説明

エンジンの制御装置

【課題】エンジンの制御装置に関し、簡素な構成でエンジンの運転状態の安定性を向上させつつ燃費を改善する。
【解決手段】車両に搭載されたエンジンへの要求トルクを設定する設定手段と、外部負荷の変動を検出する検出手段22〜25と、前記要求トルクを補正する補正手段28〜32とを備える。また、補正手段28〜32で補正された前記要求トルクに基づき前記エンジンの目標トルクを演算する目標トルク演算手段と、前記エンジンの出力トルクを前記目標トルクに近づけるように、前記エンジンに導入される空気量を制御する制御手段と、前記エンジンの点火時期を検出する点火時期検出手段とを備える。
補正手段28〜32が、外部負荷の変動に対応するためのトルク増分を前記要求トルクに加算して増分補正要求トルクを求め、前記点火時期の所定の基準値からのずれ量に応じて前記増分補正要求トルクを増減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンを制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたエンジンの制御手法の一つとして、エンジンに要求されるトルクの大きさを基準として吸気量や燃料噴射量,点火時期等を制御するトルクベース(トルクディマンド)制御がある。トルクベース制御では、例えばアクセル開度やエンジン回転数等に基づいてエンジントルクの目標値が演算され、この目標値のトルクが得られるようにエンジンが制御される。また、自動変速機やオートクルーズ装置,車両安定装置といった外部制御システムを搭載した車両では、各外部制御システムからエンジンへの出力要求がトルクに換算されてエンジンECU(エンジン電子制御装置)内で一元化され、エンジンのトルク挙動が包括的に制御される。
【0003】
ところで、エンジンへの出力要求は、車両走行時だけでなく停車時にも変動しうる。例えば、自動変速機のシフトレバー操作や空調装置,各種電装品といった外部負荷装置の起動操作が入力されると、それに伴ってエンジンに作用する負荷が増大するため、エンジンの出力を増加させる必要が生じる。特に、アイドル運転時には、走行時と比較してエンジン回転数が低速であって外部負荷の影響を受けやすく、エンジンの運転状態が不安定になりやすい。そこで、アイドル運転時の制御として、エンジンに作用する外部負荷の大きさに応じて点火時期や吸気量を変更することでエンジントルクを調整し、エンジン回転数を所定のアイドル回転数に維持する技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、点火時期を制御する点火時期フィードバック制御と吸気量を制御する空気量補正制御とを用いて、アイドル運転時のエンジン回転数をアイドル回転数に維持する技術が開示されている。この技術では、点火時期フィードバック制御及び空気量補正制御のトルク調整幅の相違に着目して、外部負荷要求が検知された時点での点火時期に基づき、何れか一方の制御を実施している。これにより、エンジン回転数をできるだけ一定に保つことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2008−297946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エンジンに作用する外部負荷の大きさは、外部負荷装置の作動状態に応じて変動する。しかしながら、特許文献1のような従来技術では、このような外部負荷の変動の影響が考慮されていないため、実際のエンジントルクを外部負荷の要求に追従させることができない場合がある。特に、外部負荷の影響を受けやすいアイドル運転時には、このようなトルク落差が顕著となり、アイドル回転の安定性を確保することが難しいという課題がある。
このような課題に対し、外部負荷の大小に関わらず常に点火時期を進角させ、あるいは空気量を増大させることによって安定性を確保することも考えられる。しかし、起こりうる全ての負荷変動をカバーできるような大きなエンジントルクを出力させると、エネルギーロスが増大して燃費が悪化する。
【0007】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、簡素な構成でエンジンの運転状態の安定性を向上させつつ燃費を改善することである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)ここで開示するエンジンの制御装置は、車両に搭載されたエンジンに対して要求トルクを設定する設定手段と、前記エンジンに外部負荷を与える外部負荷装置の作動状態に基づいて、前記外部負荷の変動を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に応じて、前記設定手段で設定された前記要求トルクを補正する補正手段とを備える。
また、前記補正手段で補正された前記要求トルクに基づき、前記エンジンの目標トルクを演算する目標トルク演算手段と、前記エンジンの出力トルクを前記目標トルク演算手段で演算された前記目標トルクに近づけるように、前記エンジンに導入される空気量を制御する制御手段と、前記エンジンの点火時期を検出する点火時期検出手段とを備える。
さらに、前記補正手段が、前記検出手段で前記外部負荷の変動が検出された時に、前記変動に対応するためのトルク増分を前記設定手段で設定された前記要求トルクに加算して増分補正要求トルクを求め、前記点火時期検出手段で検出された前記点火時期の所定の基準値からのずれ量に応じて、前記増分補正要求トルクを増減させる。
前記外部負荷装置には、例えば前記車両に搭載された変速装置,空調装置,各種電装品,油圧パワーステアリング装置等が含まれる。また、外部負荷装置の作動状態(例えば、主電源,メインスイッチのオン/オフ状態)を検出するためのセンサを設け、前記センサでの検出情報に基づいて前記外部負荷の変動を検出することが考えられる。
【0009】
(2)また、開示のエンジンの制御装置は、前記所定の基準値として第一基準値が設定されており、
前記補正手段が、前記点火時期検出手段で検出された前記点火時期の前記第一基準値から進角側へのずれ量に応じて、前記増分補正要求トルクを増大させる
(3)また、開示のエンジンの制御装置は、前記所定の基準値として前記第一基準値よりも遅角側の第二基準値が設定されており、前記補正手段が、前記点火時期検出手段で検出された前記点火時期の前記第二基準値から遅角側へのずれ量に応じて、前記増分補正要求トルクを減少させる。
【0010】
(4)また、開示のエンジンの制御装置は、前記補正手段が、前記点火時期検出手段で検出された前記点火時期が前記第一基準値から前記第二基準値までの間にあるときに、前記増分補正要求トルクを保持する。
(5)また、開示のエンジンの制御装置は、前記制御手段が、前記エンジンに導入される空気量を増大させるとともに、前記点火時期をリタードさせて前記増分補正要求トルクを相殺する。
【0011】
(6)また、開示のエンジンの制御装置は、前記車両の運転者によって要求されるアクセル要求トルクを演算する第一演算手段と、前記第一演算手段で演算された前記アクセル要求トルクに基づき、点火時期制御用の第一目標トルク及び吸気量制御用の第二目標トルクのそれぞれを演算する第二演算手段とを備える。この場合、前記目標トルク演算手段が、前記第二演算手段で演算された前記第二目標トルクに対し前記要求トルクを加算して、前記目標トルクを演算する。
【0012】
(7)また、開示のエンジンの制御装置は、前記エンジンがアイドル運転状態にあるか否かを検出するアイドル検出手段を備える。この場合、前記補正手段が、前記アイドル検出手段で前記アイドル運転状態が検出され、かつ、前記検出手段で前記変動が検出された場合に、前記要求トルクを増大させる。
(8)また、開示のエンジンの制御装置は、前記補正手段が、前記アイドル検出手段で前記アイドル運転状態が検出されず、又は、前記検出手段で前記変動が検出されない場合に、前記要求トルクを減少させる。
【0013】
(9)また、開示のエンジンの制御装置は、前記補正手段が、前記外部負荷装置の種類に応じて前記要求トルクを補正するものであり、前記外部負荷装置が前記車両に搭載された油圧パワーステアリング装置である場合は、当該油圧パワーステアリング装置が操作中であるときに、前記増分補正要求トルクを増減させる。
つまり、油圧パワーステアリング装置の作動時には、操舵が中立位置に戻るまで要求トルクの補正を継続する。
【0014】
(10)また、開示のエンジンの制御装置は、前記補正手段が、前記外部負荷装置が前記油圧パワーステアリング装置以外の負荷装置である場合は、前記検出手段で前記変動が検出されてからの経過時間に基づいて前記増分補正要求トルクを増減させる。
例えば、変速装置,空調装置,各種電装品による負荷変動が検出された場合には、その変動が検出された直後に要求トルクを大きく補正することが考えられる。また、要求トルクを補正するのは、その変動が検出されてから所定時間が経過するまでの間とすることが考えられる。
【発明の効果】
【0015】
開示のエンジンの制御装置によれば、外部負荷の変動に応じて要求トルクが増分補正され、さらに点火時期に応じて増分補正された要求トルクが増減されるため、過剰に目標トルクが大きく設定されるような事態を防止しつつ適正な値の目標トルクを設定することができ、エンジンの運転状態の安定性を向上させつつ燃費を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係るエンジンの制御装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】本制御装置の要求トルク演算部を例示したブロック図である。
【図3】本制御装置の目標トルク演算部での制御プロセスを例示したブロック図である。
【図4】本制御装置の点火制御部での制御プロセスを例示したブロック図である。
【図5】本制御装置に係る実充填効率Ec,点火時期及びトルクの対応マップを例示するものである。
【図6】本制御装置に係る点火指標K及びリタード量Rの対応マップを例示するものである。
