説明

エレベータシステム

【課題】 火災発生時に避難時間に関する的確な情報を提供することのできるエレベータシステムを提供する。
【解決手段】 ビル内で火災が発生したことを知らせるための火災発生通知信号をビル内の各住戸にインターホンを用いて送信する送信部13aと、火災発生通知信号に対してインターホンを用いて各住戸から送信される応答信号を受信する受信部13bと、受信部で受信した応答信号に基づき、応答信号を送信した住戸の数に関する応答住戸数情報をビルの階毎に取得する応答住戸数情報取得部16と、応答住戸数情報取得部で取得された応答住戸数情報に基づき、エレベータを用いて避難を行う場合の避難時間を算出する避難時間算出部17と、避難時間算出部で算出された避難時間に基づく避難情報を報知する報知部19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルの高層化に伴い、火災発生時にエレベータを積極的に利用することが提案されている。このようにエレベータを利用することで、高層ビルにおいても迅速な避難を行うことが可能である。
【0003】
しかしながら、エレベータの定員は限られているため、避難者数が多い場合には、エレベータを利用した迅速な避難が困難な場合もある。このような場合、各階の避難者数を把握することができれば、エレベータを利用した避難時間を算出することができ、エレベータを利用すべきか或いは非常階段を利用すべきかを判断することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/121004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来は、避難者数に関する情報を把握することが困難であったため、避難時間に関する情報を的確に報知できないという問題があった。
【0006】
したがって、火災発生時に避難時間に関する的確な情報を提供することのできるエレベータシステムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るエレベータシステムは、ビル内で火災が発生したことを知らせるための火災発生通知信号を前記ビル内の各住戸にインターホンを用いて送信する送信部と、前記火災発生通知信号に対して前記インターホンを用いて各住戸から送信される応答信号を受信する受信部と、前記受信部で受信した応答信号に基づき、前記応答信号を送信した住戸の数に関する応答住戸数情報を前記ビルの階毎に取得する応答住戸数情報取得部と、前記応答住戸数情報取得部で取得された応答住戸数情報に基づき、エレベータを用いて避難を行う場合の避難時間を算出する避難時間算出部と、前記避難時間算出部で算出された避難時間に基づく避難情報を報知する報知部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るエレベータシステムの構成を示したブロック図である。
【図2】実施形態に係るエレベータシステムの動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係るエレベータシステムの構成を示したブロック図である。ここでは、高層ビルで構成された共同住宅のエレベータシステムについて説明する。
【0011】
火災感知器11は、ビルの各階に設置されており、熱感知器や煙感知器によって構成されている。火災感知器11には火災感知信号取得部12が接続されており、火災感知信号取得部12は火災感知器11からの火災感知信号を取得する。
【0012】
火災感知信号取得部12には、送信部13a及び受信部13bを有する通信部13が接続されている。
【0013】
送信部13aでは、火災感知信号取得部12で取得した火災感知信号に基づき、ビル内で火災が発生したことを知らせるための火災発生通知信号をビル内の各住戸にインターホンを用いて送信する。具体的には、通信部13にはインターホン制御部14が接続されており、送信部13aからインターホン制御部14を介して各住戸に設けられた住戸インターホン15に火災発生通知信号が送信される。住戸インターホン15で火災発生通知信号を受信すると、住戸インターホン15のブザーが鳴動する。なお、ブザーを鳴動させる代わりに、「ビル内で火災が発生しているので避難して下さい」といった音声によって火災発生を知らせてもよい。
【0014】
受信部13bでは、火災発生通知信号に対してインターホンを用いて各住戸から送信される応答信号を受信する。具体的には、火災発生通知信号に基づいて住戸インターホン15のブザーが鳴動すると、住人が居在している住戸では当該住人が住戸インターホン15の応答ボタンを押下する。その結果、住戸インターホン15からの応答信号がインターホン制御部14を介して受信部13bに送信される。住人が居在していない住戸では、応答ボタンが押下されないので、応答信号は送信されない。
【0015】
通信部13には、応答住戸数情報取得部16が接続されている。応答住戸数情報取得部16では、受信部13bで受信した応答信号に基づき、応答信号を送信した住戸の数に関する応答住戸数情報をビルの階毎に取得する。これにより、住人が居在している住戸の数を階毎に把握することが可能である。
【0016】
応答住戸数情報取得部16には、避難時間算出部17が接続されている。避難時間算出部17では、応答住戸数情報取得部16で取得された応答住戸数情報に基づき、エレベータを用いて避難を行う場合の避難時間を算出する。以下、避難時間の算出について説明する。
