説明

エンジンの故障診断装置

【課題】多重故障が発生しても故障部位を特定でき、信頼性の高い診断結果を得られる故障診断装置を提供する。
【解決手段】エンジンスイッチのオフに伴いポンプ駆動デューティを0%にしたときに、燃料圧力がプレッシャレギュレータの設定圧付近まで低下し、設定圧付近の圧力を維持すれば正常であると判断し、設定圧以下まで圧力降下を続ける場合は、燃料漏れと判定する。一方、ポンプ駆動デューティを0%にしたときに燃料圧力が設定圧よりも高い圧力を維持する場合はポンプリレーをオフし、設定圧付近まで下がれば、燃料ポンプのショート故障の発生と判定し、設定圧付近以下まで下がり続ける場合は、燃料漏れが発生していると判定する。一方、ポンプリレーをオフしても設定圧付近まで圧力が低下しない場合は、プレッシャレギュレータの閉固着故障の発生と判定し、その後、圧力降下を続ける場合には、更に、燃料漏れが発生していると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに燃料を供給する燃料供給装置に適用される故障診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料供給装置における燃料リークの発生を診断する装置として、エンジン停止後の燃料ポンプ駆動時の燃料圧力を検出すると共に、燃料ポンプを停止してから所定時間以上経過したときの燃料圧力を検出し、これらの燃料圧力の差が所定値以上になると燃料漏れがあると判定する診断装置があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−350358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、駆動停止指令後も燃料ポンプに電源が供給され続けるショート故障や、プレッシャレギュレータからの燃料リリーフが不能になる閉固着故障などが、燃料漏れと共に発生すると、燃料ポンプの停止指令前後における圧力差からは故障部位を特定できず、誤診断が発生することがあった。
【0005】
そこで、本願発明は、多重故障が発生しても故障部位を特定でき、信頼性の高い診断結果を得られる故障診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本願発明では、リレーを介して電源が供給される電動式の燃料ポンプと、前記燃料ポンプ下流側の燃料配管内における燃料圧力を検出する燃圧センサと、前記燃料配管内における燃料圧力を設定圧に調整するプレッシャレギュレータとを備え、エンジンに燃料を供給する燃料供給装置に適用される故障診断装置であって、エンジンスイッチのオフ後における前記リレーのオン状態で、前記燃圧センサが検出した燃料圧力に基づいて前記燃料供給装置の第1故障診断を行った後、前記リレーのオフ状態で、前記燃圧センサが検出した燃料圧力に基づいて前記燃料供給装置の第2故障診断を行うようにした。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によると、リレーのオン状態での第1故障診断と、リレーのオフ状態での第2故障診断とを行うことで、多重故障が発生しても故障部位を特定でき、信頼性の高い診断結果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願発明の実施形態におけるエンジンのシステム図である。
【図2】本願発明の実施形態における燃料供給装置の故障診断を示すフローチャートである。
【図3】本願発明の実施形態における燃料供給装置の故障診断を示すフローチャートである。
【図4】本願発明の実施形態における故障部位による燃圧変化の違いを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明に係る故障診断装置の実施形態を説明する。
図1は、実施形態における、燃料供給装置を含むエンジンのシステム図である。
図1において、エンジン(内燃機関)1は、吸気通路2に燃料噴射弁3を備え、燃料噴射弁3は、エンジン1の吸気通路2内に燃料を噴射する。
【0010】
燃料噴射弁3が噴射した燃料は、空気と共に吸気バルブ4を介して燃焼室5内に吸引され、点火プラグ6による火花点火によって着火燃焼する。燃焼室5内の燃焼ガスは、排気バルブ7を介して排気通路8に排出される。
吸気通路2の燃料噴射弁3を配設した部分よりも上流側に、スロットルモータ9で開閉する電子制御スロットル10を配し、この電子制御スロットル10の開度によってエンジン1の吸入空気量を調整する。
【0011】
また、エンジン1は、燃料タンク11内の燃料を燃料ポンプ12によって燃料噴射弁3に圧送する燃料供給装置13を備える。
燃料供給装置13は、燃料タンク11、燃料ポンプ12、プレッシャレギュレータ(圧力調整弁)14、オリフィス15、燃料ギャラリー配管16、燃料供給配管17、燃料戻し配管18、ジェットポンプ19、燃料移送管20を含む。
【0012】
燃料ポンプ12は、モータでポンプインペラを回転駆動する電動式ポンプであり、燃料タンク11内に設けてある。
燃料ポンプ12の吐出口には燃料供給配管17の一端が接続され、燃料供給配管17の他端は燃料ギャラリー配管16に接続され、更に、燃料ギャラリー配管16に燃料噴射弁3の燃料供給口を接続してある。
