説明

エンジンの排気浄化装置

【課題】この発明は、エンジンの排気浄化装置においては、アンモニアの大気への放出や亜酸化窒素の発生を抑制し、酸化触媒の耐久性を向上させることを目的とする。
【解決手段】この発明は、エンジンの排気通路に尿素を供給し、供給された尿素から発生したアンモニアにより排気中の窒素酸化物を還元する還元触謀と、還元触媒の下流側排気通路にアンモニアを浄化する酸化触媒とを備えたエンジンの排気浄化装置において、前記酸化触媒の温度を検出する温度検出手段を備え、前記酸化触媒を加熱する加熱手段を備え、前記酸化触媒を加熱手段により加熱し、前記温度検出手段により加熱された酸化触媒の温度を検出し、検出された酸化触媒の温度が設定温度よりも高い場合には、尿素を排気通路に供給する供給制御手段を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエンジンの排気浄化装置に係り、特に、アンモニアの大気への放出や亜酸化窒素の発生を抑制することが可能なエンジンの排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気浄化装置には、ディーゼルエンジン用の排気浄化装置のひとつとしてSCR(Selective Catalystic Reduction:選択性接触還元)触媒(還元触媒)を備えた尿素SCR浄化装置がある。尿素SCR浄化装置は、排気通路に供給された尿素を加水分解することで発生するアンモニアを還元剤として、希薄燃焼条件下では浄化が困難な窒素酸化物(NOx)を選択的に還元し、無害な窒素(N)と水に分解するものである。
また、この尿素SCR浄化装置においては、尿素が過剰に添加されると、発生したアンモニアの一部が大気中で放出されてしまうが、SCR触媒の下流にアンモニアを浄化する酸化触媒を搭載することで、アンモニアの拡散を抑制する技術が開発されている。(特許文献1〜4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−50035号公報
【特許文献2】特開2008−255928号公報
【特許文献3】特開2005−256727号公報
【特許文献4】特開2005−133541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1〜4の方法によりアンモニアを浄化させる場合には、アンモニアを浄化する酸化触媒の反応温度が低いと、亜酸化窒素(NO)を多量に発生するという問題点がある。
亜酸化窒素は、現時点で自動車における排ガス規制の対象外の物質ではあるが、重量あたり二酸化炭素(CO)の約310倍の温室効果を有しており、京都議定書における温室効果ガスの削減対象物質に指定されている。よって、亜酸化窒素の排出量の低減が必要であるが、現時点において排気中の亜酸化窒素を削減することを目的とした技術は提唱されていない。
【0005】
SCR触媒により窒素酸化物(NOx)を還元する排気浄化装置は、アンモニアの存在下で窒素酸化物を選択還元するSCR触媒と、その上流に配置された尿素供給装置とから構成される。また、尿素の加水分解で過剰生成したアンモニアを分解するためのアンモニアを浄化する酸化触媒が、SCR触媒の下流に設置されている。
亜酸化窒素は、アンモニアを浄化する酸化触媒の温度が100〜200℃程度と比較的低温の状態で、未反応のアンモニアが存在することにより、多量に生成する。一方、アンモニアの酸化触媒の温度が300℃以上と高温になると、亜酸化窒素の発生は抑えられ、かつアンモニアを効率よく浄化できるようになる。アンモニアの酸化触媒の温度が低い場合に尿素添加を抑制すると、窒素酸化物の排出量が増加し、尿素の代わりに軽油を添加すると、燃費の悪化、触媒の被毒劣化が発生するなどの問題が発生する。
【0006】

