エンジンのバルブタイミング検査装置
【課題】外部の誤差因子の影響を受けない正確なずれ検査をする。
【解決手段】バルブタイミング検査装置1は、吸気バルブ33と、排気バルブ43と、少なくとも複数の排気ポートを集合したコモンポート40と、吸気流量又は排気流量を計測する吸気側計測部4及び排気側計測部5と、クランクシャフト25の回転角度を検出するクランク角センサ61と、クランクシャフト25を外部から回転駆動する外部モータ6と、外部モータ6がクランクシャフト25を駆動するとき、吸気側計測部4及び排気側計測部5により計測された流量とクランク角センサ61により検出されたクランク角度との関係に基づき各バルブ33,43の開閉タイミングを判定する制御部7とを備える。制御部7は、計測された流量特性に基づき各バルブ33,43の開閉タイミングのずれを判定している。
【解決手段】バルブタイミング検査装置1は、吸気バルブ33と、排気バルブ43と、少なくとも複数の排気ポートを集合したコモンポート40と、吸気流量又は排気流量を計測する吸気側計測部4及び排気側計測部5と、クランクシャフト25の回転角度を検出するクランク角センサ61と、クランクシャフト25を外部から回転駆動する外部モータ6と、外部モータ6がクランクシャフト25を駆動するとき、吸気側計測部4及び排気側計測部5により計測された流量とクランク角センサ61により検出されたクランク角度との関係に基づき各バルブ33,43の開閉タイミングを判定する制御部7とを備える。制御部7は、計測された流量特性に基づき各バルブ33,43の開閉タイミングのずれを判定している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の排気ポートを集合したコモンポートを備えたエンジンのバルブタイミング検査装置に関し、特に外部駆動により排気ポート内を流れる流体流量に基づき排気バルブの開閉タイミングを検査するエンジンのバルブタイミング検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの動弁系は、所定のプロフィールを有するカムを備えたカムシャフトと、このカムシャフトの回転に伴って前記カムにより開閉動作される吸気バルブ及び排気バルブによって構成されている。吸気バルブ及び排気バルブの開閉動作の不具合はエンジン性能に影響を与え、バルブ閉弁時の衝撃音発生の原因になることから、吸排気バルブの開閉動作の検査はエンジンの各種検査のうちでも重要な項目とされる。
【0003】
特許文献1に記載されたバルブタイミング検査装置は、クランクシャフトに接続されクランクシャフトを回転駆動する外部駆動手段と、クランクシャフトの回転位相を検出する回転位相検出手段と、エンジンのシリンダ内の圧力を検出する圧力検出手段と、シリンダ内から外部への空気の流出を許容し且つ外部からシリンダ内への空気の流入を阻止する一方向流れ形成手段と、シリンダ内の圧力が減少傾向から増加傾向に変化する回転位相を排気バルブの開タイミングとして検出するタイミング検出手段とを備えている。このバルブタイミング検査装置では、外部駆動手段がクランクシャフトを駆動するとき、シリンダ内の圧力検出情報とクランクシャフトの回転位相検出情報に基づいてシリンダ内の圧力が減少傾向から増加傾向に変化する回転位相を排気バルブの開タイミングとして検出するため、組付け途中のスイングアーム式エンジンであっても、バルブの開タイミングの検出を行うことができる。
【0004】
エンジンの出力性能を高めるため、エンジンの排気を利用して吸気の充填効率を向上させるターボチャージャを搭載した車両が増加している。ターボチャージャ搭載車両では、排気を集合させ大きな排気圧で吸気用タービンを回転させるため、気筒毎に複数の排気ポートを集合したコモンポートを形成し、各気筒のコモンポートの排気を排気マニホールドにより集合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−254102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のバルブタイミング検査装置では、シリンダ内の圧力が減少傾向から増加傾向に変化する回転位相を検出するため、シリンダ内の空気のリークやピストンによるコンプレッショントルク等の外部の誤差因子を含む可能性があり、実際のバルブの挙動に基づく正確なバルブタイミングを検出できない虞が有る。
【0007】
また、このバルブタイミング検査装置では、シリンダ内圧力に基づき排気バルブの開タイミングを検出するため、複数の排気ポートを集合したコモンポートを備えたエンジンの場合、検査対象のバルブ以外のバルブの挙動によるシリンダ内圧力への影響を除去するため、検査対象のバルブ以外のバルブの昇降動作を強制的に停止させる機構等を備える必要があり、検査設備が複雑化する虞が有る。
【0008】
本発明の目的は、複数の排気ポートを集合したコモンポートを備えたエンジンにおいて、外部の誤差因子の影響を受けることなく正確なバルブタイミングのずれを検出でき、検査設備を簡単化できるエンジンのバルブタイミング検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1のエンジンのバルブタイミング検査装置は、燃焼室と、クランクシャフトと、前記燃焼室に連通された複数の吸気ポート及び吸気バルブと、前記燃焼室に連通された複数の排気ポート及び排気バルブと、少なくとも複数の排気ポートを集合したコモンポートとを備えたエンジンのバルブタイミング検査装置において、吸気流量又は排気流量を計測する計測手段と、前記クランクシャフトの回転角度を検出するクランク角度検出手段と、前記クランクシャフトを外部から回転駆動する外部駆動手段と、前記外部駆動手段が前記クランクシャフトを駆動するとき、前記計測手段により計測された流量と前記クランク角度検出手段により検出されたクランク角度との関係に基づき前記各バルブの開閉タイミングを判定するバルブタイミング判定手段とを備え、前記バルブタイミング判定手段は、前記計測された流量特性に基づき前記各バルブの開閉タイミングのずれを判定することを特徴としている。
【0010】
このバルブタイミング検査装置においては、吸気流量又は排気流量を計測する計測手段を備え、バルブタイミング判定手段が計測手段により計測された流量と前記クランク角度検出手段により検出されたクランク角度との関係に基づき前記各バルブの開閉タイミングを判定するため、各バルブの開閉タイミングに基づき吸排気ポートを実際に流れる吸排気流量を検出することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量変化率又は流量が最大値を示すクランク角度に基づき前記各バルブの開閉タイミングのずれを判定することを特徴としている。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量変化率が所定値以上のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが遅れていると判定することを特徴としている。
【0013】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量変化率が所定値以下のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが進んでいると判定することを特徴としている。
【0014】
請求項5の発明は、請求項2の発明において、前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量が最大値のクランク角度が所定値以上のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが遅れていると判定することを特徴としている。
【0015】
請求項6の発明は、請求項2の発明において、前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量が最大値のクランク角度が所定値以下のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが進んでいると判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、各バルブの開閉タイミングに基づき吸排気ポートを実際に流れる吸排気流量を計測するため、吸排気ポートを流れる実際の吸排気流量を検出することができ、バルブ挙動以外の外部誤差因子の影響を最小限にすることができ、正確なバルブタイミングを検出することができる。また、計測された流量特性に基づき前記各バルブの開閉タイミングのずれを判定するため、複数の排気ポートを集合したコモンポートを備えたエンジンであっても、検査対象の排気バルブ以外の排気バルブの昇降動作を停止させるための検査設備等を必要とせず検査設備を簡単化することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、複数の排気バルブの開閉タイミングのずれを流量特性の流量変化率又は流量が最大値を示すクランク角度に基づき判定することができる。
請求項3の発明によれば、流量特性の流量変化率により、複数の排気バルブのうち少なくとも1つの排気バルブの開タイミングの遅れを検出することができる。
請求項4の発明によれば、流量特性の流量変化率により、複数の排気バルブのうち少なくとも1つの排気バルブの開タイミングの進みを検出することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、流量が最大値を示すクランク角度により、複数の排気バルブのうち少なくとも1つの排気バルブの開タイミングの遅れを検出することができる。
請求項6の発明によれば、流量が最大値を示すクランク角度により、複数の排気バルブのうち少なくとも1つの排気バルブの開タイミングの進みを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係るエンジンのバルブタイミング検査装置の概略図である。
【図2】エンジンの要部拡大図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】バルブタイミング制御機構を示す図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】バルブタイミングを最進角側へ変更したときの図5相当図である。
