説明

エレベータ装置

【課題】 かご20に積降される台車12が戸8、26と衝突しないエレベータ装置を提供する。
【解決手段】 台車12に個別情報を発信する発信手段14を取り付け、乗場1に乗場受信手段15を設置して乗場1側から出入口部5、25を超えてかご20内に至る範囲で発信手段14からの個別情報を受信するようにし、かご20内にかご内受信手段36を設置してかご20内から出入口部5、25を超えて乗場1側に至る範囲で発信手段14からの個別情報を受信するようにして、乗場受信手段15とかご内受信手段36の双方が同一の個別情報を同時に受信しているときは戸閉を阻止するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院で又は車椅子等の台車を搬送するエレベータ装置に関し、特に戸閉めに係るものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、健常者に限らず、車椅子に乗った身体障害者にも利用される。病院ではベッド、ストレッチャ及び配膳用台車も積載される。このような台車を搬送する従来のエレベータ装置には、台車利用者の利便性を考慮して通常の乗場釦の他に戸開延長乗場釦が設けてある。戸開延長乗場釦が操作されてかごが応答した場合は、戸開放時間Toが通常よりも延長される。この延長された時間で台車を乗降させるようになっている。
図7は、従来のエレベータ装置の動作を示す流れ図である。かご呼び又は乗場呼びが登録されると、手順S51から手順S52へ進み、上記呼びにかごが応答する。手順S53で、その呼びが戸開延長呼びであった場合は、手順S54で戸開放時間Toが通常よりも長い時間T2に設定される。その呼びが通常呼びであった場合は、手順S55で戸開放時間Toが通常の戸開放時間T1に設定される。手順S56で、応答した乗場呼び又はかご呼びを打ち消す。手順S57で、かごが着床すると戸が開く。手順S58で、戸開放時間Toが経過するか、又は経過前であっても戸閉釦が操作されると、手順S59で、戸が閉じる。手順S51へ戻って次の呼びに応答する。台車が積載される場合のように乗降に時間を要する場合は、予め戸開放時間Toを延長するようにしたものである。
【0003】
また、重度の身体障害者であって乗場釦を操作できない者のために、非接触通信ICタグを所持させ、乗場に設けられた呼出感知手段が上記非接触通信ICタグを補足することにより、その階へかごを応答させる。更に、かご内に設けられた搭乗感知手段が、上記非接触通信ICタグを補足すると、身体障害者が搭乗したものとして戸を閉じるようにしたエレベータ管理システムも開示されている(例えば、特許文献1参照)。つまり、予め設定された戸開放時間Toに拠らずに、非接触通信ICタグによって身体障害者が現実に搭乗したか否かを検知するようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特開2003−48671号公報(段落番号15、16、17、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエレベータ装置は、上記のとおり構成されており、台車をかごに乗降させる場合に戸開放時間Toを延長させるようにしたものにあっては、複数の台車が乗降するときは、延長された戸開放時間Toよりも長時間を要する場合がある。このような場合は、乗降途中で戸開放時間Toが経過して戸閉動作が開始されるので、戸開釦を押す必要がある。しかし、台車の利用者は、かご操作盤から離れることが多いので、機敏に対応することができない。このため、戸が台車に衝突する、という問題があった。
【0006】
また、特許文献1に開示された非接触通信ICタグによって身体障害者の搭乗を検知するようにしたエレベータ管理システムにあっても、搭乗が検知された時点で、車椅子の一部が戸の敷居上にあることもある。また、複数台の車椅子が引き続いて搭乗する場合は、最初の1台によって搭乗が検知されて戸が閉じ始めるので、後続の車椅子は搭乗することができない。また、車椅子間の間隔を、搭乗完了と誤認して戸が閉じ始め、車椅子に戸が衝突する、という問題があった。
【0007】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、かごに積降される台車が出入口部で戸と衝突することのないエレベータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベータ装置は、通常乗場釦又は通常かご釦に加えて戸開延長乗場釦又は戸開延長かご釦をそれぞれ乗場及びかごに設けて通常戸開放時間よりも長い延長戸開放時間だけ戸を開放するようにして、延長戸開放時間の間で台車をかごに積み降しするようにしたエレベータ装置に係るものであって、上記台車に個別情報を発信する発信手段を取り付け、乗場に乗場受信手段を設置して乗場側から出入口部を超えてかご内に至る範囲で発信手段からの個別情報を受信するようにし、かご内にかご内受信手段を設置してかご内から出入口部を超えて乗場側に至る範囲で発信手段からの個別情報を受信するようにして、乗場受信手段とかご内受信手段の双方が同一の個別情報を同時に受信しているときは戸閉阻止手段を作動させて戸が閉じるのを阻止するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明は上記のとおり構成されているので、以下の効果を奏する。
即ち、乗場側から出入口部を超えてかご内に至る範囲で個別情報を受信する乗場受信手段と、かご内から出入口部を超えて乗場側に至る範囲で個別情報を受信するかご内受信手段の双方が同一の個別情報を同時に受信しているときに戸閉阻止手段を作動させて戸が閉じるのを阻止するようにしたので、出入口部で戸が台車と衝突することはない、という効果を奏する。
また、乗場受信手段とかご内受信手段とが、同時に個別情報を受信していても、その個別情報が異なる場合は、戸閉阻止手段が作動することはなく、戸閉が実行される。即ち、乗場受信手段とかご内受信手段の検出範囲が重畳する出入口部に台車が存在しないこととなる。従って、戸閉阻止手段によって戸閉の適否が的確に判定されて戸閉動作が実行される、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一符号を付し、説明の重複を省いた。
実施の形態1.
