコン生成物が、工程(b)の後に単離される、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
(c)得られるヒドロキシル化された14員アグリコンを、1個または複数の糖部分を付加することができる第二の菌株へ供給する工程を更に含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
生成されたヒドロキシル化されたアグリコンが、工程(c)の菌株へ、精製工程をなしで直接供給される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
第二の菌株が、1個または複数の所望の糖部分を天然に合成し、およびそれらをヒドロキシル化された14員アグリコン鋳型へ付加することが可能である、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
第二の菌株が、1個または複数の所望の糖部分を発現および/または転移するように遺伝子操作されている、請求項12または13記載の方法。
【請求項16】
菌株の遺伝子操作法が、1個または複数の所望の糖部分の合成および/または転移に関与する生合成遺伝子を含む菌株遺伝子カセットへの導入の工程を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
工程(c)において使用される菌株が、放線菌である、請求項12〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
工程(c)において使用される組換え株が、サッカロポリスポラ・エリスラエア、ストレプトミセス・コエリコロル、ストレプトミセス・アベルミチリス、ストレプトミセス・グリセオフスカス、ストレプトミセス・シンナモネンシス、ストレプトミセス・フラジエ、ストレプトミセス・エウリセルマス、ストレプトミセス・ロンギスポロフラブス、ストレプトミセス・ヒグロスコピクス、サッカロポリスポラ・スピノサ、ミクロモノスポラ・グリセオルビダ、ストレプトミセス・ラサリエンシス、ストレプトミセス・ベネズエラ、ストレプトミセス・アンチビオチクス、ストレプトミセス・リビダンス、ストレプトミセス・リモサス、ストレプトミセス・アルバス、アミコラトプシス・メジテラナイ、ノカルジア種、ストレプトミセス・ツクバエンシスおよびアクチノプラーネス種N902-109からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
工程(b)において菌株へ供給されるアグリコン鋳型が、下記式による、前記請求項のいずれか1項記載の方法:

式中、X=-C(=O)-、-CH(OH)-または-CH2-であり、R1、R4、R6、R9、R10およびR12が、各々独立してH、OH、CH3、CH2CH3もしくはOCH3であり;R2=OH;R3=H;または、R2およびR3がともにケトであり;R5=OH;R7=H、OHもしくはOCH3;R8=H、OHもしくはケト;R11=H、OH;R13=H、OH、ならびに

であり;ここで、R15が、HもしくはC1-C7アルキル基もしくはC4-C7シクロアルキル基であり;R16が、HまたはC1-C7アルキル基またはC4-C7シクロアルキル基であり;R17、R18およびR19が、各々独立してHもしくはC1-C7アルキル基であり;または、R20もしくはR21が、式中、x=2-5である(CH2)Xであり、ならびにR22が、Hであるか;または、先に定義された化合物の変種が、1個もしくは複数の>CHOHもしくは>CHOMe基がケト基により置換されることにより修飾されるか、または1個もしくは複数のケチド単位の酸化状態が異なる先に定義された化合物の変種(すなわち、以下の群からの代替物の選択:-CO-、-CH(OH)-、アルケン-CH-(=CH-または-CH=)、およびCH2)である。
【請求項20】
X=-C(=O)-、R1=R4=R6=R9=R10=R12=CH3、R2=OH、R7=H、OH;R8=H、OH、OCH3;R11=H、OH;R13=H、OH;

であり;ここでR15=H、CH3、もしくはCH2CH3;および、R16がHであり;または、R17およびR18が、各々独立してHもしくはCH3であり;R19およびR22がHである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
X=-C(=O)-、R1、R4、R6、R9、R10およびR12が、各々CH3であり、R2、R5およびR11=OH;R3、R8、およびR13=H;R7=HまたはOH;ならびに、