【図7】バルブタイミングを最遅角側へ変更したときの図5相当図である。
【図8】バルブタイミング判定方法の説明図である。
【図9】バルブタイミング検査の処理手順を示すステップ図である。
【図10】バルブタイミング検査のタイムチャートである。
【図11】計測工程で検出された各バルブのバルブリフト量とクランク角度と流体流量との相関関係を示す図である。
【図12】排気バルブの開閉タイミングのずれ判定の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。尚、図における左右方向を左右方向として説明する。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明の実施例1について図1〜図12に基づいて説明する。
図1に示すように、バルブタイミング検査装置1では、吸気マニホールドや排気マニホールドが組付けられる前段階(組付け途中)のエンジンEを検査対象としている。エンジンEは、パレット(図示略)に搭載された状態でコンベア(図示略)等の搬送装置によりバルブタイミング検査装置1の検査ステーションまで搬送される。
【0022】
バルブタイミング検査装置1の構成について説明する。
図1に示すように、バルブタイミング検査装置1は、入力装置2と、出力装置3と、吸気側計測部4(計測手段)と、排気側計測部5(計測手段)と、クランクシャフト25を回転駆動する外部モータ6(外部駆動手段)と、制御部7(バルブタイミング判定手段)と、クランク角センサ61と、吸気カム角センサ62と、排気カム角センサ63等を備えている。入力装置2は、キーボードやマウス等を備え、各種情報を入力可能に構成されている。出力装置3は、ディスプレイやCRT等の表示装置、プリンタ等の印刷装置等を備え、各種情報を出力可能に構成されている。外部モータ6は、クランクシャフト25を強制的に回転させる電動モータである。クランク角センサ61と、吸気カム角センサ62と、排気カム角センサ63とは、夫々、各シャフトの回転位相を検出可能なエンコーダであり、各シャフトが所定単位角度回転する毎に1パルスづつタイミングパルスを出力するよう構成されている。
【0023】
吸気側計測部4と排気側計測部5とは同様の公知の差圧式流量センサにより構成されているため、吸気側計測部4について説明し、排気側計測部5の説明を省略する。
吸気側計測部4は、流体を流すことが可能な筒状の層流部4aと、層流部4aを流れる流体の圧力降下を検出可能な差圧部4bとから構成されている。
吸気側計測部4は、層流部4a内を流体が層流で流れるとき、層流域の圧力損失と流量とが比例関係(Hangen-Poiseuilleの法則)になることを利用して流量を検出している。
差圧部4bは、層流部4aの上流側の第1位置の圧力と第1位置から所定距離下流方向に離隔した第2位置の圧力を測定し、第1位置と第2位置との差圧を検出する。層流部4a内に導入された流体の流量は検出された差圧に基づき、次式(1)により算出することができる。
Q=K×ΔP …(1)
ここで、Qは流体の体積流量、Kは流量係数、ΔPは差圧である。
【0024】
制御部7は、ROM、RAM及びCPUを有し、バルブタイミング検査装置1を制御するための制御プログラム及びバルブタイミング検査装置1を制御するために必要なデータ等を記憶している。制御部7は、外部モータ6がクランクシャフト25を駆動するとき、吸気側計測部4と排気側計測部5とにより計測された流量とクランク角センサ61により検出されたクランク角度との関係に基づき吸気バルブ33及び排気バルブ43の開閉タイミングを判定するよう構成されている。制御部7には、クランク角センサ61と吸気カム角センサ62と排気カム角センサ63から夫々の検出信号が入力される。クランク角センサ61により、クランクシャフト25の回転数及びクランク角度が検出され、吸気カム角センサ62と排気カム角センサ63により、吸気カムシャフト38と排気カムシャフト48の回転数と吸気カムシャフト38と排気カムシャフト48の回転位相が検出される。
【0025】
図1,図8に基づき、吸気バルブ33及び排気バルブ43の開閉タイミングの判定方法について詳細に説明する。尚、本実施例では、クランクシャフト25を外部モータ6で回転駆動し、ピストン26の昇降動作により各ポート31,32,40内を流れる流体流量を検出している。図8に示すように、クランク角度が0deg、360deg、及び720degをTDC(上死点)、クランク角度が180deg、及び540degをBDC(下死点)とした場合、外部モータ6によるクランクシャフト25の回転に伴いピストン26はTDCとBDCとの間を昇降動作する。また、図において、「EX」は排気バルブ43が開弁している状態を示し、「IN」は吸気バルブ33が開弁している状態を示し、燃焼室27から排出される流量をプラス、燃焼室27へ導入される流量をマイナスで示す。
【0026】
ピストン26が膨張作動のとき(0〜180deg)、吸気バルブ33は閉状態であり、排気バルブ43はバルブリフト量を増加して開作動を開始する。排気バルブ43の開作動前に排気コモンポート40を流れる流体流量はなく、排気バルブ43の開作動後、ピストン26により燃焼室27へ流体が導入される。これにより、排気側吸気の導入開始タイミングを検出することで、排気バルブ43の開タイミングを検出する。ピストン26が圧縮作動のとき(180〜360deg)、吸気バルブ33は閉状態であり、排気バルブ43はバルブリフト量を減少して閉作動を開始する。排気バルブ43の閉作動前は、ピストン26により燃焼室27から排気コモンポート40へ流体が排出され、排気バルブ43の閉作動後、排気コモンポート40を流れる流体流量は検出されない。これにより、排気側排気の排出終了タイミングを検出することで、排気バルブ43の閉タイミングを検出する。
【0027】
ピストン26が膨張作動のとき(360〜540deg)、排気バルブ43は閉状態であり、吸気バルブ33はバルブリフト量を増加して開作動を開始する。吸気バルブ33の開作動前に吸気ポート31,32を流れる流体流量はなく、吸気バルブ33の開作動後、ピストン26により燃焼室27へ流体が導入される。これにより、吸気側吸気の導入開始タイミングを検出することで、吸気バルブ33の開タイミングを検出する。ピストン26が圧縮作動のとき(540〜720deg)、排気バルブ43は閉状態であり、吸気バルブ33はバルブリフト量を減少して閉作動を開始する。吸気バルブ33の閉作動前は、ピストン26により燃焼室27から吸気ポート31,32へ流体が排出され、吸気バルブ33の閉作動後、吸気ポート31,32を流れる流体流量は検出されない。これにより、吸気側排気の排出終了タイミングを検出することで、吸気バルブ33の閉タイミングを検出する。
【0028】
次に、図1〜図3に基づき、検査対象のエンジンEについて説明する。
エンジンEは、シリンダブロック21と、シリンダブロック21の上にガスケット(図示略)を介して配設されたシリンダヘッド22と、シリンダヘッド22の上に配設された1対のカムハウジング23a,23b等を有する4気筒エンジンである。シリンダブロック21にはシリンダ24が形成され、このシリンダ24にはクランクシャフト25の回動に応じて上下動可能なピストン26が摺動自在に嵌挿されている。シリンダヘッド22の下面には部分円錐状の傾斜壁面が形成され、傾斜壁面はピストン26の頂面とシリンダ24の内周面と協働して燃焼室27を形成している。傾斜壁面の中央部分には、点火プラグ(図示略)を装着するためのプラグホール28が形成されている。
【0029】
シリンダヘッド22のシリンダボア右側には、シリンダ24に吸気を導く2本の独立吸気ポート31,32が設けられている。これら吸気ポート31,32は、一端が燃焼室27の右側の傾斜壁面に夫々吸気側バルブシート(図示略)を介して開口し、他端がシリンダヘッド22の右側壁に開口するように形成されている。吸気ポート31,32は、シリンダ配列方向に並んで設けられている。
【0030】
シリンダヘッド22のシリンダボア左側には、シリンダ24から排気ガスを外方へ導く2本の独立排気ポート41,42が設けられている。これら排気ポート41,42は、一端が燃焼室27の左側の傾斜壁面に夫々排気側バルブシート(図示略)を介して開口し、他端がシリンダヘッド22の左側壁に開口するように形成されている。排気ポート41,42は、シリンダ配列方向に並んで設けられ、シリンダヘッド左側壁側で1本の排気コモンポート40に集合されている。
【0031】
シリンダヘッド22には、各吸気ポート31,32に対応して吸気側バルブシートを夫々開閉する2つの吸気バルブ33が設けられている。これら吸気バルブ33は、そのバルブ軸がシリンダヘッド22に夫々摺動自在に嵌挿され、上下動可能に設けられ、各バルブ軸端部のスプリングシート34を介してバルブスプリング35の付勢力により上方(閉弁方向)に付勢されている。これら吸気バルブ33のバルブ上端は、一端を夫々の油圧式ラッシュアジャスタ36に支持された1対のスイングアーム37を介して、吸気カムシャフト38の回転により、吸気カムシャフト38の途中部に設けられた2つの吸気カム38aのプロフィールに応じてバルブスプリング35の付勢力に抗して下方(開弁方向)に駆動され、2つの吸気バルブ33は同じ所定のタイミングで開閉するように構成されている。尚、2つの吸気カム38aは同一構造のため、2つの吸気バルブ33は同一のバルブタイミングで作動している。
【0032】
シリンダヘッド22には、各排気ポート41,42に対応して排気側バルブシートを夫々開閉する2つの排気バルブ43が設けられている。これら排気バルブ43は、そのバルブ軸がシリンダヘッド22に夫々摺動自在に嵌挿され、上下動可能に設けられ、各バルブ軸端部のスプリングシート44を介してバルブスプリング45の付勢力により上方(閉弁方向)に付勢されている。これら排気バルブ43のバルブ上端は、一端を夫々の油圧式ラッシュアジャスタ46に支持された1対のスイングアーム47を介して、排気カムシャフト48の回転により、排気カムシャフト48の途中部に設けられた排気カム48aのプロフィールに応じてバルブスプリング45の付勢力に抗して下方(開弁方向)に駆動され、2つの排気バルブ43は同じ所定のタイミングで開閉するように構成されている。尚、2つの排気カム48aは同一構造のため、2つの排気バルブ43は同一のバルブタイミングで作動している。
