説明

エンジンの排気装置

【課題】エンジンの排気通路の途中に過給機のタービンハウジングと触媒とが排気ガス流れ方向に直列に設置されかつ過給機のタービンホイールをバイパスするバイパス通路がウェイストゲートバルブで開閉される構成の排気装置において、A/Fセンサの出力に基づくA/Fインバランスの検出精度を向上可能とする。
【解決手段】排気通路9においてタービンハウジング24と触媒10との間の領域にA/Fセンサ40が設けられる。このA/Fセンサ40の検出部分はバイパス通路27から排出される排気ガスが直接当たる状態に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路の途中に過給機のタービンハウジングと触媒とが排気ガス流れ方向に直列に設置されかつ前記過給機のタービンホイールをバイパスするバイパス通路がウェイストゲートバルブで開閉される構成のエンジンの排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からエンジンの排気通路の途中に過給機のタービンハウジングと触媒とを排気ガス流れ方向に直列に設置し、前記排気通路に前記過給機のタービンホイールをバイパスするためのバイパス通路を設け、このバイパス通路に排気ガスのバイパス量を調整するためのウェイストゲートバルブを設ける構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記触媒はタービンハウジングよりも排気ガス流れ方向の下流側に設置されている。排気通路においてタービンハウジングと触媒との間の領域は、例えば横方向に延びてからほぼ90度屈曲して鉛直方向下向きに延びるような逆さL字形状に形成されている。この排気通路において逆さL字形状の領域には、空燃比センサ(以下、A/Fセンサという)やO2センサなどの排気センサが設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−208740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、前記排気通路において逆さL字形状の領域に設置されている排気センサに、タービンホイールを通過した排気ガスが当たるようになっているために、エンジンの各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出される排気ガスが混ぜられた状態で排気センサに当たるようになる。つまり、各気筒から順次排出される排気ガスがそれぞれ排気センサに当たらなくなっている。そのために、前記排気センサの出力に基づいて気筒間の空燃比の不均衡(A/Fインバランスと言う)を検出する際の精度が低下することが懸念される。
【0006】
ところで、冷間始動初期などのように排気通路が冷えた状態では排気ガスが冷却されるために、この排気ガス中に含まれる水蒸気が凝縮して凝縮水となりやすい。この凝縮水が前記排気センサの先端側に配置されるセンサ素子にかかるようなことがあると、このセンサ素子が破損するおそれがある。
【0007】
なお、例えば特開平9−222416号公報に示されているように、センサ素子をカバーで覆っている構造であっても、このカバーの側面に排気ガス導入用の開口が設けられていて、前記カバーの先端端面に排気ガス排出用の開口が設けられているので、排気センサの取り付け姿勢によっては前記端面開口から凝縮水が入り込んでセンサ素子にかかることがありうる。
【0008】
このような事情に鑑み、本発明は、エンジンの排気通路の途中に過給機のタービンハウジングと触媒とが排気ガス流れ方向に直列に設置されかつ前記過給機のタービンホイールをバイパスするバイパス通路がウェイストゲートバルブで開閉される構成のエンジンの排気装置において、排気センサの出力に基づくA/Fインバランスの検出精度を向上可能とすることを目的としている。
【0009】
また、本発明は、エンジンの排気通路の途中に過給機のタービンハウジングと触媒とが排気ガス流れ方向に直列に設置されかつ前記過給機のタービンホイールをバイパスするバイパス通路がウェイストゲートバルブで開閉される構成のエンジンの排気装置において、排気センサの出力に基づくA/Fインバランスの検出精度を向上可能とするとともに、前記排気センサのセンサ素子の被水による破損を回避可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るエンジンの排気装置は、エンジンの排気通路の途中に過給機のタービンハウジングと触媒とが排気ガス流れ方向に直列に設けられ、前記排気通路に前記過給機のタービンホイールをバイパスするためのバイパス通路が設けられ、このバイパス通路からの排気ガスのバイパス量を調整するためのウェイストゲートバルブが設けられ、前記排気通路において前記タービンハウジングと前記触媒との間の領域に排気センサが設けられ、この排気センサの検出部分は前記バイパス通路から排出される排気ガスが直接当たる状態に設定されている、ことを特徴としている。
