説明

エンジン停止始動制御装置

【課題】スタータの保護を適切に図る。
【解決手段】エンジン20は、所定の自動停止条件が成立した場合に自動停止され、所定の再始動条件が成立した場合にスタータ10によってクランキングが実施され再始動されるアイドルストップ機能を有する。エンジン20の制御装置としてのECU40は、スタータ10によるエンジン20のクランキングを行った場合、スタータ10のモータ11の通電終了時点でモータ11が有する熱量としてモータ熱量を算出し、その算出したモータ熱量に基づいて、モータ11の通電を終了してからのエンジン自動停止の禁止時間である停止禁止時間を算出する。そして、モータ11の通電終了後において、停止禁止時間が経過するまではエンジン20の自動停止を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン停止始動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばアクセル操作やブレーキ操作などといった停車又は発進のための動作等を検知してエンジンの自動停止及び自動再始動を行う、所謂アイドルストップ機能を備えるエンジン制御システムが知られている。このアイドルストップ制御により、エンジンの燃費低減等の効果を図っている。
【0003】
また、エンジンを始動する始動装置としては、一般に、ピニオンギヤとモータとを備えた装置(スタータ)が用いられ、アイドルストップ制御においても、基本的にはドライバのスイッチ操作によるエンジン始動の場合と同様にスタータによるエンジン再始動が行われる。すなわち、まず、スタータのピニオンギヤとエンジン側のリングギヤとを噛み合わせ、その噛み合い状態でモータを駆動する。これにより、エンジンに初期回転が付与され、スタータによる初期回転によりエンジンが再始動される。
【0004】
アイドルストップ制御では、エンジン停止と再始動とが繰り返し実施されるため、スタータの駆動頻度が比較的多くなり、スタータの劣化が進みやすい。そこで、従来、アイドルストップ制御においてスタータの劣化抑制を図るための技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、スタータ駆動時間やスタータ駆動回数の積算値を求め、その積算値が判定値に達した場合に、その後のエンジン自動停止/再始動を禁止することが開示されている。これにより、ギヤの磨耗や損傷の進行の抑制を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−263210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のものは、スタータの劣化具合を判断し、劣化がある程度進行した後においてスタータの更なる劣化を抑制するものであるが、スタータによるエンジン始動を確実に行うには、スタータが劣化状態に至る前においても、劣化抑制のための対策を講じる必要がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、スタータの保護を適切に行うことができるエンジン始動制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0009】
本発明は、所定の自動停止条件が成立した場合にエンジンの燃焼を停止してエンジン自動停止し、エンジンの燃焼停止後、所定の再始動条件が成立した場合にスタータのモータの駆動によってエンジンのクランキングを実施してエンジンを再始動するエンジン停止始動制御装置に関する。特に、請求項1に記載の発明は、前記モータの通電終了時点で前記モータが有する熱量を算出する熱量算出手段と、前記熱量算出手段により算出した熱量に基づいて、前記モータの通電を終了してからのエンジン自動停止の禁止時間である停止禁止時間を算出する禁止時間算出手段と、前記禁止時間算出手段により算出した停止禁止時間に基づいてエンジンの停止制御を実施する自動停止制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
要するに、アイドルストップ制御では、エンジンの自動停止と再始動とが繰り返し実施されるが、このとき、エンジンを再始動してから次の再始動までの間隔が短いと、モータ駆動によって発生した熱が残存したまま次のモータ駆動が行われることが考えられる。このようにモータが熱を有した状態でモータ駆動を行った場合、熱の影響を受けてスタータの劣化が促進されることが懸念される。また、モータが有する熱量は、モータの駆動状況に応じて都度変わり得る。
【0011】