【0033】
次に、図4〜図7に基づき、バルブタイミング制御機構50について説明する。
バルブタイミング制御機構50は、吸気カムシャフト38の一側端部に設けられ、ケース51と、ベーン52と、電動モータ53等から構成されている。尚、同様のバルブタイミング制御機構50を、排気カムシャフト48の一側端部に設け、排気バルブ43のバルブタイミングを変更することも可能である。
【0034】
ケース51は、ケース51の外周に設けられた環状のスプロケット部54と、ベーン52と動力伝達機構(図示略)等を収容可能な筒状のケース本体55とから一体的に構成されている。スプロケット部54の外周面には、タイミングチェーン29に係合可能な歯(図示略)が形成され、スプロケット部54とクランクシャフト25とはタイミングチェーン29により連結されている。尚、タイミングチェーン29は、クランクシャフト25のスプロケット部(図示略)と、排気カムシャフト48のスプロケット部(図示略)と、スプロケット部54とに亙って掛け渡すように装着されている。エンジンEの駆動力は、クランクシャフト25からタイミングチェーン29を介してスプロケット部54に伝達され、この駆動力によりケース51が回転する。
【0035】
ケース本体55の中央部には、貫通孔が形成され、この貫通孔に吸気カムシャフト38が回転可能に貫装されている。ケース本体55の内周には、吸気カムシャフト38の軸心方向に突出する突出部56a,56bが設けられている。突出部56aは吸気カムシャフト38に対して走行制御で用いられる走行用最進角位置より更に進角側に設けられ、突出部56bは吸気カムシャフト38に対して走行制御で用いられる走行用最遅角位置より更に遅角側に設けられているため、走行制御のバルブタイミング変更を阻害することなく、ケース本体55の剛性を増すことができる。突出部を等間隔毎に配置し、2つ以上形成することも可能である。
【0036】
ベーン52は、ケース51に対して相対的に回転可能に形成され、吸気バルブ33が開閉するバルブタイミングを変更可能に構成されている。ベーン52は、吸気カムシャフト38の一側端部にボルト等により締結固定され、吸気カムシャフト38の一側方向へ延びる延長部分を形成している。ベーン52の外周側には、放射方向へ突出する突部57が設けられている。それ故、突部57は吸気カムシャフト38と一体と看做され、突部57は吸気カムシャフト38と同様の回転動作を行う。
【0037】
電動モータ53は、電機子や回転子等を有し、ベーン52と電動モータ53からベーン52へ回転動力を伝達する動力伝達機構(図示略)等を収容したケース本体55の一側端部を閉塞するように配置されている。動力伝達機構は、外歯歯車のサンギアと、サンギアに対して同心円上に配置された内歯歯車のリングギアと、これらのサンギアとリングギアとに噛合するピニオンギアを自転且つ公転自在に保持するキャリアとを回転要素とする公知の歯車機構である。電動モータ53は、PCM(Powertrain Control Module)30により制御されている(図1参照)。電動モータ53の電流や電圧は、電流計や電圧計により検出され、PCM30に入力される。
【0038】
図5に示すように、バルブタイミング制御機構50を作動しないとき、電動モータ53が回転動作しないため、突部57は突出部56a,56bの間の略中間位置に保持され、矢印で示すように、この中間位置を維持してタイミングチェーン29の回転と同様に左回りの回転を行う。それ故、吸気カムシャフト38がケース本体55に対して相対的に回転せず、吸気バルブ33は最遅角、若しくは進角と遅角との間の任意のバルブタイミング(位置不定)で開閉動作する。
【0039】
図6に示すように、バルブタイミング制御機構50を進角側へ作動させたとき、電動モータ53がベーン52を左回転するため、吸気カムシャフト38がケース本体55に対して相対的に左回転した進角側位置に保持され、矢印で示すように、この進角側位置を維持してタイミングチェーン29の回転と同様に左回りの回転を行う。
【0040】
図7に示すように、バルブタイミング制御機構50を遅角側へ作動させたとき、電動モータ53がベーン52を右回転するため、吸気カムシャフト38がケース本体55に対して相対的に右回転した遅角側位置に保持され、矢印で示すように、この遅角側位置を維持してタイミングチェーン29と同様に左回りの回転を行う。
【0041】
本実施例では、実車の走行で使用する走行用最進角位置より更に進角側位置(検査用最進角位置)に突出部56aを形成し、実車の走行で使用する走行用最遅角位置より更に遅角側位置(検査用最遅角位置)に突出部56bを形成し、突出部56a又は突出部56bと突部57とを当接させて検査を行うよう構成されている。尚、検査用最進角位置と検査用最遅角位置は、通常の走行制御では使用されないが、走行用最進角位置を学習する際にバルブタイミング制御機構50を前記検査用最進角位置又は検査用最遅角位置に作動させることがある。
【0042】
次に、図1,図9〜図12に基づき、バルブタイミング検査の処理手順について説明する。
準備工程S1において、エンジンEが検査位置まで搬送され、外部モータ6の駆動軸とクランクシャフト25とを同期回転可能に連結する。2つの吸気側計測部4の層流部4aをシリンダヘッド22の右側壁に開口する吸気ポート31,32と夫々連通するようにエンジンEに対して装着する。これにより、吸気ポート31,32を流れる流体流量は層流部4aを流れる流体流量に相当する。排気側計測部5の層流部5aをシリンダヘッド22の左側壁に開口する排気コモンポート40と連通するようにエンジンEに対して装着する。これにより、排気コモンポート40を流れる流体流量は層流部5aを流れる流体流量に相当する。
【0043】
クランキング工程S2において、制御部7は、クランキング開始信号を外部モータ6に出力する。外部モータ6は、クランクシャフト25の回転駆動を開始し、所定目標回転数、例えば200rpmまで回転数を上昇させた後、この回転数を維持する。
【0044】
最遅角制御工程S3において、外部モータ6の回転数が目標回転数に上昇したとき(クランキング開始1sec後)、制御部7は、最遅角制御信号をPCM30に出力する。PCM30は、バルブタイミング制御機構50の電動モータ53が吸気バルブ33を最遅角側に固定するよう制御している。電動モータ53は、実車の走行で使用する走行用最遅角位置より更に遅角側の検査用最遅角位置までベーン52を右回転させるため所定のデューティで制御され、この検査用最遅角位置を固定保持するため所定のデューティで制御されている。これにより、ベーン52の突部57はケース本体55の突出部56bに当接し、外部モータ6がクランクシャフト25を回転駆動する間中、この当接状態を維持している。これにより、最遅角制御のために必要な電動モータ53の電力量と吸気バルブ33を検査用最遅角位置に固定保持する電力量とを抑えることができる。また、ベーン52の突部57はケース本体55の突出部56bに当接しているため、電動モータ53のコギングトルクに起因する吸気バルブ33の脈動を抑えることができる。
【0045】
計測工程S4において、突部57が突出部56bに当接したとき、例えばクランキング開始2sec後、制御部7は、計測開始信号を吸気側計測部4と排気側計測部5とに出力する。突部57が突出部56bに当接するまでの所要時間は、予め実験により求めておく。
計測工程S4では、吸気側計測部4と排気側計測部5により吸気ポート31,32及び排気コモンポート40を流れる流体流量を検出している。吸気側計測部4と排気側計測部5により検出された排気側吸気、排気側排気、吸気側吸気、吸気側排気の各流体流量は、制御部7へ出力される。
【0046】
バルブタイミング判定工程S5において、制御部7は、計測工程で検出された排気側吸気、排気側排気、吸気側吸気、吸気側排気の各流量について、クランク角度と流体流量との相関関係(流量特性)を検出し(図11参照)、排気側吸気の開始タイミング、排気側排気の終了タイミング、吸気側吸気の開始タイミング、吸気側排気の終了タイミングを夫々検出している。これにより、吸気バルブ33の開閉タイミングと排気バルブ43の開閉タイミングとを検出し、予め設定された目標開閉タイミングと比較判定を行っている。
【0047】
図11に示すように、吸気バルブ33のバルブリフト特性と排気バルブ43のバルブリフト特性とは一部オーバーラップするため、排気側排気において、排気コモンポート40を流れる流体流量が一旦吸気(マイナス)側に移行する現象が生じる。それ故、排気バルブ43の閉タイミングは、吸排気バルブ33,43バルブリフト特性を考慮して判定される。
【0048】
また、バルブタイミング判定工程S5では、排気側吸気又は排気側排気の流量特性に基づき排気バルブ43の開閉タイミングのずれを判定している。バルブタイミング判定工程S5では、検出された排気側吸気の流量特性から流量変化率を検出している。
【0049】
排気側吸気の流量特性に基づく排気バルブ43の開閉タイミングのずれ判定処理について説明する。
図12に示すように、排気ポート41の排気バルブ43と排気ポート42の排気バルブ43との開閉タイミングが同じ場合、排気コモンポート40を流れる流体流量の流量特性は排気側吸気特性L1を示す。判定基準となる排気側吸気特性L1の流量変化率を、基準流量変化率として予め実験等により求めている。
【0050】
検出された排気側吸気の流量特性が排気側吸気特性L2の場合、所謂排気側吸気特性L2の流量変化率が前記基準流量変化率以上の場合、何れか一方の排気バルブ43の開タイミングが遅れていると判定している。検出された排気側吸気の流量特性が排気側吸気特性L3の場合、所謂排気側吸気特性L3の流量変化率が前記基準流量変化率以下の場合、何れか一方の排気バルブ43の開タイミングが進んでいると判定している。また、同様に排気側排気の流量特性に基づき排気バルブ43の閉タイミングのずれを判定することもできる。
【0051】
また、流量変化率による判定に代え、検出された流量特性の流量が最大値(ピーク値)を示すクランク角度を検出することで、排気バルブ43の開閉タイミングのずれを判定しても良い。この場合、判定基準となる排気側吸気特性L1の流量が最大値を示すクランク角度を、基準クランク角度C1として予め実験等により求めている。
