説明

オプション機器・画像形成装置

【課題】作業者が設置ミスをした場合に容易に気付くことができ、簡単な構成で排紙トラブル等の不具合を未然に回避できるオプション機器、該オプション機器を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】オプション機器としての1段排紙トレイユニット38には、画像形成装置の構造体55のフランジ部53の上面部53aに挟み込んで位置決めするためのコ字形状の保持部62が一体に設けられている。保持部62の下片62bの下面には突起63が形成されており、保持部62がフランジ部53に乗り上げて設置された場合、1段排紙トレイユニット38の上面がスキャナ部50の下面に干渉してそれ以上の挿入動作ができず、これにより作業者は設置状態が異常であることに気付く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に任意に増設可能な排紙ユニット等のオプション機器、該オプション機器を備えた、あるいは該オプション機器を増設可能な複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも一つを有する複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図16に示すように、床面に対する装置の投影面積を少なくして省スペース化を図るべく、装置本体上部に位置するスキャナ部50とその下方に位置するプリンタ部52との間に排紙空間Hを設け、用紙を略垂直方向に搬送して排紙空間Hに排出するいわゆる胴内排紙方式の画像形成装置が知られている。
この種の画像形成装置において、近年の装置のマルチファンクション化機能を活かすべく、あるいはユーザの業務の多様化に応えるべく、常設構成の胴内排紙トレイ29の上にさらに1段(1ビン)排紙トレイユニット54をオプションとして任意に増設できるようになっている。同図において符号54aはトレイ本体を、37はスペーサを示している。
【0003】
図17に示すように、1段排紙トレイユニット54は、画像形成装置の機械的強度を担う構造体55の補強リブとして外側に略直角に突出するように曲げ形成されたフランジ部53(ここでは本体前側板のフランジ部)を利用して位置決め・固定がなされるようになっている。
1段排紙トレイユニット54の胴内排紙空間Hへの挿入方向後端側(装置の前面又は操作面側)には、コ字形状の保持部56が一体に形成されており、挿入終了段階で保持部56をフランジ部53の上面部53aに挟み込んで装置本体に対する1段排紙トレイユニット54の上下方向(矢印y方向)の位置決めを行うようになっている。
胴内排紙空間Hへの設置作業を容易にするために、トレイ本体54aとユニット本体は分離可能となっており、トレイ本体54aは後から取り付けられる。
1段排紙トレイユニット54の保持部56よりも用紙排出方向側の側板54bには上下方向に延びる長穴57が形成されており、フランジ部53の側面部53bの対応箇所に形成されたネジ穴58にネジ59を螺合して固定するようになっている。
このネジ固定により、装置本体に対する1段排紙トレイユニット54の横方向(用紙排出方向;矢印x方向)の位置決めがなされる。
このように、専門のサービス員でなくともユーザが簡単に1段排紙トレイユニット54を増設できるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特許第3474385号公報
【特許文献2】特開2002−308511号公報
【特許文献3】特開2002−247262号公報
【特許文献4】特開2002−137490号公報
【特許文献5】特開2005−173175号公報
【特許文献6】特開2005−075547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1段排紙トレイユニット54が正常に設置されたときは、図18(a)に示すように、保持部56がフランジ部53(厳密には上面部53a)を挟み込むが、保持部56の厚みはせいぜい5mm程度であるため、図18(b)に示すように、保持部56がフランジ部53を挟み込むことなくフランジ部53の上面に乗り上げても作業者にとって違和感はほとんどない。
このため、保持部56がフランジ部53に乗り上げた状態のまま、ネジ59による固定がなされることが多々あった。
乗り上げた状態で固定がなされると、保持部56の余計な寸法mにより、装置本体側の排紙口と1段排紙トレイユニット54の用紙受け入れ口との平行度が阻害され、ジャムやスキュー等の排紙トラブルを生じることがあった。