【図7】本制御装置の加算トルク演算部の制御プロセスを例示したブロック図である。
【図8】本制御装置の加算トルク演算部での制御内容を例示したフローチャートである。
【図9】本制御装置の制御作用を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照してエンジンの制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態は、あくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
[1.装置構成]
本実施形態の制御装置は、図1に示す車載のエンジン10に適用される。ここでは、多気筒四サイクル型のエンジン10に設けられた複数のシリンダのうち、一つのシリンダを示す。シリンダの頂部には点火プラグ13がその先端を燃焼室側に突出させた状態で設けられる。また、燃焼室のシリンダヘッド側の頂面には、吸気通路11及び排気通路12が接続される。
【0018】
吸気通路11側にはインジェクタ14,ETV15(Electric Throttle Valve)及びエアフローセンサ7(AFS,Air Flow Sensor)が設けられる。インジェクタ14は吸気通路11内に燃料を噴射するものであり、ETV15はその開度を変更することでシリンダ内に導入される空気の吸気量を変更するための電子制御式スロットルバルブである。また、エアフローセンサ7はシリンダ内への吸気量を検出するセンサであり、ここではETV15を通過する吸気流量Qが検出される。
【0019】
このエンジン10には、クランクシャフトの角度θCRを検出するクランク角度センサ6(エンジン回転数検出手段)が設けられる。クランク角度センサ6で検出されたクランクシャフトの角度θCR及びエアフローセンサ7で検出された吸気流量Qは、後述するエンジンECU1に伝達される。なお、単位時間あたりの角度θCRの変化量からエンジン回転数Neを把握することができる。したがって、クランク角度センサ6はエンジン10のエンジン回転数Neを検出する手段としての機能を持つ。エンジン回転数Neは、クランク角度センサ6で検出されたクランクシャフトの角度θCRに基づいてエンジンECU1が演算する構成としてもよいし、クランク角度センサ6の内部で演算する構成としてもよい。
【0020】
エンジン10を搭載した車両の任意の位置には、アクセルペダルの踏み込み量に対応する操作量θACを検出するアクセルペダルセンサ5(APS,Acceleration pedal Position Sensor,アクセル操作量検出手段)と、ステアリングホイールの操作角度(ステアリング角度)θ_SASを検出するステアリング角度センサ8(SAS,Steering Angle Sensor,ステアリング角度検出手段)と、車速Vを検出する車速センサ9(車速検出手段)が設けられる。これらの各センサで検出されたアクセルペダルの操作量θAC,ステアリング角度θ_SAS及び車速Vは、エンジンECU1に伝達される。
【0021】
なお、アクセルペダルの踏み込み操作量θACは運転者の加速要求に対応するパラメータであり、言い換えるとエンジン10の負荷に相関するパラメータである。また、本実施形態の車両のステアリングホイールは油圧式パワーステアリング装置による操舵力がアシストされるものであり、ステアリング角度θ_SASが大きいほどエンジン10への負荷が増大する。したがって、ステアリング角度θ_SASもエンジン10の負荷に相関するパラメータである。
【0022】
この車両には電子制御装置として、エンジンECU1(Engine - Electronic Control Unit,エンジン電子制御装置),CVT-ECU16(Continuously Variable Transmission ECU),エアコンECU17及び電装品ECU18が設けられる。これらの電子制御装置は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車両に設けられたCAN,FlexRay等の通信ラインを介して互いに接続される。
【0023】
CVT-ECU16は、図示しないCVT装置(無段変速装置)の動作を制御するものであり、エアコンECU17は、図示しないエアコン装置(空調装置)の動作を制御するものである。また、電装品ECU18は、車載投光装置や各種照明装置,パワーウィンドウ装置,ドア施錠装置といったボディ系の各種電装品の動作を制御するものである。
【0024】
以下、これらのエンジンECU1以外の電子制御装置のことを外部制御システムとも呼び、外部制御システムによって制御される装置のことを外部負荷装置とも呼ぶ。外部負荷装置の作動状態等は、エンジン10の運転状態に関わらず変化しうる。上記の各外部制御システムは、外部負荷装置からエンジン10に要求されるトルクの大きさを随時演算し、エンジンECU1に伝達する。また、外部制御システムがエンジン10に要求するトルクのことを外部要求トルクと呼ぶ。なお、外部要求トルクは、CVT-ECU16,エアコンECU17といった個々の外部制御システムで演算された後にエンジンECU1に伝達されることとしてもよいし、あるいは個々の外部制御システムで収集された情報に基づいてエンジンECU1で演算されることとしてもよい。
【0025】
エンジンECU1は、エンジン10に関する点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを制御する電子制御装置である。ここでは、トルクベース制御によって実際のエンジン10のトルク挙動が管理されている。トルクベース制御とは、エンジン10に要求されるトルクの大きさを基準として吸気量や燃料噴射量,点火時期等を制御するものである。前述の点火プラグ13,インジェクタ14及びETV15の動作は、トルクベース制御によって調整される。この制御では、例えば運転者からの出力要求や外部制御システムからの出力要求がトルクに換算され、それらのトルクが総合的に判断されてエンジントルクの目標値が演算され、この目標値のトルクが得られるように吸気量や燃料噴射量,点火時期等が制御される。
【0026】
また、エンジンECU1は、外部負荷装置からエンジン10に与えられる負荷の変動を検出して、その負荷変動に対応するためのトルク増分を加味したトルクベース制御を実施する。ここでいう負荷の変動とは、例えばCVT装置のシフトレバー操作やエアコン装置,油圧式パワーステアリング装置,各種電装品の起動操作に伴って発生する過渡的な負荷変動を意味する。
【0027】
一般に、外部負荷装置からエンジン10に与えられる負荷の大きさは、定常的には変動が小さく、急変することは少ない。しかし、シフトレバー操作や各種電装品の起動操作の直後といった過渡状態では、負荷が安定化するまでの間に一時的に急変する可能性がある。そのため、外部制御システムからの出力要求をトルクに換算したものだけでは負荷変動を抑制することができず、エンジンの運転状態が不安定になる場合がある。上記のトルク増分とは、このような負荷変動に対応するためのトルクの加算分である。
【0028】
本実施形態のエンジンECU1で実施されるトルクベース制御には、アイドルフィードバック制御及び燃料カット制御が含まれている。アイドルフィードバック制御は、所定のアイドル条件(例えば、車速Vやアクセルペダルの踏み込み操作量θACに関する条件)が成立したエンジン10のアイドル運転状態時に、実際のエンジン回転数Neを目標アイドル回転数に近づけるとともに、その目標アイドル回転数でのエンジン回転を維持するフィードバック制御である。また、燃料カット制御は、所定の燃焼カット条件(例えば、エンジン回転数Neやアクセルペダルの踏み込み操作量θACに関する条件)が成立したときに、燃料の噴射を停止させる制御である。
【0029】
[2.制御構成]
エンジンECU1には、要求トルク演算部2,目標トルク演算部3及び制御部4が設けられる。
要求トルク演算部2(設定手段)は、運転者から要求されるトルクや外部制御システムから要求されるトルクを集約し、アクセル要求トルクPi_APSと、制御操作に対する応答性が異なる二種類の要求トルクと、アイドル要求トルクPi_NeFBとを演算し、これらをエンジン10への要求トルクとして設定するものである。
【0030】
アイドル要求トルクPi_NeFBは、エンジン10の運転状態をアイドル運転状態に維持するのに要求されるトルク等を含むトルクである。また、アクセル要求トルクPi_APSは、車両の定常運転時にドライバに要求されているトルク等を含むトルクである。ここでは、アクセル要求トルクPi_APSに基づいて、点火制御用要求トルクPi_EXT_SAと吸気制御用要求トルクPi_EXTとが演算される。
【0031】
前者のトルクが用いられる点火制御とは、いわゆる高応答トルク制御であり、例えば点火時期操作や燃料噴射量操作によってトルクを制御するものである。また、後者のトルクが用いられる吸気制御は、いわゆる低応答トルク制御であり、例えば電子制御スロットルの操作に代表される吸入空気量操作によってトルクを制御するものである。一般に、点火制御はトルクの調整代が小さいものの応答性が高く、吸気制御は応答性が低いもののトルクの調整代が大きい。要求トルク演算部2で演算された上記のアイドル要求トルクPi_NeFB、アクセル要求トルクPi_APS、及び二種類の要求トルクは、目標トルク演算部3に伝達される。
【0032】
目標トルク演算部3(目標トルク演算手段)は、要求トルク演算部2で演算されたアイドル要求トルクPi_NeFB、アクセル要求トルクPi_APS、または点火制御用要求トルクPi_EXT_SA及び吸気制御用要求トルクPi_EXTに基づき、二種類の制御目標としての目標トルクを演算するものである。ここでは、点火制御用目標トルクPi_TGT(第一目標トルク)と、吸気制御用目標トルクPi_ETV_STD(第二目標トルク)とが演算される。ここで演算された点火制御用目標トルクPi_TGT及び吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDは、制御部4に伝達される。
【0033】
