エンジン制御装置
【課題】エンジン回転数によるエンジン制御を簡略化することができる技術を提供
【解決手段】目標アイドル回転数算出部31は、アイドリング状態におけるエンジン回転数の目標値(目標アイドル回転数)を算出する。要求エンジンパワー算出部32は、目標アイドル回転数に基づいて、エンジン回転数が目標アイドル回転数に収束するためのエンジンパワー(目標アイドルパワー)を算出するとともに、アクセルペダル開度情報に基づき駆動要求パワーを算出して、少なくとも目標アイドルパワーと駆動要求パワーとを加算して、エンジンの駆動で発生するパワーの要求値(要求エンジンパワー)を算出する。制御要求値算出部33は、要求エンジンパワーなどに基づいて、要求空燃比、要求吸気量、要求点火遅角を算出するとともに、燃料カット要求の有無を判断する。
【解決手段】目標アイドル回転数算出部31は、アイドリング状態におけるエンジン回転数の目標値(目標アイドル回転数)を算出する。要求エンジンパワー算出部32は、目標アイドル回転数に基づいて、エンジン回転数が目標アイドル回転数に収束するためのエンジンパワー(目標アイドルパワー)を算出するとともに、アクセルペダル開度情報に基づき駆動要求パワーを算出して、少なくとも目標アイドルパワーと駆動要求パワーとを加算して、エンジンの駆動で発生するパワーの要求値(要求エンジンパワー)を算出する。制御要求値算出部33は、要求エンジンパワーなどに基づいて、要求空燃比、要求吸気量、要求点火遅角を算出するとともに、燃料カット要求の有無を判断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンを制御するエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクセル操作量に基づいて、エンジンが発生すべき要求トルクを算出し、この要求トルクをエンジンから発生させるように、スロットル、点火プラグ、及びインジェクタなどの制御量を算出してエンジンを制御するように構成されたエンジン制御装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−82090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の装置では、エンジントルクに基づいてエンジンを制御することに起因して、以下に説明する問題点があった。
エンジントルクは、エンジン回転数の変化速度に作用する。すなわち、エンジンに外部負荷がない状態において、エンジントルクがエンジンロストルクに等しい場合に、エンジン回転数は、そのときの回転数を維持する。換言すると、エンジン回転数は、エンジントルクがエンジンロストルクよりも大きい場合には増加し続け、小さい場合には減少し続ける。
【0005】
このため、エンジン回転数が目標値より低い場合には、要求トルクを増加させ、エンジン回転数が目標値に近づくにつれて徐々に要求トルクを減少させることになる。そして、エンジン回転数が目標値に到達した時点で、要求トルクがエンジンロストルクに一致するようにする。また、エンジン回転数が目標値に到達して、さらに目標値を超えてしまった場合には、要求トルクをエンジンロストルクよりも減らす。一方、エンジン回転数が目標値より高い場合には、エンジン回転数が目標値より低い場合と逆になるように要求トルクを変化させる。
【0006】
このように、エンジントルクを用いたエンジン回転数制御では、動的に要求トルクを変化させるフィードバック制御を行う必要がある。このため、フィードバックゲインなどの適合パラメータを運転条件に応じて調整する必要があり、エンジン制御の複雑化を招いてしまう。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、エンジン回転数によるエンジン制御を簡略化することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載のエンジン制御装置では、要求エンジンパワー算出手段が、少なくとも、車両に搭載されたアクセルペダルの操作量であるアクセル操作量に基づいて、エンジンに対して要求するエンジンパワーである要求エンジンパワーを算出し、制御量算出手段が、要求エンジンパワー算出手段により算出された要求エンジンパワーをエンジンが出力するように、エンジンの制御量を算出する。
【0009】
このように構成された請求項1に記載のエンジン制御装置では、目標とするエンジン回転数(以下、目標エンジン回転数という)となるようにエンジンを制御する場合に、目標エンジン回転数に対応するエンジンパワーを設定することにより、エンジンの制御量を算出することができる。
【0010】
なお、エンジンパワーは、エンジン回転数の収束値に作用する。すなわち、エンジンに外部負荷がない状態において、エンジンパワーが或る一定の値(以下、所定エンジンパワー値という)を維持している場合に、エンジン回転数は、この所定エンジンパワー値に対応した或るエンジン回転数(以下、対応エンジン回転数という)に収束する。換言すると、エンジンパワーが上記の所定エンジンパワー値より大きい場合には、エンジン回転数は、上記の対応エンジン回転数より高いエンジン回転数で収束し、エンジンパワーが上記の所定エンジンパワー値より小さい場合には、エンジン回転数は、上記の対応エンジン回転数より低いエンジン回転数で収束する。
【0011】
したがって、請求項1に記載のエンジン制御装置によれば、エンジン回転数が目標エンジン回転数となるように制御する場合に、エンジン回転数に対応するエンジンパワー(要求エンジンパワー)を設定しさえすれば、エンジン回転数が目標エンジン回転数に到達するまで、要求エンジンパワーの値を変化させる必要がない。このため、フィードバックゲインなどの適合パラメータを調整する必要がなくなり、エンジン回転数によるエンジン制御を簡略化することができる。
【0012】
さらに、アクセル操作量に基づいて算出された要求エンジンパワーを用いてエンジン制御を行っているので、運転者がアクセル操作をしていない状態(例えば、アイドリング状態)以外の状態(すなわち、運転者がアクセル操作をしている状態)において、エンジンパワーに基づいたエンジン制御を行うことができる。
【0013】
また、請求項1に記載のエンジン制御装置では、請求項2に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、エンジンの回転数であるエンジン回転数が、エンジン回転数の上限値として予め設定された制限エンジン回転数である場合に、要求エンジンパワーの上限値を、エンジン回転数が制限エンジン回転数を超えないように予め設定されたエンジンパワーであるエンジン回転数制限パワーに設定するようにするとよい。
【0014】
このように構成された請求項2に記載のエンジン制御装置では、エンジン回転数が制限エンジン回転数である場合に、要求エンジンパワーが、制限エンジン回転数を維持するためのエンジン回転数制限パワー以下に設定されるため、エンジン回転数が制限エンジン回転数より高くならないように制御することができる。そして、要求エンジンパワーをエンジン回転数制限パワー以下にするという簡便な方法により、エンジン回転数を制限エンジン回転数以下に制限することができる。
【0015】
なお、エンジン回転数を制限エンジン回転数に維持するための上記エンジン回転数制限パワーは、例えば、制限エンジン回転数のエンジンロストルクに対応するエンジンパワー(=制限エンジン回転数のエンジンロストルク×制限エンジン回転数×単位変換係数)に設定するとよい。
【0016】
ところで、エンジン回転数が制限エンジン回転数よりも十分低い場合には、車両の加速力を得るために一時的に大きなエンジンパワーを要求したい状況が発生し得る。このときに、要求エンジンパワーがエンジン回転数制限パワー以下に制限されていると、十分な加速力が得られないおそれがある。
【0017】
そこで、請求項2に記載のエンジン制御装置では、請求項3に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、エンジン回転数が制限エンジン回転数未満である場合には、要求エンジンパワーの上限値を、エンジン回転数制限パワーより大きい値に設定するようにするとよい。
【0018】
なお、エンジン回転数が制限エンジン回転数未満である場合の要求エンジンパワーの上限値(以下、要求エンジンパワー上限値という)は、例えば、以下のように設定するとよい。
【0019】
エンジン回転数が、制限エンジン回転数より低くなるように予め設定された第1パワー設定回転数未満である場合には、要求エンジンパワー上限値を、エンジン回転数制限パワーより十分大きくなるように予め設定された値(以下、第1パワー設定上限値という)に設定する。この第1パワー設定上限値は、例えば、エンジンの最大パワーとするとよい。また、エンジン回転数が、第1パワー設定回転数以上かつ制限エンジン回転数未満である場合には、エンジン回転数と制限エンジン回転数との差が小さくなるに伴い、要求エンジンパワー上限値とエンジン回転数制限パワーとの差が小さくなるように、要求エンジンパワー上限値を設定する。
【0020】
これにより、エンジン回転数が制限エンジン回転数に近づいており一時的に大きなエンジンパワーが要求されない状況において、適切に要求エンジンパワー上限値を設定することができる。
【0021】
次に、請求項2または請求項3に記載のエンジン制御装置では、請求項4に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、エンジン回転数が制限エンジン回転数より大きい場合には、要求エンジンパワーの上限値を、エンジン回転数制限パワーより小さい値に設定するようにするとよい。
【0022】
このように構成された請求項4に記載のエンジン制御装置では、エンジン回転数が制限エンジン回転数より大きい場合に、要求エンジンパワーは、制限エンジン回転数を維持するためのエンジン回転数制限パワーより小さくなるために、エンジンは、現在のエンジン回転数より低いエンジン回転数で収束しようとする。このため、エンジン回転数が制限エンジン回転数より大きくなっても、エンジン回転数を迅速に制限エンジン回転数まで下げることができる。
【0023】
また、エンジン回転数の代わりに車速に基づいて、要求エンジンパワー上限値を設定するようにしてもよい。
すなわち、請求項1に記載のエンジン制御装置において、請求項5に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、車両の走行速度である車速が、車速の上限値として予め設定された制限車速である場合に、要求エンジンパワーの上限値を、車速が制限車速を超えないように予め設定されたエンジンパワーである車速制限パワーに設定するようにするとよい。
【0024】
このように構成された請求項5に記載のエンジン制御装置では、車速が制限車速である場合に、要求エンジンパワーが、制限車速を超えないための車速制限パワー以下に設定されるため、車速が制限車速より高くならないように制御することができる。そして、要求エンジンパワーを車速制限パワー以下にするという簡便な方法により、車速を制限車速以下に制限することができる。なお、車速が制限車速を超えないようにするための上記車速制限パワーは、例えば0に設定するとよい。
【0025】
また、車速が制限車速より低い場合において、車両の加速力を得るために一時的に大きなエンジンパワーを要求したい状況に対応するために、請求項5に記載のエンジン制御装置において、請求項6に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、車速が制限車速未満である場合には、要求エンジンパワーの上限値を、車速制限パワーより大きい値に設定するようにするとよい。
【0026】
なお、車速が制限車速未満である場合の要求エンジンパワー上限値は、例えば、以下のように設定するとよい。
車速が、制限車速より低くなるように予め設定された第1パワー設定車速未満である場合には、要求エンジンパワー上限値を、車速制限パワーより十分大きくなるように設定された値(以下、第2パワー設定上限値という)に設定する。この第2パワー設定上限値は、例えば、エンジンの最大パワーとするとよい。また、車速が、第1パワー設定車速以上かつ制限車速未満である場合には、車速と制限車速との差が小さくなるに伴い、要求エンジンパワー上限値と車速制限パワーとの差が小さくなるように、要求エンジンパワー上限値を設定する。
【0027】
これにより、エンジン回転数が制限エンジン回転数に近づいて一時的に大きなエンジンパワーが要求されない状況において、適切に要求エンジンパワー上限値を設定することができる。
【0028】
但し、車速に対応するエンジンパワーは、エンジン回転数に対応するエンジンパワーと比較して、正確に設定することは容易ではない。このため、車速制限パワーの値は、制限車速を超えないように安全側に見積もって、低めに設定される必要がある。例えば、制限車速における車速制限パワーを0に設定すれば、車速は制限車速より高くならない。しかし、このように、余裕をもって低めに車速制限パワーを設定すると、実際に車速を制限車速まで上昇させることができなくなる。
【0029】
ところで、車速とエンジン回転数との間には、(車速=エンジン回転数÷変速比×単位変換係数)という式で表される関係がある。このため、制限車速に対応するエンジン回転数は、(制限車速×変速比÷単位変換係数)で算出される。
【0030】
そこで、請求項5または請求項6に記載のエンジン制御装置において、請求項7に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、少なくとも制限車速と車両の変速比とに基づいて算出された、制限車速に対応するエンジン回転数である制限車速対応エンジン回転数を越えないように予め設定されたエンジンパワーを、車速制限パワーとするようにしてもよい。
【0031】
この車速制限パワーは、制限車速に対応するエンジン回転数に基づいてより正確に設定することができるため、ただ単に制限車速に基づいて車速制限パワーを設定する場合よりも、実際に上昇させることができる車速と制限車速との差を小さくすることができる。
【0032】
また、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のエンジン制御装置において、請求項8に記載のように、要求エンジンパワーは、少なくとも、アクセル操作量に基づいて決定されるエンジンパワーであるアクセル操作要求パワーと、車両がアイドル運転状態であるときのエンジン回転数の目標値である目標アイドル回転数を維持するためにエンジンに対して要求するパワーである目標アイドルパワーとを加算することにより算出されるようにするとよい。
【0033】
このように構成された請求項8に記載のエンジン制御装置では、運転者によるアクセル操作が行われておらず車両がアイドリング状態である場合において、要求エンジンパワーを目標アイドルパワーに設定することにより、エンジン制御を行うことができる。つまり、運転者がアクセル操作をしている状態(例えば、走行状態)だけではなく、運転者がアクセル操作をしていないアイドリング状態においても、エンジンパワーに基づいたエンジン制御を行うことができる。さらに、運転者がアクセル操作をしている状態と、運転者がアクセル操作をしていないアイドリング状態との両方において、要求エンジンパワーを用いてエンジン制御を行うことができる。つまり、上記2つの状態に応じて、制御パラメータを変更すること必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0034】
