説明

エンジン

【課題】ボンネットからインジェクタ突出部周りの部材を取り外さないで、一方向のみではなく、上側、左側、右側等の複数の方向からボンネット内部にアクセスしてメンテナンスできるようにすることによって、弁腕室内におけるメンテナンス性の向上を図ることが可能なエンジンを提供する。
【解決手段】シリンダヘッド20の上部をボンネット50で覆って弁腕室22を形成し、前記ボンネット50の上面53からインジェクタ12を突出させて、該インジェクタ12の突出部より燃料を供給するように構成されたエンジン1において、前記ボンネット50は、弁腕24の長手方向両端部と対向する両側面51・52に点検窓51a・52aを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁腕室を形成するボンネット(弁腕カバー)を備えるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダヘッドの上部をボンネットにて覆うことによって弁腕室が形成されているエンジンは公知である。例えば、特許文献1のように、エンジンの弁腕室は、シリンダヘッドの上方に弁腕ケースが配設されることによって構成されている。該弁腕ケースは、上面部分に開口窓が開口されているケース本体と前記開口窓を閉塞する蓋体とで構成されている。そして、前記弁腕ケースの上面部分の開口窓から、弁腕室内における吸排気弁部分のクリアランス調整やメンテナンスを行うことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−221082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、シリンダヘッドの上部をボンネットで覆って弁腕室を形成し、前記ボンネットの上面からインジェクタを突出させて、該インジェクタの突出部より燃料を供給するように構成されたエンジンにおいて、前記ボンネットからインジェクタ突出部周りの部材を取り外さないで、一方向のみではなく、上側、左側、右側等の複数の方向からボンネット内部にアクセスしてメンテナンスできるようにすることによって、弁腕室内におけるメンテナンス性の向上を図ることが可能なエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
請求項1においては、シリンダヘッドの上部をボンネットで覆って弁腕室を形成し、前記ボンネットの上面からインジェクタを突出させて、該インジェクタの突出部より燃料を供給するように構成されたエンジンにおいて、前記ボンネットは、弁腕の長手方向両端部と対向する両側面に点検窓を有するものである。
【0007】
請求項2においては、前記弁腕の一端は、調整ネジ及びロックナットを用いてプッシュロッドと連結されて、前記弁腕の一端側の前記ボンネットの側面は、傾斜面として形成され、当該傾斜面に設けられる点検窓は、前記調整ネジの頭部を上方から目視可能に開口されるものである。
【0008】
請求項3においては、前記弁腕の他端は、バルブの上端に当接可能であり、前記弁腕の他端側の点検窓は、前記弁腕の他端と前記バルブの上端との間のバルブクリアランスを側方から目視及び隙間ゲージにて測定可能に開口されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、インジェクタ突出部周りの部材を取り外さずに、ボンネット内部に両側面側からアクセスしてメンテナンスできるので、弁腕室内におけるメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0011】
請求項2においては、上方から目視できるので、調整ネジ用の工具の操作が容易となる。
【0012】
請求項3においては、バルブクリアランスを調整する際に、目視に加え、側方から隙間ゲージを挿入することによって、バルブクリアランスを容易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】エンジンの全体構成を示す左後斜視図。
【図2】シリンダヘッドの周辺構造を示す左後斜視図。
【図3】シリンダヘッドの周辺構造を示す右後斜視図。
【図4】ボンネット内部の構成を示す断面図。
【図5】動弁機構とボンネットの上面図。
【図6】バルブクリアランス調整方法の説明図。
【図7】ボンネットの左後斜視図。
【図8】ボンネットの右後斜視図。
【図9】ボンネットの前面図。