制御部4は、目標トルク演算部3で演算された二種類の目標トルクに基づいて吸気量(実充填効率Ec)及び点火プラグ13での点火時期をフィードバック制御するものである。ETV15の開度は、吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDに基づいて制御され、点火プラグ13での点火時期は、点火制御用目標トルクPi_TGTに基づいて制御される。
なお、これらの要求トルク演算部2,目標トルク演算部3及び制御部4の各機能は、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、あるいはソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0034】
[2−1.要求トルク演算部]
図2に示すように、要求トルク演算部2には、アイドル要求トルク設定部2a,アクセル要求トルク演算部2b,最終要求トルク演算部2c及び加算トルク演算部2dが設けられる。
アイドル要求トルク設定部2aは、エンジン10がアイドル運転状態である時のエンジン回転数Neの目標値として、目標アイドル回転数を設定するものである。この目標アイドル回転数は、例えばエアコン装置の負荷やエンジン冷却水温といった外部負荷装置の状態に応じて適宜設定される。また、アイドル要求トルク設定部2aは、設定された目標アイドル回転数に対応するトルク(エンジン回転数Neを目標アイドル回転数に維持するために要するトルク)をアイドル要求トルクPi_NeFBとして設定する。ここで設定されたアイドル要求トルクPi_NeFBは、目標トルク演算部3に伝達される。
【0035】
なお、図中の記号Piは図示平均有効圧Piを意味しており、ここでは図示平均有効圧Piを用いてトルクの大きさを表現している。本実施形態では、エンジン10で生じる力のモーメントのことだけでなく、エンジン10のピストンに作用する平均有効圧(例えば、図示平均有効圧Piや正味平均有効圧Pe)で表現されたトルク相当量(トルクに相当する圧力)のことも便宜的にトルクと呼ぶ。
【0036】
アクセル要求トルク演算部2b(第一演算手段)は、クランクシャフトの角度θCRに基づいて得られるエンジン回転数Neやアクセルペダルの操作量θAC等に基づき、アクセル要求トルクPi_APSを演算するものである。アクセル要求トルクPi_APSは、車両の定常運転時におけるエンジンの出力目標値のベースとなるパラメータである。
【0037】
アイドル要求トルク設定部2aで演算されるアイドル要求トルクPi_NeFBとアクセル要求トルク演算部2bで演算されるアクセル要求トルクPi_APSとのそれぞれには、外部負荷要求トルクPi_AUXが含まれている。外部負荷要求トルクPi_AUXとは、外部負荷装置の駆動によってエンジン10に与えられる定常的な負荷に対応するトルクである。この外部負荷要求トルクPi_AUXの具体的な値は、例えば外部負荷装置の種類や作動状態に応じて予め設定された所定値とすることが考えられる。あるいは、外部負荷装置の種類の区別なく一律の固定値として記憶させておいてもよい。
【0038】
最終要求トルク演算部2c(第二演算手段)は、アクセル要求トルク演算部2bで演算されたアクセル要求トルクPi_APSをベースとして、二系統の演算プロセスを実行するものである。一方のプロセスは、図2中に黒矢印で示すように、点火制御用要求トルクPi_EXT_SAを演算するプロセスであり、他方のプロセスは、図2中に白抜き矢印で示すように、吸気制御用要求トルクPi_EXTを演算するプロセスである。これらの点火制御用要求トルクPi_EXT_SA及び吸気制御用要求トルクPi_EXTは、互いに独立して最終要求トルク演算部2c内で演算される。それぞれの要求トルクは、車両の運転者の意図や車両安定性,運転性等を考慮して集約されたトルクであり、ともに目標トルク演算部3に伝達される。
【0039】
加算トルク演算部2dは、上記の外部負荷要求トルクPi_AUXの補正量、すなわち、外部負荷の変動の影響を考慮して加算されるトルク増分を演算するものである。ここでは、外部負荷の変動に対応するためのトルク増分(トルクの余裕分)を加算トルクPi_ADD(増分補正要求トルク)として演算する。なお、加算トルク演算部2dの具体的なブロック構成については後述する。
加算トルクPi_ADDは、例えばCVT装置のシフトレバー操作,ステアリングホイールの操舵操作,エアコン装置や各種電装品の起動操作等に伴って発生する過渡的な負荷の変動に対応した大きさのトルクであり、その値は外部負荷装置の種類や作動状態に応じて変更される。ここで演算された加算トルクPi_ADDは、目標トルク演算部3に伝達される。
【0040】
[2−2.目標トルク演算部]
目標トルク演算部3での演算プロセスを図3に例示する。目標トルク演算部3には、要求トルク演算部2で演算又は設定されたアイドル要求トルクPi_NeFB,アクセル要求トルクPi_APS, 点火制御用要求トルクPi_EXT_SA,吸気制御用要求トルクPi_EXT及び加算トルクPi_ADDが入力される。この目標トルク演算部3には、第一選択部3a,第二選択部3b,燃料カット部3c,吸気遅れ補正部3d及び外部負荷補正部3eが設けられる。
【0041】
第一選択部3aは、点火制御用要求トルクPi_EXT_SA,アクセル要求トルクPi_APS及びアイドル要求トルクPi_NeFBのうちの何れか一つを点火制御用のトルクの目標値として選択するものである。また、第二選択部3bは、吸気制御用要求トルクPi_EXT,アクセル要求トルクPi_APS及びアイドル要求トルクPi_NeFBのうちの何れか一つを吸気制御用のトルクの目標値として選択するものである。
第一選択部3a及び第二選択部3bにおけるトルクの目標値の選択条件としては、例えば外部制御システムからのトルクの要求の有無や、後述するアイドル条件判定部21での判定結果(エンジン10のアイドル運転の要否)等が考えられる。第一選択部3aで選択されたトルク値は燃料カット部3cに伝達され、第二選択部3bで選択されたトルク値は吸気遅れ補正部3dに伝達される。
【0042】
燃料カット部3cは、燃料カット制御の実施時に点火制御用目標トルクPi_TGTをゼロに設定するものである。燃料カット制御の実施条件は、図示しない燃料カット制御部において、例えばエンジン回転数Neやアクセルペダルの操作量θAC,エンジン冷却水温等に基づいて随時判定される。また、燃料カット部3cは、燃料カット制御の非実施時には、第一選択部3aで選択されたトルク値をそのまま点火制御用目標トルクPi_TGTとして演算する。ここで演算された点火制御用目標トルクPi_TGTは制御部4に伝達される。
【0043】
吸気遅れ補正部3dは、ETV15からエンジン10の気筒に導入される空気の吸気遅れに応じた補正演算を行うものである。ここでは、エンジン10やETV15の吸気特性に基づき、吸気遅れを考慮したトルク値が演算される。なお、具体的な吸気遅れ補正部3dでの補正演算手法は、ETV15の制御態様に応じて種々考えられる。例えば、第二選択部3bで選択されたトルク値に対して、実際の吸気遅れを模擬した一次遅れ処理,二次遅れ処理を施すことによって、実現したいトルク変動の軌跡を生成してもよい。ここで演算されたトルク値は外部負荷補正部3eに伝達される。
【0044】
外部負荷補正部3eは、入力されたトルク値に加算トルクPi_ADDを加算して吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDを演算するものである。つまりここでは、吸気制御用のトルク値に対して外部負荷に応じた大きさのトルクが加算される。ここで演算された吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDは、制御部4に伝達される。
【0045】
[2−3.制御部]
図1に示すように、制御部4には点火制御部4a(点火時期検出手段)及び吸気制御部4h(制御手段)が設けられる。点火制御部4aは点火制御用目標トルクPi_TGTに基づいて点火制御を実施するものであり、吸気制御部4hは吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDに基づいて吸気制御を実施するものである。
【0046】
吸気制御部4hは、吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDに基づいてETV15の開度を調整する吸気制御を実施する。例えば、吸気制御部4bは、吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDを得るために必要な気筒内の空気量を演算し、その空気量が制御対象の気筒内に導入されるようにETV15の開度を制御する。
図3に示すように、目標トルク演算部3では、加算トルクPi_ADDが吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDの演算プロセスのみに用いられ、点火制御用目標トルクPi_TGTの演算プロセスには用いられない。したがって、エンジン10に導入される空気量は外部負荷に応じて補正される反面、点火プラグ13での点火時期はこのような補正が加えられていない点火制御用目標トルクPi_TGTに基づいて制御される。
【0047】
点火制御部4aでの演算プロセスを図4に例示する。点火制御部4aには、目標トルク演算部3で演算された点火制御用目標トルクPi_TGT,エアフローセンサ7で検出された吸気流量Q及びエンジン回転数Neが入力される。また、点火制御部4aには、実充填効率演算部4b,MBT演算部4c,実トルク演算部4d,点火指標演算部4e,リタード量演算部4f及び減算部4gが設けられる。
【0048】
実充填効率演算部4bは、入力された吸気流量Qに基づき、制御対象の気筒の実際の充填効率を実充填効率Ecとして演算するものである。ここでは、制御対象の気筒について、直前の一回の吸気行程(ピストンが上死点から下死点に移動するまでの一行程)の間にエアフローセンサ7で検出された吸気流量Qの合計から、制御対象の気筒に実際に吸入された空気量が演算され、実充填効率Ecが演算される。ここで演算された実充填効率Ecは、MBT演算部4c及び実トルク演算部4dに伝達される。