この発明は、エンジンの排気浄化装置においては、アンモニアの大気への放出や亜酸化窒素の発生を抑制し、酸化触媒の耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、エンジンの排気通路に尿素を供給し、供給された尿素から発生したアンモニアにより排気中の窒素酸化物を還元する還元触謀と、還元触媒の下流側排気通路にアンモニアを浄化する酸化触媒とを備えたエンジンの排気浄化装置において、前記酸化触媒の温度を検出する温度検出手段を備え、前記酸化触媒を加熱する加熱手段を備え、前記酸化触媒を加熱手段により加熱し、前記温度検出手段により加熱された酸化触媒の温度を検出し、検出された酸化触媒の温度が設定温度よりも高い場合には、尿素を排気通路に供給する供給制御手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明のエンジンの排気浄化装置は、加熱手段により、アンモニアを浄化する酸化触媒の温度を設定温度以上に維持できるよう制御しているので、効率よくアンモニアを浄化することができるため、アンモニアの大気への放出や亜酸化窒素の発生を抑制することが可能である。さらに、この発明のエンジンの排気浄化装置は、最適条件下において、酸化触媒を反応させることができるので、酸化触媒の耐久性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】排気浄化装置の概略構成図である。(実施例1)
【図2】供給制御手段の制御フローチャートである。(実施例1)
【図3】排気浄化装置の概略構成図である。(実施例2)
【図4】供給制御手段の制御フローチャートである。(実施例2)
【図5】排気浄化装置の概略構成図である。(実施例3)
【図6】供給制御手段の制御フローチャートである。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1・図2は、この発明の実施例1を示すものである。図1において、1はエンジン、2は燃焼室、3は吸気管、4は吸気マニホルド、5は吸気通路、6は排気マニホルド、7は排気管、8は排気通路である。エンジン1は、燃焼室2に燃料を噴射供給する燃料供給装置9を備えている。燃料供給装置9は、燃焼室2に燃料を燃料噴射弁10により噴射する。エンジン1は、吸気管3と吸気マニホルド4とから構成する吸気通路5を燃焼室2に連通し、吸気通路5により燃焼室2に供給した空気に燃料噴射弁10により燃焼室2に噴射した燃料を混合させて燃焼させ、燃焼後の排気を排気マニホルド6と排気管7とから構成する排気通路8により大気に排出する。
このエンジン1の排気浄化装置11は、排気通路8にアンモニアにより排気中の窒素酸化物を還元するSCR(選択性接触還元)触媒からなる還元触媒12と、還元触媒12の下流側の排気通路8にアンモニアを浄化する酸化触媒13とを備えている。また、排気浄化装置11は、排気通路8に尿素を供給する尿素供給装置14を備えている。尿素供給装置14は、還元触媒12よりも上流側の排気通路8に還元剤の尿素を尿素噴射弁15により供給する。
また、この排気浄化装置11は、尿素噴射弁15よりも上流側の排気通路8に酸化触媒を備えたパティキュレートフィルタ16を備えている。パティキュレートフィルタ16は、排気中の粒子状物質を捕集するとともに、捕集した粒子状物質を酸化触媒により酸化分解して捕集機能を再生する。
【0012】
前記排気浄化装置11は、酸化触媒13の温度を検出する温度検出手段17を備えている。温度検出手段17は、温度検出部18により酸化触媒13の温度を検出する。また、排気浄化装置11は、酸化触媒13を加熱する加熱手段19を備えている。加熱手段19は、加熱部20により酸化触媒13を加熱する。加熱手段19の加熱部20としては、例えば公知の手段である電気ヒータを使用して酸化触媒13を加熱する方法や、熱伝導性の高いヒートパイプで排気管7と酸化触媒13を連絡し、排気の熱を利用して酸化触媒13を加熱する方法などを用いることができる。
前記燃料噴射装置9と、尿素供給装置14と、温度検出手段17と、加熱手段19とは、制御装置21に接続している。制御装置21は、噴射量制御手段22と、供給制御手段23とを備えている。噴射量制御手段22は、燃焼室2に燃料供給装置9の燃料噴射弁10から供給される燃料の噴射量を制御する。供給制御手段23は、酸化触媒13を加熱手段19の加熱部20により加熱し、この加熱された酸化触媒13の温度を温度検出手段17の温度検出部18により検出し、検出された酸化触媒13の温度が設定温度よりも高い場合には、尿素供給装置14から尿素を排気通路8に供給する。
【0013】
次に作用を説明する。
エンジン1の排気浄化装置11は、エンジン1の運転時に燃料供給装置9から燃焼室2に燃料を供給し、尿素供給装置14から還元剤としての尿素を還元触媒12の上流側の排気通路8に供給する。排気通路8に供給された尿素は、加水分解してアンモニアが生成される。生成されたアンモニアと排気とは、還元触媒12に導入され、アンモニアと排気に含まれる窒素酸化物(NOx)とが反応し、窒素(N)に還元される。還元触媒12にて反応に使われなかった余剰のアンモニアは、酸化触媒13にて酸化され、窒素(N)と水が生成され、大気中へのアンモニアの排出を防止される。
