説明

エンジンのシール構造

【課題】製作コストを低く抑えながら、エンジン外観を損ない難いエンジンのシール構造を提供する。
【解決手段】シリンダヘッド1がガスケット7aを挟んでシリンダブロック2に接合された第1接合部7と、チェーンケース3がガスケット8aを挟んでシリンダブロックとシリンダヘッドとに接合された第2接合部8と、第1接合部と第2接合部とが出合う出合部と、出合部のうちの横外側に臨む外側部位を、当該外側部位から間隔を隔てて遮蔽する遮蔽部10とを備え、遮蔽部が、チェーンケース、シリンダブロック又はシリンダヘッドの少なくとも何れか一つに一体形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドがガスケットを挟んでシリンダブロックに接合された第1接合部と、チェーンケースがガスケットを挟んで前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとに接合された第2接合部と、前記第1接合部と前記第2接合部とが出合う出合部とを備えたエンジンのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記エンジンのシール構造は、エンジンの運転時においてシリンダヘッドの温度がシリンダブロックに比べて高くなり、シリンダヘッドがシリンダブロックに比べて大きく熱膨張し易い。
このため、シリンダヘッドがシリンダブロックに対して変位し、チェーンケースとシリンダヘッドとの接合面の間隔が変化する。
その結果、第1接合部と第2接合部との出合部(三面合わせ部)のうちの横外側に臨む外側部位からオイルが滲み出して、エンジン外観を損なう欠点がある。
この欠点を解決するために、従来、シリンダヘッドがシリンダブロックに対して変位しても、外側部位からのオイルの滲み出しを防止できるように、シリンダブロック及びシリンダヘッドの側面に回り込む回り込み部をチェーンケースに形成し、回り込み部とシリンダブロック及びシリンダヘッドの側面との間に液状ガスケットを充填してある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−146933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、液状ガスケットが所定厚さで充填されるように、回り込み部とシリンダブロック及びシリンダヘッドの側面との間隔を精度良く設定する必要がある。また、回り込み部とシリンダブロック及びシリンダヘッドの側面との間に液状ガスケットを充填するので、液状ガスケットを充填し難いと共に、その充填量を精度良く管理し難い問題がある。
その結果、チェーンケースの組み付けに手間が掛かり、シール構造の製作コストが高くなる欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、製作コストを低く抑えながら、エンジン外観を損ない難いエンジンのシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるエンジンのシール構造の第1特徴構成は、シリンダヘッドがガスケットを挟んでシリンダブロックに接合された第1接合部と、チェーンケースがガスケットを挟んで前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとに接合された第2接合部と、前記第1接合部と前記第2接合部とが出合う出合部と、前記出合部のうちの横外側に臨む外側部位を、当該外側部位から間隔を隔てて遮蔽する遮蔽部とを備え、前記遮蔽部が、前記チェーンケース、前記シリンダブロック又は前記シリンダヘッドの少なくとも何れか一つに一体形成されている点にある。
【0006】
本構成のエンジンのシール構造であれば、出合部のうちの横外側に臨む外側部位を遮蔽部で遮蔽するので、外側部位からオイルが滲み出しても、その滲み出たオイルが外部から見え難い。
したがって、チェーンケースの組み付けに手間を掛けることなく、つまり、製作コストを低く抑えながら、出合部の外側部位からオイルが滲み出しても、エンジン外観を損ない難い。
また、遮蔽部は、外側部位を当該外側部位から間隔を隔てて遮蔽するので、外側部位から滲み出たオイルが遮蔽部に接触し難い。よって、遮蔽部を外側部位に接触させてある場合のように、外側部位から滲み出たオイルが、表面張力で遮蔽部と外側部位との双方に亘って保持されて移動し、その結果、遮蔽部の外側に滲み出るようなおそれも少ない。