図1から図6は、この発明の実施の形態1を示す。
図1は、エレベータの乗場の正面図である。図において、乗場1には乗場床2から昇降路を仕切る壁3が立設されて乗場天井4に達している。この壁3には乗場出入口5が形成されており、乗場戸8によって開閉されるようになっている。乗場出入口5の上部には位置表示器7が取り付けられている。また、乗場出入口8の右側の壁3には、主として健常者による使用を目的として通常乗場釦9が設けられていて、かご20を呼び寄せるようになっている。呼び寄せられたかごは、健常者が乗降するのに要する時間として予め設定された通常戸開放時間T1だけ乗場戸8が開放される。
【0011】
通常乗場釦9の下側には、戸開延長乗場釦10が設けられている。この戸開延長乗場釦10は、台車である車椅子13を利用する身体障害者12による使用を主目的として設けられたもので、呼び寄せられたかご20は、身体障害者12が車椅子13で乗降するのに要する時間として予め設定された延長戸開放時間T2だけ乗場戸8を開放する。延長戸開放時間T2は、当然に通常戸開放時間T1よりも長い時間である。車椅子13の前部フレームにはICタグ14aが、また、背もたれ部にはICタグ14bが、それぞれ取り付けられている。以下、総称する場合は「ICタグ14」という。このICタグ14は、エレベータを利用する台車に全て添着されていて、各台車を識別できる固有の個別情報をマイクロ波で発信して外部機器へ伝達する発信手段として機能する。
また、乗場出入口5の直前の乗場天井4には、ICタグ14から発信された個別情報を受信する乗場アンテナ15aが取り付けられている。乗場アンテナ15aの左右には、それぞれ乗場アンテナ15b及び乗場アンテナ15cが取り付けられていて、乗場出入口5付近に接近した範囲で個別情報を受信するようになっている。以下、総称する場合は「乗場アンテナ15」とする。
【0012】
図2は、エレベータのかご20の内部からかご出入口25方向を見たかご内正面図である。図において、かご20には、かご出入口25を控えて左右にかご床21から袖壁23が立設されてかご天井22に達している。かご出入口25はかご戸26によって開閉されるようになっている。一方の袖壁23には、かご操作盤27が取り付けられている。このかご操作盤27にはかご20の行先階を指定する通常かご釦28と、戸閉釦29及び戸開釦30が取り付けられている。通常かご釦28は、主として健常者による使用を目的として設けられていて、行先階に到着すると、かご20は通常戸開放時間T1だけかご戸26を開放する。
【0013】
左右の側壁24には、身体障害者用かご操作盤32が設けられている。この身体障害者用かご操作盤32は、車椅子13を利用する身体障害者12による使用を主目的として設けられたもので、戸開延長かご釦33、戸閉釦34及び戸開釦35が取り付けられている。戸開延長かご釦33によって行先階が指定されて到着すると、かご20は延長戸開放時間T2だけかご戸26を開放する。
また、かご天井22には、かご出入口25から奥行方向へ向けてかご内アンテナ36aと、かご内アンテナ36bが取り付けられている。以下、総称する場合は「かご内アンテナ36」とする。
更に、かご天井22には、スピーカ38が取り付けられていて、案内放送を流すことによって車椅子13を利用したエレベータの乗客を円滑に搬送するようになっている。
【0014】
図3は、図1にIII−III線で示す断面を矢視したエレベータの昇降路の横断面図である。図は、身体障害者12が車椅子13で、乗場1からかご20に乗り込む場合を示す。乗場天井4に設置された乗場アンテナ15aは受信範囲15saで、乗場アンテナ15bは受信範囲15sbで、乗場アンテナ15cは受信範囲15scで、それぞれICタグ14からの個別情報を受信することができる。以下、総称する場合は「受信範囲15s」とする。
かご内アンテナ36aは受信範囲36saで、かご内アンテナ36bは受信範囲36sbで、それぞれICタグ14からの個別情報を受信することができる。以下、総称する場合は「受信範囲36s」とする。
【0015】
ここで、隣接する各受信範囲15s及び受信範囲36sは、重畳している。従って、車椅子13は、ICタグ14を介して乗場出入口5付近の乗場1から、かご20内に至る全域で、いずれかの乗場アンテナ15又はかご内アンテナ36によって捕捉されることになる。特に、乗場アンテナ15aの受信範囲15saは、乗場出入口5及びかご出入口25を超えてかご20内に至る範囲にまで及んでいる。また、かご内アンテナ36aの受信範囲36saは、かご出入口25及び乗場出入口5を超えて乗場1に至る範囲にまで及んでいる。