これらの点に鑑み、上記構成では、モータの通電終了時点でモータが有する熱量を算出し、その算出した熱量に基づいて、アイドルストップ制御によるエンジンの自動停止を禁止する時間を定める。そして、モータ通電終了後、その停止禁止時間が経過するまではエンジンの自動停止を禁止する。この場合、モータ駆動後においてモータを冷却するための時間を確保することができ、モータに熱が残存した状態で次のモータ駆動が実施されるのを回避することができる。その結果、スタータの使用過程において、スタータの保護を適切に行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、前記熱量算出手段は、前記熱量として、エンジン再始動時のモータ通電時間を算出する手段であり、前記禁止時間算出手段は、前記モータ通電時間に基づいて前記停止禁止時間を算出する。
【0013】
モータ通電時間とモータ発熱量とは比例関係にあるため、モータが有する熱量を実際に算出する代わりにモータ通電時間を用いることにより、制御を簡略化しつつスタータの保護を図ることができる。
【0014】
エンジンの自動停止と再始動とが短時間(例えば数秒〜数分)のうちに繰り返し実施される状況では、モータでの熱のこもりが生じやすくなる。この熱のこもりを抑制する観点からすると、停止禁止時間は、エンジン自動停止/再始動が短時間に繰り返し行われることを想定して長めに設定するのが望ましい。しかしながら、停止禁止時間を長めに設定すると、次回のエンジン再始動までの間隔が十分に長い場合にエンジンの自動停止の実施が不必要に制限され、結果として、燃費低減効果を十分に得ることができないおそれがある。
【0015】
その点に鑑み、請求項3に記載の発明では、現時点から過去所定時間内のエンジンの再始動回数を算出する回数算出手段と、前記回数算出手段により算出した再始動回数に基づいて、前記禁止時間算出手段により算出した停止禁止時間を補正する補正手段と、を備え、前記自動停止制御手段は、前記補正手段による補正後の前記停止禁止時間に基づいて前記停止制御を実施する。この構成によれば、仮に、自動停止/再始動の機会を確保すべく停止禁止時間を短めに設定したとしても、モータが有する熱量(特にこもり熱)によるスタータ劣化の不都合を抑制することができる。つまり、モータの冷却期間を十分に確保しつつ、アイドルストップ制御による燃費低減効果を十分に得ることができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明では、前記熱量算出手段は、前記熱量として、現時点から過去の所定時間内のエンジンの再始動回数を算出する手段であり、前記禁止時間算出手段は、前記再始動回数に基づいて前記停止禁止時間を算出する。
【0017】
エンジンの自動停止と再始動とが短時間(例えば数秒〜数分)のうちに繰り返し実施された場合、スタータの熱のこもりが生じやすく、その熱の影響を受けてスタータの劣化を招くおそれがある。その点、本構成によれば、熱のこもりの状態に応じてスタータの保護を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】エンジン制御システムの全体概略構成図。
【図2】エンジン自動停止処理を示すフローチャート。
【図3】エンジン再始動処理を示すフローチャート。
【図4】エンジン自動停止の許可判定処理を示すフローチャート。
【図5】ISS禁止時間算出用マップの一例を示す図。
【図6】ISS禁止時間算出用マップの他の例を示す図。
【図7】アイドルストップ制御の具体的態様を示すタイムチャート。
【図8】第2実施形態のエンジン再始動処理を示すフローチャート。
【図9】モータ通電時間と再始動回数とISS禁止時間との関係を示す図。
【図10】第2実施形態におけるアイドルストップ制御の具体的態様を示すタイムチャート。
【図11】他の実施形態におけるISS禁止時間算出用マップを示す図。
【図12】他の実施形態におけるエンジン制御システムの全体概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施の形態は、エンジン制御システムのエンジン始動制御装置に具体化している。当該制御システムにおいては、電子制御ユニット(以下、ECUという)を中枢として燃料噴射量の制御や点火時期の制御、アイドルストップ制御等を実施する。この制御システムの全体概略を示す構成図を図1に示す。
【0020】
図1において、エンジン20は、例えば4気筒エンジンであり、気筒内への吸入空気量を調整する空気量調整手段としてのスロットルバルブ21や、燃料を噴射供給する燃料噴射手段としてのインジェクタ22、気筒ごとに設けられた点火プラグ23に点火火花を発生させる点火手段としてのイグナイタ(図示略)等を備えている。なお、エンジン20は、インジェクタ22が吸気ポート近傍に設けられた吸気ポート噴射式であってもよいし、各気筒のシリンダヘッド等に設けられた直噴式であってもよい。