【0011】
この構成では、バイパス通路から排出される排気ガスが排気センサの検出部分に直接当たる状態になっている。これはつまり、エンジンの各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出される排気ガスが混ざらない状態で排気センサの検出部分に当たるようになっていると言える。これにより、排気センサの出力に基づいてエンジンの各気筒間の空燃比の不均衡(A/Fインバランス)の検出精度を向上させることが可能になる。
【0012】
好ましくは、前記バイパス通路から排出される排気ガスが前記触媒の入口に向けて直進して流れるように設定され、前記排気センサの検出部分が前記直進する排気ガスの流れに当たる位置に配置される。
【0013】
この構成では、ウェイストゲートバルブが開いている場合に、エンジンの各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてバイパス通路を通る排気ガスがそれぞれ排気センサの検出部分に直接当たるようになることが明らかになる。これにより、排気センサの出力に基づいてA/Fインバランスの検出精度を向上させることが可能になる。しかも、その際、排気センサの存在によって排気ガスの乱流が作られることになるので、排気ガスが触媒の入口における局所に当たるのではなく広域に当たるようになる。これにより、バイパス通路から排出される排気ガスを比較的高温に保ったまま触媒の入口の広域から導入させることが可能になるから、触媒全体を比較的速やかに均等に昇温させて活性化させることが可能になる。
【0014】
好ましくは、前記排気通路において前記タービンハウジングと前記触媒との間の領域は、前記タービンハウジングからの排気ガスの排出方向に沿って直進して、その後90度屈曲するような形状とされる。
【0015】
好ましくは、前記タービンハウジングにおいて前記バイパス通路の排気ガス排出口および前記タービンホイールからの排気ガス排出口よりも下流側に、前記バイパス通路から排出されて前記排気センサの検出部分に当たるまでの排気ガスの流れに、前記タービンホイールから排出される排気ガスを混ざりにくくさせるための仕切り部材が設けられる。
【0016】
この構成では、例えばウェイストゲートバルブが開いている場合に、エンジンの各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてバイパス通路を通る排気ガスとそれぞれタービンホイールから排出される排気ガスとが混ざりにくくなる。そのため、ウェイストゲートバルブが開いている場合に、エンジンの各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてバイパス通路を通る排気ガスが排気センサの検出部分に直接当たりやすくなって、エンジンの各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてタービンホイールで混ぜられる排気ガスが排気センサの検出部分に当たりにくくなる。これにより、上記した作用、効果が顕著に得られるようになる。
【0017】
好ましくは、前記ウェイストゲートバルブは、開放されたときに、前記バイパス通路から排出されて前記排気センサの検出部分に当たるまでの排気ガスの流れに、前記タービンホイールから排出される排気ガスを混ざりにくくさせる状態で配置される。
【0018】
このウェイストゲートバルブは、前記バイパス通路の排出口側に配置されて当該排出口を開閉可能とする板状の部材とされ、かつ開放されたときに、前記バイパス通路から直進して排出される排気ガスと前記タービンホイールから直進して排出される排気ガスとの間に、配置される。
【0019】
この構成では、例えばウェイストゲートバルブが開いている場合に、バイパス通路から排出される排気ガスとタービンホイールから排出される排気ガスとが混ざりにくくなる。そのため、ウェイストゲートバルブが開いている場合に、エンジンの各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてバイパス通路を通る排気ガスが排気センサの検出部分に直接当たりやすくなって、エンジンの各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてタービンホイールで混ぜられた排気ガスが排気センサの検出部分に当たりにくくなる。これにより、上記した作用、効果が得られやすくなる。
【0020】
好ましくは、前記排気センサの検出部分は、センサ素子を内カバーと外カバーとからなる2重壁で覆う構造とされ、かつ前記内カバーと外カバーとにはそれぞれ側面開口と端面開口とが設けられ、この排気センサの検出部分は、前記バイパス通路から排出される排気ガスが前記側面開口から流入して前記端面開口から流出するような設置状態とされる。
【0021】
