説明

オイルミスト処理装置

【課題】ブローバイガスに含まれているオイルミストが調整弁を通過しても燃焼室で消費されるのを抑制することのできるオイルミスト処理装置を提供する。
【解決手段】エンジン11のクランク室24と吸気通路17とをつなぐブローバイガス通路25に、クランク室24から吸気通路17に向けて、主ミストセパレータ28、PCVバルブ26及びミストセパレータ29を順に配置する。ブローバイガス中の粒径の大きなオイルミストについては、これを主ミストセパレータ28にて分離し、クランク室24に戻す。主ミストセパレータ28にて分離されずPCVバルブ26を通過した粒径の小さなオイルミストについては、これをミストセパレータ29にて分離する。ミストセパレータ29とクランク室24とをドレン通路41によって接続し、その通路の途中には、エンジン11の作動中に閉弁し、停止時に開弁するチェックバルブ42を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の作動に伴い発生するブローバイガスからオイルミストを分離してクランク室に戻すオイルミスト処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される内燃機関では、ピストンリングとピストンやシリンダとの隙間を通じてブローバイガス(未燃焼の混合気や燃焼ガス)が燃焼室からクランク室内に漏出する。そこで、内燃機関にブローバイガス還流装置を設け、ブローバイガスを、クランク室、動弁室、吸気通路等を通じて燃焼室に戻して再燃焼させることが行われている。
【0003】
しかし、ブローバイガスがクランク室を通る際に、機関オイルが霧状となってブローバイガスに混入する。この霧状のオイル(オイルミスト)を含んだブローバイガスが再燃焼されるとオイル消費量が増大する。そこで、内燃機関には、ブローバイガス中に含まれているオイルミストが、ブローバイガスの流れに乗って吸気通路等へ持ち出されるのを防ぐために、ブローバイガスからオイルミストを分離してクランク室に戻すオイルミスト処理装置が設けられている。
【0004】
こうしたオイルミスト処理装置としては、内燃機関のクランク室と吸気通路とをつなぐブローバイガス通路の途中に、慣性衝突式、ラビリンス式等のミストセパレータを設けるとともに、そのミストセパレータのガス流出口にPCVバルブを設けたものが一般的である(例えば、特許文献1〜3参照)。このオイルミスト処理装置によれば、ブローバイガスがミストセパレータ内を通過する際に、そのブローバイガスに含まれているオイルミストが液化・分離される。分離された液状のオイルはドレン通路を通ってクランク室に戻される。PCVバルブは、ブローバイガス通路を流れるブローバイガスの量を機関運転状態に応じて調整する。
【特許文献1】特開平4−342864号公報
【特許文献2】特開平10−141154号公報
【特許文献3】実開平3−54226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したオイルミスト処理装置では、粒径の比較的大きなオイルミストについてはミストセパレータによって捕捉できる。しかし、粒径の小さなオイルミストについては、ブローバイガスの流れに乗ってミストセパレータ内を移動し、PCVバルブに達することがある。この場合、PCVバルブ内でも粒径の小さなオイルミストが捕捉されるが、弁体近傍の流路の狭い箇所ではブローバイガスの流速が速いために、一旦捕捉されて粒径の若干大きくなったオイルがブローバイガスに乗って吸気通路へ持ち出され、燃焼室で燃焼されるおそれがある。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ブローバイガスに含まれているオイルミストがPCVバルブ等の調整弁を通過しても燃焼室で消費されるのを抑制することのできるオイルミスト処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明では、クランク室と吸気通路とをつなぐブローバイガス通路の途中に、同ブローバイガス通路を流れるブローバイガスの量を調整する調整弁を設けた内燃機関に用いられ、前記ブローバイガスに含まれるオイルミストを処理する装置であって、前記ブローバイガス通路の前記調整弁よりも下流に設けられ、前記調整弁を通過したブローバイガスからオイルミストを分離するミストセパレータと、前記ミストセパレータにて分離されたオイルを前記クランク室に戻すドレン通路とを備えるとする。
