説明

エンジンブレーキ制御圧力ストラテジー

【課題】エンジンの燃料インジェクタの作動に使用される作動油すなわちオイルを使用できると同時に、ICPの使用によってアクチュエータに加えられる意図しない圧力がアクチュエータに加えられるという予期せぬ事態によりエンジンが損傷を受ける虞れから防護できるようにすることにある。
【解決手段】エンジンブレーキ中に排気ガスの流れを制御することによりエンジン(10)を制動するエンジンブレーキシステム(38)の燃料インジェクタ(229および油圧アクチュエータ(40)の両方の機能を遂行する油圧システム(28)を有するエンジン(10)。作動油の圧力は、ブレーキ制御圧力ストラテジーが非アクティブであるときに、噴射制御ストラテジーにより設定される。ブレーキ制御圧力ストラテジーがアクティブであるときは、作動油がアクチュエータ(40)に供給されるときにエンジン(10)の制動が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車を推進する内燃機関(エンジン)に関し、より詳しくは、制動中に作動される油圧アクチュエータを有するエンジンブレーキを制御するストラテジーに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関により推進される自動車を減速させたい場合、ドライバは、一般にアクセルペダルを解放する。この操作により、車両(自動車)は、車両に作用する種々の力によって減速されるに過ぎない。また、ドライバの操作として、所要制動量に基いて車両のサービス制動を加える操作がある。
【0003】
サービス制動を加える必要なく自動車の内燃機関の回転速度を低下させる既知の方法としてエンジン背圧を増大させる方法があり、自動車の場合、エンジン背圧の一時的増大は、車両の駆動トレーンが被駆動輪とエンジンとを連結した状態にある車両の減速を補助する上で有効である。アクセルペダルを解放すると、エンジンへの供給燃料が減少するか、停止されることもある。この場合、駆動トレーンを通る動力は、被駆動輪に向かわずに、方向を反転させ、走行車両の運動エネルギは、エンジンをポンプとして作動することによって消失される。
【0004】
既知の種々のエンジンブレーキおよび方法は全て、エンジン背圧を一時的に増大させて、走行する自動車の速度を低減させるのに使用されている。エンジンブレーキの特定形式の如何にかかわらず、一般に、制動機構にはアクチュエータが存在し、アクチュエータの一例として油圧アクチュエータがある。
【0005】
或るディーゼルエンジンは、燃料をエンジンの燃焼室内に噴射させるのに、作動油すなわちオイルを使用した燃料噴射システムを有している。作動油は、油圧レールすなわちオイルレールから、各エンジンシリンダのそれぞれの燃料インジェクタに供給される。燃料インジェクタの弁機構がエンジン制御システムからの電気信号により作動されて、燃料をそれぞれのシリンダ内に噴射する場合には、作動油が燃料インジェクタのピストンに作用して、それぞれの燃焼室内に燃料を強制的に供給する。作動油はポンプによりレールに供給され、かつエンジン制御により実行される燃料噴射制御ストラテジーの一要素として、オイルレール内の油圧圧力が、適当な噴射制御圧力(injection control pressure:ICP)を供給すべく調整される。
【0006】
エンジンブレーキシステムの油圧アクチュエータは、オイルレール内の作動油すなわちオイルの従来の供給源を使用できる長所を有しているが、オイルレール内のICPはエンジン制御システム(engine control system:ECS)内に埋め込まれた燃料噴射制御ストラテジーにより制御されるため、ECS内にブレーキ制御圧力(brake control pressure:BCP)を含めると、エンジンブレーキ作動のためにICPを用いることの含意(implication)をアドレスする必要がある。同様に、エンジンブレーキを作動させるICPの使用は、燃料噴射制御ストラテジーに含意を与える。
【0007】
エンジンブレーキシステムでは、過度に高いICPは好ましくない。エンジンブレーキシステムの油圧アクチュエータへの作動油の供給を制御するBCP弁が故障すると、BCP弁は、これが閉じるべきときでも開いた状態に留まり、このため、ICPは、アクチュエータから除去されるべきときでも除去されなくなり、このため、エンジンへに潜在的損傷を与える原因にもなる。
【0008】