この構成では、例えばエンジンの冷間始動初期などのように排気通路が冷えている状況において排気ガスに含まれる水蒸気が凝縮したとしても、この凝縮水を含む排気ガスは排気センサの側面開口から流入して内カバーに衝突して気液分離されることになる。この気液分離された凝縮水は外カバーと内カバーとの対向空間から端面開口へ向かうようになる一方、前記気液分離された排気ガス成分は内カバーの側面開口から入ってセンサ素子に当たるようになる。これにより、凝縮水がセンサ素子に当たらなくなるので、センサ素子の破損が回避されるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るエンジンの排気装置は、エンジンの排気通路の途中に過給機のタービンハウジングと触媒とが排気ガス流れ方向に直列に設置されかつ前記過給機のタービンホイールをバイパスするバイパス通路がウェイストゲートバルブで開閉される構成において、排気センサの出力に基づくA/Fインバランスの検出精度を向上させることが可能になる。
【0023】
また、本発明に係るエンジンの排気装置は、エンジンの排気通路の途中に過給機のタービンハウジングと触媒とが排気ガス流れ方向に直列に設置されかつ前記過給機のタービンホイールをバイパスするバイパス通路がウェイストゲートバルブで開閉される構成において、排気センサの出力に基づくA/Fインバランスの検出精度を向上させることが可能になるとともに、前記排気センサのセンサ素子の被水による破損を回避することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るエンジンの排気装置の一実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】図1においてタービンハウジングと触媒との間の領域を拡大して示す図であって、ウェイストゲートバルブを開いた状態を示している。
【図3】図2のA方向からタービンハウジングを見た図である。
【図4】図2および図3のB方向からタービンハウジングと触媒との間の領域を見た図である。
【図5】図4においてA/Fセンサの設置姿勢を説明するための説明図である。
【図6】図4のA/Fセンサの検出部分の概略構成を示す断面図である。
【図7】本発明に係るエンジンの排気装置の他実施形態で、図3に対応する図である。
【図8】図7の実施形態で、図4に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1から図6に本発明の一実施形態を示している。この実施形態で例示するエンジン1は例えば直列4気筒になっているが、その気筒数やエンジンの型式については特に限定されるものではない。
【0027】
エンジン1の図示していないシリンダヘッドには、各気筒に吸入空気を分配して供給するためのインテークマニホールド2と、各気筒から排出される排気ガスを集合させるためのエキゾーストマニホールド3A,3Bとが取り付けられている。
【0028】
インテークマニホールド2には、大気中から空気を取り込むための吸気管4が接続されている。この吸気管4の入口にはエアクリーナ5が取り付けられている。このインテークマニホールド2と吸気管4とが吸気通路を構成している。
【0029】
なお、インテークマニホールド2において吸気流れ方向の上流側には、エンジン1の吸入空気量を調整するためのスロットルバルブ6が設けられている。このスロットルバルブ6は、図示していないが、スロットルモータおよびエレクトロニックコントロールユニット(ECU)によって作動される。
【0030】
第1エキゾーストマニホールド3Aはエンジン1の例えば1番気筒および4番気筒の各排気ポートに接続されるようになっており、第2エキゾーストマニホールド3Bはエンジン1の例えば2番気筒および3番気筒の各排気ポートに接続されるようになっている。これらのエキゾーストマニホールド3A,3Bは、それぞれ上流側が二股とされて下流側で集合して1本になった形状、つまり2in1形状になっている。
【0031】
また、2つのエキゾーストマニホールド3A,3Bの下流側には、第1中継排気管8を介して過給機としてのターボチャージャ20が取り付けられている。この第1中継排気管8は、内部で2つに区画された通路を有し、この各通路の上流側に前記2つのエキゾーストマニホールド3A,3Bの各下流側が個別に連通連結されており、また、前記各通路の下流側が下記するタービンハウジング24に連通連結されている。このような構成を採用するターボチャージャ20は、いわゆる「ツインスクロールタイプのターボチャージャ」と呼ばれている。
【0032】
ターボチャージャ20は、排気圧を利用して吸入空気を過給してエンジン1に供給するものであって、タービンホイール21、コンプレッサインペラ22などを備えている。
【0033】