さらに、遮蔽部が、チェーンケース、シリンダブロック又はシリンダヘッドの少なくとも何れか一つに一体形成されているので、遮蔽部を別途組み付ける手間を省くことができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記シリンダヘッドが前記シリンダブロックの上部に接合され、前記遮蔽部が、前記シリンダブロック及び前記シリンダブロックのうちの少なくとも何れか一つにおける前記第1接合部よりも低い位置から上方に向けて延設されて、前記出合部から滲み出したオイルの受け部を構成している点にある。
【0008】
本構成であれば、出合部の外側部位から滲み出たオイルがシリンダブロックの側に垂れても、その垂れたオイルを受け部で受け止めて、遮蔽部で遮蔽できない部位に流れ出すことを防止することができるので、エンジン外観を一層損ない難い。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記遮蔽部が、前記チェーンケースから延設された第1遮蔽部と、前記シリンダブロックから延設された第2遮蔽部とを備え、前記第1遮蔽部と前記第2遮蔽部とが互いに当接している点にある。
【0010】
本構成であれば、出合部の外側部位を、チェーンケースの側とシリンダブロックの側とに亘る遮蔽部で遮蔽することができるので、滲み出たオイルが外部から一層見え難い。
また、チェーンケースの側とシリンダブロックの側とに亘る遮蔽部を、チェーンケースから延設された第1遮蔽部と、シリンダブロックから延設された第2遮蔽部とを互いに当接させて構成してある。
したがって、遮蔽部において、チェーンケース又はシリンダブロックのいずれか一方の側から他方の側に重なるように突出する部分を少なくして、チェーンケース又はシリンダブロックの加工や取扱いの手間を軽減することができる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記外側部位に接触するオイル吸収体が、当該外側部位と前記遮蔽部との間に装着されている点にある。
【0012】
本構成であれば、出合部の外側部位から滲み出たオイルをオイル吸収体に吸収させることができるので、滲み出たオイルが垂れ難い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】エンジンの要部の斜視図である。
【図2】第1接合部と第2接合部とが出合う出合部を示す要部の側面図である。
【図3】(a)は要部の分解斜視図であり、(b)は要部の組み付け状態を示す斜視図であり、(c)は要部の縦断面図である。
【図4】第2実施形態を示す図面であって、(a)は要部の分解斜視図であり、(b)は要部の組み付け状態を示す斜視図である。
【図5】第3実施形態を示す図面であって、(a)は要部の分解斜視図であり、(b)は要部の組み付け状態を示す斜視図であり、(c)は要部の縦断面図である。
【図6】第4実施形態を示す図面であって、(a)は要部の分解斜視図であり、(b)は要部の組み付け状態を示す斜視図であり、(c)は要部の側面図であり、(d)は要部の水平断面図である。
【図7】第5実施形態を示す図面であって、(a)は要部の分解斜視図であり、(b)は要部の組み付け状態を示す斜視図である。
【図8】第6実施形態を示す図面であって、(a)は要部の分解斜視図であり、(b)は要部の組み付け状態を示す斜視図であり、(c)は要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明によるシール構造が設けられた自動車用のエンジンEの要部の斜視図である。図2はエンジンEの要部の側面図である。
【0015】
図1に示すように、エンジンEは、シリンダヘッド1と、シリンダブロック2と、チェーンケース3とを備えている。シリンダヘッド1の上方にはシリンダヘッドカバー4が取り付けられている。シリンダブロック2及びチェーンケース3の下方にはオイルパン5が取り付けられている。
【0016】
チェーンケース3は、シリンダヘッド1及びシリンダブロック2に対する連結用の取付ボルト座6aを形成してある所定厚さの接続フランジ6を備えている。