【0008】
上記の構成によれば、内燃機関の作動に伴い生じたブローバイガスは、クランク室、ブローバイガス通路及び吸気通路を通って内燃機関の燃焼室に戻される。ブローバイガスは、上記ブローバイガス通路を流れる途中に調整弁を通過する。この際、ブローバイガスに含まれているオイルミストが調整弁を通過したとしても、そのオイルミストは、ブローバイガス通路の調整弁よりも下流のミストセパレータを通過する際に液化され、ブローバイガスから分離される。分離された液状のオイルは、ミストセパレータからドレン通路を通ってクランク室に戻される。このようにして、請求項1に記載の発明によれば、オイルミストが調整弁を通過しても燃焼室で消費されるのを抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記ブローバイガス通路の前記調整弁よりも上流に、同ブローバイガス通路を流れるブローバイガスからオイルミストを分離して前記クランク室に戻す主ミストセパレータをさらに備えるとする。
【0010】
上記の構成によれば、内燃機関の作動に伴い生じてブローバイガス通路を流れるブローバイガスは、上記調整弁に至る前に主ミストセパレータを通過する。この通過の際に、比較的粒径の大きなオイルミストが液化されてブローバイガスから分離され、クランク室に戻される。上記のように分離された分、主ミストセパレータから流出し、調整弁を通ってミストセパレータに流入するオイルミストが少なくなる。このように、主ミストセパレータ及びミストセパレータによってオイルミストを処理するため、オイルミストが燃焼室に達するのをより確実に抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、前記ミストセパレータは、前記吸気通路途中のサージタンク内に設けられたセパレータ室と、前記サージタンクの外部と前記セパレータ室を連通させるガス流入口と、前記セパレータ室と前記サージタンクの内部空間を連通させるガス流出口とを備えるとする。
【0012】
上記の構成によれば、調整弁を通過したオイルミストを含むブローバイガスは、ガス流入口を通ってサージタンク内のセパレータ室内に流入する。このブローバイガスがセパレータ室内を流れる際にオイルミストが液化・分離される。分離された液状のオイルはドレン通路を通ってクランク室に戻される。オイルミストの分離された後のブローバイガスはガス流出口を通った後、サージタンク内へ流入し、吸気とともに燃焼室に導かれる。
【0013】
また、ブローバイガス中には燃料の燃焼に伴い生成した水蒸気が含まれており、この水蒸気が吸気通路、特に温度の低いサージタンク内で凝縮することがある。この凝縮した水についても上記オイルと同様に、上記ドレン通路を通じてクランク室へ戻すことが可能である。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明では、サージタンク内の空間を利用してミストセパレータのセパレータ室が設けられていることから、同セパレータ室をサージタンクの外部に設けた場合に比べ、オイルミスト処理装置全体の小型化を図ることが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記内燃機関の作動時に前記ドレン通路を閉鎖し、同内燃機関の停止時に同ドレン通路を開放する開閉弁をさらに備えるとする。
【0016】
上記の構成によれば、内燃機関の作動時には開閉弁によってドレン通路が閉鎖され、同ドレン通路でのオイルの流通が遮断される。そのため、ミストセパレータによりブローバイガスから分離されたオイルは、同ミストセパレータ室内に貯留され、クランク室には戻されない。また、クランク室からオイルがドレン通路を通じてミストセパレータ側へ流動(逆流)することもない。これに対し、内燃機関の停止時には開閉弁が開弁する。この開弁により、ドレン通路でのオイルの流通が可能となる。そのため、ミストセパレータによりブローバイガスから分離されたオイルを、ドレン通路を通じてクランク室に戻すことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の発明において、前記開閉弁は、前記内燃機関の作動時には、前記吸気通路の吸気負圧により吸引されて弁座に接触し前記ドレン通路を閉鎖する弁体を備えるとする。
【0018】
