説明

オゾン水供給システム及びシリコンウエハの湿式酸化処理システム

【課題】シリコンウエハの金属汚染をより抑制し得る最適な湿式酸化処理を実現するためのオゾン水供給システム、及び当該システムから供給されるオゾン水を用いて湿式酸化処理を行い得るシリコンウエハの湿式酸化処理システムを提供する。
【解決手段】オゾン水供給システムは、オゾン水供給装置1と、オゾン水供給装置1から湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を測定するオゾン濃度測定装置2,3とを備える。これにより、オゾン濃度測定装置2,3における測定値に基づいて、オゾン水供給装置1から湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を2ppm以下に精確に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン水供給システム及びシリコンウエハの湿式酸化処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製品の電気特性を劣化させる要因として、半導体製品を構成する基本材料の一つであるシリコンウエハの表面の金属汚染が挙げられる。このような金属汚染を防止するために、従来、シリコンウエハの表面に酸化膜を形成する方法が知られている。
【0003】
この酸化膜の形成方法として、シリコンウエハを湿式酸化処理に付することによりシリコンウエハの表面に酸化膜を形成する方法が知られており、具体的には、シリコンウエハの表面洗浄を目的としてSC−2溶液(HPM:塩酸/過酸化水素)を用い、洗浄と同時に酸化膜を形成する方法や、薬液を用いてシリコンウエハを洗浄した後にオゾン水でリンスすることにより、シリコンウエハの表面に酸化膜を形成する方法等が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−73806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリコンウエハの金属汚染の程度は、シリコンウエハの最表面構造に大きく依存すると考えられているため、上記特許文献1に記載の方法等によりオゾン水を用いてシリコンウエハの表面に酸化膜を形成したとしても、酸化膜の最表面構造によっては金属汚染を十分に防止することができない場合があるという問題がある。
【0006】
上記問題点に鑑みて、本発明は、シリコンウエハの金属汚染をより抑制し得る最適な湿式酸化処理を実現するためのオゾン水供給システム、及び当該システムから供給されるオゾン水を用いて湿式酸化処理を行い得るシリコンウエハの湿式酸化処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、オゾン水供給装置と、前記オゾン水供給装置からユースポイントに供給されるオゾン水のオゾン濃度を測定するオゾン濃度測定装置とを備え、前記オゾン濃度測定装置における測定値に基づいて、前記オゾン水供給装置から前記ユースポイントに供給されるオゾン水のオゾン濃度が2ppm以下に調整されることを特徴とするオゾン水供給システムを提供する(請求項1)。
【0008】
本発明者らの鋭意研究の結果、シリコンウエハの湿式酸化に使用するオゾン水のオゾン濃度によって、シリコン酸化膜におけるSi−O−Si結合とSi−OH結合との比率が変化し、Si−OH結合の比率に応じて金属汚染の程度が変動することが判明した。また、COOH基の存在も金属汚染に影響を与えることが判明した。
【0009】
そこで、上記発明(請求項1)によれば、オゾン濃度を2ppm以下に精確に制御されたオゾン水を供給することができる。したがって、オゾン濃度が2ppm以下に制御されたオゾン水を用いてシリコンウエハの湿式酸化処理を行うことができるため、シリコン酸化膜におけるSi−OH結合の比率及びCOOH基の比率を低減させることができ、その結果として、シリコンウエハの金属汚染をより抑制することができる。
【0010】
上記発明(請求項1)においては、前記オゾン水供給装置は、オゾンガス発生装置を有しており、前記オゾンガス発生装置が、前記オゾン濃度測定装置における測定値に基づいて、オゾンガスの発生量を制御するようにしてもよいし(請求項2)、前記オゾン濃度測定装置における測定値に基づいて、前記ユースポイントに供給されるオゾン水を希釈することにより当該オゾン水のオゾン濃度を2ppm以下に調整するようにしてもよい(請求項3)。
【0011】