【0021】
スタータ10にはモータ11が設けられている。モータ11は、電機子のコンミテータに接触するブラシを備える給電ブラシ付きの直流モータである。モータ11は、電機子に接続され接点の開閉により通電/非通電を切り替えるモータスイッチSL2を介してバッテリ12に接続されており、バッテリ12からの電力供給により回転駆動される。モータ11の回転軸13にはピニオン14が設けられており、回転軸13の回転によってピニオン14が回転される。
【0022】
スタータ10には、コイル18及びプランジャ19により構成されるピニオン駆動用のアクチュエータSL1が設けられており、コイル18の通電/非通電の切り替えにより、ピニオン14が回転軸13の軸方向に往復動されるようになっている。
【0023】
詳しくは、コイル18の非通電状態では、ピニオン14が、エンジン20の出力軸(クランク軸)24に連結されたリングギヤ25に対して非接触の状態で配置されている。この非接触の状態においてバッテリ12からコイル18に通電されると、プランジャ19がその軸方向に移動してレバー16が作動され、ピニオン14がリングギヤ25に向かって押し出される。これにより、ピニオン14が、リングギヤ25との接触位置まで移動する。また、ピニオン14の移動に伴い、ピニオン14の歯部とリングギヤ25の歯部との噛み合いが生じ、ピニオン14からリングギヤ25への動力伝達が可能な状態になる。この噛み合い状態においてモータ11が駆動されることにより、ピニオン14からリングギヤ25への動力伝達が行われる。
【0024】
一方、ピニオン14とリングギヤ25との噛み合い状態においてコイル18の通電が遮断されると、図示しないスプリングの付勢力により、ピニオン14が、リングギヤ25に向かう方向とは反対方向に移動する。これにより、ピニオン14とリングギヤ25との噛み合いが解除され、両者が非接触の状態に戻る。
【0025】
スタータ10とバッテリ12との間にはスタータスイッチ26が設けられており、ドライバによるスタータスイッチ26のオン操作により、バッテリ12からスタータ10への通電が可能になっている。また、コイル18とバッテリ12との間には、コイル18の通電/非通電を切り替えるSL1駆動リレー27が設けられ、モータ11とバッテリ12との間には、モータスイッチSL2の通電/非通電を切り替えるSL2駆動リレー28が設けられている。
【0026】
その他、本システムには、エンジン20の所定クランク角毎に(例えば10°CA周期で)矩形状の検出信号(クランク角信号)を出力するクランク角センサ31や、エンジン冷却水の温度を検出する冷却水温センサ32などの各種センサが設けられている。
【0027】
ECU40は、周知のマイクロコンピュータ等を備えてなる電子制御装置であり、本システムに設けられている各種センサの検出結果等を入力し、入力したデータに基づいて燃料噴射量制御や点火時期制御、アイドルストップ制御などの各種エンジン制御や、スタータ10の駆動制御等を実施する。
【0028】
スタータ10の駆動制御に関し、ECU40は、SL1駆動リレー27のオン/オフ信号を出力する出力ポートP1と、SL2駆動リレー28のオン/オフ信号を出力する出力ポートP2とを備えている。ECU40では、これら出力ポートP1,P2からの制御信号により、モータ11及びコイル18の通電/非通電をそれぞれ個別に切り替え可能になっている。
【0029】
また、アイドルストップ制御は、所定の自動停止条件が成立した場合にエンジンの燃焼を停止してエンジンを自動停止させ、エンジン燃焼停止後、所定の再始動条件が成立した場合に、エンジンの燃焼を再開してエンジンを再始動させるものである。エンジン停止条件としては、例えば、アクセル操作量がゼロになったこと(アイドル状態になったこと)、ブレーキペダルの踏込み操作が行われたこと等の少なくともいずれかが含まれる。また、エンジン再始動条件としては、例えば、アクセルの踏込み操作が行われたこと、ブレーキ操作量がゼロになったこと等が含まれる。
【0030】
ところで、アイドルストップ制御では、エンジンの自動停止と再始動とが繰り返し行われるが、エンジンを再始動してから次の再始動までの間隔が短いと、モータ駆動によって発生した熱がモータ11から十分に放散される前に次のモータ駆動が行われることが考えられる。またこれが繰り返されると、エンジン再始動毎にモータ11に熱が蓄積されていく、つまり熱のこもりが生じることが考えられる。