従って、受信範囲15saと受信範囲36saが重複する範囲は、乗場出入口部5及びかご出入口25の双方が含まれ、この出入口5、25を開閉する戸8、26の開閉路も含まれる。従って、上記重複範囲は戸閉阻止範囲37であって、この戸閉阻止範囲37で車椅子13が捕捉された場合は、戸閉が行われない。
【0016】
なお、車椅子13が戸閉阻止範囲37で捕捉されたか否かは、乗場アンテナ15aとかご内アンテナ36aの双方が同一の個別情報を同時に受信しているか否かによって検知される。従って、乗場アンテナ15aとかご内アンテナ36aの双方が個別情報を同時に受信していても、その個別情報が異なる内容の場合は、戸閉阻止範囲37にはないことになる。例えば、車椅子13−2は戸閉阻止範囲37にあることになる。
しかし、車椅子13−1と車椅子13−3が異なるとした場合、車椅子13−1は乗場アンテナ15aによって捕捉され、同時に車椅子13−3はかご内アンテナ36aによって捕捉されているが、個別情報が異なるため、いずれも戸閉阻止範囲37ではないことになる。
【0017】
図4は、エレベータの電気回路のブロック図である。各階の乗場釦9の操作信号はエレベータ制御盤40の通常乗場呼び登録回路43に登録される。同様に、戸開延長乗場釦10の操作信号は戸開延長乗場呼び登録回路44に登録される。これらに登録された信号は、昇降制御回路41へ送信されて、かご20が応答すると登録が解消される。
かご操作盤27の操作信号はエレベータ制御盤40の通常かご呼び登録回路45に登録される。同様に、主として車椅子利用者によって使用される身体障害者用かご操作盤32の戸開延長かご釦33の操作信号は戸開延長かご呼び登録回路46に登録される。これらに登録された信号は、昇降制御回路41へ送信されて、かご20が応答すると登録が解消される。
【0018】
各階の乗場アンテナ15は切替え回路47に接続されていて、かご20が応答した階の乗場アンテナ15がICタグリーダ48に接続される。ICタグリーダ48は乗場アンテナ15によって受信された個別情報を読み取ってタグ位置検出器49へ出力する。
かご内アンテナ36は、かご内アンテナ接続回路50に接続されていて、かご20が呼びに応答する毎にかご内アンテナ36がICタグリーダ51に接続される。ICタグリーダ51はかご内アンテナ36によって受信された個別情報を読み取ってタグ位置検出器52へ出力する。
【0019】
タグ位置検出器49及び52は、タグ位置と個別情報を関連付けて戸閉制御回路42へ出力する。戸閉制御回路42は、戸開放時間Toを設定すると共に、戸閉阻止範囲37内でICタグ14が検出されたか否か、即ち、車椅子13が戸8、26の開閉路上に居るか否かを判定して戸閉電動機39を付勢して戸閉動作を行う。戸8、26が閉じ切るとドアスイッチ18が閉成する。
また、戸閉阻止範囲37内でICタグ14が検出された場合で、所定時間を経過したときは、放送手段53を作動させて、かご20のスピーカ38に案内放送をする。更に、長時間経過した場合は、その時に戸閉阻止範囲37内で検出された個別情報を記録手段54で記録する。
【0020】
図5は、エレベータの電気回路の一部を詳細に示すブロック図である。昇降制御回路41において、かご20が応答すべき呼びが検出されると、その応答階の応答リレー接点41a(k)が閉成されて乗場アンテナ接続回路47(k)が付勢される。この付勢によってスイッチング素子47a、47b、47cが導通し、応答階の乗場アンテナ15a、15b、15cが、それぞれICタグリーダ48a、48b、48cに接続されて個別情報が読み取られる。タグ位置検出器49は、ICタグリーダ48a、48b、48cと個別情報を関連付けて戸閉制御回路42へ結果を出力する。
【0021】
応答リレー接点41a(k)の閉成によって、ダイオード41b(k)を介してかご内アンテナ接続回路50も付勢される。この付勢によってスイッチング素子50a、50bが導通し、かご内アンテナ36a、36bが、それぞれICタグリーダ51a、51bに接続されて個別情報が読み取られる。タグ位置検出器52は、ICタグリーダ51a、51bと個別情報を関連付けて戸閉制御回路42へ結果を出力する。