【0052】
検出された排気側吸気の流量特性が排気側吸気特性L2の場合、所謂排気側吸気特性L2の流量が最大値を示すクランク角度C2がクランク角度C1以上の場合、何れか一方の排気バルブ43の開タイミングが遅れていると判定している。検出された排気側吸気の流量特性が排気側吸気特性L3の場合、所謂排気側吸気特性L3の流量が最大値を示すクランク角度C3がクランク角度C1以下の場合、何れか一方の排気バルブ43の開タイミングが進んでいると判定している。また、同様に排気側排気の流量特性に基づき排気バルブ43の閉タイミングのずれを判定することもできる。
【0053】
バルブタイミング判定工程S5の終了後、制御部7は、計測終了信号と、クランキング終了信号を出力する。計測終了信号により吸気側計測部4と排気側計測部5との計測を終了し、クランキング終了信号により外部モータ6の回転駆動を終了する。また、クランキング終了信号により電動モータ53に対するデューティ制御を解除する。
他のシリンダ24についても、前述したバルブタイミング検査を行う。
【0054】
次に、本バルブタイミング検査装置1の作用、効果について説明する。
このバルブタイミング検査装置1は、燃焼室27と、クランクシャフト25と、燃焼室27に連通された複数の吸気ポート31,32及び吸気バルブ33と、燃焼室27に連通された複数の排気ポート41,42及び排気バルブ43と、少なくとも複数の排気ポート41,42を集合したコモンポート40とを備えたエンジンEのバルブタイミング検査装置1において、吸気流量又は排気流量を計測する吸気側計測部4及び排気側計測部5と、クランクシャフト25の回転角度を検出するクランク角センサ61と、クランクシャフト25を外部から回転駆動する外部モータ6と、外部モータ6がクランクシャフト25を駆動するとき、吸気側計測部4及び排気側計測部5により計測された流量とクランク角センサ61により検出されたクランク角度との関係に基づき各バルブ33,43の開閉タイミングを判定する制御部7とを備え、制御部7は、前記計測された流量特性に基づき各バルブ33,43の開閉タイミングのずれを判定している。
【0055】
このバルブタイミング検査装置1によれば、各バルブの開閉タイミングに基づき吸排気ポート31,32,41,42を実際に流れる吸排気流量を検出するため、吸排気ポート31,32,41,42を流れる実際の吸排気流量を検出することができ、各バルブ33,43の挙動以外の外部誤差因子の影響を最小限にすることができ、正確なバルブタイミングを検出することができる。また、計測された流量特性に基づき各バルブ33,43の開閉タイミングのずれを判定するため、複数の排気ポート41,42を集合したコモンポート40を備えたエンジンEであっても、検査対象の排気バルブ43以外の排気バルブ43の昇降動作を停止させる等の検査設備を必要とせず検査設備を簡単化することができる。
【0056】
制御部7は、検出された流量特性の流量変化率又は流量が最大値を示すクランク角度に基づき各排気バルブ43の開閉タイミングのずれを判定することができる。
複数の吸気バルブ33は同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブ43は同じ開閉タイミングに設定され、制御部7は、流量特性の流量変化率が基準流量変化率以上のとき、複数の排気バルブ43のうち何れかのバルブの開閉タイミングが遅れていると判定するため、流量特性の流量変化率により、複数の排気バルブ43のうち少なくとも1つの排気バルブ43の開タイミングの遅れを検出することができる。
【0057】
複数の吸気バルブ33は同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブ43は同じ開閉タイミングに設定され、制御部7は、流量特性の流量変化率が基準流量変化率以下のとき、複数の排気バルブ43のうち何れかのバルブの開閉タイミングが進んでいると判定するため、流量特性の流量変化率により、複数の排気バルブ43のうち少なくとも1つの排気バルブ43の開タイミングの進みを検出することができる。
【0058】
複数の吸気バルブ33は同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブ43は同じ開閉タイミングに設定され、制御部7は、流量特性の流量が最大値のクランク角度が基準クランク角度以上のとき、複数の排気バルブ43のうち何れかのバルブの開閉タイミングが遅れていると判定するため、流量が最大値を示すクランク角度により、複数の排気バルブ43のうち少なくとも1つの排気バルブ43の開タイミングの遅れを検出することができる。
【0059】
複数の吸気バルブ33は同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブ43は同じ開閉タイミングに設定され、制御部7は、流量特性の流量が最大値のクランク角度が基準クランク角度以下のとき、複数の排気バルブ43のうち何れかのバルブの開閉タイミングが進んでいると判定するため、流量が最大値を示すクランク角度により、複数の排気バルブ43のうち少なくとも1つの排気バルブ43の開タイミングの進みを検出することができる。
【0060】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、計測手段として差圧式流量センサを用いた例を説明したが、少なくとも、各ポート内を流れる吸気流量又は排気流量を計測可能なセンサであれば良く、種々のセンサを適用可能である。
【0061】
2〕前記実施例においては、排気ポートの流量特性の流量変化率又は流量特性の流量が最大値のクランク角度により排気バルブの開閉タイミングを判定した例を説明したが、吸気ポートの流量特性の流量変化率又は流量特性の流量が最大値のクランク角度により吸気バルブの開閉タイミングを判定することも可能である。
【0062】
3〕前記実施例においては、吸気バルブ側のみに電動式バルブタイミング制御機構を設けた例を説明したが、吸気バルブ側と排気バルブ側の両方に電動式バルブタイミング制御機構を設けることも可能である。また、排気バルブ側のみに電動式バルブタイミング制御機構を設けても良い。
【0063】
4〕前記実施例においては、吸気バルブと排気バルブとの双方の開閉タイミングを判定する例を説明したが、排気バルブのみの流量特性を検出し排気バルブのみの開閉タイミングを判定することも可能である。排気バルブの開閉タイミングのみを検査する場合、吸気ポート開口を閉塞して、排気ポートを流れる流体流量を計測する。
【0064】
5〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、複数の排気ポートを集合したコモンポートを備えたエンジンのバルブタイミング検査装置において、外部駆動によりコモンポートを流れる流量特性に基づき排気バルブの開閉タイミングを検査したことにより、外部の誤差因子の影響を受けることなく正確なバルブタイミングのずれを検出でき、検査設備を簡単化できる。
【符号の説明】
【0066】
E エンジン
1 バルブタイミング検査装置
4 吸気側計測部
5 排気側計測部
6 外部モータ
7 制御部
25 クランクシャフト
26 ピストン
27 燃焼室
31,32 吸気ポート
33 吸気バルブ
38 吸気カムシャフト
40 排気コモンポート
41,42 排気ポート
43 排気バルブ
61 クランク角センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の排気ポートを集合したコモンポートを備えたエンジンのバルブタイミング検査装置に関し、特に外部駆動により排気ポート内を流れる流体流量に基づき排気バルブの開閉タイミングを検査するエンジンのバルブタイミング検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの動弁系は、所定のプロフィールを有するカムを備えたカムシャフトと、このカムシャフトの回転に伴って前記カムにより開閉動作される吸気バルブ及び排気バルブによって構成されている。吸気バルブ及び排気バルブの開閉動作の不具合はエンジン性能に影響を与え、バルブ閉弁時の衝撃音発生の原因になることから、吸排気バルブの開閉動作の検査はエンジンの各種検査のうちでも重要な項目とされる。
【0003】
特許文献1に記載されたバルブタイミング検査装置は、クランクシャフトに接続されクランクシャフトを回転駆動する外部駆動手段と、クランクシャフトの回転位相を検出する回転位相検出手段と、エンジンのシリンダ内の圧力を検出する圧力検出手段と、シリンダ内から外部への空気の流出を許容し且つ外部からシリンダ内への空気の流入を阻止する一方向流れ形成手段と、シリンダ内の圧力が減少傾向から増加傾向に変化する回転位相を排気バルブの開タイミングとして検出するタイミング検出手段とを備えている。このバルブタイミング検査装置では、外部駆動手段がクランクシャフトを駆動するとき、シリンダ内の圧力検出情報とクランクシャフトの回転位相検出情報に基づいてシリンダ内の圧力が減少傾向から増加傾向に変化する回転位相を排気バルブの開タイミングとして検出するため、組付け途中のスイングアーム式エンジンであっても、バルブの開タイミングの検出を行うことができる。
【0004】
エンジンの出力性能を高めるため、エンジンの排気を利用して吸気の充填効率を向上させるターボチャージャを搭載した車両が増加している。ターボチャージャ搭載車両では、排気を集合させ大きな排気圧で吸気用タービンを回転させるため、気筒毎に複数の排気ポートを集合したコモンポートを形成し、各気筒のコモンポートの排気を排気マニホールドにより集合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−254102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のバルブタイミング検査装置では、シリンダ内の圧力が減少傾向から増加傾向に変化する回転位相を検出するため、シリンダ内の空気のリークやピストンによるコンプレッショントルク等の外部の誤差因子を含む可能性があり、実際のバルブの挙動に基づく正確なバルブタイミングを検出できない虞が有る。
【0007】