【図10】ボンネットの後面図。
【図11】ボンネットの上面図。
【図12】ボンネットの下面図。
【図13】ボンネットの左側面図。
【図14】ボンネットの右側面図。
【図15】ボルト、左蓋体、シール及びボンネットの分解斜視図。
【図16】ハーネスの取付態様を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図1を用いて、本発明に係るエンジンの実施の一形態であるエンジン1の全体構成について説明する。なお、フライホイール15が配置される側をエンジン1の後方として図中に示した方向をもとに、説明を行うこととする。
【0015】
エンジン1は、船舶等に搭載される直列六気筒型のディーゼルエンジンである。エンジン1の中央部には、シリンダブロック2が設けられる。シリンダブロック2には、クランク軸が回転可能に軸支されるとともに、クランク軸の軸方向に沿って六つのシリンダが等間隔で配置される。各シリンダには、ピストンが上下方向に摺動可能に内設され、シリンダブロック2の上部にはシリンダヘッド20(図2及び図3参照)が取り付けられて燃焼室が形成される。
【0016】
エンジン1の左側上部には、吸気マニホールド3が設けられ、エンジン1の右側には排気マニホールドが設けられる。また、エンジン1の右側上部には、過給機4が設けられ、エンジン1の後側上部には、過給機4で圧縮した空気を冷却するインタークーラ5が設けられ、これら過給機4とインタークーラ5とが吸気通路配管6で連結される。エンジン1の前側上部には、清水クーラ7が設けられ、清水クーラ7及びインタークーラ5が冷却配管8により連結されてエンジン1全体が冷却される。後述するボンネット50の左方には、冷却配管8が位置して、ボンネット50の右方には、吸気通路配管6が位置している。
【0017】
エンジン1の左側には、圧送ポンプが設けられる。圧送ポンプは、燃料高圧管11を介して、六つのインジェクタ12・12・・・と接続されており、圧送ポンプで圧縮された燃料が各インジェクタ12に供給される。各インジェクタ12は、ハーネス13を介して、コントローラと接続されて、該コントローラからの信号に基づいて、前記燃焼室に燃料が噴射される。各インジェクタ12は、ボンネット50の上方に向けて突出した状態で固定される。
【0018】
次に、図2から図5を用いて、シリンダヘッド20の周辺構造及びボンネット50について説明する。
【0019】
ボンネット50は、シリンダヘッド20の上部を覆うために設けられるものである。すなわち、ボンネット50は、シリンダヘッド20の上部を覆うことによって弁腕室22を形成するカバー体(弁腕カバー)である。図2及び図3に示すように、シリンダヘッド20の上部には、各気筒毎の弁腕室ハウジング21が設けられ、該弁腕室ハウジング21には、それぞれボンネット50が取り付けられている。このようにして、各気筒毎の弁腕室22が形成される。
なお、シリンダヘッド20を各気筒毎に分割して構成し、分割された各シリンダヘッド20の上部に設けられた弁腕室ハウジング21に、それぞれボンネット50を取り付けて各気筒毎の弁腕室22を形成することも可能である。
弁腕室22の上部がボンネット50によって覆われることにより、弁腕室22に塵埃等が侵入することを防止したり、潤滑油が外部に飛散したりすることを防止したり、騒音を低下させたりしている。
【0020】
図4及び図5に示すように、弁腕室22には、プッシュロッド23とバルブ30との間に介設される弁腕24が配置される。
本実施形態では4バルブ式の動弁機構が採用されており、バルブ30は、二つのブリッジ31・31と、四つの吸排気バルブ32・32・32・32と、を備える。つまり、弁腕室22には、吸気側及び排気側の動弁機構を構成する二つのプッシュロッド23・23の上端と、二つの弁腕24・24と、二つのブリッジ31・31と、四つの吸排気バルブ32・32・32・32の上端等が配置される。
【0021】
各弁腕24は、弁腕室22内において長手方向が左右方向となるように配置されて、弁腕軸25に揺動可能に支持される。弁腕24の一端となる左端(左側の端部)は、ロックナット43及び調整ネジ44を用いてプッシュロッド23と連結されている。これらロックナット43及び調整ネジ44は、バルブクリアランス調整機構42を構成する部材である。