上記の構成によれば、内燃機関の作動時には、開閉弁では、弁体が吸気負圧により吸引されて弁座に接触し、ドレン通路が閉鎖(閉弁)される。この閉弁により、ミストセパレータからクランク室側へのオイルの流通も、クランク室からミストセパレータ室側へのオイルの流通(逆流)も遮断される。これに対し、内燃機関の停止時には、吸気負圧による弁体の吸引がなくなって、弁体がドレン通路を閉鎖しなくなる。弁体が弁座から離間(開弁)し、ドレン通路でのオイルの流通が可能となって、オイルが自重によりドレン通路を通ってクランク室に戻される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照して説明する。
車両には、図1に示すように、内燃機関としてガソリンエンジン(以下、単にエンジンという)11が搭載されている。エンジン11は、シリンダブロック12と、その上側に取り付けられたシリンダヘッド13と、同シリンダブロック12の下側に取り付けられたクランクケース14及びオイルパン15とを備えている。このエンジン11では、気筒毎の燃焼室16に吸気通路17を通じて空気が吸入されるとともに、燃料噴射弁から燃料が噴射供給される。この燃料と空気の混合気に対し点火プラグによる点火が行われると、その混合気が燃焼してシリンダ18内でピストン19が往復動し、エンジン11の出力軸であるクランクシャフト21が回転する。そして、混合気の燃焼により生じた排気は各燃焼室16から排気通路22へ排出される。
【0020】
エンジン11の出力調整は、吸気通路17に設けられたスロットルバルブ23の開度(スロットル開度)を調節することによって実現される。すなわち、スロットル開度の調整により、エンジン11への吸入空気量が変化し、その変化に対応して燃料噴射量が制御され、燃焼室16に充填される混合気の量が変化してエンジン11の出力が調整される。
【0021】
上記エンジン11では、圧縮行程及び膨張行程で、ピストンリングとシリンダ18やピストン19との隙間からクランク室24にガスが漏出する。クランク室24は、クランクシャフト21が収容されている空間であり、詳しくはクランクケース14及びオイルパン15によって囲まれた空間である。上記ガスは圧縮行程で漏出する混合気、膨張行程で漏出する燃焼ガス等からなり、ブローバイガスと呼ばれる。ブローバイガスはエンジンオイルを劣化させ、エンジン11の内部をさびさせる原因となり得る。
【0022】
そこで、クランク室24と、吸気通路17のスロットルバルブ23よりも下流とをブローバイガス通路25によってつなぎ、スロットルバルブ23の下流で発生する負圧(吸気負圧)をブローバイガス通路25を通じてクランク室24に作用させるようにしている。ここでの負圧は、大気圧を基準としてそれよりも低い圧力を指す。この吸気負圧により、ブローバイガスをブローバイガス通路25及び吸気通路17を通じて燃焼室16に戻して再燃焼させるようにしている。ブローバイガス通路25の途中には、エンジン11の運転状態、例えばエンジン負荷等に応じてブローバイガスの流量を調整するための調整弁として、PCVバルブ26が設けられている。PCVバルブ26としては、一般的なもの、すなわち絞り部、弁座及び弁体を流路に備え、この弁体をばねにより弁座側へ付勢するようにしたものを用いることができる。
【0023】
ところで、ブローバイガスがクランク室24を通る際にエンジンオイルが霧状(オイルミスト)となってブローバイガスに混入する。このオイルミストを含んだブローバイガスが再燃焼されるとオイル消費量が増大する。そこで、オイルミスト処理装置27を設け、ブローバイガスからオイルミストを分離・回収するようにしている。
【0024】
このオイルミスト処理装置27は、ブローバイガス通路25の互いに異なる箇所に設けられた2つのミストセパレータを備えている。ここでは、両ミストセパレータを区別するために、上流側に位置するものを「主ミストセパレータ28」といい、下流側に位置するものを単に「ミストセパレータ29」というものとする。
【0025】
図1及び図2に示すように、主ミストセパレータ28は、上記背景技術におけるミストセパレータに相当するものであり、ブローバイガス通路25のPCVバルブ26よりも上流であって、クランク室24よりも下流に設けられている。主ミストセパレータ28としては、一般に知られている慣性衝突式、ラビリンス式等のミストセパレータを用いることができる。
【0026】