【0031】
ところが、モータ11が熱を有した状態(熱がこもった状態)では、モータ11を構成するコンミテータ(例えばコンミテータの樹脂構成部分)が熱膨張することによってその真円度が崩れることがある。このような真円度が崩れた状態でモータ駆動を行った場合、ブラシの寿命が短くなり、モータ11の劣化が促進されることが懸念される。
【0032】
そこで、本実施形態では、モータ11の通電終了時点においてモータ11が有する熱量(モータ熱量)を算出し、そのモータ熱量に応じて、アイドルストップ制御によるエンジンの自動停止を禁止する時間としてISS禁止時間を定める。そして、モータ11の通電停止後、そのISS禁止時間が経過するまではエンジンの自動停止を禁止することとしている。これにより、モータ駆動後においてモータ11を冷却するための時間を確保し、モータ11に熱がこもった状態で次のモータ駆動が実施されるのを回避するようにしている。
【0033】
また特に、モータ熱量について本実施形態では、エンジン再始動時のモータ通電時間とモータ熱量とが比例関係にあることに着目し、再始動時においてエンジンのクランキングに要したモータ通電時間を用いてISS禁止時間を算出している。
【0034】
次に、本システムのアイドルストップ制御の処理手順について図2〜図4のフローチャートを用いて説明する。これらのうち、図2はエンジン自動停止処理を示し、図3はエンジン再始動処理を示し、図4はアイドルストップ制御によるエンジン自動停止の許可判定処理を示す。
【0035】
まず、エンジン自動停止処理について図2を用いて説明する。この処理は、ECU40のマイコンにより所定周期毎に実行される。
【0036】
図2において、ステップ11では、エンジン運転中に自動停止条件が成立したか否かを判定し、ステップS11がYESの場合、ステップS12へ進み、モータ保護フラグFmがオフか否かを判定する。モータ保護フラグFmは、次のモータ駆動の許否を示すフラグであり、モータ保護のためにモータ駆動を禁止する場合にオンされる。
【0037】
モータ保護フラグFmがオンの場合には、エンジン運転中に自動停止条件が成立しても、その成立タイミングではエンジンの自動停止が実施されず、そのまま本ルーチンを終了する。一方、モータ保護フラグFmがオフの場合にはステップS13へ進み、エンジンの燃焼を停止し、本ルーチンを終了する。
【0038】
次に、エンジン再始動処理について図3を用いて説明する。この処理は、ECU40により所定周期毎に実行される。
【0039】
図3において、ステップS21では、自動停止条件成立に伴うエンジンの燃焼停止後であるか否かを判定し、ステップS21がYESの場合、ステップS22へ進む。ステップS22では、エンジン燃焼停止後において再始動条件が成立したタイミングか否かを判定し、再始動条件の成立タイミングであれば、ステップS23〜S25の処理を実行する。
【0040】
ステップS23では、SL1駆動リレー27をオンすることによりコイル18の通電を開始する。また、ステップS24では、SL2駆動リレー28をオンすることによりモータ11の通電を開始する。続くステップS25では、カウンタCに「1」をセットする。なお、本実施形態では、カウンタCによってモータ通電時間(モータ駆動時間)が計測される。
【0041】
一方、再始動条件の成立タイミングでない場合には、ステップS22がNOとなりステップS26へ進み、エンジン燃焼停止後において再始動条件が成立した後であるか否かを判定する。ステップS26がYESの場合、ステップS27へ進み、カウンタCを「1」インクリメントし、ステップS28において、エンジン回転速度NEが、エンジンの燃焼が行われたことを示す燃焼回転速度NE1(例えば500〜600rpm)に到達したか否かを判定する。そして、NE≧NE1になるとステップS29へ進み、SL1駆動リレー27をオフするとともに、SL2駆動リレー28をオフにする。また、モータ保護フラグFmをオンにする。
【0042】
ステップS30では、カウンタCを読み出し、その読み出したカウンタ値に基づいて、モータの通電終了後においてアイドルストップ制御によるエンジンの自動停止を禁止しておく時間であるISS禁止時間を算出する。ISS禁止時間について本実施形態では、モータ通電時間(カウンタ値)とISS禁止時間との関係がISS禁止時間算出用マップとして予め定めて記憶してあり、同マップを用いて、カウンタ値に基づいてISS禁止時間を算出する。
【0043】
図5に、ISS禁止時間算出用マップの一例を示す。同マップによれば、モータ通電時間が長いほどISS禁止時間が長く設定されるようになっている。なお、ISS禁止時間算出用マップとしては、図5に示すマップに代えて、例えば図6(a)や(b)に示すマップを用いてもよい。
