説明

オフセット作業機の作業方法

【課題】走行機体にオフセット作業が行えるように装着された作業機が、走行機体の移動と作業機自身の水平面内での回動及び移動により、圃場の作業部分から隅部分までの仕上げ作業が連続して行えるようにする。
【解決手段】走行機体2の前進走行に伴って前進する作業機1を一方の側にオフセットさせたときに、前記作業機1がその作業機1に介装された2種類の電動シリンダまたは油圧シリンダの伸縮により水平面内での前記走行機体2に対する2以上の水平回動の自由度を有するオフセット作業機を用い、前記走行機体2が前進走行しながら旋回したときに、前記作業機1に取り付けられた位置方位センサ20からの検出情報に基づいて前記2種類の電動シリンダまたは油圧シリンダの伸縮作動を自動制御することにより前記作業機1を水平面内で2以上に水平回動させながら、前記走行機体2に対する姿勢を連続的に順次変化させて前記作業機1自体の直進性を維持する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体にオフセット作業が行えるように装着された作業機が、走行機体の移動と作業機自身の水平面内での回動及び移動により、圃場の作業部分から隅部分までの仕上げ作業が連続して行えるオフセット作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体の後部に本体フレームが装着され、該本体フレームに、整畦体及び前処理体を左右オフセット状態に設け、前記整畦体及び前処理体を、本体フレームに対して水平方向に回動可能に支持し、該整畦体及び前処理体を、機体の進行方向に対してオフセットされた通常作業位置から直角旋回位置及び180度旋回作業位置に固定、固定解除可能に支持した畦塗り機(オフセット作業機)が、本出願人により提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−28903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術の畦塗り機においては、前処理体及び整畦体への動力伝達、オフセット回動支持構造が複雑であり、水平方向の回動、切り換え操作が面倒なものであった。また、走行機体を前進させながら前処理体及び整畦体により畦塗り作業を行っているとき、走行機体の前端部が圃場端(隅部)に達すると、前処理体及び整畦体による畦塗り作業はその位置でストップすることになる。
そして、整畦体及び前処理体を走行機体に対し反対側オフセット作業位置に回動させ、走行機体により整畦体及び前処理体の位置転換を行って、走行機体及び畦塗り機を後進させながら残りの畦形成作業を行うことができる。しかし、その操作が面倒な上、多くの時間を必要とする、あるいは圃場の状態によっては後進作業ができない状況になる、という問題点があった。
本発明は、このような問題点を解決することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の手段を特徴としている。
本発明のオフセット作業機の作業方法は、走行機体の前進走行に伴って前進する作業機を一方の側にオフセットさせたときに、前記作業機がその作業機に介装された2種類の電動シリンダまたは油圧シリンダの伸縮により水平面内での前記走行機体に対する2以上の水平回動の自由度を有するオフセット作業機を用い、前記走行機体が前進走行しながら旋回したときに、前記作業機に取り付けられた位置方位センサからの検出情報に基づいて前記2種類の電動シリンダまたは油圧シリンダの伸縮作動を自動制御することにより前記作業機を水平面内で2以上に水平回動させながら、前記走行機体に対する姿勢を連続的に順次変化させて前記作業機自体の直進性を維持する制御を行うことを特徴とする。
作業機は、走行機体が旋回する圃場隅部分までの仕上げ作業を行う。