従って、ICPを利用するBCPストラテジーの能力は、BCPストラテジーとICPストラテジーとの間の適正な相互作用を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の重要な1つの態様は、油圧作動型エンジンブレーキの新規なBCPストラテジーを提供しかつBCPストラテジーとICPストラテジーとを相関付けるエンジン制御システムストラテジーを有し、これにより、エンジンの燃料インジェクタの作動に使用される作動油すなわちオイルを使用できると同時に、ICPの使用によって、意図しない圧力がアクチュエータに加えられるという予期せぬ事態によりエンジンが損傷を受ける虞れから防護できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明の上位の態様は、燃料を燃焼して内燃機関の出力を得る燃焼室内に燃料を強制的に送り込むフュエリングシステムと、燃焼室内での燃料の燃焼により発生したエンジンからの排気ガスが通る排気システムとを有する内燃機関に関する。エンジンブレーキシステムは、エンジンブレーキ中に排気ガス流を制御することによりエンジンを制動する排気システムに連結されておりかつエンジンブレーキシステムによるエンジンの制動中に付勢される1または2以上の油圧アクチュエータを備えている。
【0011】
油圧システムは、作動油を、燃料を燃焼室内に強制的に供給するフュエリングシステムおよび1または2以上のアクチュエータの両方に供給する。制御システムは、作動油を、1または2以上のアクチュエータに選択的に連通させることによりエンジンの制動を制御することを含む、エンジンの種々の作動アスペクトを制御する。
【0012】
制御システムの燃料噴射制御ストラテジーは、噴射制御圧力を、燃料噴射制御ストラテジーにより設定された所望の噴射制御圧力に等しくする噴射制御圧力の閉ループ制御を行なう。
【0013】
制御システムのブレーキ制御圧力ストラテジーは、1または2以上のアクチュエータに加えられる油圧がブレーキ制御圧力ストラテジーにより決定された圧力を超えたときに信号を発生しかつこのような過大圧力の信号が発生されたときに噴射制御圧力に制限を賦課する。
本発明の他のアスペクトは、上記制御制御システムに関する。
本発明の更に別のアスペクトは、エンジンの燃料インジェクタおよびエンジンブレーキの1または2以上のアクチュエータの両方に作用する作動油の圧力を制御する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の上記および他の特徴および長所は、本発明を実施する時点で考えられた最良の形態を示す本発明の好ましい実施形態についての以下の開示から明らかになる。
【0015】
図1は、本発明の原理を説明するのに有効な例示内燃機関(エンジン)10の一部を示す図面である。エンジン10は、燃焼空気をエンジンに流入させる吸気システム(図1には特に図示せず)と、燃焼により生じた排気ガスをエンジンから排出する排気システム12と、を有している。エンジン10は、例えば、ターボチャージャ14を備えたディーゼルエンジンである。トラックのような自動車に使用される場合には、エンジン10は、駆動(パワー)トレーン16を介して、車輪(自動車)を推進する被駆動輪に連結される。
【0016】
エンジン10は、燃焼室を形成する多数のシリンダ20(図示の例では直列六気筒)を有している。燃料は、燃料インジェクタ22により燃焼室内に噴射され、吸気システムを通って燃焼室内に流入している給気と混合される。シリンダ20内には往復動ピストン23が配置されており、該ピストン23は、エンジンクランクシャフト25に連結されている。各シリンダ20内の混合気は、エンジンサイクルがその圧縮フェーズから爆発フェーズに移行するときに対応ピストン23により発生される圧力により燃焼される。これによりクランクシャフト25が駆動され、該クランクシャフト25は、駆動トレーン16を介して車輪18にトルクを供給し、車両を推進する。燃焼により生じたガスは、排気システム12を通って排出される。
【0017】
エンジン10はエンジン制御システム(ECS)24を有し、ECSは、エンジンの種々の作動状態を制御するデータを生成すべく、種々のデータを処理する1または2以上のプロセッサを有している。ECS24は、インジェクタ駆動モジュール(injector driver module:IDM)26を介して、各燃料インジェクタ22により噴射される燃料のタイミングおよび量を制御すべく作動する。1つのエンジンサイクル中に、1回または複数回の噴射を行うことができる。例えば、燃料の主噴射の前にパイロット噴射を行ない、および/または主噴射の後に後噴射を行うことができる。
【0018】