【0013】
燃料戻し配管18は、燃料タンク11内で燃料供給配管17から分岐延設され、燃料戻し配管18の他端は燃料タンク11内に開口される。
燃料戻し配管18には、上流側から順に、プレッシャレギュレータ14、オリフィス15、ジェットポンプ19を設けてある。
【0014】
プレッシャレギュレータ14は、燃料戻し配管18を開閉する弁体14aと、該弁体14aを燃料戻し配管18上流側の弁座に向けて押圧するコイルスプリングなどの弾性部材14bとで構成される。
そして、プレッシャレギュレータ14は、燃料噴射弁3に供給される燃料圧力FUPR(燃料供給配管17内の燃料圧力FUPR)が設定圧(開弁圧)よりも高い場合に開弁し、燃料供給配管17内の燃料を燃料戻し配管18を介して燃料タンク11内にリリーフすることで、燃料圧力FUPRを設定圧に向けて低下させ、燃料圧力FUPRが設定圧にまで低下すると閉弁する。
【0015】
前述のように、プレッシャレギュレータ14は、燃料圧力FUPRが設定圧よりも高くなると開弁するが、プレッシャレギュレータ14の下流側に設けたオリフィス15によって、燃料戻し配管18を介して燃料タンク11内に戻される燃料流量が絞られる。このため、燃料ポンプ12からの燃料の吐出量を、戻し流量以上に増やすことで、設定圧を超える圧力にまで燃料圧力FUPRを昇圧できるようになっている。
尚、燃料ポンプ12の吐出量の制御によって、プレッシャレギュレータ14の設定圧を超える燃料圧力FUPRにまで昇圧できる程度に、燃料戻し配管18によって燃料タンク11内に戻される燃料量(リリーフ流量)が絞られるようになっていればよく、例えば、オリフィス15を設けずに、プレッシャレギュレータ14が流量(リリーフ流量)を絞る機能を備えることができる。
【0016】
ジェットポンプ19は、プレッシャレギュレータ14、オリフィス15を介して燃料タンク11内に戻される燃料の流れによって、燃料移送管20を介して燃料を移送させるものである。
燃料タンク11は、底面の一部が盛り上がって底部空間を2つの領域11a,11bに隔てている所謂鞍型の燃料タンクであり、燃料ポンプ12の吸い込み口は領域11a内に開口するため、領域11b内の燃料を領域11a側に移送させないと、領域11b内の燃料が残存することになってしまう。
【0017】
そこで、ジェットポンプ19は、プレッシャレギュレータ14及びオリフィス15を介して燃料タンク11の領域11a内に戻される燃料の流れによって、燃料移送管20内に負圧を作用させ、燃料移送管20が開口する領域11b内の燃料を、燃料移送管20を介してジェットポンプ19まで導き、プレッシャレギュレータ14からの戻し燃料と共に領域11a内に排出させる。
本実施形態では、上記のように、ジェットポンプ19を備えるが、燃料タンク11が所謂鞍型でない場合、即ち、燃料タンク11の底部空間が隔成されずに、燃料ポンプ12の吸い込み口から燃料タンク11内の燃料を残量なく吸引できる場合には、ジェットポンプ19及び燃料移送管20を省略することができる。
【0018】
マイクロコンピュータを備えるECM(エンジン・コントロール・モジュール)31は、燃料噴射弁3による燃料噴射、点火プラグ6による点火(点火コイルへの通電)、電子制御スロットル10の開度などを制御する。
また、マイクロコンピュータを備えるFCM(フューエル・コントロール・モジュール)30は、燃料ポンプ12の駆動回路(モータ電流をオン,オフするトランジスタ回路)を備え、燃料ポンプ12への電力供給を制御する。
【0019】
ECM31とFCM30とは相互に通信可能に構成され、ECM31は、燃料ポンプ12の駆動デューティ(操作量)を指示する信号などをFCM30に向けて送信する。
燃料ポンプ12の駆動デューティ(%)は、燃料ポンプ12を回転駆動するモータの電圧を制御する操作量であって、1周期当たりの通電時間割合(オン時間割合)を示し、駆動デューティが増大することで、モータの平均印加電圧が増加し、燃料ポンプ12の吐出圧(吐出流量)が増大するものとする。
【0020】
ECM31は、各種センサが出力する信号を入力する。
前記各種センサとしては、燃料ギャラリー配管16内の燃料圧力FUPRを検出する燃圧センサ33、図外のアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)ACCを検出するアクセル開度センサ34、エンジン1の吸入空気流量QAを検出するエアフローセンサ35、エンジン1の回転速度NEを検出する回転センサ36、エンジン1の冷却水温度TW(エンジン温度)を検出する水温センサ37、排気中の酸素濃度に応じてエンジン1における空燃比A/Fを検出する空燃比センサ38などを設けてある。
【0021】
そして、ECM31は、吸入空気流量QAとエンジン回転速度NEとに基づいて基本噴射パルス幅TPを演算し、基本噴射パルス幅TPをそのときの燃料圧力FUPRに応じて補正する一方、空燃比センサ38の出力に基づいて実際の空燃比を目標空燃比に近づけるための空燃比フィードバック補正係数LAMBDAを演算し、燃料圧力FUPRに応じて補正した基本噴射パルス幅TPを、更に空燃比フィードバック補正係数LAMBDAなどで補正して、最終的な噴射パルス幅TIを演算する。
そして、各気筒の噴射タイミングになると、燃料噴射弁3に対して噴射パルス幅TIの噴射パルス信号を出力し、燃料噴射弁3による燃料噴射量及び噴射タイミングを制御する。