また本発明のオフセット作業機の作業方法は、前記走行機体の旋回にともなう前進時に、前記作業機を持ち上げることなく前記走行機体を停止又は後進動作し、前記作業機を水平面内で水平回動させることを特徴とする
【0006】
詳しくは以下の要領で仕上げ作業が行われる。
前記走行機体の前進及び旋回動作のみで、作業機による圃場全行程の仕上げ作業を行う。
前記走行機体の前進及び旋回、停止又は後進動作により、作業機による圃場全行程の仕上げ作業を行う。
前記走行機体の前進及び旋回、停止又は後進、及び前後進動作により、作業機による圃場全行程の仕上げ作業を行う。
前記作業機の前記2以上の水平回動と水平移動を含む複数の自由度のうち、少なくとも前記2以上の水平回動を作動させて仕上げ作業を行う。
【0007】
作業機自体の直進性を維持する制御は以下の要領で行われる。
前記作業機自体の直進性の制御を、前作業跡を基準に行う作業装置を備える。
前記作業機自体の直進性の制御を、作業機自身の作業跡を基準に行う作業装置を備える。
前記作業機自体の直進性の制御を、作業機自身の回動角度を基準に行う作業装置を備える。
前記作業機は、例えば前処理装置と整畦装置を備えた畦塗り機である。
【0008】
(作用)
上記の各手段により本発明のオフセット作業方法は、走行機体の、前進及び旋回動作のみ、前進及び旋回、停止動作、あるいは前進及び旋回、停止、前後進動作と、作業機の、直進性を制御し、前作業跡を基準に作業を行う作業装置、作業機自身の作業跡を基準に行う作業装置、作業機自身の回動角度を基準に行う作業装置、水平回動、あるいは水平移動の自由度のうち少なくとも1つを作動させる、水平回動、あるいは水平移動の自由度のうち2以上を作動させる、などの動作とにより、走行機体が圃場を走行しつつ作業を行う作業部分から走行機体が旋回する圃場隅部分までの仕上げ作業を連続して行うことが可能となり、能率的で、精度の高いオフセット作業が行える。また、作業機が畦塗り機である場合には、所望の畦を精度よく形成する。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明のオフセット作業方法によれば、請求項に記載した各手段により以下の作用効果を奏することができる。
イ.作業機は、水平面内での2以上の水平回動自由度を有し、作業機自体の直進性を維持しながら、走行機体が圃場を走行しつつ作業を行う作業部分から走行機体が旋回する圃場隅部分までの仕上げ作業を行うので、オフセット作業を連続して、能率良く、かつ精度良く実施することができる。
【0010】
ロ.走行機体の前進及び旋回動作のみで、あるいは走行機体の前進及び旋回、停止動作により、作業機による圃場全行程の仕上げ作業を可能にしたので、走行機体の操作性が良好であり、精度の良いオフセット作業を容易に、かつ確実に実施することができる。
ハ.走行機体の前進及び旋回、停止、前後進動作により、作業機による圃場全行程の仕上げ作業を可能にしたので、作業機のオフセット位置を正確な位置に定めて精度の良い作業を実施することができる。
ニ.作業機自体の直進性の制御を、前作業跡を基準に行う作業装置、あるいは作業機自身の作業跡を基準に行う作業装置を備えているので、新しいオフセット作業を、前作業跡を基準に、あるいは作業機自身の作業跡を基準に行うことができて、精度の良い作業を実施することができる。
【0011】
ホ.作業機自体の直進性の制御を、作業機自身の回動角度を基準に行う作業装置を備えたので、走行機体に対する作業機の位置制御が容易に行え、精度の良いオフセット作業を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1参考例による畦塗り機の作業状態の平面図である。
【図2】同トラクタが旋回している状態の平面図である。
【図3】同直線作業状態(a)からトラクタが順次旋回(b)〜(f)したときの畦塗り機の作業状態を示す平面図である。
【図4】本発明による畦塗り機(第1実施例)の直線作業状態(a)からトラクタが順次旋回(b)〜(d)したときの畦塗り機の作業状態を示す平面図である。