このような排紙トラブルが生じても、上記のように保持部56の厚みは極めて小さく、違和感のない設置が可能であるため、1段排紙トレイユニット54を設置した者にとってその原因を見抜くことは困難であり、トラブル解消のためのロスタイムがあまりにも大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、作業者が設置ミスをした場合に容易に気付くことができ、簡単な構成で排紙トラブル等の不具合を未然に回避できるオプション機器、該オプション機器を備えた画像形成装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、画像形成装置の構造体の一部に挟み込むことにより、画像形成装置に対し一つの方向の位置決めを行うコ字形状の保持部を有し、該保持部による位置決め方向とは異なる方向から固定されるオプション機器において、前記保持部が前記構造体に挟み込まれることなく前記構造体に乗り上げたときに、画像形成装置の所定位置への設置又は所定位置での固定を妨げる形状を有していることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明では、請求項1記載のオプション機器において、前記保持部の、前記構造体に乗り上げたときに該構造体に接する側の片の厚みが、前記所定位置のスペース間隔よりも前記保持部の部位におけるオプション機器の寸法が大きくなるように設定されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明では、請求項1記載のオプション機器において、前記保持部の、前記構造体に乗り上げたときに該構造体に接する側の片に突起が設けられ、該突起はその高さが前記所定位置のスペース間隔よりも該突起の部位におけるオプション機器の寸法が大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明では、請求項3記載のオプション機器において、前記突起は、挟み込み方向と略直交する前記保持部の幅方向に間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする。
請求項5記載の発明では、請求項3記載のオプション機器において、前記突起は、オプション機器の重心と前記固定位置との間に1つ設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明では、請求項5記載のオプション機器において、前記突起の高さは、オプション機器が前記突起により傾くことで生じる浮き高さが、オプション機器が正常に設置された場合の前記所定位置のスペース間隔との差分よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする。
請求項7記載の発明では、請求項3〜6のうちのいずれか一つに記載のオプション機器において、前記突起は、挟み込み方向先端部がフック形状を有していることを特徴とする。
請求項8記載の発明では、請求項1〜7のいずれか一つに記載のオプション機器において、画像形成装置にネジ固定するための長穴を有し、該長穴の長手方向の寸法は、そのネジ径との差分が、前記保持部が前記構造体に乗り上げたときのオプション機器の寸法変位よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項9記載の発明では、画像形成装置において、請求項1〜8のいずれか一つに記載のオプション機器を備えたことを特徴とする。
請求項10記載の発明では、画像形成装置において、請求項1〜8のいずれか一つに記載のオプション機器を設置可能な対応構成を有していることを特徴とする。
【0012】
請求項11記載の発明では、画像形成装置の構造体の一部に挟み込むことにより、画像形成装置に対し一つの方向の位置決めを行うコ字形状の保持部を有し、該保持部による位置決め方向とは異なる方向から固定されるオプション機器を設置可能な画像形成装置において、前記保持部が前記構造体に挟み込まれることなく前記構造体に乗り上げたときに、画像形成装置の所定位置への設置を妨げる形状を有していることを特徴とする。
【0013】
請求項12記載の発明では、請求項11記載の画像形成装置において、前記オプション機器が設置される所定位置のスペース間隔が、前記保持部が前記構造体に乗り上げたときの前記オプション機器の寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする。
請求項13記載の発明では、請求項11記載の画像形成装置において、前記構造体の、前記保持部が挟み込まれる部分が隆起され又は所定の厚みを有し、該隆起の高さ又は厚みの大きさは、前記保持部が前記構造体に乗り上げたときの前記オプション機器の高さよりも前記オプション機器が設置される所定位置のスペース間隔が小さくなるように設定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項14記載の発明では、画像形成装置の構造体の一部に挟み込むことにより、画像形成装置に対し一つの方向の位置決めを行うコ字形状の保持部を有し、該保持部による位置決め方向とは異なる方向から固定されるオプション機器を設置可能な画像形成装置において、前記保持部が前記構造体に挟み込まれることなく前記構造体に乗り上げたときに、正常に設置されていないことを視覚的に知らせる構成を有していることを特徴とする。
