説明

オキシドレダクターゼ酵素を含む抗微生物性および免疫賦活性の系

本発明は、抗微生物性および免疫賦活性の系、その用途、ならびに、この抗微生物性および免疫賦活性の系の製造方法に関する。本発明は、水溶液中にオキシドレダクターゼ酵素、オキシドレダクターゼ酵素の基質および過酸化水素を含む、保存に安定な抗微生物性および免疫賦活性の系であって;ここで、組成物全体の重量を基準にしてオキシドレダクターゼ酵素の基質が90重量%まで存在し;水が20重量%まで存在し;この系がおよそ4〜8のpHを有し;そして、この系が2段階の過酸化水素放出をもたらす、前記系を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物性および免疫賦活性の系、その用途、ならびに、この抗微生物性および免疫賦活性の系の製造方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
周知の抗微生物性の組成物としては、消毒剤および抗生物質などの従来の処置剤が挙げられる。他の処置剤としては、銀を含有するゲル、重金属を含有する化合物、そして過酸化水素溶液、ならびに天然および合成の医薬活性物質が挙げられる。しかしながら、抗生物質などの処置剤は、抗生物質耐性を生じることから欠点がある。さらに、高濃度の過酸化水素は毒性作用を有する。加えて、溶液中の過酸化水素は典型的に不安定であり、そしてこの材料ための持続送達系を提供することは困難である。このように、種々の異なる理由から、従来の抗微生物性の処置剤には多くの難点がある。
【0003】
また、細菌、真菌およびウイルスの代謝過程を乱す特定の酸化剤の能力に依存する、天然に存在する既知の数々の抗微生物性の系が存在する。例えば、WO03/090800は、水和したヒドロゲルと酵素とを含む創傷用包帯を対象としている。具体的にいうと、この特許には、この包帯の使用前に酵素の基質をオキシドレダクターゼ酵素と物理的に離しておく必要性が記載されている。これにより、WO03/090800によるところの、望ましくない不確実な反応を防止する。要するに、WO03/090800の創傷用包帯は、それが創傷部に使用または適用されているとき、すなわち、適切な酵素の基質と接触した後にのみ機能し得る。
【0004】
さらに、ここ数年、蜂蜜の処置有効性、とりわけ創傷治癒の分野における処置有効性についての関心が復活してきている。天然産物として、蜂蜜は、従来の処置剤に対する魅力的な代替品を提供する。蜂蜜は創傷の処置剤として数百年の間使用されてきたにもかかわらず、蜂蜜の抗菌特性が研究されているのは比較的最近のことにすぎない。こうした研究により、蜂蜜の抗菌活性は、高い浸透圧、低い含水量、有効水分(Aw)、酸性環境をもたらす低いpH、過酸化水素の生成をもたらすグルコースオキシダーゼ系、低いタンパク質含有量、高い炭素窒素比、還元糖の含有量が高いことによる低い酸化還元電位(Eh)、化学物質、ピノセンブリン、リゾチーム、酸(フェノール性の)、テルペン、ベンジルアルコールおよび/または揮発性物質(おそらく、蜂の酵素に影響される植物化学物質)を含む、いくつかの主要な特性によるものと仮定されている。
【0005】
多くの異なる種類の蜂蜜は、抗微生物活性を有する。過去何年にもわたり、マヌカ蜂蜜は他の大部分の蜂蜜より優れた活性を有するものみなされている。マヌカ蜂蜜は、ニュージーランド原産のマヌカの木、レプトスペルマム・スコパリウム(Leptospermum scoparium)に由来する。マヌカ蜂蜜は、創傷感染症の処置およびその抗菌活性で知られる。マヌカには固有の抗菌因子があるというのが当技術分野における共通認識であり、そしてこの抗微生物性物質を特徴付けようと試みる広範な研究が行われている。この抗菌活性および独特の抗菌因子を同定し定量化するために、近年、マヌカ蜂蜜の試験が行われている。この分野の研究者らは、マヌカ蜂蜜をカタラーゼ中和アッセイに供すると、マヌカ蜂蜜試料に加えられるカタラーゼの量は、生成されるすべての過酸化物を破壊するのに十分であるにも関わらず、抗菌活性が依然として観察されることを見出した。この結果、マヌカ蜂蜜には、この抗菌活性の原因となる非過酸化物性の因子、本文献では、非過酸化物性活性および特徴的なマヌカ因子(UMF)と呼ぶ、が存在するという知見が当技術分野で受け入れられることとなった。しかし、この非過酸化物性活性、またはUMFを媒介する物質を同定することを目的とした相当な量の研究にもかかわらず、この活性の正確な性質は今のところ知られておらず、そしてそのような物質は明確には同定されていない。
【0006】
従来の処置剤に伴う欠点のいくつかは、先に概説してある。さらに、抗菌剤としての天然の蜂蜜にもいくつか欠点がある。まず、天然の蜂蜜は、同定済みおよび未同定の有機化合物および無機化合物が多様な濃度で様々に混ざった物から成る。このことから、蜂蜜はある程度のばらつきを示すことが予測できるが、このばらつきは、多くの臨床用途においてその使用が許容できない程の多様性を有することが予期できる。第2に、蜂蜜は局所適用に主に使用される。これは、例えば腸内への吸収により蜂蜜が希釈された場合、蜂蜜が希釈されすぎて検出可能な活性を有さなくなるからである。最後に、蜂蜜は天然産物であり、それは存在する多くの付加的な化合物を有すると考えられるが、そしてこのような化合物のいくつかは、適用するとアレルギー反応を生じるものがある可能性がある。したがって、上述の欠点を克服し、天然の蜂蜜と同様またはそれより良好な抗菌活性を提供できる抗微生物性の系が必要である。とりわけ、その抗菌作用の機序を解明するために、マヌカ蜂蜜の抗菌性の役割についてのさらなる研究をより詳細に実施する必要がある。
【0007】
そのため、そうした処置剤に共通して付随する多くの欠点をもたないさらなる抗微生物性の組成物を生み出すために、これらの従来および天然の処置剤を研究する必要がある。事実、そのような従来および天然の処置剤のプラスの属性を、ネガティブな副作用または有害な特性を伴わずに利用できれば、これにより、医学的および商業的に相当な重要性をもつ、はるかに改善された代替的な抗菌系がもたらされることになろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の宣言
本発明の第1の観点によれば、水溶液中にオキシドレダクターゼ酵素、オキシドレダクターゼ酵素の基質そして過酸化水素を含む、保存に安定な抗微生物性および免疫賦活性の系であって;
オキシドレダクターゼ酵素の基質は、系全体の重量を基準にして90重量%まで存在し;そして水は、系全体の重量を基準にして20重量%まで存在し;この系がおよそ4〜8のpHを有し;そして、この系が2段階:
(a)保存に安定な内因的に生成された過酸化水素は、前記系内で即時放出用として1リットル当たり少なくとも10mgの濃度で生体利用可能であり;および
(b)系の再水和により、少なくとも24時間にわたりさらなる過酸化水素の持続放出が起こる;
の過酸化水素放出をもたらす、
前記系が提供される。
【0009】
本発明の第2の観点によれば、処置方法における使用のための本明細書に定義する系が提供される。
本発明の第3の観点によれば、化粧品用途における使用のための本明細書に定義する系が提供される。
【0010】
本発明の第4の観点によれば、有効量の本明細書に定義する系を局所、経腸および/または非経口の投与様式で患者の感染部位に適用するステップを含む、微生物感染症を処置するための、および/または、患者の損傷した組織および/または細胞の修復および/または再生のための方法が提供される。
【0011】
本発明の第5の観点によれば、本明細書に定義する、水溶液中にオキシドレダクターゼ酵素、オキシドレダクターゼ酵素の基質そして過酸化水素を含む、保存に安定な抗微生物性および免疫賦活性の系の製造方法であって、以下のステップ:
a.少なくとも60℃、好ましくはおよそ75℃〜95℃の温度に水を加熱する;
b.前記加熱した水に前記オキシドレダクターゼ酵素の基質を加えて水−糖溶液を形成する;
c.前記水−糖溶液をおよそ40℃以下の温度に冷却して酵素活性を保持させる;
d.攪拌しながらステップ(c)の水−糖溶液にオキシドレダクターゼ酵素を加えて、あらかじめ決定された制御比率で過酸化水素を形成する;そして、
e.ステップ(d)の結果得られる混合物を室温に冷却して、生体利用可能で保存に安定な内因的に生成された過酸化水素を即時放出用として1リットル当たり少なくとも10mgの濃度で含む系を作製する;
を含む、前記方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1−1】黄色ブドウ球菌に対するマヌカ蜂蜜の微生物阻害プロファイルを示す。マヌカ蜂蜜は、2段階の阻害プロファイルを示す。微生物阻害活性の第1段階は50%〜およそ6.25%の希釈率の間で現れ、微生物阻害活性の第2段階は3.125%〜およそ0.195%の希釈率で現れる。
【図1−2】黄色ブドウ球菌に対するpH調整マヌカ蜂蜜の微生物阻害プロファイルを示す。マヌカ蜂蜜のpHを、およそ4.0の天然のpHからpH6.8に調整しても、微生物阻害プロファイルに影響しない。
【図1−3】過剰なカタラーゼを加えておいたpH調整マヌカ蜂蜜の、黄色ブドウ球菌に対する微生物阻害プロファイルを示す。マヌカ蜂蜜のpHを中性pH近辺に調整してからカタラーゼを過剰に加えると、蜂蜜の微生物阻害プロファイルは変化する。微生物阻害の第1段階はわずかに影響を受けるだけであるが、第2段階は顕著に影響を受けており、第2段階における抗菌作用は主に過酸化水素の遊離の結果であることが示唆される。
【図2】黄色ブドウ球菌に対するマヌカ蜂蜜およびプロトタイプ製剤の微生物阻害プロファイルを示す。プロトタイプ製剤は、マヌカ蜂蜜の活性と比較して高い活性を示す。
【図3−1】ゲルベースのプロトタイプ製剤を用いた、黄色ブドウ球菌、大腸菌およびカンジダ・アルビカンスに対する微生物阻害アッセイの結果を示す。セルロースベースのゲルは両方とも安定性の低下を呈し、拡散アッセイにおける阻害領域がより小さいことから明らかなように、セルロースベースのゲル製剤はいずれもプロトタイプ製剤ほどの活性をもたない(図3−1(ゲル)と図3−2(プロトタイプ製剤)を比較のこと)。
【図3−2】黄色ブドウ球菌に対するプロトタイプ製剤の微生物阻害アッセイの結果を示す。大きな阻害領域は明らかに活性を示唆する。
【図4−1】グルコース/グルコースオキシダーゼのみの製剤の、異なる細菌に対する微生物阻害アッセイの結果を示す。ウェル中に75%D−グルコースと0.5%GOX5600U/gとを入れた4複製の微生物阻害アッセイおよびいくつかの異なる細菌に対するそれらの抗微生物活性。これらの製剤は、限られた程度の抗菌活性を示す。この活性は、ウェル/ディスク拡散アッセイにおける阻害領域がより小さいことから明らかなように、実施例2に記載の抗微生物性のプロトタイプ製剤で観察される活性を下回る(図4−1(ゲル)と図4−2(プロトタイプ)を比較のこと)。
【図4−2】プロトタイプ製剤の、いくつかの異なる細菌に対する微生物阻害アッセイの結果を示す。
【図5−1】異なるGOX(5600U/g)酵素濃度を有するAISの、黄色ブドウ球菌に対する活性を示す。AIS中のグルコースオキシダーゼ含有量を変化させ、それが阻害プロファイルに及ぼす影響を測定した。AISの抗菌活性は、グルコースオキシダーゼの濃度に比例して増加する。実質的な抗菌作用は酵素濃度0.05%で達成される。
【図5−2】脱イオン水(DI)中で50%(C1)、25%(C2)、12.5%(C3)または6.25%希釈された、シグマ・アルドリッチの0.5%GOX酵素5600U/gを含有するAISによる、経時的なH発生を示す。DI水中で50%希釈されたマヌカ蜂蜜と比較して、AISは、濃度が顕著に高い過酸化水素を発生させる。
【図5−3】AISによる経時的なH発生を示す。シグマ・アルドリッチの0.5%GOX酵素5600U/gを含有しDI水中で25%希釈されたAISによるHの生成は、少なくとも48時間にわたり維持される。
【図5−4】グルコースオキシダーゼ濃度が増すに従ってAISの抗微生物活性が増すことを示す。強さ/有効性は、AIS製剤中のグルコースオキシダーゼの濃度に依存する。結果は、黄色ブドウ球菌、緑膿菌および大腸菌について試験すると、グルコースオキシダーゼ濃度が増すに従って有効性が増すことを示す。
【図6】10カ月間にわたるAISによる安定性の結果およびHリザーバーの保持を示す。AISにより生成される利用可能なHリザーバーは、保存に安定である。存在する利用可能なHの濃度を、最初は管の中に入れた直後に定量し、7カ月および10カ月の期間が経過した後で再び定量した。AIS製剤内の利用可能なHが失われた証拠がないことから、安定性が示される。他のいくつかのバッチでも同様の結果が観察されている。
【図7−1】黄色ブドウ球菌に対するAIS製剤の3カ月にわたる抗微生物活性を示す。黄色ブドウ球菌に対するAIS製剤の抗微生物活性は、各サンプリング時点で測定した阻害領域により確認されるように時間を経ても一定したレベルの抗微生物活性を呈しており、3カ月の期間中の95%信頼限界を用いて結果をグラフ化する。
【図7−2】黄色ブドウ球菌に対するAIS製剤の14カ月にわたる抗微生物活性を示す。黄色ブドウ球菌に対するAIS製剤の抗微生物活性は、各サンプリング時点で測定した阻害領域により確認されるように時間を経ても一定したレベルの抗微生物活性を呈しており、14カ月の期間中の95%信頼限界を用いて結果をグラフ化する。
【図8−1】黄色ブドウ球菌に対するAISの抗微生物活性を示す、NCCLSの殺菌曲線法。NCCLSの殺菌曲線法により定量される、黄色ブドウ球菌に対するAISの抗微生物活性。AISは、マヌカ蜂蜜と比較して向上した有効性と、銀包帯に匹敵する有効性とを有する。
【図8−2】黄色ブドウ球菌に対するAISの抗微生物活性を示す、医療機器メーカーの特定の方法。医療機器メーカーの特定のプロトコールにより定量される、黄色ブドウ球菌に対するAISの抗微生物活性。AISは、マヌカ蜂蜜と比較して向上した有効性と、銀包帯に匹敵する有効性とを有する。
【図8−3】A群ベータ溶血性連鎖球菌に対するAISの抗微生物活性を示す。A群ベータ溶血性連鎖球菌の5臨床分離株に対して試験したAIS、Medihoney(登録商標)および10%フェノールゲルについての阻害アッセイ(3日間繰返し)の結果。AISは、普通のpH5.5(試験材料A)およびpH7(試験材料B)のものであり、GOXを含有しないAISの陰性対照が含まれる。AIS製剤は、10%フェノールゲルに匹敵するin vitroでの有効性を呈し、Medihoney(登録商標)より優れている。
【図8−4】カンピロバクターに対するAISの抗微生物活性を示す。カンピロバクター種の5臨床分離株に対して試験した際の、AIS、マヌカ蜂蜜および10%フェノールゲルについての阻害アッセイ(3日間繰返し)の結果。AIS製剤は、普通のpH5.5(試験材料A)およびpH7(試験材料B)のものであり、GOXを含有しない陰性対照AISが含まれる。結果は、in−vitroでの顕著な抗カンピロバクター有効性と、マヌカ蜂蜜に対するAISの優位性とを示唆する。
【図9−1】P.アクネスに対するAISの抗微生物活性を示す。様々なインキュベーション条件下(好気的な明条件および暗条件;嫌気的な明条件および暗条件)でのP.アクネスに対するAIS活性。AISはP.アクネスに対する高度の活性を呈し、にきびへの局所適用の可能性を有する材料であることが示唆される。
【図9−2】P.アクネスに対するAISの抗微生物活性を示す。AISの抗微生物活性と、抗生物質が組み込まれているいくつかの市販製品を含む現在入手可能な抗にきび市販製品の抗微生物活性とを示してある。AISは、市販の抗にきび製品に匹敵する高い活性を呈し、にきびへの局所適用の可能性を有する材料であることが示唆される。
【図10】異なる3日間におけるMRSAの8菌株に対するAISの抗微生物活性を、10%フェノールの基準およびマヌカ蜂蜜と比較して示す。AIS製剤は、普通のpH5.5(試験材料A)およびpH7(試験材料B)のものであり、GOXを含有しない陰性対照AISが含まれる。結果は、in−vitroでの顕著な抗MRSA有効性、ならびにマヌカ蜂蜜および10%フェノールゲル対照に対するAISの優位性を実証するものである。
【図11−1】MRSAに対するAISの抗微生物活性を、10%フェノールの基準およびマヌカ蜂蜜と比較して示す。AIS製剤は、普通のpH5.5(試験材料A)およびpH7(試験材料B)のものであり、GOXを含有しない陰性対照AISが含まれる。結果は、in−vitroでの顕著な抗MRSA有効性、ならびにマヌカ蜂蜜および10%フェノールゲル対照に対するAISの優位性を実証するものである。