また、請求項8に記載のエンジン制御装置において、請求項9に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、エンジンが始動状態である場合に、エンジンが始動状態であるときに必要なアイドル回転数として予め設定された始動用アイドル回転数分、目標アイドル回転数を増加させるようにするとよい。
【0035】
このように構成された請求項9に記載のエンジン制御装置では、エンジン始動時において始動用アイドル回転数分、目標アイドルパワーが増加する。すなわち、要求エンジンパワーが増加する。このため、エンジンの安定的始動のためのエンジンパワー増加を要求エンジンパワーに含めることができる。これにより、エンジン始動時において、要求エンジンパワーを用いてエンジン制御を行うことができる。つまり、エンジン始動時において、要求エンジンパワーの代わりに別の制御パラメータを用いてエンジン制御を行う必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0036】
また、請求項8または請求項9に記載のエンジン制御装置において、請求項10に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、エンジンのパワーを利用して動作する機器であるエンジンパワー動作機器の作動状況に応じて、要求エンジンパワーを変化させるようにするとよい。
【0037】
このように構成された請求項9に記載のエンジン制御装置では、エンジンパワー動作機器の作動状況に応じて要求エンジンパワーを増減させることができる。すなわち、エンジンパワー動作機器の作動状況に応じて要求エンジンパワーが増減する。このため、エンジンパワー動作機器のためのエンジンパワー増加を要求エンジンパワーに含めることができる。これにより、エンジンパワー動作機器の動作時において、要求エンジンパワーの代わりに別の制御パラメータを用いてエンジン制御を行う必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0038】
また、請求項8〜請求項10の何れか1項に記載のエンジン制御装置において、請求項11に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、減速燃料カットを実行する場合に、目標アイドル回転数を0に設定するようにするとよい。
【0039】
このように構成された請求項11に記載のエンジン制御装置では、減速燃料カットを実行する場合、例えば、アクセル操作量が0であり且つエンジン回転数が高い場合には、アクセル操作要求パワーは非常に小さい値であるので、目標アイドル回転数を0にすると、要求エンジンパワーも非常に小さい値になる。このため、要求エンジンパワーを用いたエンジン制御によって燃料カットを行うことができる。したがって、燃料カット制御のための制御を別途実行する必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0040】
また、請求項1〜請求項11の何れか1項に記載のエンジン制御装置において、請求項12に記載のように、燃料カット判定手段が、要求エンジンパワーに対してエンジンの吸気管時定数に基づいた時間遅れを与えることで算出される実エンジンパワーが、エンジンが実現可能な最小のエンジンパワー(以下、最小エンジンパワーという)以下である場合に、燃料カットを実行すると決定するようにするとよい。
【0041】
なお、上記の実エンジンパワーは、要求エンジンパワーで要求されるエンジンパワーが、吸気管時定数に基づいた遅延時間の後にエンジンで発生するという考えで算出されている。
【0042】
このように構成された請求項12に記載のエンジン制御装置では、実エンジンパワーが上記最小エンジンパワー以下の場合には、燃料噴射を行う必要がないという考えに基づいて燃料カットの有無を判定しており、要求エンジンパワーを用いて算出された実エンジンパワーに基づいて簡便に燃料カット判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】エンジンECU1及びエンジン2を示す概略構成図である。
【図2】エンジンECU1が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
【図3】目標アイドル回転数算出部31が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
【図4】目標アイドル回転数算出処理を示すフローチャートである。
【図5】要求エンジンパワー算出部32が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
【図6】第1実施形態の要求エンジンパワー算出処理を示すフローチャートである。
【図7】駆動要求パワーの算出方法を説明する図である。
【図8】高回転制限パワーの算出方法を説明する図である。
【図9】制御要求値算出部33が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
【図10】制御要求値算出処理を示すフローチャートである。
【図11】第2実施形態の要求エンジンパワー算出処理を示すフローチャートである。
【図12】高車速制限パワーの算出方法を説明する図である。
【図13】第3実施形態の要求エンジンパワー算出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
(第1実施形態)
以下に本発明の第1実施形態を図面とともに説明する。
【0045】
図1は、本発明が適用されたエンジン制御装置(以下、エンジンECUという)1及びエンジン2を示す概略構成図である。
エンジンECU1は、図1に示すように、車両に搭載された内燃機関としてのガソリンエンジン2を制御するための処理を実行するマイコン(マイクロコンピュータ)3と、マイコン3からの制御信号に従って各種アクチュエータを作動させる駆動回路4と、各種信号をマイコン3に入力させる入力回路5とを備えている。
【0046】
具体的には、マイコン3には、エンジン2の吸気管11に設けられた吸入空気量センサとしてのエアフロメータ12からの信号、吸気管11に設けられたスロットル弁13の開度を検出するスロットル開度センサ14からの信号、吸気管11内の圧力を検出する吸気管圧力センサ15からの信号、エンジン2の冷却水温を検出する水温センサ16からの信号、エンジン2の排気管17に設けられた空燃比センサ18からの信号、エンジン2のクランク軸19の回転に応じてクランク角センサ20から出力されるクランク軸回転信号(以下、クランク信号という)、及び車両のイグニッションスイッチやスタータスイッチ(図示省略)といった各種スイッチのオン/オフ状態を表すスイッチ信号などが、入力回路5を介して入力される。入力回路5は一般的なものであり、センサ信号等の信号を、アナログ・ディジタル変換を行う、ノイズ除去を行う、波形整形を行うなど所定の信号処理を施しマイコン3にて入力信号を処理可能な信号へと変換するといったことを行う。
【0047】
そして、マイコン3は、入力回路5を介して入力される上記各信号に基づいてエンジン2の状態を検出するとともに、その検出結果に基づいて駆動回路4に制御信号を出力することにより、スロットル弁13の開度を変えるスロットルモータ21、各気筒内の燃料に着火するための点火プラブ22、及び各気筒に燃料を噴射するインジェクタ23といった各種アクチュエータを制御してエンジン2を作動させる。
【0048】
図2は、エンジンECU1が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
エンジンECU1は、図2に示すように、目標アイドル回転数算出部31、要求エンジンパワー算出部32、制御要求値算出部33、インジェクタ制御部34、スロットル制御部35、及び点火プラグ制御部36を備える。
【0049】
また、エンジンECU1には、上述の水温センサ16と、上述のクランク角センサ20と、アクセルペダル開度を検出するアクセルペダルセンサ26と、車両に搭載されたエアコン27とが接続されており、エンジン水温を示す情報、エンジン回転数を示すエンジン回転数情報、エアコン27のオン/オフ状態を示すエアコンオン・オフ情報、アクセルペダル開度を示すアクセルペダル開度情報がエンジンECU1に入力される。
【0050】
目標アイドル回転数算出部31は、エンジン水温情報、エンジン回転数情報、エアコンオン・オフ情報、及びアクセルペダル開度情報に基づいて、エンジン始動時およびアイドリング状態におけるエンジン回転数の目標値(以下、目標アイドル回転数という)を算出する。
【0051】
要求エンジンパワー算出部32は、目標アイドル回転数算出部31が算出した目標アイドル回転数と、エンジン水温情報、エンジン回転数情報、エアコンオン・オフ情報、及びアクセルペダル開度情報とに基づいて、エンジン2の駆動で発生するパワー(エンジンパワー)の要求値(以下、要求エンジンパワーという)を算出する。なお、エンジンパワーとエンジントルクとの間には、(エンジンパワー=エンジントルク×エンジン回転数×単位変換係数)という式で表される関係がある。
【0052】
制御要求値算出部33は、要求エンジンパワー算出部32が算出した要求エンジンパワーと、エンジン水温情報、エンジン回転数情報、及びエアコンオン・オフ情報とに基づいて、要求空燃比、要求吸気量、要求点火遅角を算出するとともに、燃料カット要求の有無を判断する。
【0053】
インジェクタ制御部34は、要求エンジンパワー算出部32が算出した要求空燃比と、要求エンジンパワー算出部32が判断した燃料カット要求の有無とに基づいて、インジェクタ23を駆動し、要求空燃比に応じた量の燃料を噴射させる。
【0054】
スロットル制御部35は、要求エンジンパワー算出部32が算出した要求吸気量に基づいて、スロットルモータ21を駆動し、スロットル弁13の開度を変化させる。
点火プラグ制御部36は、要求エンジンパワー算出部32が算出した要求点火遅角に基づいたタイミングで、点火プラブ22に点火させる。
【0055】
図3は、目標アイドル回転数算出部31が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
目標アイドル回転数算出部31は、図3に示すように、基本目標アイドル回転数算出部41、始動用目標アイドル回転数加算部42、燃料カット要求判定部43、及び目標アイドル回転数設定部44を備える。
【0056】
基本目標アイドル回転数算出部41は、エンジン水温情報、及びエアコンオン・オフ情報に基づいて、基本目標アイドル回転数を算出する。
始動用目標アイドル回転数加算部42は、エンジン回転数情報に基づいて、始動状態であるか否かを判断し、始動状態である場合には、基本目標アイドル回転数に始動用目標アイドル回転数を加算し、この加算値を目標アイドル回転数とする。
【0057】
燃料カット要求判定部43は、エンジン回転数情報、及びアクセルペダル開度情報に基づいて、減速燃料カットを要求するか否かを判定する。
目標アイドル回転数設定部44は、燃料カット要求判定部43による判定結果に基づいて、最終的に目標アイドル回転数を設定する。
【0058】
次に、目標アイドル回転数算出部31に相当するマイコン3の処理(以下、目標アイドル回転数算出処理という)を、図4を用いて説明する。図4は目標アイドル回転数算出処理を示すフローチャートである。尚、この目標アイドル回転数算出処理は、マイコン3が起動(電源オン)している間に一定時間毎に繰り返し実行される処理である。
【0059】
この目標アイドル回転数算出処理が実行されると、マイコン3は、まずS10にて、エンジン水温情報、及びエアコンオン・オフ情報に基づいて、基本目標アイドル回転数を算出する。本実施形態では、エンジン水温およびエアコンオン・オフをパラメータとして基本目標アイドル回転数の値が予め設定された基本目標アイドル回転数マップを参照して、基本目標アイドル回転数を決定する。そしてS20にて、S10で算出された基本目標アイドル回転数を目標アイドル回転数に設定する。なお、S10とS20の処理が基本目標アイドル回転数算出部41に相当する。
【0060】
その後S30にて、エンジン回転数情報に基づいて、車両が始動状態であるか否かを判断する。本実施形態では、エンジン回転数が予め設定された始動状態判定値未満である場合に、始動状態であると判断する。
【0061】
ここで、車両が始動状態である場合には(S30:YES)、S40にて、S10で算出された基本目標アイドル回転数に、値が予め設定された始動用目標アイドル回転数を加算し、この加算値を目標アイドル回転数に設定して、S50に移行する。一方、車両が始動状態でない場合には(S30:NO)、S50に移行する。なお、S30とS40の処理が始動用目標アイドル回転数加算部42に相当する。
【0062】
そしてS50に移行すると、エンジン回転数情報、及びアクセルペダル開度情報に基づいて、減速燃料カットを要求するか否かを判定する。本実施形態では、アクセルペダルが全閉であり、且つ、エンジン回転数が、上記基本目標アイドル回転数よりも十分大きくなるように予め設定された燃料カット判定値以上である場合に、減速燃料カットを要求すると判定する。なお、S50の処理が燃料カット要求判定部43に相当する。
【0063】
ここで、減速燃料カットを要求すると判定した場合には(S50:YES)、S60にて、目標アイドル回転数を0に設定して、目標アイドル回転数算出処理を一旦終了する。一方、減速燃料カットを要求しないと判定した場合には(S50:NO)、目標アイドル回転数算出処理を一旦終了する。なお、S20とS40とS60の処理が目標アイドル回転数設定部44に相当する。
【0064】
図5は、要求エンジンパワー算出部32が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
要求エンジンパワー算出部32は、図5に示すように、目標アイドルパワー算出部51、駆動要求パワー算出部52、外部機器要求パワー算出部53、アイドルフィードバックパワー算出部54、高回転制限パワー算出部55、及び要求パワー設定部56を備える。
【0065】
目標アイドルパワー算出部51は、目標アイドル回転数算出部31が算出した目標アイドル回転数に基づいて、目標アイドルパワーを算出する。目標アイドルパワーは、エンジン回転数が目標アイドル回転数に収束するためのエンジンパワーであり、目標アイドル回転数におけるエンジンロスパワー(=エンジンロストルク×目標アイドル回転数×単位変換係数)と等価である。なお、目標アイドル回転数が0の場合には、目標アイドルパワーも0になる。ここで、エンジンロストルクとは、エンジンに外部負荷がない状態において、エンジン回転数を一定回転数に維持するために必要とされるトルクである。
【0066】