上記発明(請求項3)においては、前記オゾン水供給装置から前記ユースポイントに前記オゾン水を供給するオゾン水供給配管と、前記オゾン水供給配管の途中に接続され、前記オゾン水を希釈するための希釈水を供給する希釈水供給配管とをさらに備え、前記オゾン濃度測定装置における測定値に基づいて、前記希釈水供給配管から前記オゾン水供給配管への希釈水の供給量が制御されるのが好ましい(請求項4)。
【0012】
上記発明(請求項1〜4)においては、前記ユースポイントにて使用されるオゾン水の水温に基づいて、前記オゾン水のオゾン濃度を調整するのが好ましい(請求項5)。
【0013】
オゾン水の水温とオゾンの反応性との間には密接な関係があるため、かかる発明(請求項5)によれば、オゾン水の水温に基づいてオゾン水のオゾン濃度を調整することができるため、その水温に応じてユースポイントでの処理に適したオゾン濃度に調整することが可能となる。
【0014】
上記発明(請求項1〜5)においては、前記オゾン濃度測定装置において測定されたオゾン水のオゾン濃度が2ppmを超える場合に、警報を発する警報発生装置をさらに備えるのが好ましい(請求項6)。
【0015】
また、本発明は、上記発明(請求項1〜6)に係るオゾン水供給システムと、前記オゾン水供給システムからオゾン水が供給される湿式酸化槽を備え、前記オゾン水供給システムから前記湿式酸化槽に供給されたオゾン水中にシリコンウエハを浸漬させることにより、当該シリコンウエハの表面に酸化膜を形成することを特徴とするシリコンウエハの湿式酸化処理システムを提供する(請求項7)。
【0016】
上記発明(請求項7)によれば、シリコン酸化膜中のSi−O−Si結合の比率を増大させることができるため、シリコンウエハの金属汚染をより抑制し得るシリコン酸化膜を形成することができる。
【0017】
上記発明(請求項7)においては、前記湿式酸化槽内のオゾン水の水温を測定し得る水温測定装置をさらに備え、前記オゾン水供給システムは、前記水温測定装置における測定値に基づいて、前記湿式酸化槽に供給されるオゾン水のオゾン濃度を調整するのが好ましい(請求項8)。
【0018】
オゾン水の水温とオゾンの反応性との間には密接な関係があるため、上記発明(請求項8)によれば、湿式酸化処理に供されるオゾン水のオゾン濃度を、当該オゾン水の水温に応じた最適濃度に調整することができ、シリコン酸化膜中のSi−O−Si結合の比率をより増大させることができる。
【0019】
また、上記発明(請求項7)においては、前記湿式酸化槽内のオゾン水の水温を測定し得る水温測定装置と、前記水温測定装置における測定値に基づいて、前記湿式酸化槽内のオゾン水の水温を制御し得る水温制御装置とをさらに備えるのが好ましい(請求項9)。
【0020】
上記発明(請求項9)によれば、湿式酸化処理に供されるオゾン水のオゾン濃度に最適な水温に調整することができ、シリコン酸化膜中のSi−O−Si結合の比率をより増大させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、シリコンウエハの金属汚染をより抑制し得る最適な湿式酸化処理を実現するためのオゾン水供給システム、及び当該システムから供給されるオゾン水を用いて湿式酸化処理を行い得るシリコンウエハの湿式酸化処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るオゾン水供給システムを備えるシリコンウエハの湿式酸化処理システムを示すフロー図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るオゾン水供給システムを備えるシリコンウエハの湿式酸化処理システムを示すフロー図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るオゾン水供給システムを備えるシリコンウエハの湿式酸化処理システムを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜3は、本発明の実施形態に係るオゾン水供給システムを備えるシリコンウエハの湿式酸化処理システムを示すフロー図である。
【0024】
〔第1の実施形態〕
図1A〜Fに示すように、第1の実施形態に係るオゾン水供給システムは、オゾンガス製造装置及びオゾン溶解装置(ともに図示せず)を有するオゾン水供給装置1と、オゾン濃度測定装置2,3と、オゾン水供給配管4とを備え、オゾン水供給配管4を介してオゾン水供給装置1から湿式酸化槽10に所定濃度のオゾン水を供給することができる。また、第1の実施形態におけるシリコンウエハの湿式酸化処理システムは、第1の実施形態に係るオゾン水供給システムと、当該オゾン水供給システムにオゾン水供給配管4を介して接続された湿式酸化槽10とを備える。