尿素供給装置14から供給される尿素量は、供給制御手段23により酸化触媒13の温度に応じて制御される。供給制御手段23は、図2に示すように、制御がスタートすると(A01)、温度検出手段17の検出信号などの各種データを読み込み(A02)、加熱手段19により酸化触媒13を加熱制御(制御温度=Tc)し(A03)、酸化触媒13の温度Tが設定温度Ts(例えば、300℃)を越えているかを判断する(A04)。
この判断(A04)がYESの場合は、尿素供給装置14の尿素噴射弁15による尿素の噴射を制御し(A05)、制御をエンドにする(A06)。 この判断(A04)がNOの場合は、尿素供給装置14の尿素噴射弁15による尿素の噴射を停止し(A07)、制御をエンドにする(A06)。
【0014】
このように、このエンジン1の排気浄化装置11は、加熱手段19により、アンモニアを浄化する酸化触媒13の温度を設定温度(300℃)以上に維持できるよう制御しているので、効率よくアンモニアを浄化することができるため、アンモニアの大気への放出や亜酸化窒素の発生を抑制することが可能である。さらに、このエンジン1の排気浄化装置11は、最適条件下において、酸化触媒13を反応させることができるので、酸化触媒13の耐久性を向上させることが可能である。
【実施例2】
【0015】
図3・図4は、この発明の実施例2を示すものである。図3において、101はエンジン、102は燃焼室、103は吸気管、104は吸気マニホルド、105は吸気通路、106は排気マニホルド、107は排気管、108は排気通路である。エンジン101は、燃焼室102に燃料を噴射供給する燃料供給装置109を備えている。燃料供給装置109は、燃焼室102に燃料を燃料噴射弁110により噴射する。エンジン101は、吸気管103と吸気マニホルド104とから構成する吸気通路105を燃焼室102に連通し、吸気通路105により燃焼室102に供給した空気に燃料噴射弁110により燃焼室102に噴射した燃料を混合させて燃焼させ、燃焼後の排気を排気マニホルド106と排気管107とから構成する排気通路108により大気に排出する。
このエンジン101の排気浄化装置111は、排気通路108にアンモニアにより排気中の窒素酸化物を還元するSCR(選択性接触還元)触媒からなる還元触媒112と、還元触媒112の下流側の排気通路108にアンモニアを浄化する酸化触媒113とを備えている。また、排気浄化装置111は、排気通路108に尿素を供給する尿素供給装置114を備えている。尿素供給装置114は、還元触媒112よりも上流側の排気通路108に還元剤の尿素を尿素噴射弁115により供給する。
また、この排気浄化装置111は、尿素噴射弁115よりも上流側の排気通路108に酸化触媒を備えたパティキュレートフィルタ116を備えている。パティキュレートフィルタ116は、排気中の粒子状物質を捕集するとともに、捕集した粒子状物質を酸化触媒により酸化分解して捕集機能を再生する。
【0016】
前記排気浄化装置111は、酸化触媒113の温度を検出する温度検出手段117を備えている。温度検出手段117は、温度検出部118により酸化触媒113の温度を検出する。また、排気浄化装置111は、酸化触媒113を加熱する加熱手段119を備えている。加熱手段119は、加熱部120により酸化触媒113を加熱する。
さらに、排気浄化装置111は、還元触媒112の下流側であって酸化触媒113の上流側の排気通路108にアンモニア(NH)濃度を検出するアンモニア濃度検出手段121を備えている。アンモニア濃度検出手段121は、濃度検出部122により排気通路108内のアンモニア濃度を検出する。また、排気浄化装置111は、還元触媒112の上流側であってパティキュレートフィルタ116の下流側の排気通路108に窒素酸化物(NOx)濃度を検出する窒素酸化物検出手段123を備えている。窒素酸化物検出手段123は、濃度検出部124により窒素酸化物濃度を検出する。