【0022】
戸閉制御回路42では、各呼び釦9、10、28、33の信号、及びタグ位置検出器52の検出結果に基いて戸開放時間設定回路を作動させて戸開放時間Toを通常戸開放時間T1又は延長戸開放時間T2に設定する。また、戸閉阻止範囲37でICタグ14が捕捉された場合は戸閉阻止回路を作動させて戸8、26を開放状態にする。
【0023】
図6は、戸閉制御回路42の動作を示す流れ図である。手順S11で、かご20が階床2の手前所定距離に達すると、手順S11、手順S19及び手順S24で、応答すべき呼びが登録されているか否かチェックされる。
手順S11で、戸開延長乗場呼び登録回路44に呼びが登録されていることが検出されると、手順S12でかご20の応答が決定されて応答リレー接点41a(k)が閉成される。この閉成によって手順S13へ移り、乗場アンテナ15及びかご内アンテナ36がICタグリーダ48、51に接続される。手順S14で、ICタグリーダ48の結果から乗場1にICタグ14が存在するか否か調べる。存在しない場合は、車椅子13は存在しないものとして手順S19へ移る。
【0024】
乗場1にICタグ14が存在する場合は、手順S15へ移り、戸開延長かご呼び登録回路45に呼びが登録されているか調べる。登録されている場合は、手順S16へ移り、ICタグリーダ51の結果からかご20内にICタグ14が存在するか否か調べる。存在する場合は、手順S17で、車椅子13がかご20から乗場1へ降りるのに要する時間と乗り込むのに要する時間の合計時間に相当する最長の時間T4に戸開放時間Toが設定される。手順S16でICタグ14が存在ないとされた場合、又は手順S15で戸開延長かご呼びが登録されていない場合は手順S18へ移り、車椅子13がかご20へ乗り込むのに要する時間に相当する時間T2に戸開放時間Toが設定される。
【0025】
手順S11で、戸開延長乗場呼び登録回路44に呼びが登録されていなかった場合、登録されていたが、手順S14で乗場1にICタグ14が存在しないとされた場合は、手順S19へ移る。
手順S19で、戸開延長かご呼び登録回路46に呼びが登録されていることが検出されると、手順S20でかご20の応答が決定されて応答リレー接点41a(k)が閉成される。この閉成によって、手順S21で乗場アンテナ15及びかご内アンテナ36がICタグリーダ48、51に接続される。手順S22で、ICタグリーダ51の結果からかご20内にICタグ14が存在するか否か調べる。存在しない場合は、車椅子13は存在しないものとして手順S27へ移る。
かご20内にICタグ14が存在する場合は手順S23へ移り、車椅子13がかご20から降りるのに要する時間に相当する時間T3に戸開放時間Toが設定される。
【0026】
手順S19で、戸開延長かご呼び登録回路46に呼びが登録されていないことが検出されると、手順S24に移り、通常乗場呼び登録回路43及び通常かご呼び登録回路45に応答すべき呼びが登録されているか調べる。登録されていない場合は手順S11へ戻る。即ち、直前に接近した乗場1には応答すべき呼びが登録されていないことになる。
上記通常乗場呼び登録回路43及び通常かご呼び登録回路45に応答すべき呼びが登録されている場合は、手順S25でかご20の応答が決定されて応答リレー接点41a(k)が閉成される。この閉成によって手順S26で乗場アンテナ15及びかご内アンテナ36がICタグリーダ48、51に接続される。手順S11及び手順S19によって戸開延長乗場呼び及び戸開延長かご呼びは、いずれも登録されていなかったため、手順S22のICタグ14無しと判定された場合を併せて、手順S27へ移り、戸開放時間Toは、健常者が乗降するのに要する時間に相当する時間T1に設定される。
【0027】
戸開放時間Toが、それぞれの状況に応じて手順S17、手順S18、手順S23及び手順S27で設定されると、先ず手順S28で、かご20が応答した乗場1の乗場呼び及びかご呼びが打ち消される。手順S29で、かご20が着床すると、戸8、26が開く。手順S30と手順S31で、戸8、26が開放されてからの戸開時間Tdが戸開放時間Toになるか、又は戸閉釦29、34が操作されると、手順S32に移る。
【0028】
手順S32で、戸閉阻止範囲37にICタグ14、即ち車椅子13が存在するか否か、タグ位置検出器49、52によって調べる。