【0049】
MBT演算部4cは、実充填効率演算部4bで演算された実充填効率Ec及びエンジン回転数Neに基づき、最大のトルクを発生させる点火時期(MBT,Minimum spark advance for Best Torque)をSA_MBTとして演算するものである。MBT演算部4cは、例えば図5に示すように、実充填効率Ec,点火時期及び理論空燃比で発生するトルクの対応関係をエンジン回転数Ne毎のマップとして記憶しており、これを用いて点火時期SA_MBTを演算する。ここで演算された点火時期SA_MBTは減算部4gに伝達される。なお、図5のマップでは、実充填効率Ecが所定値Ec10であるときの点火時期SA_MBTがT10であり、実充填効率Ecが所定値Ec20であるときの点火時期SA_MBTがT20である。
【0050】
実トルク演算部4dは、実充填効率演算部4bで演算された実充填効率Ecにて、制御対象の気筒で生じうる最大のトルク(すなわち、実充填効率Ecで点火時期をMBTに設定した場合に発生するトルク)を実トルクPi_ACT_MBTとして演算するものである。ここでいう実トルクPi_ACT_MBTは、図5中に示された各実充填効率Ecでのトルク変動グラフの最大値に対応する。実トルク演算部4dは、例えばMBT演算部4cに記憶されたこのようなマップを用いて実トルクPi_ACT_MBTを演算する。図5のグラフでは、実充填効率Ecが所定値Ec10であるときの実トルクPi_ACT_MBTがTq10であり、実充填効率Ecが所定値Ec20であるときの実トルクPi_ACT_MBTがTq30である。ここで演算された実トルクPi_ACT_MBTは、点火指標演算部4eに伝達される。
【0051】
なお、図5のマップは、同一の燃焼条件(例えば、エンジン回転数及び空燃比が一定の条件)において一定の実充填効率Ecで点火時期のみを変化させた場合に生成されるトルクの大きさをグラフ化するとともに、異なる実充填効率Ecでのグラフを重ねて表示したものである。一定の実充填効率Ecでは、横軸の点火時期の変化に対して縦軸のトルクが上に凸の曲線となる。このグラフの頂点の座標に対応する点火時期がMBTであり、頂点の座標に対応するトルクが実トルクPi_ACT_MBTである。また、実充填効率Ecが増加すると、気筒内に導入される空気量の増大によりトルクが増大するとともに燃焼速度(気筒内での火炎伝播速度)が上昇し、MBTは遅角方向へと移動する。
【0052】
ここで、実充填効率Ecが所定値Ec10である場合にMBTから所定値αだけ点火時期をリタードさせた際に得られるトルクをTq20とおき、実充填効率Ecが所定値Ec20である場合にMBTから所定値αだけ点火時期をリタードさせた際に得られるトルクをTq40とおくと、これらのトルク間には、(Tq20)/(Tq10) = (Tq40)/(Tq30) の関係が成立する。実トルク演算部4dは、このような特性を持つマップを用いて実充填効率Ecから実トルクPi_ACT_MBTを演算する。
【0053】
点火指標演算部4eは、目標トルク演算部3で演算された点火制御用目標トルクPi_TGTと実トルク演算部4dで演算された実トルクPi_ACT_MBTとの比K〔K=(Pi_TGT)/(Pi_ACT_MBT),点火指標 〕を演算するものである。ここでは、実際にエアフローセンサ7で検出された吸気流量Qに基づいて生成されうるトルクの大きさに対してどの程度の割合で点火制御用目標トルクPi_TGTが必要なのかが演算される。なお、本実施形態の点火指標演算部4eでは、点火制御によって実トルクPi_ACT_MBTを超えるような過剰なトルクが生じないようにすべく、比Kの値が1以下の範囲でクリップされる。ここで演算された比Kはリタード量演算部4f及び前述の加算トルク演算部2dに伝達される。
【0054】
リタード量演算部4fは、MBTを基準として、比Kに応じた大きさのリタード量R(点火時期の遅角量)を演算するものである。リタード量演算部4fは、例えば図6に示すように、比Kとリタード量Rとの対応関係をエンジン回転数Ne毎のマップとして記憶しており、このマップを用いてリタード量Rを演算する。なお、ここでいうリタード量RはMBTを基準としたものであり、比K(0≦K≦1)が1に近づくほどリタード量Rがゼロに近づく特性を持つ。また、リタード量Rは、例えば図6中に破線で示すように、エンジン回転数Neが大きいほど増大する特性を持つ。ここで演算されたリタード量Rは、減算部4gに伝達される。
【0055】
なお、リタード量RはMBTを基準とした点火時期のずれ(時刻の相違量、ずれ時間、あるいは、これに対応する角度であってクランクシャフト回転角に対する位相のシフト量)の大きさを表す値である。また、図6に示すように、リタード量Rは比Kの値に対応して一意に定められる。したがって、比KもMBTを基準とした点火時期の「ずれ量(進角量又は遅角量)」に対応する値である。本実施形態では、点火指標演算部4eで演算された比Kがエンジン10での実際の点火時期に対応するパラメータとして加算トルク演算部2dに伝達され、加算トルクPi_ADDの演算に用いられる。
【0056】
減算部4gは、リタード量演算部4fで演算されたリタード量Rに基づいて実行点火時期SA_ACTを演算するものである。ここでは、例えばMBT演算部4cで演算された点火時期SA_MBTからリタード量Rが減算され、実行点火時期SA_ACTが演算される。ここで演算された実行点火時期SA_ACTは、点火制御用目標トルクPi_TGTに対応するトルクを生じさせる点火時期である。
点火制御部4aは、制御対象の気筒に設けられた点火プラグ13を実行点火時期SA_ACTに点火させる点火制御を実施する。
【0057】
[2−4.加算トルク演算部]
加算トルク演算部2dのブロック構成を図7に示す。加算トルク演算部2dには、アイドル条件判定部21,条件判定部26,タイマー部27と、外部負荷の変動を検出する検出手段としてのP/S(Power assisted Steering)負荷判定部22,T/M(Transmission)負荷印加判定部23,A/C(Air Conditioning)負荷印加判定部24及び電気負荷印加判定部25が設けられる。また、加算トルクPi_ADDの補正演算に係る第一補正量設定部28,第二補正量設定部29,第三補正量設定部30,補正量保持設定部31及び第四補正量設定部32が設けられる。
【0058】
この加算トルク演算部2dには、アクセルペダルセンサ5で検出された操作量θAC,ステアリング角度センサ8で検出された操作角度θ_SAS,車速センサ9で検出された車速Vのほか、外部制御システムから伝達される外部負荷装置の作動信号,点火指標演算部4eで演算された比Kが入力される。以下、比Kのことを点火指標Kとも呼ぶ。
【0059】
アイドル条件判定部21(アイドル検出手段)は、アクセルペダルの操作量θAC及び車速Vに基づいて、エンジン10のアイドル運転状態を検出するものである。ここでは、車速Vが所定速度V1以下(例えば、10[km/h])であり、かつ、アクセルペダルの踏み込みが検出されない(操作量θACが0である、または、操作量θACが微小な所定角度θAC1以下である)場合にアイドル運転状態であると判定し、そうでない場合にはアイドル運転状態ではないと判定する。上記のアイドル運転状態の判定条件のことを条件Aと呼ぶ。
【0060】
P/S負荷判定部22(検出手段)は、操作角度θ_SASに基づいて油圧式パワーステアリング装置による外部負荷の変動を検出するものである。例えば、操作角度θ_SASが0[deg]よりも大きい場合(すなわち、P/S負荷がある場合)に、ステアリング操作に係る外部負荷が変動する可能性があると判定し、操作角度θ_SASが0[deg]である場合にステアリング操作に係る外部負荷の変動がないと判定する。ここでの判定結果は、条件判定部26に伝達される。なお、ここでは少なくともステアリングホイールが中立位置にあるか否かを判定できればよい。したがって、ステアリング角度センサ8の代わりに、ステアリングホイールの操舵の有無を検出するセンサやスイッチ等を用いてもよい。
【0061】
T/M負荷印加判定部23(検出手段)は、CVT-ECU16から伝達されるCVT装置の作動状態に関する情報に基づいて外部負荷の変動を検出するものである。ここでは例えば、CVT装置のシフトレバーが非走行レンジから走行レンジへと切り換えられた場合に、外部負荷が変動する可能性があると判定する。なお、CVT-ECU16から伝達される情報の代わりに、シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサで検出されたシフト位置情報を用いて上記の判定を行う構成としてもよい。ここでの判定結果は、タイマー部27に伝達される。
【0062】
A/C負荷印加判定部24(検出手段)は、エアコンECU17から伝達されるエアコン装置の作動状態に関する情報に基づいて外部負荷の変動を検出するものである。ここでは例えば、エアコン装置の主電源がオフからオンに操作された場合に、外部負荷が変動する可能性があると判定する。ここでの判定結果は、タイマー部27に伝達される。同様に、電気負荷印加判定部25(検出手段)は、各種電装品の作動状態に関する情報に基づいて外部負荷の変動を検出するものであり、各種電装品のメインスイッチがオフからオンに操作された場合に、外部負荷が変動する可能性があると判定する。ここでの判定結果も、タイマー部27に伝達される。
【0063】
タイマー部27は、P/S負荷判定部22,T/M負荷印加判定部23及びA/C負荷印加判定部24のうちの何れかで外部負荷の変動が検出された場合に、タイマーのカウントを開始するものである。タイマーは時間経過とともにその値が減少し、その値が0になったときにカウントを停止するデクリメント型の計時手段である。タイマー部27は、外部負荷の変動が検出されたときにタイマーの値Tとして初期値Tstを代入する。これにより、外部負荷の変動が検出されてからの経過時間(初期値Tstに対応する時間)が計測される。
【0064】