請求項15記載の発明では、請求項14記載の画像形成装置において、前記構造体の、前記保持部により挟み込まれる部分に目立つ色のマークが設けられており、前記マークの幅は前記オプション機器が正常に設置されたときは前記保持部により隠れる大きさに設定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項16記載の発明では、画像形成装置の構造体の一部に挟み込むことにより、画像形成装置に対し一つの方向の位置決めを行うコ字形状の保持部を有するオプション機器を設置可能な画像形成装置において、
前記保持部の一片側のみにネジ挿通孔が形成されているとともに、前記構造体の対応部位にネジ孔が形成され、挟み込んだ後に前記保持部をネジ固定することを特徴とする。
請求項17記載の発明では、請求項9〜16のいずれか一つに記載の画像形成装置において、前記オプション機器が排紙トレイユニットであり、装置本体の上部に位置するスキャナ部と該スキャナ部の下部に位置するプリンタ部との間のスペースに設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1段排紙トレイユニット等のオプション機器を画像形成装置に設置(増設)する場合に、作業者が設置ミスをしても設置状態が異常であることを容易に認識でき、簡単な構成で排紙トラブル等の不具合を未然に回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施形態を図1乃至図8に基づいて説明する。なお、上記従来例と同一部分は同一符号で示す。
まず、本実施形態における画像形成装置としてのカラー複写機(以下、単に「複写機」という)の構成及び印刷動作の概要を説明する。
図1に示すように、タンデム方式の複写機1は、プリンタ部としての装置本体2の上部にスキャナ部50を有しており、装置本体2の下部には、給紙カセット23、24が着脱自在に設けられている。
スペーサ37を介して上下に隔てられたスキャナ部50とプリンタ部52との間には、排紙空間Hが形成されている。符号60は操作パネルを示している。実際にはスキャナ部50の上にADF(自動原稿搬送装置)が載置されているが、図面上省略している。
【0018】
図2に示すように、装置本体2内の略中央部には像担持体としての4つの感光体ドラム3Y、3M、3C、3Bkが水平状態で図中左右方向に等間隔で離間されて並列に配設されている。なお、添え字Y、M、C、Bkは各々イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックを示している。
イエロー画像用の感光体ドラム3Yを代表して説明すると、感光体ドラム3Yは時計回り方向に回転駆動されるもので、その周囲には静電写真プロセスに従い帯電手段としての帯電ローラ4Y、現像ローラ5Yを有する現像装置6Y、クリーニング手段としてのクリーニング部材7Y等の作像部材が順に配設されている。
マゼンタ、シアン、ブラック用の感光体ドラム3M、3C、3Bk側についても同様の構成となっている。すなわち、用いるトナーの色が異なるだけである。なお、感光体としてはベルト状のものを用いることも可能である。
【0019】
感光体ドラム3Y、3M、3C、3Bkの下方には各色毎の画像データ対応のレーザ光を一様帯電済みの感光体ドラム3Y、3M、3C、3Bkに対してスキャニング照射し静電潜像を形成するための露光装置8が設けられており、各帯電ローラ4と各現像ローラ5との間にはこの露光装置8により照射するレーザ光が感光体ドラム3Y、3M、3C、3Bkに向けて入り込むように細長いスペース(スリット)が確保されている。図示例は、レーザ光源、ポリゴンミラー等を用いたレーザスキャン方式として示したが、LEDアレイと結像手段とを組合せた露光装置であってもよい。
【0020】
感光体ドラム3Y、3M、3C、3Bkの上部には、複数のローラ9、10、11により支持されて反時計回り方向に回転駆動される中間転写ベルト12が設けられている。中間転写ベルト12の内周部には各感光体ドラム3Y、3M、3C、3Bkに対向させて1次転写手段としての転写ローラ13Y、13M、13C、13Bkが設けられている。
中間転写ベルト12の外周部のローラ11に対向する位置には、ベルト表面に残留する不要なトナーを拭い去るクリーニング装置14が設けられており、ローラ9に対向する位置には、中間転写ベルト12上のトナー像を転写紙Sに転写するための2次転写手段としての転写ローラ18が設けられている。
【0021】
露光装置8の下方には2段の給紙カセット23、24が引出し自在に配設されている。これらの給紙カセット23、24内に収納されたシート状記録媒体としての転写紙Sは対応する給紙ローラ25、26により選択的に給紙されるもので、中間転写ベルト12と転写ローラ18とによる転写位置に向けて給紙搬送経路27がほぼ垂直に形成されている。