即ち、タグ位置検出器49によって検出されたICタグリーダ48aが読み取った個別情報と、タグ位置検出器52によって検出されたICタグリーダ51aが読み取った個別情報の双方が同一であった場合は、戸閉阻止範囲37に車椅子13が存在することになり、手順S34へ移る。
【0029】
ICタグリーダ48a及びICタグリーダ51aが個別情報を読み取っていない場合、又は読み取っているが同一でない場合は戸閉阻止範囲37に車椅子13が存在しないことになり、手順S32から手順S33へ移り、戸8、26を閉じるように指令して手順S11へ戻る。閉じ終るとドアスイッチ18が閉成し、その信号が昇降制御回路41へ入力されてかご20は昇降する。
【0030】
戸閉阻止範囲37に車椅子13が存在して手順S32から手順S34へ移ると、戸閉阻止範囲37を除くかご20内の領域に存在する車椅子13の台数が計数される。即ち、図5において、ICタグリーダ51a、51bが読み取った個別情報の内、互いに異なる個別情報の数を計数する。更に、この計数値から、戸閉阻止範囲37に存在する車椅子13の台数「1」を減算してかご内台数とする。かご内台数が規定値になっていない場合は、手順S35から手順S36へ移り、「かご20内へ乗り進んで戸閉阻止範囲37から脱出するように」案内放送をする。かご内台数が既に規定値になっていて戸閉阻止範囲37に存在する車椅子13が乗り込めない場合は、手順S37へ移り、乗込み禁止の案内放送をして手順38へ移る。
【0031】
手順38では、戸8、26が開放されてからの戸開時間Tdが、最も長い戸開放時間T4に達したか否か調べる。達していない場合は、手順S32へ戻る。即ち、手順S36又はS37の案内放送が繰り返えされることになる。手順38で戸開放時間T4に達している場合は、手順S39に移り、戸閉阻止範囲37から車椅子13を排除するように退去命令の警告放送をすると共に、手順S40で戸開時間Tdが戸開放時間T4を超えた旨の記録をして手順S11へ戻る。以下、上記手順S11から上記処理が繰り返される。
【0032】
上記実施の形態1によれば、受信範囲15saと受信範囲36saが重複する範囲を戸閉阻止範囲37とした。この戸閉阻止範囲37には出入口5、25を開閉する戸8、26の開閉路が含まれる。従って、戸閉阻止範囲37に車椅子13が存在する場合は、戸8、26が閉じないようにしたので、戸8、26が車椅子13と衝突することはない。
【0033】
また、ICタグ14の個別情報を読み取るようにしたので、車椅子13が戸閉阻止範囲37で捕捉されたか否かは、乗場アンテナ15aとかご内アンテナ36aの双方が同一の個別情報を同時に受信しているか否かによって容易に検知することができる。
更に、かご内アンテナ36によって受信された車椅子13の個別情報から計数されたかご20内の台数が、予め定められた規定値に達しているのに、車椅子13が乗り込もうとして戸閉阻止範囲37に居続けて戸閉阻止手段が作動しているときは、乗込み禁止を内容とする案内放送をするようにしたので、無為な時間の経過を排除することができ、円滑な運転が可能になる。
【0034】
更にまた、戸閉阻止範囲37に車椅子13が存在して戸開時間Tdが最も長い戸開放時間T4を超えたときは、戸閉阻止範囲37から車椅子13を速やかに退去させるように警告放送をするようにしたので、同様に円滑な運転が可能になる。
更にまた、戸閉阻止範囲37に車椅子13が存在して戸開時間Tdが最も長い戸開放時間T4を超えたときは、その旨を記録するようにしたので、この記録内容に基いて戸開放時間Toを実状に合った時間に再設定することができる。
【0035】
なお、上記実施の形態1では、エレベータによって搬送される台車を車椅子として説明したが、これに限られるものではなく、ベッド、ストレッチャ又は配膳用台車であっても同様に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の乗場の正面図。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置のかごの内部からかご出入口方向を見たかご内正面図。
【図3】図1にIII−III線で示す断面を矢視したエレベータ装置の昇降路の横断面図。