図2には、エンジン10のフュエリングシステム27が更に油圧システム28を有しているところが示されており、油圧システム28は、作動油を、燃料インジェクタ22のために機能するインジェクタオイルレールまたはインジェクタオイルギャラリにポンピングするためのエンジン駆動型ポンプ(特別には図示せず)を備えている。ECS24は、ポンプおよび/または関連油圧弁(特別には図示せず)を含む油圧システム28の1または2以上のコンポーネンツについて制御を行うことにより、インジェクタオイルレール32の作動油すなわちオイルの圧力を制御する(すなわち、ICPを制御する)。
【0019】
センサ34は、レール32内の実油圧を検出して、このデータ値を、ICP制御ストラテジーの一要素としてECS24に供給する。図5中のパラメータICPの値は、この検出した圧力を表す。ICPはまた、センサ34から直接にまたはECS24から、IDM26へのデータ入力として供給される。
【0020】
図5は、ECS24が、所望フュエリングを表すデータ入力VF_DESの値を生成し、かつ次にこの値をIDM26に供給することによりエンジンフュエリングを設定(セッティング)するところを示している。IDM26は、ICPおよびVF_DESのデータ値を含む種々のデータ値を処理して、ICPが燃料を強制的にインジェクタ22からシリンダ20内に噴射できるようにする内部弁機構を開くべく、燃料インジェクタ22に加えられるパルスの適正タイミングをもつパルス幅を生成する。
【0021】
IDM26からのパルスによって燃料インジェクタ22の弁機構が作動されると、ICPの作動油が燃料インジェクタのピストンに作用できるようになり、燃料をそれぞれの燃焼室内に強制的に噴射する。前述のように、この噴射は、パイロット噴射、主噴射または後噴射の形態で行うことができる。この一般的な形式の燃料インジェクタは、従来の種々の特許に開示されている。
【0022】
エンジンブレーキシステム38は、既存のターボチャージャ14と、個々のシリンダ20での既存の個々の排気弁36(図3および図4に示す)を利用している。ターボチャージャ14の内部機構(ベーン等)を作動させて排気システム12を通る流れに或る絞りを形成させかつ同時に全ての排気弁36を或る程度強制的に開くことにより、移動する自動車の運動エネルギが、エンジンシリンダ20内の内容物を、前記形成された絞りを通して押出すポンプのようにエンジン10を作動させる。車両の運動エネルギをこのように強制的に消散させることにより、車両が減速される。
【0023】
各排気弁36は、油圧アクチュエータ40の作動状態を示す図4に示すように、エンジンブレーキシステム38のそれぞれの油圧アクチュエータ40により強制的に開かれる。図3は、アクチュエータ40の非作動状態を示す。排気弁36がアクチュエータ40により強制的に開かれない場合には、排気弁36は、エンジンサイクル中に適正タイミングで作動し、燃焼生成物がシリンダ20を通って排気システム12内に導かれるようにする。この場合、エンジン10は、弁を作動させるカムシャフトを備えたエンジン、或いは「カムレス」エンジンのいずれでもよい。
【0024】
各アクチュエータ40は本体42を有し、該本体42は、エンジン10のインジェクタオイルギャラリ32とほぼ平行に配置されたブレーキオイルギャラリ46に流体連通しているポート44を備えている。本体42のボア50内には、プランジャすなわちピストン48が、一定距離だけ変位できるように配置されている。図3はピストン48が後退している状態を示し、図4はピストン48が配備された状態を示している。この配備は、ピストン48が対応排気弁12を強制的に開く方向に、ピストン48をボア50内で移動させるのに充分な力を各ピストン48に伝達する充分な圧力の適当量の作動油がブレーキオイルギャラリ46内に導入されると生じる。
【0025】
エンジンブレーキが油圧システム28を利用できるようにするため、ブレーキオイルギャラリ46は、ソレノイド作動型弁52すなわちBCP制御弁を介してインジェクタオイルレール32に連通される。弁52は、ブレーキオイルギャラリ46に連通される入口ポート54と、インジェクタオイルレール32に連通される出口ポート56とを有している。弁52は、そのソレノイドが付勢されないときはポート54およびポート56を閉じ、ソレノイドが付勢されるとポート54およびポート56を開く。ECS24は、BCP制御ストラテジーの処理システム内に埋入されたBCP制御ストラテジーを介して弁52の制御を行う。
【0026】