給紙搬送経路27において転写位置直前には転写位置への給紙タイミングをとるレジストローラ対28が設けられている。
【0022】
転写位置上方には順に、定着装置31、常設の排紙部35、オプション機器としての1段排紙トレイユニット38が設けられている。排紙部35には、装置本体の上面である胴内排紙トレイ29に排出する排紙ローラ対34、1段排紙トレイユニット38に排紙するための搬送ローラ対36、胴内排紙トレイ29と1段排紙トレイユニット38の何れかに搬送路を切り換える切換爪32等が設けられている。
1段排紙トレイユニット38には、トレイ本体40と、排紙ローラ対39等が設けられている。
装置本体2内において胴内排紙トレイ29の下方の空間は各感光体ドラム3Y、3M、3C、3Bkで用いる各色のトナーを収納し、対応する現像装置にポンプ等により搬送供給可能なトナー容器収納部33が設けられている。
【0023】
このような構成において、転写紙Sに画像を形成する印刷時の動作について説明する。まず、露光装置8の作動により半導体レーザから出射されたイエロー用の画像データ対応のレーザ光が帯電ローラ4Yにより一様帯電済みの感光体ドラム3Yの表面に照射されることにより静電潜像が形成される。
この静電潜像は現像ローラ5Yによる現像処理を受けてイエロートナーで現像され、可視像となり、感光体ドラム3Yと同期して移動する中間転写ベルト12上に転写ローラ13Yによる転写作用を受けて転写される。このような潜像形成、現像、転写動作は感光体ドラム3M、3C、3Bk側でもタイミングをとって順次同様に行われる。この結果、中間転写ベルト12上には、イエローY、マゼンタM、シアンC及びブラックBkの各色トナー画像が順次重なり合ったフルカラートナー画像として維持・搬送される。
【0024】
中間転写ベルト12上のフルカラートナー画像は、レジストローラ対28によりタイミングをとって転写位置に搬送される転写紙Sに転写ローラ18により転写される。
フルカラートナー画像を転写された転写紙Sは定着装置31による定着処理を経て排紙ローラ対32により胴内排紙トレイ29上に排紙され、あるいは1段排紙トレイユニット38に送られて排紙ローラ対39により1ビンのトレイ本体40に排紙される。
【0025】
図3に示すように、常設の排紙部35はユニットとして、奥行方向の前後端に形成された固定片35aを介して構造体55の切り起し片55aに図示しないネジで固定されている。
1段排紙トレイユニット38は、奥行側内部に位置決めピン64を有しており、手前側端部には挟み込み部材としての保持部62を一体に有している。1段排紙トレイユニット38の保持部62よりも用紙排出方向側の側板38aには上下方向に延びる長穴65が形成されており、従来例と同様にネジ59で固定されるようになっている。
排紙部35の奥行側端部には、位置決めピン64を挿入するピン支持片35bが形成されており、1段排紙トレイユニット38を設置する場合には、排紙空間Hにおいて1段排紙トレイユニット38を斜めに挿入して位置決めピン64をピン支持片35bに臨ませた後、排紙部35に略平行にした状態で保持部62をフランジ部53の上面部53aに挟み込んで押し込む。
【0026】
図4及び図5に示すように、保持部62は上片62aと下片62bを有するコ字形状をなし、下片62bの下面には、突起63が挟み込み方向と直交する保持部62の幅方向に間隔をおいて2つ形成されている。
本実施形態では、1段排紙トレイユニット38のユニット本体、保持部62及び突起63は合成樹脂で一体成形されている。図4において、符号66は構造体55に対するスペーサ37の固定ネジを示している。
図5に示すように、各突起63の押し込み側端面(後端)は、押し込み時(挟み込み時)に作業者の手に角が当たって痛くならないように斜めに面取りされている。丸みを付けてもよい。
【0027】
保持部62における突起63は、1段排紙トレイユニット38を設置する場合に、フランジ部53上に保持部62が乗り上げたときに、その状態が異常であることを作業者に認識させるために設けられている。
作業者への上記認識を迅速に可能ならしめるために、図4に示すように、フランジ部53の上面から突起63の下端までの距離(換言すれば保持部62の溝上面から突起63の下端までの距離)Lと、1段排紙トレイユニット38とスキャナ部50の下面との距離Bとの関係が、L>Bとなるように設定されている。
すなわち、突起63を含めた保持部62がフランジ部53の上面に乗り上げた場合、保持部62での1段排紙トレイユニット38の全高は排紙空間Hの所定位置におけるスペース間隔を超えるため、図6に示すように、1段排紙トレイユニット38の上端がスキャナ部50の下面に当接し、それ以上の押し込みが阻害される。
これにより、作業者は挿入状態が異常であることを認識し、保持部62がフランジ部53に正常に挟み込まれていないことに気付き、設置作業がやり直される。