【0022】
また、ECM31は、エンジン1の負荷を示す基本噴射パルス幅TPや、エンジン回転速度NEなどに基づいて点火時期(点火進角値)を演算し、当該点火時期において点火プラグ6による火花放電がなされるように、図外の点火コイルへの通電を制御する。
また、ECM31は、アクセル開度ACCなどから電子制御スロットル10の目標開度を演算し、電子制御スロットル10の実開度が目標開度に近づくようにスロットルモータ9への通電を制御する。
【0023】
更に、ECM31は、燃圧センサ33が検出した燃料圧力FUPR、及び、エンジン1の運転条件(エンジン始動、冷却水温度TW、加速、エンジン負荷、エンジン回転速度、エンジン停止など)に応じて算出した目標燃圧TGFUPRに基づき、燃料ポンプ12の駆動デューティDUTY(目標印加電圧)を算出し、この駆動デューティDUTY(%)を示す信号を、FCM30に送信する。
そして、FCM30は、ECM31側から受信した駆動デューティDUTYの指示信号に基づき、燃料ポンプ12の駆動回路(モータ電流をオン,オフするトランジスタ)をデューティ制御し、燃料ポンプ12への電力供給を制御する。
【0024】
ECM31には、エンジン1のメインスイッチであるイグニッションスイッチ(エンジンスイッチ)41を介してバッテリ電源VBが接続されると共に、電源リレー42を介してバッテリ電源VBが接続されており、電源リレー42のオン,オフは、ECM31によって制御される。
そして、イグニッションスイッチ41がオンしてバッテリ電源VBが投入されるとECM31が起動し、起動したECM31は電源リレー42をオンする。これにより、ECM31は、イグニッションスイッチ41がオフされた後も電源リレー42を介してバッテリ電源VBの供給を受けることができ、イグニッションスイッチ41のオフ後に電源リレー42をオフして、バッテリ電源VBの供給を自己遮断する。
【0025】
また、FCM30には、電源リレー(ポンプリレー)43を介してバッテリ電源VBが接続されており、FCM30に内蔵される駆動回路は、電源リレー43を介して接続されるバッテリ電源VBを電源として、燃料ポンプ12への電力供給を行う。電源リレー43のオン,オフは、ECM31によって制御される。
【0026】
ここで、ECM31は、燃料供給装置13における故障の有無を診断する故障診断装置としての機能をソフトウェア的に備えており、以下では、係る故障診断装置としての機能を、図2及び図3のフローチャートに従って詳細に説明する。
図2及び図3のフローチャートに示す故障診断ルーチンにおいて、ステップS101では、イグニッションスイッチ(エンジンスイッチ)41が運転者によってオフ操作されたか否かを判断する。
【0027】
尚、イグニッションスイッチ41がオン状態からオフ状態になると、ECM31は、燃料噴射弁3の噴射動作及び点火プラグ6の点火動作を停止してエンジン1を停止させると共に、FCM30に向けて、駆動デューティDUTY(%)を0%とする指示、即ち、燃料ポンプ12への通電を遮断する指示を出力する。但し、電源リレー42,43はオン状態に保持される。
【0028】
ステップS101で、イグニッションスイッチ41がオフされたことを判断すると、ステップS102へ進み、イグニッションスイッチ41がオフになってからの経過時間tが、設定時間TD1(第1判定時間)以上になっているか否かを判断する。
前記設定時間TD1は、駆動デューティDUTY(%)を0%として燃料ポンプ12への通電を遮断した時点から、燃料配管内の燃料圧力FUPRが、プレッシャレギュレータ14における設定圧にまで降下するのに十分な時間として予め設定されている。
【0029】
従って、燃料ポンプ12への電源供給が実際に遮断されていて燃料ポンプ12が停止しており、かつ、プレッシャレギュレータ14が設定圧よりも高い燃料圧力FUPRに感応して開弁している正常状態であれば、設定時間TD1が経過した時点で、燃圧センサ33は、プレッシャレギュレータ14の設定圧付近の圧力を検出することになる。
ステップS102で、イグニッションスイッチ41のオフから、換言すれば、燃料ポンプ12への通電を遮断する指示を出した時点から、設定時間TD1だけ経過したと判断すると、ステップS103へ進み、燃圧センサ33の出力信号を読み込んで燃料圧力FUPRを検出する。
【0030】
次のステップS104では、そのときの燃料圧力FUPRが、判定圧SLPR1以上であるか否かを判断する。
判定圧SLPR1は、プレッシャレギュレータ14の設定圧よりも高い圧力に設定され(判定圧SLPR1>P/R設定圧)、プレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで降下しない異常を判定できるようにしてある。より詳細には、設定時間TD1だけ経過した時点での燃料圧力のばらつきを考慮し、該ばらつき範囲の上限値よりも僅かに高い圧力に判定圧SLPR1を設定し、正常時には、設定時間TD1だけ経過した時点での燃料圧力FUPRが、判定圧SLPR1を上回ることがないように設定してある。
【0031】