駆動要求パワー算出部52は、アクセルペダル開度情報に基づいて、駆動要求パワーを算出する。外部機器要求パワー算出部53は、エアコンオン・オフ情報に基づいて、外部機器要求パワーを算出する。アイドルフィードバックパワー算出部54は、目標アイドル回転数算出部31が算出した目標アイドル回転数と、エンジン回転数情報とに基づいて、アイドルフィードバックパワーを算出する。
【0067】
高回転制限パワー算出部55は、エンジン回転数情報に基づいて、要求エンジンパワーの上限値(以下、高回転制限パワーという)を算出する。
要求パワー設定部56は、目標アイドルパワー、駆動要求パワー、外部機器要求パワー、アイドルフィードバックパワー、及び高回転制限パワーに基づいて、最終的に要求エンジンパワーを設定する。
【0068】
次に、要求エンジンパワー算出部32に相当するマイコン3の処理(以下、要求エンジンパワー算出処理という)を、図6を用いて説明する。図6は要求エンジンパワー算出処理を示すフローチャートである。尚、この要求エンジンパワー算出処理は、マイコン3が起動(電源オン)している間に一定時間毎に繰り返し実行される処理である。
【0069】
この要求エンジンパワー算出処理が実行されると、マイコン3は、まずS110にて、目標アイドル回転数に基づいて目標アイドルパワーを算出する。本実施形態では、目標アイドル回転数をパラメータとしてエンジンロストルクの値が予め設定されたエンジンロストルクマップを参照してエンジンロストルクを決定し、(エンジンロストルク×目標アイドル回転数×単位変換係数)で算出される値を目標アイドルパワーとする。なお、S110の処理が目標アイドルパワー算出部51に相当する。
【0070】
またS120にて、アクセルペダル開度情報に基づいて、駆動要求パワーを算出する。本実施形態では、アクセルペダル開度をパラメータとして駆動要求パワーの値が予め設定された駆動要求パワーマップを参照して、駆動要求パワーを決定する。なお、駆動要求パワーは、例えば図7に示すように、アクセルペダル開度の増加に伴い増加する。そして、S120の処理が駆動要求パワー算出部52に相当する。
【0071】
またS130にて、エアコンオン・オフ情報に基づいて、外部機器要求パワーを算出する。本実施形態では、エアコン27のオン・オフをパラメータとして外部機器要求パワーの値が予め設定された外部機器要求パワーマップを参照して、外部機器要求パワーを決定する。なお、S130の処理が外部機器要求パワー算出部53に相当する。
【0072】
その後S140にて、アイドルフィードバックを要求するか否かを判定する。本実施形態では、アクセルペダルが全閉であり、且つ、低車速であり、且つ、燃料カットを要求していない場合に、アイドルフィードバックを要求すると判定する。
【0073】
ここで、アイドルフィードバックを要求すると判定した場合には(S140:YES)、S150にて、アイドルフィードバックパワーを算出して、S170に移行する。本実施形態では、目標アイドル回転数とエンジン回転数との差分が小さくなるように一般的なフィードバック制御器(例えば、PID制御器)を用いて算出される。ここで、目標アイドル回転数とエンジン回転数、または目標アイドル回転数とエンジン回転数との差分をエンジンパワーの単位に変換してからフィードバック制御を行うと、制御の入出力の単位が一致するため、フィードバックゲインが無次元となりゲインの適合が容易になる。
【0074】
一方、アイドルフィードバックを要求しないと判定した場合には(S140:NO)、S160にて、アイドルフィードバックパワーを0に設定して、S170に移行する。なお、S140,S150,S160の処理がアイドルフィードバックパワー算出部54に相当する。
【0075】
そしてS170に移行すると、目標アイドルパワーと駆動要求パワーと外部機器要求パワーとアイドルフィードバックパワーとの加算値を要求エンジンパワーに設定する。
次にS180にて、エンジン回転数情報に基づいて、高回転制限パワーを算出する。本実施形態では、エンジン回転数をパラメータとして高回転制限パワーの値が予め設定された高回転制限パワーマップを参照して、高回転制限パワーを決定する。そして、高回転制限パワーは、例えば図8に示すように、エンジン回転数が低い場合には十分に大きい値(例えば、最大エンジンパワー)であり、エンジン回転数が制限エンジン回転数に近づくにつれて、エンジン回転数が制限エンジン回転数を超えないように設定された値(以下、エンジン回転数制限パワーという。本実施形態では制限エンジン回転数におけるエンジンロスパワー(=制限エンジン回転数のエンジンロストルク×制限エンジン回転数×単位変換係数)。)に近づくように設定されている。さらに、高回転制限パワーは、エンジン回転数が制限エンジン回転数より高い場合には、エンジン回転数と制限エンジン回転数との差が大きくなるほど小さくなるように設定されている。なお、S180の処理が高回転制限パワー算出部55に相当する。
【0076】
その後S190にて、要求エンジンパワーが、S180で算出された高回転制限パワーより大きいか否かを判断する。ここで、要求エンジンパワーが高回転制限パワーより大きい場合には(S190:YES)、S200にて、要求エンジンパワーを、S180で算出された高回転制限パワーに設定して、要求エンジンパワー算出処理を一旦終了する。一方、要求エンジンパワーが高回転制限パワー以下である場合には(S190:NO)、要求エンジンパワー算出処理を一旦終了する。なお、S170,S190,S200の処理が要求パワー設定部56に相当する。
【0077】
図9は、制御要求値算出部33が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
制御要求値算出部33は、図9に示すように、要求エンジントルク算出部61、実エンジントルク算出部62、燃料カット要求判定部63、及び各制御要求値算出部64を備える。
【0078】
要求エンジントルク算出部61は、要求エンジンパワー算出部32が算出した要求エンジンパワーと、エンジン回転数情報とに基づいて、要求エンジントルクを算出する。
実エンジントルク算出部62は、要求エンジントルク算出部61が算出した要求エンジントルクに時間遅れを与えることにより、実エンジントルクを算出する。
【0079】
燃料カット要求判定部63は、実エンジントルク算出部62が算出した実エンジントルクに基づいて、燃料カットを要求するか否かを判定する。
各制御要求値算出部64は、要求エンジントルク算出部61が算出した要求エンジントルクと、燃料カット要求判定部63による判定結果とに基づいて、インジェクタ制御部34、スロットル制御部35、及び点火プラグ制御部36それぞれに対する制御要求値を算出する。
【0080】
次に、制御要求値算出部33に相当するマイコン3の処理(以下、制御要求値算出処理という)を、図10を用いて説明する。図10は制御要求値算出処理を示すフローチャートである。尚、この制御要求値算出処理は、マイコン3が起動(電源オン)している間に一定時間毎に繰り返し実行される処理である。
【0081】
この制御要求値算出処理が実行されると、マイコン3は、まずS310にて、(要求エンジンパワー÷エンジン回転数÷単位変換係数)で算出される値を要求エンジントルクとする。なお、S310の処理が要求エンジントルク算出部61に相当する。
【0082】
次にS320にて、S310で算出された要求エンジントルクに対してエンジンの吸気管時定数に基づいた時間遅れを与えることで実エンジントルクを算出する。なお、S320の処理が実エンジントルク算出部62に相当する。
【0083】
その後S330にて、実エンジントルクが、エンジン2が実現し得る最小エンジントルクより小さいか否かを判断する。なお、この最小エンジントルクの値は、既知のエンジン特性に基づいて予め設定されている。
【0084】
ここで、実エンジントルクが最小エンジントルクより小さい場合には(S330:YES)、S340にて、燃料カットを要求すると決定し、S360に移行する。一方、実エンジントルクが最小エンジントルク以上である場合には(S330:NO)、S350にて、燃料噴射を要求すると決定し、S360に移行する。なお、S330,S340,S350の処理が燃料カット要求判定部63に相当する。
【0085】
そしてS360に移行すると、S310で算出された要求エンジントルクに基づいて、要求吸気量、要求点火遅角、及び要求空燃比を算出する。
その後S370にて、燃料カットの要求があるか否かを判断する。すなわち、S340で燃料カットを要求すると決定したか否かを判断する。ここで、燃料カットの要求があると判断した場合には(S370:YES)、S380にて、要求空燃比を、非常にリーンな値(例えば100)に設定して、制御要求値算出処理を一旦終了する。一方、燃料カットの要求がないと判断した場合には(S370:NO)、制御要求値算出処理を一旦終了する。なお、S360,S370,S380の処理が各制御要求値算出部64に相当する。
【0086】
このように構成されたエンジンECU1では、要求エンジンパワー算出部32が、アクセルペダル開度に基づいて、要求エンジンパワーを算出し、制御要求値算出部33が、要求エンジンパワーをエンジン2が出力するように、エンジン2の制御量(要求空燃比、要求吸気量、要求点火遅角)を算出する。
【0087】
これにより、目標とするエンジン回転数(以下、目標エンジン回転数という)となるようにエンジン2を制御する場合に、目標エンジン回転数に対応するエンジンパワーを設定することにより、エンジン2の制御量を算出することができる。
【0088】
なお、エンジンパワーは、エンジン回転数の収束値に作用する。すなわち、エンジン2に外部負荷がない状態において、エンジンパワーが或る一定の値(以下、所定エンジンパワー値という)を維持している場合に、エンジン回転数は、この所定エンジンパワー値に対応した或るエンジン回転数に収束する。
【0089】
したがって、エンジンECU1によれば、エンジン回転数が目標エンジン回転数となるように制御する場合に、要求エンジンパワーを設定しさえすれば、エンジン回転数が目標エンジン回転数に到達するまで、要求エンジンパワーの値を変化させる必要がない。このため、フィードバックゲインなどの適合パラメータを調整する必要がなくなり、エンジン回転数によるエンジン制御を簡略化することができる。
【0090】
さらに、アクセルペダル開度に基づいて算出された要求エンジンパワーを用いてエンジン制御を行っているので、運転者がアクセル操作をしていない状態(例えば、アイドリング状態)以外の状態(すなわち、運転者がアクセル操作をしている状態)において、エンジンパワーに基づいたエンジン制御を行うことができる。
【0091】
なお、エンジンの多くは、エンジン回転数が最大トルク回転数以下であるときにはエンジン回転数が上昇するにつれてエンジントルクが増加して最大トルク回転数でエンジントルクが最大トルクに達し、さらに、エンジン回転数が最大トルク回転数を超えると、エンジン回転数が上昇するにつれてエンジントルクが減少するという特性を有する。
【0092】
一方、エンジンパワーとエンジントルクとの間には、(エンジンパワー=エンジントルク×エンジン回転数×単位変換係数)という式で表される関係がある。このため、高エンジン回転数領域においてエンジントルクが減少しても、そのトルク減少によるエンジンパワー減少分を、高いエンジン回転数で補うことができ、これにより、エンジンパワーは、エンジン回転数の上昇するにつれて右肩上がりに増加する特性を有し易い。そして、エンジンパワーの上記特性により、アクセルペダル開度が増加するにつれて要求エンジンパワーが増加するように設定することができる(図7を参照)。
【0093】
また、高回転制限パワー算出部55は、エンジン回転数が制限エンジン回転数である場合に、要求エンジンパワーの上限値を、エンジン回転数制限パワー(制限エンジン回転数におけるエンジンロスパワー)に設定する。これにより、エンジン回転数が制限エンジン回転数より高くならないように制御することができる。そして、要求エンジンパワーをエンジン回転数制限パワー以下にするという簡便な方法により、エンジン回転数を制限エンジン回転数以下に制限することができる。
【0094】
また、高回転制限パワーは、エンジン回転数が低い場合には十分に大きい値(例えば、最大エンジンパワー)であり、エンジン回転数が制限エンジン回転数に近づくにつれて、エンジン回転数制限パワー(制限エンジン回転数におけるエンジンロスパワー)に近づくように設定されている。これにより、エンジン回転数が制限エンジン回転数よりも低い場合において、車両の加速力を得るために一時的に大きなエンジンパワーを要求することができる。
【0095】
また、高回転制限パワーは、エンジン回転数が制限エンジン回転数より高い場合には、エンジン回転数と制限エンジン回転数との差が大きくなるほど小さくなるように設定されている。これにより、エンジン回転数が制限エンジン回転数より大きい場合に、要求エンジンパワーは、エンジン回転数制限パワーより小さくなるために、エンジン2は、現在のエンジン回転数より低いエンジン回転数で収束しようとする。このため、エンジン回転数が制限エンジン回転数より大きくなっても、エンジン回転数を迅速に制限エンジン回転数まで下げることができる。
【0096】
また、要求エンジンパワーは、少なくとも、アクセルペダル開度に基づいて算出された駆動要求パワーと、目標アイドル回転数を維持するための目標アイドルパワーとを加算することにより算出される。
【0097】
これにより、運転者によるアクセル操作が行われておらず車両がアイドリング状態である場合において、要求エンジンパワーを目標アイドルパワーに設定することにより、エンジン制御を行うことができる。つまり、運転者がアクセル操作をしている状態(例えば、走行状態)だけではなく、運転者がアクセル操作をしていないアイドリング状態においても、エンジンパワーに基づいたエンジン制御を行うことができる。さらに、運転者がアクセル操作をしている状態と、運転者がアクセル操作をしていないアイドリング状態との両方において、要求エンジンパワーを用いてエンジン制御を行うことができる。つまり、上記2つの状態に応じて、制御パラメータを変更すること必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0098】
また、始動用目標アイドル回転数加算部42は、始動状態である場合に、基本目標アイドル回転数に始動用目標アイドル回転数を加算し、この加算値を目標アイドル回転数とする。これにより、エンジン始動時において始動用目標アイドル回転数分、目標アイドルパワーが増加する。すなわち、要求エンジンパワーが増加する。このため、エンジンの安定的始動のためのエンジンパワー増加を要求エンジンパワーに含めることができる。これにより、エンジン始動時において、要求エンジンパワーを用いてエンジン制御を行うことができる。つまり、エンジン始動時において、要求エンジンパワーの代わりに別の制御パラメータを用いてエンジン制御を行う必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0099】