このターボチャージャ20の基本的な動作としては、エンジン1からエキゾーストマニホールド3A,3Bに排出される排気ガスのエネルギーによってタービンホイール21が回転され、これと一体にコンプレッサインペラ22が回転されることにより、吸気管4に吸入される空気が過給されて、エンジン1の各気筒の燃焼室に強制的に送り込まれるようになる。このコンプレッサインペラ22によって過給された空気はインタークーラ7によって冷却されるようになっている。インタークーラ7は、吸気管4においてコンプレッサインペラ22よりも吸気流れ方向の下流側に設置されている。
【0034】
タービンホイール21は、タービンハウジング24内に回転自在に設けられている。タービンハウジング24の排気導入口には2つのエキゾーストマニホールド3A,3Bの下流側の第1中継排気管8(排気通路の途中)の下流側が接続されている。
【0035】
コンプレッサインペラ22は、吸気管4の途中に設置されるコンプレッサハウジング25内に設けられている。このコンプレッサインペラ22はタービンホイール21と一体のタービンシャフト23に取り付けられている。これにより、タービンホイール21とコンプレッサインペラ22とは一体に回転するようになっている。
【0036】
このタービンハウジング24の下流側には排気ガスを大気に放出するための第2中継排気管9が接続されている。この第2中継排気管9は「エルボ」と呼ばれる部品であって、下記タービンホイール21側の排出口26から排出される排気ガスの排出方向に沿って直進して、その後ほぼ90度屈曲して鉛直方向ほぼ下向きに延びるような逆さL字形状に形成されている。
【0037】
この第2中継排気管9の下向き部分には、排気ガスを浄化するための触媒10が設けられている。この触媒10の直径は第2中継排気管9の前記下向き部分の直径よりも大きく設定される関係より、この第2中継排気管9の下向き部分は触媒10へ向けて徐々に拡径するコーン形状とされている。なお、2つのエキゾーストマニホールド3A,3Bと第1、第2中継排気管8,9とが排気通路の一部を構成している。
【0038】
この実施形態のターボチャージャ20には、バイパス通路27、ウェイストゲートバルブ(WGV)28などが設けられている。
【0039】
バイパス通路27は、エンジン1から排出される排気ガスをタービンホイール21をバイパスして触媒10に導くように、タービンハウジング24に設けられている。つまり、このバイパス通路27はタービンハウジング24においてその入口側と出口側とを短絡するように設置されている。このバイパス通路27の排出口は、図2および図3に示すように、タービンハウジング24においてタービンホイール21を回転駆動した排気ガスの排出口26の隣に設けられている。
【0040】
ウェイストゲートバルブ28は、バイパス通路27の排出口側に開閉可能に設置されており、このバイパス通路27の開度を調整して排気ガスのバイパス量を調整するものである。この排気ガスのバイパス量を調整することにより、例えば過給圧を制御することが可能になる他、エンジン1の冷間始動してから速やかに触媒10を活性化することが可能になる。
【0041】
このウェイストゲートバルブ28は、例えば円形でかつ板状の部材として形成されていて、その外周所定位置が支軸29に回転一体に取り付けられている。この支軸29には図示していないが駆動源が動力伝達機構を介して連結されており、前記駆動源で発生する駆動力を動力伝達機構で支軸29を回転させるための回転動力に変換し、当該回転動力を支軸29に伝達することにより当該支軸29と回転一体のウェイストゲートバルブ28を開閉動作させるようになっている。
【0042】
このウェイストゲートバルブ28、支軸29、前記動力伝達機構ならびに前記駆動源がウェイストゲートバルブユニットを構成している。なお、前記駆動源は例えばモータやバキューム・レギュレーティング・バルブなどとすることが可能である。また、前記動力伝達機構は例えばリンク機構、あるいは歯車機構などすることが可能である。
【0043】
そして、図2から図6に示すように、第2中継排気管9においてタービンハウジング24と触媒10との間の領域には、排気センサとしてのA/Fセンサ40が設けられている。この排気センサはA/Fセンサ40の他にO2センサであってもよい。
【0044】
このA/Fセンサ40は、その先端側の検出部分(センサ素子41の配置部分)が第2中継排気管9における前記領域内に突出するように取り付けられている。このA/Fセンサ40の先端側の検出部分の構造ならびに取り付け状態を以下で詳しく説明する。
【0045】
このA/Fセンサ40の先端側の検出部分は、例えば図6に示すように、センサ素子41を内カバー42と外カバー43とからなる2重壁で覆うような構造になっている。
【0046】
センサ素子41は、排気ガスが接する棒状の固体電解質部分を備えており、この棒状のセンサ素子41がボディ44に貫通する状態で保持されている。
【0047】
両方のカバー42,43の側面には、側面開口45,46がそれぞれ先端突出方向に対して直交する方向で重ならないようにずらした位置に設けられている。さらに両方のカバー42,43の先端端面には、端面開口47,48が設けられている。側面開口45,46から端面開口47,48までの距離は可及的に長く設定されている。