弁腕24の左端には、ねじ孔が上下方向に貫通して形成され、該ねじ孔に調整ネジ44が螺合される。そして、調整ネジ44の下端が、プッシュロッド23の上端と、球継手26を介して連結される。調整ネジ44は、ロックナット43により弁腕24に固定されており、プッシュロッド23に対して所望位置で固定されている。弁腕24の他端となる右端(右側の端部)には、ブリッジ31を押圧するための押圧部24aが形成される。弁腕24は、押圧部24aを介してブリッジ31の上端に当接可能である。
【0022】
各ブリッジ31は、略十字状に形成され、弁腕24の右下方に配置される。ブリッジ31は、吸排気バルブ32・32の上端と弁腕24の右端との間に介装される。
ブリッジ31の上端となる上面の左右中央位置には、弁腕24の押圧部24aに押圧される被押圧部31aが設けられる。ブリッジ31の左右両側の下面には、吸排気バルブ32・32の上端と嵌合して押圧する押圧部31b・31bがそれぞれ設けられている。押圧部31b・31bは、ブリッジ31の下面から上方に窪んだ凹状とされる。つまり、ブリッジ31は、上方に突出する被押圧部31aと側方に突出する押圧部31b・31bとを含む略十字状に形成される。
【0023】
吸気側又は排気側の二つの吸排気バルブ32・32は、上下方向を長手方向として左右に所定間隔を空けた状態でブリッジ31の下方に配置される。各吸排気バルブ32の上部には、バネ受座33が取り付けられる。バネ受座33と、シリンダヘッド20の上面との間には、圧縮バネ34が介装されて、圧縮バネ34により吸排気バルブ32が上方に付勢される。二つの吸排気バルブ32・32の上端32a・32aは、ブリッジ31の押圧部31b・31bと当接する。
【0024】
弁腕24の他端となる右端下部とバルブ30の上端との間には、これらの隙間であるバルブクリアランス41が設けられる。本実施形態では、弁腕24の右側に設けられた押圧部24aと、ブリッジ31の上面に設けられた被押圧部31aとの間にバルブクリアランス41が設けられる。
バルブクリアランス41は、弁腕室22内のメンテナンス時等、弁腕24の揺動を所定位置にて止めた状態で、弁腕24とバルブ30との間に形成される隙間である。
【0025】
さらに、ブリッジ31の右側には、弁腕軸25に対して外側(右側)の吸排気バルブ32の上端とブリッジ31の押圧部31bとの間の隙間を調整する弁頭調整機構45が設けられている。弁頭調整機構45は、ブリッジ31の右側の押圧部31bに設けられるロックナット46と弁頭調整ネジ47で主に構成される。つまり、ブリッジ31の右側の押圧部31bにはねじ孔が上下方向に貫通して形成され、該ねじ孔に弁頭調整ネジ47が螺嵌され、弁頭調整ネジ47の上部にロックナット46が螺嵌されて、弁頭調整ネジ47を所望位置で固定できるようにしている。
【0026】
上面視において、四つの吸排気バルブ32・32・32・32で囲まれた中央位置にインジェクタ12が上下方向に配設される。インジェクタ12は、ボンネット50の上面53を貫通して上方に突出されて、該突出部において燃料高圧管11と接続されて燃料を供給するように構成される。また、インジェクタ12は、弁腕24の他端(右端)の略上方に突出して設けられる。
【0027】
そして、プッシュロッド23が上下に往復動して、該プッシュロッド23と連動連結された弁腕24が揺動し、該弁腕24の揺動により、ブリッジ31を介して吸排気バルブ32・32が適切なタイミングで開閉されて、空気の吸入や燃焼ガスの排出が行われる。
【0028】
次に、図4及び図5を用いて、ボンネット50の概略構成を説明する。
【0029】
ボンネット50の右側面51は、弁腕24の長手方向右端部と対向する側面であり、右下方へ下がる傾斜面として形成される。ボンネット50の右側面51には、弁腕室22内をメンテナンス(バルブクリアランス41の調整、動弁機構の注油、粉塵等の除去等)するための右点検窓51aが形成される。右点検窓51aは、右側面51の略全域に亘って開口している。
【0030】
右点検窓51aは、略正方形状に形成されて本実施形態では主にバルブクリアランス41に隙間ゲージ71を挿入するために設けられる。右点検窓51aは、バルブクリアランス41の近傍で、その右方に配置される。また、右点検窓51aは、排気マニホールド側に配置される。
右点検窓51aは、バルブクリアランス41を右方から目視可能であって、隙間ゲージ71(図6参照)にて測定可能となるように概ね右方に向けて開口され、隙間ゲージ71が挿入可能な適宜の開口面積を有している。これにより、バルブクリアランス41に隙間ゲージ71を容易に挿入し、測定することができる。