【0044】
次に、エンジンの自動停止の許可判定処理について図4を用いて説明する。
【0045】
図4において、ステップS41では、モータ保護フラグFmがオンか否かを判定し、Fm=オンの場合、ステップS42へ進み、モータ11の通電をオフにしてから(SL2駆動リレー28をオフしてから)ISS禁止時間が経過したか否かを判定する。そして、ISS禁止時間が経過した場合、ステップS43へ進み、モータ保護フラグFmをオフにして本ルーチンを終了する。これにより、以後において自動停止条件が成立した場合には、上記図2のステップS11及びS12で肯定判定され、ステップS13でエンジンの燃焼が停止される。
【0046】
次に、本実施形態のアイドルストップ制御の具体的態様について、図7のタイムチャートを用いて説明する。図中、(a)はエンジンの運転/停止の推移、(b)はSL2駆動リレー28のオン/オフの推移、(c)はカウンタCの推移、(d)はモータ熱量の推移、(e)はモータ保護フラグFmの推移を示す。なお、図7では、エンジンの自動停止中に再始動条件が成立した場合を想定している。
【0047】
図7において、エンジンの自動停止中において再始動条件が成立すると、タイミングt11でSL2駆動リレー28がオンされることによりモータ11の通電が開始される。また、タイミングt11では、カウンタCのカウントアップが開始される。その後、エンジン回転速度が燃焼回転速度に達すると、タイミングt12でモータ11の通電がオフされるとともに、モータ保護フラグFmがオンされる。また、タイミングt12でのカウンタ値に基づいて、例えば図5の算出用マップを用いてISS禁止時間Tisが算出される。
【0048】
モータ通電をオフしたタイミングt12からISS禁止時間Tisが経過するまでは、モータ保護フラグFmがオンされたままとなり、この期間(t12〜t14)ではエンジン自動停止が禁止される。したがって、期間t12〜t14内のタイミングt13で自動停止条件が成立した場合でも、そのタイミングt13ではエンジンは自動停止されない。
【0049】
その後、期間t12〜t14が経過すると、タイミングt14でモータ保護フラグFmがオフされる。したがって、タイミングt14以後において自動停止条件が成立した場合、その成立タイミングt15でエンジンの燃焼が停止され、エンジンが自動停止される。
【0050】
以上詳述した本実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0051】
エンジン20のクランキングのためのモータ通電を終了した時点でモータ11が有する熱量を算出し、その算出した熱量に基づいて、アイドルストップ制御によるエンジンの自動停止を禁止する時間を定めるとともに、モータ通電終了後、その停止禁止時間が経過するまでエンジンの自動停止を禁止する構成とした。これにより、モータ駆動後においてモータ11を冷却するための時間を十分に確保することができ、モータ11に熱が残存した状態で次のモータ駆動が実施されるのを回避することができる。その結果、スタータ10の使用過程において、スタータ10の保護を適切に行うことができる。
【0052】
モータ11が有する熱量を実際に算出する代わりに、モータ通電時間を代用する構成としたため、制御を簡略化しつつスタータの保護を図ることができる。
【0053】
ピニオン14の押し出しとモータ11の駆動とを独立して制御可能なスタータ10を適用したため、SL2駆動リレー28のオン/オフ信号の出力タイミングに基づいてモータ通電時間を正確に算出することができる。
【0054】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、モータの通電終了時点でモータ11が有するモータ熱量をエンジン再始動時に要したモータ通電時間で表し、モータ通電時間に基づいてISS禁止時間を算出した。これに対し、本実施形態では、過去所定時間内のエンジンの再始動回数とモータ通電時間とに基づいてISS禁止時間を算出する。
【0055】
具体的には、本実施形態では、モータ通電時間に応じて算出したISS禁止時間に対し、過去所定時間内のエンジン再始動回数に応じた補正を行う。例えば渋滞時などにおいて、エンジンの自動停止と再始動とが短時間(例えば数秒〜数分)のうちに繰り返し行われた場合、モータ11で熱のこもりが生じやすくなる。これに鑑み、上記構成とすることにより、エンジン再始動の間隔が十分に確保されている場合を想定してISS禁止時間を短めに設定した場合にも、モータ11の熱のこもりを十分に抑制できるようにしている。