ブレーキオイルギャラリ46には、他の弁58および圧力センサ60が連結されている。弁58は、ブレーキオイルギャラリ46内に圧力が殆どまたは全く存在しない場合には開き、この圧力が或る最小値を超えると閉じる機械的逆止弁である。センサ60はブレーキオイルギャラリ46内の実圧力を検出して、このデータ値を、BCP制御ストラテジーの一要素としてECS24に供給する。図5中のパラメータBCPの値は、検出したブレーキオイルギャラリ圧力を表す。
【0027】
エンジンブレーキを加えるべきときは、適当な駆動回路(特別には図示せず)が、BCPストラテジーに従がうECSの制御により、弁52を開く。さもなくば、BCP弁52は閉じられている。
【0028】
図5には、本発明によるストラテジーの原理が開示されている。このストラテジーはエンジンの全体的制御ストラテジーの一部であり、ECS24のプロセッサ(単一または複数)により反復実行されるアルゴリズムにより実施される。
【0029】
BCPストラテジーを実行するには、先ず、車両の減速が行われなくてはてはならない(すなわち、アクティブにしなければならない)。パラメータVRE_CB_ACTVのデータ値は、BCPストラテジーがアクティブであるか否かを決定する。VRE_CB_ACTVのデータ値が「0」であるとき、ストラテジーは非アクティブであり、2つのスイッチ関数62、64はOFFとなる。スイッチ関数64がOFFであるとき、パラメータBCP_ICP_LIMのデータ値は、パラメータBCP_ICP_DEFのデータ値となる。パラメータBCP_ICP_DEFのデータ値は、より完全に後述するデフォルト値である。スイッチ関数62がOFFであるとき、パラメータBCP_DESのデータ値は、パラメータBCP_DES_CALのデータ値となる。
【0030】
ストラテジーが非アクティブであるとき、BCP弁52が閉じられ、これにより、いずれのアクチュエータ40にも油圧圧力が加えられず、センサ60により検出されるBCPのデータ値が本質的にゼロにされる。BCP_DES_CALは、関数66によりBCPのゼロデータ値から減じたときの値をもつ、キャリブレーション可能なパラメータであり、エラー信号BCP_ERRのデータ値が、パラメータBCP_ERR_MAXのデータ値より大きくなることはない。この状態の組は、BCP_ERRの値とBCP_ERR_MAXの値とを比較する比較関数68が、クロック関数70のランニングを防止し、このため、パラメータBCP_F_HIGHのデータ値は「0」に保持される。これが如何にして正確に行われるかは、より完全に後述する。
【0031】
ストラテジーがアクティブであるとき、VRE_CB_ACTVのデータ値は「1」であり、2つのスイッチ関数62、64をONにする。スイッチ関数64がONであるとき、パラメータBCP_ICP_LIMのデータ値はBCP_DESのデータ値となる。BCP_DESパラメータは、各アクチュエータ40に供給されるブレーキオイルギャラリ46内の作動油の圧力の所望値を表す。スイッチ関数62がONであると、パラメータBCP_DESのデータ値が、圧力値とエンジンスピードとを相関付ける関数72により決定される。
【0032】
しかしながら、ギャラリ46が実際に加圧されているか否かは、弁52が開かれているか、閉じられているかに基いて定められる。ECS24がエンジンブレーキを要求していない場合には弁52が閉じられ、エンジンブレーキが要求される場合には、いつでも弁52が開かれる。
【0033】
ブレーキオイルギャラリ46に供給される作動油の源が燃料インジェクタ22に供給される作動油の源と同じであるため、図5に示されたストラテジーの1つの重要な目的は、弁52が開いているときに、ICP制御ストラテジーにより決定されるインジェクタオイルレール32内の圧力が、ブレーキオイルギャラリ46内の圧力が或る圧力過渡を無視してBCP_DESを超える状態を創出しないようにようにすることにある。
【0034】
このセーフガードは、BCP_DESのデータ値および他のパラメータICP_ICPのデータ値を処理してどちらの方が小さいかを確認する最小値関数74により行われる。パラメータICP_ICPのデータ値は、現在の作動状態に適合するICPの値を確認すべく種々のエンジンおよび/または車両に関するパラメータを考慮に入れたアルゴリズムに従ってECS24により計算される。一般に、ICP_ICPはBCP_DESを超えるため、関数74は、フィードバック制御を行うセンサ34から得られるICPのデータ値を用いてICPを制御するストラテジー76により後で処理されるICP_DESのデータ値として、ICP_ICPのデータ値を供給する。
【0035】