【図11−2】乳腺炎の臨床分離株に対するAISの抗微生物活性を、抗生物質と比較して示す。乳腺炎の原因となる黄色ブドウ球菌生物の22臨床分離株に対して試験した際の、抗生物質4種(バンコマイシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリンおよびクロラムフェニコール)と比較したAISの阻害アッセイ(3日間繰返し)。AISは、これらすべての抗生物質より優れたin vitroでの有効性を示す。臨床分離株番号15は、バンコマイシン、ストレプトマイシンおよびテトラサイクリンに耐性があり、クロラムフェニコールに対しては緩やかな感受性を示すにすぎないが、AISに対しては感受性を示す。
【図11−3】乳腺炎の臨床分離株に対するAISの抗微生物活性を、市販の抗乳腺炎製品と比較して示す。乳腺炎の原因となる黄色ブドウ球菌生物の22臨床分離株に対して試験した際の、主要な市販の抗乳腺炎用の多種抗生物質製品4種と比較したAISの阻害アッセイ(3日間繰返し)。AIS製剤は、主要な市販製品3種と比較して、これに匹敵するin vitroでの有効性を呈し、これらの製品のうち1種より優れている。
【図11−4】乳腺炎の臨床分離株に対するAISの抗微生物活性を、2%ナイシン溶液と比較して示す。乳腺炎の原因となる黄色ブドウ球菌生物の21臨床分離株に対する、2%ナイシン溶液と比較したAISの阻害アッセイ(3日間繰返し)。AIS製剤は、2%ナイシン溶液より優れたin vitroでの有効性を示す。注:図11−2の臨床分離株番号15は、貯蔵状態から回復不能であったため、このアッセイに含まれていない。
【図11−5】ナイシン耐性の発達を示す。ナイシン有効性試験中の阻害領域内の2%ナイシン耐性コロニー(矢印で示す)。AIS耐性コロニーは観察されていない。
【図12−1】NHF(Normal Human Fibroblast、正常なヒト線維芽細胞)に対するAISのMTT毒性評価を示す。このアッセイに含まれるのは、50%濃度のAIS、一定の濃度範囲の市販の銀含有ゲル製品および市販の亜鉛含有ゲル製品であり、アジ化ナトリウム(陽性対照)と比較してある。AISは、市販の銀含有ゲル製品または市販の亜鉛含有ゲル製品のいずれよりも低い毒性を示す。
【図12−2】NHK(Normal Human Keratinocyte、正常なヒトケラチン生成細胞)に対するAISのMTT毒性評価を示す。このアッセイに含まれるのは、50%濃度のAIS、一定の濃度範囲の市販の銀含有ゲル製品および市販の亜鉛含有ゲル製品であり、アジ化ナトリウム(陽性対照)と比較してある。AISは、市販の銀含有ゲル製品または市販の亜鉛含有ゲル製品のいずれよりも低い毒性を示す。
【図12−3】L929細胞に対するAISの寒天重層法による細胞毒性評価を示すグラフである。このアッセイに含まれるのは、50%濃度のAIS、一定の濃度範囲の市販の銀含有ゲル製品および市販の亜鉛含有ゲル製品であり、アジ化ナトリウム(陽性対照)と比較してある。AISは、市販の銀含有ゲル製品または市販の亜鉛含有ゲル製品のいずれよりも低い毒性を示す。
【図12−4】Skinethic(登録商標)3D皮膚モデルを用いた、AISおよび他の試験材料の24時間にわたるMTT刺激性アッセイを示すグラフである。AISは、この三次元アッセイにおいて、試験した市販製品より低い刺激性を示す。
【図12−5】比較用の銀含有ゲル製品に曝露されたSkinethic(登録商標)3D皮膚の、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色した断面を示す。この銀製剤は基底層からの表皮層の剥離を引き起こすことに注意。
【図12−6】比較用の銀含有ゲル製品に曝露されたSkinethic(登録商標)3D皮膚の、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色した断面を示す。この銀製剤は基底層からの表皮層の剥離を引き起こすことに注意。
【図12−7】AISに曝露されたSkinethic(登録商標)3D皮膚の、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色した断面を示す。AISは基底層からの表皮層の剥離を引き起こさないことに注意。
【図12−8】AISに曝露されたSkinethic(登録商標)3D皮膚の、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色した断面を示す。AISは基底層からの表皮層の剥離を引き起こさないことに注意。
【図13−1】AISによるIL−1放出の誘導を示すグラフである。48時間にわたる3D刺激性アッセイから得た上澄みのELISAアッセイであり、AIS製剤、アジ化ナトリウム陽性対照および市販の銀含有ゲル製品に曝露された際のIL−1の放出を測定および比較するものである。結果は、IL−1はAIS製剤に曝露された皮膚細胞から放出されることを示唆する。
【図13−2】AISによるLDH放出の誘導を示す。48時間にわたる3D刺激性アッセイから得た上澄みのELISAアッセイであり、AIS、アジ化ナトリウム陽性対照および市販の銀含有ゲル製品に曝露された際の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出を測定および比較するものである。乳酸デヒドロゲナーゼは、破壊性化合物に曝露された細胞により放出される。結果は、AIS製剤は市販の銀含有ゲル製品より毒性が低いことを示唆する。
【図14】ガンマ線照射による滅菌前後のAISを示す。黄色ブドウ球菌、大腸菌および緑膿菌に対する阻害領域アッセイにより示されるように、ガンマ線照射しても活性は低下しない。
【図15−1】黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性について試験した、コラーゲン−GAGマトリックス中および市販の創傷用包帯中のAISを示す。AISは、対照として使用した市販の銀包帯で観察された抗菌活性より優れた抗菌活性を示す。
【図15−2】NHFによるコラーゲン−GAGマトリックス浸潤を示す。NHFによるコラーゲン−GAGマトリックスの浸潤。試験切片の添加後4日間にわたり、NHFは、矢印で示すように、コラーゲン−GAGマトリックス内に、また、マトリックスに沿って付着し増殖することが観察される。
【図15−3】NHFによるコラーゲン−GAGマトリックス浸潤を示す。NHFによるコラーゲン−GAGマトリックスの浸潤。試験切片の添加後4日間にわたり、NHFは、矢印で示すように、コラーゲン−GAGマトリックス内に、また、マトリックスに沿って付着し増殖することが観察される。
【図16−1】黄色ブドウ球菌に対する阻害領域を確認するための表面拡散バイオアッセイを用いて試験したアルコールゲル中のAISを示す。ゲルマトリックスの吸収特性により阻害領域は小さいが、ゲルマトリックスの周囲に明瞭な領域がある。
【図16−2】アルコールゲル中でのAISの安定性を示す。アルコールゲル製剤中のAISを、凍結融解サイクルを含む6週間の短期安定性試験に供し、黄色ブドウ球菌に対する阻害領域を確認するための表面拡散バイオアッセイを用いて試験した。結果は、試験期間を通じてこのゲル製剤が安定性を維持することを示唆するものであった。
【図17】AISの有効性の比較検査を示す。先に記載の要領で、AISを様々な市販の包帯カルトスタット(Kaltostat、登録商標)(Comvita)、ケンダール(Kendal、登録商標)(Telfa)およびコラーゲン−GAG(グリコサミノグリカン)マトリックスの表面上にたらし、数時間かけて包帯の中に拡散させた。切片を切り、予め黄色ブドウ球菌、大腸菌および緑膿菌を接種しておいた寒天プレート上に載せた。次に、AISを染み込ませた包帯の抗菌有効性を、アクアセル(Aquacel、登録商標)(Convatec)およびベタディン(Betadine、登録商標)(Seton)ならびに、元素としての銀およびヨウ素を含有する市販の包帯と比較した。AIS包帯は、アクアセル(登録商標)(Convatec)およびベタディン(登録商標)(Seton)、ならびに、元素としての銀およびヨウ素を使用している市販の包帯と同程度に、抗微生物的に有効である。
【図18−1】爪真菌症に対するAISの抗微生物活性を示す。AISでの処置の前に足の爪の中に存在している爪真菌症。
【図18−2】爪真菌症に対するAISの抗微生物活性を示す。AISは水を用いて詰め綿を湿らせた絆創膏で覆ってある。したがって、爪は密封包帯の中に覆われている。
【図18−3】爪真菌症に対するAISの抗微生物活性を示す。AIS処置開始48時間後の写真。このときは色が濃くなっていることから、爪の外見が変わったことは明らかである。
【図18−4】爪真菌症に対するAISの抗微生物活性を示す。AIS処置開始8週間後の写真。この写真では、感染していない爪の筋がはっきり見え、皮膚糸状菌が排除されたことが示唆される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本明細書では、「抗微生物性の」または「抗菌性の」という用語は明細書中で互換的に使用され、限定されないが、細菌、真菌、ウイルス、酵母、寄生性もしくは病原性の微生物および/またはカビを含む多様な種類の微生物に対する殺生物的または生物静力学的な活性を包含することは理解されよう。
【0014】
本明細書では、「重量で」、「重量パーセント」または「w/w%」という用語は、最終的な組成物または系の重量を指す。このw/w値は、w/vと互換的なものである。
本発明の主要な観点によれば、水溶液中にオキシドレダクターゼ酵素、オキシドレダクターゼ酵素の基質そして過酸化水素を含む、保存に安定な抗微生物性および免疫賦活性の系であって;
ここで、オキシドレダクターゼ酵素の基質は、系全体の重量を基準にして90重量%まで存在し;そして、水は、系全体の重量を基準にして20重量%まで存在し;この系がおよそ4〜8のpHを有し;そして、この系が2段階:
(a)保存に安定な内因的に生成された過酸化水素は、前記系内で即時放出用として1リットル当たり少なくとも10mgの濃度で生体利用可能である;および
(b)系の再水和により、少なくとも24時間にわたりさらなる過酸化水素の持続放出が起こる;
の過酸化水素放出をもたらす、
前記系が提供される。
【0015】
有利なことに、この系は、即時使用可能で、抗微生物活性および免疫賦活活性という二つの機能性を提供する、保存に安定な単一成分系である。さらに、本発明者は、マヌカ蜂蜜、および、銀包帯などの従来の抗微生物剤と比較した場合、本発明の系は抗微生物作用および免疫賦活作用の点で有効性が増していることを見出した。
【0016】
本発明の系の抗微生物作用は、2段階の過酸化水素放出により媒介される。有利なことに、本発明の系は、制御され、規定され、かつ再現可能な様式で、この2段階の過酸化水素放出をもたらす。
【0017】
本発明の系の主要な利点の1つは、この系が、即時放出用の保存に安定な過酸化水素を供給することである。この内因性リザーバーは、即時使用可能な過酸化水素および即時の抗微生物作用をもたらす。このことは、天然の蜂蜜および他の公知の系に勝る本発明の顕著な利点の1つである。さらに、再水和後、この系は、少なくとも24または48時間にわたる過酸化水素の持続放出を含む第2タイターの過酸化水素活性をもたらす。
【0018】
本発明のこの観点の好ましい実施形態によれば、保存に安定な内因的に生成された過酸化水素は、前記系内で即時放出用として1リットル当たり少なくとも10mg、好ましくは75mgまたは100万分の1の濃度で生体利用可能である。しかし、この系内で即時に生体利用可能な内因的に生成された過酸化水素の濃度は、系中に存在するオキシドレダクターゼ酵素の量に依存することは、理解されよう。したがって、使用するオキシドレダクターゼ酵素の濃度が高い場合には、この濃度は、系1リットル当たり10または75mgの過酸化水素よりはるかに高い可能性がある。要するに、オキシドレダクターゼ酵素および/またはオキシドレダクターゼ酵素の基質の濃度が増すと、内因性過酸化水素のプールは増す。例えば、本発明者は、系100g当たりおよそ175Uのオキシドレダクターゼ酵素は、1リットル当たりおよそ10mgの過酸化水素の内因性プールを発生させることを見出した。さらに、系100g当たりおよそ1400Uのオキシドレダクターゼ酵素は、1リットル当たりおよそ25mgの過酸化水素の内因性プールを発生させる。
【0019】
系中に存在する、過酸化水素のこの最初の内因性リザーバーは保存に安定であり、そして第2段階の過酸化水素が放出されるまで系中に残留する。この保存安定性という面は、本発明の別の利点である。本出願に関して言えば、保存に安定な、とは、内因的に生成された過酸化水素がおよそ3カ月〜最大およそ36カ月までの期間にわたり系内に維持されることを意味する。さらに、この系は、この期間中は分解もしくは分離せず、または活性を失わない。通常条件下でのこの系の予想される貯蔵寿命は、およそ36カ月である。さらに、例えば放射線照射による滅菌に供した場合にも、この系の品質または活性は低下しない。
【0020】
本発明の系を使用または適用すると、第2段階の過酸化水素が放出されるが、このとき、系の再水和によって生成される持続放出の過酸化水素の濃度は、1リットル当たり少なくとも10mg、好ましくは20mgの過酸化水素、または100万分の1である。また、発生する持続放出の過酸化水素の濃度は、系中に存在するオキシドレダクターゼ酵素および/またはオキシドレダクターゼ酵素の基質の量に依存することになる。本発明者は、有利なことに、所定の期間の後、および、それに次ぐ希釈/再水和後では、持続放出の過酸化水素の量は、天然の蜂蜜中に存在する量を上回ることを見出した。さらに、本発明者は、有利なことに、本発明の系中のさらなる過酸化水素の持続放出が、48時間とは言わないまでも少なくとも24時間にわたって起こることを見出した。
【0021】
一般に、本発明の系の免疫賦活作用は、全体的にインターロイキン−1によって媒介される。本発明の系は、皮膚細胞からのインターロイキン−1(IL−1)の放出を促進する。IL−1は、マクロファージ、単球および樹状細胞によっても分泌されるサイトカインである。それは、感染に対する体の炎症応答の重要な一部である。それは、内皮細胞上の接着因子の発現を増やして感染部位への白血球の遊出を可能にする。さらにそれは、脳の体温調節中枢にも作用して、発熱の形での体温上昇を引き起こす。そのため、それは内因性発熱物質と呼ばれる。体温上昇は、体の免疫系が感染と戦うのを助ける。これは、系の抗微生物活性を増大させる、炎症性免疫応答の初期段階である。炎症応答は、可能性のある感染に対するその防御を通じて、また、細胞および組織の修復および再生に関与することにより、創傷治癒において中心的な役割を果たす。本発明の系の抗微生物作用は、損傷した組織および/または細胞の再生および修復を助長する免疫賦活作用により助長され、補完される。
【0022】
本発明の系は、本発明者の研究による予想外の知見に基づくが、この知見は、当技術分野で受け入れられている認識に反するものである。本発明者は、マヌカ蜂蜜の抗微生物活性/抗菌活性にUMFは関与していないこと、また、希釈または未希釈のマヌカ蜂蜜中には検出可能な内因性過酸化水素は存在しないことを立証した。本発明者は、グルコースオキシダーゼ経路は、マヌカ蜂蜜を最初に適用した時点では作動せず、一定期間が経過した後で蜂蜜が希釈されてからのみ作動して抗微生物作用をもたらすことを見出した。当分野における共通認識に反し、本発明者は、マヌカ蜂蜜の抗微生物的な有効性には、おそらく、増殖を制限する有効水分含有量、著しく低い初期pH、および、グルコース−グルコースオキシダーゼ経路のみを経由した過酸化水素の生成により媒介されると結論する。
【0023】
本発明の系は、これらの新規かつ予測できない発見を利用し、そして制御され、規定され、かつ再現可能なレベルの抗微生物活性をもたらす系を供給し、そして天然の蜂蜜製品を超える、活性における顕著な違いおよび増加を示す。したがって、本発明の系は、ばらつき、活性、粘性、および、アレルギー反応を引き起こす可能性のある付加的な成分に関して、天然の蜂蜜製品、マヌカ蜂蜜に伴う多くの欠点を克服する。
【0024】
本発明の系から得られる付加的な利益は、活性成分および賦形剤成分の量を変化させることが可能なことであり、それにより多様な強度および特性を有する様々な製剤の製造が可能である。このことは、所望の標的部位のpHの最適化が可能であることを含む。
【0025】
さらに、本発明の系は、現行の医薬品製造適正基準(cGMP)の要件に沿った、安全性および有効性、バッチ一貫性、効力定量、およびより高度な不純物の制御に関する高度の品質管理を可能にする。
【0026】