条件判定部26は、入力される外部負荷の状態に応じた大きさの加算トルクPi_ADDを出力するための条件判定を行い、以下の設定部28〜32に加算トルクPi_ADDの補正演算を指示するものである。ここで判定される条件を以下に列挙する。これらの条件1〜5は番号の若い順に優先される。例えば、条件2は条件1が不成立の場合に判定され、条件3は条件1及び条件2がともに不成立の場合に判定される。また、条件2〜4中には点火指標Kの閾値として第一指標K1(第一基準値)及び第二指標K2(第二基準値)が設定される。これらの閾値の大小関係は図6に示すように0<K2<K1<1とする。
条件1.条件Aが成立し、かつタイマーの値Tが初期値Tstである
条件2.条件Aが成立し、かつ点火指標Kが第一指標K1以上であり、かつP/S負荷がある
条件3.条件Aが成立し、かつ点火指標Kが第一指標K1以上であり、かつT>0である
条件4.条件Aが成立し、かつ点火指標Kが第一指標K1未満、第二指標K2以上であり、
かつ、P/S負荷があるかタイマーの値TがT>0である
条件5.上記の条件1〜4が何れも成立しない
【0065】
また、条件判定部26は、条件1が成立した場合に、加算トルクPi_ADDの補正演算を第一補正量設定部28に指示する。同様に、条件2が成立した場合には第二補正量設定部29に指示し、条件3が成立した場合には第三補正量設定部30に指示する。条件4が成立した場合には補正量保持設定部31に演算を指示し、条件5が成立した場合には第四補正量設定部32に指示する。
第一補正量設定部28,第二補正量設定部29及び第三補正量設定部30は、加算トルクPi_ADDを増加方向に補正するものであり、第四補正量設定部32は、加算トルクPi_ADDを減少方向に補正するものである。
【0066】
第一補正量設定部28は、前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第一補正量を加算したものを今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして演算する。第一補正量は、P/S負荷以外の外部負荷(すなわち、T/M負荷,A/C負荷及び電気負荷の少なくとも何れかの外部負荷)が入力された直後のトルク加算量である。
第二補正量設定部29は、前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第二補正量を加算したものを今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして演算する。第二補正量は、P/S負荷が入力されている間は常時加算されるトルク量に対応する。
【0067】
第三補正量設定部30は、前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第三補正量を加算したものを今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして演算する。第三補正量は、P/S負荷以外の外部負荷が入力されてから所定時間が経過するまでの間のみ加算されるトルク量に対応する。
補正量保持設定部31は、前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDをそのまま今回の制御周期の加算トルクPi_ADDに設定する。
【0068】
第四補正量設定部32は、前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDから第四補正量を減算したものを今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして演算する。ただし、加算トルクPi_ADDは0以上の範囲内(Pi_ADD≧0)にクリップされるものとする。なお、このような下限値だけでなく、加算トルクPi_ADDに上限値を設定してもよい。これらの第一補正量設定部28,第二補正量設定部29,第三補正量設定部30,補正量保持設定部31及び第四補正量設定部32で補正演算された加算トルクPi_ADDは、目標トルク演算部3に伝達され、前述の外部負荷補正部3eにおいて吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDの演算に用いられる。
【0069】
上述の通り、加算トルク演算部2dでは、加算トルクPi_ADDの演算過程でのP/S負荷の扱いとその他の外部負荷の扱いとが区別されている。この理由の一つは、P/S負荷の変動量が他の負荷に比べて大きいからである。
また、CVT装置のシフトレバー操作やエアコン操作の場合には、操作が入力されてから所定時間が経過すれば負荷変動が安定する。つまり、油圧パワーステアリング装置以外の外部負荷装置は、時間が経過に応じて変動が安定していく傾向がある。これに対して、パワーステアリング装置の動作は運転者の操作量に依存するため、どのようなタイミングでP/S負荷が急変するかを予測することが難しい。このような特性の相違も、P/S負荷の扱いとその他の外部負荷の扱いとを区別する理由の一つである。
【0070】
また、点火指標Kは0に近いほど(小さいほど)リタード量が大きく、1に近いほど(大きいほど)点火時期がMBTに近い(リタード量が小さい)ことを意味する。つまり、点火指標Kが小さいほどトルクリザーブ量(MBTで点火したときに生じうる最大トルクと実際に生じるトルクとの差,点火制御によって増加させることが可能なトルクの余裕分であり、トルクを瞬時にどの程度増大させることができるかの指標)が大きく、点火指標が大きいほどトルクリザーブ量が小さいことになる。
条件2,3に含まれる点火指標Kの条件は、トルクリザーブ量が比較的小さい点火状態であることを判定するための条件といえる。したがって、条件2,3の成立時には、トルクリザーブ量を増加させるべく加算トルクPi_ADDが加算方向に補正される。一方、点火指標Kが小さくトルクリザーブ量が十分に大きい点火状態では、条件5が成立して加算トルクPi_ADDが減少方向に補正される。
【0071】
[3.フローチャート]
加算トルク演算部2dで実行される制御手順の例として図8にフローチャートを示す。なお、このフローチャートに含まれる各判定条件は、上記の条件1〜5に含まれる個々の条件を分解して再構成したものである。
まず、ステップA10では、条件判定に用いられる各種情報が読み込まれる。続くステップA20では、アイドル条件判定部21において、アクセルペダルの操作量θAC及び車速Vに基づいて条件Aが成立するか否か(エンジン10がアイドル運転状態であるか否か)が判定される。ここで条件Aが成立する場合にはステップA30へ進み、条件Aが成立しない場合には条件1〜4の何れも成立しないため、条件5の成立時の制御に対応するステップA140へ進む。なお、ステップA140では、第四補正量設定部32において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDから第四補正量が減算され、続くステップA150では減算後の加算トルクPi_ADDが目標トルク演算部3に伝達される。
【0072】
ステップA30では、タイマー部27のタイマーの値Tが初期値Tstであるか否かが判定される。つまりここでは、P/S負荷以外の外部負荷が入力された直後であるか否かが判定される。ここでタイマーの値TがT=Tstである場合には、条件1の成立時の制御に対応するステップA100へ進む。なお、ステップA100では、第一補正量設定部28において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第一補正量が加算され、続くステップA150では加算後の加算トルクPi_ADDが目標トルク演算部3に伝達される。
【0073】
一方、ステップA30でタイマーの値TがT≠Tstである場合にはステップA40へ進む。ステップA40では、点火指標Kが第一指標K1以上であるか否かが判定される。ここで点火指標KがK≧K1である場合にはステップA50へ進み、K<K1である場合にはステップA70へ進む。
ステップA50では、例えば操作角度θ_SASに基づき、P/S負荷の有無が判定される。P/S負荷がある場合には、条件2の成立時の制御に対応するステップA110へ進み、P/S負荷がない場合にはステップA60へ進む。なお、ステップA110では、第二補正量設定部29において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第二補正量が加算され、続くステップA150では加算後の加算トルクPi_ADDが目標トルク演算部3に伝達される。
【0074】
ステップA60では、タイマー部27のタイマーの値Tが0よりも大きいか否かが判定される。つまり、外部負荷の変動が検出されてからの経過時間が所定時間未満であるか否かが判定される。ここでタイマーの値TがT>0である場合には、条件3の成立時の制御に対応するステップA120へ進み、タイマーの値TがT=0である場合には、ステップA140へ進む。なお、ステップA120では、第三補正量設定部30において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第三補正量が加算され、続くステップA150では加算後の加算トルクPi_ADDが目標トルク演算部3に伝達される。
【0075】
ステップA70では、点火指標Kが第一指標K1未満、第二指標K2以上であるか否かが判定される。ここで点火指標KがK1>K≧K2である場合にはステップA80へ進み、K<K2である場合にはステップA140へ進む。
ステップA80では、ステップA50と同様にP/S負荷の有無が判定される。P/S負荷がある場合には、条件4の成立時の制御に対応するステップA130へ進む。また、P/S負荷がない場合にはステップA90へ進み、ステップA60と同様にタイマー部27のタイマーの値Tが0よりも大きいか否かが判定される。ここでタイマーの値TがT>0である場合にも、条件4の成立時の制御に対応するステップA130へ進む。一方、タイマーの値TがT=0である場合には、ステップA140へ進む。
【0076】