【0025】
オゾン濃度測定装置2,3は、図1Aに示すように、オゾン水供給装置1に備えられていてもよいし、図1B〜Dに示すように、オゾン水供給装置1と湿式酸化槽10とを接続するオゾン水供給配管4に設けられていてもよい。また、図1E及びFに示すように、オゾン水供給装置1に備えられているとともに、オゾン水供給配管4に設けられていてもよい。
【0026】
なお、図1C〜Fに示すオゾン水供給システムにおいては、オゾン水供給配管4に希釈水を導入し得る希釈水供給配管5が設けられており、図1D及びFに示すオゾン水供給システムにおいては、希釈水供給配管5にオゾン水供給配管4への希釈水の導入量を調整し得るバルブ6が設けられている。
【0027】
オゾン濃度測定装置2,3としては、測定したオゾン濃度の最小表示単位が0.05ppm以下であって、誤差が±0.05ppm以下である装置を用いるのが好ましく、最小表示単位が0.01ppm以下であって、誤差が±0.01ppm以下である装置を用いるのがより好ましい。
【0028】
オゾン水供給装置1が備えるオゾンガス製造装置としては、例えば、無声放電、沿面放電等による放電方式のオゾンガス製造装置や、電解方式のオゾンガス製造装置等が挙げられるが、オゾンガスを製造し得るものであればどのような装置であっても特に限定されるものではない。
【0029】
オゾンガス製造装置は、オゾン濃度測定装置2,3にて測定されたオゾン濃度に基づいて、湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を所定の濃度に精確に調整し得るようにオゾンガスの発生量を制御することのできる装置であるのが好ましい。
【0030】
オゾン水供給装置1が備えるオゾン溶解装置としては、オゾンガス製造装置にて製造されたオゾンガスを純水(超純水)に溶解させ得るものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ガス透過性膜によって区画された水室と気室とを備え、図示しない純水(超純水)製造装置から供給される純水(超純水)が水室に導入されるとともにオゾンガス製造装置にて製造されたオゾンガスが気室に導入され、ガス透過性膜を透過したオゾンガスが溶解した純水(超純水)を排出し得る膜式ガス溶解装置等が挙げられる。
【0031】
オゾン水供給装置1は、オゾン濃度測定装置2,3にて測定されたオゾン濃度に基づいて、湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を2.0ppm以下に精確に調整し得るようにオゾン水の供給量を制御することのできる装置であるのが好ましい。
【0032】
なお、オゾン水供給装置1(オゾン溶解装置)に供給される純水(超純水)としては、比抵抗10MΩ・cm以上であり、TOC10ppb以下であるのが好ましい。
【0033】
なお、湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度は、2.0ppm以下、好ましくは0.01〜1.0ppm、特に好ましくは0.2〜0.8ppmである。湿式酸化槽10に供給されるオゾン濃度が0.01ppm未満であると、シリコンウエハに形成されるシリコン酸化膜の膜厚が不十分となるおそれがあり、2.0ppmを超えると、Si−O−Si結合よりもSi−OH結合の比率が高く、COOH基の比率の高い酸化膜が形成されてしまう。
【0034】
図1A、E及びFに示すオゾン水供給システムにおいては、オゾン水供給装置1がオゾン濃度測定装置2を備えているため、オゾン溶解装置から排出されたオゾン水のオゾン濃度をオゾン濃度測定装置2にて測定し、その測定値(オゾン濃度)に基づいてオゾンガス製造装置におけるオゾンガス発生量を制御したり、オゾン溶解装置における純水へのオゾンガス溶解量を制御したりする。これにより、湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を2.0ppm以下に精確に調整することができる。
【0035】
図1B〜Dに示すオゾン水供給システムにおいては、オゾン水供給装置1から排出されたオゾン水のオゾン濃度がオゾン水供給配管4に設けられたオゾン濃度測定装置3にて測定される。
【0036】
図1B及びCに示すオゾン水供給システムにおいては、オゾン濃度測定装置3にて測定されたオゾン濃度に基づいて、オゾン水供給装置1のオゾンガス製造装置におけるオゾンガス発生量を制御したり、オゾン溶解装置における純水へのオゾンガス溶解量を制御したりする。これにより、湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を2.0ppm以下に精確に調整することができる。