【0028】
また、図5に示すように、フランジ部53の上面から突起63の下端までの距離Lと、長穴65の高さW(長手方向の寸法)とネジ59の軸径dとの差分との関係が、L>W−dとなるように設定されている。
すなわち、突起63を含めた保持部62がフランジ部53の上面に乗り上げた場合、長穴65を介してネジ59をネジ穴58に螺合できないようになっている。
したがって、作業者はネジ59による固定ができないことにより挿入状態(設置状態)が異常であることを認識し、保持部62がフランジ部53に正常に挟み込まれていないことに気付き、設置作業がやり直される。
【0029】
図7に示すように、突起63を有しない従来構成においては、保持部56がフランジ部53に乗り上げると、装置本体側の排紙口と1段排紙トレイユニット54の用紙受け入れ口との平行度が阻害される。
換言すれば、装置本体側の搬送ローラ対と1段排紙トレイユニット54の排紙ローラ対の軸心の平行度が阻害され、装置本体側の排紙方向E1に対して1段排紙トレイユニット54の排紙方向はE2となり、ジャムやスキュー、1段排紙トレイユニット54の用紙受け入れ口への進入不良等の排紙トラブルが発生しやすい。
これに対し本実施形態に係る構成では、フランジ部53に保持部62が乗り上げる設置ミスがあっても作業者が直ぐに気付いて正常な設置状態とすることができるので、図7に示すように、常に装置本体側の搬送ローラ対36と1段排紙トレイユニット38の排紙ローラ対39の軸心が平行な、排紙トラブルの無い状態を得ることができる。
このように、外観の見劣りや他の部材への悪影響を及ぼすことのない僅かな突起63を設けるだけで、保持部がフランジ部53に乗り上げることによる排紙トラブルを未然に防止できる。
【0030】
本実施形態では、突起63による挿入状態の異常認識構成と、ネジ59による固定ができないことによる挿入状態の異常認識構成(以下、「ネジ固定不可方式」ともいう)とを併用する構成としたが、いずれか一方でもよい。
ネジ固定不可方式のみを採用する場合には、Lは、突起63を含まない距離(従来と同様)である。この場合、保持部62の片の厚みが小さすぎて長穴65の寸法変化に反映されにくい場合には、少なくとも下片62bの厚みを大きくすればよい。
【0031】
工場等における画像形成装置の組み立て工程において、スキャナ部50が設置されていない段階で1段排紙トレイユニット38を設置する場合、あるいはスキャナ部を有しないプリンタ構成のみの画像形成装置において1段排紙トレイユニット38を増設する場合には、設置スペースの上方に干渉部材が存在しないので、突起63を設ける構成は意味がない。
このような場合でも、ネジ固定不可方式を採用すれば作業者に異常な設置状態を認識させることができ、保持部がフランジ部53に乗り上げることによる排紙トラブルを未然に防止できる。
【0032】
図10及び図11に基づいて第2の実施形態を説明する。なお上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じ)。
第1の実施形態では、突起63を2つ設ける構成としたが、本実施形態では1つ設けており、その位置は、保持部62の幅方向において、1段排紙トレイユニット38の重心Gとネジ59による固定位置との間である。
図10に示すように、Lは、保持部62がフランジ部53に乗り上げて傾いた際に生じる浮き高さDと、1段排紙トレイユニット38とスキャナ部50の下面との距離Bとの関係が、D>Bとなるように設定されている。
保持部62がフランジ部53に乗り上げた場合、1段排紙トレイユニット38は傾いて上面がスキャナ部50の下面に干渉するので、作業者は排紙空間Hへの挿入状態が異常であることを認識する。本実施形態においても、上記ネジ固定不可方式を併用してもよい。
突起63を有する上記各実施形態において、図11に示すように、突起63を、その挟み込み方向先端部がフック形状を有している形状(鈎型形状)とすれば、ハーネス70等の線材を保持する機能を得ることができ、挿入状態が異常であることを認識させる部材の付加価値を高めることができる(第3の実施形態)。
【0033】
図12に第4の実施形態を示す。
本実施形態では、保持部62の下片62bの厚みが突起63の高さを含めた厚みに設定されており、これにより寸法Lが確保されている。下片62bの厚みを単に大きくするだけであるので、突起63を形成する場合に比べて製造が容易となる。
図13に第5の実施形態を示す。
本実施形態では、突起63又はそれと同様の機能を呈する部分を保持部62以外に設けた点に特徴を有している。すなわち、突起63に代えて、1段排紙トレイユニット38のユニット本体の上面に凸部67を形成している。したがって、保持部62は突起63を持たない従来と同様の形状を有しているが、保持部62がフランジ部53に乗り上げた場合、フランジ部53の上面から下片62bの下端までの距離L1と凸部67の高さL2の合計がLとなって干渉が生じる。