その規定された組成により、アレルギー反応を引き起こさないであろうということも、本発明の系のさらなる利点である。有利にも、このことは、薬理活性製品についてのEU法により要求される正確な取扱説明表示が可能にする。
【0027】
理想としては、オキシドレダクターゼ酵素は、以下のグルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、グリコレートオキシダーゼおよび/またはアミノ酸オキシダーゼの1つ以上から選択される。それぞれのオキシドレダクターゼ酵素が特異的な基質に作用することは理解されよう。これらのオキシドレダクターゼ酵素に対応する基質は、それぞれ、D−グルコース、ヘキソース、コレステロール、D−ガラクトース、ピラノース、コリン、ピルビン酸、グリコレートおよび/またはアミノ酸である。1つ以上のオキシドレダクターゼ酵素と、オキシドレダクターゼ酵素の1つ以上の基質との混合物を使用し得ることは理解されよう。
【0028】
好ましくは、オキシドレダクターゼ酵素はグルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよび/またはピラノースオキシダーゼであり、そしてオキシドレダクターゼ酵素のそれぞれの基質は、D−グルコース、ヘキソース、D−ガラクトースおよび/またはピラノースである。
【0029】
本発明のこの観点の好ましい実施形態によれば、オキシドレダクターゼ酵素はグルコースオキシダーゼであり、基質はD−グルコースである。
理想としては、水は、系全体の重量を基準にしておよそ10重量%〜およそ20重量%の濃度で系中に存在する。より好ましくは、水は、系全体の重量を基準にしておよそ10重量%〜およそ15重量%の濃度で存在してよい。最初に系中に存在する水の量は、本発明のきわめて重大な観点である。過剰な水はグルコースオキシダーゼの加水分解を引き起こす可能性があることから、過剰な水の添加は系中での不安定性につながる恐れがあり、そのため、水は、規定のパラメーター内で最初にのみ存在することが重要である。また、この系は、Hの発生、適用の容易性を可能にするのに十分な、かつ、保管中の糖の沈殿を防止するのに十分な水を必要とする。
【0030】
理想としては、オキシドレダクターゼ酵素は、系100g当たり少なくとも10Uの活性量で系中に存在する。一般的に言えば、1単位(U)は、25℃およびpH7.0で1分当たり1マイクロモルのグルコースの酸化を引き起こす酵素の量である。必要に応じ基質を触媒して過酸化水素を形成するだけの十分なオキシドレダクターゼ酵素が存在しなくてはならないことは理解されよう。好ましくは、オキシドレダクターゼ酵素は、系100g当たり少なくとも100U、1400U、またはさらに言えば5600Uの活性で系中に存在する。
【0031】
理想としては、前記請求項のいずれかに記載の系は、およそ4〜8、好ましくは5〜7、より好ましくはおよそ5.5のpHを有する。このpHは重要であって、その理由は、それは本発明の多くの処置的な観点、例えば創傷治癒において決定的に重要な役割を果たし、そして、pHにより、オキシドレダクターゼが最適活性に必要な適切な条件を確実に有することにもなるからである。例えば、マヌカ蜂蜜は、4前後の変動しやすいpHを有する。このpHは、オキシドレダクターゼ酵素の最適活性には適しておらず、創傷を処置するときには望ましくないであろう。したがって、pHの操作が可能であることは、本発明が有する非常に望ましく重要な利点である。有利なことに、本発明の系のpHは、特定の用途に必要なpHに設定し得る。pHを操作するには、緩衝剤を使用してよい。場合により、この系は、緩衝剤、好ましくは炭酸−炭酸水素塩、および/または、リン酸/リン酸水素二ナトリウムをさらに含む。好ましくは、緩衝剤をこの系の水中に予め溶解させて、系の水の一部を置換する。所望のpHに依存して、異なる濃度の緩衝剤を使用できる。
【0032】
さらに場合によっては、この系は、追加の糖を含んでよい。「追加の糖」という用語により、本発明者は、「オキシドレダクターゼ酵素の基質」という用語で包含されない糖を意味する。この場合、追加の糖は、系全体の重量を基準にして5重量%〜80重量%、好ましくは10〜70重量%存在してよい。
【0033】
理想としては、追加の糖は、オキシドレダクターゼ酵素の基質との組合せで、追加の糖対基質がおよそ10:1〜0.01:1、好ましくは3.5:1〜0.05:1の比率で存在する。好ましい上限比率である3.5:1は、オキシドレダクターゼ酵素の基質の最低含有量20%、最低含水量10%および追加の糖の最大含有量70%に基づくものである。好ましい下限比率である0.05:1は、オキシドレダクターゼ酵素の基質の最大含有量85%、最低含水量10%および追加の糖の含有量5%に基づくものである。
【0034】
したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、オキシドレダクターゼ酵素の基質、好ましくはグルコースは20〜85w/w%存在し、そして追加の糖、好ましくはスクロース、フルクトースおよび/またはマルトースは5〜70w/w%存在する。少なくとも10w/w%の水が存在する。
【0035】
本発明のこの観点の別の好ましい実施形態では、追加の糖は以下のスクロース、フルクトースおよび/またはマルトースから1つ以上選択してよい。理想としては、オキシドレダクターゼ酵素の基質、好ましくはグルコースまたは他の任意の適当な基質、および追加の糖は、以下の範囲で系中に存在する(系全体の重量を基準とする)。
【0036】
【表1】

【0037】
理想としては、フルクトース:オキシドレダクターゼ酵素の基質:マルトース:スクロースの比率は、およそ1.5:4:2:1〜およそ3.5:4:1:0.1である。好ましい比率は、およそ4.5:4:1:1.7である。
【0038】
本発明のこの観点の別の実施形態では、この系は、少なくとも1種の粘性調節成分をさらに含んでよい。理想としては、粘性調節成分は、以下から選択される:
メチルセルロース
カルボキシメチルセルロース
ヒドロキシプロピルメチルセルロース
ヒドロキシエチルセルロース
ヒドロキシプロピルセルロース
カルボポル(Carbopol)
ポリビニルアルコール
ポリビニルピロリドン
水素添加植物油
キサンタンゴムおよび他の天然ゴム
ポリエチレングリコール(低分子量および高分子量)
パラフィン(流動、半固形および固形)および/または
グリセロール。
【0039】
他の従来の粘性調節成分を使用してもよい。
場合により、粘性調節成分は、先に定義した追加の糖であってもよい。例えば、追加の糖の比率を変化させた結果、これに対応して系の粘性が増加または減少することがある。
【0040】
この系の特定の用途に必要な必須の物性を提供するために追加の糖および/または粘性調節成分を加えることは理解されよう。例えば、この系を局所使用する場合、系は適用表面に接着するだけの十分な粘性を有していなければならない。この場合、粘性調節成分を使用し、および/または存在する追加の糖の比率を調節することが望ましいと考えられる。別の場合には、この系が有効な乳房内用製剤であるように、粘性を調節することが有利であることもある。
【0041】
本発明のこの観点の好ましい実施形態によれば、水溶液中にグルコースオキシダーゼ、D−グルコースおよび過酸化水素を含む保存に安定な抗微生物性および免疫賦活性の系であって;
組成物全体の重量を基準にしてD−グルコースが90重量%まで、好ましくは85重量%存在し、水が20重量%まで存在し;この系がおよそ4〜8のpHを有し;そして、この系が2段階:
(a)系内に1リットル当たり少なくとも10mgの濃度で含まれる保存に安定な内因的に生成された過酸化水素は、前記系内で即時放出用として生体利用可能である;および
(b)系が再水和されると、少なくとも24時間にわたりさらなる過酸化水素の持続放出が起こる;
の過酸化水素放出をもたらす、
前記系が提供される。
【0042】
本発明のこの観点の別の実施形態では、保存に安定な単一成分の抗微生物性および免疫賦活性の系であって、
a.およそ10:1〜およそ5:1の比率でグルコースを含む糖と水の飽和溶液であり、ここで、水は組成物全体を基準にして20重量%まで存在し;
b.およそ0.01重量%〜1重量%のグルコースオキシダーゼ;そして、
c.内因的に生成された即時放出用の過酸化水素;
を含み、
ここで、この組成物がおよそ4〜8のpHを有し、過酸化水素の生体利用可能性が系中で維持され、そして再水和によってさらなる過酸化水素の持続放出が起こる、
前記系が提供される。
【0043】
本発明の系は、限定されないが、液体製剤、固形または半固形製剤を含む多くの異なる物理的形態であってよい。固形または半固形製剤を調製するためには、この系の成分を操作して、含水量を減らし他の成分の含有量を増やすべきである。
【0044】
本発明の系は液体製剤の形態であってよい。液体製剤としては、限定されないが、シロップ、ペースト、スプレー、ドロップ、軟膏、クリーム、ローション、オイル、塗布剤および/またはゲルが挙げられる。典型的なゲルとしては、イソプロパノールゲル、エタノールゲルもしくはプロパノールゲルおよび/またはヒドロゲルなどのアルコールゲルが挙げられる。
【0045】
あるいは、本発明の系は、固形または半固形製剤の形態であってよい。固形または半固形製剤としては、限定されないが、カプセル、ペレット、ゲルカップ、ヒドロゲル、錠剤、ピルール(pillules)および/または球剤が挙げられる。従来の薬剤送達に使用される他の手段を採用でき、例えば、リポソーム送達を企図してよい。
【0046】
本発明のこの観点の好ましい実施形態によれば、本発明の系を少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤またはアジュバントと共に含む医薬組成物が提供される。
別の実施形態によれば、本発明の系または医薬組成物を含む包帯が提供される。そのような包帯としては、ガーゼ、絆創膏、フィルム、ゲル、Lyofoam(登録商標)などの泡剤、Granuflex(登録商標)などの親水コロイド、Kaltostat(登録商標)(Comvita)などのアルギン酸塩、Intrasite Gel(登録商標)などのヒドロゲル、および多糖ペースト、顆粒ならびにビーズが挙げられる。
【0047】
特定の実施形態によれば、この系は創傷用包帯のマトリックスと共に存在してよい。理想としては、この系対創傷用包帯のマトリックスの比率はおよそ1:1であってよいが、他の比率も考えられる。創傷用包帯のマトリックスは、コラーゲンまたはコラーゲン−GAG(グリコサミノグリカン)のマトリックスであってよい。
【0048】
本発明の系または医薬組成物は、多くの異なる投与用の形態で存在してよいことは理解されよう。このような形態としては、限定されないが、局所投与、経腸投与または非経口投与に適合した形態が挙げられる。
【0049】
局所投与に適した形態としては、局所用の軟膏、クリーム、ローション、オイル、塗布剤、液体および/またはゲルが挙げられる。例えば、本発明の系は、皮膚上、鼻腔内、経眼および/または点耳により適用してよい。本発明のこの観点の特定の実施形態は、乳房内投与に適合した形態の本発明の系または医薬組成物を提供する。この場合、本発明の系または医薬組成物は、乳頭管経由で送達される、ティートシール(teat seal)または乳房内デポー剤の一部としての送達に適合させてよい。さらなる組成物をティッシュ、絆創膏または包帯として適合させてもよい。これは、乳腺炎などの感染症の処置にとりわけ有利であり、そして医学上および獣医学上の両方の用途を有する。
【0050】
局所投与に適した別の形態としては、系または組成物が溶解性のフィルムストリップ経由の送達に適合した形態の本発明の系または医薬組成物が挙げられる。この場合、本発明の系は、適用されると溶解する。
【0051】
経腸投与としては経口投与が挙げられるが、これに限定されない。他の経腸投与用の形態としては、坐薬および浣腸剤が挙げられる。経口投与に適した形態としては、カプセル、ペレット、ゲルカップ、錠剤、ピルール、球剤、ロゼンジ、デンタルフロス、歯磨き剤、マウスウォッシュ、溶解性のフィルムストリップ、および/または、マウスガードの一部としての送達に適合したものが挙げられる。この観点の実施形態によれば、この系または医薬組成物は、制御放出または持続放出による送達に適した形態である。例えば、経口投与用の形態は、制御放出または持続放出による送達をもたらすための腸溶コーティングを施されていてよい。この持続放出の観点は、家禽のカンピロバクター感染症の処置およびウシのクリプトスポリジウム感染症の処置のために重要である。
【0052】
非経口投与用の形態としては注入剤が挙げられるが、これに限定されない。例えば、この系は乳房内投与による注入に適合させてよい。これは、乳腺炎の処置のためにとりわけ有用である。この手段による乳房内注入は、適切な大きさ、例えばおよそ1.0mmのノズルを備えた管または注射器を使用して乳頭管中に直接注入することを含む。この場合の注入は、体腔中または膿瘍中に向けて行われる。
【0053】
本発明の別の観点によれば、この系は、化粧品組成物の形態および化粧品組成物として共に使用するための形態で存在してよい。理想としては、本発明の系は、少なくとも1種の適当な化粧品用の賦形剤またはアジュバントと共に存在する。そのような化粧品用の賦形剤またはアジュバントは、当技術分野では従来的なものである。
【0054】
化粧品用途は、多くの異なるパーソナルケア用途を包含する。理想としては、このような種類の用途のために、この系は局所適用に適合した形態で提供されてよいが、前述した他の投与形態を企図してもよい。
【0055】
そのような化粧品用途としては、髪の状態の処置または体臭の処置が挙げられるが、これらに限定されない。髪の状態としてはフケが挙げられ、本発明の系は頭皮中に蓄積する死んだ皮膚を除去する。さらに、フケは微生物感染症の側面を有することもあるので、本発明の系は、根底にある微生物感染症を処置することもできる。このような微生物感染症の観点については、より詳細に以下で考察する。本発明の系は、体臭を制御するため、および、体臭の問題を引き起こすか、またはそれを悪化させる、関連する任意の微生物感染を制御するための過酸化水素の従来の使用に代わるものとして使用してよい。加えて、この系は、皮膚の状態、例えばにきびの処置に使用してもよい。この観点を、以下に説明する。
【0056】
さらに、この系は、予防用の手の保護溶液または手の殺菌剤溶液の形態で提供されてもよい。そのような手の保護溶液は、クリーム、ローション、ヒドロゲルなどの形態で提供してよく、微生物感染症の予防的防止のための有利な特性を有する手洗い剤タイプの製品として使用される。
【0057】
別の化粧品用途としては、歯のホワイトニング方法における本発明の系の使用が挙げられる。従来の歯のホワイトニングは、過酸化水素または漂白剤の溶液を歯の外側表面に、通常は歯科医の監督下で適用することを含む。過酸化物が歯に浸透するため、歯の色が薄くなる。有利なことに、本発明の系は、溶解性のフィルムストリップ、デンタルフロス、歯磨き剤、マウスウォッシュ経由の経口送達に適合した形態、および/またはマウスガード経由の送達に適合した形態で提供される。このような手段による送達は、過酸化水素が本発明の系から放出されることにより、歯の薄色化を容易にする。本発明の系は、歯のホワイトニングにとって理想的な、過酸化水素の持続放出を提供する。さらに、この系は水和されて容易に寛容されることから、過酸化水素そのものを用いる従来のホワイトニング系に伴う欠点を克服する。
【0058】
したがって、本発明の系は、多くのパーソナルケア用途で使用される漂白剤の使用に代わる代替的な過酸化水素源として使用し得る。
本発明の第2の観点によれば、処置方法における使用のための本発明の系または医薬組成物が提供される。
【0059】
本発明の実施形態によれば、微生物感染症の処置方法における使用のための本発明の系または医薬組成物が提供される。さらに、本発明の系または医薬組成物は、そのような微生物感染症の予防的防止において使用してもよい。
【0060】
さらに、また、本発明の別の実施形態によれば、損傷した組織および/または細胞を含む、組織および/または細胞の再生および/または修復のための本発明の系または医薬組成物が提供される。本発明の系または医薬組成物が、理想としてはインターロイキン−1(IL−1)の放出を刺激することにより免疫応答を高めることは理解されよう。本発明の系または医薬組成物の免疫賦活特性は、損傷した組織および/または細胞の刺激、再生および修復に関与する。この細胞としては皮膚細胞が挙げられるが、これに限定されないことは理解されよう。
【0061】
本発明の系または医薬組成物は、抗微生物性および免疫賦活性の両方を有するという点において二重の機能性を提供する。有利なことに、この二重の機能性により、この系を広範な処置的および予防的な用途のために使用することが可能である。