【図5】本発明による畦塗り機(第2実施例)の直線作業状態(a)からトラクタが順次旋回(b)〜(d)したときの畦塗り機の作業状態を示す平面図である。
【図6】本発明による畦塗り機(第3実施例)の直線作業状態(a)からトラクタが順次旋回(b)〜(e)したときの畦塗り機の作業状態を示す平面図である。
【図7】本発明による畦塗り機(第4実施例)の直線作業状態(a)からトラクタが順次旋回(b)〜(c)し、隅部を整畦する(d)〜(e)するときの畦塗り機の作業状態を示す平面図である。
【図8】本発明による畦塗り機(第5実施例)の直線作業状態(a)からトラクタが順次旋回(b)〜(c)し、隅部を整畦する(d)ときの畦塗り機の作業状態を示す平面図である。
【図9】本発明による畦塗り機(第6実施例)の直線作業状態(a)からトラクタが順次旋回(b)〜(c)したときの畦塗り機の作業状態を示す平面図である。
【図10】本発明の第2参考例による畦塗り機の直線作業状態(a)からトラクタが旋回(b)したときの畦塗り機の作業状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるオフセット作業機を畦塗り機に適用した一実施の形態を添付の図面を参照して具体的に説明する。
[参考例1]
図1及び図2において、符号1はトラクタ2の後部に設けられたトップリンク及びロアリンクからなる三点リンク連結機構3を介して昇降可能に連結され、オフセット状態で整畦作業を行う畦塗り機である。この畦塗り機1は、伝動フレームを兼ねる本体フレーム4を、機体の進行方向とほぼ直交するようにして設け、この本体フレーム4の左右中央部に設けられたギヤボックス5から前方に向け図示しない入力軸を突出し、該入力軸にトラクタのPTO軸6からユニバーサルジョイント及び伝動軸を介して動力が伝達される。
本体フレーム4のギヤボックス5上方にトップリンク連結部7が設けられ、前記三点リンク連結機構3のトップリンクが連結される。また、本体フレーム4の左右両側端部には、畦塗り機1のスタンドを着脱するスタンド取付け部8,8が設けられている。
【0014】
本体フレーム4の左右中央部に伝動フレーム9の先端部が、その左右両側部に平行リンク10,11の先端部がそれぞれ水平方向に回動するように枢支され、これら伝動フレーム9及び平行リンク10,11の後端部には伝動・支持フレーム12が水平方向に回動するように枢支されている。
本体フレーム4と伝動フレーム9あるいは平行リンク10,11との間には、図示しない電動シリンダまたは油圧シリンダが介装されており、該電動シリンダまたは油圧シリンダの伸縮作動により、畦塗り機1は伝動フレーム9、平行リンク10,11の枢支部を中心に水平方向に回動して、トラクタ2から左右何れかにオフセットされる作業位置と、トラクタ2の後方に位置する移動位置とに回動可能であり、それぞれの回動位置に固定できるようになっている。
【0015】
前記伝動・支持フレーム12には、伝動フレーム9から動力が伝達され、該伝動・支持フレーム12から動力を受け、作業装置である前処理体14及び整畦体15を前後に支持すると共に、これら前処理体14及び整畦体15に動力伝達する作業機支持・伝動フレーム13が連結されている。
この作業機支持・伝動フレーム13は、伝動・支持フレーム12に対して水平回動軸(ピボット)16を介して水平方向に回動可能であり、その水平回動動作は、図示しないが伝動・支持フレーム12と作業機支持・伝動フレーム13との間に介装された電動シリンダまたは油圧シリンダ(アクチュエータ)の伸縮作動により行われる。また、前処理体14及び整畦体15は、作業機支持・伝動フレーム13に対してそれぞれが別に上下調節可能に支持されているが、それぞれを別に水平回動可能に支持しても良いものである。
【0016】