ステップA130では、補正量保持設定部31において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDがそのまま今回の制御周期の加算トルクPi_ADDに設定され、続くステップA150ではその加算トルクPi_ADDが目標トルク演算部3に伝達される。
なお、本フローチャートのステップA20での条件判定は、第四補正量(ステップA140)及びそれ以外の補正量(ステップA100〜A130)の何れかへのルートを選択するための条件判定である。つまりこの制御では、エンジンがアイドル運転状態にあるか否かによって補正量が増減している。
【0077】
また、本フローチャートのステップA40及びA70での点火指標Kに関する条件判定は、ステップA110〜A140の何れかへのルートを選択するための条件判定の一つである。つまりここでは、点火時期の基準値(第一指標K1又は第二指標K2)からのずれ量に応じて補正量が増減している。
また、本フローチャートのステップA50及びA80でのP/S負荷に関する条件判定も、ステップA110〜A140の何れかへのルートを選択するための条件判定の一つである。つまりここでは、P/S負荷の有無に基づいて補正量が増減している。
さらに、本フローチャートのステップA30,A60及びA90でのタイマーTに関する条件判定は、ステップA100〜A150の何れかへのルートを選択するための条件判定の一つである。つまりここでは、油圧パワーステアリング装置以外の外部負荷が入力されてからの経過時間に基づいて補正量が増減している。
【0078】
[4.作用]
[4−1.エアコン装置のオン操作時]
上記の制御により加算トルクPi_ADDが増加したときのトルク挙動の変化について説明する。
図9に示すように、エンジン10がアイドル運転状態であって実充填効率Ecが第一所定値Ec1であり、点火制御用目標トルクPi_TGTがTq4であるとき、点火時期は点Aに対応するT4に設定される。
点Aの制御状態では、実充填効率Ecが第一所定値Ec1であるときのMBTであるT1よりも点火時期が遅角方向に移動しており、リタード量Rtd1はT1-T4である。また、点Aでのトルクリザーブ量Rsrv1は、MBTでのトルクから点Aでのトルクを減算したTq1-Tq4である。
【0079】
エアコン装置の主電源がオフからオンに操作されると、エアコン装置の作動状態に関する情報がエアコンECU17からエンジンECU1の要求トルク演算部2に伝達される。これを受けて、アイドル要求トルク設定部2aでは、外部負荷要求トルクPi_AUXを含むアイドル要求トルクPi_NeFBが演算される。一方、アクセル要求トルク演算部2bでは、外部負荷要求トルクPi_AUXを含むアクセル要求トルクPi_APSが演算され、これに基づいて最終要求トルク演算部2cで点火制御用要求トルクPi_EXT_SA及び吸気制御用要求トルクPi_EXTが演算される。
【0080】
また、加算トルク演算部2dのA/C負荷印加判定部24では、エアコン装置の作動状態に関する情報から、外部負荷が変動する可能性があると判定される。これを受けてタイマー部27では、タイマーの値Tとして初期値Tstが代入され、タイマーのカウントダウンが開始される。このタイマーの値Tは条件判定部26に伝達される。このとき、条件判定部26では条件1が成立するため、第一補正量設定部28において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第一補正量が加算され、加算後の値が今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして目標トルク演算部3に伝達される。
【0081】
エンジン10がアイドル運転状態である場合、目標トルク演算部3の第二選択部3bでは、吸気制御用要求トルクPi_EXT,アクセル要求トルクPi_APS及びアイドル要求トルクPi_NeFBのうち、アイドル要求トルクPi_NeFBが吸気制御用のトルクの目標値として選択される。ここで選択されたアイドル要求トルクPi_NeFBには、吸気遅れ補正部3dで補正演算を加えられた後に、外部負荷演算部3eで加算トルクPi_ADDを加算される。
これにより、目標トルク演算部3で演算される吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDが増大し、制御部4の吸気制御部4hでは、気筒内に導入される空気量が一度に増量するようにETV15の開度が制御される。また、これに伴って吸気流量Qが増大し、実充填効率Ecも増大する。図9に示すように、このときの実充填効率を第二所定値Ec2とする。
【0082】
これに対して、目標トルク演算部3での点火制御用目標トルクPi_TGTの演算プロセスでは、加算トルクPi_ADDが加算されない。つまり、加算トルクPi_ADDが増大したとしても、点火制御用目標トルクPi_TGTはTq4から変化しない。したがって、図9に示すように、点火時期は点Bに対応するT5に設定される。点Bにおけるリタード量Rtd2はT2-T5であり、トルクリザーブ量Rsrv2はTq2-Tq4となる。
前述の通り、実充填効率Ecが増大するとエンジン10で生成されるトルクが増大するため、トルク値Tq2はTq1よりも大きい。したがって、トルクリザーブ量Rsrv2は上記のトルクリザーブ量Rsrv1よりも大きく、加算トルクPi_ADDの増大によってトルクの余裕分が増加したことになる。一方、点火制御用目標トルクPi_TGTはTq3から変化しないため、実際にエンジン10から出力されるトルクの大きさは変化せず、トルクリザーブ量のみが増大する。したがって、エアコン装置の起動時にトルクショックが発生するようなこともない。
【0083】
加算トルク演算部2dでの次の演算周期では、タイマーの値Tが初期値Tstよりも減少した状態となるため、条件1は成立しない。一方、エアコン装置の主電源がオン操作されてから所定時間が経過するまでの間、すなわち、タイマーの値TがT>0である場合には、点火指標Kが第一指標K1以上であれば条件3が成立する。したがって、第三補正量設定部30において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第三補正量が加算され、加算後の値が今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして目標トルク演算部3に伝達される。
【0084】
点火指標Kは、目標トルク演算部3で演算された点火制御用目標トルクPi_TGTと実トルク演算部4dで演算された実トルクPi_ACT_MBTとの比〔 K=(Pi_TGT)/(Pi_ACT_MBT) 〕であるから、例えば点Bの制御状態では、K=Tq4/Tq2 である。この値が第一指標K1以上であるのは、点火時期が比較的MBTに近いとき、すなわちトルクリザーブ量が比較的小さい点火状態であるときである。
加算トルクPi_ADDに第三補正量が加算されると、目標トルク演算部3で演算される吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDがさらに増大し、制御部4の吸気制御部4hでは、気筒内に導入される空気量がさらに増量するようにETV15の開度が制御される。このとき、点火制御用目標トルクPi_TGTはTq4から変化しないため、制御状態は点C方向に移動する。このような制御により、トルクリザーブ量がさらに増大する。このときのトルクリザーブ量Rsrv3は上記のトルクリザーブ量Rsrv2よりもさらに大きいTq3-Tq4となる。
【0085】
エアコン装置の主電源がオン操作されてから所定時間が経過する前に点Cの制御状態に到達し、この点Cでの点火指標K=Tq4/Tq3 がK1未満(ただしK2以上)になると、条件4が成立する。これにより、補正量保持設定部31において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDがそのまま今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして目標トルク演算部3に伝達される。したがって、制御状態は点Cの位置に維持され、トルクリザーブ量Rsrv3もTq3-Tq4のまま維持される。
【0086】
エアコン装置の主電源がオン操作されてから所定時間が経過すると、タイマーの値Tが0になる。これにより、P/S負荷がない限り条件4が不成立となり、同時に条件5が成立する。これにより、第四補正量設定部32において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDから第四補正量が減算され、減算後の値が今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして目標トルク演算部3に伝達される。このとき、点火制御用目標トルクPi_TGTはTq4から変化しないため、制御状態は点B方向に移動する。また、このような減算が繰り返されると加算トルクPi_ADDの値は最終的には0となり、点Aの制御状態となる。
【0087】
なお、エアコン装置の主電源がオン操作されてから所定時間が経過していなくても、点火指標KがK2未満になるまで点火時期が遅角した場合には、P/S負荷がない限り条件4が不成立となり、同時に条件5が成立する。したがって、加算トルクPi_ADDが減少補正されるのに伴って、気筒内に導入される空気量が減量するようにETV15の開度が制御される。
【0088】
このように、エアコン装置の主電源がオフからオンに操作された場合には、オン操作された直後の加算トルクPi_ADDの演算で第一補正量が加算され、その後所定時間が経過するまでの間は、点火指標Kの条件に応じて加算トルクPi_ADDに第三補正量が加算される。また、点火時期の遅角量が増大してトルクリザーブ量が十分に確保された場合や所定時間が経過した場合には、加算トルクPi_ADDから第四補正量が減算される。
上記の制御は、エアコン装置の主電源がオフからオンに操作された場合だけでなく、CVT装置のシフトレバーが非走行レンジから走行レンジへと切り換えられた場合や、各種電装品のメインスイッチがオフからオンに操作された場合にも同様に実施される。