【0062】
理想としては、本発明の系を使用して処置できる微生物感染症は、過酸化水素により処置できる任意の微生物感染症である。
微生物感染症は、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、抗酸性細菌、ウイルス、酵母、寄生性または病原性の微生物および/または真菌により引き起こされるものであってよいことは理解されよう。抗酸性細菌としては、TBを引き起こすヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)などのミコバクテリア(Mycobacteria)が挙げられる。そのような微生物感染症は、限定されないが、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)、A群ベータ溶血性連鎖球菌(Beta haemolytic Streptococci Group A)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)および/またはヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)により引き起こされるものであってよい。
【0063】
また、微生物感染症は、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)という、アピコンプレクサ門の原生動物病原体により引き起こされることもある。クリプトスポリジウムは、クリプトスポリジウム症と呼ばれる下痢性疾患を引き起こす。本出願により包含される他のアピコンプレクサの病原体としては、マラリア寄生虫のプラスモジウム(Plasmodium)、および、トキソプラズマ症の原因病原体のトキソプラズマ(Toxoplasma)が挙げられる。
【0064】
有利なことに、本発明は、MRSA、または他の抗生物質耐性の微生物および細菌の処置または予防的防止において使用し得る。したがって本発明は、抗生物質耐性の微生物株が発生する問題を無毒性の様式で克服する。さらに、本発明者は、実施例に示すような、耐性を生じるナイシンの適用とは対照的に、本発明の系に対する一切の耐性を観察しなかった。このことは、従来の系に勝り上回る、本発明の主要な利点である。この用途については、本発明の系または医薬は、例えば局所用の軟膏、クリーム、ローション、オイル、塗布剤、液体および/またはゲルとして局所投与してよい。場合により、本発明の系または医薬は、ティッシュまたは皮膚拭きの一部として投与してもよい。この種の投与は、MRSA感染症およびMRSAタイプの感染症の予防的防止において重要と考えられる。
【0065】
微生物感染症は、口腔、眼および/または耳の感染症であってよい。口腔感染症は、歯肉疾患、口腔潰瘍および/または口腔衛生障害であってよい。口腔衛生障害は、口臭および/または歯肉炎であってよい。あるいは、口腔感染症は、咽喉感染症、または鼻のブドウ球菌感染症など鼻の感染症であってよい。眼の感染症としては、結膜炎を挙げ得る。
【0066】
別の病態は、湿性および/または乾性の乳腺炎を含む乳腺炎である。乳腺炎は、ヒトおよび動物の両方において重要な病態であり、損傷した皮膚、乳頭管の遮断物を通した微生物感染、または感染表面との接触が最初の原因である。とりわけ、乳腺炎は酪農業界にとってとてつもなく大きい経済上の重要性を有するが、これは、現在の抗生物質療法は処置終了後に最大4日間は食品流通網に乳を乗せることを控えなければならないことを要求するからである。このため、乳の収量が大きく減少することになる。したがって、従来の抗生物質療法に代わる療法の評価が現在行われている。乳腺炎において見られる一般的な原因微生物としては、以下が挙げられる:
− 黄色ブドウ球菌
− 白色ブドウ球菌
− 連鎖球菌種
− 大腸菌
− サルモネラ菌種
− ヒト結核菌
− 真菌性の乳腺炎−カンジダ・アルビカンスおよびクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)。
【0067】
本発明者は、有利なことに、本発明の系または医薬組成物を乳腺炎の処置に使用できることを見出した。そのような処置は、抗生物質の使用を含まない。そのこと自体、酪農業界にとって相当に重要である。先に詳細に説明したように、本発明の系または医薬組成物は、乳房内投与に適合した形態で、例えばティートシール、ティッシュ、皮膚拭き、絆創膏もしくは包帯の一部としての送達に適合した形態、または乳房内注入に適した形態であってよい。
【0068】
さらに、微生物感染症は、皮膚および/または爪の感染症であってもよい。
あるいは、本発明の系または医薬組成物は、真菌性の皮膚感染症および/または真菌性の爪感染症の処置に使用してもよい。真菌性の皮膚感染症としては、ヒトでは、水虫および/または白癬が挙げられる。獣医学においては、真菌性の皮膚の病態としては、腐蹄症、白癬、および、人畜共通感染性の皮膚感染症の制御が挙げられる。真菌性の爪感染症としては、爪真菌症が挙げられる。
【0069】
さらに、本発明の系または医薬組成物は、皮膚障害の処置に使用してもよい。皮膚障害は、にきび、湿疹および/または乾癬であってよい。有利なことに、本発明者は、本発明の系は従来の抗にきび療法と同程度に有効であることを見出した。にきびおよび湿疹は、この系が処置する微生物感染症の要素を有していてもよいことは理解されよう。さらに、引掻き傷により引き起こされる乾癬病変部の二次的な微生物感染症も、本発明の系により処置できる。本発明の系の免疫賦活作用は、損傷した組織または皮膚細胞の再生および修復を助長することもできる。
【0070】
本発明の別の実施形態によれば、この系または医薬組成物は、創傷の処置および/または創傷敗血症の処置または管理など、創傷ケアの方法において使用してよい。創傷は、急性創傷、慢性創傷、外科的創傷、慢性熱傷および/または急性熱傷であってよい。本発明のこの観点は、微生物感染症の処置、ならびに損傷した組織および細胞、好ましくは皮膚細胞の再生/修復の両方を含む。この観点の特定の実施形態は、瘻孔管理の方法における本発明の系または医薬組成物の使用を含む。瘻孔は、人工肛門形成術、回腸瘻造設術、空腸瘻造設術および/または胃瘻造設術の結果生じたものであってよい。別の実施形態は、糖尿病性の潰瘍または創傷の処置を含む。
【0071】
あるいは、本発明の系または医薬組成物は、創傷敗血症の予防的防止において使用してよい。
本発明の系を獣医学的用途およびヒト用途の両方において使用し得ることは理解されよう。
【0072】
これらの特定のヒト用途の多くは、先に説明してきた。しかし、上述のように、本発明の系または医薬組成物は、微生物感染症全般の処置、ならびに皮膚障害の処置または管理、創傷ケアおよび/または熱傷の処置において使用してよい。創傷および熱傷の処置または管理は、本発明の系の抗微生物作用および免疫賦活作用の両方に関連するものであってよい。
【0073】
重要な獣医学的用途は、微生物感染症の処置および創傷ケアの処置もしくは管理および/または熱傷処置も含む。しかし、特定の病態としては、ウシまたは他の家畜における湿性および乾性の乳腺炎、犬の慢性皮膚感染症(皮下のブドウ球菌感染症)、外耳炎(耳の感染症)、動物の口腔ケア、鶏のカンピロバクター感染症、ブタ、家禽およびウシのコリオシス(coliosis)、腸の微生物感染症、クリプトスポリジウム感染症、人畜共通感染症の排除、創傷用包帯(例えば角の除去)および膿瘍処置が挙げられる。本発明は、食品流通網内に抗生物質を導入せずに微生物感染症の処置を可能にすることから、獣医学上の使用において特に利点を有する。
【0074】
本発明の第3の観点によれば、微生物感染症の処置用の医薬または微生物感染症の予防的防止用の医薬を製造するための本発明の系または医薬組成物の使用が提供される。
さらに、損傷した組織および/または細胞を修復および/または再生するための医薬を製造するための本発明の系または医薬組成物の使用も提供される。本発明の系または医薬組成物は、理想としては、先述のように、インターロイキン−1(IL−1)の放出を刺激することにより免疫応答を高める。
【0075】
微生物感染症は、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、抗酸性細菌、ウイルス、酵母、寄生性または病原性の微生物および/または真菌により引き起こされるものであってよい。抗酸性細菌としては、TBの原因となるヒト結核菌などのミコバクテリアが挙げられる。そのような微生物感染症は、先述のように、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、カンジダ・アルビカンス、プロピオニバクテリウム・アクネス、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌、A群ベータ溶血性連鎖球菌、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・ジェジュニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、ボトリティス・シネレア、ヒト結核菌および/またはクリプトスポリジウムにより引き起こされるものであってよいが、これらに限定されない。
【0076】
本発明で使用する場合の「微生物感染症」という用語は、先に定義した。また、このような種類の感染症の具体例も、先に述べた。微生物感染症は、口腔、眼および/または耳の感染症であってよい。口腔感染症は、歯肉疾患、口腔潰瘍および/または口腔衛生障害であってよい。口腔衛生障害は、口臭および/または歯肉炎であってよい。あるいは、口腔感染症は、咽喉感染症、または鼻のブドウ球菌感染症など鼻の感染症であってよい。眼の感染症としては、結膜炎を挙げ得る。あるいは、微生物感染症は、皮膚および/または爪の感染症であってもよい。あるいは、微生物感染症は、水虫および/または白癬など、真菌性の爪および/または皮膚の感染症であってよい。
【0077】
別の好ましい実施形態としては、湿性および/または乾性の乳腺炎を含む乳腺炎の処置が挙げられる。
また、皮膚障害を処置するための医薬を製造するための本発明の系または医薬組成物の使用も提供される。皮膚障害は、にきび、湿疹および/または乾癬であってよく、それらは微生物成分を有していてよい。
【0078】
さらに、創傷を処置するための医薬および/または創傷敗血症の処置用または管理用の医薬を製造するための本発明の系または医薬組成物の使用も提供される。創傷は、急性創傷、慢性創傷、外科的創傷、慢性熱傷および/または急性熱傷であってよい。さらに、瘻孔の管理用の医薬を製造するための本発明の系または医薬組成物の使用も提供される。瘻孔は、人工肛門形成術、回腸瘻造設術、空腸瘻造設術および/または胃瘻造設術の結果生じたものであってよい。
【0079】
加えて、創傷敗血症の予防的防止における使用のための医薬を製造するための本発明の系または医薬組成物の使用も提供される。
先述のように、微生物感染、皮膚障害、創傷または他の障害が、本発明の系または医薬組成物の局所投与、経腸投与および/または非経口投与を含む方法により処置されることは理解されよう。
【0080】
本発明の第4の観点によれば、有効量の本発明の系または医薬組成物を局所、経腸および/または非経口の投与様式により患者の感染部位に適用するステップを含む、微生物感染症を処置するための、ならびに/または、患者の組織および/もしくは細胞の修復および/もしくは再生のための方法が提供される。
【0081】
また、本発明で使用する場合の「微生物感染症」という用語は先に定義してあり、このような種類の感染症の具体例は先述してあり、本発明のこの観点に適用可能である。この方法は、先述のように、皮膚障害、創傷の処置、および/または創傷敗血症の処置もしくは管理に関連するものであってもよい。
【0082】
本発明の第5の観点によれば、本発明の系は、水などの組成物、または屋外用手術器具などの製品の滅菌のために使用し得ることは理解されよう。したがって、本発明の系は、キャンプでの使用および非常時の使用などの用途における水の除染または器具の滅菌において使用し得る。
【0083】
本発明の第6の観点によれば、水溶液中にオキシドレダクターゼ酵素、オキシドレダクターゼ酵素の基質、および過酸化水素を含む保存に安定な抗微生物性および免疫賦活性の本発明の系の製造方法であって、
a.少なくとも60℃、好ましくはおよそ75℃〜95℃の温度に水を加熱するステップ;
b.この加熱した水にオキシドレダクターゼ酵素の基質を加えて水−糖溶液を形成するステップ;
c.この水−糖溶液をおよそ40℃以下の温度に冷却して酵素活性を保持させるステップ;
d.攪拌しながらステップ(c)の水−糖溶液にオキシドレダクターゼ酵素を加えてあらかじめ決定された制御比率で過酸化水素を形成させるステップ;そして、
e.ステップ(d)の結果得られる混合物を室温に冷却して、生体利用可能で保存に安定な内因的に生成された過酸化水素を1リットル当たり少なくとも10mgの濃度で即時放出用として含む系を作製するステップ;
を含む、
前記方法が提供される。
【0084】
糖を無制御状態で加熱処理すると、カラメル化を生じ、その結果、黄色から褐色の色合いを獲得する製剤が生じる傾向がある。カラメル化を排除し、それにより清澄な材料を作製するために上述の製造法は開発されたものであり、この方法では、糖の添加と、加熱によるその溶解の順序が、カラメル化の過程を回避するように慎重に選択される。
【0085】
好ましくは、この方法は、緩衝剤を系に加えて、およそ4〜8、好ましくは5〜7、より好ましくは5.5のpHを達成するさらなるステップを含む。緩衝剤は、ステップ(d)の間またはその後に加えてよい。
【0086】
理想としては、オキシドレダクターゼ酵素は、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、グリコレートオキシダーゼおよび/またはアミノ酸オキシダーゼであり、オキシドレダクターゼ酵素の基質は、D−グルコース、ヘキソース、コレステロール、D−ガラクトース、ピラノース、コリン、ピルビン酸、グリコレートおよび/またはアミノ酸である。
【0087】
好ましい実施形態によれば、オキシドレダクターゼ酵素はグルコースオキシダーゼであり、オキシドレダクターゼ酵素の基質はD−グルコースである。
場合により、先に定義した追加の糖を、ステップ(b)で系に加えてよい。この追加の糖は、スクロース、フルクトースおよび/またはマルトースの1つ以上を含んでよい。
【0088】
理想としては、1つ以上の糖を加える際、前の糖がステップ(a)の水の中で完全に溶解した後で各糖を連続的に加える。
本発明のこの観点の実施形態によれば、糖は以下の順序で加える:フルクトース、グルコース、マルトースおよびスクロース。次の糖を加える前に、およそ90℃に加熱することにより、各糖は水中で完全に溶解する。あるいは、糖は、上述の要領で、しかしおよそ−0.5Barの真空下で、調製することもできる。この真空が糖の沸点を90℃以下の温度に下げ、これにより変色を防止する。
【0089】
場合により、上述の方法の間に、少なくとも1種の粘性調節成分を系に加えてよい。理想としては、この粘性調節成分は、ポリエチレングリコール、グリセロールおよび/または流動パラフィンから選択される。他の従来の粘性調節成分を企図してもよい。
【0090】
本発明の別の特定の観点は、本発明による単一成分の抗微生物性の系の製造方法であって、
a.好ましくはおよそ85+/−10℃に水を加熱するステップ;
b.この加熱した水にグルコース、スクロース、フルクトース、マルトースを加えるステップであり、ここで、各糖を予め規定した順序で、好ましくは連続的に、前の糖がステップ(a)の水の中で完全に溶解した後でのみ加えるステップ;
c.この水−糖溶液を、酵素活性の保持を可能にする温度、好ましくはおよそ40℃以下に冷却するステップ;
d.攪拌しながら、オキシドレダクターゼ酵素をステップ(c)の溶液に加えて、あらかじめ決定された制御比率で過酸化水素を形成するステップ;そして、
e.結果として得られる混合物を室温に冷却して、生体利用可能な過酸化水素を含む粘性のある溶液を作製するステップ;
を含む、
前記方法を提供する。
【0091】
上述の方法により本発明の系を一旦作製したら、本発明の系を不透明で不浸透性の容器中に詰めてよい。こうすることにより過酸化水素のさらなる生成を防止し、それは、好気的雰囲気中にあるときにのみ発生再開できる。
【0092】
上述の方法により生み出される系は、液体溶液、固形または半固形製剤であってよい。製造後、次いでこの系を、所望の最終製品、すなわち先に考察した異なる投与形態に適した固形または半固形形態などの投与用の形態に加工してよい。例えば、この系は、投与に適したゲル形態を得るために、アルコールゲルと組み合わせてよい。また、この系は、多様な市販の包帯上に組み込んでもよい。