であり、ここで、R17、R18、R19およびR22がHである、請求項19記載の方法。
【請求項22】
酸化的酵素が、原核生物および真菌の株のライブラリーのスクリーニング、ならびに14位および/または15位での14員アグリコン鋳型のヒドロキシル化が可能な菌株内で発現された一連の酸化的酵素のクローニングにより同定される、請求項6記載の方法。
【請求項23】
スクリーニングされたライブラリーが、放線菌ライブラリーである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
14位および/または15位での14員アグリコン鋳型のヒドロキシル化が可能であると同定された菌株内の一連の酸化的酵素が、縮重オリゴプライマーを使用し同定される、請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
酸化的酵素が、シトクロムP450である、請求項22〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
ヒドロキシル化された14員マクロライド化合物を生成する方法であって:
(a)14員アグリコン鋳型を生成する工程;
(b)原核生物および真菌の株のライブラリーをスクリーニングし、ならびに菌株内で発現された一連のP450を増幅することにより、14位および/または15位で14員アグリコン鋳型をヒドロキシル化することが可能であるシトクロムP450を同定する工程;
(c)該P450を発現および単離する工程;ならびに
(d)単離されたP450をインビトロにおいて使用し、該14員アグリコン鋳型の14位および/または15位をヒドロキシル化する工程を含む、方法。
【請求項27】
P450が、適当なフェレドキシンおよびフェレドキシン還元酵素とともに発現される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
式Iの1種または複数の化合物を生成する、請求項1〜27のいずれか1項記載の方法:

式中、X=-C(=O)-、-CH(OH)-もしくは-CH2-であり、R1、R4、R6、R10およびR12が、各々独立してH、OH、CH3、CH2CH3もしくはOCH3であり;R2=OH、または任意のグリコシルもしくは二糖類の基であり;R3=H;または、R2およびR3がともにケトであり;R5=OH、または任意のグリコシル基であり;R7=H、OH、OCH3;R8=H、OHもしくはケト;R9=H、OH、CH3、CH2CH3もしくはOCH3、O-メゴサミン、O-クラジノース、O-ミカロース、O-ラムノースもしくはそれらのメチル化された誘導体、O-ジギトキソース、O-オリボース、O-オリオースもしくはO-オレアンドロース;O-デソサミン、O-ミカミノース、もしくはO-アンゴロサミン;R11=H、OH;R13=H、OH、ならびに

であり;ここで、R15が、HもしくはC1-C7アルキル基もしくはC4-C7シクロアルキル基であり;R16が、H、C1-C7アルキル基もしくはC4-C7シクロアルキル基であり;R17、R18およびR19が、各々独立してHもしくはC1-C7アルキル基であり;または、R20もしくはR21が、式中、x=2-5である(CH2)Xであり、ならびにR22が、式中、R23=HまたはC1-C7アルキル基またはC1-C7シクロアルキル基であるO-R23であり;または、R22およびR16がともにケト基であり;または、R22およびR19がともにケト基であるか;または、1種もしくは複数のケチド単位の酸化状態が異なる先に定義された化合物の変種である(すなわち、以下の群からの代替物の選択:-CO-、-CH(OH)-、アルケン-CH-(=CH-または-CH=)、およびCH2)。
【請求項29】
R2が、O-クラジノース、O-ミカロース、O-ラムノースおよびそれらのメチル化された誘導体、O-ジギトキソース、O-オリボース、O-オリオースまたはO-オレアンドロースから選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
R2および/またはR9が、2'-O-メチル、2',3'-ビス-O-メチルおよび2',3',4'-トリス-O-メチルから選択されたメチル化された誘導体である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
R5が、O-ミカミノースおよびO-アンゴロサミンから選択されたグリコシル基である、請求項28、29または30記載の方法。
【請求項32】
下記式I記載の化合物:

式中、X=-C(=O)-、-CH(OH)-または-CH2-であり、R1、R4、R6、R9、R10およびR12が、各々独立してH、CH3、もしくはCH2CH3であり;R2=OH、もしくは任意のグリコシル基であり;R3=H;または、R2およびR3がともにケトであり;R5=OH、もしくは任意のグリコシル基であり;R7=H、OH、OCH3;R8=H、OH;R11=H、OH;R13=H、OH、

であり;ここで、R15が、HもしくはC1-C7アルキル基もしくはC4-C7シクロアルキル基であり;R16が、H、C1-C7アルキル基もしくはC4-C7シクロアルキル基であり;R17、R18およびR19が、各々独立してHもしくはC1-C7アルキル基であり;または、R20もしくはR21が、式中、x=2-5である(CH2)Xであり、ならびにR22が、式中、R23=HまたはC1-C7アルキル基またはC1-C7アシル基であるO-R23であり;または、R22=ハロゲン;もしくは、NR24R25であり、ここでR24およびR25が、各々独立してH、C1-C7アルキル基またはC1-C7アシル基であり;または、R22およびR16がともにケト基であり;または、R22およびR19がともにケト基であるか;または、1種または複数のケチド単位の酸化状態が異なる先に定義された化合物の変種(すなわち、以下の群からの代替物の選択:-CO-、-CH(OH)-、アルケン-CH-、およびCH2)であり;但し、以下の化合物が除外される:
(a)R2=OH、O-クラジノースまたはO-ミカロース、およびR5がOHまたはO-デソサミンである場合;
(b)R1=R4=R6=R9=R10=R12=CH3、R3=H、R2=O-オレアンドロース、R5=O-デソサミン、R7=OH、R8=R13=H、ならびに

であり、ここでR17=R18=R19=Hである場合;
(c)R2またはR5=O-ミカミノースである場合;
(d)R2またはR5=O-アンゴロサミンである場合。
【請求項33】
R2が、O-クラジノース、O-ミカロース、O-ラムノースおよびそれらのメチル化された誘導体、O-ジギトキソース、O-オリボース、O-オリオースまたはO-オレアンドロースから選択される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
R2が、2'-O-メチル、2',3'-ビス-O-メチルおよび2',3',4'-トリス-O-メチルから選択されたメチル化された誘導体である、請求項33記載の化合物。
【請求項35】
R5が、O-ミカミノースおよびO-アンゴロサミンから選択されたグリコシル基である、請求項32、33または34記載の化合物。
【請求項36】
X=-C(=O)-、R1=R4=R6=R9=R10=R12=CH3、R2=OH、O-ラムノースもしくはそれらのメチル化された誘導体、O-ジギトキソース、O-オリボース、O-オリオースまたはO-オレアンドロース;R3=H;R5=OH、O-ミカミノースもしくはO-アンゴロサミン;R7=H、OH;R8=H、OH、OCH3;R11=H、OH;R13=H、OH;

であり;ここで、R15が、H、CH3、もしくはCH2CH3;および、R16が、Hであり;または、R17およびR18が、各々独立してHもしくはCH3であり;R19が、Hであり;および、R22がOHである、請求項32〜35のいずれか1項記載の化合物。
【請求項37】
X=-C(=O)-、R1=R4=R6=R9=R10=R12=CH3、R2=OH、O-ラムノースもしくはそれらのメチル化された誘導体、O-ジギトキソース、O-オリボース、O-オリオースまたはO-オレアンドロース;R3=H;R5=OH、O-ミカミノースもしくはO-アンゴロサミン;R7=H、OH;R8=H、OH、OCH3;R11=H、OH;R13=H、OH;

であり;ここで、R15=CH3;R16が、Hであり;または、R17=R18=R19=Hおよび、R22がOHである、請求項36記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−515163(P2007−515163A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540624(P2006−540624)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005018
【国際公開番号】WO2005/054266
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506181508)バイオティカ テクノロジー リミテッド (6)
【出願人】(506181531)ファイザー インコーポレイティッド (11)
【Fターム(参考)】