また、要求エンジンパワー算出部32は、エアコン27のオン・オフに応じて、要求エンジンパワーを変化させる。このため、エアコン27のためのエンジンパワー増加を要求エンジンパワーに含めることができる。これにより、エアコン27の動作時において、要求エンジンパワーの代わりに別の制御パラメータを用いてエンジン制御を行う必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0100】
また、目標アイドル回転数算出部31は、減速燃料カットを要求する場合に、目標アイドル回転数を0に設定する。減速燃料カットを実行する場合、例えば、アクセルペダル開度が0であり且つエンジン回転数が高い場合には、駆動要求パワーは0であるので、要求エンジンパワーも非常に小さい値になる。このため、要求エンジンパワーを用いたエンジン制御によって燃料カットを行うことができる。したがって、燃料カット制御のための制御を別途実行する必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0101】
また、燃料カット要求判定部63は、要求エンジントルクに対してエンジンの吸気管時定数に基づいた時間遅れを与えることで算出される実エンジントルクが最小エンジントルクより小さい場合に、燃料カットを要求すると決定する。これにより、要求エンジントルクを用いて算出された実エンジントルクに基づいて簡便に燃料カット判定を行うことができる。
【0102】
以上説明した実施形態において、要求エンジンパワー算出部32は本発明における要求エンジンパワー算出手段、制御要求値算出部33は本発明における制御量算出手段、アクセルペダル開度は本発明におけるアクセル操作量、駆動要求パワーは本発明におけるアクセル操作要求パワー、始動用目標アイドル回転数は本発明における始動用アイドル回転数、エアコン27は本発明におけるエンジンパワー動作機器である。
【0103】
(第2実施形態)
以下に本発明の第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0104】
第2実施形態のエンジンECU1は、要求エンジンパワー算出処理のS190,S200の処理が省略され、S210〜S260の処理が追加された点以外は第1実施形態と同じである。図11は、第2実施形態の要求エンジンパワー算出処理を示すフローチャートである。
【0105】
図11に示すように、S180の処理が終了すると、S210にて、エンジン回転数情報に基づいて、高車速制限パワーを算出する。本実施形態では、車速をパラメータとして高車速制限パワーの値が予め設定された高車速制限パワーマップを参照して、高車速制限パワーを決定する。なお、高車速制限パワーは、例えば図12に示すように、車速が低い場合には十分に大きい値(例えば、最大エンジンパワー)、車速が制限車速に近づくにつれて、車速が制限車速を超えないように設定された値(以下、車速制限パワーという。本実施形態では0)に近づき、車速が制限車速になると車速制限パワーになるように設定されている。
【0106】
次にS220にて、高車速制限パワーが高回転制限パワーより小さいか否かを判断する。ここで、高車速制限パワーが高回転制限パワーより小さい場合には(S220:YES)、S230にて、制限パワーを高車速制限パワーに設定し、S250に移行する。一方、高車速制限パワーが高回転制限パワー以上である場合には(S220:NO)、S240にて、制限パワーを高回転制限パワーに設定し、S250に移行する。
【0107】
そしてS250に移行すると、要求エンジンパワーが、制限パワーより大きいか否かを判断する。ここで、要求エンジンパワーが制限パワーより大きい場合には(S250:YES)、S260にて、要求エンジンパワーを制限パワーに設定して、要求エンジンパワー算出処理を一旦終了する。一方、要求エンジンパワーが制限パワー以下である場合には(S250:NO)、要求エンジンパワー算出処理を一旦終了する。
【0108】
このように構成されたエンジンECU1では、高回転制限パワー算出部55は、車速が制限車速である場合に、要求エンジンパワーの上限値を、車速が制限車速を超えないように予め設定された車速制限パワーに設定する。これにより、車速が制限車速より高くならないように制御することができる。そして、要求エンジンパワーを車速制限パワー以下にするという簡便な方法により、車速を制限車速以下に制限することができる。
【0109】
また、高車速制限パワーは、車速が低い場合には十分に大きい値(例えば、最大エンジンパワー)であり、車速が制限車速に近づくにつれて、車速制限パワーに近づくように設定されている。これにより、車速が制限車速よりも低い場合において、車両の加速力を得るために一時的に大きなエンジンパワーを要求することができる。
【0110】
(第3実施形態)
以下に本発明の第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0111】
第3実施形態のエンジンECU1は、要求エンジンパワー算出処理においてS410〜S440の処理が追加された点以外は第1実施形態と同じである。図13は、第3実施形態の要求エンジンパワー算出処理を示すフローチャートである。
【0112】
図13に示すように、S170の処理が終了すると、S410にて、高車速制限のための制限回転数を算出する。なお、本実施形態では、「高車速制限のための制限エンジン回転数」は(制限車速×変速比÷単位変換係数)で算出される。
【0113】
その後、「高車速制限のための制限エンジン回転数」が「高回転制限のための制限エンジン回転数」より小さいか否かを判断する。なお、「高回転制限のための制限エンジン回転数」は、S180における高回転制限パワー算出で用いられる制限エンジン回転数である。
【0114】
ここで、「高車速制限のための制限エンジン回転数」が「高回転制限のための制限エンジン回転数」より小さい場合には(S420:YES)、S430にて、制限エンジン回転数を「高車速制限のための制限エンジン回転数」に設定して、S180に移行する。一方、「高車速制限のための制限エンジン回転数」が「高回転制限のための制限エンジン回転数」以上である場合には(S420:NO)、S440にて、制限エンジン回転数を「高回転制限のための制限エンジン回転数」に設定して、S180に移行する。
【0115】
このように構成されたエンジンECU1では、要求エンジンパワー算出部32は、少なくとも制限車速と車両の変速比とに基づいて算出された、制限車速に対応するエンジン回転数(高車速制限のための制限エンジン回転数)を越えないように予め設定されたエンジンパワーを、車速制限パワーとする。
【0116】
この車速制限パワーは、制限車速に対応するエンジン回転数に基づいてより正確に設定することができるため、ただ単に制限車速に基づいて車速制限パワーを設定する場合よりも、実際に上昇させることができる車速と制限車速との差を小さくすることができる。
【0117】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態では、エンジン始動時において始動用目標アイドル回転数分、要求エンジンパワーを増加させるものを示したが、要求エンジンパワーを増加させなくとも安定的な始動が可能である場合には、エンジン始動時において要求エンジンパワーを増加させる処理は不要である。
【0118】
また上記実施形態では、減速燃料カットを要求するか否かを判定し(S50)、減速燃料カットを要求すると判定した場合には目標アイドル回転数を0に設定する(S60)ものを示した。しかし、S330〜S350にて、燃料カットを要求するか否かを決定する処理を行っているため、S50〜S60の処理は必ずしも実行する必要はない。S50〜S60の処理は、ドライバビリティやエミッション観点では燃料カットの必要がなくとも、燃費向上のため積極的に燃料カットを要求したい場合を考慮した処理である。
【0119】
また上記実施形態では、エアコンオン・オフ情報に基づいて、外部機器要求パワーを算出するものを示したが、エンジンのパワーを利用して動作する機器であればよく、例えば、オルタネータやトランスミッションなどの作動状況に基づいて、外部機器要求パワーを算出するようにしてもよい。
【0120】
また上記実施形態では、要求エンジントルクに対してエンジンの吸気管時定数に基づいた時間遅れを与えることで実エンジントルクを算出する(S320)ものを示したが、エンジンへの実吸気量を用いて推定したエンジントルクを実エンジントルクとして算出するようにしてもよい。
【0121】
また上記実施形態では、実エンジントルクと最小エンジントルクとを比較して燃料カットを要求するか否かを決定するもの(S330)を示したが、要求エンジントルクと最小エンジントルクとを比較するようにしてもよい。
【0122】
また上記実施形態では、要求エンジントルクを用いて燃料カットを要求するか否かを決定するもの(S330)を示したが、要求エンジンパワーを用いて燃料カットを要求するか否かを決定するようにしてもよい。この場合には、例えば、要求エンジンパワーに対してエンジンの吸気管時定数に基づいた時間遅れを与えることで実エンジンパワーを算出し、実エンジンパワーが、エンジン2が実現し得る最小エンジンパワーより小さいか否かにより、燃料カットの要求の有無を決定するようにするとよい。これにより、要求エンジンパワーを用いて算出された実エンジンパワーに基づいて簡便に燃料カット判定を行うことができる。なお、この処理は、本発明における燃料カット判定手段である。また、要求エンジンパワーと最小エンジンパワーとを比較して、燃料カットの要求の有無を決定するようにしてもよい。
【0123】
また上記実施形態では、要求エンジンパワーを算出することでエンジン回転数制御を行うことで、エンジン回転数フィードバック制御が不要となるものを示した。しかし、フィードバック制御を用いることで、より厳密なエンジン回転数制御が可能となるため、必要に応じて補助的にフィードバック制御を用いてもよい。
【0124】
なお、上述の各種パワーは、トルク×エンジン回転数×単位変換係数であったが、この単位変換係数を0.001396とすることで馬力表記としても良い。
【符号の説明】
【0125】
1…エンジンECU、2…エンジン、3…マイコン、4…駆動回路、5…入力回路、11…吸気管、12…エアフロメータ、13…スロットル弁、14…スロットル開度センサ、15…吸気管圧力センサ、16…水温センサ、17…排気管、18…空燃比センサ、19…クランク軸、20…クランク角センサ、21…スロットルモータ、22…点火プラブ、23…インジェクタ、26…アクセルペダルセンサ、27…エアコン、31…目標アイドル回転数算出部、32…要求エンジンパワー算出部、33…制御要求値算出部、34…インジェクタ制御部、35…スロットル制御部、36…点火プラグ制御部、41…基本目標アイドル回転数算出部、42…始動用目標アイドル回転数加算部、43…燃料カット要求判定部、44…目標アイドル回転数設定部、51…目標アイドルパワー算出部、52…駆動要求パワー算出部、53…外部機器要求パワー算出部、54…アイドルフィードバックパワー算出部、55…高回転制限パワー算出部、56…要求パワー設定部、61…要求エンジントルク算出部、62…実エンジントルク算出部、63…燃料カット要求判定部、64…各制御要求値算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンを制御するエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクセル操作量に基づいて、エンジンが発生すべき要求トルクを算出し、この要求トルクをエンジンから発生させるように、スロットル、点火プラグ、及びインジェクタなどの制御量を算出してエンジンを制御するように構成されたエンジン制御装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−82090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の装置では、エンジントルクに基づいてエンジンを制御することに起因して、以下に説明する問題点があった。
エンジントルクは、エンジン回転数の変化速度に作用する。すなわち、エンジンに外部負荷がない状態において、エンジントルクがエンジンロストルクに等しい場合に、エンジン回転数は、そのときの回転数を維持する。換言すると、エンジン回転数は、エンジントルクがエンジンロストルクよりも大きい場合には増加し続け、小さい場合には減少し続ける。
【0005】
このため、エンジン回転数が目標値より低い場合には、要求トルクを増加させ、エンジン回転数が目標値に近づくにつれて徐々に要求トルクを減少させることになる。そして、エンジン回転数が目標値に到達した時点で、要求トルクがエンジンロストルクに一致するようにする。また、エンジン回転数が目標値に到達して、さらに目標値を超えてしまった場合には、要求トルクをエンジンロストルクよりも減らす。一方、エンジン回転数が目標値より高い場合には、エンジン回転数が目標値より低い場合と逆になるように要求トルクを変化させる。
【0006】
このように、エンジントルクを用いたエンジン回転数制御では、動的に要求トルクを変化させるフィードバック制御を行う必要がある。このため、フィードバックゲインなどの適合パラメータを運転条件に応じて調整する必要があり、エンジン制御の複雑化を招いてしまう。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、エンジン回転数によるエンジン制御を簡略化することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載のエンジン制御装置では、要求エンジンパワー算出手段が、少なくとも、車両に搭載されたアクセルペダルの操作量であるアクセル操作量に基づいて、エンジンに対して要求するエンジンパワーである要求エンジンパワーを算出し、制御量算出手段が、要求エンジンパワー算出手段により算出された要求エンジンパワーをエンジンが出力するように、エンジンの制御量を算出する。
【0009】
このように構成された請求項1に記載のエンジン制御装置では、目標とするエンジン回転数(以下、目標エンジン回転数という)となるようにエンジンを制御する場合に、目標エンジン回転数に対応するエンジンパワーを設定することにより、エンジンの制御量を算出することができる。
【0010】
なお、エンジンパワーは、エンジン回転数の収束値に作用する。すなわち、エンジンに外部負荷がない状態において、エンジンパワーが或る一定の値(以下、所定エンジンパワー値という)を維持している場合に、エンジン回転数は、この所定エンジンパワー値に対応した或るエンジン回転数(以下、対応エンジン回転数という)に収束する。換言すると、エンジンパワーが上記の所定エンジンパワー値より大きい場合には、エンジン回転数は、上記の対応エンジン回転数より高いエンジン回転数で収束し、エンジンパワーが上記の所定エンジンパワー値より小さい場合には、エンジン回転数は、上記の対応エンジン回転数より低いエンジン回転数で収束する。
【0011】
したがって、請求項1に記載のエンジン制御装置によれば、エンジン回転数が目標エンジン回転数となるように制御する場合に、エンジン回転数に対応するエンジンパワー(要求エンジンパワー)を設定しさえすれば、エンジン回転数が目標エンジン回転数に到達するまで、要求エンジンパワーの値を変化させる必要がない。このため、フィードバックゲインなどの適合パラメータを調整する必要がなくなり、エンジン回転数によるエンジン制御を簡略化することができる。