【0093】
さらに、この系は、例えば放射線照射による製造後滅菌に供してもよい。このような製造後滅菌により、本発明の系に悪影響が及ぶことはない。
ここで、以下の図を参照しながら、以下の非限定的な実施例により本発明を例証する。
【実施例】
【0094】
一般的な材料および方法
マヌカ蜂蜜:
Manuka Care18+(登録商標)(Comvita)またはMedihoney(登録商標)を、栄養ブロス中の50%v/vとして調製した。この50%v/v調製物の2分の1希釈物を栄養ブロス中で連続的に11種類作製し(最低濃度を0.01%とした)、微生物阻害試験に使用した。
【0095】
糖:
(D+)グルコース、D(−)フルクトース、(D+)マルトースおよび(D+)スクロース(Sigma Aldrich)
【0096】
グルコースオキシダーゼ:
ISの製造には、0.5%グルコースオキシダーゼ粉末(5600U/100g)を使用した。
グルコースオキシダーゼ240U/mg(Biozyme UK)(1Uは、25℃およびpH7.0で1分当たり1マイクロモルのグルコースを酸化させる分の酵素の量である)およびグルコースオキシダーゼ100U/mg〜250U/mg(シグマ・アルドリッチ)(1Uは、pH5.1、35℃で1分当たり1.0モルのD−グルコースをD−グルコノラクトンおよびHに酸化させる)も、以下の実施例で使用した。
【0097】
pH調整:
マヌカ蜂蜜の50%v/v溶液は1MのNaOHを用いてpH6.5にpH調整し、グルコースオキシダーゼを含有しない糖混合物の試料は1MのHClを用いてpH3.8にpH調整した。pH計(Hanna Instruments HI 931410)を用いてpHを測定した。
【0098】
単一の糖の調製物:
グルコースのみ、フルクトースのみおよびスクロースのみの50%w/v溶液を調製し、マヌカ蜂蜜と同様の様式で連続的に希釈した。
【0099】
含水量および有効水分量(Aw)の測定:
Carl Fisherの滴定装置(スイス)を用いて含水量の定量を行った。Aqua LabのAw計、モデルシリーズ3TE、Decagon Devices Inc.、Pullman、Washington(Glanbia Innovation Centre、Kilkennyの厚意による)を用いて、Awの定量を行った。
【0100】
アッセイ:
Merckoquantの試験ストリップ(番号10011、Merck、ドイツ)を用い、(Kerkvliet、1996およびSerranoら、2004)の方法に従って、過酸化水素を定量した。
【0101】
の除去:
普通のpHのマヌカ蜂蜜希釈物(最初のpH4)およびpH調整したマヌカ蜂蜜希釈物(最初のpH6.8)に、Taorminaら、AllenらおよびMolanら、1988)が使用したのと同じ濃度でカタラーゼ(Sigma Chemical Co.、ウシの肝臓由来、cat番号C−30、12,800U/mg)を加えた。典型的には、加えた濃度は、測定したHの存在量より100倍高い。
【0102】
マヌカ蜂蜜の加熱処理:
栄養ブロス中のマヌカ蜂蜜の50%溶液を、水浴中で85+/−5℃の温度に加熱処理し、この温度を60分間または120分間維持した。栄養ブロス中のマヌカ蜂蜜の50%溶液を、121psiで15分間オートクレーブした。加熱処理したこの蜂蜜調製物から、アッセイ用に希釈物を調製した。
【0103】
微生物菌株:
大腸菌(NCIMB8545)、黄色ブドウ球菌(NCIMB9518)および緑膿菌(NCIMB8626)を、栄養寒天上または栄養ブロス中で、37℃で24時間培養する。
【0104】
カンジダ・アルビカンス(NCIMB3179)および出芽酵母を、サブローデキストロース寒天上またはサブローデキストロースブロス中で、37℃で24時間培養する。
プロピオニバクテリウム・アクネス(P.アクネス、ATCC/NTC11827)を、血液寒天上または栄養ブロス中で、37℃で72時間、嫌気的に培養する。
【0105】
Sligo regional Veterinary Laboratoriesから入手した臨床乳腺炎から得た黄色ブドウ球菌の22分離株を、栄養寒天上または栄養ブロス中で、37℃で24時間培養する。
【0106】
Sligo Regional General Hospitalで実施する試験用として;A群ベータ溶血性連鎖球菌の5臨床分離株を、血液寒天上または栄養ブロス中で、37℃で24時間培養する。
【0107】
カンピロバクター・コリ(NCTC11366)を、ブレインハートインフュージョン寒天上またはブレインハートインフュージョンブロス中で、37℃で72時間培養する。
カンピロバクター・ジェジュニ(NCTC11322)および3臨床分離株を、ブレインハートインフュージョン寒天上またはブレインハートインフュージョンブロス中で、37℃で72時間培養する。
【0108】
MRSA(ATCC43300)および7臨床分離株を、栄養寒天上またはブレインハートインフュージョンブロス中で、37℃で72時間培養する。
実験室のカビの分離株を、サブローデキストロース寒天上またはサブローデキストロースブロス中で、25℃で48時間培養する。
【0109】
ボトリティス・シネレアを、サブローデキストロース寒天上またはサブローデキストロースブロス中で、25℃で48時間培養する。
細菌の増殖を、分光光度計(Anthos2010)を用いて620nmの波長で培養物の光学密度(OD)を測定することにより、モニターする。
【0110】
ウェル/ディスク拡散法 − 微生物阻害の測定用:
プレート表面上に塗布することにより、一夜培養物を寒天プレートに接種する。プレートは、使用前に室温で15分間放置する。寒天の表面に穴を開けて直径8.2mmのウェルを設置する。試料180μlを各ウェル中に入れる。この試料をウェル周囲の寒天中に拡散させて、阻害領域を作り出す能力をアッセイする。プレートを24、48または72時間インキュベートしてから、Autodataの領域自動読取機を用いて阻害領域を測定する。領域の直径、ウェルの直径(8.2mm)を含む、を記録する。
【0111】
ディスクアッセイ用には、滅菌済みの吸収性ディスク(直径8.2mm)を試料希釈物中に10分間入れておいた後、接種済みの寒天プレートに直接適用する。試料をディスクから寒天中に拡散させて、阻害領域を作り出す能力をアッセイする。プレートを24、48または72時間インキュベートしてから、Autodataの領域自動読取機を用いて阻害領域を測定する。領域の直径、ディスクの直径(8.2mm)を含む、を記録する。
【0112】
蜂蜜の殺菌性の定量化:
寒天拡散アッセイ(agar diffusion assay、ADA)は、一般に、蜂蜜の殺菌性を定量化し化合物/活性剤−抗生物質の生物学的効力を定量するために好ましい方法であり、マヌカ蜂蜜の製造バッチ分析および放出手順のために使用する(Gribbles Analytical Laboratories Kerkvliet,J.D.、1996、Screening method for the determination of peroxide accumulation in honey and relation with UMF content(Journal of Apiculture Research、35、3、pp110〜117)。しかし、このアッセイの主観的性質により、結果の解釈は限定される。さらに、このアッセイには時間と手間がかかり、プレートの調製および冷却、寒天中での試験用ウェルの穴開け、ならびにインキュベーションの24時間後の阻害領域の手作業での測定が必要である。結果の質は、技術および判定に大きく依存し、阻害領域が不明瞭であるか、または完全に円形でない場合には、推奨される精度を得ることができない。
【0113】
他の方法 − 微生物阻害の測定用:
微生物の増殖または増殖の阻害は、顕微鏡による直接計数、吸光度、生物発光、比色定量および蛍光定量による増殖インジケーターを組み込んだアッセイ、濁度、乾燥重量ならびに阻害領域などの様々な生物学的方法を用いて検出できる。
【0114】
分光光度アッセイ:
本発明者は、96ウェルのマイクロタイタープレートを用いた分光光度アッセイを開発し(Patton T.ら、Journal of Microbiological Methods(2006)、84〜95ページ)、マヌカ蜂蜜の抗菌特性の評価にとってこのバイオアッセイが有する潜在的な利点を評価するために、この方法をウェル/ディスク拡散の標準的な方法と比較した。結果の詳細な統計分析を可能にする大量のデータを速やかに生じさせることができる分光光度アッセイを用いることで、自動化および処理量(効率)の向上が達成された。この方法は、現在採用されているアッセイより感受性が高く、統計分析をより行いやすく、低濃度の蜂蜜の存在下であっても詳細な動力学的研究が可能である(表2)。このアッセイは、ウェルまたはディスクの拡散アッセイの場合に記録されるレベル以下の阻害レベルを検出することが可能である。このアッセイは、マヌカ蜂蜜の活性を解明するための迅速かつ感受性の高い方法を提供する。
【0115】
【表2】

【0116】
蜂蜜希釈物に5%v/vの試験用の一夜培養物を接種する。各希釈物200マイクロリットルを、1希釈物当たり8複製を用いて、クロスコンタミネーションを防止するための蓋が付いた平底の96ウェルマイクロタイタープレート(Costar、Corning Ltd.、NY)のウェルに適用する。対照ウェルには、5%培養物を接種したブロス200マイクロリットルを入れた。インキュベーション前に、分光光度計を用いて620nmで光学密度を定量する(T)。プレートは、付着および凝集を防止するために、100rpmのCertomat MOオービタルシェーカーに載せて暗所で24時間インキュベートする。24時間後、分光光度計を用いて620nmで再度プレートを読み取る(T24)。示してある結果は、別々の3日間に5回繰り返した8つの定量値の平均である。
【0117】
時点での各複製のODを、T24時点での各複製のODから引く。次に、各対照ウェルの調整ODを100%増殖値と定める。各希釈率の試験ウェルについての増殖阻害を、96ウェルプレートの横列それぞれについて以下の式を用いて定量する:
阻害率(%)={1−(試験ウェルのOD/対応する対照ウェルのOD)}×100、例えば横列1、縦列1のウェル1(試験)のODを、横列1、縦列12のウェル12(対照)のOD値で割る。
【0118】
これにより、蜂蜜希釈物それぞれについて8複製分の阻害値を得る。すべてのアッセイは、1試験当たり最低3プレートを用いて異なる3日間に最低3回繰り返され、すなわち、報告する各データ点は最低72の点での定量値の平均である。
【0119】
複製ウェルについて、平均を計算した阻害値に伴う標準偏差を求め、グラフ上の各データ点について、付随するエラーバーとしてプロットする。結果として得られる測定値がネガティブの阻害値(増殖促進)として記録される場合は、以下の式を用いてこれを促進として報告する:
増殖率(%)=(試験OD/対照OD)×100。
【0120】
[実施例1] マヌカ蜂蜜における抗微生物活性の特徴付け − 内因性過酸化水素の不在。
説明した分光光度バイオアッセイを用い、一貫性を確保するためにいくつかの試料を使用して、市販のマヌカ蜂蜜の抗微生物活性を定量する。図1−1に示す結果は、マヌカ蜂蜜は、50%〜およそ6.25%の希釈率で微生物阻害活性の第1段階をもたらし、3.125%〜およそ0.195%の希釈率で微生物阻害活性の第2段階をもたらすことを実証するものである。
【0121】
この2段階の作用は、別々の機序により生み出されることが示される。蜂蜜の希釈率が低い(50%〜6.25%)ときの最初の微生物阻害は、低いpHと、増殖を制限するAw(有効水分)と、過酸化水素によるごく小さな役割とが組み合わさった結果もたらされるものであり、過酸化水素は、希釈時と、相当な期間が経過した後とに新規に生成されるのみである。表3に示すように、希釈されていても希釈されていなくても、マヌカ蜂蜜中には検出可能な内因性過酸化水素は存在しない。
【0122】
【表3】

【0123】
蜂蜜の濃度が希釈されるにつれ、また、一定の期間が経過した後で、過酸化水素が生成されて抗微生物作用にさらに寄与する。
およそ4.0であるその天然のpHから中性近辺のpHである7.0にマヌカ蜂蜜のpHを調整しても、抗微生物プロファイルにはそれほど影響しない 図1−2。マヌカ蜂蜜希釈物を中性近辺にpH調整してからカタラーゼを過剰に加えると、蜂蜜の抗微生物プロファイルは変化する 図1−3。抗微生物作用の第1段階はわずかに影響を受けるだけであるが、第2段階は顕著に影響を受けており、第2段階における抗菌作用は主に過酸化水素遊離の結果であることが示唆される。
【0124】
マヌカ固有因子(UMF)とも呼ばれる非過酸化物性活性が存在するという考えは、実験上、手法上の過失による。具体的には、他の研究グループがカタラーゼ添加前にマヌカ蜂蜜のpHを中和しなかったことから、添加されたカタラーゼが本質的に無効力となったものであり、これは、蜂蜜のpHはカタラーゼ活性にとって酸性が強すぎるためである。過剰なカタラーゼを加えた蜂蜜は、抗微生物活性を保持し続けるので、UMFが存在するという考えがこれまで根強く残ってきた。図1−2が示すように、マヌカ蜂蜜のpHをpH6.80に調整しても、抗微生物活性には影響しない。6.80というpHはカタラーゼ活性にとっての最適pHに近く、この条件下では、加えられたカタラーゼは、過酸化水素活性を中和し、それにより蜂蜜の抗微生物活性プロファイルが変化する。
【0125】
驚くべきことに、本発明者は、このグルコースオキシダーゼ経路がマヌカ蜂蜜の適用直後は作動せず、蜂蜜が希釈されてから、そして、一定期間が経過した後でのみ作動することも見出した。
【0126】
[実施例2] 内因性過酸化水素および持続放出過酸化水素を発生させる、抗微生物性のプロトタイプ系
グルコース31+/−5g、フルクトース35+/−5g、マルトース7+/−2g、スクロース1.5+/−1gを含有するプロトタイプ製剤を、原料を混合し、その混合物を蒸留脱イオン(DI)水中の最終容量100mlにすることにより作製し、その混合物をオートクレーブ滅菌する。マヌカ蜂蜜中に含有されるものと同様の濃度である0.05重量%のグルコースオキシダーゼを加える。
【0127】
図2は、このプロトタイプ製剤を用いた、黄色ブドウ球菌に対する抗微生物アッセイの結果を示すものである。この実施例のプロトタイプ製剤は、マヌカ蜂蜜と比較して高い活性を呈した。おそらく、蜂蜜中に存在する不純物および反応を限定する化合物(カタラーゼなど)が一旦なくなると、抗菌作用においてグルコースオキシダーゼ酵素経路が果たす決定的に重要な役割が高まるのだろう。このプロトタイプは、非常に有効な殺菌活性を示す。
【0128】
[実施例2.1] 内因性過酸化水素および持続放出過酸化水素を発生させる、抗微生物性のゲル状のプロトタイプ系
局所用の医薬製剤における一般的な原料であるゲル化剤をプロトタイプ製剤に加えて試験する。試験するゲルとしては、水で再構成したセルロース剤およびアルコールで再構成したセルロース剤(プロトタイプ製剤が組み込まれているヒドロゲル中に、2%の1.カルボマー、2.メトセル、3.ポリビニルピロリドンおよび4.キサンタンゴム)が挙げられる。セルロースベースのゲルは両方とも安定性の低下を示す。グルコースオキシダーゼの立体障害および加水分解により、結果として抗菌活性が失われた可能性がある。まだ活性は失われていないとしても安定性が低下しているため、拡散アッセイにおける阻害領域がより小さいことから明らかなように、いずれのゲル製剤もプロトタイプ製剤ほどの活性をもたない(図3−1(ゲル)と図3−2(プロトタイプ製剤)を比較のこと)。
【0129】
[実施例2.2] 内因性過酸化水素および持続放出過酸化水素を発生させる、抗微生物性のプロトタイプ系 − 単一の糖と酵素とのゲル製剤
実施例2.1に記載のゲルの安定性の問題を解決する目的で、グルコースおよびグルコースオキシダーゼのみを含有する製剤を作製する。糖の溶解を助長するため、水中のグルコースが30%〜80%の範囲であるグルコース製剤を、オートクレーブするか、または沸点までゆっくり温める。煮沸による溶解中に多様なゲル化剤を加え、40℃以下に冷えた時点で0.1%グルコースオキシダーゼを加える。これらの製剤を抗菌活性について試験する(図4−1)。
【0130】
これらの製剤は、限られた程度の抗菌活性のみを呈し、ウェル/ディスク拡散アッセイにおける阻害領域がより小さいことから明らかなように、この活性は、実施例2に記載の抗微生物性のプロトタイプ製剤で観察される活性を下回る(図4−1(ゲル)と図4−2(プロトタイプ)を比較のこと)。