右点検窓51aは、メンテナンスを行わない場合には、略台形状の右蓋体61(図3参照)により閉じられる。右蓋体61は、右点検窓51aの開口を隙間なく覆う形状を有し、シール64を介して右点検窓51aに取り付けられることによって、右点検窓51aを密閉する。
【0031】
さらに、右点検窓51aは、弁頭調整機構45の近傍で、その右上方に配置される。
つまり、右点検窓51aを通じて弁頭調整機構45の操作が可能となるように構成されており、右点検窓51aから前述のように隙間ゲージ71を挿入するだけでなく、弁頭調整機構45を操作する工具が操作可能である。
【0032】
ボンネット50の左側面52は、弁腕24の長手方向左端部と対向する側面であり、左下方へ下がる傾斜面として形成される。ボンネット50の左側面52には、弁腕室22内をメンテナンスするための左点検窓52aが形成される。左点検窓52aは、左側面52の略全域に亘って開口している。
【0033】
左点検窓52aは、略八角形状に形成されて本実施形態では主にバルブクリアランス調整機構42を操作するために設けられる。左点検窓52aは、バルブクリアランス調整機構42の近傍で、その左方に配置される。また、左点検窓52aは、吸気マニホールド3側に配置される。
左点検窓52aは、調整ネジ44の頭部を上方から目視可能、かつ、ロックナット43の側部を左側方から目視可能となるように左上方に向けて開口され、ロックナット43を回動させるためのスパナ等の工具73(図6参照)や調整ネジ44を回動させるためのドライバ等の工具74(図6参照)が操作可能となる適宜の開口面積を有している。これにより、ロックナット43と調整ネジ44の工具73・74の操作が容易となる。
左点検窓52aは、メンテナンスを行わない場合には、略六角形状の左蓋体62(図2参照)により閉じられる。左蓋体62は、左点検窓52aの開口を隙間なく覆う形状を有し、シール65を介して左点検窓52aに取り付けられることによって、左点検窓52aを密閉する。
【0034】
なお、本実施形態では、ボンネット50の左側面52の傾斜角度は右側面51の傾斜角度よりも小さく(緩斜面に)構成しているが、右側面51と左側面52の傾斜角度、及び、右点検窓51aと左点検窓52aの開口面積は限定するものではなく、隙間ゲージ71や工具73・74を挿入してバルブクリアランス41を調整できるものであればよい。
【0035】
次に、図6を用いて、バルブクリアランス41の調整方法を説明する。
【0036】
バルブクリアランス41の調整は、通常は駆動時間が1000時間から2000時間毎又は経過時間が五ヶ月から六ヶ月毎に行われる。バルブクリアランス41の調整は、エンジン1が冷却状態時に行われる。
【0037】
初めに、バルブクリアランス41を調整するシリンダのボンネット50から、右蓋体61と左蓋体62とを取り外す。つまり、ボンネット50の右側面51から四つのボルト63・63・63・63(図3参照)を取り外して右蓋体61を取り外し、ボンネット50の左側面52から四つのボルト63・63・63・63(図2参照)を取り外して左蓋体62を取り外す。こうして、ボンネット50の右点検窓51a及び左点検窓52aが開口される。
【0038】
次に、バルブクリアランス41を調整するシリンダ内のピストンを圧縮行程の上死点に配置させる。つまり、クランク軸に取り付けられたフライホイール15を所定方向に回転させて所定位置に停止させる。
これにより、弁腕24の揺動位置が決定され、メンテナンス対象となるバルブクリアランス41が弁腕24の押圧部24aとブリッジ31の被押圧部31aとの間に設けられる。
【0039】
その後、右点検窓51aから、弁腕24の押圧部24aとブリッジ31の被押圧部31aとの間に設定する厚さの隙間ゲージ71を挿し込んで、適切な間隔であるか確認する。適正な間隔の場合は、右蓋体61と左蓋体62とを取り付けて終了する。
【0040】
適正でない場合には、調整ネジ44を工具74で固定しながら、ロックナット43を工具73で緩める。そして、右点検窓51aから隙間ゲージ71を弁腕24の押圧部24aとブリッジ31の被押圧部31aとの間に挿入する。それから、工具74により調整ネジ44を回転させて、弁腕24の押圧部24aとブリッジ31の被押圧部31aとの間隔が、隙間ゲージ71の厚さと一致すると、ロックナット43を締め付けて、その位置が保持されてバルブクリアランス41が調整される。