前記前処理体14は、元畦17の一部及び圃場を耕耘して元畦17に対して畦状に盛り上げる耕耘ロ−タを備えた,従来周知のものである。また、整畦体15は、前処理体14の耕耘ロ−タにより耕耘されて元畦17に盛り上げられた土壌を、回転しながら畦の傾斜面を成形する多角円錐ドラムと、該多角円錐ドラムに一体的に連結され、該多角円錐ドラムにより成形された畦の頂部(天場)を平面状に成形する頂部成形ロールとからなる,これも従来周知のものである。
前記伝動・支持フレーム12の水平回動軸16部分には、後方に向けて三角ディスク形状をなし、コールタを兼ねるゲージホイール18が上下調節可能に設けられている。そして、ゲージホイール18により前処理体14及び整畦体15全体の作業深さを調節して、成形される新畦19の高さを調節すると共に、オフセットによる畦塗り機1の整畦作業が安定よく行われるようにしている。
【0017】
前記前処理体14の前側に、位置方位センサ20を設けている。この位置方位センサ20は、元畦17の位置を検出し、元畦17に対して所望の新畦19が形成されるよう、前処理体14及び整畦体15(畦塗り機1)の位置及び方位を予め設定したデータに基き自動制御する働きをする。該位置方位センサ20は、光学系、電子系、機械系など何れでもよく、例えば、GPS、超音波、レーザ投受光器、画像処理装置、ジャイロ、ポテンショメータ、ボールネジ、パソコンを含むコントローラ(制御部)などを選択して用いる。
画像処理装置、コントローラ(制御部)などは、トラクタ2の操縦席近辺に設けられる。位置方位センサ20の畦塗り機1への取付け位置は、前処理体14の前側に限らず、元畦17の位置及び方位が検出できればどこでも良い。自動制御は、センシング部、制御部、動作(機構)部などに分かれて行われる。
【0018】
そして、位置方位センサ20は、畦塗り機1(前処理体14及び整畦体15)に対する元畦17の位置(距離)及び方位を検出し、畦塗り機1を、伝動フレーム9、平行リンク10,11及び水平回動軸(ピボット)16により水平回動、水平移動させ、また上下移動させて、コントローラ(制御部)により予め設定した位置に移動させて前処理体14及び整畦体15により設定した新畦19を自動的に形成する。
【0019】
センシング部では、元畦17と新畦19との距離を検出し、畦塗り機1の位置と方向を検出する2つの距離センサ、元畦17との距離を検出する距離センサと方位センサにより畦塗り機1の位置と方向を検出する、元畦17との距離を検出する距離センサと方位センサにより畦塗り機1の位置(設定ラインからのズレ)と方向を検出する、などの手段を選択する。
制御部では、2つのセンサからの信号に対し、それぞれの設定値からのズレがゼロとなるように、アクチュエータへ連続的な動作信号を発する、2つのセンサからの信号に対しそれぞれ閾値を設定し、信号が閾値をオーバーしたときに、それぞれの変位をキャンセルする方向の動作信号をオンにし、信号が動作停止値に達したときに動作信号をオフにする、などの手段を選択する。
動作(機構)部では、水平回動軸(ピボット)を2個直列に設け、位置と方位の2自由度動作を実現するなどの機構を選択する。
アクチュエータにおいては、両端にピボットを有する伸縮アクチュエータ、回転アクチュエータなどを選択する。センサ機構とアクチュエータの組み合わせにより動作部を構成することも可能である。
【0020】
次に、上記のように構成された第1参考例の畦塗り機1による作業について、図3を参照して説明する。
畦塗り機1は、トラクタ2の三点リンク連結機構3に連結され、トラクタ2のPTO軸6からギヤボックス5に動力が伝達される。ギヤボックス5に伝達された動力はここで変速され、変速された動力は、伝動フレーム9、伝動・支持フレーム12、作業機支持・伝動フレーム13を介して前処理体14及び整畦体15に伝達され駆動回転させる。そして、トラクタ2の走行と共に位置方位センサ20により検出した元畦17に沿って前処理体14及び整畦体15を移動させながら整畦作業が行われる。