【0012】
さらに、アクセル操作量に基づいて算出された要求エンジンパワーを用いてエンジン制御を行っているので、運転者がアクセル操作をしていない状態(例えば、アイドリング状態)以外の状態(すなわち、運転者がアクセル操作をしている状態)において、エンジンパワーに基づいたエンジン制御を行うことができる。
【0013】
また、請求項1に記載のエンジン制御装置では、請求項2に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、エンジンの回転数であるエンジン回転数が、エンジン回転数の上限値として予め設定された制限エンジン回転数である場合に、要求エンジンパワーの上限値を、エンジン回転数が制限エンジン回転数を超えないように予め設定されたエンジンパワーであるエンジン回転数制限パワーに設定するようにするとよい。
【0014】
このように構成された請求項2に記載のエンジン制御装置では、エンジン回転数が制限エンジン回転数である場合に、要求エンジンパワーが、制限エンジン回転数を維持するためのエンジン回転数制限パワー以下に設定されるため、エンジン回転数が制限エンジン回転数より高くならないように制御することができる。そして、要求エンジンパワーをエンジン回転数制限パワー以下にするという簡便な方法により、エンジン回転数を制限エンジン回転数以下に制限することができる。
【0015】
なお、エンジン回転数を制限エンジン回転数に維持するための上記エンジン回転数制限パワーは、例えば、制限エンジン回転数のエンジンロストルクに対応するエンジンパワー(=制限エンジン回転数のエンジンロストルク×制限エンジン回転数×単位変換係数)に設定するとよい。
【0016】
ところで、エンジン回転数が制限エンジン回転数よりも十分低い場合には、車両の加速力を得るために一時的に大きなエンジンパワーを要求したい状況が発生し得る。このときに、要求エンジンパワーがエンジン回転数制限パワー以下に制限されていると、十分な加速力が得られないおそれがある。
【0017】
そこで、請求項2に記載のエンジン制御装置では、請求項3に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、エンジン回転数が制限エンジン回転数未満である場合には、要求エンジンパワーの上限値を、エンジン回転数制限パワーより大きい値に設定するようにするとよい。
【0018】
なお、エンジン回転数が制限エンジン回転数未満である場合の要求エンジンパワーの上限値(以下、要求エンジンパワー上限値という)は、例えば、以下のように設定するとよい。
【0019】
エンジン回転数が、制限エンジン回転数より低くなるように予め設定された第1パワー設定回転数未満である場合には、要求エンジンパワー上限値を、エンジン回転数制限パワーより十分大きくなるように予め設定された値(以下、第1パワー設定上限値という)に設定する。この第1パワー設定上限値は、例えば、エンジンの最大パワーとするとよい。また、エンジン回転数が、第1パワー設定回転数以上かつ制限エンジン回転数未満である場合には、エンジン回転数と制限エンジン回転数との差が小さくなるに伴い、要求エンジンパワー上限値とエンジン回転数制限パワーとの差が小さくなるように、要求エンジンパワー上限値を設定する。
【0020】
これにより、エンジン回転数が制限エンジン回転数に近づいており一時的に大きなエンジンパワーが要求されない状況において、適切に要求エンジンパワー上限値を設定することができる。
【0021】
次に、請求項2または請求項3に記載のエンジン制御装置では、請求項4に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、エンジン回転数が制限エンジン回転数より大きい場合には、要求エンジンパワーの上限値を、エンジン回転数制限パワーより小さい値に設定するようにするとよい。
【0022】
このように構成された請求項4に記載のエンジン制御装置では、エンジン回転数が制限エンジン回転数より大きい場合に、要求エンジンパワーは、制限エンジン回転数を維持するためのエンジン回転数制限パワーより小さくなるために、エンジンは、現在のエンジン回転数より低いエンジン回転数で収束しようとする。このため、エンジン回転数が制限エンジン回転数より大きくなっても、エンジン回転数を迅速に制限エンジン回転数まで下げることができる。
【0023】
また、エンジン回転数の代わりに車速に基づいて、要求エンジンパワー上限値を設定するようにしてもよい。
すなわち、請求項1に記載のエンジン制御装置において、請求項5に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、車両の走行速度である車速が、車速の上限値として予め設定された制限車速である場合に、要求エンジンパワーの上限値を、車速が制限車速を超えないように予め設定されたエンジンパワーである車速制限パワーに設定するようにするとよい。
【0024】
このように構成された請求項5に記載のエンジン制御装置では、車速が制限車速である場合に、要求エンジンパワーが、制限車速を超えないための車速制限パワー以下に設定されるため、車速が制限車速より高くならないように制御することができる。そして、要求エンジンパワーを車速制限パワー以下にするという簡便な方法により、車速を制限車速以下に制限することができる。なお、車速が制限車速を超えないようにするための上記車速制限パワーは、例えば0に設定するとよい。
【0025】
また、車速が制限車速より低い場合において、車両の加速力を得るために一時的に大きなエンジンパワーを要求したい状況に対応するために、請求項5に記載のエンジン制御装置において、請求項6に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、車速が制限車速未満である場合には、要求エンジンパワーの上限値を、車速制限パワーより大きい値に設定するようにするとよい。
【0026】
なお、車速が制限車速未満である場合の要求エンジンパワー上限値は、例えば、以下のように設定するとよい。
車速が、制限車速より低くなるように予め設定された第1パワー設定車速未満である場合には、要求エンジンパワー上限値を、車速制限パワーより十分大きくなるように設定された値(以下、第2パワー設定上限値という)に設定する。この第2パワー設定上限値は、例えば、エンジンの最大パワーとするとよい。また、車速が、第1パワー設定車速以上かつ制限車速未満である場合には、車速と制限車速との差が小さくなるに伴い、要求エンジンパワー上限値と車速制限パワーとの差が小さくなるように、要求エンジンパワー上限値を設定する。
【0027】
これにより、エンジン回転数が制限エンジン回転数に近づいて一時的に大きなエンジンパワーが要求されない状況において、適切に要求エンジンパワー上限値を設定することができる。
【0028】
但し、車速に対応するエンジンパワーは、エンジン回転数に対応するエンジンパワーと比較して、正確に設定することは容易ではない。このため、車速制限パワーの値は、制限車速を超えないように安全側に見積もって、低めに設定される必要がある。例えば、制限車速における車速制限パワーを0に設定すれば、車速は制限車速より高くならない。しかし、このように、余裕をもって低めに車速制限パワーを設定すると、実際に車速を制限車速まで上昇させることができなくなる。
【0029】
ところで、車速とエンジン回転数との間には、(車速=エンジン回転数÷変速比×単位変換係数)という式で表される関係がある。このため、制限車速に対応するエンジン回転数は、(制限車速×変速比÷単位変換係数)で算出される。
【0030】
そこで、請求項5または請求項6に記載のエンジン制御装置において、請求項7に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、少なくとも制限車速と車両の変速比とに基づいて算出された、制限車速に対応するエンジン回転数である制限車速対応エンジン回転数を越えないように予め設定されたエンジンパワーを、車速制限パワーとするようにしてもよい。
【0031】
この車速制限パワーは、制限車速に対応するエンジン回転数に基づいてより正確に設定することができるため、ただ単に制限車速に基づいて車速制限パワーを設定する場合よりも、実際に上昇させることができる車速と制限車速との差を小さくすることができる。
【0032】
また、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のエンジン制御装置において、請求項8に記載のように、要求エンジンパワーは、少なくとも、アクセル操作量に基づいて決定されるエンジンパワーであるアクセル操作要求パワーと、車両がアイドル運転状態であるときのエンジン回転数の目標値である目標アイドル回転数を維持するためにエンジンに対して要求するパワーである目標アイドルパワーとを加算することにより算出されるようにするとよい。
【0033】
このように構成された請求項8に記載のエンジン制御装置では、運転者によるアクセル操作が行われておらず車両がアイドリング状態である場合において、要求エンジンパワーを目標アイドルパワーに設定することにより、エンジン制御を行うことができる。つまり、運転者がアクセル操作をしている状態(例えば、走行状態)だけではなく、運転者がアクセル操作をしていないアイドリング状態においても、エンジンパワーに基づいたエンジン制御を行うことができる。さらに、運転者がアクセル操作をしている状態と、運転者がアクセル操作をしていないアイドリング状態との両方において、要求エンジンパワーを用いてエンジン制御を行うことができる。つまり、上記2つの状態に応じて、制御パラメータを変更すること必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0034】
また、請求項8に記載のエンジン制御装置において、請求項9に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、エンジンが始動状態である場合に、エンジンが始動状態であるときに必要なアイドル回転数として予め設定された始動用アイドル回転数分、目標アイドル回転数を増加させるようにするとよい。
【0035】
このように構成された請求項9に記載のエンジン制御装置では、エンジン始動時において始動用アイドル回転数分、目標アイドルパワーが増加する。すなわち、要求エンジンパワーが増加する。このため、エンジンの安定的始動のためのエンジンパワー増加を要求エンジンパワーに含めることができる。これにより、エンジン始動時において、要求エンジンパワーを用いてエンジン制御を行うことができる。つまり、エンジン始動時において、要求エンジンパワーの代わりに別の制御パラメータを用いてエンジン制御を行う必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0036】
また、請求項8または請求項9に記載のエンジン制御装置において、請求項10に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、エンジンのパワーを利用して動作する機器であるエンジンパワー動作機器の作動状況に応じて、要求エンジンパワーを変化させるようにするとよい。
【0037】
このように構成された請求項9に記載のエンジン制御装置では、エンジンパワー動作機器の作動状況に応じて要求エンジンパワーを増減させることができる。すなわち、エンジンパワー動作機器の作動状況に応じて要求エンジンパワーが増減する。このため、エンジンパワー動作機器のためのエンジンパワー増加を要求エンジンパワーに含めることができる。これにより、エンジンパワー動作機器の動作時において、要求エンジンパワーの代わりに別の制御パラメータを用いてエンジン制御を行う必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0038】
また、請求項8〜請求項10の何れか1項に記載のエンジン制御装置において、請求項11に記載のように、要求エンジンパワー算出手段は、減速燃料カットを実行する場合に、目標アイドル回転数を0に設定するようにするとよい。
【0039】
このように構成された請求項11に記載のエンジン制御装置では、減速燃料カットを実行する場合、例えば、アクセル操作量が0であり且つエンジン回転数が高い場合には、アクセル操作要求パワーは非常に小さい値であるので、目標アイドル回転数を0にすると、要求エンジンパワーも非常に小さい値になる。このため、要求エンジンパワーを用いたエンジン制御によって燃料カットを行うことができる。したがって、燃料カット制御のための制御を別途実行する必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0040】
また、請求項1〜請求項11の何れか1項に記載のエンジン制御装置において、請求項12に記載のように、燃料カット判定手段が、要求エンジンパワーに対してエンジンの吸気管時定数に基づいた時間遅れを与えることで算出される実エンジンパワーが、エンジンが実現可能な最小のエンジンパワー(以下、最小エンジンパワーという)以下である場合に、燃料カットを実行すると決定するようにするとよい。
【0041】
なお、上記の実エンジンパワーは、要求エンジンパワーで要求されるエンジンパワーが、吸気管時定数に基づいた遅延時間の後にエンジンで発生するという考えで算出されている。
【0042】
このように構成された請求項12に記載のエンジン制御装置では、実エンジンパワーが上記最小エンジンパワー以下の場合には、燃料噴射を行う必要がないという考えに基づいて燃料カットの有無を判定しており、要求エンジンパワーを用いて算出された実エンジンパワーに基づいて簡便に燃料カット判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】エンジンECU1及びエンジン2を示す概略構成図である。
【図2】エンジンECU1が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
【図3】目標アイドル回転数算出部31が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
【図4】目標アイドル回転数算出処理を示すフローチャートである。
【図5】要求エンジンパワー算出部32が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
【図6】第1実施形態の要求エンジンパワー算出処理を示すフローチャートである。
【図7】駆動要求パワーの算出方法を説明する図である。
【図8】高回転制限パワーの算出方法を説明する図である。
【図9】制御要求値算出部33が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
【図10】制御要求値算出処理を示すフローチャートである。
【図11】第2実施形態の要求エンジンパワー算出処理を示すフローチャートである。
【図12】高車速制限パワーの算出方法を説明する図である。