ステップS104で、ステップS103で検出した燃料圧力FUPRが、判定圧SLPR1よりも低いと判断された場合には、少なくとも燃料圧力FUPRが下がらない異常はないものと判断できるが、燃料圧力FUPRが燃料漏れによって異常に下がり過ぎている可能性がある。
即ち、燃料ポンプ12への電源供給が実際に遮断されていて燃料ポンプ12が停止しており、かつ、プレッシャレギュレータ14が設定圧よりも高い燃料圧力FUPRに感応して開弁している正常状態であれば、新たに燃料が配管内に供給されない状態で、プレッシャレギュレータ14から燃料がリリーフされることで、設定時間TD1内で燃料圧力FUPRはプレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで低下する。
【0032】
これに対し、駆動停止指令にも関わらず燃料ポンプ12への電源供給が継続しているショート故障が駆動回路などで発生すると、たとえプレッシャレギュレータ14が開弁状態を保持し燃料をリリーフしても、燃料ポンプ12が燃料を吐出することで、燃料圧力FUPRは設定時間TD1内でプレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで低下することはない。
また、燃料圧力FUPRが設定圧よりも高い条件でプレッシャレギュレータ14が開弁しない閉固着故障が発生すると、たとえ燃料ポンプ12が停止していても、燃料が配管内に閉じ込められることで、燃料圧力FUPRは設定時間TD1内でプレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで低下することはない。
【0033】
従って、燃料ポンプ12への通電を遮断する指示(駆動デューティ=0%の指示)を出した時点から設定時間TD1だけ経過した状態での燃料圧力FUPRが、プレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで低下していれば、少なくとも燃料ポンプ12のショート故障及びプレッシャレギュレータ14の閉固着故障は発生していないものと判断できる。
しかし、燃料漏れが発生している場合も、設定時間TD1内でプレッシャレギュレータ14の設定圧まで低下するので、燃料漏れが発生している可能性がある。
そのため、ステップS105以降では、燃料漏れの有無を診断する。
【0034】
ステップS105では、燃料ポンプ12への通電を遮断する指示を出した時から設定時間TD1だけ経過した後に、判定圧SLPR2よりも燃料圧力FUPRが低い状態が設定時間TD2以上継続したか否かを判定する。
前記判定圧SLPR2は、プレッシャレギュレータ14の設定圧よりも低い圧であって、燃料漏れが発生することで燃料圧力FUPRが下回るようになる圧力に設定してある。また、設定時間TD2は、一時的な燃圧低下を排除し、継続的な燃料漏れによって圧力が徐々に低下する場合に、到達し得る時間に設定してある。
【0035】
尚、詳細には、判定圧SLPR2に基づく最大診断時間(>TD2)を設定し、この最大診断時間内で、燃料圧力FUPRが判定圧SLPR2よりも低い状態が設定時間TD2以上継続していた場合に、燃料漏れが発生していると判定させることができる。
ここで、前記最大診断時間と設定時間TD2との差は、プレッシャレギュレータ14の設定圧付近の燃料圧力FUPRが、燃料漏れによって判定圧SLPR2を下回るようになるまでの時間に基づき設定される。
また、ステップS105で、燃料圧力FUPRが、プレッシャレギュレータ14の設定圧よりも低い領域で徐々に減少変化しているか否かを、燃料圧力FUPRの減少速度(設定時間での圧力低下幅)に基づいて判断し、燃料圧力FUPRの減少速度が判定値を超える場合に、燃料漏れの発生を判定させることができる。
【0036】
判定圧SLPR2よりも燃料圧力FUPRが低い状態にならないか、又は、判定圧SLPR2よりも燃料圧力FUPRが低い状態になっても、それが一時的で継続時間が設定時間TD2未満である場合(若しくは、燃料圧力FUPRの減少速度が判定値未満である場合)であって、プレッシャレギュレータ14の設定圧付近の圧力を維持している場合には、燃料漏れがない(若しくは燃料漏れ量が許容レベル内である)と判断し、ステップS106へ進んで、プレッシャレギュレータ14、燃料配管16,17、燃料ポンプ12、ポンプ駆動回路(FCM30)などの燃料供給装置を構成するデバイスが正常であると判定する。
【0037】
即ち、プレッシャレギュレータ14の設定圧にまで燃料圧力FUPRが低下したことは、プレッシャレギュレータ14の設定圧よりも燃料圧力FUPRが高いにも関わらずプレッシャレギュレータ14が燃料戻し配管18の閉状態を保持する閉固着故障が発生しておらず、また、駆動デューティを0%にしても燃料ポンプ12に対する電力供給が継続されるショート故障も発生していないものと推定でき、更に、プレッシャレギュレータ14の設定圧付近を維持したことは、許容レベルを超える燃料漏れが発生していないものと推定できる。
【0038】
一方、ステップS105で、判定圧SLPR2よりも燃料圧力FUPRが低い状態が設定時間TD2以上継続したと判断した場合(若しくは、燃料圧力FUPRの減少速度が判定値以上であると判断した場合)には、ステップS107へ進み、燃料漏れの発生を判定する。