前処理体14では、耕耘ロ−タにより元畦17の一部及び圃場を耕耘して元畦17に対して畦状に盛り上げ、その盛り上げられた土壌を、整畦体15のドラムが回転して畦法面を叩いて新畦19を成形する。また、ドラムと一体的に設けた頂部成形ロールが、畦の頂部に回転しながら接して畦の頂部を均平にして天場を形成する。
【0021】
この前処理体14及び整畦体15により形成される新畦19の高さ、幅、畦の頂部(天場)の幅等については、予め制御部において設定しておく。そして、位置方位センサ20では、畦塗り機1(前処理体14及び整畦体15)に対する元畦17の位置(距離)及び方位が検出され、畦塗り機1を、伝動フレーム9、平行リンク10,11及び水平回動軸(ピボット)16により水平回動、水平移動させ、また上下移動させて、制御部に設定した新畦19を形成する作業位置に移動させ、前処理体14及び整畦体15により新畦19を自動的に形成する。
このように第1参考例の畦塗り機1においては、水平面内での回動及び移動の自由度を有し、あるいはトラクタ2から見て少なくとも2以上の水平回動、あるいは水平移動と水平回動の自由度を有していることで、畦塗り機1自体の直進性を維持しながら、トラクタ2が圃場を走行しつつ作業を行う直進作業部分(a)からトラクタ2が(b)〜(f)のように順に旋回する圃場隅部分21までの整畦(仕上げ)作業を行う。
【0022】
前処理体14及び整畦体15が前記のような作業を行う際、トラクタ2は以下のように作動する。水田圃場が方形(ほとんどが長方形)の場合、直進作業部分(a)ではトラクタ2は元畦17とほぼ一定間隔を保って直進走行する。そしてトラクタ2が圃場の隅部21に来て、トラクタ2の最小旋回半径(この実施例では2.4m)位置に達したときハンドルを最小旋回状態に切って(b)〜(d)に示すように旋回させる。
この間に畦塗り機1は、伝動フレーム9、平行リンク10,11及び水平回動軸(ピボット)16により水平回動、水平移動しながら直進作業状態を維持しつつトラクタ2に対する支持姿勢を順次変化させていく。
(e)ではトラクタ2は旋回を停止し、畦塗り機1はトラクタ2のほぼ後方に位置しており、さらに圃場の隅部21を整畦するために直進移動するが、このときはトラクタ2をわずかに後進させ(f)、隅部21の全部を整畦する。なお、トラクタ2が圃場の隅部21に来て最小半径で旋回させる旋回開始位置を、制御部に予め設定しておき作業者に知らせるようにすると良い。
【0023】
図4に本発明による畦塗り機1の第1実施例を示す。
この第1実施例では、前記第1参考例における伝動フレーム9及び平行リンク10,11に代えて、伝動機能を有する固定伝動アーム22と、この固定伝動アーム22の後端部に先端部が水平回動可能に枢支された回動伝動アーム23とを設け、回動伝動アーム23の後端部を作業機支持・伝動フレーム13に水平回動可能に枢支し、固定伝動アーム22と回動伝動アーム23との間、及び回動伝動アーム23と作業機支持・伝動フレーム13との間に、図示しない電動シリンダまたは油圧シリンダを介装したほかは、第1参考例のものとほぼ同様である。
【0024】
この第1実施例の畦塗り機1においては、直進作業部分(a)では、回動伝動アーム23をわずかに水平回動させるだけで畦塗り機1の直進整畦作業が行われる。トラクタ2が圃場の隅部21に来て、(b)〜(d)に示すように旋回すると、回動伝動アーム23はやや大きく水平回動して畦塗り機1の直進作業を継続させ、圃場隅部分21までの整畦(仕上げ)作業を行う。従って、トラクタ2は直進走行と旋回走行だけで、畦塗り機1は直進作業から圃場の隅部21までの整畦作業を連続して行う。
【0025】
図5に本発明による畦塗り機1の第2実施例を示す。
この第2実施例では、前記第1参考例における本体フレーム4に代えて、伝動機能を有する伝動オフセットアーム24を機体一側に張り出すようにして装着し、この伝動オフセットアーム24の先端部に伝動機能を有する伝動平行リンクアーム25の基部を水平回動可能に枢支し、該伝動平行リンクアーム25の先端部を作業機支持・伝動フレーム13に水平回動可能に枢支して、伝動オフセットアーム24と伝動平行リンクアーム25との間に、図示しない電動シリンダまたは油圧シリンダを介装したほかは、第1参考例のものとほぼ同様である。