シリンダヘッド1及びシリンダブロック2のチェーンケース3に対する接合面1b,2bには、接続フランジ6の取付ボルト座6aに対向する図示しないボルト穴を形成してある。
【0017】
シリンダヘッド1及びチェーンケース3は、アルミニウム合金のダイカストによる鋳造品である。シリンダブロック2は、鋳鉄製部材を鋳ぐるんであるアルミニウム合金のダイカストによる鋳造品である。
【0018】
本発明によるシール構造は、図2にも示すように、シリンダヘッド1がガスケット7aを挟んでシリンダブロック2の上部に接合された第1接合部7と、チェーンケース3がガスケット8aを挟んでシリンダブロック2とシリンダヘッド1とに接合された第2接合部8と、第1接合部7と第2接合部8とが出合う出合部9と、出合部9のうちの横外側に臨む外側部位9aを当該外側部位9aから間隔を隔てて遮蔽する遮蔽部10とを備えている。
【0019】
第1接合部7は、シリンダヘッド1の扁平な下向き接合面1aとシリンダブロック2の扁平な上向き接合面2aとの間に、固体ガスケット7aを挟んで、シリンダヘッド1とシリンダブロック2とを図示しないボルトで連結して接合してある。
【0020】
第2接合部8は、チェーンケース3が備えている接続フランジ6の扁平な接合面3aと、シリンダヘッド1の扁平な横向き接合面1b及びシリンダブロック2の扁平な横向き接合面2bとの間に、FIPG(Formed In Place Gasket)などの液状ガスケット8aを挟んで、シリンダヘッド1及びシリンダブロック2とチェーンケース3とを接続フランジ6の取付ボルト座6aに挿通した図示しないボルトで連結して接合してある。
【0021】
遮蔽部10は、図3にも示すように、チェーンケース3、シリンダブロック2又はシリンダヘッド1の少なくとも何れか一つに一体形成されている。具体的には、チェーンケース3から一体に延設された第1遮蔽部10aと、シリンダブロック2から一体に延設された第2遮蔽部10bとを備え、第1遮蔽部10aと第2遮蔽部10bとがエンジン前後方向から互いに当接している。
【0022】
第1遮蔽部10aは、図3に示すように、チェーンケース3をシリンダブロック2とシリンダヘッド1とに組み付けた状態において第1接合部7よりも低い位置から横外側の斜め上方に向けて接続フランジ6から延設された第1下延設部11aと、第1下延設部11aの上端から第1接合部7よりも高い位置に亘って接続フランジ6と間隔を隔てて略鉛直に延設された第1上延設部12aとを備えている。
【0023】
第2遮蔽部10bは、図3に示すように、第1接合部7よりも低い位置から横外側の斜め上方に向けてシリンダブロック2から延設された第2下延設部11bと、第2下延設部11bの上端から第1接合部7よりも高い位置に亘ってシリンダブロック2と間隔を隔てて略鉛直に延設された第2上延設部12bとを備えている。
【0024】
第1下延設部11aが、出合部9から滲み出したエンジンオイルをその上面側で受ける第1受け部13aを構成し、第2下延設部11bが、出合部9から滲み出したエンジンオイルをその上面側で受ける第2受け部13bを構成している。
【0025】
第2遮蔽部10bの側に対向する第1遮蔽部10aの第1接合面14aは、エンジン幅方向に沿う側面視で、接続フランジ6の接合面3aと面一の扁平面に形成されている。
【0026】
第1遮蔽部10aの側に対向する第2遮蔽部10bの第2接合面14bは、シリンダヘッド1の横向き接合面1b及びシリンダブロック2の横向き接合面2bよりも液状ガスケット8aの厚さ分だけ第1遮蔽部10aの側に突出している扁平面に形成されている。
【0027】
第1遮蔽部10aと第2遮蔽部10bは、図3(b)に示すように、互いに対向する第1接合面14aと第2接合面14bとが互いに当接する状態に組み付けられたときに、それらの内面どうし、及び、外面どうしが面一になる形状に形成されている。
したがって、第1受け部13aと第2受け部13bとで、出合部9から滲み出したエンジンオイルを受け止める面一のオイル受け面が内側に形成されたオイル受け部13が構成されている。
【0028】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明によるシール構造の別実施形態を示す。