この場合、凸部67は必ずしも1段排紙トレイユニット38側に設ける必要はなく、二点鎖線で示すように、スキャナ部50側に設けてもよい。ここでは凸部67を例示したが、保持部62がフランジ部53に乗り上げたときに干渉が生じればよく、この構成に限定される趣旨ではない。
【0034】
図14に示すように、フランジ部53の上面部53aの保持部62を挟み込む部位を隆起させてL2を確保するようにしてもよい(第6の実施形態)。
上記各実施形態では、1段排紙トレイユニット38又は1段排紙トレイユニット38と装置本体側相互の形状的特徴による所定位置への設置不可又はネジ固定不可をもって、1段排紙トレイユニット38の挿入状態が異常であることを作業者に認識させる構成としたが、本実施形態では、正常に設置されていないことを視覚的に知らせることもできる(第7の実施形態)。
図15(a)に示すように、フランジ部53の上面部53aにおける保持部62により挟み込まれる部分には、目立つ色(例えば赤、オレンジ、ピンク、黄色、蛍光材等)のマーク68が、塗布又はシール貼付等の手法により設けられている。マーク68の幅Mは保持部62の幅と同等かそれ以下に設定されている。
保持部62がフランジ部53に乗り上げた場合には、外部からマーク68が視認されるので、作業者はその時点又はチェック時に挿入状態が異常であることを認識でき、保持部62がフランジ部53に正常に挟み込まれていないことに気付くことになる。
正常に挟み込まれた場合には、図15(b)に示すように、マーク68は保持部62に覆われる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置としてのカラー複写機の斜視図である。
【図2】画像形成装置の正面(前面)側からの概要縦断面図である。
【図3】画像形成装置の排紙部の取り付け状態と、1段排紙トレイユニットの設置位置関係を示す分解斜視図である。
【図4】1段排紙トレイユニットを正常に設置した状態の要部正面図である。
【図5】1段排紙トレイユニット固定部を示す要部側面図である。
【図6】1段排紙トレイユニットが正常に設置されない場合のスキャナ部との当接状態を示す模式図である。
【図7】正常に設置された場合の画像形成装置側と1段排紙トレイユニット側の平行度を示す図である。
【図8】従来において、保持部がフランジ部に乗り上げた場合の画像形成装置側と1段排紙トレイユニット側の平行度のずれを示す図である。
【図9】第2の実施形態において、1段排紙トレイユニットを正常に設置した状態の要部正面図である。
【図10】第2の実施形態において、保持部がフランジ部に乗り上げた状態の要部正面図である。
【図11】第3の実施形態における突起の形状を示す図である。
【図12】第4の実施形態において、1段排紙トレイユニットを正常に設置した状態の要部正面図である。
【図13】第5の実施形態において、1段排紙トレイユニットを正常に設置した状態の要部正面図である。
【図14】第6の実施形態において、1段排紙トレイユニットが正常に設置されない状態の要部正面図である。
【図15】第7の実施形態を示す図で、(a)は1段排紙トレイユニットが正常に設置されない状態の要部正面図、(b)は正常に設置された状態の要部正面図である。
【図16】従来における画像形成装置概要正面図である。
【図17】1段排紙トレイユニットの設置状態を示す要部斜視図である。
【図18】従来において、保持部がフランジ部に正常に挟み込まれている状態を示す要部断面図、(b)は保持部がフランジ部に乗り上げた状態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0036】

G 重心位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置の構造体の一部に挟み込むことにより、画像形成装置に対し一つの方向の位置決めを行うコ字形状の保持部を有し、該保持部による位置決め方向とは異なる方向から固定されるオプション機器において、
前記保持部が前記構造体に挟み込まれることなく前記構造体に乗り上げたときに、画像形成装置の所定位置への設置又は所定位置での固定を妨げる形状を有していることを特徴とするオプション機器。
【請求項2】
請求項1記載のオプション機器において、
前記保持部の、前記構造体に乗り上げたときに該構造体に接する側の片の厚みが、前記所定位置のスペース間隔よりも前記保持部の部位におけるオプション機器の寸法が大きくなるように設定されていることを特徴とするオプション機器。
【請求項3】
請求項1記載のオプション機器において、
前記保持部の、前記構造体に乗り上げたときに該構造体に接する側の片に突起が設けられ、該突起はその高さが前記所定位置のスペース間隔よりも該突起の部位におけるオプション機器の寸法が大きくなるように設定されていることを特徴とするオプション機器。
【請求項4】