また、このバルブタイミング検査装置では、シリンダ内圧力に基づき排気バルブの開タイミングを検出するため、複数の排気ポートを集合したコモンポートを備えたエンジンの場合、検査対象のバルブ以外のバルブの挙動によるシリンダ内圧力への影響を除去するため、検査対象のバルブ以外のバルブの昇降動作を強制的に停止させる機構等を備える必要があり、検査設備が複雑化する虞が有る。
【0008】
本発明の目的は、複数の排気ポートを集合したコモンポートを備えたエンジンにおいて、外部の誤差因子の影響を受けることなく正確なバルブタイミングのずれを検出でき、検査設備を簡単化できるエンジンのバルブタイミング検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1のエンジンのバルブタイミング検査装置は、燃焼室と、クランクシャフトと、前記燃焼室に連通された複数の吸気ポート及び吸気バルブと、前記燃焼室に連通された複数の排気ポート及び排気バルブと、少なくとも複数の排気ポートを集合したコモンポートとを備えたエンジンのバルブタイミング検査装置において、吸気流量又は排気流量を計測する計測手段と、前記クランクシャフトの回転角度を検出するクランク角度検出手段と、前記クランクシャフトを外部から回転駆動する外部駆動手段と、前記外部駆動手段が前記クランクシャフトを駆動するとき、前記計測手段により計測された流量と前記クランク角度検出手段により検出されたクランク角度との関係に基づき前記各バルブの開閉タイミングを判定するバルブタイミング判定手段とを備え、前記バルブタイミング判定手段は、前記計測された流量特性に基づき前記各バルブの開閉タイミングのずれを判定することを特徴としている。
【0010】
このバルブタイミング検査装置においては、吸気流量又は排気流量を計測する計測手段を備え、バルブタイミング判定手段が計測手段により計測された流量と前記クランク角度検出手段により検出されたクランク角度との関係に基づき前記各バルブの開閉タイミングを判定するため、各バルブの開閉タイミングに基づき吸排気ポートを実際に流れる吸排気流量を検出することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量変化率又は流量が最大値を示すクランク角度に基づき前記各バルブの開閉タイミングのずれを判定することを特徴としている。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量変化率が所定値以上のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが遅れていると判定することを特徴としている。
【0013】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量変化率が所定値以下のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが進んでいると判定することを特徴としている。
【0014】
請求項5の発明は、請求項2の発明において、前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量が最大値のクランク角度が所定値以上のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが遅れていると判定することを特徴としている。
【0015】
請求項6の発明は、請求項2の発明において、前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量が最大値のクランク角度が所定値以下のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが進んでいると判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、各バルブの開閉タイミングに基づき吸排気ポートを実際に流れる吸排気流量を計測するため、吸排気ポートを流れる実際の吸排気流量を検出することができ、バルブ挙動以外の外部誤差因子の影響を最小限にすることができ、正確なバルブタイミングを検出することができる。また、計測された流量特性に基づき前記各バルブの開閉タイミングのずれを判定するため、複数の排気ポートを集合したコモンポートを備えたエンジンであっても、検査対象の排気バルブ以外の排気バルブの昇降動作を停止させるための検査設備等を必要とせず検査設備を簡単化することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、複数の排気バルブの開閉タイミングのずれを流量特性の流量変化率又は流量が最大値を示すクランク角度に基づき判定することができる。
請求項3の発明によれば、流量特性の流量変化率により、複数の排気バルブのうち少なくとも1つの排気バルブの開タイミングの遅れを検出することができる。
請求項4の発明によれば、流量特性の流量変化率により、複数の排気バルブのうち少なくとも1つの排気バルブの開タイミングの進みを検出することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、流量が最大値を示すクランク角度により、複数の排気バルブのうち少なくとも1つの排気バルブの開タイミングの遅れを検出することができる。
請求項6の発明によれば、流量が最大値を示すクランク角度により、複数の排気バルブのうち少なくとも1つの排気バルブの開タイミングの進みを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係るエンジンのバルブタイミング検査装置の概略図である。
【図2】エンジンの要部拡大図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】バルブタイミング制御機構を示す図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】バルブタイミングを最進角側へ変更したときの図5相当図である。
【図7】バルブタイミングを最遅角側へ変更したときの図5相当図である。
【図8】バルブタイミング判定方法の説明図である。
【図9】バルブタイミング検査の処理手順を示すステップ図である。
【図10】バルブタイミング検査のタイムチャートである。
【図11】計測工程で検出された各バルブのバルブリフト量とクランク角度と流体流量との相関関係を示す図である。
【図12】排気バルブの開閉タイミングのずれ判定の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。尚、図における左右方向を左右方向として説明する。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明の実施例1について図1〜図12に基づいて説明する。
図1に示すように、バルブタイミング検査装置1では、吸気マニホールドや排気マニホールドが組付けられる前段階(組付け途中)のエンジンEを検査対象としている。エンジンEは、パレット(図示略)に搭載された状態でコンベア(図示略)等の搬送装置によりバルブタイミング検査装置1の検査ステーションまで搬送される。
【0022】
バルブタイミング検査装置1の構成について説明する。
図1に示すように、バルブタイミング検査装置1は、入力装置2と、出力装置3と、吸気側計測部4(計測手段)と、排気側計測部5(計測手段)と、クランクシャフト25を回転駆動する外部モータ6(外部駆動手段)と、制御部7(バルブタイミング判定手段)と、クランク角センサ61と、吸気カム角センサ62と、排気カム角センサ63等を備えている。入力装置2は、キーボードやマウス等を備え、各種情報を入力可能に構成されている。出力装置3は、ディスプレイやCRT等の表示装置、プリンタ等の印刷装置等を備え、各種情報を出力可能に構成されている。外部モータ6は、クランクシャフト25を強制的に回転させる電動モータである。クランク角センサ61と、吸気カム角センサ62と、排気カム角センサ63とは、夫々、各シャフトの回転位相を検出可能なエンコーダであり、各シャフトが所定単位角度回転する毎に1パルスづつタイミングパルスを出力するよう構成されている。
【0023】
吸気側計測部4と排気側計測部5とは同様の公知の差圧式流量センサにより構成されているため、吸気側計測部4について説明し、排気側計測部5の説明を省略する。
吸気側計測部4は、流体を流すことが可能な筒状の層流部4aと、層流部4aを流れる流体の圧力降下を検出可能な差圧部4bとから構成されている。
吸気側計測部4は、層流部4a内を流体が層流で流れるとき、層流域の圧力損失と流量とが比例関係(Hangen-Poiseuilleの法則)になることを利用して流量を検出している。
差圧部4bは、層流部4aの上流側の第1位置の圧力と第1位置から所定距離下流方向に離隔した第2位置の圧力を測定し、第1位置と第2位置との差圧を検出する。層流部4a内に導入された流体の流量は検出された差圧に基づき、次式(1)により算出することができる。
Q=K×ΔP …(1)
ここで、Qは流体の体積流量、Kは流量係数、ΔPは差圧である。
【0024】
制御部7は、ROM、RAM及びCPUを有し、バルブタイミング検査装置1を制御するための制御プログラム及びバルブタイミング検査装置1を制御するために必要なデータ等を記憶している。制御部7は、外部モータ6がクランクシャフト25を駆動するとき、吸気側計測部4と排気側計測部5とにより計測された流量とクランク角センサ61により検出されたクランク角度との関係に基づき吸気バルブ33及び排気バルブ43の開閉タイミングを判定するよう構成されている。制御部7には、クランク角センサ61と吸気カム角センサ62と排気カム角センサ63から夫々の検出信号が入力される。クランク角センサ61により、クランクシャフト25の回転数及びクランク角度が検出され、吸気カム角センサ62と排気カム角センサ63により、吸気カムシャフト38と排気カムシャフト48の回転数と吸気カムシャフト38と排気カムシャフト48の回転位相が検出される。
【0025】