慣性衝突式のミストセパレータは、流路の途中に絞り部及び慣性衝突壁を備えている。このタイプのミストセパレータでは、絞り部を通過することにより流速の上昇したブローバイガス及びオイルミストを慣性衝突壁に衝突させることで、オイルミストを液化させてブローバイガスから分離させる。また、ラビリンス式のミストセパレータは、流路の途中に、その流路を蛇行状に仕切る複数の仕切壁を備えている。このタイプのミストセパレータでは、ブローバイガス及びオイルミストが仕切壁に沿って蛇行しながら流れる途中で、そのオイルミストを仕切壁に付着させることで液化させてブローバイガスから分離させる。
【0027】
主ミストセパレータ28にはブローバイガスのガス流入口31及びガス流出口32が開口されている。また、主ミストセパレータ28の底部にはオイル排出口33が開口されている。このオイル排出口33とクランク室24とは、ドレン通路(図示略)によって接続されている。
【0028】
上述したPCVバルブ26は、主ミストセパレータ28のガス流出口32に配置されている。
ミストセパレータ29は、ブローバイガス通路25のPCVバルブ26よりも下流に設けられている。このミストセパレータ29はセパレータ室35を備えている。セパレータ室35は、吸気通路17においてスロットルバルブ23よりも下流のサージタンク34内に設けられており、そのサージタンク34の底部の一部を自身の底部として利用している。表現を変えると、サージタンク34の底部とミストセパレータ29の底部の一部とが重複している。
【0029】
サージタンク34の底部には、そのサージタンク34の外部とセパレータ室35とを連通させるガス流入口36が開口されている。また、ミストセパレータ29において、ガス流入口36から比較的遠く離れた箇所には、セパレータ室35とサージタンク34の内部空間34Aとを連通させるガス流出口37が開口されている。ここでの内部空間34Aとは、サージタンク34内においてセパレータ室35を除く空間である。セパレータ室35内には、その内部空間を蛇行状に仕切る複数の仕切部38が設けられている。
【0030】
さらに、サージタンク34の底部にはオイル排出口39が開口されている。このオイル排出口39とクランク室24とはドレン通路41によって接続されている。このドレン通路41の途中、図2ではオイル排出口39の近傍には、エンジン11の作動時にドレン通路41を閉鎖し、同エンジン11の停止時にドレン通路41を開放する開閉弁として、チェックバルブ42が設けられている。
【0031】
チェックバルブ42は、図3に示すように、ドレン通路41の流路面積よりも大きな流路面積を有し、かつ相対向する壁面にそれぞれ開口を有する弁室43を備えている。弁室43のミストセパレータ29側(図3の上側)の開口の周りには弁座44が形成されている。弁室43内には、弁座44に接触又は離間する弁体45が収容されている。ドレン通路41は、弁体45が弁座44に接触することにより閉鎖され、弁体45が弁座44から下方へ離間することにより開放される。弁室43のクランク室24側(図3の下側)の開口には突起46が設けられている。この構成により、弁体45が弁室43のクランク室24側の開口に最も接近したときに突起46に接触することで、同開口を閉塞しないようにしている(図5参照)。上記のようにして本実施形態のオイルミスト処理装置27が構成されている。
【0032】
なお、上記エンジン11には、図1に示すように、排気中の窒素酸化物NOxを低減する手段として排気再循環(以下、「EGR」という)装置47が設けられている。EGR装置47は、排気の一部をEGR通路48を通じて吸気系に再び戻し、混合気が燃焼するときの最高温度を低くして窒素酸化物NOxの生成量を少なくするものである。EGR通路48の途中には、排気通路22からEGR通路48を通って吸気通路17へ戻される排気(EGRガス)の流量を調整するためのEGRバルブ49が設けられている。また、上記エンジン11には、排気タービン駆動式や機械駆動式の過給機は設けられていない。
【0033】
次に、上記オイルミスト処理装置27の作用について、エンジン11の作動時と停止時とに分けて説明する。
<エンジン11の作動時>
エンジン11の作動時には、吸気通路17のスロットルバルブ23よりも下流の吸気圧が大気圧よりも低くなる(負圧になる)。この負圧(吸気負圧)がブローバイガス通路25を通じてクランク室24に作用する。このため、エンジン11の作動に伴い発生したブローバイガスがオイルミストを含んだ状態で、クランク室24からブローバイガス通路25を通じて吸気通路17に吸引される。