前記燃料噴射装置9と、尿素供給装置114と、温度検出手段117と、加熱手段119と、アンモニア濃度検出手段121と、窒素酸化物検出手段123とは、制御装置125に接続している。制御装置125は、噴射量制御手段126と、供給制御手段127とを備えている。噴射量制御手段126は、燃焼室102に燃料供給装置109の燃料噴射弁110から供給される燃料の噴射量を制御する。供給制御手段127は、酸化触媒113を加熱手段119の加熱部120により加熱し、この加熱された酸化触媒113の温度を温度検出手段117の温度検出部118により検出し、検出された酸化触媒113の温度が設定温度よりも高い場合には、尿素供給装置114から尿素を排気通路108に供給する。
さらに、供給制御手段127は、酸化触媒113を加熱手段119により加熟し、温度検出手段117により加熱された酸化触媒113の温度を検出し、検出された酸化触媒113の温度が設定された温度よりも低い場合でも、アンモニア濃度検出手段121により検出されたアンモニア濃度が設定濃度より低い場合には、尿素供給装置114から尿素を排気通路108に供給する。
【0017】
次に作用を説明する。
エンジン101の排気浄化装置111は、エンジン101の運転時に燃料供給装置109から燃焼室102に燃料を供給し、尿素供給装置114から還元剤としての尿素を還元触媒112の上流側の排気通路108に供給する。排気通路108に供給された尿素は、加水分解してアンモニアが生成される。生成されたアンモニアと排気とは、還元触媒112に導入され、アンモニアと排気に含まれる窒素酸化物(NOx)とが反応し、窒素(N)に還元される。還元触媒112にて反応に使われなかった余剰のアンモニアは、酸化触媒113にて酸化され、窒素(N)と水が生成され、大気中へのアンモニアの排出を防止される。
尿素供給装置114から供給される尿素量は、供給制御手段127により酸化触媒113の温度に応じて制御される。供給制御手段127は、図4に示すように、制御がスタートすると(B01)、温度検出手段117の検出信号などの各種データを読み込み(B02)、加熱手段119により酸化触媒113を加熱制御(制御温度=Tc)し(B03)、酸化触媒113の温度Tが設定温度Ts(例えば、300℃)を越えているかを判断する(B04)。
この判断(B04)がYESの場合は、尿素供給装置114の尿素噴射弁115による尿素の噴射を制御し(B05)、制御をエンドにする(B06)。この判断(B04)がNOの場合は、アンモニア濃度Dが設定濃度Dsを越えているかを判断する(B07)。
この判断(B07)がYESの場合は、尿素供給装置114の尿素噴射弁115による尿素の噴射を停止し(B08)、制御をエンドにする(B06)。この判断(B08)がNOの場合は、尿素供給装置114の尿素噴射弁115による尿素の噴射を制御し(B05)、制御をエンドにする(B06)。
【0018】
このように、このエンジン101の排気浄化装置111は、酸化触媒113を通過するアンモニアの濃度が設定濃度を超えた場合には、尿素の噴射を停止して添加量を制限しているので、亜酸化窒素(NO)の排出量を抑制することが可能である。
【実施例3】
【0019】
図5・図6は、この発明の実施例3を示すものである。図5において、201はエンジン、202は燃焼室、203は吸気管、204は吸気マニホルド、205は吸気通路、206は排気マニホルド、207は排気管、208は排気通路である。エンジン201は、燃焼室202に燃料を噴射供給する燃料供給装置209を備えている。燃料供給装置209は、燃焼室202に燃料を燃料噴射弁210により噴射する。エンジン201は、吸気管203と吸気マニホルド204とから構成する吸気通路205を燃焼室202に連通し、吸気通路205により燃焼室202に供給した空気に燃料噴射弁210により燃焼室202に噴射した燃料を混合させて燃焼させ、燃焼後の排気を排気マニホルド206と排気管207とから構成する排気通路208により大気に排出する。
このエンジン201の排気浄化装置211は、排気通路208にアンモニアにより排気中の窒素酸化物を還元するSCR(選択性接触還元)触媒からなる還元触媒212と、還元触媒212の下流側の排気通路208にアンモニアを浄化する酸化触媒213とを備えている。また、排気浄化装置211は、排気通路208に尿素を供給する尿素供給装置214を備えている。尿素供給装置214は、還元触媒212よりも上流側の排気通路208に還元剤の尿素を尿素噴射弁215により供給する。
また、この排気浄化装置211は、尿素噴射弁215よりも上流側の排気通路208に酸化触媒を備えたパティキュレートフィルタ216を備えている。パティキュレートフィルタ216は、排気中の粒子状物質を捕集するとともに、捕集した粒子状物質を酸化触媒により酸化分解して捕集機能を再生する。