【0026】
この第2実施例の畦塗り機1においては、直進作業部分(a)では、第1実施例のものと同様に伝動平行リンクアーム25をわずかに水平回動させるだけで畦塗り機1の直進整畦作業が行われる。トラクタ2が圃場の隅部21に来て(b)〜(d)に示すように旋回すると、伝動平行リンクアーム25はやや大きく水平回動して畦塗り機1の直進作業を継続させ、圃場隅部分21までの整畦(仕上げ)作業を行う。従って、トラクタ2は第1実施例の場合と同様に直進走行と旋回走行だけで、畦塗り機1は直進作業から圃場の隅部21までの整畦作業を連続して行う。
【0027】
図6に本発明による畦塗り機1の第3実施例を示す。
この第3実施例では、前記第1参考例における伝動フレーム9及び平行リンク10,11に代えて、伝動機能を有し、本体フレーム4に基端部を水平回動可能に枢支し、オフセット位置まで長く伸びる回動伝動アーム26の先端部に作業機支持・伝動フレーム13を水平回動可能に枢支し、本体フレーム4と回動伝動アーム26との間、及び回動伝動アーム26と作業機支持・伝動フレーム13との間に、図示しない電動シリンダまたは油圧シリンダを介装したほかは、第1参考例のものとほぼ同様である。
【0028】
この第3実施例の畦塗り機1においては、直進作業部分(a)では、回動伝動アーム26をわずかに水平回動させるだけで畦塗り機1の直進整畦作業が行われる。トラクタ2が圃場の隅部21に来て、(b)〜(d)に示すように旋回すると、回動伝動アーム26はやや大きく水平回動して畦塗り機1の直進作業を継続させ、(e)まで進むと畦塗り機1はトラクタ2のほぼ後方に位置しており、さらに圃場の隅部21を整畦するために直進移動するが、このときはトラクタ2をわずかに後進させて隅部21の全部を整畦する。従って、トラクタ2は少なくとも直進走行と旋回走行とにより、畦塗り機1は直進作業から圃場の隅部21までの整畦作業を連続して行う。
【0029】
図7に本発明による畦塗り機1の第4実施例を示す。
この第4実施例では、前記第1参考例における本体フレーム4に、オフセット方向に延びるオフセット伝動アーム27を固設し、このオフセット伝動アーム27の先端部に回動伝動アーム28の基端部を水平回動可能に枢支し、該回動伝動アーム28の先端部に作業機支持・伝動フレーム13を水平回動可能に枢支している。そして、オフセット伝動アーム27と回動伝動アーム28との間、及び回動伝動アーム28と作業機支持・伝動フレーム13との間に、図示しない電動シリンダまたは油圧シリンダを介装したほかは、第1参考例のものとほぼ同様である。
【0030】
この第4実施例の畦塗り機1においては、直進作業部分(a)では、回動伝動アーム28をわずかに水平回動させるだけで畦塗り機1の直進整畦作業が行われる。トラクタ2が圃場の隅部21に来て、(b)〜(d)に示すように旋回すると、回動伝動アーム28はやや大きく水平回動して畦塗り機1は直進作業から圃場の隅部21までの整畦作業を連続して行う。
畦塗り機1が圃場の隅部21に達した状態(d)のときトラクタ2の走行と畦塗り機1の作動を停止し、三点リンク連結機構3により畦塗り機1を持ち上げて(e)に示す直進作業状態にして元畦17に沿ってセットし、トラクタ2を後進させて畦塗り機1を圃場の隅部21に位置させれば、圃場の隅部21から直進整畦作業を継続させることができる。
従って、トラクタ2は直進走行と、旋回走行と、停止と、後進走行とにより畦塗り機1は直進作業から圃場の隅部21までの全整畦作業を連続して行うことができる。
【0031】
図8に、本発明による畦塗り機1の第4実施例の作業状態における変形例(第5実施例)を示す。