請求項3記載のオプション機器において、
前記突起は、挟み込み方向と略直交する前記保持部の幅方向に間隔をおいて複数設けられていることを特徴とするオプション機器。
【請求項5】
請求項3記載のオプション機器において、
前記突起は、オプション機器の重心と前記固定位置との間に1つ設けられていることを特徴とするオプション機器。
【請求項6】
請求項5記載のオプション機器において、
前記突起の高さは、オプション機器が前記突起により傾くことで生じる浮き高さが、オプション機器が正常に設置された場合の前記所定位置のスペース間隔との差分よりも大きくなるように設定されていることを特徴とするオプション機器。
【請求項7】
請求項3〜6のうちのいずれか一つに記載のオプション機器において、
前記突起は、挟み込み方向先端部がフック形状を有していることを特徴とするオプション機器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載のオプション機器において、
画像形成装置にネジ固定するための長穴を有し、該長穴の長手方向の寸法は、そのネジ径との差分が、前記保持部が前記構造体に乗り上げたときのオプション機器の寸法変位よりも小さく設定されていることを特徴とするオプション機器。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載のオプション機器を備えた画像形成装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一つに記載のオプション機器を設置可能な対応構成を有している画像形成装置。
【請求項11】
画像形成装置の構造体の一部に挟み込むことにより、画像形成装置に対し一つの方向の位置決めを行うコ字形状の保持部を有し、該保持部による位置決め方向とは異なる方向から固定されるオプション機器を設置可能な画像形成装置において、
前記保持部が前記構造体に挟み込まれることなく前記構造体に乗り上げたときに、画像形成装置の所定位置への設置を妨げる形状を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項11記載の画像形成装置において、
前記オプション機器が設置される所定位置のスペース間隔が、前記保持部が前記構造体に乗り上げたときの前記オプション機器の寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項11記載の画像形成装置において、
前記構造体の、前記保持部が挟み込まれる部分が隆起され又は所定の厚みを有し、該隆起の高さ又は厚みの大きさは、前記保持部が前記構造体に乗り上げたときの前記オプション機器の高さよりも前記オプション機器が設置される所定位置のスペース間隔が小さくなるように設定されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
画像形成装置の構造体の一部に挟み込むことにより、画像形成装置に対し一つの方向の位置決めを行うコ字形状の保持部を有し、該保持部による位置決め方向とは異なる方向から固定されるオプション機器を設置可能な画像形成装置において、
前記保持部が前記構造体に挟み込まれることなく前記構造体に乗り上げたときに、正常に設置されていないことを視覚的に知らせる構成を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項14記載の画像形成装置において、
前記構造体の、前記保持部により挟み込まれる部分に目立つ色のマークが設けられており、前記マークの幅は前記オプション機器が正常に設置されたときは前記保持部により隠れる大きさに設定されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
画像形成装置の構造体の一部に挟み込むことにより、画像形成装置に対し一つの方向の位置決めを行うコ字形状の保持部を有するオプション機器を設置可能な画像形成装置において、
前記保持部の一片側のみにネジ挿通孔が形成されているとともに、前記構造体の対応部位にネジ孔が形成され、挟み込んだ後に前記保持部をネジ固定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項9〜16のいずれか一つに記載の画像形成装置において、
前記オプション機器が排紙トレイユニットであり、装置本体の上部に位置するスキャナ部と該スキャナ部の下部に位置するプリンタ部との間のスペースに設置されることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−76998(P2008−76998A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259387(P2006−259387)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】