【図13】第3実施形態の要求エンジンパワー算出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
(第1実施形態)
以下に本発明の第1実施形態を図面とともに説明する。
【0045】
図1は、本発明が適用されたエンジン制御装置(以下、エンジンECUという)1及びエンジン2を示す概略構成図である。
エンジンECU1は、図1に示すように、車両に搭載された内燃機関としてのガソリンエンジン2を制御するための処理を実行するマイコン(マイクロコンピュータ)3と、マイコン3からの制御信号に従って各種アクチュエータを作動させる駆動回路4と、各種信号をマイコン3に入力させる入力回路5とを備えている。
【0046】
具体的には、マイコン3には、エンジン2の吸気管11に設けられた吸入空気量センサとしてのエアフロメータ12からの信号、吸気管11に設けられたスロットル弁13の開度を検出するスロットル開度センサ14からの信号、吸気管11内の圧力を検出する吸気管圧力センサ15からの信号、エンジン2の冷却水温を検出する水温センサ16からの信号、エンジン2の排気管17に設けられた空燃比センサ18からの信号、エンジン2のクランク軸19の回転に応じてクランク角センサ20から出力されるクランク軸回転信号(以下、クランク信号という)、及び車両のイグニッションスイッチやスタータスイッチ(図示省略)といった各種スイッチのオン/オフ状態を表すスイッチ信号などが、入力回路5を介して入力される。入力回路5は一般的なものであり、センサ信号等の信号を、アナログ・ディジタル変換を行う、ノイズ除去を行う、波形整形を行うなど所定の信号処理を施しマイコン3にて入力信号を処理可能な信号へと変換するといったことを行う。
【0047】
そして、マイコン3は、入力回路5を介して入力される上記各信号に基づいてエンジン2の状態を検出するとともに、その検出結果に基づいて駆動回路4に制御信号を出力することにより、スロットル弁13の開度を変えるスロットルモータ21、各気筒内の燃料に着火するための点火プラブ22、及び各気筒に燃料を噴射するインジェクタ23といった各種アクチュエータを制御してエンジン2を作動させる。
【0048】
図2は、エンジンECU1が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
エンジンECU1は、図2に示すように、目標アイドル回転数算出部31、要求エンジンパワー算出部32、制御要求値算出部33、インジェクタ制御部34、スロットル制御部35、及び点火プラグ制御部36を備える。
【0049】
また、エンジンECU1には、上述の水温センサ16と、上述のクランク角センサ20と、アクセルペダル開度を検出するアクセルペダルセンサ26と、車両に搭載されたエアコン27とが接続されており、エンジン水温を示す情報、エンジン回転数を示すエンジン回転数情報、エアコン27のオン/オフ状態を示すエアコンオン・オフ情報、アクセルペダル開度を示すアクセルペダル開度情報がエンジンECU1に入力される。
【0050】
目標アイドル回転数算出部31は、エンジン水温情報、エンジン回転数情報、エアコンオン・オフ情報、及びアクセルペダル開度情報に基づいて、エンジン始動時およびアイドリング状態におけるエンジン回転数の目標値(以下、目標アイドル回転数という)を算出する。
【0051】
要求エンジンパワー算出部32は、目標アイドル回転数算出部31が算出した目標アイドル回転数と、エンジン水温情報、エンジン回転数情報、エアコンオン・オフ情報、及びアクセルペダル開度情報とに基づいて、エンジン2の駆動で発生するパワー(エンジンパワー)の要求値(以下、要求エンジンパワーという)を算出する。なお、エンジンパワーとエンジントルクとの間には、(エンジンパワー=エンジントルク×エンジン回転数×単位変換係数)という式で表される関係がある。
【0052】
制御要求値算出部33は、要求エンジンパワー算出部32が算出した要求エンジンパワーと、エンジン水温情報、エンジン回転数情報、及びエアコンオン・オフ情報とに基づいて、要求空燃比、要求吸気量、要求点火遅角を算出するとともに、燃料カット要求の有無を判断する。
【0053】
インジェクタ制御部34は、要求エンジンパワー算出部32が算出した要求空燃比と、要求エンジンパワー算出部32が判断した燃料カット要求の有無とに基づいて、インジェクタ23を駆動し、要求空燃比に応じた量の燃料を噴射させる。
【0054】
スロットル制御部35は、要求エンジンパワー算出部32が算出した要求吸気量に基づいて、スロットルモータ21を駆動し、スロットル弁13の開度を変化させる。
点火プラグ制御部36は、要求エンジンパワー算出部32が算出した要求点火遅角に基づいたタイミングで、点火プラブ22に点火させる。
【0055】
図3は、目標アイドル回転数算出部31が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
目標アイドル回転数算出部31は、図3に示すように、基本目標アイドル回転数算出部41、始動用目標アイドル回転数加算部42、燃料カット要求判定部43、及び目標アイドル回転数設定部44を備える。
【0056】
基本目標アイドル回転数算出部41は、エンジン水温情報、及びエアコンオン・オフ情報に基づいて、基本目標アイドル回転数を算出する。
始動用目標アイドル回転数加算部42は、エンジン回転数情報に基づいて、始動状態であるか否かを判断し、始動状態である場合には、基本目標アイドル回転数に始動用目標アイドル回転数を加算し、この加算値を目標アイドル回転数とする。
【0057】
燃料カット要求判定部43は、エンジン回転数情報、及びアクセルペダル開度情報に基づいて、減速燃料カットを要求するか否かを判定する。
目標アイドル回転数設定部44は、燃料カット要求判定部43による判定結果に基づいて、最終的に目標アイドル回転数を設定する。
【0058】
次に、目標アイドル回転数算出部31に相当するマイコン3の処理(以下、目標アイドル回転数算出処理という)を、図4を用いて説明する。図4は目標アイドル回転数算出処理を示すフローチャートである。尚、この目標アイドル回転数算出処理は、マイコン3が起動(電源オン)している間に一定時間毎に繰り返し実行される処理である。
【0059】
この目標アイドル回転数算出処理が実行されると、マイコン3は、まずS10にて、エンジン水温情報、及びエアコンオン・オフ情報に基づいて、基本目標アイドル回転数を算出する。本実施形態では、エンジン水温およびエアコンオン・オフをパラメータとして基本目標アイドル回転数の値が予め設定された基本目標アイドル回転数マップを参照して、基本目標アイドル回転数を決定する。そしてS20にて、S10で算出された基本目標アイドル回転数を目標アイドル回転数に設定する。なお、S10とS20の処理が基本目標アイドル回転数算出部41に相当する。
【0060】
その後S30にて、エンジン回転数情報に基づいて、車両が始動状態であるか否かを判断する。本実施形態では、エンジン回転数が予め設定された始動状態判定値未満である場合に、始動状態であると判断する。
【0061】
ここで、車両が始動状態である場合には(S30:YES)、S40にて、S10で算出された基本目標アイドル回転数に、値が予め設定された始動用目標アイドル回転数を加算し、この加算値を目標アイドル回転数に設定して、S50に移行する。一方、車両が始動状態でない場合には(S30:NO)、S50に移行する。なお、S30とS40の処理が始動用目標アイドル回転数加算部42に相当する。
【0062】
そしてS50に移行すると、エンジン回転数情報、及びアクセルペダル開度情報に基づいて、減速燃料カットを要求するか否かを判定する。本実施形態では、アクセルペダルが全閉であり、且つ、エンジン回転数が、上記基本目標アイドル回転数よりも十分大きくなるように予め設定された燃料カット判定値以上である場合に、減速燃料カットを要求すると判定する。なお、S50の処理が燃料カット要求判定部43に相当する。
【0063】
ここで、減速燃料カットを要求すると判定した場合には(S50:YES)、S60にて、目標アイドル回転数を0に設定して、目標アイドル回転数算出処理を一旦終了する。一方、減速燃料カットを要求しないと判定した場合には(S50:NO)、目標アイドル回転数算出処理を一旦終了する。なお、S20とS40とS60の処理が目標アイドル回転数設定部44に相当する。
【0064】
図5は、要求エンジンパワー算出部32が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
要求エンジンパワー算出部32は、図5に示すように、目標アイドルパワー算出部51、駆動要求パワー算出部52、外部機器要求パワー算出部53、アイドルフィードバックパワー算出部54、高回転制限パワー算出部55、及び要求パワー設定部56を備える。
【0065】
目標アイドルパワー算出部51は、目標アイドル回転数算出部31が算出した目標アイドル回転数に基づいて、目標アイドルパワーを算出する。目標アイドルパワーは、エンジン回転数が目標アイドル回転数に収束するためのエンジンパワーであり、目標アイドル回転数におけるエンジンロスパワー(=エンジンロストルク×目標アイドル回転数×単位変換係数)と等価である。なお、目標アイドル回転数が0の場合には、目標アイドルパワーも0になる。ここで、エンジンロストルクとは、エンジンに外部負荷がない状態において、エンジン回転数を一定回転数に維持するために必要とされるトルクである。
【0066】
駆動要求パワー算出部52は、アクセルペダル開度情報に基づいて、駆動要求パワーを算出する。外部機器要求パワー算出部53は、エアコンオン・オフ情報に基づいて、外部機器要求パワーを算出する。アイドルフィードバックパワー算出部54は、目標アイドル回転数算出部31が算出した目標アイドル回転数と、エンジン回転数情報とに基づいて、アイドルフィードバックパワーを算出する。
【0067】
高回転制限パワー算出部55は、エンジン回転数情報に基づいて、要求エンジンパワーの上限値(以下、高回転制限パワーという)を算出する。
要求パワー設定部56は、目標アイドルパワー、駆動要求パワー、外部機器要求パワー、アイドルフィードバックパワー、及び高回転制限パワーに基づいて、最終的に要求エンジンパワーを設定する。
【0068】
次に、要求エンジンパワー算出部32に相当するマイコン3の処理(以下、要求エンジンパワー算出処理という)を、図6を用いて説明する。図6は要求エンジンパワー算出処理を示すフローチャートである。尚、この要求エンジンパワー算出処理は、マイコン3が起動(電源オン)している間に一定時間毎に繰り返し実行される処理である。
【0069】
この要求エンジンパワー算出処理が実行されると、マイコン3は、まずS110にて、目標アイドル回転数に基づいて目標アイドルパワーを算出する。本実施形態では、目標アイドル回転数をパラメータとしてエンジンロストルクの値が予め設定されたエンジンロストルクマップを参照してエンジンロストルクを決定し、(エンジンロストルク×目標アイドル回転数×単位変換係数)で算出される値を目標アイドルパワーとする。なお、S110の処理が目標アイドルパワー算出部51に相当する。
【0070】
またS120にて、アクセルペダル開度情報に基づいて、駆動要求パワーを算出する。本実施形態では、アクセルペダル開度をパラメータとして駆動要求パワーの値が予め設定された駆動要求パワーマップを参照して、駆動要求パワーを決定する。なお、駆動要求パワーは、例えば図7に示すように、アクセルペダル開度の増加に伴い増加する。そして、S120の処理が駆動要求パワー算出部52に相当する。
【0071】
またS130にて、エアコンオン・オフ情報に基づいて、外部機器要求パワーを算出する。本実施形態では、エアコン27のオン・オフをパラメータとして外部機器要求パワーの値が予め設定された外部機器要求パワーマップを参照して、外部機器要求パワーを決定する。なお、S130の処理が外部機器要求パワー算出部53に相当する。
【0072】
その後S140にて、アイドルフィードバックを要求するか否かを判定する。本実施形態では、アクセルペダルが全閉であり、且つ、低車速であり、且つ、燃料カットを要求していない場合に、アイドルフィードバックを要求すると判定する。
【0073】
ここで、アイドルフィードバックを要求すると判定した場合には(S140:YES)、S150にて、アイドルフィードバックパワーを算出して、S170に移行する。本実施形態では、目標アイドル回転数とエンジン回転数との差分が小さくなるように一般的なフィードバック制御器(例えば、PID制御器)を用いて算出される。ここで、目標アイドル回転数とエンジン回転数、または目標アイドル回転数とエンジン回転数との差分をエンジンパワーの単位に変換してからフィードバック制御を行うと、制御の入出力の単位が一致するため、フィードバックゲインが無次元となりゲインの適合が容易になる。
【0074】
一方、アイドルフィードバックを要求しないと判定した場合には(S140:NO)、S160にて、アイドルフィードバックパワーを0に設定して、S170に移行する。なお、S140,S150,S160の処理がアイドルフィードバックパワー算出部54に相当する。
【0075】
そしてS170に移行すると、目標アイドルパワーと駆動要求パワーと外部機器要求パワーとアイドルフィードバックパワーとの加算値を要求エンジンパワーに設定する。
次にS180にて、エンジン回転数情報に基づいて、高回転制限パワーを算出する。本実施形態では、エンジン回転数をパラメータとして高回転制限パワーの値が予め設定された高回転制限パワーマップを参照して、高回転制限パワーを決定する。そして、高回転制限パワーは、例えば図8に示すように、エンジン回転数が低い場合には十分に大きい値(例えば、最大エンジンパワー)であり、エンジン回転数が制限エンジン回転数に近づくにつれて、エンジン回転数が制限エンジン回転数を超えないように設定された値(以下、エンジン回転数制限パワーという。本実施形態では制限エンジン回転数におけるエンジンロスパワー(=制限エンジン回転数のエンジンロストルク×制限エンジン回転数×単位変換係数)。)に近づくように設定されている。さらに、高回転制限パワーは、エンジン回転数が制限エンジン回転数より高い場合には、エンジン回転数と制限エンジン回転数との差が大きくなるほど小さくなるように設定されている。なお、S180の処理が高回転制限パワー算出部55に相当する。
【0076】
その後S190にて、要求エンジンパワーが、S180で算出された高回転制限パワーより大きいか否かを判断する。ここで、要求エンジンパワーが高回転制限パワーより大きい場合には(S190:YES)、S200にて、要求エンジンパワーを、S180で算出された高回転制限パワーに設定して、要求エンジンパワー算出処理を一旦終了する。一方、要求エンジンパワーが高回転制限パワー以下である場合には(S190:NO)、要求エンジンパワー算出処理を一旦終了する。なお、S170,S190,S200の処理が要求パワー設定部56に相当する。
【0077】
図9は、制御要求値算出部33が実行する処理の概要を示す機能ブロック図である。
制御要求値算出部33は、図9に示すように、要求エンジントルク算出部61、実エンジントルク算出部62、燃料カット要求判定部63、及び各制御要求値算出部64を備える。