【0056】
図8は、本実施形態のエンジン再始動処理を示すフローチャートである。同図では、上記図3と同じ処理については図3のステップ番号を付してその説明を省略する。この処理は、ECU40により所定周期毎に実行される。
【0057】
図8において、ステップS21〜S25では上記図3と同じ処理を実行し、ステップS25の実行後、ステップS31で、現時点から過去所定の短時間(例えば数秒〜数分)内のエンジンの再始動回数Dを算出する。
【0058】
ステップS26〜S29では上記図3と同じ処理を実行し、ステップS30で、マップ等を用いて、カウンタC(モータ通電時間)に基づいてISS禁止時間を算出する。また、ステップS32では、再始動回数Dに基づいてISS禁止時間を補正する。具体的には、本実施形態では、再始動回数Dが判定値D1以上か否かを判定し、D≧D1の場合に、モータ通電時間に基づき算出したISS禁止時間に対し補正係数Ka(>1)を乗算する。この場合、補正係数Kaは、固定値でもよいしISS禁止時間に応じた値でもよい。
【0059】
なお、ISS禁止時間を補正する構成としては、再始動回数Dが判定値D1以上であるか否かにかかわらず、再始動回数Dに応じた補正係数Kaを乗算するものであってもよい。また別の構成として、図9に示すように、モータ通電時間とISS禁止時間との相関が再始動回数Dごとに複数設定されたマップを用いることにより、モータ通電時間に応じて算出されるISS禁止時間を再始動回数Dにより補正する構成であってもよい。
【0060】
図10は、本実施形態のアイドルストップ制御の具体的態様を示すタイムチャートである。図中、(a)はエンジンの運転/停止の推移、(b)はSL2駆動リレー28のオン/オフの推移、(c)はカウンタCの推移、(d)はモータ熱量の推移、(e)はモータ保護フラグFmの推移、(f)は過去所定時間内のエンジン再始動回数を示す。また、A1〜A4は再始動条件の成立タイミングを示し、B1〜B3は自動停止条件の成立タイミングを示す。
【0061】
図10に示すように、タイミングt21での再始動条件の成立に伴うエンジン再始動では、過去所定時間内のエンジンの再始動回数Dは判定値D1未満であり、この場合には、(e)に示すように、カウンタ値C1に応じたISS禁止時間としてTis1が設定される。
【0062】
次に、図10において、短時間のうちにエンジン20の自動停止と再始動とが繰り返され、タイミングt22での再始動条件の成立に伴いエンジンを再始動する場合を考える。この場合、過去所定時間内の再始動回数Dが判定値D1以上であると、今回の再始動時のカウンタ値が、タイミングt21での再始動と同じC1であっても、ISS禁止時間としてはTis1よりも長い時間Tis2が設定される。
【0063】
以上の第2実施形態によれば、モータ通電時間に応じて算出したISS禁止時間に対し、過去所定時間内のエンジン再始動回数に応じて補正を行うため、自動停止/再始動の機会を確保すべく、エンジン再始動の間隔が十分に確保されている場合に照準を合わせてISS禁止時間を短めに設定したとしても、モータ11が有する熱量(特にこもり熱)によるスタータ劣化を好適に抑制することができる。
【0064】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0065】
・上記実施形態では、モータの通電終了時点でモータが有するモータ熱量を直接算出するのではなく、エンジン再始動時に要したモータ通電時間を用いてISS禁止時間を算出した。これに対し、本実施形態では、モータ通電時間に代えて、現時点から過去の所定時間内のエンジン20の再始動回数Dをモータ熱量として用い、その再始動回数Dに基づいてISS禁止時間を算出する構成とする。
【0066】
エンジン20の自動停止と再始動とが短時間(例えば数秒〜数分)のうちに繰り返し実施された場合、スタータ10において熱のこもりが生じやすく、その熱の影響を受けてスタータ10の劣化が促進されることが懸念される。その点、本構成では、再始動回数Dに基づいてISS禁止時間を算出することにより、スタータ10での熱のこもり量に応じて、スタータ10の保護を適切に行うことができる。
【0067】
具体的には、アイドルストップ制御によるエンジン再始動時において、モータ11の通電を終了した後では、基本的にはISS禁止時間を基本時間β1とし、基本時間β1が経過するまでエンジン20の自動停止を禁止する。これに対し、現時点から過去所定の短時間内のエンジンの再始動回数Dが判定値D2以上の場合には、図11(a)に示すように、ISS禁止時間を基本時間β1よりも長い時間β2(>β1)とする。