図1,図8に基づき、吸気バルブ33及び排気バルブ43の開閉タイミングの判定方法について詳細に説明する。尚、本実施例では、クランクシャフト25を外部モータ6で回転駆動し、ピストン26の昇降動作により各ポート31,32,40内を流れる流体流量を検出している。図8に示すように、クランク角度が0deg、360deg、及び720degをTDC(上死点)、クランク角度が180deg、及び540degをBDC(下死点)とした場合、外部モータ6によるクランクシャフト25の回転に伴いピストン26はTDCとBDCとの間を昇降動作する。また、図において、「EX」は排気バルブ43が開弁している状態を示し、「IN」は吸気バルブ33が開弁している状態を示し、燃焼室27から排出される流量をプラス、燃焼室27へ導入される流量をマイナスで示す。
【0026】
ピストン26が膨張作動のとき(0〜180deg)、吸気バルブ33は閉状態であり、排気バルブ43はバルブリフト量を増加して開作動を開始する。排気バルブ43の開作動前に排気コモンポート40を流れる流体流量はなく、排気バルブ43の開作動後、ピストン26により燃焼室27へ流体が導入される。これにより、排気側吸気の導入開始タイミングを検出することで、排気バルブ43の開タイミングを検出する。ピストン26が圧縮作動のとき(180〜360deg)、吸気バルブ33は閉状態であり、排気バルブ43はバルブリフト量を減少して閉作動を開始する。排気バルブ43の閉作動前は、ピストン26により燃焼室27から排気コモンポート40へ流体が排出され、排気バルブ43の閉作動後、排気コモンポート40を流れる流体流量は検出されない。これにより、排気側排気の排出終了タイミングを検出することで、排気バルブ43の閉タイミングを検出する。
【0027】
ピストン26が膨張作動のとき(360〜540deg)、排気バルブ43は閉状態であり、吸気バルブ33はバルブリフト量を増加して開作動を開始する。吸気バルブ33の開作動前に吸気ポート31,32を流れる流体流量はなく、吸気バルブ33の開作動後、ピストン26により燃焼室27へ流体が導入される。これにより、吸気側吸気の導入開始タイミングを検出することで、吸気バルブ33の開タイミングを検出する。ピストン26が圧縮作動のとき(540〜720deg)、排気バルブ43は閉状態であり、吸気バルブ33はバルブリフト量を減少して閉作動を開始する。吸気バルブ33の閉作動前は、ピストン26により燃焼室27から吸気ポート31,32へ流体が排出され、吸気バルブ33の閉作動後、吸気ポート31,32を流れる流体流量は検出されない。これにより、吸気側排気の排出終了タイミングを検出することで、吸気バルブ33の閉タイミングを検出する。
【0028】
次に、図1〜図3に基づき、検査対象のエンジンEについて説明する。
エンジンEは、シリンダブロック21と、シリンダブロック21の上にガスケット(図示略)を介して配設されたシリンダヘッド22と、シリンダヘッド22の上に配設された1対のカムハウジング23a,23b等を有する4気筒エンジンである。シリンダブロック21にはシリンダ24が形成され、このシリンダ24にはクランクシャフト25の回動に応じて上下動可能なピストン26が摺動自在に嵌挿されている。シリンダヘッド22の下面には部分円錐状の傾斜壁面が形成され、傾斜壁面はピストン26の頂面とシリンダ24の内周面と協働して燃焼室27を形成している。傾斜壁面の中央部分には、点火プラグ(図示略)を装着するためのプラグホール28が形成されている。
【0029】
シリンダヘッド22のシリンダボア右側には、シリンダ24に吸気を導く2本の独立吸気ポート31,32が設けられている。これら吸気ポート31,32は、一端が燃焼室27の右側の傾斜壁面に夫々吸気側バルブシート(図示略)を介して開口し、他端がシリンダヘッド22の右側壁に開口するように形成されている。吸気ポート31,32は、シリンダ配列方向に並んで設けられている。
【0030】
シリンダヘッド22のシリンダボア左側には、シリンダ24から排気ガスを外方へ導く2本の独立排気ポート41,42が設けられている。これら排気ポート41,42は、一端が燃焼室27の左側の傾斜壁面に夫々排気側バルブシート(図示略)を介して開口し、他端がシリンダヘッド22の左側壁に開口するように形成されている。排気ポート41,42は、シリンダ配列方向に並んで設けられ、シリンダヘッド左側壁側で1本の排気コモンポート40に集合されている。
【0031】
シリンダヘッド22には、各吸気ポート31,32に対応して吸気側バルブシートを夫々開閉する2つの吸気バルブ33が設けられている。これら吸気バルブ33は、そのバルブ軸がシリンダヘッド22に夫々摺動自在に嵌挿され、上下動可能に設けられ、各バルブ軸端部のスプリングシート34を介してバルブスプリング35の付勢力により上方(閉弁方向)に付勢されている。これら吸気バルブ33のバルブ上端は、一端を夫々の油圧式ラッシュアジャスタ36に支持された1対のスイングアーム37を介して、吸気カムシャフト38の回転により、吸気カムシャフト38の途中部に設けられた2つの吸気カム38aのプロフィールに応じてバルブスプリング35の付勢力に抗して下方(開弁方向)に駆動され、2つの吸気バルブ33は同じ所定のタイミングで開閉するように構成されている。尚、2つの吸気カム38aは同一構造のため、2つの吸気バルブ33は同一のバルブタイミングで作動している。
【0032】
シリンダヘッド22には、各排気ポート41,42に対応して排気側バルブシートを夫々開閉する2つの排気バルブ43が設けられている。これら排気バルブ43は、そのバルブ軸がシリンダヘッド22に夫々摺動自在に嵌挿され、上下動可能に設けられ、各バルブ軸端部のスプリングシート44を介してバルブスプリング45の付勢力により上方(閉弁方向)に付勢されている。これら排気バルブ43のバルブ上端は、一端を夫々の油圧式ラッシュアジャスタ46に支持された1対のスイングアーム47を介して、排気カムシャフト48の回転により、排気カムシャフト48の途中部に設けられた排気カム48aのプロフィールに応じてバルブスプリング45の付勢力に抗して下方(開弁方向)に駆動され、2つの排気バルブ43は同じ所定のタイミングで開閉するように構成されている。尚、2つの排気カム48aは同一構造のため、2つの排気バルブ43は同一のバルブタイミングで作動している。
【0033】
次に、図4〜図7に基づき、バルブタイミング制御機構50について説明する。
バルブタイミング制御機構50は、吸気カムシャフト38の一側端部に設けられ、ケース51と、ベーン52と、電動モータ53等から構成されている。尚、同様のバルブタイミング制御機構50を、排気カムシャフト48の一側端部に設け、排気バルブ43のバルブタイミングを変更することも可能である。
【0034】
ケース51は、ケース51の外周に設けられた環状のスプロケット部54と、ベーン52と動力伝達機構(図示略)等を収容可能な筒状のケース本体55とから一体的に構成されている。スプロケット部54の外周面には、タイミングチェーン29に係合可能な歯(図示略)が形成され、スプロケット部54とクランクシャフト25とはタイミングチェーン29により連結されている。尚、タイミングチェーン29は、クランクシャフト25のスプロケット部(図示略)と、排気カムシャフト48のスプロケット部(図示略)と、スプロケット部54とに亙って掛け渡すように装着されている。エンジンEの駆動力は、クランクシャフト25からタイミングチェーン29を介してスプロケット部54に伝達され、この駆動力によりケース51が回転する。
【0035】
ケース本体55の中央部には、貫通孔が形成され、この貫通孔に吸気カムシャフト38が回転可能に貫装されている。ケース本体55の内周には、吸気カムシャフト38の軸心方向に突出する突出部56a,56bが設けられている。突出部56aは吸気カムシャフト38に対して走行制御で用いられる走行用最進角位置より更に進角側に設けられ、突出部56bは吸気カムシャフト38に対して走行制御で用いられる走行用最遅角位置より更に遅角側に設けられているため、走行制御のバルブタイミング変更を阻害することなく、ケース本体55の剛性を増すことができる。突出部を等間隔毎に配置し、2つ以上形成することも可能である。
【0036】
ベーン52は、ケース51に対して相対的に回転可能に形成され、吸気バルブ33が開閉するバルブタイミングを変更可能に構成されている。ベーン52は、吸気カムシャフト38の一側端部にボルト等により締結固定され、吸気カムシャフト38の一側方向へ延びる延長部分を形成している。ベーン52の外周側には、放射方向へ突出する突部57が設けられている。それ故、突部57は吸気カムシャフト38と一体と看做され、突部57は吸気カムシャフト38と同様の回転動作を行う。
【0037】
電動モータ53は、電機子や回転子等を有し、ベーン52と電動モータ53からベーン52へ回転動力を伝達する動力伝達機構(図示略)等を収容したケース本体55の一側端部を閉塞するように配置されている。動力伝達機構は、外歯歯車のサンギアと、サンギアに対して同心円上に配置された内歯歯車のリングギアと、これらのサンギアとリングギアとに噛合するピニオンギアを自転且つ公転自在に保持するキャリアとを回転要素とする公知の歯車機構である。電動モータ53は、PCM(Powertrain Control Module)30により制御されている(図1参照)。電動モータ53の電流や電圧は、電流計や電圧計により検出され、PCM30に入力される。
【0038】
図5に示すように、バルブタイミング制御機構50を作動しないとき、電動モータ53が回転動作しないため、突部57は突出部56a,56bの間の略中間位置に保持され、矢印で示すように、この中間位置を維持してタイミングチェーン29の回転と同様に左回りの回転を行う。それ故、吸気カムシャフト38がケース本体55に対して相対的に回転せず、吸気バルブ33は最遅角、若しくは進角と遅角との間の任意のバルブタイミング(位置不定)で開閉動作する。
【0039】
図6に示すように、バルブタイミング制御機構50を進角側へ作動させたとき、電動モータ53がベーン52を左回転するため、吸気カムシャフト38がケース本体55に対して相対的に左回転した進角側位置に保持され、矢印で示すように、この進角側位置を維持してタイミングチェーン29の回転と同様に左回りの回転を行う。
【0040】
図7に示すように、バルブタイミング制御機構50を遅角側へ作動させたとき、電動モータ53がベーン52を右回転するため、吸気カムシャフト38がケース本体55に対して相対的に右回転した遅角側位置に保持され、矢印で示すように、この遅角側位置を維持してタイミングチェーン29と同様に左回りの回転を行う。