この変形例では、直進作業部分(a)におけるトラクタ2に対する畦塗り機1のオフセット位置が図7の場合と比べ前側になるように回動伝動アーム28を位置させている。そして、トラクタ2が直進作業部分(a)圃場の隅部21に来て(b)〜(c)に示すように旋回すると、回動伝動アーム28はやや大きく水平回動して畦塗り機1は圃場の隅部21までの整畦作業を連続して行う。
畦塗り機1が圃場の隅部21に達した状態(c)のときトラクタ2の走行と畦塗り機1の作動を停止し、三点リンク連結機構3により畦塗り機1を持ち上げて(d)に示す直進作業状態にして元畦17に沿ってセットし、トラクタ2を後進させて畦塗り機1を圃場の隅部21に位置させれば、圃場の隅部21から直進整畦作業を継続させることができる。従って、トラクタ2は直進走行と、旋回走行と、停止と、後進走行とにより畦塗り機1は直進作業から圃場の隅部21までの全整畦作業を連続して行うことができる。
【0032】
図9に本発明による畦塗り機1の第6実施例を示す。
この第6実施例では、前記第3実施例における回動伝動アーム26を伸縮できる構成にした伸縮・回動伝動アーム29とし、その先端部に作業機支持・伝動フレーム13を水平回動可能に枢支し、本体フレーム4と伸縮・回動伝動アーム29との間、及び伸縮・回動伝動アーム29と作業機支持・伝動フレーム13との間に、図示しない電動シリンダまたは油圧シリンダを介装したほかは、第1参考例のものとほぼ同様である。
【0033】
この第6実施例の畦塗り機1においては、直進作業部分(a)では、伸縮・回動伝動アーム29をわずかに伸縮(平行移動)、水平回動させるだけで畦塗り機1の直進整畦作業が行われる。トラクタ2が圃場の隅部21に来て、(b)〜(c)に示すように旋回すると、伸縮・回動伝動アーム29はやや大きく伸縮、水平回動して畦塗り機1は直進作業から圃場の隅部21まで整畦作業を継続して行う。従って、トラクタ2は直進走行と、旋回走行のみで畦塗り機1は直進作業から圃場の隅部21までの整畦作業を連続して行う。
【0034】
[参考例2]
図10に本発明による畦塗り機1の第2参考例を示す。この第2参考例では、前記第1参考例における本体フレーム4に、オフセット方向に延びるオフセット伸縮・伝動アーム30を装着し、このオフセット伸縮・伝動アーム30の先端部に作業機支持・伝動フレーム13を水平回動可能に枢支している。そして、オフセット伸縮・伝動アーム30と作業機支持・伝動フレーム13との間に、図示しない電動シリンダまたは油圧シリンダを介装したほかは、第1実施例のものとほぼ同様である。
【0035】
この第2参考例の畦塗り機1においては、直進作業部分(a)では、オフセット伸縮・伝動アーム30をわずかに伸縮させ、作業機支持・伝動フレーム13を水平回動させるだけで畦塗り機1の直進整畦作業が行われる。
トラクタ2が圃場の隅部21に来て(b)に示すように旋回すると、オフセット伸縮・伝動アーム30はやや大きく伸縮し、また、作業機支持・伝動フレーム13も水平回動して畦塗り機1は直進作業から圃場の隅部21までの整畦作業を連続して行う。従って、トラクタ2は直進走行と、旋回走行するだけで、畦塗り機1は直進作業から圃場の隅部21までの全整畦作業を連続して行うことができる。
【0036】
上記実施例においては、畦塗り機1にセンサ20を備え、これに伴う自動制御装置を装備して畦塗り機1の自動制御が行えるようになっている。実施例では畦塗り機1について説明したが、本発明は、畦塗り機1に限らず例えば牧草収穫機や畦際作業機などのオフセット作業機に広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 畦塗り機
2 トラクタ
3 三点リンク連結機構
4 本体フレーム
5 ギヤボックス
6 トラクタのPTO軸
7 トップリンク連結部
8 スタンド取付け部
9 伝動フレーム
10,11 平行リンク
12 伝動・支持フレーム
13 作業機支持・伝動フレーム
14 前処理体
15 整畦体
16 水平回動軸(ピボット)
17 元畦
18 ゲージホイール
19 新畦
20 位置方位センサ
21 圃場の隅部
22 固定伝動アーム