本実施形態では、第1遮蔽部10aが、チェーンケース3をシリンダブロック2とシリンダヘッド1とに組み付けた状態において第1接合部7よりも低い位置と第1接合部7よりも高い位置とに亘って、接続フランジ6から横外側に向けて板状に延設されている。
第1遮蔽部10aの横外側面の形状は、第2遮蔽部10bの横外側面の形状と同じ形状に形成してある。
【0029】
本実施形態によれば、第2遮蔽部10bと外側部位9aとの隙間を、第1遮蔽部10aでチェーンケース3の側から塞ぐことができるので、外側部位9aから滲み出たエンジンオイルがチェーンケース3の側からも見え難い。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0030】
〔第3実施形態〕
図5は、本発明によるシール構造の別実施形態を示す。
本実施形態では、図5(c)に示すように、外側部位9aと遮蔽部10との間に、外側部位9aに接触して滲み出たエンジンオイルを吸収するオイル吸収体15が嵌合状態で装着されている。
【0031】
オイル吸収体15は、高分子吸収体や紙などで矩形板状に形成され、ポリアミドなどの樹脂材料で弾性変形可能に形成されたホルダ16に保持されている。
【0032】
ホルダ16は、水平方向に沿わせる矩形の水平板部16aと鉛直方向に沿わせる矩形の鉛直板部16bとを備えた側面視でL字状に、かつ、遮蔽部10のエンジン前後方向に沿う幅と略同じ幅で形成されている。
オイル吸収体15は水平板部16aの全幅に亘ってその先端側下面に取り付けられており、鉛直板部16bの下端側には係止爪16cがオイル吸収体15の側に向けて形成されている。
【0033】
図5(a)に示すように、第1遮蔽部10aの第1下延設部11aにおける接続フランジ6からの立ち上がり部と、第2遮蔽部10bの第2下延設部11bにおけるシリンダブロック2からの立ち上がり部との互いに対向する部分の夫々に、切欠17が形成されている。
【0034】
そして、図5(b),(c)に示すように、鉛直板部16bとオイル吸収体15との間に、第1遮蔽部10aの第1上延設部12aと第2遮蔽部10bの第2上延設部12bとを水平板部16aの下面に接するように入り込ませて係止爪16cを切欠17に弾性的に係止させることで、ホルダ16がオイル吸収体15と共に遮蔽部10に着脱自在に取付けられている。
【0035】
したがって、オイル吸収体15を装着することにより、外側部位9aは完全に遮蔽されると共に、外側部位9aに滲み出たエンジンオイルをオイル吸収体15に吸収させることができる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0036】
〔第4実施形態〕
図6は、本発明によるシール構造の別実施形態を示す。
本実施形態では、遮蔽部10は、チェーンケース3から一体に延設された第1遮蔽部10aと、シリンダブロック2から一体に延設された第2遮蔽部10bと、シリンダヘッド1から一体に延設された第3遮蔽部10cとを備えている。
第1遮蔽部10aと第2遮蔽部10bと第3遮蔽部10cが互いに当接して遮蔽部10を構成している。
【0037】
第1遮蔽部10aは、チェーンケース3をシリンダブロック2とシリンダヘッド1とに組み付けた状態において第1接合部7よりも低い位置と高い位置とに亘って略一定の延設幅で、接続フランジ6から横外側に向けて延設されている。
【0038】
第2遮蔽部10b及び第3遮蔽部10cの側に対向する第1遮蔽部10aの接合面14aは、エンジン幅方向に沿う側面視で、接続フランジ6の接合面3aと面一の扁平面に形成されている。
【0039】
第2遮蔽部10bは、第1接合部7よりも低い位置と、シリンダブロック2の上向き接合面2aよりも固体ガスケット7aの厚さ分だけ高い位置とに亘って略一定の延設幅で、シリンダブロック2から横外側に延設されている。
【0040】
第1遮蔽部10aの側に対向する第2遮蔽部10bの接合面14bは、シリンダブロック2の横向き接合面2bよりも液状ガスケット8aの厚さ分だけ第1遮蔽部10aの側に突出する扁平面で形成されている。
【0041】
第3遮蔽部10cの側に対向する第2遮蔽部10bの接合面18aは、シリンダブロック2の上向き接合面2aよりも固体ガスケット7aの厚さ分だけ第3遮蔽部10cの側に突出する扁平面で形成されている。
【0042】
第3遮蔽部10cは、シリンダヘッド1の下向き接合面1aの高さ位置とそれよりも高い位置とに亘って略一定の延設幅で、シリンダヘッド1から横外側に延設されている。