【0078】
要求エンジントルク算出部61は、要求エンジンパワー算出部32が算出した要求エンジンパワーと、エンジン回転数情報とに基づいて、要求エンジントルクを算出する。
実エンジントルク算出部62は、要求エンジントルク算出部61が算出した要求エンジントルクに時間遅れを与えることにより、実エンジントルクを算出する。
【0079】
燃料カット要求判定部63は、実エンジントルク算出部62が算出した実エンジントルクに基づいて、燃料カットを要求するか否かを判定する。
各制御要求値算出部64は、要求エンジントルク算出部61が算出した要求エンジントルクと、燃料カット要求判定部63による判定結果とに基づいて、インジェクタ制御部34、スロットル制御部35、及び点火プラグ制御部36それぞれに対する制御要求値を算出する。
【0080】
次に、制御要求値算出部33に相当するマイコン3の処理(以下、制御要求値算出処理という)を、図10を用いて説明する。図10は制御要求値算出処理を示すフローチャートである。尚、この制御要求値算出処理は、マイコン3が起動(電源オン)している間に一定時間毎に繰り返し実行される処理である。
【0081】
この制御要求値算出処理が実行されると、マイコン3は、まずS310にて、(要求エンジンパワー÷エンジン回転数÷単位変換係数)で算出される値を要求エンジントルクとする。なお、S310の処理が要求エンジントルク算出部61に相当する。
【0082】
次にS320にて、S310で算出された要求エンジントルクに対してエンジンの吸気管時定数に基づいた時間遅れを与えることで実エンジントルクを算出する。なお、S320の処理が実エンジントルク算出部62に相当する。
【0083】
その後S330にて、実エンジントルクが、エンジン2が実現し得る最小エンジントルクより小さいか否かを判断する。なお、この最小エンジントルクの値は、既知のエンジン特性に基づいて予め設定されている。
【0084】
ここで、実エンジントルクが最小エンジントルクより小さい場合には(S330:YES)、S340にて、燃料カットを要求すると決定し、S360に移行する。一方、実エンジントルクが最小エンジントルク以上である場合には(S330:NO)、S350にて、燃料噴射を要求すると決定し、S360に移行する。なお、S330,S340,S350の処理が燃料カット要求判定部63に相当する。
【0085】
そしてS360に移行すると、S310で算出された要求エンジントルクに基づいて、要求吸気量、要求点火遅角、及び要求空燃比を算出する。
その後S370にて、燃料カットの要求があるか否かを判断する。すなわち、S340で燃料カットを要求すると決定したか否かを判断する。ここで、燃料カットの要求があると判断した場合には(S370:YES)、S380にて、要求空燃比を、非常にリーンな値(例えば100)に設定して、制御要求値算出処理を一旦終了する。一方、燃料カットの要求がないと判断した場合には(S370:NO)、制御要求値算出処理を一旦終了する。なお、S360,S370,S380の処理が各制御要求値算出部64に相当する。
【0086】
このように構成されたエンジンECU1では、要求エンジンパワー算出部32が、アクセルペダル開度に基づいて、要求エンジンパワーを算出し、制御要求値算出部33が、要求エンジンパワーをエンジン2が出力するように、エンジン2の制御量(要求空燃比、要求吸気量、要求点火遅角)を算出する。
【0087】
これにより、目標とするエンジン回転数(以下、目標エンジン回転数という)となるようにエンジン2を制御する場合に、目標エンジン回転数に対応するエンジンパワーを設定することにより、エンジン2の制御量を算出することができる。
【0088】
なお、エンジンパワーは、エンジン回転数の収束値に作用する。すなわち、エンジン2に外部負荷がない状態において、エンジンパワーが或る一定の値(以下、所定エンジンパワー値という)を維持している場合に、エンジン回転数は、この所定エンジンパワー値に対応した或るエンジン回転数に収束する。
【0089】
したがって、エンジンECU1によれば、エンジン回転数が目標エンジン回転数となるように制御する場合に、要求エンジンパワーを設定しさえすれば、エンジン回転数が目標エンジン回転数に到達するまで、要求エンジンパワーの値を変化させる必要がない。このため、フィードバックゲインなどの適合パラメータを調整する必要がなくなり、エンジン回転数によるエンジン制御を簡略化することができる。
【0090】
さらに、アクセルペダル開度に基づいて算出された要求エンジンパワーを用いてエンジン制御を行っているので、運転者がアクセル操作をしていない状態(例えば、アイドリング状態)以外の状態(すなわち、運転者がアクセル操作をしている状態)において、エンジンパワーに基づいたエンジン制御を行うことができる。
【0091】
なお、エンジンの多くは、エンジン回転数が最大トルク回転数以下であるときにはエンジン回転数が上昇するにつれてエンジントルクが増加して最大トルク回転数でエンジントルクが最大トルクに達し、さらに、エンジン回転数が最大トルク回転数を超えると、エンジン回転数が上昇するにつれてエンジントルクが減少するという特性を有する。
【0092】
一方、エンジンパワーとエンジントルクとの間には、(エンジンパワー=エンジントルク×エンジン回転数×単位変換係数)という式で表される関係がある。このため、高エンジン回転数領域においてエンジントルクが減少しても、そのトルク減少によるエンジンパワー減少分を、高いエンジン回転数で補うことができ、これにより、エンジンパワーは、エンジン回転数の上昇するにつれて右肩上がりに増加する特性を有し易い。そして、エンジンパワーの上記特性により、アクセルペダル開度が増加するにつれて要求エンジンパワーが増加するように設定することができる(図7を参照)。
【0093】
また、高回転制限パワー算出部55は、エンジン回転数が制限エンジン回転数である場合に、要求エンジンパワーの上限値を、エンジン回転数制限パワー(制限エンジン回転数におけるエンジンロスパワー)に設定する。これにより、エンジン回転数が制限エンジン回転数より高くならないように制御することができる。そして、要求エンジンパワーをエンジン回転数制限パワー以下にするという簡便な方法により、エンジン回転数を制限エンジン回転数以下に制限することができる。
【0094】
また、高回転制限パワーは、エンジン回転数が低い場合には十分に大きい値(例えば、最大エンジンパワー)であり、エンジン回転数が制限エンジン回転数に近づくにつれて、エンジン回転数制限パワー(制限エンジン回転数におけるエンジンロスパワー)に近づくように設定されている。これにより、エンジン回転数が制限エンジン回転数よりも低い場合において、車両の加速力を得るために一時的に大きなエンジンパワーを要求することができる。
【0095】
また、高回転制限パワーは、エンジン回転数が制限エンジン回転数より高い場合には、エンジン回転数と制限エンジン回転数との差が大きくなるほど小さくなるように設定されている。これにより、エンジン回転数が制限エンジン回転数より大きい場合に、要求エンジンパワーは、エンジン回転数制限パワーより小さくなるために、エンジン2は、現在のエンジン回転数より低いエンジン回転数で収束しようとする。このため、エンジン回転数が制限エンジン回転数より大きくなっても、エンジン回転数を迅速に制限エンジン回転数まで下げることができる。
【0096】
また、要求エンジンパワーは、少なくとも、アクセルペダル開度に基づいて算出された駆動要求パワーと、目標アイドル回転数を維持するための目標アイドルパワーとを加算することにより算出される。
【0097】
これにより、運転者によるアクセル操作が行われておらず車両がアイドリング状態である場合において、要求エンジンパワーを目標アイドルパワーに設定することにより、エンジン制御を行うことができる。つまり、運転者がアクセル操作をしている状態(例えば、走行状態)だけではなく、運転者がアクセル操作をしていないアイドリング状態においても、エンジンパワーに基づいたエンジン制御を行うことができる。さらに、運転者がアクセル操作をしている状態と、運転者がアクセル操作をしていないアイドリング状態との両方において、要求エンジンパワーを用いてエンジン制御を行うことができる。つまり、上記2つの状態に応じて、制御パラメータを変更すること必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0098】
また、始動用目標アイドル回転数加算部42は、始動状態である場合に、基本目標アイドル回転数に始動用目標アイドル回転数を加算し、この加算値を目標アイドル回転数とする。これにより、エンジン始動時において始動用目標アイドル回転数分、目標アイドルパワーが増加する。すなわち、要求エンジンパワーが増加する。このため、エンジンの安定的始動のためのエンジンパワー増加を要求エンジンパワーに含めることができる。これにより、エンジン始動時において、要求エンジンパワーを用いてエンジン制御を行うことができる。つまり、エンジン始動時において、要求エンジンパワーの代わりに別の制御パラメータを用いてエンジン制御を行う必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0099】
また、要求エンジンパワー算出部32は、エアコン27のオン・オフに応じて、要求エンジンパワーを変化させる。このため、エアコン27のためのエンジンパワー増加を要求エンジンパワーに含めることができる。これにより、エアコン27の動作時において、要求エンジンパワーの代わりに別の制御パラメータを用いてエンジン制御を行う必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0100】
また、目標アイドル回転数算出部31は、減速燃料カットを要求する場合に、目標アイドル回転数を0に設定する。減速燃料カットを実行する場合、例えば、アクセルペダル開度が0であり且つエンジン回転数が高い場合には、駆動要求パワーは0であるので、要求エンジンパワーも非常に小さい値になる。このため、要求エンジンパワーを用いたエンジン制御によって燃料カットを行うことができる。したがって、燃料カット制御のための制御を別途実行する必要がないため、エンジン制御を簡略化することができる。
【0101】
また、燃料カット要求判定部63は、要求エンジントルクに対してエンジンの吸気管時定数に基づいた時間遅れを与えることで算出される実エンジントルクが最小エンジントルクより小さい場合に、燃料カットを要求すると決定する。これにより、要求エンジントルクを用いて算出された実エンジントルクに基づいて簡便に燃料カット判定を行うことができる。
【0102】
以上説明した実施形態において、要求エンジンパワー算出部32は本発明における要求エンジンパワー算出手段、制御要求値算出部33は本発明における制御量算出手段、アクセルペダル開度は本発明におけるアクセル操作量、駆動要求パワーは本発明におけるアクセル操作要求パワー、始動用目標アイドル回転数は本発明における始動用アイドル回転数、エアコン27は本発明におけるエンジンパワー動作機器である。
【0103】
(第2実施形態)
以下に本発明の第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0104】
第2実施形態のエンジンECU1は、要求エンジンパワー算出処理のS190,S200の処理が省略され、S210〜S260の処理が追加された点以外は第1実施形態と同じである。図11は、第2実施形態の要求エンジンパワー算出処理を示すフローチャートである。
【0105】
図11に示すように、S180の処理が終了すると、S210にて、エンジン回転数情報に基づいて、高車速制限パワーを算出する。本実施形態では、車速をパラメータとして高車速制限パワーの値が予め設定された高車速制限パワーマップを参照して、高車速制限パワーを決定する。なお、高車速制限パワーは、例えば図12に示すように、車速が低い場合には十分に大きい値(例えば、最大エンジンパワー)、車速が制限車速に近づくにつれて、車速が制限車速を超えないように設定された値(以下、車速制限パワーという。本実施形態では0)に近づき、車速が制限車速になると車速制限パワーになるように設定されている。
【0106】
次にS220にて、高車速制限パワーが高回転制限パワーより小さいか否かを判断する。ここで、高車速制限パワーが高回転制限パワーより小さい場合には(S220:YES)、S230にて、制限パワーを高車速制限パワーに設定し、S250に移行する。一方、高車速制限パワーが高回転制限パワー以上である場合には(S220:NO)、S240にて、制限パワーを高回転制限パワーに設定し、S250に移行する。
【0107】
そしてS250に移行すると、要求エンジンパワーが、制限パワーより大きいか否かを判断する。ここで、要求エンジンパワーが制限パワーより大きい場合には(S250:YES)、S260にて、要求エンジンパワーを制限パワーに設定して、要求エンジンパワー算出処理を一旦終了する。一方、要求エンジンパワーが制限パワー以下である場合には(S250:NO)、要求エンジンパワー算出処理を一旦終了する。
【0108】
このように構成されたエンジンECU1では、高回転制限パワー算出部55は、車速が制限車速である場合に、要求エンジンパワーの上限値を、車速が制限車速を超えないように予め設定された車速制限パワーに設定する。これにより、車速が制限車速より高くならないように制御することができる。そして、要求エンジンパワーを車速制限パワー以下にするという簡便な方法により、車速を制限車速以下に制限することができる。
【0109】
また、高車速制限パワーは、車速が低い場合には十分に大きい値(例えば、最大エンジンパワー)であり、車速が制限車速に近づくにつれて、車速制限パワーに近づくように設定されている。これにより、車速が制限車速よりも低い場合において、車両の加速力を得るために一時的に大きなエンジンパワーを要求することができる。
【0110】
(第3実施形態)
以下に本発明の第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0111】
第3実施形態のエンジンECU1は、要求エンジンパワー算出処理においてS410〜S440の処理が追加された点以外は第1実施形態と同じである。図13は、第3実施形態の要求エンジンパワー算出処理を示すフローチャートである。
【0112】
図13に示すように、S170の処理が終了すると、S410にて、高車速制限のための制限回転数を算出する。なお、本実施形態では、「高車速制限のための制限エンジン回転数」は(制限車速×変速比÷単位変換係数)で算出される。
【0113】
その後、「高車速制限のための制限エンジン回転数」が「高回転制限のための制限エンジン回転数」より小さいか否かを判断する。なお、「高回転制限のための制限エンジン回転数」は、S180における高回転制限パワー算出で用いられる制限エンジン回転数である。
【0114】
ここで、「高車速制限のための制限エンジン回転数」が「高回転制限のための制限エンジン回転数」より小さい場合には(S420:YES)、S430にて、制限エンジン回転数を「高車速制限のための制限エンジン回転数」に設定して、S180に移行する。一方、「高車速制限のための制限エンジン回転数」が「高回転制限のための制限エンジン回転数」以上である場合には(S420:NO)、S440にて、制限エンジン回転数を「高回転制限のための制限エンジン回転数」に設定して、S180に移行する。