【0048】
A/Fセンサ40の検出部分について2重壁構造にしているから、仮に外カバー43の側面開口46から外カバー43と内カバー42との対向空間に排気ガス中の凝縮水が入り込んだとしても、この凝縮水は内カバー42の側面に当たって前記対向空間から先端側へ向かうようになり、内カバー42の側面開口45には凝縮水が入らないようになる。このようにA/Fセンサ40のセンサ素子41の外周が気液分離構造になっているのである。
【0049】
このようにして凝縮水が分離された排気ガスは、内カバー42の側面開口45から内カバー43とセンサ素子41との間の対向空間に入り込んで、センサ素子41にその長手方向に沿って流れてセンサ素子41の外周面に当たるようになる。なお、外カバー43と内カバー42との対向空間に入り込んだ凝縮水は、外カバー43の端面開口46から外部に排出されるようになる。
【0050】
ところで、上記したA/Fセンサ40は、その検出部分が、排気ガスの排出方向の延長線上に位置するように配置されている。特に、この実施形態では、図2の太線で示すように、バイパス通路27の排出口から排出される排気ガスが前記排出方向に直進して流れるように設定されていて、この排気ガスが触媒10の入口に向けて直線的に流入するように設定されている。そこで、A/Fセンサ40の検出部分を、バイパス通路27から排出される前記直線的な排気ガスの流れに直接当たる位置に配置している。
【0051】
さらに、タービンハウジング24においてタービンホイール21側の排出口26およびバイパス通路27の排出口が設けられる内壁部24aの存在位置から径方向外向きのフランジ24bに至るまでの領域には、仕切り部材31が設けられている。
【0052】
この仕切り部材31は、前記領域において互いに隣り合う位置に配置されるタービンホイール21側の排出口26とバイパス通路27の排出口との間に設けられている。つまり、この仕切り部材31は、例えばウェイストゲートバルブ28を開いている場合に、バイパス通路27から排出される排気ガスと、タービンホイール21側の排出口26から排出される排気ガスとを混ざりにくくさせるために設けられている。
【0053】
この実施形態では、A/Fセンサ40の検出部分の姿勢について次のように特定しているので、説明する。
【0054】
図5の一点鎖線で示すように、A/Fセンサ40の中心軸線51を、バイパス通路27から一直線状に排出される排気ガスの流れに沿う直線52と直交する方向に延びる直線53に対して平行となるように設定することができる。なお、前記直線52は排気ガスの流れを真上から見たときの中心線である。さらに前記直線53は水平方向とほぼ平行になっている。
【0055】
その他には、A/Fセンサ40の中心軸線51を、前記直線53に対して所定角度(図5のθ参照)傾かせるように設定することができる。ここで、前記角度θとは、中心軸線51を直線53と一致させている状態からA/Fセンサ40のボディ44の適所を支点としてA/Fセンサ40の先端を直線53の位置から排気ガス流れ方向の下流側へずらすようにしてA/Fセンサ40を傾かせたときに、直線53に対して中心軸線51が作る角度のこととする。
【0056】
このようにA/Fセンサ40の取り付け姿勢を特定した場合には、バイパス通路27から排出される排気ガスがA/Fセンサ40の端面開口47,48から流入することを防止する可能性を可及的に高くすることが可能になり、センサ素子41の万一の被水による破損を防止するうえで有利になる。特に、前記後者のようにA/Fセンサ40の取り付け姿勢を所定角度θ傾けるように設定した場合には、バイパス通路27から排出される排気ガスがA/Fセンサ40の外カバー43の側面開口46から先端側へ向けて斜め下向きに流入しやすくなる。
【0057】
このような構成を備える実施形態では、次のような作用、効果が得られる。
【0058】
まず、ウェイストゲートバルブ28を開いた場合には、仕切り部材31を設けているから、バイパス通路27から排出される排気ガスと、タービンホイール21側の排出口26から排出される排気ガスとが混ざりにくくなる。そのため、例えば図2に示すように、エンジン1の各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてバイパス通路27を通る排気ガスがそれぞれA/Fセンサ40の検出部分(センサ素子41の配置部分)に直接当たりやすくなって、エンジン1の各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてタービンホイール21で混ぜられる排気ガスがA/Fセンサ40の検出部分に直接当たりにくくなる。
【0059】
これは言い換えると、エンジン1の各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出される排気ガスがそれぞれA/Fセンサ40の検出部分に当たりやすくなる。そのために、A/Fセンサ40の出力に基づいてA/Fインバランスの検出精度を向上させることが可能になる。