【0041】
本実施例では、実車の走行で使用する走行用最進角位置より更に進角側位置(検査用最進角位置)に突出部56aを形成し、実車の走行で使用する走行用最遅角位置より更に遅角側位置(検査用最遅角位置)に突出部56bを形成し、突出部56a又は突出部56bと突部57とを当接させて検査を行うよう構成されている。尚、検査用最進角位置と検査用最遅角位置は、通常の走行制御では使用されないが、走行用最進角位置を学習する際にバルブタイミング制御機構50を前記検査用最進角位置又は検査用最遅角位置に作動させることがある。
【0042】
次に、図1,図9〜図12に基づき、バルブタイミング検査の処理手順について説明する。
準備工程S1において、エンジンEが検査位置まで搬送され、外部モータ6の駆動軸とクランクシャフト25とを同期回転可能に連結する。2つの吸気側計測部4の層流部4aをシリンダヘッド22の右側壁に開口する吸気ポート31,32と夫々連通するようにエンジンEに対して装着する。これにより、吸気ポート31,32を流れる流体流量は層流部4aを流れる流体流量に相当する。排気側計測部5の層流部5aをシリンダヘッド22の左側壁に開口する排気コモンポート40と連通するようにエンジンEに対して装着する。これにより、排気コモンポート40を流れる流体流量は層流部5aを流れる流体流量に相当する。
【0043】
クランキング工程S2において、制御部7は、クランキング開始信号を外部モータ6に出力する。外部モータ6は、クランクシャフト25の回転駆動を開始し、所定目標回転数、例えば200rpmまで回転数を上昇させた後、この回転数を維持する。
【0044】
最遅角制御工程S3において、外部モータ6の回転数が目標回転数に上昇したとき(クランキング開始1sec後)、制御部7は、最遅角制御信号をPCM30に出力する。PCM30は、バルブタイミング制御機構50の電動モータ53が吸気バルブ33を最遅角側に固定するよう制御している。電動モータ53は、実車の走行で使用する走行用最遅角位置より更に遅角側の検査用最遅角位置までベーン52を右回転させるため所定のデューティで制御され、この検査用最遅角位置を固定保持するため所定のデューティで制御されている。これにより、ベーン52の突部57はケース本体55の突出部56bに当接し、外部モータ6がクランクシャフト25を回転駆動する間中、この当接状態を維持している。これにより、最遅角制御のために必要な電動モータ53の電力量と吸気バルブ33を検査用最遅角位置に固定保持する電力量とを抑えることができる。また、ベーン52の突部57はケース本体55の突出部56bに当接しているため、電動モータ53のコギングトルクに起因する吸気バルブ33の脈動を抑えることができる。
【0045】
計測工程S4において、突部57が突出部56bに当接したとき、例えばクランキング開始2sec後、制御部7は、計測開始信号を吸気側計測部4と排気側計測部5とに出力する。突部57が突出部56bに当接するまでの所要時間は、予め実験により求めておく。
計測工程S4では、吸気側計測部4と排気側計測部5により吸気ポート31,32及び排気コモンポート40を流れる流体流量を検出している。吸気側計測部4と排気側計測部5により検出された排気側吸気、排気側排気、吸気側吸気、吸気側排気の各流体流量は、制御部7へ出力される。
【0046】
バルブタイミング判定工程S5において、制御部7は、計測工程で検出された排気側吸気、排気側排気、吸気側吸気、吸気側排気の各流量について、クランク角度と流体流量との相関関係(流量特性)を検出し(図11参照)、排気側吸気の開始タイミング、排気側排気の終了タイミング、吸気側吸気の開始タイミング、吸気側排気の終了タイミングを夫々検出している。これにより、吸気バルブ33の開閉タイミングと排気バルブ43の開閉タイミングとを検出し、予め設定された目標開閉タイミングと比較判定を行っている。
【0047】
図11に示すように、吸気バルブ33のバルブリフト特性と排気バルブ43のバルブリフト特性とは一部オーバーラップするため、排気側排気において、排気コモンポート40を流れる流体流量が一旦吸気(マイナス)側に移行する現象が生じる。それ故、排気バルブ43の閉タイミングは、吸排気バルブ33,43バルブリフト特性を考慮して判定される。
【0048】
また、バルブタイミング判定工程S5では、排気側吸気又は排気側排気の流量特性に基づき排気バルブ43の開閉タイミングのずれを判定している。バルブタイミング判定工程S5では、検出された排気側吸気の流量特性から流量変化率を検出している。
【0049】
排気側吸気の流量特性に基づく排気バルブ43の開閉タイミングのずれ判定処理について説明する。
図12に示すように、排気ポート41の排気バルブ43と排気ポート42の排気バルブ43との開閉タイミングが同じ場合、排気コモンポート40を流れる流体流量の流量特性は排気側吸気特性L1を示す。判定基準となる排気側吸気特性L1の流量変化率を、基準流量変化率として予め実験等により求めている。
【0050】
検出された排気側吸気の流量特性が排気側吸気特性L2の場合、所謂排気側吸気特性L2の流量変化率が前記基準流量変化率以上の場合、何れか一方の排気バルブ43の開タイミングが遅れていると判定している。検出された排気側吸気の流量特性が排気側吸気特性L3の場合、所謂排気側吸気特性L3の流量変化率が前記基準流量変化率以下の場合、何れか一方の排気バルブ43の開タイミングが進んでいると判定している。また、同様に排気側排気の流量特性に基づき排気バルブ43の閉タイミングのずれを判定することもできる。
【0051】
また、流量変化率による判定に代え、検出された流量特性の流量が最大値(ピーク値)を示すクランク角度を検出することで、排気バルブ43の開閉タイミングのずれを判定しても良い。この場合、判定基準となる排気側吸気特性L1の流量が最大値を示すクランク角度を、基準クランク角度C1として予め実験等により求めている。
【0052】
検出された排気側吸気の流量特性が排気側吸気特性L2の場合、所謂排気側吸気特性L2の流量が最大値を示すクランク角度C2がクランク角度C1以上の場合、何れか一方の排気バルブ43の開タイミングが遅れていると判定している。検出された排気側吸気の流量特性が排気側吸気特性L3の場合、所謂排気側吸気特性L3の流量が最大値を示すクランク角度C3がクランク角度C1以下の場合、何れか一方の排気バルブ43の開タイミングが進んでいると判定している。また、同様に排気側排気の流量特性に基づき排気バルブ43の閉タイミングのずれを判定することもできる。
【0053】
バルブタイミング判定工程S5の終了後、制御部7は、計測終了信号と、クランキング終了信号を出力する。計測終了信号により吸気側計測部4と排気側計測部5との計測を終了し、クランキング終了信号により外部モータ6の回転駆動を終了する。また、クランキング終了信号により電動モータ53に対するデューティ制御を解除する。
他のシリンダ24についても、前述したバルブタイミング検査を行う。
【0054】
次に、本バルブタイミング検査装置1の作用、効果について説明する。
このバルブタイミング検査装置1は、燃焼室27と、クランクシャフト25と、燃焼室27に連通された複数の吸気ポート31,32及び吸気バルブ33と、燃焼室27に連通された複数の排気ポート41,42及び排気バルブ43と、少なくとも複数の排気ポート41,42を集合したコモンポート40とを備えたエンジンEのバルブタイミング検査装置1において、吸気流量又は排気流量を計測する吸気側計測部4及び排気側計測部5と、クランクシャフト25の回転角度を検出するクランク角センサ61と、クランクシャフト25を外部から回転駆動する外部モータ6と、外部モータ6がクランクシャフト25を駆動するとき、吸気側計測部4及び排気側計測部5により計測された流量とクランク角センサ61により検出されたクランク角度との関係に基づき各バルブ33,43の開閉タイミングを判定する制御部7とを備え、制御部7は、前記計測された流量特性に基づき各バルブ33,43の開閉タイミングのずれを判定している。
【0055】
このバルブタイミング検査装置1によれば、各バルブの開閉タイミングに基づき吸排気ポート31,32,41,42を実際に流れる吸排気流量を検出するため、吸排気ポート31,32,41,42を流れる実際の吸排気流量を検出することができ、各バルブ33,43の挙動以外の外部誤差因子の影響を最小限にすることができ、正確なバルブタイミングを検出することができる。また、計測された流量特性に基づき各バルブ33,43の開閉タイミングのずれを判定するため、複数の排気ポート41,42を集合したコモンポート40を備えたエンジンEであっても、検査対象の排気バルブ43以外の排気バルブ43の昇降動作を停止させる等の検査設備を必要とせず検査設備を簡単化することができる。
【0056】
制御部7は、検出された流量特性の流量変化率又は流量が最大値を示すクランク角度に基づき各排気バルブ43の開閉タイミングのずれを判定することができる。
複数の吸気バルブ33は同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブ43は同じ開閉タイミングに設定され、制御部7は、流量特性の流量変化率が基準流量変化率以上のとき、複数の排気バルブ43のうち何れかのバルブの開閉タイミングが遅れていると判定するため、流量特性の流量変化率により、複数の排気バルブ43のうち少なくとも1つの排気バルブ43の開タイミングの遅れを検出することができる。
【0057】
複数の吸気バルブ33は同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブ43は同じ開閉タイミングに設定され、制御部7は、流量特性の流量変化率が基準流量変化率以下のとき、複数の排気バルブ43のうち何れかのバルブの開閉タイミングが進んでいると判定するため、流量特性の流量変化率により、複数の排気バルブ43のうち少なくとも1つの排気バルブ43の開タイミングの進みを検出することができる。
【0058】