エンジンブレーキの作動中に、BCP_ERRのデータ値がBCP_ERR_MAXのデータ値を超えるような状態が生じることがあると、関数68は、クロック機能70のルンニングを開始させる。この状態がプリセット時間より長く続くと、クロック関数70のデータ出力BCP_HIGH_TMRは、プリセットパラメータBCP_HIGH_TMのデータ値を超えるであろう。これが生じると、BCP_HIGH_TMRとBCP_HIGH_TMとを比較する比較関数78が、ラッチ関数80を設定する。
【0036】
次に、ラッチ関数80が2つのことを行なう。第一は、当該事象の信号を与えかつログすべく、ラッチ関数80がフォールトフラグBCP_F_HIGHを設定することであり、第二はスイッチ機能82をONに戻すことである。
【0037】
両スイッチ機能82、64がONであると、BCP_ICP_LIMのデータ値は、BCP_DESにより決定され続ける。しかしながら、VRE_CB_ACTVが「0」にリセットされると、BCP_ICP_LIMのデータ値とエンジンスピードとを相関付ける機能86が、BCP_ICP_LIMのデータ値を設定する。これにより、機能86は、ICP_ICPを設定するICPストラテジーの一部がより高いICPを要求するときはいつでも、エンジンスピードの関数として実ICPを制限すべく機能する。このストラテジーは、エンジン10が停止するときまで、アクチュエータ40に過大圧力を加える必要なくして、必要に応じてエンジンを作動させかつエンジンブレーキを使用できるようにする。関数86がICP_DESのデータ値をアクティブに設定するときはいつでも、IDM26は、燃料インジェクタ22を開くのに使用されるパルスの幅に必要なあらゆる調節を行う。エンジン10が再始動されると、ラッチ機能80がリセットされる。
【0038】
このストラテジーはまた、高フォールトフラグBCP_F_HIGHの設定と同様な態様で、低フォールトフラグBCP_F_LOWを設定できる。VRE_CB_ACTVが「1」に設定されると、BCP弁を開く指令を与えることによりエンジンブレーキを付勢させるECS24によるコマンドは、2つのギャラリ32、46内の圧力が本質的に等しくなるようにすべきである。しかしながら、インジェクタオイルギャラリ32内の油圧圧力が、ブレーキオイルギャラリ46内の圧力を、所定時間かつ所定量だけ超え続ける場合には、BCP弁52を適正に開くことに失敗したことが表示され、かつ低フォールトフラグBCP_F_LOWが設定される。
【0039】
上記説明から、BCP_ICP_DEFに割当てられたデフォルト値は、BCP_F_HIGHおよびVRE_CB_ACTVの両方が「0」であるとき、ICP_DESがICP_ICPに等しくなることを確保するのに充分なほど大きくなることが理解されよう。これは、初期のBCP高フォールトが、BCP_ERRがBCP_ERR_MAXを超え始めるときにのみ表示され、このことが起きるまでクロック関数70が計時を開始できないことによる。これにより、クロック関数70が、BCP_F_HIGHが「1」になる時点でのBCP_HIGH_TMより長い時間を計時するまで、BCP_F_HIGHが「0」に維持される。BCP_F_HIGHが「1」に設定された後に、BCPストラテジーがひとたび非アクティブになると、BCP_ICP_LIMのデータ値は、エンジンが回転を続ける限り関数86により設定される。以上、本発明の好ましい実施形態を図示しかつ説明したが、本発明の原理は、特許請求の範囲に包含されるあらゆる実施形態に適用されるものであることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】エンジンブレーキシステムの部分を含む自動車の内燃機関の一例を示す模式図である。
【図2】図1の細部を示す模式図である。
【図3】図2の矢印3−3方向から見た断面図であり、一作動状態を示すものである。
【図4】図3と同様な断面図であり、他の作動状態を示すものである。
【図5】BCPストラテジーの一例示実施形態およびこれと本発明の原理による図1〜図4のエンジンのエンジン制御ストラテジーのICPストラテジーとを一体化したところを示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼して内燃機関(10)の出力を得る燃焼室内に燃料を強制的に送り込むフュエリングシステム(27)と、
燃焼室内での燃料の燃焼により発生したエンジン(10)からの排気ガスが通る排気システム(12)と、