【0068】
あるいは、図11(b)に示すように、再始動回数Dが多いほどISS禁止時間を長くしてもよい。または、図11(c)に示すように、再始動回数Dが所定値D3まではISS禁止時間を固定値とし、D>D3では、再始動回数Dが多いほどISS禁止時間を長くしてもよい。
【0069】
・モータ熱量に基づき算出したISS禁止時間を、スタータ温度に相関があるパラメータに基づいて補正する補正手段を備える構成とする。外気温やエンジン温度が高いほどスタータ10が高温になりやすく、またクランキング時のモータ駆動によって発生した熱が放散されにくいことが考えられる。したがって、スタータ温度に相関があるパラメータとして、例えば外気温やエンジン温度をセンサ等により検出し、その検出値に基づいてISS禁止時間を補正するとよい。このとき、例えば、外気温が高いほど又はエンジン温度が高いほど、ISS禁止時間が長くなるように補正する。
【0070】
・上記実施形態では、ピニオン14の押し出しとモータ11の駆動とを独立して制御可能なスタータ10を本発明に適用する場合を説明したが、図12に示すように、ピニオン14の押し出し動作に伴いモータスイッチSW1がオンされ、これによりモータ11が駆動される従来のスタータを本発明に適用してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、1つのECU40により、燃料噴射量制御や点火時期制御などの各種エンジン制御とスタータ10の駆動制御とを実施する構成としたが、エンジン20とスタータ10とをそれぞれ別のECUにより制御する構成としてもよい。すなわち、エンジン20の燃料噴射や点火時期等を制御するECUと、SL1駆動リレー27及びSL2駆動リレー28への指令信号の出力を制御するECUとを別個に備えるシステムに本発明を適用してもよい。
【0072】
・ガソリンエンジンを適用する場合について説明したが、ディーゼルエンジンを本発明に適用する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…スタータ、11…モータ、14…ピニオン、20…エンジン、24…クランク軸、25…リングギヤ、27…SL1駆動リレー、28…SL2駆動リレー、40…ECU(熱量算出手段、禁止時間算出手段、自動停止制御手段、回数算出手段、補正手段)、SL1…アクチュエータ、SL2…モータスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の自動停止条件が成立した場合にエンジンの燃焼を停止してエンジン自動停止し、エンジンの燃焼停止後、所定の再始動条件が成立した場合にスタータのモータの駆動によってエンジンのクランキングを実施してエンジンを再始動するエンジン停止始動制御装置であって、
前記モータの通電終了時点で前記モータが有する熱量を算出する熱量算出手段と、
前記熱量算出手段により算出した熱量に基づいて、前記モータの通電を終了してからのエンジン自動停止の禁止時間である停止禁止時間を算出する禁止時間算出手段と、
前記禁止時間算出手段により算出した停止禁止時間に基づいてエンジンの停止制御を実施する自動停止制御手段と、
を備えることを特徴とするエンジン停止始動制御装置。
【請求項2】
前記熱量算出手段は、前記熱量として、エンジン再始動時のモータ通電時間を算出する手段であり、
前記禁止時間算出手段は、前記モータ通電時間に基づいて前記停止禁止時間を算出する請求項1に記載のエンジン停止始動制御装置。
【請求項3】
現時点から過去所定時間内のエンジンの再始動回数を算出する回数算出手段と、
前記回数算出手段により算出した再始動回数に基づいて、前記禁止時間算出手段により算出した停止禁止時間を補正する補正手段と、を備え、
前記自動停止制御手段は、前記補正手段による補正後の前記停止禁止時間に基づいて前記停止制御を実施する請求項2に記載のエンジン停止始動制御装置。
【請求項4】
前記熱量算出手段は、前記熱量として、現時点から過去の所定時間内のエンジンの再始動回数を算出する手段であり、
前記禁止時間算出手段は、前記再始動回数に基づいて前記停止禁止時間を算出する請求項1に記載のエンジン停止始動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−184703(P2012−184703A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47719(P2011−47719)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】