【0034】
詳しくは、主ミストセパレータ28では、ブローバイガスはガス流入口31からガス流出口32に向けて流れる。この流通の過程で、ブローバイガスから粒径の比較的大きなオイルミストが液化されて分離される。ブローバイガスから分離された液状のオイルは、オイル排出口33及びドレン通路を通じてクランク室24に戻される。粒径の小さなオイルミストについては主ミストセパレータ28で分離されにくく、ブローバイガスの流れに乗って主ミストセパレータ28内を移動し、ガス流出口32に達する場合がある。この場合には、分離されなかった粒径の小さなオイルミストは、ブローバイガスとともにPCVバルブ26に流入することとなる。
【0035】
PCVバルブ26を通過する際、粒径の小さなオイルミストの幾分かは、互いに接触し合って粒径の大きなミストとなってブローバイガスから分離される。また、PCVバルブ26内で分離されないオイルミストもあり得る。
【0036】
ここで、PCVバルブ26内には上述したように絞り部、弁座、弁体等が設けられていて、ブローバイガスは絞り部や、弁体及び弁座間の隙間を高い流速で流れる。そのため、上述したPCVバルブ26内でブローバイガスから分離された粒径のやや大きくなったオイルミストは、この高い流速のブローバイガスとともにPCVバルブ26からブローバイガス通路25の下流側へ持ち出されることがある。PCVバルブ26で分離されなかった粒径の小さなオイルミストについても、上記と同様にブローバイガスとともにブローバイガス通路25の下流側へ持ち出される。
【0037】
こうしてPCVバルブ26から持ち出されたり通過したりしたオイルミストは、図2において矢印で示すように、ブローバイガス通路25を通り、ガス流入口36からセパレータ室35内に流入する。セパレータ室35では、ブローバイガスはガス流入口36からガス流出口37に向けて流れる。この際、ブローバイガスは複数の仕切部38によって流れを規制され、蛇行しながら流れる。この流通の過程で、オイルミストが仕切部38に接触し、液化してブローバイガスから分離される。
【0038】
ここで、サージタンク34内では上述したように吸気負圧が作用しており、この吸気負圧がオイル排出口39を通じてドレン通路41にも作用する。この吸気負圧により、図3に示すようにチェックバルブ42では弁体45が吸引されて、弁座44に接触する。この接触によりドレン通路41が閉鎖され、オイルのドレン通路41での流通が遮断される。
【0039】
そのため、上記のようにミストセパレータ29により分離された液状のオイルは、ドレン通路41のチェックバルブ42よりもクランク室24側へ流れることなく、ミストセパレータ29の底部やサージタンク34の底部に溜まる。また、吸気負圧が、ドレン通路41において弁体45よりもクランク室24側に作用せず、クランク室24側のオイルがドレン通路41を通じてミストセパレータ29側へ流動(逆流)することがない。
【0040】
一方、上記のようにミストセパレータ29により粒径の小さなオイルミストが分離されて、オイルミストの含有量が少なくなったブローバイガスは、同ミストセパレータ29のガス流出口37から流出し、サージタンク34の内部空間34A及び吸気通路17を通ってエンジン11の燃焼室16に導かれる。
【0041】
なお、ブローバイガスやEGRガスには燃料の燃焼に伴い生成した水蒸気が含まれており、この水蒸気が吸気通路17、特に温度の低いサージタンク34内で凝縮することがある。上述したようにドレン通路41がチェックバルブ42によって閉鎖されていることから、凝縮した水分(凝縮水)は、上記オイルと同様、サージタンク34の底部に溜まる。
【0042】
<エンジン11の停止時>
エンジン11が停止されると、ブローバイガス及び吸気負圧がともに発生しなくなる。そのため、図4に示すようにオイルミスト処理装置27では、上述したエンジン11の作動時におけるようなブローバイガスの流れが止まる。また、図5に示すようにチェックバルブ42では、吸気負圧による弁体45に対する吸引力が消失し、弁体45が弁座44から下方へ離間し、ドレン通路41が開放される。そのため、エンジン11の作動時にミストセパレータ29にて分離されて底部に貯留したオイル、及びサージタンク34内で生じた凝縮水はオイル排出口39から自重によりドレン通路41内を流下する。そして、これらのオイル及び凝縮水は、図5において矢印で示すように、チェックバルブ42の弁室43、及びドレン通路41を通ってクランク室24に戻される。