即ち、プレッシャレギュレータ14の閉固着故障及び燃料ポンプ12のショート故障が発生していない場合、燃料漏れの有無に関わらずにプレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで燃料圧力FUPRが降下し、燃料漏れがなければ、そのままプレッシャレギュレータ14の設定圧付近の燃料圧力FUPRを維持するが、燃料漏れがあれば、プレッシャレギュレータ14の設定圧付近に降下した後も燃料圧力FUPRは降下を続けることになる。そこで、燃料圧力FUPRが、プレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで降下した後に、設定圧を下回る状態を保持する場合や許容速度を超える速度で圧力低下する場合には、燃料漏れが発生しているものと推定する。
【0039】
燃料漏れの発生を判定した場合、ECM31は、運転者に故障(燃料漏れ)の発生を警告ランプの点灯などで警告すると共に、燃料漏れの故障を判定した履歴を記憶する。
そして、ECM31は、故障履歴に基づき、エンジン1の再始動を禁止したり、再始動を許容するものの、目標燃圧の最大を正常時よりも低く制限するなどのフェイルセーフ処理を実施することができ、また、整備工場などで、前記故障履歴を作業者が読み出すことで、整備点検の対象とすべき部品(部位)を特定できる。
【0040】
図4に示すように、時刻t1の時点で、イグニッションスイッチ(エンジンスイッチ)41がオフされ、駆動デューティを0%にして燃料ポンプ12が停止すると、プレッシャレギュレータ14から燃料がリリーフされることによって燃料圧力FUPRは漸減することになり、時刻t2の時点で燃料圧力FUPRがプレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで低下すると、その後はプレッシャレギュレータ14が閉弁状態を保持するようになるので、燃料漏れが無ければ、燃料圧力FUPRは、プレッシャレギュレータ(P/R)14の設定圧付近の圧力を維持することになる。
【0041】
時刻t1から設定時間TD1が経過した時刻t3における燃料圧力FUPRが、判定圧SLPR1よりも低ければ、燃料ポンプ12のショート及びプレッシャレギュレータ14の閉固着故障の発生はないものと判断できるか、その後の設定時間TD2内で圧力降下を検出すれば、設定時間TD2が経過した時刻t4の時点で燃料漏れの発生を判定する。
一方、設定時間TD2内で圧力降下がなければ、設定時間TD2が経過した時刻t4の時点で、燃料ポンプ12のショート及びプレッシャレギュレータ14の閉固着故障の発生はなく、かつ、燃料漏れもない、正常状態であると判断する。
【0042】
また、ステップS104で、燃料圧力FUPRが、判定圧SLPR1以上であると判別した場合には、駆動デューティを0%にしても燃料ポンプ12に対する電力供給が継続されるショート故障、又は、プレッシャレギュレータ14の設定圧よりも燃料圧力FUPRが高いにも関わらずプレッシャレギュレータ14が閉状態を保持する閉固着故障の発生が推定されるが、同時に燃料漏れが発生している可能性もあり、ステップS108以降では、これらの故障を区別して診断する。
【0043】
まず、ステップS108では、電源リレー(ポンプリレー)43をオフする。
即ち、前記ステップS101〜ステップS107に示した第1診断手段は、電源リレー43のオン状態で診断を行うのに対し、ステップS109以降に示す第2診断手段は、電源リレー43のオフ状態で診断を行う。
【0044】
ステップS108で電源リレー43をオフすると、燃料ポンプ12の駆動回路にショート故障が発生していても、燃料ポンプ12への電源供給は遮断されることになり、燃料ポンプ12を停止させることができる。
そして、次のステップS109では、燃料圧力FUPRがプレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで低下するのに要すると見込まれる設定時間TD3(第2判定時間)が、電源リレー43をオフした時点から経過したか否かを判断する。
【0045】
尚、設定時間TD1と設定時間TD3とを同等の値とすることができる。
そして、前記設定時間TD3が経過すると、ステップS110へ進み、燃圧センサ33の出力信号を読み込んで燃料圧力FUPRを検出する。
【0046】
次のステップS111では、燃料圧力FUPRに基づき、燃料圧力FUPRに基づく診断に用いる閾圧α(判定条件)を設定する。
具体的には、電源リレー43をオフした時点から時間TD3だけ経過した時点の燃料圧力FUPRが高いほど閾圧α(判定条件)をより大きな値に設定する。
【0047】
前記閾圧αは、燃料漏れによる燃料圧力FUPRの降下代の基準値であり、後述するように、時間TD3経過した時点での燃圧よりも閾圧αだけ低い圧力よりも燃料圧力FUPRが低い状態が設定時間TD4以上継続した場合に、燃料漏れと判断する。
尚、設定時間TD4は、設定時間TD2と同等の値に設定できる。
【0048】
但し、燃料が漏れ出る開口の面積が同程度であっても、初期圧が高いほど圧力降下速度が速くなるため、初期圧の違いを考慮しないと、初期圧が高いことを要因とする圧力降下速度に基づき、燃料漏れを誤判断することになる。
そこで、初期圧に相当する、電源リレー43をオフした時点から時間TD3だけ経過した時点の燃料圧力FUPRが高いほど、より速い圧力降下が発生したときに燃料漏れの発生を検出するように、閾圧αを初期圧が高いほどより大きな値に変更するようにしてある。