エンジンブレーキシステム(38)であって、エンジンブレーキ中に排気ガス流を制御することによりエンジン(10)を制動する排気システム(12)に連結されかつエンジンブレーキシステムによるエンジン(10)の制動中に付勢される1または2以上の油圧アクチュエータ(40)を備えるエンジンブレーキシステム(38)と、
作動油を、燃料を燃焼室内に強制的に供給するフュエリングシステム(27)および1または2以上のアクチュエータ(40)の両方に供給する油圧システム(28)と、
作動油を1または2以上のアクチュエータ(40)に選択的に連通させることによりエンジン(10)の制動を制御することを含む、種々のエンジン(10)作動アスペクトを制御する制御システム(24)と、
該制御システム(24)の燃料噴射制御ストラテジーであって、噴射制御圧力を、燃料噴射制御ストラテジーにより設定された噴射制御圧力に等しくする噴射制御圧力の閉ループ制御を行う燃料噴射制御ストラテジーと、
制御システム(24)のブレーキ制御圧力ストラテジーであって、1または2以上のアクチュエータ(40)に加えられる油圧がブレーキ制御圧力ストラテジーにより決定された圧力を超えたときに信号を発生しかつこのような過大圧力の信号が発生されたときに噴射制御圧力を制限するブレーキ制御圧力ストラテジーと、を備えている、
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
燃料を燃焼して内燃機関(10)の出力を得る燃焼室内に燃料を強制的に送り込むフュエリングシステム(27)と、燃焼室内での燃料の燃焼により発生されたエンジン(10)からの排気ガスが通る排気システム(12)と、エンジンブレーキシステム(38)であってエンジンブレーキ中に排気ガス流を制御することによりエンジン(10)を制動する排気システムに連結されかつエンジンブレーキシステムによるエンジン(10)の制動中に付勢される1または2以上の油圧アクチュエータ(40)を備えているエンジンブレーキシステム(38)と、加圧された作動油を燃焼室内に燃料を強制的に供給するフュエリングシステム(27)と、1または2以上のアクチュエータ(40)の両方に供給する油圧システム(28)とを有する内燃機関(10)の制御システム(24)において、該制御システム(24)が、
燃料噴射制御ストラテジーを有し、該燃料噴射制御ストラテジーは、噴射制御圧力を、燃料噴射制御ストラテジーにより設定された噴射制御圧力に等しくする噴射制御圧力の閉ループ制御を行い、
作動油を1または2以上のアクチュエータ(40)に選択的に連通させることによりエンジン(10)の制動を制御するブレーキ制御圧力ストラテジーを更に有し、該ブレーキ制御圧力ストラテジーは、1または2以上のアクチュエータ(40)に加えられる油圧がブレーキ制御圧力ストラテジーにより決定された圧力を超えたときに信号を発生しかつこのような過大圧力の信号が発生されたときに噴射制御圧力を制限する、
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項3】
前記制御システム(24)は、ブレーキ制御圧力ストラテジーをアクティブにするパラメータの1つのデータ値と、ブレーキ制御圧力ストラテジーを非アクティブにする異なるデータ値とを設定し、前記パラメータのデータ値は、1または2以上のアクチュエータ(40)に供給された、ブレーキ制御圧力ストラテジーにより決定された圧力を超える油圧圧力の信号が発生された後に、前記1つのデータ値から前記異なるデータ値に変化し、ブレーキ制御圧力ストラテジーは、噴射制御圧力を、燃料噴射制御ストラテジーではなくブレーキ制御圧力ストラテジーの関数によって設定する、
請求項1または2記載の発明。
【請求項4】
前記噴射制御圧力を設定するブレーキ制御圧力ストラテジーは、エンジンスピードのデータ値に相関付けられた噴射制御圧力のデータ値を有し、これにより、1または2以上のアクチュエータ(40)に供給された、ブレーキ制御圧力ストラテジーにより決定された圧力を超える油圧圧力の信号が発生された後に、噴射制御圧力を、前記パラメータのデータ値が前記異なるデータ値となったときのエンジンスピードの関数とする、
請求項3記載の発明。
【請求項5】
前記ブレーキ制御圧力ストラテジーは制御システム(24)のラッチ関数を有し、該ラッチ関数は、ブレーキ制御圧力ストラテジーにより決定された圧力を超える、1または2以上のアクチュエータ(40)に供給される油圧圧力の信号を発生するようにラッチされ、かつエンジンが作動し続ける限りは、ラッチされた状態に留まる、
請求項3記載の発明。
【請求項6】
前記制御システム(24)は、エンジン(10)が作動を停止した後、再始動されるときに、ラッチ関数がラッチ解除されるようにする、