【0060】
また、バイパス通路27から排出される排気ガスは触媒10の入口における外径側の所定角度範囲に直線的に向かうようになっているものの、バイパス通路27から排出される排気ガスは一旦A/Fセンサ40の検出部分に当たるようになっているので、このA/Fセンサ40によって排気ガスの乱流が作られることになる。これにより、排気ガスが触媒10の入口における前記局所に当たるのではなく広域に当たるようになる。つまり、バイパス通路27から排出される排気ガスを比較的高温に保ったまま触媒10の入口の広域から導入させることが可能になるから、触媒10全体を比較的速やかに均等に昇温させて活性化させることが可能になる。
【0061】
さらに、例えばエンジン1の冷間始動初期などのように排気通路(エキゾーストマニホールド3A,3B、第1、第2中継排気管8,9)が冷えている状況において排気ガスに含まれる水蒸気が凝縮すると、この凝縮水を含む排気ガスがA/Fセンサ40の検出部分に直接当たるようになる。しかしながら、この凝縮水を含む排気ガスは外カバー43の側面開口46から入るようになって、2つのカバー42,43の端面開口47,48から流入せずに済むようになる。そして、前記外カバー43の側面開口46から入った凝縮水を含む排気ガスは内カバー42に衝突して気液分離される。この気液分離された凝縮水は外カバー43と内カバー42との対向空間から端面開口48へ向かうようになって当該端面開口48から外部へ排出されるようになる一方、前記気液分離された排気ガス成分は内カバー42の側面開口45から入ってセンサ素子41に当たるようになって端面開口47,48から外部へ排出されるようになる。このように、凝縮水が2つのカバー42,43の端面開口47,48から流入してセンサ素子41に当たるといったことを回避できるので、センサ素子41の被水による万一の破損が回避されるようになる。
【0062】
特に、この実施形態では、A/Fセンサ40の取り付け姿勢を図5に示すように特定することによって、排気ガスを外カバー43の側面開口46から斜め下向きに流入させるようにして、排気ガスや凝縮水をA/Fセンサ40の検出部分の先端へと流しやすくさせるように工夫している。これにより、凝縮水が分離された排気ガスを内カバー42とセンサ素子41との対向空間からセンサ素子41の長手方向に沿って先端へ向けて流しやすくすることが可能になる。一方、排気ガスから分離された凝縮水を2つのカバー42,43の対向空間から先端の端面開口48へ向けて流しやすくすることが可能になって、当該端面開口48から外部へスムースかつ効率良く排出させることが可能になる。
【0063】
そして、ウェイストゲートバルブ28を閉めている場合には、例えば図4に示すように、エンジン1から排出される排気ガスのすべてがタービンホイール21に向けて導入されることになり、このタービンホイール21を回転駆動した排気ガスがタービンホイール21側の排出口26から第2中継排気管9に排出されることになる。この場合、タービンホイール21側の排出口26から排出される排気ガスが広がりつつ触媒10の入口の広域から導入されることになる。
【0064】
以上説明したように本発明を適用した実施形態では、バイパス通路27から排出される排気ガスに、タービンホイール21側の排出口26から排出される排気ガスを混ざりにくくさせて、バイパス通路27から排出される排気ガスをA/Fセンサ40の検出部分(センサ素子41の配置部分)に直接当たりやすくさせるように工夫している。これにより、エンジン1の各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてバイパス通路27を通る排気ガスがそれぞれA/Fセンサ40の検出部分に直接当たりやすくなって、エンジン1の各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてタービンホイール21で混ぜられる排気ガスがA/Fセンサ40の検出部分に当たりにくくなるから、A/Fセンサ40の出力に基づいてA/Fインバランスの検出精度を向上させることが可能になる。
【0065】
しかも、エンジン1の冷間始動時のように排気通路(エキゾーストマニホールド3A,3B、第1、第2中継排気管8,9)が冷えている状況では排気ガスに含まれる水蒸気が凝縮水になりやすいが、そのような状況で前記排気ガスに含まれる水蒸気が凝縮水になったとしても、この凝縮水がA/Fセンサ40のセンサ素子41にかからないようになっているから、このA/Fセンサ40の破損を回避することが可能になる。
【0066】