【0131】
活性の低下に加え、グルコース濃度の高い製剤は、アルミニウム管中に入れると固まって製剤が使用できなくなる。グルコース濃度がより低い製剤が入った管は、時間が経つと抗微生物活性が低下することから明らかなように、安定性の欠如を示す。
【0132】
[実施例2.3] 内因性過酸化水素および持続放出過酸化水素を発生させる抗微生物性の系の改善された製剤の特徴 − 炭水化物および水の濃度を変化させる
この実施例は、過剰な水がグルコースオキシダーゼの加水分解を引き起こすことがあることから、本発明による製剤中に存在する水の量を最低限にして、安定性に関する問題を最小化する試みについて記載するものである。この製剤は、Hの発生と適用の容易性とを可能にするのに十分な、かつ、保管中の糖の沈殿を防止するのに十分な水を必要とする。これ以前の製剤中で観察される沈殿および顆粒状組織の主要な発生源を確認するために、実施例2.2に記載の要領で様々な濃度の糖を混合して加熱する。この分析から、この作用を低下させるために糖濃度を調整する。酵素の添加後、適当な製剤を試験して、抗菌活性を定量する。
【0133】
水の濃度は、酵素活性、適用の容易性および糖の沈殿防止を可能にする最低濃度である20%〜10%に低下させ得ることが見出される。
糖を無制御状態で加熱処理すると、カラメル化を生じ、その結果、黄色から褐色の色合いを獲得する製剤が生じる傾向がある。カラメル化を排除し、それにより清澄な材料を作製するために、ある製造法が開発され、この方法では、糖の添加と、加熱によるその溶解の順序が、カラメル化の過程を回避するよう慎重に選択される。この製剤にグルコースオキシダーゼ酵素を加え、抗菌活性、安定性および適用への適性を評価した。プロトタイプ製剤に対するこうした改良により、本明細書に記載のすべての将来的な製剤/系の基礎が形成される。
【0134】
[実施例3] 内因性過酸化水素のリザーバーおよび持続放出を有する抗微生物性の単一成分系。
抗微生物性の単一成分系の製剤(以後「抗微生物性の系」またはAISまたはA3ISと呼ぶ)を、表4に従い作製する。
【0135】
【表4】

【0136】
ISのpHをpH5.5に設定する。この低いpHは、グルコースオキシダーゼの活性範囲(pH4.0〜7.0、最適pH5.5)内である。必要に応じ、表5に示すように緩衝剤を加えて所望のpHを得ることができる。緩衝剤は精製水中で予め溶解させて、上述の製剤から精製水の一部を置換する。
【0137】
【表5】

【0138】
所望のpHに依存して、異なる比率の緩衝成分を使用できることは理解されよう。
実施例2に記載のプロトタイプおよびこの項に記載のAISが本発明による使用に適した製剤となることは理解されよう。続いての実施例は、AISの多様な特徴の分析を示すものである。
【0139】
表4に記載の糖は以下の順序で加える:フルクトース、グルコース、マルトースおよびスクロース。次の炭水化物を加える前におよそ90℃に加熱することにより、各炭水化物は水中で完全に溶解させる。あるいは、糖は、上述の要領で、ただし−0.5バールの真空下で、調製することもでき、この真空が糖の沸点を90℃以下の温度に下げ、これにより変色を防止する。
【0140】
炭水化物が完全に溶解して透明になったら、その混合物を60℃以下に冷却させ、そして水中で予め溶解させておいた任意選択の緩衝成分を主要な混合物に加える。
基礎となる混合物が40℃以下の温度、酵素活性の保持を可能にする温度、であるとき、水中で予め溶解させておいたグルコースオキシダーゼ酵素をこの混合物に加えて分散させる。混合物を室温に冷却させる。混合物が冷えたらアルミニウム管中に分配し、次いでこの管を密封する。管を室温で保管する。
【0141】
[実施例3.1] 内因性過酸化水素および持続放出過酸化水素を発生させる抗微生物性のプロトタイプ系 − 酵素の濃度および種類を変化させる
蜂蜜は、グルコースオキシダーゼ以外にも、ジアスターゼおよびインベルターゼなどいくつかの酵素を含有することが知られている。ジアスターゼ酵素およびインベルターゼ酵素を実施例2のプロトタイプ製剤中に組み込み、それらの酵素が製剤中の異なる炭水化物に作用することで、速度は落ちるが持続的なH放出を可能にすることにより、全体の抗菌活性を高めることができるかどうか確認する。
【0142】
本発明者は、この抗菌活性の向上の可能性を確認するために、酵素のいくつかの組合せおよび濃度を調査する。様々な組合せのジアスターゼおよびインベルターゼをAISに加え、グルコースオキシダーゼのみを含有するAISと比較する。本発明者は、複数の酵素を含有する製剤のいずれにおいても抗菌活性の向上を見出さない。
【0143】
異なる濃度のグルコースオキシダーゼも組み込んで、その量/活性の関係を確認するために、分光光度アッセイにより比較する。AISの抗菌活性は、グルコースオキシダーゼの濃度に比例して増す。実質的な抗菌作用は、0.05%の酵素濃度で達成される(図5−1)。
【0144】
このことは、一定範囲の抗菌活性はグルコースオキシダーゼの濃度を変化させることにより達成できることを示すものである。この酵素は、混合中に材料全体にわたり容易に分散させることができる。
【0145】
[実施例4] IS − 過酸化水素を発生させる革新的で増強された系
Merckoquantの試験ストリップ(番号10011、Merck、ドイツ)を用い、以下の方法(Kerkvliet、1996およびSerranoら、2004)に従って過酸化水素を定量化する。結果を1リットル当たりのHのミリグラムで表す。過酸化水素の定量にとってこの方法が適切であることは、新しく調製したマヌカ蜂蜜希釈物に液体Hを添加して、このアッセイがHの存在量を正確に検出できることを検証することにより、検証する。
【0146】
表6および図5−2は、シグマ・アルドリッチの0.5%GOX酵素5600U/gを含有し脱イオン水(DI)中で50%(C1)、25%(C2)、12.5%(C3)または6.25%希釈されたAISが、DI水中で50%希釈されたマヌカ蜂蜜と比較して、濃度が顕著に高い過酸化水素を発生させることを示すものである。
【0147】
【表6】

【0148】
図5−3は、このような増加した過酸化水素生成(DI水中で25%希釈されたAIS)が少なくとも48時間にわたり維持されることを示すものである。
【0149】
[実施例4.1] IS − グルコースオキシダーゼ濃度増加に伴う抗微生物活性増加
図5−4は、分光光度阻害バイオアッセイを用いて測定した、グルコースオキシダーゼの濃度範囲と黄色ブドウ球菌に対する抗微生物作用の用量反応関係を示すものである。
【0150】
図5−4は、製造中に組み込まれるグルコースオキシダーゼの濃度を変化させることで製造される製剤を調整し得ることから、効力/有効性の問題に対処することが可能であることをさらに実証するものであり、黄色ブドウ球菌、緑膿菌および大腸菌についての結果を示す。
【0151】
[実施例5] IS − 過酸化水素の内因性リザーバー
ISを50%〜0.1%の希釈範囲内で水と混合すると、過酸化水素の遊離が直ちに検出される。表7は、T=0の時点で75mg/Lまでの過酸化水素が検出されることを示すものである。このことは、0時間で過酸化物の遊離が一切記録されないマヌカ蜂蜜とは対照的であり(実施例1の表3を参照のこと)、そして製剤工程中に発生した、過酸化水素の顕著な内因性リザーバーの存在を実証するものである。
【0152】
また、希釈された試料のインキュベーション3時間後にAIS中で検出される過酸化物の量は、天然の蜂蜜中で検出される量を顕著に上回る、表7。
【0153】
【表7】

【0154】
この内因性リザーバー(AIS中に存在するGOXの量に依存する10〜75mg/lの間の範囲の過酸化水素がここでは示される)を、図5−1、図5−2および表7に示す。このようなリザーバーは、有利なことにAISの適用により、即時に作用するための過酸化水素およびその抗微生物活性をもたらす。希釈されると生成する、より高い濃度の過酸化水素と組み合わせることにより、このリザーバーは、マヌカ蜂蜜など他の系と比較して顕著に向上した抗微生物作用に寄与すると期待されよう。
【0155】
[実施例6] IS − 過酸化水素の内因性リザーバーは保存に安定である
ISの驚くべき、かつ有利な特色は、図6に示すように、抗微生物活性と過酸化水素リザーバーとの両方が、時間を経ても保持されることである。
【0156】
安定性に供されたバッチは、そのバッチが最初に作製された際に検出されたものと同じ濃度のHを保持することから、AISにより生成される利用可能なHリザーバーは保存に安定である。安定性を通じて即時利用可能なHが保持されることは、AIS製剤がもつ固有の特色である。抗微生物活性を評価するためのウェル拡散アッセイを用い、本発明者は、一定したレベルの抗微生物活性が時間を経ても維持されることを実証する。図7−1は、各サンプリング時点で測定した阻害領域と、3カ月の期間中の95%信頼限界を用いてグラフ化した結果とを示すものである。同様に、図7−2は、9カ月にわたり抗微生物活性の安定性が持続されることを示す。安定性持続のデータは、AIS製剤が14カ月の期間の後でも活性の喪失を示さないことを示唆する。
【0157】
抗微生物活性を評価するためのウェル拡散アッセイを用い、本発明者は、一定したレベルの抗微生物活性が時間を経ても維持されることを実証する。図7−1は、各サンプリング時点で測定した阻害領域と、3カ月の期間中の95%信頼限界を用いてグラフ化した結果とを示すものである。同様に、図7−2は、9カ月にわたり抗微生物活性の安定性が持続されることを示す。安定性持続のデータは、AIS製剤が14カ月の期間の後でも活性の喪失を示さないことを示唆する。
【0158】
[実施例7] IS − 黄色ブドウ球菌に対する強力な抗微生物活性
ISは、黄色ブドウ球菌に対する抗微生物活性を有することが示される。図8−1および図8−2は、2つの別々のプロトコール、すなわちNCCLSのガイドライン、方法(図8−1)と、医療機器メーカーの特定のプロトコール(図8−2)とを用いて6.0時間にわたり実施した細菌の殺菌曲線を示すものである。AISは、マヌカ蜂蜜と比較して向上した有効性と、銀包帯に匹敵する有効性とを有する。
【0159】
図8−3は、AIS、Medihoney(登録商標)および10%フェノールゲルについての阻害アッセイ(3日間繰返し)の、A群ベータ溶血性連鎖球菌の5臨床分離株に対して試験した際の結果を示すものである。AISは、普通のpH5.5(試験材料A)およびpH7(試験材料B)のものであり、GOXを含有しないAISの陰性対照が含まれる。AIS製剤は、10%フェノールゲルに匹敵するin vitroでの有効性を呈し、Medihoney(登録商標)より優れている。
【0160】
[実施例8] IS − カンピロバクターに対する強力な抗微生物活性
ISは、カンピロバクターに対する抗微生物活性を有することが示されている。図8−4は、カンピロバクター種の5臨床分離株に対して試験した際の、AIS製剤、マヌカ蜂蜜および10%フェノールゲルについての阻害アッセイ(3日間繰返し)の結果を示すものである。AIS製剤は、普通のpH5.5(試験材料A)およびpH7(試験材料B)のものであり、GOXを含有しない陰性対照AISが含まれる。結果は、in−vitroでの顕著な抗カンピロバクター有効性と、マヌカ蜂蜜を超えるAISの優位性とを示唆する。
【0161】
[実施例9] IS − プロピオニバクテリウム・アクネスに対する強力な抗微生物活性
ISはプロピオニバクテリウム・アクネス(P.アクネス)に対する抗微生物活性を有することが示されている。
【0162】
図9−1は、様々なインキュベーション条件下(好気的な明条件および暗条件、嫌気的な明条件および暗条件)でのP.アクネスに対するAISの阻害結果を示すものである。AISはP.アクネスに対する高度の活性を呈し、この材料がにきびへの局所適用に可能性を有し得ることが示唆される。AISと、抗生物質が組み込まれているいくつかの市販製品を含む現在入手可能な抗にきび市販製品とについての結果を図9−2に示す。この結果は、in vitroでの抗にきび有効性「に関しては」、AISが、クリンダマイシンおよび過酸化ベンゾイルを含有する市販の抗にきび製品に匹敵することを示唆する。
【0163】
[実施例10] IS − MRSAに対する強力な抗微生物活性
この抗微生物性の系の製剤は、異なる3日間においてMRSAの8菌株に対し抗微生物活性を有することが示されており、10%フェノールの標準およびマヌカ蜂蜜と比較してある 図10。AIS製剤は、普通のpH5.5(試験材料A)およびpH7(試験材料B)のものであり、GOXを含有しない陰性対照AISが含まれる。結果は、in−vitroでの顕著な抗MRSA有効性と、マヌカ蜂蜜および10%フェノールゲル対照を超えるAISの優位性とを実証するものである。阻害領域を図11−1に示す。試験材料AはpH5.5に調整し、そして試験試料BはpH7に調整されている。図11−1は、マヌカ蜂蜜よりおよそ300%良好な、AISの向上した結果を示す。このことは、AISはマヌカ蜂蜜に勝り上回る、優れた、かつ有利な特性を有することを明確に示すものである。
【0164】
[実施例11] IS − 乳腺炎の臨床分離株に対する強力な抗微生物活性および生乳における活性の保持
図11−2は、乳腺炎の原因となる黄色ブドウ球菌微生物の22臨床分離株に対して試験した際の、A3ISおよび抗生物質4種(バンコマイシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリンおよびクロラムフェニコール)についての阻害アッセイ(3日間繰返し)の結果を示すものである。AIS製剤は、これらすべての抗生物質より優れたin vitroでの有効性を示す。臨床分離株番号15は、バンコマイシン、ストレプトマイシンおよびテトラサイクリンに耐性があり、そしてクロラムフェニコールに対しては緩やかな感受性を示すにすぎないが、A3ISに対しては感受性を示す。
【0165】
図11−3は、乳腺炎の原因となる黄色ブドウ球菌微生物の22臨床分離株に対して試験した際の、AISについての阻害アッセイ(3日間繰返し)の結果を示すものである。AIS製剤は、乳腺炎用の主要な市販の多種抗生物質製品3種に匹敵するin vitroでの有効性を呈し、これらの製品のうち1種より優れている。
【0166】
図11−4は、乳腺炎の原因となる黄色ブドウ球菌生物の21臨床分離株に対する、2%ナイシン溶液との対比で試験したAISについての阻害アッセイ(3日間繰返し)の結果を示すものである。AIS製剤は、2%ナイシン溶液より優れたin vitroでの有効性を示す。注:図11−2の臨床分離株番号15は、貯蔵状態から回復不能であったため、このアッセイに含まれていない。
【0167】
図11−5は、ナイシン有効性試験中の阻害領域内に2%ナイシン耐性コロニーが存在することを示すものである。AIS耐性コロニーは、阻害領域アッセイに基づく有効性試験では一切観察されておらず、分光光度に基づくAIS阻害アッセイ後に培養物の再増殖が生じることもなかった。
【0168】
生乳5mlに黄色ブドウ球菌の一夜培養物0.1ml(およそ5×10cfu/mlを含有する)を接種してから、AIS製剤0.5mlを加える。この混合物を37℃で一夜インキュベートする。次に、この混合物を、H生成と、接種された黄色ブドウ球菌の生存について分析する。この乳中では100mg/lを超える濃度のHが検出され、接種されたブドウ球菌のほとんどは回復しない。この混合物は、この温度で一夜インキュベーションした後に予想される酸敗の兆候は示さない。対照的に、AISを加えていない生乳は酸敗し、凝固する。この知見は、AISは生乳などの複合培地中でも活性を保持することを示唆するものである。
【0169】
[実施例12] IS − in−vitroでの毒性/刺激性測定
2mMのL−グルタミン、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むEagles Minimum Essential Medium(EMEM)中で培養し5% CO中で37℃でインキュベートした正常なヒト線維芽細胞(NHF、ECACC90011807)および正常なヒトケラチン生成細胞(NHK、CC−2501)を用いて、毒性/刺激性を定量する。24ウェルプレートおよび12ウェルプレートを用い、ニュートラルレッドおよび3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)(シグマ)の両方を用いて、直接接触による細胞アッセイ用の「In Vitro Toxicology Assay Kit」による三次元アッセイの3回繰り返しを実施して、試験材料を8時間インキュベーションした後の生存率を評価する(アジ化ナトリウムが陽性対照、銀ゲル、亜鉛ゲル、A3ISおよび新鮮培地の濃縮物が陰性対照)。