【0037】
図1Dに示すオゾン水供給システムにおいては、オゾン濃度測定装置3にて測定されたオゾン濃度に基づいて、希釈水供給配管5に設けられたバルブの作動を制御し、オゾン水供給配管4への希釈水の供給量を制御する。これにより、湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を2.0ppm以下に精確に調整することができる。
【0038】
図1E及びFに示すオゾン水供給システムにおいては、オゾン水供給装置1にオゾン濃度測定装置2が備えられているとともに、オゾン水供給配管4にもオゾン濃度測定装置3が設けられているため、希釈水供給配管5からの希釈水による希釈前後のオゾン水のオゾン濃度を測定することができ、それらの測定値に基づいて、オゾン水供給装置1におけるオゾンの発生量やオゾン溶解装置における純水へのオゾンガス溶解量を制御したり、希釈水の供給量を制御したりすることができ、この結果として、湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を2.0ppm以下に極めて精確に調整することができる。
【0039】
このようにして、当該オゾン水供給装置1から2.0ppm以下に精確にオゾン濃度が調整されたオゾン水が、オゾン水供給配管4を介して湿式酸化槽10に供給される。そして、湿式酸化槽10内において、供給されたオゾン水にシリコンウエハが浸漬されて、シリコンウエハ上に酸化膜が形成される。
【0040】
オゾン水へのシリコンウエハの浸漬時間は、0.1〜3時間であるのが好ましく、0.25〜1時間であるのがより好ましい。浸漬時間が0.1時間未満であると、膜厚が薄く不完全な酸化膜が形成されてしまうおそれがあり、3時間を超えると、工程の長時間化による処理コストの増加とともに、Si−OH結合やCOOH基の比率の増加を招くおそれがある。
【0041】
本発明者らの鋭意研究の結果、湿式酸化反応液としてのオゾン水のオゾン濃度が2.0ppm以下に調整することで、シリコンウエハ表面に形成されるシリコン酸化膜おけるSi−OH結合やCOOH基の比率を、Si−O−Si結合の比率よりも低減させることができ、この結果として、シリコンウエハのシリコン酸化膜の金属汚染を抑制可能であることが判明した。
【0042】
したがって、上述したような第1の実施形態に係るオゾン水供給システムによれば、湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を精確に2.0ppm以下に調整することができるため、シリコン酸化膜におけるSi−O−Si結合の比率を増大させ、Si−OH結合やCOOH基の比率を低減させることができ、これにより、シリコンウエハの金属汚染を抑制することができる。また、上述のようにして、4〜6Å、好ましくは5Å程度の略均一な膜厚のシリコン酸化膜を形成することができる。
【0043】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態を図2に示す。
図2に示すように、第2の実施形態におけるシリコンウエハの湿式酸化処理システムは、湿式酸化槽10に、湿式酸化処理に用いられるオゾン水の温度を測定する水温測定装置11が設けられている以外は、第1の実施形態におけるシリコンウエハの湿式酸化処理システムと同様の構成を備える。したがって、第1の実施形態における湿式酸化処理システムと同様の構成には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0044】
第2の実施形態に係るオゾン水供給システムにおいては、湿式酸化槽10に設けられた水温測定装置11にて測定されたオゾン水の水温に基づいて、オゾン水供給装置1から湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を精確に制御することができる。
【0045】
湿式酸化槽10における湿式酸化処理液としてのオゾン水の水温と、オゾンの反応性との間には密接な関係があり、オゾン水の水温が20〜30℃の条件下では、オゾン水のオゾン濃度が0.01〜2ppmの範囲で精確に制御されることで、Si−OH結合よりもSi−O−Si結合の比率が高く、十分かつ略均一な膜厚のシリコン酸化膜をシリコンウエハ上に形成することができる。
【0046】