【0020】
前記排気浄化装置211は、酸化触媒213の温度を検出する温度検出手段217を備えている。温度検出手段217は、温度検出部218により酸化触媒213の温度を検出する。また、排気浄化装置211は、酸化触媒213を加熱する加熱手段219を備えている。加熱手段219は、加熱部220により酸化触媒213を加熱する。
さらに、排気浄化装置211は、還元触媒212の下流側であって酸化触媒213の上流側の排気通路208にアンモニア(NH)濃度を検出するアンモニア濃度検出手段221を備えている。アンモニア濃度検出手段221は、濃度検出部222により排気通路208内のアンモニア濃度を検出する。また、排気浄化装置211は、還元触媒212の上流側であってパティキュレートフィルタ216の下流側の排気通路208に窒素酸化物(NOx)濃度を検出する窒素酸化物検出手段223を備えている。窒素酸化物検出手段223は、濃度検出部224により窒素酸化物濃度を検出する。
また、排気浄化装置211は、還元触媒212に流入する排気の温度を検出する排気温度検出手段225を備えている。排気温度検出手段225は、温度検出部226により還元触媒212に流入する排気の温度を検出する。さらに、排気浄化装置211は、還元触媒212の温度を検出する触媒温度検出手段227を備えている。触媒温度検出手段227は、温度検出部228により還元触媒212の温度を検出する。
【0021】
前記燃料噴射装置9と、尿素供給装置214と、温度検出手段217と、加熱手段219と、アンモニア濃度検出手段221と、窒素酸化物検出手段223と、排気温度検出手段225と、触媒温度検出手段227とは、制御装置229に接続している。制御装置229は、噴射量制御手段230と、供給制御手段231とを備えている。噴射量制御手段230は、燃焼室202に燃料供給装置209の燃料噴射弁210から供給される燃料の噴射量を制御する。供給制御手段231は、酸化触媒213を加熱手段219の加熱部220により加熱し、この加熱された酸化触媒213の温度を温度検出手段217の温度検出部218により検出し、検出された酸化触媒213の温度が設定温度よりも高い場合には、尿素供給装置214から尿素を排気通路208に供給する。
さらに、供給制御手段231は、酸化触媒213を加熱手段219により加熟し、温度検出手段217により加熱された酸化触媒213の温度を検出し、検出された酸化触媒213の温度が設定された温度よりも低い場合でも、アンモニア濃度検出手段221により検出されたアンモニア濃度が設定濃度より低い場合には、尿素供給装置214から尿素を排気通路208に供給する。
排気浄化装置111は、排気通路208の尿素噴射弁215が設けられた尿素供給点よりも上流側にパティキューレートフィルタ216を設けており、供給制御手段226は、パティキュレートフィルタ216を再生中である場合、あるいは還元触媒212の温度が通常の温度ではなく過熱状態であると判定された場合には、加熱手段219による酸化触媒213の加熱を中止する。
【0022】
次に作用を説明する。
エンジン201の排気浄化装置211は、エンジン201の運転時に燃料供給装置209から燃焼室202に燃料を供給し、尿素供給装置214から還元剤としての尿素を還元触媒212の上流側の排気通路208に供給する。排気通路208に供給された尿素は、加水分解してアンモニアが生成される。生成されたアンモニアと排気とは、還元触媒212に導入され、アンモニアと排気に含まれる窒素酸化物(NOx)とが反応し、窒素(N)に還元される。還元触媒212にて反応に使われなかった余剰のアンモニアは、酸化触媒213にて酸化され、窒素(N)と水が生成され、大気中へのアンモニアの排出を防止される。
尿素供給装置214から供給される尿素量は、供給制御手段231により酸化触媒213の温度に応じて制御される。供給制御手段231は、図6に示すように、制御がスタートすると(C01)、温度検出手段217の検出信号などの各種データを読み込み(C02)、パティキュレートフィルタ216が再生中であるかを判断する(C03)。
この判断(C03)がNOの場合は、還元触媒212の温度Uが設定温度Usを越え、かつ還元触媒212に流入する排気の昇温速度Vが設定昇温速度Vsを越えた状態が、設定時間tだけ継続したかを判断する(C04)。