【図4】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の電気回路のブロック図。
【図5】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の電気回路の一部を詳細に示すブロック図。
【図6】この発明の実施の形態1における戸閉動作を示す流れ図。
【図7】従来のエレベータ装置の戸閉動作を示す流れ図。
【符号の説明】
【0037】
1 乗場、 2 乗場床、 3 壁、 4 乗場天井、 5 乗場出入口、 7 位置表示器、 8 乗場戸、 9 乗場釦、 10 戸開延長乗場釦、 12 身体障害者、 13 車椅子、 14 ICタグ、 15 乗場アンテナ、 15s 受信範囲、 18 ドアスイッチ、 20 かご、 21 かご床、 22 かご天井、 23 袖壁、 24 側壁、 25 かご出入口、 26 かご戸、 27 かご操作盤、 28 通常かご釦、 29 戸閉釦、 30 戸開釦、 31 かご位置表示器、 32 身体障害者用かご操作盤、 33 戸開延長かご釦、 34 戸閉釦、 35 戸開釦、 36 かご内アンテナ、 36s 受信範囲、 37 戸閉阻止範囲、 38 スピーカ、 39 戸閉電動機、 40 エレベータ装置、 41 昇降制御回路、 42 戸閉制御回路、 43 通常乗場呼び登録回路、 44 戸開延長乗場呼び登録回路、 45 通常かご呼び登録回路、 46 戸開延長かご呼び登録回路、 47 切替え回路、 48 ICタグリーダ、 49 タグ位置検出器、 50 かご内アンテナ接続回路、 51 ICタグリーダ、 52 タグ位置検出器、 53 放送手段、 54 記録手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場に設けられてかごを呼び寄せる通常乗場釦と、上記乗場に設けられて台車を上記かごに乗せるときに操作されて上記かごを呼び寄せる戸開延長乗場釦と、上記かご内に設けられて上記かごの行先階を指定する通常かご釦と、上記かご内に設けられて積載された上記台車の行先階を指定する戸開延長かご釦とが設けられ、上記通常乗場釦又は上記通常かご釦が操作されると、通常戸開放時間だけ戸を開放させ、上記戸開延長乗場釦又は上記戸開延長かご釦が操作されると、上記通常戸開放時間よりも長い延長戸開放時間だけ戸を開放させるようにしたエレベータ装置において、上記台車にそれぞれ取り付けられて個別情報を発信する発信手段と、上記乗場に設置されて上記乗場から出入口部を超えて上記かご内に至る範囲で上記発信手段の信号を受信する乗場受信手段と、上記かご内に設置されて上記かご内から上記出入口部を超えて上記乗場側に至る範囲で上記発信手段の信号を受信するかご内受信手段と、上記乗場受信手段と上記かご内受信手段が同一の個別情報を同時に受信しているときに作動して上記戸が閉じるのを阻止する戸閉阻止手段とを備えたエレベータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータ装置において、かご内受信手段によって受信された台車の個別情報から計数されたかご内の台数が、予め定められた規定値に達した状態で、出入口部に上記台車が存在して戸閉阻止手段が作動しているときは、乗込み禁止を内容とする案内放送をする放送手段を備えたエレベータ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベータ装置において、出入口部に台車が存在して戸閉阻止手段が作動し、戸開時間が予め定められた所定時間を超えた時は、上記出入口部の上記台車の退去を命ずる内容の警告放送をする放送手段を備えたエレベータ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエレベータ装置において、出入口部に台車が存在して戸閉阻止手段が作動し、戸開時間が予め定められた所定時間を超えた時は、その旨を記録する記録手段を備えたエレベータ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−27839(P2006−27839A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210392(P2004−210392)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】