【0170】
L929細胞(マウス線維芽細胞ECACC85011425)を用いた、ISO10993の寒天重層法による細胞毒性試験、すなわちin vitro法も使用する。手短に言うと、細胞のコンフルエント単層をインキュベートし、次にこれを軟らかい寒天1.5g/lを含有する単層の新鮮培地(EMEM、2mMのL−グルタミン、5%FBS、2%ペニシリン−ストレプトマイシン)で覆い、固める。表面の10分の1を試験材料(先に説明した)で覆い、24時間インキュベートする。インキュベーション後、試験材料を慎重に除去し、新鮮培地中に生体染料(ニュートラルレッド)を加える。インキュベーション後、これを除去し、細胞を洗浄した後、染料を細胞から抽出し、細胞生存率について分光光度的に定量化する。
【0171】
角質層で見られるような分化したケラチン生成細胞、すなわち培養した皮膚相当物に対するこの製剤および対照の刺激作用を確認するために、皮膚の三次元皮膚モデル(Skinethic、フランス)も用いる。このアッセイは、表皮の三次元皮膚モデルを用い、いくつかの時点で実施する。再構成されたヒト表皮モデルは、エアリフト培養による、多層の生きた表皮組織の構成体から成り、無血清の化学的に定義された培地中、ポリカーボネート製挿入物中で作製されており、in vivoでのヒト表皮と同等の正常な超微細構造および機能性を特色とする。in vitroで再構成した4つ組のヒト表皮組織、17日齢、(大きさ0.63cm)に、この製剤を1cm当たり2〜10mg、3時間および24時間局所投与し、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BFR−ZEBET)により認可されたプロトコールを用いたMTTアッセイを使用して、組織生存率を評価する。
【0172】
試験材料の免疫賦活作用および刺激作用を評価するため、先に記載の刺激性アッセイで得られた細胞培養物の上澄みを、サイトカインおよび酵素の測定用のIL−1酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(R&D Systems)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)ELISA(R&D Systems)を用いて分析する。
【0173】
刺激性アッセイ用に使用する3D皮膚モデルの断面をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色する、技術的手順は以下を含む:
固定:固定剤中で組織を機械的および生化学的に安定化させる。この固定剤は、中性緩衝ホルマリン、すなわちリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の10%ホルムアルデヒドである。
【0174】
包埋:使用する技法は、ワックス包埋である。徐々に濃度が増す(20%、30%、40%、50%、80%および100%)純粋エタノール中に試料を連続的に浸漬して組織を脱水した後、洗浄剤、キシレン(100%)、および、最後に、熱い溶融したパラフィンワックスに浸漬(含浸)してから、冷却して硬化させる。
【0175】
切片作製:次に、マイクロトームを用いて試料の組織を5マイクロメートルの切片に切る。次に、この薄片を染色のためにスライドガラス上に置く。
染色:顕微鏡下で組織を見るためにヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)を用いて切片を染色し、各試験材料により生じる表面の表皮の劣化速度を評価する。
【0176】
図12−1および図12−2は、NHF(正常なヒト線維芽細胞)およびNHK(正常なヒトケラチン生成細胞)に対するMTT生存率アッセイによる、AISの初期毒性評価の結果を示すものである。以下の式により毒性率(%)を計算した:毒性率(%)={1−(試験材料ウェルの平均OD/対応する対照ウェル(試験材料を加えていない)の平均OD)}×100。このアッセイに含まれるのは、50%濃度のA3IS、一定の濃度範囲の市販の銀含有ゲル製品および市販の亜鉛含有ゲル製品であり、アジ化ナトリウム(陽性対照)と比較してある。この毒性アッセイに使用する試験材料の濃度は刺激性アッセイに使用する濃度の2倍(ウェル当たり100mg)であり、接触時間は8時間に延ばした。
【0177】
図12−3は、L929上でニュートラルレッドを用いた、ISO国際基準10993−5の寒天重層法による24時間にわたる細胞毒性アッセイの結果を示すものである。以下の式により毒性率(%)を計算した:毒性率(%)={1−(試験材料ウェルの平均OD/対応する対照ウェル(アジ化ナトリウム添加)の平均OD)}×100。このアッセイに含まれるのは、50%濃度のAIS、一定の濃度範囲の市販の銀含有ゲル製品および市販の亜鉛含有ゲル製品であり、アジ化ナトリウム(陽性対照)と比較してある。アジ化ナトリウム陽性対照を毒性100%とする。寒天重層法によるこの毒性アッセイに使用した試験材料の量は、最初の直接接触アッセイに使用した量と同様にウェル当たり100mgであったが、接触時間は24時間に延ばした。
【0178】
Skinethic(登録商標)の3D皮膚モデルを用いた、一定範囲の接触時間についての試験材料の刺激性アッセイの結果を図12−4に示す。再構成されたこのヒト表皮モデルは、エアリフト培養による、多層の生きた表皮組織の構成体から成り、無血清の化学的に定義された培地中、ポリカーボネート製挿入物中で作製されており、in vivoでのヒト表皮と同等の正常な超微細構造および機能性を特色とする。この直接接触が3D皮膚試料に及ぼす作用を、図12−5および図12−6では、比較用の銀含有ゲル製品についてヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色した断面上に示す。図12−7および図12−8は、3D皮膚試料上にAIS製剤を直接接触させた後のH&Eで染色した断面を示すものである。この結果は、銀製剤は基底層からの表皮層の剥離を引き起こすが、試料のAIS製剤は損傷を呈さないことを示すものである。
【0179】
in vitroで再構成した4つ組のヒト表皮組織、17日齢、(大きさ0.63cm)に、この製剤を1cm当たり2〜10mg、3時間および24時間局所投与し、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BFR−ZEBET)により認可されたプロトコールを用いたMTTアッセイを使用して、組織生存率を評価した。以下の式により刺激性率(%)を計算した:刺激性率(%)={1−(試験材料皮膚の平均OD/対応する対照皮膚(試験材料を加えていない)の平均OD)}×100。AISは、この三次元アッセイでは、試験した市販製品より低い刺激性を示す。
【0180】
[実施例13] IS − 皮膚細胞からの炎症性IL−1放出の誘導
図13−1は、48時間にわたる3D刺激性アッセイ中に除去された上澄みのELISAアッセイの結果を示すものであり、AIS製剤、アジ化ナトリウム陽性対照および市販の銀含有ゲル製品に曝露された際のIL−1の放出を測定および比較してある。この結果は、AIS製剤に曝露された皮膚細胞からIL−1が放出されることを示唆する。図13−2は、刺激性試験プロトコール中に使用された細胞培地中に放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の測定値を図示するものである。結果は、AIS製剤、アジ化ナトリウム陽性対照および市販の銀含有ゲル製品への曝露後の、細胞によるLDH放出を示す。乳酸デヒドロゲナーゼは、破壊性化合物に曝露された細胞により放出される。この結果は、AIS製剤は市販の銀含有ゲル製品より毒性が低いことを示唆する。
【0181】
[実施例14] IS − 最終的な滅菌
ISをガラス瓶およびプラスチック管中に充填した。次に、これらをガンマ線照射により滅菌した。滅菌後、試料の抗菌活性を、予め滅菌しておいた場合の結果と比較した。ガンマ線照射により活性は低下しないことが見出された。一次容器はわずかに変色していたが、照射過程は試験材料の活性にも色にも影響しなかった。図14は、ガンマ線照射前後の、黄色ブドウ球菌、大腸菌および緑膿菌に対するAISの有効性を示すものである。
【0182】
[実施例15] IS − 抗細菌包帯としての、コラーゲン−GAG(グリコサミノグリカン)マトリックス中への組込み
黄色ブドウ球菌上に載せたGAG中のAISの写真およびGAGの浸潤の写真(図15−1〜図15−3)。
【0183】
先に記載したようなコラーゲン−GAG(グリコサミノグリカン)マトリックス(Wilkins,L.,M.ら、1993、Development of a bilayered Living Skin Construct for Clinical Applications、Organogenesis Inc.)を調合し、このマトリックスにA3ISを1:1の比率で加えた。
【0184】
この混合物を滅菌済みの表面上に垂らしておよそ1mmの薄層を形成させ、インキュベーター中で24時間乾燥させて皮膚用包帯を形成する。一旦乾いたら、1cmの切片を切り取り、黄色ブドウ球菌、大腸菌およびP.アクネスが接種されている、接種済み寒天プレート上に置く。黄色ブドウ球菌、大腸菌およびP.アクネスに対する抗菌活性を観察する。この包帯下では明瞭に区切られた阻害領域が観察され、細菌増殖は観察されない。
【0185】
時間T時点で6ウェルプレート中のNHF(正常なヒト線維芽細胞)のコンフルエントの単層上に、試験切片も置く。毒性はほとんどない状態からまったくない状態であったことが見出される。
【0186】
細胞培養ウェル中で、NHF細胞と共に試験切片も同時にインキュベートした。NHF細胞は、予想されたとおり細胞培養ウェルの底に付着することに加え、試験切片にも浸潤、付着し、その上で増殖することが見出された。このことは、AISを組み込んであるコラーゲン−GAGマトリックスが細胞の付着および増殖に適したマトリックスであることを実証するものである(図15−2および図15−3を参照のこと)。
【0187】
[実施例16] IS − アルコールゲル中への組込み
ISを、無水アルコール、ウルトレズ(ultrez)10ゲル化剤、ジイソプロパノールアミンおよびプロピレングリコールから成るアルコールゲル(AISの添加前に混合する)と混合し、その結果、非粘着性の透明な材料を得る。黄色ブドウ球菌、大腸菌およびP.アクネスに対する阻害領域を確認するため、ウェル拡散および表面拡散バイオアッセイを用いて、このゲル製剤を試験する。黄色ブドウ球菌についての結果を示す 図16−1。この場合においては、ゲルマトリックスの吸収特性、要するに寒天マトリックス中への自由な拡散を許さない特性により阻害領域が不自然に小さいが、ゲルマトリックスの周囲に明瞭な領域があることに注意されたい。
【0188】
このゲル製剤を、凍結融解試験を含む6週間の短期間安定性試験に供する。結果は、試験期間を通じてこのゲル製剤が安定性を維持することを示唆するものであった 図16−2。結果を黄色ブドウ球菌について示す。
【0189】
[実施例17] IS − 市販の創傷用包帯上への組込み
創傷用包帯中のAISの写真 図17
先に記載の要領で、AIS製剤を様々な市販の包帯カルトスタット(Kaltostat、登録商標)(Comvita)、ケンダール(Kendal、登録商標)(Telfa)およびコラーゲン−GAG(グリコサミノグリカン)マトリックスの表面上に垂らし、数時間かけて包帯の中に拡散させておよそ1mmの薄層を形成させた。1cmの切片を切り、予め黄色ブドウ球菌、大腸菌および緑膿菌を接種しておいた寒天プレート上に載せた。次に、AISを染み込ませた包帯の抗細菌有効性を、アクアセル(Aquacel、登録商標)(Convatec)およびベタディン(Betadine、登録商標)(Seton)、ならびに、元素としての銀およびヨウ素を含有する市販の包帯と比較した 図17。AIS包帯は、アクアセル(登録商標)(Convatec)およびベタディン(登録商標)(Seton)、ならびに、元素としての銀およびヨウ素を使用している市販の包帯と同程度に抗微生物的に有効であることが見出された。
【0190】
[実施例18] IS − 爪真菌症に対する強力な抗微生物活性
真菌性の爪感染症の処置におけるAISの有効性についての症例研究を、ヒトボランティアに対して実施した。感染している爪は右足の親指の爪であり、感染症は爪の左側に限局されていた。感染症は相当な期間、およそ2年間存在していた。処置の前に、感染している爪の写真を入手した 図18−1。毎朝に1回、シャワーを浴びてタオルで拭いて乾燥させる課題に続いて処置を実施した。爪の表面全体にわたってではなく感染領域にわたって、爪の表面にAISを適用した。次に、水を用いて詰め綿を湿らせておいた絆創膏でAISを覆い、したがって、1日の残りの時間、爪は密封包帯の中に覆われた 図18−2。この処置を3週間にわたり毎日実施した。2日間の後、もう1枚写真を撮影した 図18−3。このときは色が濃くなっていることから、爪の感染領域の外見が変わったことは明らかである。処置の期間中、感染していない爪が伸びる区域が徐々に大きくなる現象が生じる以外は、さらなる物理的変化の証拠はほとんどなかった。処置開始8週間後にさらに撮影した写真を示す 図18−4。この写真では、感染していない爪の筋がはっきり見え、皮膚糸状菌が排除されたことが示唆される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中にオキシドレダクターゼ酵素、オキシドレダクターゼ酵素の基質、そして過酸化水素を含む、保存に安定な抗微生物性および免疫賦活性の系であって;
ここで、前記オキシドレダクターゼ酵素の基質が系全体の重量を基準にして90重量%まで存在し、そして水が系全体の重量を基準にして20重量%まで存在し;前記系がおよそ4〜8のpHを有し;そして、前記系は2段階:
(a)保存に安定な内因的に生成された過酸化水素は、系内で即時放出用として1リットル当たり少なくとも10mgの濃度で生体利用可能であり;そして、
(b)前記系の再水和により、少なくとも24時間さらなる過酸化水素の持続放出が起こる;
の過酸化水素放出をもたらす、前記系。
【請求項2】
前記保存に安定な内因的に生成された過酸化水素は、系内で即時放出用として1リットル当たり少なくとも75mgの濃度で生体利用可能である、請求項1に記載の系。
【請求項3】
前記系の再水和により生成される持続放出過酸化水素の濃度が、1リットル当たり少なくとも10mg、好ましくは1リットル当たり20mgである、請求項1または2に記載の系。
【請求項4】
前記オキシドレダクターゼ酵素が、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、グリコレートオキシダーゼおよび/またはアミノ酸オキシダーゼである、請求項1〜3のいずれかに記載の系。
【請求項5】
前記オキシドレダクターゼ酵素の基質が、D−グルコース、ヘキソース、コレステロール、D−ガラクトース、ピラノース、コリン、ピルビン酸、グリコレートおよび/またはアミノ酸である、請求項4に記載の系。
【請求項6】
前記オキシドレダクターゼ酵素が、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよび/またはピラノースオキシダーゼである、請求項1〜3のいずれかに記載の系。
【請求項7】
前記オキシドレダクターゼ酵素の基質が、D−グルコース、ヘキソース、D−ガラクトースおよび/またはピラノースである、請求項6に記載の系。
【請求項8】
前記オキシドレダクターゼ酵素がグルコースオキシダーゼであり、そして前記基質がD−グルコースである、前記請求項のいずれかに記載の系。
【請求項9】
水が系全体の重量を基準にしておよそ10重量%〜およそ20重量%の濃度で存在する、前記請求項のいずれかに記載の系。
【請求項10】
前記オキシドレダクターゼ酵素が、系100g当たり少なくとも10Uの活性量で系中に存在する、前記請求項のいずれかに記載の系。
【請求項11】
緩衝剤、好ましくは炭酸−炭酸水素塩、および/または、リン酸/リン酸水素二ナトリウムをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の系。
【請求項12】
追加の糖を含む、前記請求項のいずれかに記載の系。
【請求項13】
前記追加の糖が、系全体の重量を基準にして5〜80重量%存在する、請求項12に記載の系。
【請求項14】
前記追加の糖が、系全体の重量を基準にして10〜70重量%存在する、請求項12に記載の系。
【請求項15】