図2Aに示すオゾン水供給システムにおいては、水温測定装置11にて測定されたオゾン水の水温に基づいて、オゾン水供給装置1が当該水温に応じて湿式酸化処理に適したオゾン濃度のオゾン水を製造することができる。すなわち、オゾン水供給装置1内のオゾン濃度測定装置2にてオゾン水のオゾン濃度を測定し、その測定値(オゾン濃度)及びオゾン水の水温に基づいてオゾンガス製造装置におけるオゾンガス発生量を制御したり、オゾン溶解装置における純水へのオゾンガス溶解量を制御したりする。
【0047】
図2Bに示すオゾン水供給システムにおいては、水温測定装置11にて測定されたオゾン水の水温及びオゾン水供給配管4に設けられたオゾン濃度測定装置3にて測定されたオゾン水のオゾン濃度に基づいて、オゾン水供給装置1内のオゾンガス製造装置におけるオゾンガス発生量やオゾン溶解装置における純水へのオゾンガス溶解量を制御する。
【0048】
図2Cに示すオゾン水供給システムにおいては、水温測定装置11にて測定されたオゾン水の水温及びオゾン水供給配管4に設けられたオゾン濃度測定装置3にて測定されたオゾン濃度に基づいて、オゾン水供給装置1内のオゾンガス製造装置におけるオゾンガス発生量やオゾン溶解装置における純水へのオゾンガス溶解量を制御する。
【0049】
図2Dに示すオゾン水供給システムにおいては、水温測定装置11にて測定されたオゾン水の水温に基づいて、オゾン水供給装置1内のオゾンガス製造装置におけるオゾンガス発生量やオゾン溶解装置における純水へのオゾンガス溶解量を制御することができ、またオゾン水供給配管4に設けられたオゾン濃度測定装置3にて測定されたオゾン濃度に基づいて、オゾン水供給装置1におけるオゾンの発生量や純水へのオゾンガスの溶解量を制御することができる。
【0050】
図2C及びDに示すオゾン水供給システムにおいては、希釈水供給配管5からの希釈水による希釈前後のオゾン水のオゾン濃度を測定することができるため、それらの測定値に基づいて湿式酸化槽10に供給するオゾン水のオゾン濃度を当該オゾン水の水温に応じて湿式酸化処理に適した濃度に制御することができる。したがって、より精確にオゾン水のオゾン濃度を2.0ppm以下であって、湿式酸化処理に適した濃度に精確に調整することができ、湿式酸化処理においてSi−OH結合の比率を低減させ、十分かつ略均一な膜厚のシリコン酸化膜を形成させることができる。
【0051】
このようにして、オゾン濃度が2.0ppm以下であって、湿式酸化処理に適した濃度に精確に調整されたオゾン水が、オゾン水供給装置1からオゾン水供給配管4を介して湿式酸化槽10に供給される。そして、湿式酸化槽10内において、供給されたオゾン水にシリコンウエハが浸漬されて、シリコンウエハに酸化膜が形成される。
【0052】
オゾン水へのシリコンウエハの浸漬時間は、0.1〜3時間であるのが好ましく、0.25〜1時間であるのがより好ましい。浸漬時間が0.1時間未満であると、膜厚が薄く不完全な酸化膜が形成されてしまうおそれがあり、3時間を超えると、工程の長時間化による処理コストの増加とともに、Si−OH結合やCOOH基の比率の増加を招くおそれがある。
【0053】
上述したように、第2の実施形態に係るオゾン水供給システムによれば、湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を湿式酸化槽10内のオゾン水の水温に基づいて2.0ppm以下であって、湿式酸化処理に適した濃度に精確に調整することができるため、シリコン酸化膜におけるSi−O−Si結合の比率をより増大させ、Si−OH結合やCOOH基の比率をより低減させることができ、これにより、シリコンウエハの金属汚染をより抑制することができる。また、上述のようにして、4〜6Å、好ましくは5Å程度の略均一な膜厚のシリコン酸化膜を形成することができる。
【0054】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態を図3に示す。
図3に示すように、第3の実施形態における湿式酸化処理システムは、湿式酸化槽10に、湿式酸化処理に用いられるオゾン水の温度を測定する水温測定装置11と、湿式酸化槽10内のオゾン水の水温を調整し得る水温制御装置12とが設けられている以外は、第1の実施形態における湿式酸化処理システムと同様の構成を備える。したがって、第1の実施形態における湿式酸化処理システムと同様の構成には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0055】
第3の実施形態における湿式酸化処理システムにおいて、湿式酸化槽10に設けられる水温制御装置12としては、オゾン水の水温の昇温及び降温が可能な装置であれば、特に限定されるものではない。