【0115】
このように構成されたエンジンECU1では、要求エンジンパワー算出部32は、少なくとも制限車速と車両の変速比とに基づいて算出された、制限車速に対応するエンジン回転数(高車速制限のための制限エンジン回転数)を越えないように予め設定されたエンジンパワーを、車速制限パワーとする。
【0116】
この車速制限パワーは、制限車速に対応するエンジン回転数に基づいてより正確に設定することができるため、ただ単に制限車速に基づいて車速制限パワーを設定する場合よりも、実際に上昇させることができる車速と制限車速との差を小さくすることができる。
【0117】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態では、エンジン始動時において始動用目標アイドル回転数分、要求エンジンパワーを増加させるものを示したが、要求エンジンパワーを増加させなくとも安定的な始動が可能である場合には、エンジン始動時において要求エンジンパワーを増加させる処理は不要である。
【0118】
また上記実施形態では、減速燃料カットを要求するか否かを判定し(S50)、減速燃料カットを要求すると判定した場合には目標アイドル回転数を0に設定する(S60)ものを示した。しかし、S330〜S350にて、燃料カットを要求するか否かを決定する処理を行っているため、S50〜S60の処理は必ずしも実行する必要はない。S50〜S60の処理は、ドライバビリティやエミッション観点では燃料カットの必要がなくとも、燃費向上のため積極的に燃料カットを要求したい場合を考慮した処理である。
【0119】
また上記実施形態では、エアコンオン・オフ情報に基づいて、外部機器要求パワーを算出するものを示したが、エンジンのパワーを利用して動作する機器であればよく、例えば、オルタネータやトランスミッションなどの作動状況に基づいて、外部機器要求パワーを算出するようにしてもよい。
【0120】
また上記実施形態では、要求エンジントルクに対してエンジンの吸気管時定数に基づいた時間遅れを与えることで実エンジントルクを算出する(S320)ものを示したが、エンジンへの実吸気量を用いて推定したエンジントルクを実エンジントルクとして算出するようにしてもよい。
【0121】
また上記実施形態では、実エンジントルクと最小エンジントルクとを比較して燃料カットを要求するか否かを決定するもの(S330)を示したが、要求エンジントルクと最小エンジントルクとを比較するようにしてもよい。
【0122】
また上記実施形態では、要求エンジントルクを用いて燃料カットを要求するか否かを決定するもの(S330)を示したが、要求エンジンパワーを用いて燃料カットを要求するか否かを決定するようにしてもよい。この場合には、例えば、要求エンジンパワーに対してエンジンの吸気管時定数に基づいた時間遅れを与えることで実エンジンパワーを算出し、実エンジンパワーが、エンジン2が実現し得る最小エンジンパワーより小さいか否かにより、燃料カットの要求の有無を決定するようにするとよい。これにより、要求エンジンパワーを用いて算出された実エンジンパワーに基づいて簡便に燃料カット判定を行うことができる。なお、この処理は、本発明における燃料カット判定手段である。また、要求エンジンパワーと最小エンジンパワーとを比較して、燃料カットの要求の有無を決定するようにしてもよい。
【0123】
また上記実施形態では、要求エンジンパワーを算出することでエンジン回転数制御を行うことで、エンジン回転数フィードバック制御が不要となるものを示した。しかし、フィードバック制御を用いることで、より厳密なエンジン回転数制御が可能となるため、必要に応じて補助的にフィードバック制御を用いてもよい。
【0124】
なお、上述の各種パワーは、トルク×エンジン回転数×単位変換係数であったが、この単位変換係数を0.001396とすることで馬力表記としても良い。
【符号の説明】
【0125】
1…エンジンECU、2…エンジン、3…マイコン、4…駆動回路、5…入力回路、11…吸気管、12…エアフロメータ、13…スロットル弁、14…スロットル開度センサ、15…吸気管圧力センサ、16…水温センサ、17…排気管、18…空燃比センサ、19…クランク軸、20…クランク角センサ、21…スロットルモータ、22…点火プラブ、23…インジェクタ、26…アクセルペダルセンサ、27…エアコン、31…目標アイドル回転数算出部、32…要求エンジンパワー算出部、33…制御要求値算出部、34…インジェクタ制御部、35…スロットル制御部、36…点火プラグ制御部、41…基本目標アイドル回転数算出部、42…始動用目標アイドル回転数加算部、43…燃料カット要求判定部、44…目標アイドル回転数設定部、51…目標アイドルパワー算出部、52…駆動要求パワー算出部、53…外部機器要求パワー算出部、54…アイドルフィードバックパワー算出部、55…高回転制限パワー算出部、56…要求パワー設定部、61…要求エンジントルク算出部、62…実エンジントルク算出部、63…燃料カット要求判定部、64…各制御要求値算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンを制御するエンジン制御装置であって、
少なくとも、前記車両に搭載されたアクセルペダルの操作量であるアクセル操作量に基づいて、前記エンジンに対して要求するエンジンパワーである要求エンジンパワーを算出する要求エンジンパワー算出手段と、
前記要求エンジンパワー算出手段により算出された前記要求エンジンパワーを前記エンジンが出力するように、前記エンジンの制御量を算出する制御量算出手段と
を備えることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記エンジンの回転数であるエンジン回転数が、前記エンジン回転数の上限値として予め設定された制限エンジン回転数である場合に、前記要求エンジンパワーの上限値を、前記エンジン回転数が前記制限エンジン回転数を超えないように予め設定されたエンジンパワーであるエンジン回転数制限パワーに設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記エンジン回転数が前記制限エンジン回転数未満である場合には、前記要求エンジンパワーの上限値を、前記エンジン回転数制限パワーより大きい値に設定する
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記エンジン回転数が前記制限エンジン回転数より大きい場合には、前記要求エンジンパワーの上限値を、前記エンジン回転数制限パワーより小さい値に設定する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記車両の走行速度である車速が、前記車速の上限値として予め設定された制限車速である場合に、前記要求エンジンパワーの上限値を、前記車速が前記制限車速を超えないように予め設定されたエンジンパワーである車速制限パワーに設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記車速が前記制限車速未満である場合には、前記要求エンジンパワーの上限値を、前記車速制限パワーより大きい値に設定する
ことを特徴とする請求項5に記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
少なくとも前記制限車速と前記車両の変速比とに基づいて算出された、前記制限車速に対応するエンジン回転数である制限車速対応エンジン回転数を越えないように予め設定されたエンジンパワーを、前記車速制限パワーとする
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のエンジン制御装置。
【請求項8】
前記要求エンジンパワーは、
少なくとも、
前記アクセル操作量に基づいて決定されるエンジンパワーであるアクセル操作要求パワーと、
前記車両がアイドル運転状態であるときのエンジン回転数の目標値である目標アイドル回転数を維持するために前記エンジンに対して要求するパワーである目標アイドルパワーと
を加算することにより算出される
ことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
【請求項9】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記エンジンが始動状態である場合に、前記エンジンが始動状態であるときに必要なアイドル回転数として予め設定された始動用アイドル回転数分、前記目標アイドル回転数を増加させる
ことを特徴とする請求項8に記載のエンジン制御装置。
【請求項10】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記エンジンのパワーを利用して動作する機器であるエンジンパワー動作機器の作動状況に応じて、前記要求エンジンパワーを変化させる
ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載のエンジン制御装置。
【請求項11】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
減速燃料カットを実行する場合に、前記目標アイドル回転数を0に設定する
ことを特徴とする請求項8〜請求項10の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
【請求項12】
前記要求エンジンパワーに対して前記エンジンの吸気管時定数に基づいた時間遅れを与えることで算出される実エンジンパワーが、前記エンジンが実現可能な最小のエンジンパワー以下である場合に、燃料カットを実行すると決定する燃料カット判定手段を備える
ことを特徴とする請求項1〜請求項11の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンを制御するエンジン制御装置であって、
少なくとも、前記車両に搭載されたアクセルペダルの操作量であるアクセル操作量に基づいて、前記エンジンに対して要求するエンジンパワーである要求エンジンパワーを算出する要求エンジンパワー算出手段と、
前記要求エンジンパワー算出手段により算出された前記要求エンジンパワーを前記エンジンが出力するように、前記エンジンの制御量を算出する制御量算出手段と
を備えることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記エンジンの回転数であるエンジン回転数が、前記エンジン回転数の上限値として予め設定された制限エンジン回転数である場合に、前記要求エンジンパワーの上限値を、前記エンジン回転数が前記制限エンジン回転数を超えないように予め設定されたエンジンパワーであるエンジン回転数制限パワーに設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記エンジン回転数が前記制限エンジン回転数未満である場合には、前記要求エンジンパワーの上限値を、前記エンジン回転数制限パワーより大きい値に設定する
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記エンジン回転数が前記制限エンジン回転数より大きい場合には、前記要求エンジンパワーの上限値を、前記エンジン回転数制限パワーより小さい値に設定する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記車両の走行速度である車速が、前記車速の上限値として予め設定された制限車速である場合に、前記要求エンジンパワーの上限値を、前記車速が前記制限車速を超えないように予め設定されたエンジンパワーである車速制限パワーに設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記車速が前記制限車速未満である場合には、前記要求エンジンパワーの上限値を、前記車速制限パワーより大きい値に設定する
ことを特徴とする請求項5に記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
少なくとも前記制限車速と前記車両の変速比とに基づいて算出された、前記制限車速に対応するエンジン回転数である制限車速対応エンジン回転数を越えないように予め設定されたエンジンパワーを、前記車速制限パワーとする
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のエンジン制御装置。
【請求項8】
前記要求エンジンパワーは、
少なくとも、
前記アクセル操作量に基づいて決定されるエンジンパワーであるアクセル操作要求パワーと、
前記車両がアイドル運転状態であるときのエンジン回転数の目標値である目標アイドル回転数を維持するために前記エンジンに対して要求するパワーである目標アイドルパワーと
を加算することにより算出される
ことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
【請求項9】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記エンジンが始動状態である場合に、前記エンジンが始動状態であるときに必要なアイドル回転数として予め設定された始動用アイドル回転数分、前記目標アイドル回転数を増加させる
ことを特徴とする請求項8に記載のエンジン制御装置。
【請求項10】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
前記エンジンのパワーを利用して動作する機器であるエンジンパワー動作機器の作動状況に応じて、前記要求エンジンパワーを変化させる
ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載のエンジン制御装置。
【請求項11】
前記要求エンジンパワー算出手段は、
減速燃料カットを実行する場合に、前記目標アイドル回転数を0に設定する
ことを特徴とする請求項8〜請求項10の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
【請求項12】
前記要求エンジンパワーに対して前記エンジンの吸気管時定数に基づいた時間遅れを与えることで算出される実エンジンパワーが、前記エンジンが実現可能な最小のエンジンパワー以下である場合に、燃料カットを実行すると決定する燃料カット判定手段を備える
ことを特徴とする請求項1〜請求項11の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−52468(P2012−52468A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195718(P2010−195718)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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