請求項5記載の発明。
【請求項7】
前記制御システム(24)は、噴射制御圧力のデータ値として、燃料噴射制御ストラテジーにより設定された噴射制御圧力のデータ値と、ブレーキ制御圧力ストラテジーにより設定された噴射制御圧力のデータ値の小さい方のデータ値を選択する最小値選択関数を有する、
請求項1または2記載の発明。
【請求項8】
前記制御システム(24)は、ブレーキ制御圧力ストラテジーをアクティブにするパラメータの1つのデータ値と、ブレーキ制御圧力ストラテジーを非アクティブにする異なるデータ値とを設定し、前記パラメータのデータ値が前記1つのデータ値であるときは、ブレーキ制御圧力ストラテジーにより設定される噴射制御圧力がブレーキ制御圧力ストラテジーの一部により設定され、前記パラメータのデータ値が前記異なるデータ値であるときは、ブレーキ制御圧力ストラテジーにより設定される噴射制御圧力がブレーキ制御圧力ストラテジーの他の部分により設定される、
請求項7記載の発明。
【請求項9】
所望圧力を超えて1または2以上のアクチュエータ(40)に供給された油圧圧力の信号が発せられた後に、パラメータのデータ値が前記1つのデータ値から前記異なるデータ値に変化すると、エンジンスピードのデータ値と相関付けられた噴射制御圧力のデータからなるブレーキ制御圧力ストラテジーの関数から、ブレーキ制御圧力ストラテジーにより設定された噴射制御圧力が得られ、これにより噴射制御圧力がエンジンスピードの関数となる、
請求項8記載の発明。
【請求項10】
作動油を用いて内燃機関(10)燃焼室内に燃料を強制的に送り込むフュエリングシステム(27)と、燃焼室内での燃料の燃焼により発生したエンジン(10)からの排気ガスが通る排気システム(12)と、エンジンブレーキシステム(38)であってエンジンブレーキ中に排気ガス流を制御することによりエンジン(10)を制動する排気システム(12)に連結されておりかつエンジンブレーキシステムによるエンジン(10)の制動中に付勢される1または2以上の油圧アクチュエータ(40)を備えたエンジンブレーキシステム(38)とを備え、油圧システム(28)が、フュエリングシステム(27)および1または2以上のアクチュエータ(40)の両方に作動油を供給する構成の内燃機関の油圧システム(28)の作動油の圧力を制御する方法において、
噴射制御ストラテジーにより作動油の圧力を設定する段階と、
作動油を1または2以上のアクチュエータ(40)に選択的に連通させることによりエンジンブレーキを制御する段階と、
ブレーキ制御圧力ストラテジーにより決定された過大圧力で1または2以上のアクチュエータ(40)に供給された作動油の信号を発生する段階と、
この過大圧力の信号が発せられると、油圧圧力を制限する段階とを有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記ブレーキ制御圧力ストラテジーを、選択的に、エンジン(10)の制動を可能にするアクティブにおよびエンジン(10)の制動を不能にする非アクティブにする段階を有し、アクティブにされた後にブレーキ制御圧力ストラテジーが非アクティブにされると、作動油の圧力を、燃料噴射制御ストラテジーではなくブレーキ制御圧力ストラテジーの関数により設定する、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記作動油の圧力のデータ値として、燃料噴射制御ストラテジーにより設定された噴射制御圧力のデータ値と、ブレーキ制御圧力ストラテジーにより設定された噴射制御圧力のデータ値とのうちの小さい方のデータ値を選択する段階を有する、
請求項11記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−510837(P2007−510837A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528057(P2006−528057)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/030107
【国際公開番号】WO2005/033492
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(501402947)インターナショナル エンジン インテレクチュアル プロパティー カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー (69)
【Fターム(参考)】