23,26,28 回動伝動アーム
24 伝動オフセットアーム
25 伝動平行リンクアーム
27 オフセット伝動アーム
29 伸縮・回動伝動アーム
30 オフセット伸縮・伝動アーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前進走行に伴って前進する作業機を一方の側にオフセットさせたときに、前記作業機がその作業機に介装された2種類の電動シリンダまたは油圧シリンダの伸縮により水平面内での前記走行機体に対する2以上の水平回動の自由度を有するオフセット作業機を用い、
前記走行機体が前進走行しながら旋回したときに、前記作業機に取り付けられた位置方位センサからの検出情報に基づいて前記2種類の電動シリンダまたは油圧シリンダの伸縮作動を自動制御することにより前記作業機を水平面内で2以上に水平回動させながら、前記走行機体に対する姿勢を連続的に順次変化させて前記作業機自体の直進性を維持する制御を行うことを特徴とするオフセット作業機の作業方法。
【請求項2】
前記走行機体の旋回にともなう前進時に、前記作業機を持ち上げることなく前記走行機体を停止又は後進動作し、前記作業機を水平面内で水平回動させることを特徴とする請求項1記載のオフセット作業機の作業方法。
【請求項3】
前記走行機体の前進及び旋回動作のみで、前記作業機による圃場全行程の仕上げ作業を可能にしたことを特徴とする請求項1記載のオフセット作業機の作業方法。
【請求項4】
前記走行機体の前進及び旋回、停止又は後進動作により、前記作業機による圃場全行程の仕上げ作業を可能にしたことを特徴とする請求項2記載のオフセット作業機の作業方法。
【請求項5】
前記走行機体の前進及び旋回、停止又は後進、及び前後進動作により、前記作業機による圃場全行程の仕上げ作業を可能にしたことを特徴とする請求項2記載のオフセット作業機の作業方法。
【請求項6】
前記作業機自体の直進性の制御を、前作業跡を基準に行う作業装置を備えたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載のオフセット作業機の作業方法。
【請求項7】
前記作業機自体の直進性の制御を、作業機自身の作業跡を基準に行う作業装置を備えたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載のオフセット作業機の作業方法。
【請求項8】
前記作業機自体の直進性の制御を、作業機自身の回動角度を基準に行う作業装置を備えたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載のオフセット作業機の作業方法。
【請求項9】
前記作業機の前記2以上の水平回動と水平移動を含む複数の自由度のうち、少なくとも前記2以上の水平回動を作動させて仕上げ作業を行うことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8のいずれかに記載のオフセット作業機の作業方法。
【請求項10】
前記作業機が、前処理装置と整畦装置を備えた畦塗り機であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9のいずれかに記載のオフセット作業機の作業方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−126(P2011−126A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197769(P2010−197769)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【分割の表示】特願2003−46086(P2003−46086)の分割
【原出願日】平成15年2月24日(2003.2.24)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】