前記作業を吸気側と排気側の二つのバルブクリアランス41に対して行う。
【0041】
最後に、ボンネット50に、右蓋体61と左蓋体62とを取り付ける。つまり、ボンネット50の右側面51に右蓋体61を当接させて四つのボルト63・63・63・63を螺嵌して、右蓋体61を取り付ける。同様に、ボンネット50の左側面52に左蓋体62を当接させて四つのボルト63・63・63・63を螺嵌して、左蓋体62を取り付ける。こうして、右点検窓51a及び左点検窓52aが閉じられる。
【0042】
なお、吸排気バルブ32の上端32aがブリッジ31の押圧部31bと当接していない場合には、バルブクリアランス41を調整する前に、右点検窓51aを通じて弁頭調整機構45を操作して、弁頭部隙間(隙間0)が調整される。
つまり、右点検窓51aから工具(ロックナット46と弁頭調整ネジ47の工具)を挿入してロックナット46を緩め、弁頭調整ネジ47を緩めた状態において、弁腕24の右側を下方に抑えながら、バルブクリアランス41における押圧部31b(弁頭調整ネジ47下端面)と吸排気バルブ32の上端32aとの間の隙間がなくなるまで、弁頭調整ネジ47を締め付ける。こうして弁頭部隙間が調整される。
【0043】
以上のように、ボンネット50は、弁腕24の長手方向両端部と対向する両側面51・52に点検窓51a・52aを有することにより、これら点検窓51a・52aからボンネット50内部の弁腕室22にアクセスしてメンテナンスができる。つまり、ボンネット50の上方に突出するインジェクタ12及びその周辺の部材を取り外すことなく、ボンネット50の内部に両側面側からアクセスしてメンテナンスできるので、弁腕室内におけるメンテナンス性の向上を図ることができる。さらに、左側面52が傾斜面として形成され、左点検窓52aが上左方に向けて開口されるので、ボンネット50の内部に左側からだけでなく上側及び左上側からアクセスしてメンテナンスができるのである。
このように、従来技術に含まれる、(1)ボンネット50内部の弁腕室22のメンテナンスを行うために、インジェクタ12やインジェクタ12に接続される燃料高圧管11を取り外す必要があるため、作業性が悪い、(2)燃料高圧管11を一度取り外すと継手部が変形するため再利用できず、メンテナンス毎に新たな燃料高圧管11が必要となり、メンテナンス費用が嵩む、といった課題を解決できる。すなわち、本実施形態によれば、インジェクタ12や燃料高圧管11を取り外す必要がなく作業性が良くなり、また、メンテナンス毎に新たな燃料高圧管11が不要であるので、メンテナンス費用を低減できる。
【0044】
また、点検窓51a・52aは、弁腕24の長手方向両端部と対向する両側面51・52にそれぞれ設けられて、各ボンネット50の配列方向と直交する左右側方に向けて開口されるので、弁腕24の右端に位置するバルブクリアランス41や左端に位置するバルブクリアランス調整機構42に容易にアクセスでき、バルブクリアランス41調整が容易となりメンテナンス性が良い。
【0045】
次に、図7から図14を用いて、ボンネット50の形状について詳細に説明する。
【0046】
ボンネット50は、前面視略台形状で平面視略長方形状の立体形状であり、言い換えれば、ボンネット50は、前後方向に台形断面を有する立体形状、又は上下方向に長方形断面を有するとともに、上方へ行くに従ってその長方形断面の大きさが徐々に縮小する立体形状に形成される。
【0047】
ボンネット50の左側面52の四隅には、取付孔52b・52b・52b・52bがそれぞれ形成される。
この取付孔52b・52b・52b・52bと対応する取付孔62a・62a・62a・62aが左蓋体62の四隅にそれぞれ形成されて、これら取付孔52b・62a同士を一致させて、ボルト63が螺嵌され、左点検窓52aに左蓋体62が取り付けられる(図15参照)。この際、左点検窓52aの周囲に溝52cが形成されて、溝52cに左蓋体62側に突出するシール65(図15参照)が嵌め込まれて、弁腕室22が密閉される。
【0048】
ボンネット50の右側面51の四隅には、取付孔51b・51b・51b・51bがそれぞれ形成される。
この取付孔51b・51b・51b・51bと対応する不図示の取付孔が右蓋体61の四隅にそれぞれ形成されて、これら取付孔51b同士を一致させて、ボルト63が螺嵌され、右点検窓51aに右蓋体61が取り付けられる。この際、右点検窓51aの周囲に溝51cが形成されて、溝51cに右蓋体61側に突出するシール64(図4参照)が嵌め込まれて、弁腕室22が密閉される。