【0056】
図3A〜Dに示すオゾン水供給システムにおいては、水温測定装置11にて測定されたオゾン水の水温に基づいて、水温制御装置12がオゾン水供給装置1から供給され、湿式酸化処理に供されるオゾン水の水温を所定の温度に調整することができる。
【0057】
具体的には、オゾン水の水温は、水温制御装置12により10〜50℃に調整されるのが好ましく、10〜40℃に調整されるのがより好ましく、15〜30℃に調整されるのが特に好ましい。
【0058】
なお、図3Aに示すオゾン水供給システムにおいては、オゾン水供給装置1は、図1Aに示すオゾン水供給システムと同様に、オゾン溶解装置にて排出されたオゾン水のオゾン濃度をオゾン濃度測定装置2にて測定し、その測定値(オゾン濃度)に基づいてオゾンガス製造装置におけるオゾンガス発生量を制御したり、オゾン溶解装置におけるオゾンガス溶解量を制御したりする。これにより、湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を2.0ppm以下に精確に調整することができる。
【0059】
図3Bに示すオゾン水供給システムにおいては、オゾン濃度測定装置3にて測定されたオゾン濃度に基づいて、オゾン水供給装置1のオゾンガス製造装置におけるオゾンガス発生量を制御したり、オゾン溶解装置におけるオゾンガス溶解量を制御したりする。これにより、湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を2.0ppm以下に精確に調整することができる。
【0060】
図3C及びDに示すオゾン水供給システムにおいては、オゾン水供給装置1にオゾン濃度測定装置2が備えられているとともに、オゾン水供給配管4にもオゾン濃度測定装置3が設けられているため、希釈水供給配管5からの希釈水による希釈前後のオゾン水のオゾン濃度を測定することができ、それらの測定値に基づいて、オゾン水供給装置1のオゾンガス製造装置におけるオゾンガス発生量や、オゾン溶解装置におけるオゾンガス溶解量を制御したり、希釈水の供給量を制御したりすることができ、この結果として、湿式酸化槽10に供給されるオゾン水のオゾン濃度を2.0ppm以下に極めて精確に調整することができる。
【0061】
このようにして、2.0ppm以下に精確にオゾン濃度が調整されたオゾン水が、オゾン水供給装置1からオゾン水供給配管4を介して湿式酸化槽10に供給される。そして、湿式酸化槽10内において、供給されたオゾン水にシリコンウエハが浸漬されて、シリコンウエハに酸化膜が形成される。
【0062】
オゾン水へのシリコンウエハの浸漬時間は、0.1〜3時間であるのが好ましく、0.25〜1時間であるのがより好ましい。浸漬時間が0.1時間未満であると、膜厚が薄く不完全な酸化膜が形成されてしまうおそれがあり、3時間を超えると、工程の長時間化による処理コストの増加とともに、Si−OH結合やCOOH基の比率の増加を招くおそれがある。
【0063】
このときに、湿式酸化槽10に設けられた水温測定装置11によるオゾン水の水温の測定結果に基づいて、水温制御装置12は当該オゾン水の水温を湿式酸化処理に適した温度に調整する。
【0064】
これにより、オゾンの反応性を向上させ、シリコン酸化膜におけるSi−O−Si結合の比率をより増大させ、Si−OH結合やCOOH基の比率をより低減させることができる。その結果として、シリコンウエハの金属汚染をより抑制することができる。また、上述のようにして、4〜6Å、好ましくは5Å程度の略均一な膜厚のシリコン酸化膜を形成することができる。
【0065】
以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0066】
上記実施形態において、オゾン水供給装置1は、オゾン濃度測定装置2,3によるオゾン濃度の測定結果に基づいて、当該測定されたオゾン濃度が所定濃度(例えば、2.0ppm)を超えている場合に警報を発生する警報装置を備えていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態において、オゾン水供給装置1は、純水にオゾンとともに、それ以外の気体(例えば、二酸化炭素、窒素等)を溶解させることができるものであってもよい。例えば、湿式酸化槽10に二酸化炭素を含むオゾン水が供給されれば、オゾンの水中での安定性を向上させることができる。また、湿式酸化槽10に窒素を含むオゾン水が供給されれば、オゾン濃度を調整することができる。
【0068】