【0017】
避難時間には、エレベータの走行時間及びエレベータの戸開閉時間が含まれる。すなわち、避難時間には、各停止階(避難階も含む)の間の走行時間の合計(合計走行時間)、及び各停止階での戸開閉時間の合計(合計戸開閉時間)が含まれる。なお、ここで言う戸開閉時間とは、エレベータが到着してからドアが完全に開くまでの時間、ドアが完全に開いている時間、及びドアが閉じ始めてからエレベータが出発するまでの時間の合計を指す。
【0018】
ここで、避難者数が多い階では、上述した戸開閉時間が長くなる。また、避難者がいない階にはエレベータは停止しないため、避難者がいない階の数が多いほど停止階が少なくなり、合計走行時間は短くなる(エレベータは停止する前後で減速及び加速するため)。なお、避難者が多いと、ある階にエレベータが到着するまでに定員に達してしまっている場合もある。そのような場合には、後発のエレベータを利用することとなる。したがって、階毎の避難者数が予め把握できれば、避難時間を予測することが可能である。
【0019】
本実施形態では、上述した応答住戸数情報取得部16で取得した応答住戸数情報に基づき、以下のようにして階毎の避難者数を推定している。すでに述べたように、応答住戸数情報取得部16で応答住戸数情報を取得することにより、住人が居在している住戸の数を階毎に把握することが可能である。そして、1住戸当たりの平均居在人数を予め想定しておけば、住人の総居在人数を階毎に推定することも可能である。この階毎の総居在人数を階毎の避難者数として推定することができる。
【0020】
上記のことから、応答住戸数情報から得られるエレベータの走行時間及びエレベータの戸開閉時間に基づいて避難時間算出部17で避難時間を算出(予測)することが可能である。
【0021】
避難時間算出部17には、表示制御部18が接続されている。表示制御部18では、避難時間算出部17で算出された避難時間に基づく避難情報をホール表示器19に表示するための表示制御を行う。
【0022】
ホール表示器19は、各階のエレベータホールに設けられ、表示制御部18の表示制御により上述した避難情報の表示を行う。具体的には、ホール表示器19は、避難時間算出部17で算出された避難時間を避難情報として表示する。例えば、「避難階(例えば1階)まで2分30秒かかります」といった表示が行われる。また、ホール表示器19は、避難時間算出部17で算出された避難時間に基づき、各階の住人がエレベータを利用すべきか否かの情報を避難情報として表示してもよい。例えば、「エレベータを利用するより、非常階段を利用した方が早く避難できます」といった表示を行ってもよい。なお、非常階段を利用した場合の避難時間は、予め階毎に算出しておけばよい。
【0023】
なお、表示器以外の報知手段を用いて、避難時間に基づく避難情報を報知してもよい。例えば、表示器を用いる代わりに、或いは表示器とともに、音声を用いて避難情報を報知してもよい。
【0024】
上述した火災感知信号取得部12、通信部13、応答住戸数情報取得部16、避難時間算出部17及び表示制御部18によって制御部20が構成されている。
【0025】
制御部20にはエレベータ制御部21が接続されている。エレベータ制御部21は、制御部20から送られてくる階毎の応答住戸数情報や避難者数情報に基づき、エレベータのかご22の運行制御(例えば複数台のエレベータの運行制御)等を行う。なお、応答信号を送信した住戸が設けられた階に対しては、自動的にエレベータを停止させるようにしてもよい。
【0026】
次に、図2に示したフローチャートを参照して、本実施形態に係るエレベータシステムの動作を説明する。図2に示したフローチャートの動作は、主として制御部20によって実行される。
【0027】
まず、火災が発生すると(S11)、火災感知信号取得部12は火災感知器11からの火災感知信号を取得する(S12)。火災感知信号取得部12からは、通信部13に火災発生情報が出力される(S13)。具体的には、火災発生階を示す情報が火災感知信号取得部12から通信部13に送られる。
【0028】
通信部13に火災発生情報が入力すると、送信部13aからビル内の各住戸にインターホンを用いて火災発生通知信号が送信される(S14)。すなわち、送信部13aからインターホン制御部14を介して各住戸の住戸インターホン15に火災発生通知信号が送信される。
【0029】
住戸インターホン15に火災発生通知信号が入力すると、住戸インターホン15のブザーが鳴動し、各住戸の住人に火災が発生したことが伝えられる(S15)。
【0030】
住人が居在している場合には、その住人によって住戸インターホン15の応答ボタンが押下される(S16)。
【0031】
応答ボタンが押下されると、住戸インターホン15からの応答信号がインターホン制御部14を介して通信部13に送信され、受信部13bで応答信号が受信される(S17)。応答信号には、応答ボタンが押下された住戸の住戸番号等が含まれる。住人が居在していない住戸では、応答ボタンが押下されないので、応答信号は送信されない。
【0032】
受信部13bで応答信号を受信すると、応答住戸数情報取得部16では、応答信号に基づき、応答信号を送信した住戸の数に関する応答住戸数情報をビルの階毎に取得する(S18)。
【0033】