【0049】
ボンネット50の上面53には、上面視で円形状の上開口部53aが形成される。
上開口部53aには、インジェクタ12の上部に設けられた鍔部12aが嵌合され、鍔部12aには、インジェクタ12とコントローラ14を接続するハーネス13が貫通される(図16参照)。鍔部12aは、シール部材として作用しており、弁腕室22が密閉される。
【0050】
ボンネット50の上面53であって、左側前部にはクランプ座53bが形成され、ボンネット50の左側面52であって、左側前部にはクランプ座52dが形成される。
クランプ座52d・53bには、それぞれクランプ部材16・17が固定されて、これらクランプ部材16・17によりハーネス13が固定されて、左蓋体62を迂回するように配設される(図16参照)。
【0051】
ボンネット50の後面54であって、右側下部には上下方向を軸心方向とする取付孔54aが形成され、ボンネット50の前面55であって、右側下部に上下方向を軸心とする取付孔55aが形成され、ボンネット50の下面56であって、左側前後中途部に上下方向を軸心方向とする取付孔56bが形成される。
これら三つの取付孔54a・55a・56bにそれぞれボルト66が螺嵌されて、弁腕室ハウジング21にボンネット50が取り付けられる(図5参照)。この際、下面56に形成された下開口部56aの周囲に溝56cが形成されて、溝56cにシール64・65と略同様のシール67(図4参照)が嵌め込まれて、弁腕室22が密閉される。
【0052】
なお、図11に示すように、取付孔56bの上方に左点検窓52aが位置するため、左点検窓52aから左蓋体62を取り外した状態で、左点検窓52aを通じて取付孔56bにボルト66を螺嵌して弁腕室ハウジング21にボンネット50が取り付けられる構成とされる。
【0053】
なお、本実施形態のエンジン1は、各シリンダに二つの吸気側の吸排気バルブ32・32と二つの排気側の吸排気バルブ32・32が設けられる四弁式であるが、各シリンダに一つの吸気側の吸排気バルブ32と一つの排気側の吸排気バルブ32が設けられる二弁式であってもよく、この場合、バルブクリアランスは、弁腕24の左側に設けられた押圧部24aと、吸排気バルブ32の上端との隙間となる。
【符号の説明】
【0054】
1 エンジン
12 インジェクタ
20 シリンダヘッド
22 弁腕室
23 プッシュロッド
24 弁腕
30 バルブ
31 ブリッジ
32 吸排気バルブ
41 バルブクリアランス
42 バルブクリアランス調整機構
43 ロックナット
44 調整ネジ
50 ボンネット
51 右側面
52 左側面
51a 右点検窓
52a 左点検窓
61 右蓋体
62 左蓋体
71 隙間ゲージ
73 ロックナットの工具
74 調整ネジの工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドの上部をボンネットで覆って弁腕室を形成し、前記ボンネットの上面からインジェクタを突出させて、該インジェクタの突出部より燃料を供給するように構成されたエンジンにおいて、
前記ボンネットは、弁腕の長手方向両端部と対向する両側面に点検窓を有することを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記弁腕の一端は、調整ネジ及びロックナットを用いてプッシュロッドと連結されて、
前記弁腕の一端側の前記ボンネットの側面は、傾斜面として形成され、当該傾斜面に設けられる点検窓は、前記調整ネジの頭部を上方から目視可能に開口される請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記弁腕の他端は、バルブの上端に当接可能であり、前記弁腕の他端側の点検窓は、前記弁腕の他端と前記バルブの上端との間のバルブクリアランスを側方から目視及び隙間ゲージにて測定可能に開口される請求項1又は請求項2に記載のエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−40584(P2013−40584A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178560(P2011−178560)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】