【0089】
[4−2.ステアリング操作時]
一方、エンジン10のアイドル運転時にステアリング操作が入力された場合には、エアコン装置の場合とは異なる制御が実施される。
例えば、ステアリング操作が入力されると、操作角度θ_SASがステアリング角度センサ8からエンジンECU1の要求トルク演算部2に伝達される。アイドル要求トルク設定部2aでは、外部負荷要求トルクPi_AUXを含むアイドル要求トルクPi_NeFBが演算され、これが目標トルク演算部3に伝達される。なお、アクセル要求トルクPi_APS,点火制御用要求トルクPi_EXT_SA及び吸気制御用要求トルクPi_EXTについても、上記のエアコン装置の場合と同様に演算される。
【0090】
また、加算トルク演算部2dのP/S負荷判定部22では、操作角度θ_SASの情報から、外部負荷が変動する可能性があると判定される。このとき、点火指標Kが第一指標K1以上であれば、ステアリング操作中は常に条件2が成立する。したがって、第二補正量設定部29において前回の制御周期で演算された加算トルクPi_ADDに第二補正量が加算され、加算後の値が今回の制御周期の加算トルクPi_ADDとして目標トルク演算部3に伝達される。
したがって、目標トルク演算部3で演算される吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDが加算トルクPi_ADD分だけ増大し、制御部4の吸気制御部4hでは、気筒内に導入される空気量が一度に増量するようにETV15の開度が制御される。また、これに伴って吸気流量Qが増大し、実充填効率Ecも第二所定値Ec2まで増大する。
【0091】
これに対して、目標トルク演算部3での点火制御用目標トルクPi_TGTはTq4から変化しないため、点火時期は点Bに対応するT5に設定される。点Bにおけるリタード量Rtd2はT2-T5であり、トルクリザーブ量Rsrv2はTq2-Tq4となる。つまり、加算トルクPi_ADDの増大によって、エンジン10から出力されるトルクの余裕分が増加する。一方、点火制御用目標トルクPi_TGTはTq3から変化しないため、実際にエンジン10から出力されるトルクの大きさは変化せず、トルクリザーブ量のみが増大する。したがって、ステアリング操作時にトルクショックが発生するようなこともない。
【0092】
第二補正量設定部29による加算トルクPi_ADDの増加補正には時間的制約がないため、ステアリング操作の入力中は常に継続される。これにより、制御状態は点C方向に移動する。例えば、点Cの制御状態において点火指標K=Tq4/Tq3 がK1未満(ただしK2以上)になると、条件4が成立する。これにより、補正量保持設定部31において加算トルクPi_ADDが保持され、制御状態は点Cの位置に維持される。
あるいは、点火指標KがK2未満になるまで点火時期が遅角した場合には、条件4が不成立となり、同時に条件5が成立する。したがって、加算トルクPi_ADDが減少補正されるのに伴って、気筒内に導入される空気量が減量するようにETV15の開度が制御される。
また、ステアリングホイールの操作位置が中立位置まで戻されると、P/S負荷判定部22においてステアリング操作に係る外部負荷が変動する可能性がないと判定され、条件5が成立する。この場合も加算トルクPi_ADDが減少補正され、吸入空気量を絞るようにETV15の開度が制御される。
【0093】
[5.効果]
このように、上述の制御装置によれば、外部負荷の状態に応じて複数のパターンの加算トルクPi_ADDが設定され、これに基づいてエンジン10に導入される空気量が制御されるため、外部負荷の変動を考慮した多様なトルクベース制御を実現することができ、エンジン10の運転状態の安定性を向上させることができるとともに、燃費を改善することができる。
また、上述の制御装置によれば、加算トルクPi_ADDが増大補正されるのは、条件判定部26で条件1〜3の何れかが成立したときのみであって、外部負荷の変動が検出された場合に限られるため、加算トルクPi_ADDが大きくなりすぎるような事態を防止することができ、燃費を改善することができる。
【0094】
また、上述の制御装置では、加算トルクPi_ADDの値が、エアコン装置の主電源スイッチやCVT装置のシフトレバー,各種電装品のメインスイッチの操作状態に応じて設定される。つまり、外部負荷装置の作動状態に基づいて外部負荷の変動を検出しているため、トルクの余裕分を増大補正するタイミングを容易かつ正確に判断することができ、エンジン10の運転状態の安定性を向上させつつ燃費を向上させることができる。
このように、エンジン10が不安定になりやすい状態でのみ安定性を向上させることができる。また、エンジン10が不安定になりにくい状態では加算トルクPi_ADDの値を減少させる(例えば、0にする)ことで空気量を減少させることができ、燃費を改善することができる。
【0095】
また、上述の制御装置では、外部負荷の変動に応じて加算トルクPi_ADDが増大補正されるだけでなく、さらに点火時期に応じて加算トルクPi_ADDの値が補正されるため、過剰に目標トルクが大きく設定されるような事態を防止しつつ、適正な目標トルクを設定することができる。この点でもエンジン10の運転状態の安定性を向上させることができるとともに、燃費を改善することができる。
【0096】
また、加算トルクPi_ADDの補正手法と点火時期との関連について、上述の制御装置では、図6に示すように、点火指標KがK1以上である場合に加算トルクPi_ADDを増大補正し、点火指標KがK2未満である場合には加算トルクPi_ADDを減少補正している。つまり、加算トルクPi_ADDを増大補正するタイミングとして、トルクリザーブ量が小さい場合を選択しており、トルクリザーブ量が十分に確保されているときには加算トルクPi_ADDを減少補正することでトルクリザーブ量の適正化を図っている。
このように、点火時期が進角寄りである場合に加算トルクPi_ADDを増大させることで、トルクリザーブ量を増大させることができ、エンジン10の運転状態の安定性をより向上させることができる。
【0097】
また、点火時期が遅角寄りである場合には加算トルクPi_ADDを減少させることで、トルクリザーブ量を減少させることができ、燃費をより向上させることができる。
さらに、点火指標Kが第一指標K1未満、かつ、第二指標K2以上である場合には、加算トルクPi_ADDの値がそのまま保持されるため、トルクリザーブ量を一定範囲内に収束させることができ、エンジン10の安定性及び燃費のバランスのよい状態を維持することができる。
【0098】
なお、仮に吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDを増大させると同時に点火制御用目標トルクPi_TGTも増大させて、点火時期をリタードさせないことも考えられる。しかしこの場合、上述の制御と比較してトルクリザーブ量が減少することになる。これに対して、本実施形態の制御装置では、吸気量を増大させる制御と同時に点火時期のリタードを実施しており、実充填効率Ecの増大によるトルク増分を、点火時期のリタードによって相殺している。したがって、実際のエンジン10の出力トルクを変動させることなくトルクリザーブ量を増大させることができ、負荷変動に対する安定性を向上させることができる。
【0099】
さらに、本実施形態の制御装置では、点火時期のリタードと同時に吸気量を増大させる制御を実施するにあたって、加算トルクPi_ADDを吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDの演算のみに反映させ、点火制御用目標トルクPi_TGTの演算には反映させない演算プロセスを備えている。このように、吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDのみを増大させることで、MBTで得られる最大トルクを確実に増大させることができる。つまり、実際のエンジン10の出力トルクを変動させることなく、トルクリザーブ量を確実に増大させることができ、制御のロバスト性を向上させることができる。
【0100】
また、上述の制御装置では、エンジン10の運転状態が外部負荷の変動の影響を受けやすい(不安定になりやすい)アイドル運転状態であるときに加算トルクPi_ADDを増大させる構成を備えている。したがって、効果的にエンジン10の安定性を向上させることができる。
なお、アイドル運転状態でないときには、上記の条件1〜条件4が成立せず、条件5が成立することになるため、加算トルクPi_ADDが減少補正され、最終的には0となる。このように、アイドル運転状態でないときや外部負荷の変動が検出されないときに加算トルクPi_ADDを減少させることにより、過剰な空気量の増大を抑制することができ、効果的に燃費を向上させることができる。
【0101】
また、加算トルクPi_ADDの補正手法に関して、上述の制御装置では外部負荷装置の種類に応じて異なる大きさのトルクを設定可能である。例えば、ステアリング操作に対しては第二補正量に基づく補正が可能である一方、エアコン装置やCVT装置,各種電装品の操作に対しては第三補正量に基づく補正が可能である。したがって、外部負荷装置の種類に応じた適切な大きさの加算トルクPi_ADDを演算することができ、エンジン10の運転状態の安定性を向上させつつ燃費を向上させることができる。特に、油圧パワーステアリング装置は、外部負荷装置の中でも負荷の変動が大きいため、操作中には常時、加算トルクPi_ADDを増大させることで、エンジンの運転状態の安定性を向上させる一助となる。
【0102】
さらに、上述の制御装置では、外部負荷の変動が検出されてからの経過時間に基づいて加算トルクPi_ADDの値の補正手法が変更される。これにより、例えば所定時間が経過すれば負荷変動が安定するような油圧パワーステアリング装置以外の外部負荷装置に対して、適切な大きさの加算トルクPi_ADDを演算することができ、エンジン10の運転状態の安定性を向上させつつ、より一層燃費を向上させることができる。
【0103】