【0043】
第1遮蔽部10aの側に対向する第3遮蔽部10cの接合面14cは、シリンダヘッド1の横向き接合面1aよりも液状ガスケット8aの厚さ分だけ第1遮蔽部10aの側に突出する扁平面で形成されている。
第2遮蔽部10bの側に対向する第3遮蔽部10cの接合面18bは、シリンダヘッド1の下向き接合面1aと面一の扁平面で形成されている。
【0044】
図6(d)に示すように、第2遮蔽部10bの接合面14bとシリンダブロック2の横向き接合面2bとの段部19の横断面形状が、第2遮蔽部10bの側に入り込む円弧状に形成されている。
図6(d)に示すように、第3遮蔽部10cの接合面14cとシリンダヘッド1の横向き接合面1bとの段部20の横断面形状が、第3遮蔽部10cの側に入り込む円弧状に形成されている。
【0045】
本実施形態によれば、第1遮蔽部10aの接合面14aが、第2遮蔽部10bの接合面14b及び第3遮蔽部10cの接合面14cに当接するようにチェーンケース3をシリンダブロック2とシリンダヘッド1とに組み付けた状態において、円弧状に形成された段部19,20によって、外側部位9aを、当該外側部位9aから間隔を隔てて遮蔽することができる。
【0046】
本実施形態において、第1遮蔽部10aの接合面14aのうちの段部19,20に対向する部位に沿って、溝を形成してあってもよい。
また、第2遮蔽部10bの接合面18aとシリンダブロック2の上向き接合面2aとの段部の横断面形状を、第2遮蔽部10bの側に入り込む円弧状に形成して、第1接合部7の外側部位9aの側を間隔を隔てて遮蔽してあってもよい。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0047】
〔第5実施形態〕
図7は、本発明によるシール構造の別実施形態を示す。
本実施形態では、側面視で矩形板状の遮蔽部10をチェーンケース3からのみ延設してある。
この遮蔽部10は、シリンダヘッド1及びシリンダブロック2の側面に対して間隔を隔てて対向するように延設されて、外側部位9aを、当該外側部位9aから間隔を隔てて遮蔽している。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0048】
〔第6実施形態〕
図8は、エンジンのシール構造の別実施形態を示す。
本実施形態では、外側部位9aを遮蔽する遮蔽部10が、チェーンケース3及びシリンダブロック2及びシリンダヘッド1とは別の遮蔽部材30を、チェーンケース3、シリンダブロック2又はシリンダヘッド1に取り付けて構成されている。
【0049】
遮蔽部材30は、外側部位9aに接触するように装着されたオイル吸収体で構成してある。
オイル吸収体(遮蔽部材)30は、高分子吸収体や紙などで矩形板状に形成され、ポリアミドなどの樹脂材料で弾性変形可能に形成されたホルダ31に保持されている。
【0050】
ホルダ31は、オイル吸収体30を取り付けてある四角柱状の取付け部材31aと、鉛直方向に沿わせる矩形の鉛直板部31bとを備えたL字状に形成されている。
オイル吸収体30は取付け部材31aの全幅に亘ってその先端面に取り付けられており、鉛直板部31bの下端側には係止爪31cが形成されている。
【0051】
ホルダ31を係止固定するための固定部32が、チェーンケース3、シリンダブロック2又はシリンダヘッド1の少なくとも何れか一つに一体形成されている。具体的には、チェーンケース3から一体に延設された第1固定部32aと、シリンダブロック2から一体に延設された第2固定部32bとを備えている。
【0052】
第1固定部32aは、チェーンケース3をシリンダブロック2とシリンダヘッド1とに組み付けた状態において第1接合部7よりも低い位置から横外側の斜め上方に向けて延設された第1下延設部33aと、第1下延設部33aの上端からシリンダブロック2の上向き接合面2aよりも高くならない位置に亘ってチェーンケース3と間隔を隔てて略鉛直に延設された第1上延設部34aとを備えている。
【0053】
第2固定部32bは、第1接合部7よりも低い位置から横外側の斜め上方に向けて延設された第2下延設部33bと、第2下延設部33bの上端からシリンダブロック2の上向き接合面2aよりも高くならない位置に亘ってシリンダブロック2と間隔を隔てて略鉛直に延設された第2上延設部34bとを備えている。