さらに、上記実施形態において、オゾン水供給装置1は、紫外線酸化装置、イオン交換装置等を備えていてもよい。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例を参照して、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。なお、下記の実施例及び比較例において、シリコンウエハとしては、P型シリコンウエハ(抵抗指定なし(0.1〜100Ω・cm),CZウエハ,結晶方位(100),信越半導体社製)を使用した。
【0070】
〔実施例1〕
シリコンウエハを2%フッ酸及び2%過酸化水素混合溶液に2分間浸漬させた後、比抵抗18.2MΩ・cm以上の超純水を用いてリンス洗浄した。リンス洗浄後のシリコンウエハを下記のようにして湿式酸化処理を行った。
【0071】
図1(D)に示すオゾン水供給システムを用い、オゾン水供給装置1にてオゾン濃度20ppmのオゾン水を製造し、希釈水供給配管5から当該オゾン水を10倍に希釈するように希釈水を導入し、当該希釈されたオゾン水(オゾン濃度:2.0ppm,25℃)を湿式酸化槽10に導入した。
【0072】
希釈されたオゾン水が導入された湿式酸化槽10に上記リンス洗浄後のシリコンウエハを入れ、20分間湿式酸化処理を行った。
【0073】
湿式酸化処理後のシリコンウエハを、比抵抗18.2MΩ・cm以上の超純水(Ca濃度:0.1ppt)を用いてリンス洗浄して乾燥し、乾燥後のシリコンウエハにおけるCa付着量を、TVD−910(テクノス社製)で前処理後、ELAN DRC−II(パーキンエルマージャパン社製)にて測定した。また、当該シリコンウエハにおけるシリコン酸化膜の膜厚を、DHA−XA2/M8(溝尻光学工業所社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0074】
〔実施例2〕
オゾン水を20倍に希釈するように希釈水を導入し、当該希釈されたオゾン水(オゾン濃度:1.0ppm,25℃)を湿式酸化槽10に導入し、20分間湿式酸化処理を行った以外は、実施例1と同様にしてシリコンウエハにおけるCa付着量及びシリコン酸化膜の膜厚を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
〔実施例3〕
図3(D)に示すオゾン水供給システムを用い、オゾン水を40倍に希釈するように希釈水を導入し、当該希釈されたオゾン水(オゾン濃度:0.5ppm,30℃)を湿式酸化槽10に導入し、水温測定装置11による水温の測定結果に基づいて水温制御装置12にてオゾン水の水温を30℃に維持させながら、40分間湿式酸化処理を行った以外は、実施例1と同様にしてシリコンウエハにおけるCa付着量及びシリコン酸化膜の膜厚を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
〔実施例4〕
オゾン水供給装置1にてオゾン濃度20ppm及び炭酸濃度100ppmのガス溶解水を製造した以外は、実施例3と同様にしてシリコンウエハにおけるCa付着量及びシリコン酸化膜の膜厚を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
〔比較例1〕
図1(A)に示すオゾン水供給システムを用い、オゾン水供給装置1にてオゾン濃度20ppmのオゾン水を製造し、オゾン水を希釈することなく当該オゾン水(オゾン濃度:20ppm,25℃)を湿式酸化槽10に導入した以外は、実施例1と同様にして湿式酸化処理を行い、シリコンウエハにおけるCa付着量及びシリコン酸化膜の膜厚を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
〔比較例2〕
オゾン水供給装置1にてオゾン濃度10ppmのオゾン水を製造した以外は、比較例1と同様にして湿式酸化処理を行い、シリコンウエハにおけるCa付着量及びシリコン酸化膜の膜厚を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
〔比較例3〕
バルブ6の制御を行わずに、オゾン水を10倍程度に希釈するように希釈水を導入し、当該希釈されたオゾン水(オゾン濃度:2ppm程度,25℃)を湿式酸化槽10に導入した以外は、実施例1と同様にしてシリコンウエハにおけるCa付着量及びシリコン酸化膜の膜厚を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
〔比較例4〕