前記追加の糖および前記オキシドレダクターゼ酵素の基質が、およそ0.05:1〜3.5:1の比率で存在する、請求項12〜14のいずれかに記載の系。
【請求項16】
前記追加の糖が、以下のスクロース、フルクトースおよび/またはマルトースから1つ以上選択される、請求項12〜15のいずれかに記載の系。
【請求項17】
フルクトースが8〜50w/w%存在し、マルトースが4〜15w/w%存在し、スクロースが0.5〜3w/w%存在し、そして前記オキシドレダクターゼ酵素の基質、好ましくはグルコースが10〜85w/w%存在する、請求項16に記載の系。
【請求項18】
少なくとも1種の粘性調節成分をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の系。
【請求項19】
およそ5〜7、好ましくはおよそ5.5のpHを有する、前記請求項のいずれかに記載の系。
【請求項20】
液体または半固形の製剤、好ましくはシロップ、ペースト、スプレー、ドロップ、軟膏、クリーム、ローション、オイル、リポソーム、塗布剤および/またはゲルの形態の、前記請求項のいずれかに記載の系。
【請求項21】
固形製剤、好ましくはカプセル、ペレット、ゲルカップ、錠剤および/またはピルールの形態の、請求項1〜19のいずれかに記載の系。
【請求項22】
前記請求項のいずれかに記載の系を、少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物。
【請求項23】
創傷用包帯のマトリックス、好ましくはコラーゲンまたはコラーゲン−GAGのマトリックスと一緒になっている、請求項1〜22のいずれかに記載の系または医薬組成物。
【請求項24】
前記系対前記創傷用包帯のマトリックスの比率が、およそ0.01:1〜1:1である、請求項23に記載の系または医薬組成物。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載の系または医薬組成物を含む包帯。
【請求項26】
局所投与、経腸投与または非経口投与に適合した形態の、前記請求項のいずれかに記載の系または医薬組成物。
【請求項27】
局所用の軟膏、クリーム、ローション、オイル、塗布剤、液体および/またはゲルの形態の、請求項26に記載の系または医薬組成物。
【請求項28】
乳房内投与に適合した、請求項27に記載の系または医薬組成物。
【請求項29】
ティートシール、ティッシュ、絆創膏および/または包帯の一部としての送達に適合した、請求項28に記載の系または医薬組成物。
【請求項30】
溶解性のフィルムストリップ経由の送達に適合した形態の、請求項26または27に記載の系または医薬組成物。
【請求項31】
経腸投与、好ましくは経口投与に適合した形態の、請求項26に記載の系または医薬組成物。
【請求項32】
カプセル、ペレット、ゲルカップ、錠剤、ピルール、球剤、ロゼンジ、デンタルフロス、歯磨き剤、マウスウォッシュ、溶解性のフィルムストリップの形態、および/または、マウスガード経由の送達に適合した形態の、請求項31に記載の系または医薬組成物。
【請求項33】
制御放出または持続放出による送達に適した形態の、請求項31または32に記載の系または医薬組成物。
【請求項34】
請求項1〜21のいずれかに記載の系を少なくとも1種の適切な化粧品用賦形剤と共に含む化粧品組成物。
【請求項35】
化粧品用途における使用のための、請求項1〜21および26〜33のいずれかに記載の系。
【請求項36】
局所用化粧品としての使用に適合した形態の、請求項35に記載の系。
【請求項37】
髪の状態、皮膚の状態の処置、または体臭の処置における使用のための、請求項35に記載の系。
【請求項38】
歯のホワイトニング方法における使用のための請求項34に記載の系であって、前記組成物が、溶解性のフィルムストリップ、デンタルフロス、歯磨き剤、マウスウォッシュおよび/またはマウスガード経由の送達に適合した形態である、前記系。
【請求項39】
請求項1〜21のいずれかに記載の系を含む予防用の手の保護溶液。
【請求項40】
処置方法における使用のための、請求項1〜33のいずれかに記載の系または医薬組成物。
【請求項41】
微生物感染症の処置方法における使用のための、請求項40に記載の系または医薬組成物。
【請求項42】
損傷した組織および/または細胞の修復および/または再生のための方法における使用のための、請求項40または41に記載の系または医薬組成物。
【請求項43】
インターロイキン−1の放出を刺激することにより免疫応答を高める、請求項42に記載の系または医薬組成物。
【請求項44】
前記微生物感染症が、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、抗酸性細菌、ウイルス、酵母、寄生性または病原性の微生物および/または真菌により引き起こされる、請求項41〜43のいずれかに記載の系または医薬組成物。
【請求項45】
前記微生物感染症が、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、カンジダ・アルビカンス、プロピオニバクテリウム・アクネス、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌、A群ベータ溶血性連鎖球菌、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・ジェジュニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、ボトリティス・シネレアおよび/またはヒト結核菌により引き起こされる、請求項44に記載の系または医薬組成物。
【請求項46】
前記微生物感染症が、口腔、眼および/または耳の感染症である、請求項41〜45のいずれかに記載の系または医薬組成物。
【請求項47】
前記口腔感染症が、歯肉疾患、口腔潰瘍および/または口腔衛生障害である、請求項46に記載の系または医薬組成物。
【請求項48】
前記口腔衛生障害が、口臭および/または歯肉炎である、請求項47に記載の系または医薬組成物。
【請求項49】
前記微生物感染症が、皮膚および/または爪の感染症である、請求項41〜45のいずれかに記載の系または医薬組成物。
【請求項50】
前記皮膚および/または爪の感染症が、真菌性の皮膚感染症および/または真菌性の爪感染症である、請求項49に記載の系または医薬組成物。
【請求項51】
前記真菌性の皮膚感染症が、水虫および/または白癬である、請求項50に記載の系または医薬組成物。
【請求項52】
湿性および/または乾性の乳腺炎を含む乳腺炎の処置における使用のための、請求項40〜45のいずれかに記載の系または医薬組成物。
【請求項53】
皮膚障害の処置における使用のための、請求項40〜45のいずれかに記載の系または医薬組成物。
【請求項54】
前記皮膚障害が、にきび、湿疹および/または乾癬である、請求項53に記載の系または医薬組成物。
【請求項55】
創傷および/または創傷敗血症を処置する方法における使用のための、請求項40〜45のいずれかに記載の系または医薬組成物。
【請求項56】
前記創傷が、急性創傷、慢性創傷、外科的創傷、慢性熱傷および/または急性熱傷である、請求項55に記載の系または医薬組成物。
【請求項57】
瘻孔管理の方法における使用のための、請求項40〜45のいずれかに記載の系または医薬組成物。
【請求項58】
前記瘻孔が、人工肛門形成術、回腸瘻造設術、空腸瘻造設術および/または胃瘻造設術である、請求項57に記載の系または医薬組成物。
【請求項59】
創傷敗血症の予防的防止における使用のための、請求項40〜45のいずれかに記載の系または医薬組成物。
【請求項60】
微生物感染症を処置するための医薬を製造するための、請求項1〜33のいずれかに記載の系または医薬組成物の使用。
【請求項61】
損傷した細胞の修復および/または再生のための医薬を製造するための、請求項1〜33または60のいずれかに記載の系または医薬組成物の使用。
【請求項62】
前記系または医薬組成物が、インターロイキン−1の放出を刺激することにより免疫応答を高める、請求項61に記載の使用。
【請求項63】
前記微生物感染症が、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、抗酸性細菌、ウイルス、酵母、寄生性または病原性の微生物および/または真菌により引き起こされる、請求項60〜62のいずれかに記載の使用。
【請求項64】
前記微生物感染症が、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、カンジダ・アルビカンス、プロピオニバクテリウム・アクネス、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌、A群ベータ溶血性連鎖球菌、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・ジェジュニ、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、ボトリティス・シネレアおよび/またはヒト結核菌により引き起こされる、請求項63に記載の使用。
【請求項65】
前記微生物感染症が、口腔、眼および/または耳の感染症である、請求項60〜64のいずれかに記載の使用。
【請求項66】
前記口腔感染症が、歯肉疾患、口腔潰瘍および/または口腔衛生障害である、請求項65に記載の使用。
【請求項67】
前記口腔衛生障害が、口臭および/または歯肉炎である、請求項66に記載の使用。
【請求項68】
前記微生物感染症が、皮膚および/または爪の感染症である、請求項60〜64のいずれかに記載の使用。
【請求項69】
前記微生物感染症が、真菌性の爪および/または皮膚の感染症である、請求項68に記載の使用。
【請求項70】
前記真菌性の感染症が、真菌性の爪感染症、水虫および/または白癬である、請求項69に記載の使用。
【請求項71】
湿性および/または乾性の乳腺炎を含む乳腺炎を処置するための医薬を製造するための、請求項1〜33または60〜64のいずれかに記載の系または医薬組成物の使用。
【請求項72】
皮膚障害を処置するための医薬を製造するための、請求項1〜33または60〜64のいずれかに記載の系または医薬組成物の使用。
【請求項73】
前記皮膚障害が、にきび、湿疹および/または乾癬である、請求項72に記載の使用。
【請求項74】
創傷および/または創傷敗血症を処置するための医薬を製造するための、請求項1〜33または60〜64のいずれかに記載の系または医薬組成物の使用。
【請求項75】
前記創傷が、急性創傷、慢性創傷、外科的創傷、慢性熱傷および/または急性熱傷である、請求項74に記載の使用。
【請求項76】
創傷敗血症の予防的防止における使用のための医薬を製造するための、請求項1〜33または60〜64のいずれかに記載の系または医薬組成物の使用。
【請求項77】
瘻孔管理用の医薬を製造するための、請求項1〜33または60〜64のいずれかに記載の系または医薬組成物の使用。
【請求項78】
前記瘻孔が、人工肛門形成術、回腸瘻造設術、空腸瘻造設術および/または胃瘻造設術である、請求項77に記載の使用。
【請求項79】
請求項1〜33のいずれかに記載の系または医薬組成物の局所投与、経腸投与および/または非経口投与を含む、請求項60〜78のいずれかに記載の使用。
【請求項80】
微生物感染症を処置するための、ならびに/または、患者の損傷した組織および/もしくは細胞の修復および/もしくは再生のための方法であって、有効量の請求項1〜33のいずれかに記載の系または医薬組成物を局所、経腸および/または非経口の投与様式により前記患者の感染部位に適用するステップを含む、前記方法。
【請求項81】
請求項1〜33のいずれかに記載の、水溶液中にオキシドレダクターゼ酵素、オキシドレダクターゼ酵素の基質および過酸化水素を含む、保存に安定な抗微生物性および免疫賦活性の系の製造方法であって、以下のステップ:
a.少なくとも60℃、好ましくはおよそ75℃〜95℃の温度に水を加熱する;
b.前記加熱した水に前記オキシドレダクターゼ酵素の基質を加えて水−糖溶液を形成する;
c.前記水−糖溶液をおよそ40℃以下の温度に冷却して酵素活性を保持させる;
d.十分な長さの時間攪拌しながら、ステップ(c)の前記水−糖溶液に前記オキシドレダクターゼ酵素を加えて、あらかじめ決定された制御比率で過酸化水素を形成する;そして、
e.ステップ(d)の結果得られる混合物を室温に冷却して、生体利用可能で保存に安定な内因的に生成された過酸化水素を即時放出用として1リットル当たり少なくとも10mgの濃度で含む系を作製する;
を含む、前記方法。
【請求項82】
緩衝剤を前記系に加えて、およそ4〜8、好ましくは5〜7のpHを達成するステップをさらに含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記オキシドレダクターゼ酵素が、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、グリコレートオキシダーゼおよび/またはアミノ酸オキシダーゼである、請求項81または82に記載の方法。
【請求項84】
前記オキシドレダクターゼ酵素の基質が、D−グルコース、ヘキソース、コレステロール、D−ガラクトース、ピラノース、コリン、ピルビン酸、グリコレートおよび/またはアミノ酸である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記オキシドレダクターゼ酵素がグルコースオキシダーゼであり、そして前記オキシドレダクターゼ酵素の基質がD−グルコースである、請求項81〜84のいずれかに記載の方法。
【請求項86】
ステップ(b)で追加の糖を前記系に加える、請求項81〜85のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
前記追加の糖が、スクロース、フルクトースおよび/またはマルトースの1つ以上を含む、請求項87に記載の方法。
【請求項88】
1つ以上の糖を加える際、前の糖がステップ(a)の水の中で完全に溶解した後で各糖を連続的に加える、請求項86または87に記載の方法。
【請求項89】
少なくとも1種の粘性調節成分を前記系に加える、請求項81〜88のいずれかに記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図11−4】
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【図11−5】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図12−5】
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【図12−6】
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【図12−7】
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【図12−8】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図15−3】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図17】
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【図18a】
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【図18b】
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【図18c】
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【図18d】
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【公表番号】特表2010−505817(P2010−505817A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531006(P2009−531006)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/IE2007/000094
【国際公開番号】WO2008/041218
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(509097367)インスティチュート・オブ・テクノロジー・スライゴ (1)
【Fターム(参考)】