ところで、この実施形態の場合には、エンジン1を冷間始動の初期段階においてウェイストゲートバルブ28を半開状態にしておき、暖機途中段階において排気通路(エキゾーストマニホールド3A,3B、第1、第2中継排気管8,9)がある程度昇温して排気ガス中に含まれる水蒸気が凝縮水になりにくい状況になると、ウェイストゲートバルブ28を全開状態にするように制御することが可能である。なお、前記冷間始動の初期段階と、前記暖機途中段階において排気ガス中に含まれる水蒸気が凝縮水になりにくい状況とでウェイストゲートバルブ28の開度を制御するには、例えば排気ガスの温度に基づいて行うことが可能である。例えばエンジン1から排出される排気ガスの温度が所定の閾値以上になった場合に前記暖機途中段階において排気ガス中に含まれる水蒸気が凝縮水になりにくい状況であると判定することができる。前記エンジン1から排出される排気ガスの温度は、例えば実測値または予測値(エンジン回転数や吸入空気量などをパラメータとする計算値)とされる。また、前記閾値は、いろいろな実験やシミュレーションにより適宜に設定されるが、例えば暖機完了温度より低く設定される。
【0067】
そして、前記のようにウェイストゲートバルブ28を半開状態にしている場合には、エンジン1の各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてバイパス通路27を通る排気ガスが前記半開状態のウェイストゲートバルブ28に衝突して向きが変えられることになって、当該凝縮水を含む排気ガスをA/Fセンサ40のセンサ素子41に直接衝突させないように、ウェイストゲートバルブ28の設置形態を管理することが好ましい。
【0068】
このようにすれば、前記したようなA/Fセンサ40の取り付け姿勢設定との相乗作用により、凝縮水が発生しやすい冷間始動初期段階において凝縮水をA/Fセンサ40のセンサ素子41に当てにくくする可能性をさらに高めることが可能になるから、A/Fセンサ40のセンサ素子41の被水による破損を回避するうえでさらに有利になる。
【0069】
また、前記のように凝縮水が発生しにくくなる暖機途中段階でウェイストゲートバルブ28を全開にすると、エンジン1の各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてバイパス通路27を通る排気ガスをそれぞれA/Fセンサ40の検出部分に直接当てることが可能になる。これにより、A/Fセンサ40の出力に基づいてA/Fインバランスの検出精度を向上させることが可能になる。
【0070】
このように、エンジン1を冷間始動する際におけるウェイストゲートバルブ28の開度を制御することにより、A/Fセンサ40のセンサ素子41の被水による破損回避と、A/Fセンサ40の出力に基づくA/Fインバランスの検出精度の向上とを達成する可能性を可及的に高めることが可能になる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0072】
(1)上記実施形態で説明した排気装置の適用対象となるエンジン1は、ディーゼルエンジンあるいはガソリンエンジンのどちらでもよい。ディーゼルエンジンとする場合だと触媒10は例えばディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)などとされ、また、ガソリンエンジンとする場合だと触媒10は例えば三元触媒とされる。
【0073】
(2)図7および図8には本発明の他の実施形態を示している。この実施形態では、図3に示したような仕切り部材31を設けないようにしており、その代わりに、ウェイストゲートバルブ28を開いたとき(全開にしたとき)に、このウェイストゲートバルブ28が、前記仕切り部材31の役割を果たすように工夫している。
【0074】
つまり、図7および図8に示すように、ウェイストゲートバルブ28を全閉状態からほぼ90度開いたとき(全開にしたとき)に、バイパス通路27から排出されてA/Fセンサ40の検出部分に向かう排気ガスの流れに、タービンホイール21側の排出口26から排出される排気ガスが混ざりにくくさせるようにしている。
【0075】
具体的に、ウェイストゲートバルブ28の支軸29を、バイパス通路27とタービンホイール21側の排出口26との間に配置し、ウェイストゲートバルブ28を全開にしたときに、円形でかつ板状の部材からなるウェイストゲートバルブ28がバイパス通路27から直進して排出される排気ガスとタービンホイール21側の排出口26から直進して排出される排気ガスとの間に配置されて当該両方の排気ガスの排出方向とほぼ平行な姿勢になるようにしている。
【0076】
この場合、図7および図8に示すように、ウェイストゲートバルブ28を全開にした場合に、このウェイストゲートバルブ28が図3に示したような仕切り部材31の役割を果たすようになるので、エンジン1の各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてバイパス通路27を通る排気ガスがそれぞれA/Fセンサ40の検出部分に直接当たりやすくなって、エンジン1の各気筒から順次(所定の燃焼順序に応じたタイミング)排出されてタービンホイール21で混ぜられる排気ガスがA/Fセンサ40の検出部分に当たりにくくなる。これにより、上記実施形態に比べて遜色の無い作用、効果が得られるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、エンジンの排気通路の途中に過給機のタービンハウジングと触媒とが排気ガス流れ方向に直列に設置されかつ前記タービンハウジングをバイパスするバイパス通路がウェイストゲートバルブで開閉される構成の排気装置に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 エンジン