応答住戸数情報取得部16には避難時間算出部17が接続されており、避難時間算出部17では、応答住戸数情報取得部16で取得された応答住戸数情報に基づき、エレベータを用いて避難を行う場合の避難時間を算出する(S19)。具体的には、応答住戸数情報に基づいて階毎の総居在人数を算出する。そして、階毎の総居在人数に基づいて避難時間を算出する。すでに説明したように、避難時間には、各停止階(避難階も含む)の間の走行時間の合計(合計走行時間)、及び各停止階での戸開閉時間の合計(合計戸開閉時間)が含まれる。
【0034】
避難時間算出部17には表示制御部18が接続されており、表示制御部18では、避難時間算出部17で算出された避難時間に基づく避難情報をホール表示器19に表示させるために、ホール表示器19に対する表示制御を行う(S20)。
【0035】
ホール表示器19では、表示制御部18の表示制御に基づいて避難情報の表示を行う(S21)。すでに述べたように、ホール表示器19には、避難時間そのものを表示してもよいし、エレベータを利用すべきか否かの情報を表示してもよいし、それらの両方を表示してもよい。避難者は、表示を見ることで、エレベータを利用して避難すべきか或いは非常階段を利用して避難すべきかを判断することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のエレベータシステムでは、火災が発生した際に、インターホンを利用することにより、住人が居在している住戸の数を階毎に容易に把握することが可能である。これにより、避難者数に関する情報を容易に把握することができ、避難時間に関する情報を的確に報知することが可能である。その結果、火災発生時に的確な避難を行うことが可能となる、
なお、上述した実施形態において、応答住戸数情報を更新するようにしてもよい。例えば、エレベータが避難階へ到着したしたときに再度、住戸インターホンのブザーを鳴動させ、応答信号を送信した住戸の数を再度、取得するようにしてもよい。このように応答住戸数情報を更新することで、より高精度で避難時間を算出することが可能である。
【0037】
また、上述した実施形態において、老人や車椅子使用者等の避難弱者が居住している住戸の住戸番号を予め登録しておくようにしてもよい。そして、避難弱者が居住している住戸から応答信号が送信されてきた場合には、避難弱者が居住している住戸が設けられた階のエレベータの戸開閉時間を通常よりも長く設定して避難時間を算出するようにしてもよい。避難弱者がエレベータに乗る場合には、通常よりもドアを開けておく時間が長くなることが想定される。したがって、上述したようにして避難時間を算出することで、より高精度で避難時間を算出することが可能である。
【0038】
以上述べた実施形態によれば、火災発生時に避難時間に関する的確な情報を提供することの可能なエレベータシステムを提供することができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
11…火災感知器 12…火災感知信号取得部
13…通信部 13a…送信部 13b…受信部
14…インターホン制御部 15…住戸インターホン
16…応答住戸数情報取得部 17…避難時間算出部
18…表示制御部 19…ホール表示器
20…制御部 21…エレベータ制御部 22…かご

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビル内で火災が発生したことを知らせるための火災発生通知信号を前記ビル内の各住戸にインターホンを用いて送信する送信部と、
前記火災発生通知信号に対して前記インターホンを用いて各住戸から送信される応答信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した応答信号に基づき、前記応答信号を送信した住戸の数に関する応答住戸数情報を前記ビルの階毎に取得する応答住戸数情報取得部と、
前記応答住戸数情報取得部で取得された応答住戸数情報に基づき、エレベータを用いて避難を行う場合の避難時間を算出する避難時間算出部と、
前記避難時間算出部で算出された避難時間に基づく避難情報を報知する報知部と、
を備えたことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記避難時間算出部は、前記応答住戸数情報から得られるエレベータの走行時間及びエレベータの戸開閉時間に基づいて前記避難時間を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記報知部は、前記避難時間算出部で算出された避難時間を前記避難情報として報知する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記報知部は、前記避難時間算出部で算出された避難時間に応じて、各階の住人がエレベータを利用すべきか否かの情報を前記避難情報として報知する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記ビル内に設置された火災感知器からの火災感知信号を取得する火災感知信号取得部をさらに備え、
前記送信部は、前記火災感知信号取得部で取得した火災感知信号に基づき、前記火災発生通知信号を前記ビル内の各住戸にインターホンを用いて送信する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−56696(P2012−56696A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201429(P2010−201429)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】