[6.変形例等]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上記の実施形態では、要求トルク演算部2,目標トルク演算部3及び制御部4の各機能を備えたエンジンECU1を例示したが、エンジンECU1の具体的な制御構成はこれに限定されない。少なくとも、外部負荷が要求する要求トルク(例えば、外部負荷要求トルクPi_AUX)をその外部負荷の状態に応じて補正する(例えば、加算トルクPi_ADDを加算補正する)手段と、補正後の要求トルクに応じたエンジン10の目標トルクを設定する手段と、その目標トルクがエンジン10から出力されるように空気量を制御する手段とを備えた電子制御装置であれば、上記の技術効果を奏するものとなる。したがって、具体的な制御構成については適宜追加、あるいは簡素化することが可能である。
【0104】
また、上述の実施形態では、エンジン10のトルクベース制御において、点火制御に係る点火制御用目標トルクPi_TGT及び吸気制御に係る吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDの二種類の目標トルクを並行して演算するものを例示したが、少なくとも吸気制御に係る吸気制御用目標トルクPi_ETV_STDを演算するものであればよい。
また、上述の実施形態における条件1〜条件5の具体的な内容は任意に設定することができ、補正手法をさらに追加することも可能である。補正条件を追加することでより正確かつきめの細かい制御が可能となり、エンジン10の安定性をさらに向上させることができるとともに、無用なトルクリザーブ量の増大を回避することができ、燃費をさらに向上させることができる。
【0105】
また、上述の実施形態では、点火制御用目標トルクPi_TGTと実トルクPi_ACT_MBTとの比を点火指標Kとして条件2〜条件4で判定するものを例示したが、点火指標Kの演算手法はこれに限定されない。例えば、点火制御用目標トルクPi_TGTと実トルクPi_ACT_MBTとの差に基づいて遅角又は進角の度合いを把握してもよい。つまり、点火制御用目標トルクPi_TGT及び実トルクPi_ACT_MBTの相違の度合いと点火時期の進角又は遅角の度合いとの相関に着目した演算手法を用いれば、適切なトルクリザーブ量を確保するのに必要な点火時期を把握することが可能であり、上記の技術効果を奏するものとなる。
【0106】
また、上述の実施形態の制御内での点火指標Kと加算トルクPi_ADDの補正量との関係に着目すると、例えば点火指標Kが第一指標K1からわずかに進角寄りであった場合でも、点火指標Kが第一指標K1から大きく進角寄りであった場合でも、補正量自体は変化していない。一方、上述のような制御に代えて、又は加えて、点火指標Kの第一指標K1,第二指標K2からの進角量,遅角量(ずれ量)に応じて加算トルクPi_ADDを増減補正することも考えられる。例えば、第一指標K1,第二指標K2からの進角量,遅角量(ずれ量)に応じて設定される係数を第一補正値〜第四補正値に乗算する構成としてもよいし、上記のずれ量に応じて予め設定された所定の補正値を第一補正値〜第四補正値に加算する構成としてもよい。
【0107】
これらの場合、例えば進角量が大きいほど、あるいは遅角量が小さいほど加算トルクPi_ADDを増大させることにより、トルクリザーブ量を増大させることができ、エンジンの運転状態の安定性をより向上させることができる。また、例えば進角量が小さいほど、あるいは遅角量が大きいほど加算トルクPi_ADDを減少させることにより、トルクリザーブ量を減少させることができ、燃費をより向上させることができる。トルクリザーブ量は、点火時期がMBTであるときに最小となり、MBTからのずれ量が大きいほど増大する特性がある。したがって、ずれ量と補正値の増減量との関係は、このような特性と確保したいトルクリザーブ量とに応じて多様に設定することができる。
なお、上述の実施形態のエンジン10の燃焼形式は任意である。少なくとも、トルクベース制御が実施されるエンジン全般に適用可能であり、リーンバーンエンジンや可変バルブリフト機構を持ったエンジン等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 エンジンECU
2 要求トルク演算部(設定手段)
2a アイドル要求トルク設定部
2b アクセル要求トルク演算部(第一演算手段)
2c 最終要求トルク演算部(第二演算手段)
2d 加算トルク演算部
3 目標トルク演算部(目標トルク演算手段)
4 制御部
4a 点火制御部(点火時期検出手段)
4h 吸気制御部(制御手段)
5 アクセルペダルセンサ(アクセル操作量検出手段)
6 クランク角度センサ(エンジン回転数検出手段)
8 ステアリング角度センサ(ステアリング角度検出手段)
9 車速センサ(車速検出手段)
10 エンジン
21 アイドル条件判定部(アイドル検出手段)
22 P/S負荷判定部(検出手段)
23 T/M負荷印加判定部(検出手段)
24 A/C負荷印加判定部(検出手段)
25 電気負荷印加判定部(検出手段)
26 条件判定部
27 タイマー部
28 第一補正量設定部(補正手段)
29 第二補正量設定部(補正手段)
30 第三補正量設定部(補正手段)
31 補正量保持設定部(補正手段)
32 第四補正量設定部(補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンに対して要求トルクを設定する設定手段と、
前記エンジンに外部負荷を与える外部負荷装置の作動状態に基づいて、前記外部負荷の変動を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に応じて、前記設定手段で設定された前記要求トルクを補正する補正手段と、
前記補正手段で補正された前記要求トルクに基づき、前記エンジンの目標トルクを演算する目標トルク演算手段と、
前記エンジンの出力トルクを前記目標トルク演算手段で演算された前記目標トルクに近づけるように、前記エンジンに導入される空気量を制御する制御手段と、
前記エンジンの点火時期を検出する点火時期検出手段と、を備え、
前記補正手段が、
前記検出手段で前記外部負荷の変動が検出された時に、前記変動に対応するためのトルク増分を前記設定手段で設定された前記要求トルクに加算して増分補正要求トルクを求め、
前記点火時期検出手段で検出された前記点火時期の所定の基準値からのずれ量に応じて、前記増分補正要求トルクを増減させる
ことを特徴とする、エンジンの制御装置。
【請求項2】
前記所定の基準値として第一基準値が設定されており、
前記補正手段が、前記点火時期検出手段で検出された前記点火時期の前記第一基準値から進角側へのずれ量に応じて、前記増分補正要求トルクを増大させる
ことを特徴とする、請求項1記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記所定の基準値として前記第一基準値よりも遅角側の第二基準値が設定されており、
前記補正手段が、前記点火時期検出手段で検出された前記点火時期の前記第二基準値から遅角側へのずれ量に応じて、前記増分補正要求トルクを減少させる
ことを特徴とする、請求項2記載のエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記補正手段が、前記点火時期検出手段で検出された前記点火時期が前記第一基準値から前記第二基準値までの間にあるときに、前記増分補正要求トルクを保持する
ことを特徴とする、請求項3記載のエンジンの制御装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記エンジンに導入される空気量を増大させるとともに、前記点火時期をリタードさせて前記増分補正要求トルクを相殺する
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項6】
前記車両の運転者によって要求されるアクセル要求トルクを演算する第一演算手段と、
前記第一演算手段で演算された前記アクセル要求トルクに基づき、点火時期制御用の第一目標トルク及び吸気量制御用の第二目標トルクのそれぞれを演算する第二演算手段とを備え、
前記目標トルク演算手段が、前記第二演算手段で演算された前記第二目標トルクに対し前記要求トルクを加算して、前記目標トルクを演算する
ことを特徴とする、請求項5記載のエンジンの制御装置。
【請求項7】
前記エンジンがアイドル運転状態にあるか否かを検出するアイドル検出手段を備え、
前記補正手段が、前記アイドル検出手段で前記アイドル運転状態が検出され、かつ、前記検出手段で前記変動が検出された場合に、前記要求トルクを増大させる
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項8】
前記補正手段が、前記アイドル検出手段で前記アイドル運転状態が検出されず、又は、前記検出手段で前記変動が検出されない場合に、前記要求トルクを減少させる
ことを特徴とする、請求項7記載のエンジンの制御装置。
【請求項9】
前記補正手段が、前記外部負荷装置の種類に応じて前記要求トルクを補正するものであり、前記外部負荷装置が前記車両に搭載された油圧パワーステアリング装置である場合は、当該油圧パワーステアリング装置が操作中であるときに、前記増分補正要求トルクを増減させる
ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項10】
前記補正手段が、前記外部負荷装置が前記油圧パワーステアリング装置以外の負荷装置である場合は、前記検出手段で前記変動が検出されてからの経過時間に基づいて前記増分補正要求トルクを増減させる
ことを特徴とする、請求項9記載のエンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−77690(P2012−77690A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224015(P2010−224015)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】