複数の吸気バルブ33は同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブ43は同じ開閉タイミングに設定され、制御部7は、流量特性の流量が最大値のクランク角度が基準クランク角度以上のとき、複数の排気バルブ43のうち何れかのバルブの開閉タイミングが遅れていると判定するため、流量が最大値を示すクランク角度により、複数の排気バルブ43のうち少なくとも1つの排気バルブ43の開タイミングの遅れを検出することができる。
【0059】
複数の吸気バルブ33は同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブ43は同じ開閉タイミングに設定され、制御部7は、流量特性の流量が最大値のクランク角度が基準クランク角度以下のとき、複数の排気バルブ43のうち何れかのバルブの開閉タイミングが進んでいると判定するため、流量が最大値を示すクランク角度により、複数の排気バルブ43のうち少なくとも1つの排気バルブ43の開タイミングの進みを検出することができる。
【0060】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、計測手段として差圧式流量センサを用いた例を説明したが、少なくとも、各ポート内を流れる吸気流量又は排気流量を計測可能なセンサであれば良く、種々のセンサを適用可能である。
【0061】
2〕前記実施例においては、排気ポートの流量特性の流量変化率又は流量特性の流量が最大値のクランク角度により排気バルブの開閉タイミングを判定した例を説明したが、吸気ポートの流量特性の流量変化率又は流量特性の流量が最大値のクランク角度により吸気バルブの開閉タイミングを判定することも可能である。
【0062】
3〕前記実施例においては、吸気バルブ側のみに電動式バルブタイミング制御機構を設けた例を説明したが、吸気バルブ側と排気バルブ側の両方に電動式バルブタイミング制御機構を設けることも可能である。また、排気バルブ側のみに電動式バルブタイミング制御機構を設けても良い。
【0063】
4〕前記実施例においては、吸気バルブと排気バルブとの双方の開閉タイミングを判定する例を説明したが、排気バルブのみの流量特性を検出し排気バルブのみの開閉タイミングを判定することも可能である。排気バルブの開閉タイミングのみを検査する場合、吸気ポート開口を閉塞して、排気ポートを流れる流体流量を計測する。
【0064】
5〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、複数の排気ポートを集合したコモンポートを備えたエンジンのバルブタイミング検査装置において、外部駆動によりコモンポートを流れる流量特性に基づき排気バルブの開閉タイミングを検査したことにより、外部の誤差因子の影響を受けることなく正確なバルブタイミングのずれを検出でき、検査設備を簡単化できる。
【符号の説明】
【0066】
E エンジン
1 バルブタイミング検査装置
4 吸気側計測部
5 排気側計測部
6 外部モータ
7 制御部
25 クランクシャフト
26 ピストン
27 燃焼室
31,32 吸気ポート
33 吸気バルブ
38 吸気カムシャフト
40 排気コモンポート
41,42 排気ポート
43 排気バルブ
61 クランク角センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室と、クランクシャフトと、前記燃焼室に連通された複数の吸気ポート及び吸気バルブと、前記燃焼室に連通された複数の排気ポート及び排気バルブと、少なくとも複数の排気ポートを集合したコモンポートとを備えたエンジンのバルブタイミング検査装置において、
吸気流量又は排気流量を計測する計測手段と、
前記クランクシャフトの回転角度を検出するクランク角度検出手段と、
前記クランクシャフトを外部から回転駆動する外部駆動手段と、
前記外部駆動手段が前記クランクシャフトを駆動するとき、前記計測手段により計測された流量と前記クランク角度検出手段により検出されたクランク角度との関係に基づき前記各バルブの開閉タイミングを判定するバルブタイミング判定手段とを備え、
前記バルブタイミング判定手段は、前記計測された流量特性に基づき前記各バルブの開閉タイミングのずれを判定することを特徴とするエンジンのバルブタイミング検査装置。
【請求項2】
前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量変化率又は流量が最大値を示すクランク角度に基づき前記各バルブの開閉タイミングのずれを判定することを特徴とする請求項1に記載のエンジンのバルブタイミング検査装置。
【請求項3】
前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、
前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量変化率が所定値以上のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが遅れていると判定することを特徴とする請求項2に記載のエンジンのバルブタイミング検査装置。
【請求項4】
前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、
前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量変化率が所定値以下のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが進んでいると判定することを特徴とする請求項2に記載のエンジンのバルブタイミング検査装置。
【請求項5】
前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、
前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量が最大値のクランク角度が所定値以上のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが遅れていると判定することを特徴とする請求項2に記載のエンジンのバルブタイミング検査装置。
【請求項6】
前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、
前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量が最大値のクランク角度が所定値以下のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが進んでいると判定することを特徴とする請求項2に記載のエンジンのバルブタイミング検査装置。
【請求項1】
燃焼室と、クランクシャフトと、前記燃焼室に連通された複数の吸気ポート及び吸気バルブと、前記燃焼室に連通された複数の排気ポート及び排気バルブと、少なくとも複数の排気ポートを集合したコモンポートとを備えたエンジンのバルブタイミング検査装置において、
吸気流量又は排気流量を計測する計測手段と、
前記クランクシャフトの回転角度を検出するクランク角度検出手段と、
前記クランクシャフトを外部から回転駆動する外部駆動手段と、
前記外部駆動手段が前記クランクシャフトを駆動するとき、前記計測手段により計測された流量と前記クランク角度検出手段により検出されたクランク角度との関係に基づき前記各バルブの開閉タイミングを判定するバルブタイミング判定手段とを備え、
前記バルブタイミング判定手段は、前記計測された流量特性に基づき前記各バルブの開閉タイミングのずれを判定することを特徴とするエンジンのバルブタイミング検査装置。
【請求項2】
前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量変化率又は流量が最大値を示すクランク角度に基づき前記各バルブの開閉タイミングのずれを判定することを特徴とする請求項1に記載のエンジンのバルブタイミング検査装置。
【請求項3】
前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、
前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量変化率が所定値以上のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが遅れていると判定することを特徴とする請求項2に記載のエンジンのバルブタイミング検査装置。
【請求項4】
前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、
前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量変化率が所定値以下のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが進んでいると判定することを特徴とする請求項2に記載のエンジンのバルブタイミング検査装置。
【請求項5】
前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、
前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量が最大値のクランク角度が所定値以上のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが遅れていると判定することを特徴とする請求項2に記載のエンジンのバルブタイミング検査装置。
【請求項6】
前記複数の吸気バルブは同じ開閉タイミングに設定され且つ複数の排気バルブは同じ開閉タイミングに設定され、
前記バルブタイミング判定手段は、前記流量特性の流量が最大値のクランク角度が所定値以下のとき、前記複数の排気バルブのうち何れかのバルブの開閉タイミングが進んでいると判定することを特徴とする請求項2に記載のエンジンのバルブタイミング検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−220681(P2011−220681A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86276(P2010−86276)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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