2 インテークマニホールド
3A 第1エキゾーストマニホールド(排気通路の一部)
3B 第2エキゾーストマニホールド(排気通路の一部)
4 吸気管
8 第1中継排気管(排気通路の一部)
9 第2中継排気管(排気通路の一部)
20 ターボチャージャ
21 タービンホイール
24 タービンハウジング
26 タービンホイール側の排出口
27 バイパス通路
28 ウェイストゲートバルブ
31 仕切り部材
40 A/Fセンサ
41 センサ素子
42 内カバー
43 外カバー
45 内カバーの側面開口
46 外カバーの側面開口
47 内カバーの端面開口
48 外カバーの端面開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路の途中に過給機のタービンハウジングと触媒とが排気ガス流れ方向に直列に設けられ、
前記排気通路に前記過給機のタービンホイールをバイパスするためのバイパス通路が設けられ、このバイパス通路からの排気ガスのバイパス量を調整するためのウェイストゲートバルブが設けられ、
前記排気通路において前記タービンハウジングと前記触媒との間の領域に排気センサが設けられ、
この排気センサの検出部分は前記バイパス通路から排出される排気ガスが直接当たる状態に設定されている、ことを特徴とするエンジンの排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの排気装置において、
前記バイパス通路から排出される排気ガスが前記触媒の入口に向けて直進して流れるように設定され、
前記排気センサの検出部分が前記直進する排気ガスの流れに当たる位置に配置される、ことを特徴とするエンジンの排気装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンジンの排気装置において、
前記排気通路において前記タービンハウジングと前記触媒との間の領域は、前記タービンハウジングからの排気ガスの排出方向に沿って直進して、その後90度屈曲するような形状とされる、ことを特徴とするエンジンの排気装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のエンジンの排気装置において、
前記タービンハウジングにおいて前記バイパス通路の排気ガス排出口および前記タービンホイールからの排気ガス排出口よりも下流側に、前記バイパス通路から排出されて前記排気センサの検出部分に当たるまでの排気ガスの流れに、前記タービンホイールから排出される排気ガスを混ざりにくくさせるための仕切り部材が設けられる、ことを特徴とするエンジンの排気装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のエンジンの排気装置において、
前記ウェイストゲートバルブは、開放されたときに、前記バイパス通路から排出されて前記排気センサの検出部分に当たるまでの排気ガスの流れに、前記タービンホイールから排出される排気ガスを混ざりにくくさせる状態で配置される、ことを特徴とするエンジンの排気装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエンジンの排気装置において、
前記ウェイストゲートバルブは、前記バイパス通路の排出口側に配置されて当該排出口を開閉可能とする板状の部材とされ、かつ開放されたときに、前記バイパス通路から直進して排出される排気ガスと前記タービンホイールから直進して排出される排気ガスとの間に、配置される、ことを特徴とするエンジンの排気装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のエンジンの排気装置において、
前記排気センサの検出部分は、センサ素子を内カバーと外カバーとからなる2重壁で覆う構造とされ、かつ前記内カバーと外カバーとにはそれぞれ側面開口と端面開口とが設けられ、
この排気センサの検出部分は、前記バイパス通路から排出される排気ガスが前記側面開口から流入して前記端面開口から流出するような設置状態とされる、ことを特徴とするエンジンの排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−241545(P2012−241545A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109761(P2011−109761)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】