【0054】
第1固定部32aは、エンジン幅方向に沿う側面視で、チェーンケース3の接合フランジ6の接合面3aよりも第2固定部32bの側に突出しないように形成されている。
第2固定部32bは、エンジン幅方向に沿う側面視で、シリンダブロック2の横向き接合面2bよりも第1固定部32aの側に突出しないように形成されている。
【0055】
したがって、接合フランジ6の接合面3aの切削加工や、シリンダブロック2の上向き接合面2a及び横向き接合面2bの切削加工などにおいて、第1固定部32aや第2固定部32bが邪魔にならず、能率良く加工することができる。
【0056】
図8(a)に示すように、第1下延設部33aにおける接続フランジ6からの立ち上がり部と、第2下延設部33bにおけるシリンダブロック2からの立ち上がり部との互いに対向する部分の夫々に、切欠35が形成されている。
【0057】
そして、図8(b),(c)に示すように、鉛直板部31bとオイル吸収体30との間に、第1固定部32aの第1上延設部34aと第2固定部32bの第2上延設部34bとを取付け部材31aの下面に接するように入り込ませて係止爪31cを切欠35に弾性的に係止させる操作で、ホルダ31がオイル吸収体(遮蔽部材)30と共に固定部32に着脱自在に取付けられている。
【0058】
したがって、オイル吸収体30で外側部位9aを遮蔽することができると共に、外側部位9aに滲み出たエンジンオイルをオイル吸収体30に吸収させることができる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0059】
〔その他の実施形態〕
本発明によるエンジンのシール構造は、遮蔽部10がシリンダブロック2にのみ一体形成されていても、シリンダヘッド1にのみ一体形成されていても、シリンダブロック2とシリンダヘッド1とに一体形成されていても、チェーンケース3とシリンダヘッド1とに一体形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 シリンダヘッド
2 シリンダブロック
3 チェーンケース
7 第1接合部
7a ガスケット
8 第2接合部
8a ガスケット
9 出合う出合部
9a 外側部位
10 遮蔽部
10a 第1遮蔽部
10b 第2遮蔽部
13 受け部
15 オイル吸収体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドがガスケットを挟んでシリンダブロックに接合された第1接合部と、
チェーンケースがガスケットを挟んで前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとに接合された第2接合部と、
前記第1接合部と前記第2接合部とが出合う出合部と、
前記出合部のうちの横外側に臨む外側部位を、当該外側部位から間隔を隔てて遮蔽する遮蔽部とを備え、
前記遮蔽部が、前記チェーンケース、前記シリンダブロック又は前記シリンダヘッドの少なくとも何れか一つに一体形成されているエンジンのシール構造。
【請求項2】
前記シリンダヘッドが前記シリンダブロックの上部に接合され、
前記遮蔽部が、前記シリンダブロック及び前記シリンダブロックのうちの少なくとも何れか一つにおける前記第1接合部よりも低い位置から上方に向けて延設されて、前記出合部から滲み出したオイルの受け部を構成している請求項1記載のエンジンのシール構造。
【請求項3】
前記遮蔽部が、前記チェーンケースから延設された第1遮蔽部と、前記シリンダブロックから延設された第2遮蔽部とを備え、
前記第1遮蔽部と前記第2遮蔽部とが互いに当接している請求項2記載のエンジンのシール構造。
【請求項4】
前記外側部位に接触するオイル吸収体が、当該外側部位と前記遮蔽部との間に装着されている請求項1〜3のいずれか1項記載のエンジンのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−169277(P2011−169277A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35153(P2010−35153)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】