【0049】
ステップS112では、時間TD3だけ経過した時点での燃料圧力FUPRから設定圧βを減算した判定圧SLPR3(SLPR3=時間TD3経過時の燃料圧力FUPR−閾圧α)を下回る状態が、時間TD3経過後に設定時間TD4以上継続したか否かを判断する。
前記設定時間TD3は、前記設定時間TD2と同様に、一時的な燃圧低下を排除し、継続的な燃料漏れによって圧力が徐々に低下する場合に、到達し得る時間に設定してある。
【0050】
ここで、時間TD3経過時から設定時間TD4内で、閾圧α以上の圧力降下があったか否かを判断させることができ、この場合の設定時間TD4は、燃料漏れと判断できる圧力降下速度を閾圧αと共に規定することになる。
尚、詳細には、判定圧SLPR3に基づく最大診断時間(>TD4)を設定し、この最大診断時間内で、燃料圧力FUPRが判定圧SLPR3よりも低い状態が設定時間TD4以上継続していた場合に、燃料漏れが発生していると判定させることができる。
燃料圧力FUPRが判定圧SLPR3を下回るまで降下しなかった場合や、降下してもその継続時間が設定時間TD4に満たなかった場合には、燃料漏れはないものと推定でき、その場合には、ステップS113へ進み、そのときの燃料圧力FUPRがプレッシャレギュレータ14の設定圧付近であるか、設定圧よりも高いかを判断する。
【0051】
そして、そのときの燃料圧力FUPRがプレッシャレギュレータ14の設定圧付近であれば、ステップS114へ進んで、燃料ポンプ12のショート故障を判定する。
即ち、燃料ポンプ12のショート故障発生時には、駆動デューティを0%にしても燃料ポンプ12に電力が供給され続けるため、たとえプレッシャレギュレータ14が正常に動作する状態であっても、燃料圧力FUPRがプレッシャレギュレータ14の設定圧よりも高い値に保持されることになるが、電源リレー43をオフして燃料ポンプ12への電源供給を遮断すれば、燃料圧力FUPRはプレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで低下して保持されることになる。
【0052】
従って、プレッシャレギュレータ14の設定圧よりも高かった燃料圧力FUPRが、電源リレー43をオフすることで、プレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで低下したことは、燃料ポンプ12のショート故障が発生していることに示すことになる。
一方、ステップS113で、燃料圧力FUPRがプレッシャレギュレータ14の設定圧よりも高い状態(FUPR>SLPR1)を保持していると判断した場合には、ステップS115へ進み、プレッシャレギュレータ14の閉固着故障を判定する。
【0053】
即ち、燃料ポンプ12への電源供給が遮断され、燃料ポンプ12が停止しているのに、燃料圧力FUPRが降下しないのは、プレッシャレギュレータ14が燃料をリリーフして圧力調整する機能に異常が発生しているためであり、より具体的には、プレッシャレギュレータ14が燃料をリリーフしない閉固着状態になっているものと判断する。
また、ステップS112で、燃料漏れと認められる圧力降下を検出した場合には、ステップS116へ進み、プレッシャレギュレータ14の設定圧よりも高い領域で圧力降下したか、設定圧よりも低い領域で圧力降下したかを判断する。
【0054】
そして、設定圧よりも低い領域で圧力降下した場合には、電源リレー43をオフして燃料ポンプ12への電源供給を遮断した結果、駆動デューティを0%にしても停止しなかった燃料ポンプ12が停止し、プレッシャレギュレータ14の調圧機能によって燃料圧力FUPRがプレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで降下し、更にその後も、燃料漏れによって圧力降下が継続したものと推定する。
従って、プレッシャレギュレータ14の設定圧よりも低い領域で圧力降下した場合には、ステップS117へ進んで、燃料ポンプ12のショート故障と燃料漏れとの双方(2重故障)が発生していると判定する。
【0055】
図4に示すように、燃料ポンプ12のショート故障と燃料漏れとの2重故障が発生している場合、時刻t1の時点で駆動デューティを0%にしても、燃料ポンプ12が運転を続ける結果、燃料圧力FUPRはプレッシャレギュレータ14の設定圧よりも高い値を保持することになる。
しかし、時刻t4の時点で電源リレー43をオフすると、たとえ駆動回路などにショートが発生していても、燃料ポンプ12への電源供給を遮断して、燃料ポンプ12を停止させることができ、電源リレー43をオフしたことで、燃料圧力FUPRがプレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで低下すれば、燃料圧力FUPRがプレッシャレギュレータ14の設定圧よりも高い圧力を保持していた要因が、駆動デューティを0%にしても実際には燃料ポンプ12が駆動されていて燃料を吐出していたためであると判断できる。
【0056】
そして、燃料圧力FUPRがプレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで低下した時刻t5の後で、燃料圧力FUPRの降下が検出された場合には、燃料ポンプ12のショート故障に加えて燃料漏れも発生していることになる。