【0043】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)ブローバイガス通路25のPCVバルブ26よりも下流にミストセパレータ29を設けるとともに、そのミストセパレータ29とクランク室24とをドレン通路41によって接続している。そのため、ブローバイガスとともにオイルミストがPCVバルブ26を通過したとしても、そのオイルミストをミストセパレータ29によって液化・分離し、ドレン通路41を通じてクランク室24に戻すことができる。従って、PCVバルブ26を通過したオイルミストが燃焼室16で消費されるのを抑制することができる。
【0044】
(2)ブローバイガス通路25のPCVバルブ26よりも上流に主ミストセパレータ28を設け、ブローバイガス中の粒径の大きなオイルミストについては、ここでブローバイガスから分離してクランク室24に戻すようにしている。そのため、主ミストセパレータ28にて分離された分、同主ミストセパレータ28から流出し、PCVバルブ26を通ってミストセパレータ29に流入するオイルミストが少なくなる。このように、主ミストセパレータ28及びミストセパレータ29によってオイルミストを処理するため、オイルミストがミストセパレータ29よりも下流側へ流れて燃焼室16に達するのをより確実に抑制することができる。
【0045】
(3)サージタンク34内にミストセパレータ29のセパレータ室35を設けている。そして、サージタンク34の外部とセパレータ室35とをガス流入口36によって連通させるとともに、セパレータ室35とサージタンク34の内部空間34Aとをガス流出口37によって連通させている。そのため、ブローバイガスからのオイルミストの分離をサージタンク34内のセパレータ室35で行うことができる。
【0046】
また、混合気の燃焼に伴い発生してブローバイガスやEGRガスとともに吸気通路17を流れる水蒸気がサージタンク34内で凝縮したとしても、その凝縮水を上記オイルとともにドレン通路41を通じてクランク室24に戻すことができる。そのため、凝縮水がサージタンク34内に溜まったり、燃焼室16へ流入したりするのを回避できる。
【0047】
(4)上記(3)に関連するが、サージタンク34内の空間を利用してミストセパレータ29を設けていることから、そのミストセパレータ29をサージタンク34の外部に設けた場合に比べ、オイルミスト処理装置27全体の小型化を図ることができる。
【0048】
(5)ドレン通路41に、エンジン11の作動時に閉弁し、停止時に開弁するチェックバルブ42を設けている。そのため、エンジン11の作動時に吸気負圧がドレン通路41を通じてクランク室24に作用しないようにすることができる。そのため、オイルがクランク室24からドレン通路41を通じてミストセパレータ29側へ逆流するのを抑制することができる。そして、このときにブローバイガスから分離されたオイルをミストセパレータ29内(サージタンク34内)に貯めておき、吸気負圧が発生しなくなるエンジン11の停止時にドレン通路41を通じてクランク室24に戻すことができる。
【0049】
(6)チェックバルブ42として、ドレン通路41の途中に弁室43を設けるとともに、その弁室43内に弁座44及び弁体45を設けている。そのため、エンジン11の作動時には、吸気負圧により弁体45を吸引して弁座44に接触させることで、ドレン通路41を閉鎖することができる。また、吸気負圧が発生しなくなるエンジン11の作動時には、ブローバイガスから分離されたオイルを、自重により、ドレン通路41からクランク室24に戻すことができる。
【0050】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・ブローバイガス通路25におけるPCVバルブ26の下流であることを条件に、ミストセパレータ29を上記実施形態とは異なる箇所、例えばサージタンク34の外部に配置してもよい。また、ブローバイガス通路25におけるPCVバルブ26の下流にミストセパレータを複数設けてもよい。この場合には、ミストセパレータ毎にドレン通路を設ける。
【0051】
・サージタンク34内において、セパレータ室35を上記実施形態とは異なる箇所に設けてもよい。