オゾン水を20倍程度に希釈するように希釈水を導入し、当該希釈されたオゾン水(オゾン濃度:1ppm程度,25℃)を湿式酸化槽10に導入した以外は、実施例3と同様にしてシリコンウエハにおけるCa付着量及びシリコン酸化膜の膜厚を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
表1に示すように、湿式酸化処理に用いるオゾン水(ガス溶解水)のオゾン濃度を2.0ppm以下に精確に制御した実施例1〜4のオゾン供給システムを用いてシリコンウエハの湿式酸化処理を行うことで、形成されるシリコン酸化膜の膜厚にばらつきが少なく、金属(Ca)汚染も抑制し得ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、金属汚染の抑制が可能であり、略均一のシリコン酸化膜の形成が可能なシリコンウエハにおける湿式酸化処理方法として有用である。
【符号の説明】
【0084】
1…オゾン水供給装置
2…オゾン濃度測定装置
3…オゾン濃度測定装置
4…オゾン水供給配管
5…希釈水供給配管
6…バルブ
10…湿式酸化槽
11…水温測定装置
12…水温制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン水供給装置と、
前記オゾン水供給装置からユースポイントに供給されるオゾン水のオゾン濃度を測定するオゾン濃度測定装置と
を備え、
前記オゾン濃度測定装置における測定値に基づいて、前記オゾン水供給装置から前記ユースポイントに供給されるオゾン水のオゾン濃度が2ppm以下に調整されることを特徴とするオゾン水供給システム。
【請求項2】
前記オゾン水供給装置は、オゾンガス発生装置を有しており、
前記オゾンガス発生装置が、前記オゾン濃度測定装置における測定値に基づいて、オゾンガスの発生量を制御することを特徴とする請求項1に記載のオゾンガス供給システム。
【請求項3】
前記オゾン濃度測定装置における測定値に基づいて、前記ユースポイントに供給されるオゾン水を希釈することにより当該オゾン水のオゾン濃度を2ppm以下に調整することを特徴とする請求項1に記載のオゾン水供給システム。
【請求項4】
前記オゾン水供給装置から前記ユースポイントに前記オゾン水を供給するオゾン水供給配管と、前記オゾン水供給配管の途中に接続され、前記オゾン水を希釈するための希釈水を供給する希釈水供給配管とをさらに備え、
前記オゾン濃度測定装置における測定値に基づいて、前記希釈水供給配管から前記オゾン水供給配管への希釈水の供給量が制御されることを特徴とする請求項3に記載のオゾン水供給システム。
【請求項5】
前記ユースポイントにて使用されるオゾン水の水温に基づいて、前記オゾン水のオゾン濃度を調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオゾン水供給システム。
【請求項6】
前記オゾン濃度測定装置において測定されたオゾン水のオゾン濃度が2ppmを超える場合に、警報を発する警報発生装置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のオゾン水供給システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のオゾン水供給システムと、前記オゾン水供給システムからオゾン水が供給される湿式酸化槽とを備え、
前記オゾン水供給システムから前記湿式酸化槽に供給されたオゾン水中にシリコンウエハを浸漬させることにより、当該シリコンウエハの表面に酸化膜を形成することを特徴とするシリコンウエハの湿式酸化処理システム。
【請求項8】
前記湿式酸化槽内のオゾン水の水温を測定し得る水温測定装置をさらに備え、
前記オゾン水供給システムは、前記水温測定装置における測定値に基づいて、前記湿式酸化槽に供給されるオゾン水のオゾン濃度を調整することを特徴とする請求項7に記載のシリコンウエハの湿式酸化処理システム。
【請求項9】
前記湿式酸化槽内のオゾン水の水温を測定し得る水温測定装置と、前記水温測定装置における測定値に基づいて、前記湿式酸化槽内のオゾン水の水温を制御し得る水温制御装置とをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載のシリコンウエハの湿式酸化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−228406(P2011−228406A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95410(P2010−95410)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】