一方、プレッシャレギュレータ14の設定圧よりも高い領域で圧力降下した場合には、プレッシャレギュレータ14の閉固着故障によって、プレッシャレギュレータ14の設定圧よりも高い圧力に保持される圧力が、燃料漏れによって徐々に低下したものと推定できる。
【0057】
従って、プレッシャレギュレータ14の設定圧よりも高い領域で圧力降下した場合には、ステップS118へ進んで、プレッシャレギュレータ14の閉固着故障と燃料漏れとの双方(2重故障)が発生していると判定する。
図4に示すように、プレッシャレギュレータ14の閉固着故障と燃料漏れとの2重故障が発生している場合、時刻t1の時点で駆動デューティを0%にして燃料ポンプ12が停止しても、プレッシャレギュレータ14からの燃料のリリーフが発生しないため、プレッシャレギュレータ14の設定圧までの降下に必要十分な時間が経過した時刻t3になっても、燃料圧力FUPRは設定圧よりも高い値を保持することになる。
【0058】
また、燃料ポンプ12のショート故障は発生しておらず、時刻t1の時点で既に燃料ポンプ12は停止しているため、時刻t4の時点で電源リレー43をオフしても、燃料圧力FUPRを急激に降下させることにはならず、時刻t1の時点で駆動デューティを0%にした時点から、燃料漏れによる比較的緩やかな圧力降下を継続することになる。
従って、電源リレー43をオフしても、燃料圧力FUPRを降下させることにならなかったことから、プレッシャレギュレータ14の閉固着故障を判定でき、また、その後の継続的な圧力降下から燃料漏れの発生を判定できる。
【0059】
ステップS114,115,117,118で故障判定した場合には、故障の発生(ショート故障、閉固着故障、燃料漏れの別)を、警告ランプの点灯などによって運転者に警告すると共に、故障判定した履歴(故障部位の情報)を記憶させる。
そして、ECM31は、故障履歴に基づき、エンジン1の再始動を禁止したり、再始動を許容するものの、目標燃圧の最大を正常時よりも低く制限するなどのフェイルセーフ処理を実施させることができ、また、整備工場などで、前記故障履歴を作業者が読み出すことで、整備点検の対象とすべき部品(部位)を特定できる。
【0060】
ステップS106,107,114,115,117,118のいずれかに進み、診断結果を出力すると、ECM31は、電源リレー42をオフして電源を自己遮断して、オフ状態になる。
尚、電源リレー43をオフした後の第2診断では、燃料漏れを示す圧力降下の有無を判定した後に、プレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで降下したか否かを判断させたが、設定時間TD3が経過した時点で、プレッシャレギュレータ14の設定圧付近にまで降下したか否かを判断させることで、プレッシャレギュレータ14の閉固着故障であるか燃料ポンプ12のショート故障であるかを判定させ、その後の圧力降下の有無から、燃料漏れ故障も併せて発生しているか否かを判断することができる。
【0061】
また、燃料噴射弁3の噴孔部からの漏れが発生している場合には、上記に示した燃料供給装置の故障診断において誤診断を生じる可能性があるので、エンジン1の運転中に空燃比フィードバック補正係数LAMBDAなどから燃料噴射弁3の漏れ故障の有無を診断し、燃料噴射弁3から漏れが発生している場合には、燃料供給装置の故障診断の実施を禁止することが好ましい。
【0062】
上記のように、本実施形態によると、正常、燃料漏れ単独故障、燃料ポンプ12のショート単独故障、プレッシャレギュレータ14の閉固着単独故障、ショート及び燃料漏れの2重故障、閉固着及び燃料漏れの2重故障のいずれかに判別するので、故障部位を特定でき、例えば点検整備のための情報として出力すれば、故障箇所を適切に点検整備することができる。
また、電源リレー43をオフした後の第2診断における燃料漏れの判断において、初期圧の違いを考慮して、圧力の降下速度を判定するので、燃料漏れの有無を精度良く判定できる。
尚、FCM30としての機能をECM31が備えるようにして、FCM30とECM31とを一体化させることができる。
【0063】
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジンの故障診断装置において、
前記第1診断手段が、前記燃料ポンプの通電制御を停止させたことで、燃料圧力が、設定時間内で前記プレッシャレギュレータの設定圧付近にまで圧力低下し、その後も圧力降下を示した場合に、燃料漏れの発生を判定するエンジンの故障診断装置。
【0064】
上記発明によると、燃料ポンプの通電制御を停止させると(駆動デューティを0%にすると)、燃料圧力は、プレッシャレギュレータの設定圧まで低下することになり、燃料漏れが無ければ、その後前記設定圧付近を維持することになるが、燃料漏れがあれば、前記設定圧付近まで圧力降下した後も圧力降下を継続するので、プレッシャレギュレータの設定圧まで燃料圧力が低下した後も圧力降下が継続した場合に、燃料漏れの発生を診断する。
【0065】
(ロ)請求項(イ)記載のエンジンの故障診断装置において、