・PCVバルブ26を通過したオイルミストが燃焼室16で消費されるのを抑制するという効果については、ブローバイガス通路25においてPCVバルブ26の下流にミストセパレータ29を設けるという構成によって得ることができる。従って、この効果を得るうえでは、PCVバルブ26よりも上流の主ミストセパレータ28については、これを割愛することができる。
【0052】
・前記実施形態におけるチェックバルブ42は、吸気負圧を利用して弁体45を吸引して弁座44に接触させる構成を採っている。そのため、適用されるエンジン11は、ピストン19が下降するときの吸気負圧によって混合気や空気を吸入する、いわゆる自然吸気(NA)エンジンに限られる。
【0053】
そこで、吸気負圧を利用せずに開弁・閉弁するタイプ、例えば通電の有無に応じて開弁・閉弁する電磁弁を、上記チェックバルブ42に代えて開閉弁として用いるようにしてもよい。この場合、エンジン11の作動中には閉弁し、エンジン11の停止時に開弁するように電磁弁に対する通電を制御する。こうした電磁弁を開閉弁として用いれば、上記自然吸気エンジンに限らず、過給機付きのエンジン11にも適用できる。
【0054】
・チェックバルブ42として、上記実施形態と異なる構成を有するものを用いてもよい。例えば、上記実施形態におけるチェックバルブ42に、弁体45を弁座44側(ミストセパレータ29側)へ付勢するばねを付加した構成を有するものを、チェックバルブ42として用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を具体化した一実施形態におけるオイルミスト処理装置の概略構成図。
【図2】図1におけるA部の拡大図。
【図3】図2におけるチェックバルブの状態を示す構成図。
【図4】図2に対応する図であり、エンジンの停止時におけるオイルミスト処理装置の状態を示す部分拡大図。
【図5】図4におけるチェックバルブの状態を示す構成図。
【符号の説明】
【0056】
11…ガソリンエンジン(内燃機関)、17…吸気通路、24…クランク室、25…ブローバイガス通路、26…PCVバルブ(調整弁)、27…オイルミスト処理装置、28…主ミストセパレータ、29…ミストセパレータ、34…サージタンク、34A…内部空間、35…セパレータ室、36…ガス流入口、37…ガス流出口、41…ドレン通路、42…チェックバルブ(開閉弁)、44…弁座、45…弁体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク室と吸気通路とをつなぐブローバイガス通路の途中に、同ブローバイガス通路を流れるブローバイガスの量を調整する調整弁を設けた内燃機関に用いられ、前記ブローバイガスに含まれるオイルミストを処理する装置であって、
前記ブローバイガス通路の前記調整弁よりも下流に設けられ、前記調整弁を通過したブローバイガスからオイルミストを分離するミストセパレータと、
前記ミストセパレータにて分離されたオイルを前記クランク室に戻すドレン通路と
を備えることを特徴とするオイルミスト処理装置。
【請求項2】
前記ブローバイガス通路の前記調整弁よりも上流に、同ブローバイガス通路を流れるブローバイガスからオイルミストを分離して前記クランク室に戻す主ミストセパレータをさらに備える請求項1に記載のオイルミスト処理装置。
【請求項3】
前記ミストセパレータは、前記吸気通路途中のサージタンク内に設けられたセパレータ室と、前記サージタンクの外部と前記セパレータ室を連通させるガス流入口と、前記セパレータ室と前記サージタンクの内部空間を連通させるガス流出口とを備える請求項1又は2に記載のオイルミスト処理装置。
【請求項4】
前記内燃機関の作動時に前記ドレン通路を閉鎖し、同内燃機関の停止時に前記ドレン通路を開放する開閉弁をさらに備える請求項1〜3のいずれか1つに記載のオイルミスト処理装置。
【請求項5】
前記開閉弁は、前記内燃機関の作動時には、前記吸気通路の吸気負圧により吸引されて弁座に接触し前記ドレン通路を閉鎖する弁体を備える請求項4に記載のオイルミスト処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−316698(P2006−316698A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140093(P2005−140093)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】