この判断(C04)がNOの場合は、加熱手段219により酸化触媒213を加熱制御(制御温度=Tc)し(C05)、酸化触媒213の温度Tが設定温度Ts(例えば、300℃)を越えているかを判断する(C06)。
一方、前記判断(C03)がNOの場合、また、前記判断(C04)がNOの場合は、加熱手段219による酸化触媒213を加熱を停止し(C07)、酸化触媒213の温度Tが設定温度Ts(例えば、300℃)を越えているかを判断する(C06)。
この判断(C06)がYESの場合は、尿素供給装置214の尿素噴射弁215による尿素の噴射を制御し(C08)、制御をエンドにする(C09)。この判断(C06)がNOの場合は、アンモニア濃度Dが設定濃度Dsを越えているかを判断する(C10)。
この判断(C10)がYESの場合は、尿素供給装置214の尿素噴射弁215による尿素の噴射を停止し(C11)、制御をエンドにする(C09)。この判断(C10)がNOの場合は、尿素供給装置214の尿素噴射弁215による尿素の噴射を制御し(C08)、制御をエンドにする(C09)。
【0023】
このように、このエンジン201の排気浄化装置211は、酸化触媒213の上流側において、パティキュレートフィルタ216が再生中である、あるいは、還元触媒212の温度が過熱状態であるなどの、排気温度上昇を招く現象がある場合には、加熱制御の実施を停止しているので、酸化触媒213が過度に加熱されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明の排気浄化装置は、エンジンでの使用の他、石油プラント、ボイラーなどの排気処理技術への転用が可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 エンジン
8 排気通路
9 燃料供給装置
11 排気浄化装置
12 還元触媒
13 酸化触媒
14 尿素供給装置
16 パティキュレートフィルタ
17 温度検出手段
19 加熱手段
21 制御装置
22 噴射量制御手段
23 供給制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に尿素を供給し、供給された尿素から発生したアンモニアにより排気中の窒素酸化物を還元する還元触謀と、還元触媒の下流側排気通路にアンモニアを浄化する酸化触媒とを備えたエンジンの排気浄化装置において、
前記酸化触媒の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記酸化触媒を加熱する加熱手段を備え、
前記酸化触媒を加熱手段により加熱し、前記温度検出手段により加熱された酸化触媒の温度を検出し、検出された酸化触媒の温度が設定温度よりも高い場合には、尿素を排気通路に供給する供給制御手段を備えていることを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項2】
前記還元触媒の下流側排気通路にアンモニア濃度を検出するアンモニア濃度検出手段を備え、
前記供給制御手段は、前記酸化触媒を加熱手段により加熟し、前記温度検出手段により加熱された酸化触媒の温度を検出し、検出された酸化触媒の温度が設定された温度よりも低い場合でも、前記アンモニア濃度検出手段により検出されたアンモニア濃度が設定濃度より低い場合には、尿素を排気通路に供給することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項3】
前記排気通路の尿素供給点よりも上流側にパティキューレートフィルタを設け、
前記パティキュレートフィルタを再生中である場合、あるいは前記還元触媒の温度が通常の温度ではなく過熱状態であると判定された場合には、前記加熱手段による酸化触媒の加熱を中止することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジンの排気浄化装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−252452(P2011−252452A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127520(P2010−127520)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】