前記燃料ポンプの通電制御を停止させてから設定時間内で、前記プレッシャレギュレータの設定圧付近にまで圧力低下しなかった場合に、前記第2診断手段が診断を実施するエンジンの故障診断装置。
【0066】
上記発明によると、燃料ポンプの通電制御を停止させても(駆動デューティを0%にしても)、燃料圧力が、プレッシャレギュレータの設定圧まで低下しない場合には、プレッシャレギュレータの閉固着故障又は燃料ポンプのショート故障が発生していると推定されるので、いずれの故障が発生しているのかを、ポンプリレーをオフするを第2診断手段による診断で判別する。
【0067】
(ハ)請求項(ロ)記載のエンジンの故障診断装置において、
前記第2診断手段が、前記リレーをオフしてから設定時間内で、前記プレッシャレギュレータの設定圧付近にまで圧力低下した場合に、燃料ポンプの駆動系におけるショート故障の発生を判定するエンジンの故障診断装置。
【0068】
上記発明によると、第2診断手段ではリレーをオフするので、ショート故障状態であっても燃料ポンプの駆動を停止させることができ、リレーをオフしたことでプレッシャレギュレータの設定圧まで低下すれば、燃料ポンプのショート故障が発生していることになる。
【0069】
(ニ)請求項(ロ)又は(ハ)記載のエンジンの故障診断装置において、
前記第2診断手段が、前記リレーをオフしてから設定時間内で、前記プレッシャレギュレータの設定圧付近にまで圧力低下しなかった場合に、前記プレッシャレギュレータの閉固着故障を判定するエンジンの故障診断装置。
【0070】
上記発明によると、リレーをオフしてもプレッシャレギュレータの設定圧まで低下しなければ、燃料ポンプのショート故障ではなく、プレッシャレギュレータの閉固着故障が発生していることになる。
【0071】
(ホ)請求項(ハ)又は(ニ)記載のエンジンの故障診断装置において、
前記第2診断手段が、前記リレーをオフしてから設定時間経過後に、燃料圧力が、圧力降下を示した場合に、ショート故障又は閉固着故障と、燃料漏れとの2重故障の発生を判定するエンジンの故障診断装置。
【0072】
上記発明によると、プレッシャレギュレータの設定圧まで降下するのに要する時間を過ぎても、圧力が降下を続ける場合には、ショート故障又は閉固着故障と共に燃料漏れが発生しているものと判断する。
【0073】
(ヘ)請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジンの故障診断装置において、
前記燃料供給装置が、前記プレッシャレギュレータからのリリーフ量を超える量の燃料を、前記燃料ポンプから吐出させることによって、燃料圧力を、前記プレッシャレギュレータの設定圧よりも高い圧力に制御する燃圧制御手段を備えたエンジンの故障診断装置。
【0074】
上記発明によると、燃圧制御手段によって燃料圧力をプレッシャレギュレータの設定圧よりも高い圧力に制御している状態から、燃料ポンプの通電制御を停止する(駆動デューティを0%にする)ことで、燃料ポンプからの燃料吐出が停止すると、燃料圧力はプレッシャレギュレータの設定圧にまで低下することになり、実際に設定圧にまで燃料圧力が低下するか否かに基づき、プレッシャレギュレータの閉固着故障や、燃料ポンプのショート故障の有無を診断できる。
【符号の説明】
【0075】
1…エンジン(内燃機関)、3…燃料噴射弁、11…燃料タンク、12…燃料ポンプ、14…プレッシャレギュレータ、15…燃料ギャラリー配管、16…燃料供給配管、17…燃料戻し配管、30…FCM(フューエル・コントロール・モジュール)、31…ECM(エンジン・コントロール・モジュール)、33…燃圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リレーを介して電源が供給される電動式の燃料ポンプと、前記燃料ポンプ下流側の燃料配管内における燃料圧力を検出する燃圧センサと、前記燃料配管内における燃料圧力を設定圧に調整するプレッシャレギュレータとを備え、エンジンに燃料を供給する燃料供給装置に適用される故障診断装置であって、
エンジンスイッチのオフ後における前記リレーのオン状態で、前記燃圧センサが検出した燃料圧力に基づいて前記燃料供給装置の故障診断を行う第1診断手段と、
前記第1診断手段による診断後の前記リレーのオフ状態で、前記燃圧センサが検出した燃料圧力に基づいて前記燃料供給装置の故障診断を行う第2診断手段と、
を含むエンジンの故障診断装置。
【請求項2】
前記第2診断手段が、前記エンジンスイッチのオフ後から第1判定時間が経過したときの燃料圧力が、前記プレッシャレギュレータの設定圧よりも高い場合に、前記リレーをオフして、前記燃料供給装置の故障診断を行う請求項1記載のエンジンの故障診断装置。
【請求項3】
前記第2診断手段が、前記リレーのオフ後から第2判定時間が経過したときの燃料圧力に応じて、故障診断における判定条件を変更する請求項1又は2記載のエンジンの故障診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−60862(P2013−60862A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199321(P2011−199321)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】