説明

オリーブ油中の主要刺激性物質であるオレオカンタールの使用及び構造的且つ機能的に類似した化合物の使用

【解決手段】 本発明はオレオカンタールの精製されたエナンチオマーの合成方法を提供するものである。本発明は、更に、食品添加物、医薬品、化粧品、動物性忌避剤を含む様々な製剤におけるオレオカンタールの使用方法、並びに哺乳類の刺激性受容体遺伝子、遺伝子産物、対立遺伝子、スプライス変異、及び代替の転写物等の開発手段におけるオレオカンタールの使用方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年5月9日付け出願の米国仮出願番号第60/679,136号、及び2005年7月29日付け出願の米国仮出願番号第60/703,565号に対して優先権を主張するものであり、これらの開示はこの参照により本願明細書に組み込まれるものである。
【0002】
本発明はオレオカンタールと呼ばれるオリーブ油中の活性主体に関するものであり、食品添加物、医薬品、化粧品、動物性忌避剤を含む様々な製剤におけるオレオカンタールの使用方法、並びに哺乳類の刺激受容体遺伝子、遺伝子産物、対立遺伝子、スプライス変異、及び代替の転写物等の開発手段におけるオレオカンタールの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
40年以上前、Fisher及びGriffinは、ヒト口腔が生体内における薬理学的標本としてみなされ得ることを提案した。彼らは、化合物の苦味強度の知覚というものは化合物の薬理活性及び作用強度に反映することを提案した。この考えを裏づけるものとして、彼らは、いくつかの薬剤に対して、活性異性体は不活性な異性体より苦いことを指摘した。選択された毒素の苦み強度とそれらのLD50値との間には大まかな相関関係もある。
【0004】
感覚特性及び感覚強度に加えて、知覚位置は、薬理学的関連性を有する可能性がある。多くの化合物は、口腔に入れた場合、刺激(例えば、灼熱感、チクチク感、冷却)を誘発し、苦味に関しては、このような刺激は、潜在的危険性の信号として役立つ可能性がある。
【0005】
部位特異的な刺激を有する一部の化合物には有益な効果がある。高級なオリーブ油の多くは、特有の刺激又は辛味があることが望ましい性状であり、前記刺激又は辛味は口ではなくもっぱら咽頭において知覚されるため、非常に独特なものである。
【0006】
1993年、Montedoro及びその協働者は、バージンオリーブ油から、ジアルデヒド及びアルデヒド形態のリングストロシド(5)及びオロロペイン(6)を含む新しい種類のフェノール化合物(1〜4)の単離について報告した(Montedoro,G.et al.(1993)J.Agric.Food Chem.41:2228−2234)(図1の構造を参照)。これらのフェノール化合物は、苦味、刺激、及び収斂感を含む感覚刺激の特性に関係したバージンオリーブ油の重要な微量成分を有する(Andrewes,P.et al.(2003)J.Agric.Food Chem.57:1415−1420)。さらに、これらの物質は、バージンオリーブ油の酸化安定性に関与し、具体的には抗酸化/抗癌作用といったオリーブ油の健康効果と関係していることが示唆されている(Owen,R.W.et al.(2000)Food Chem.Toxicology 38:647−659;Owen,R.W.et al.(2000)Eur.J.Cancer 36(10):1235−1247;Baldioli,M.ら(1996)J.Am.Oil Chem.Soc.73(11):1589−1593;Manna,C.et al.(2002)J.Agric.Food Chem.50(22):6521−6526)。類似した構造的特徴が、オウバイ(Jasminum)成分において(Somanadhan、B.et al.(1998)Planta Medica 64:246−50;Takenaka、Y.et al.(2002)Chem.&Pharm.Bull 50(3):384−389)、更に関連植物種の成分において(akenaka,Y.et al.(2002)Phytochemistry 59(7):779−787)、報告されている。イブプロフェン及び地中海の食事(すなわち、オリーブ油が多い食物)の両方が、乳癌及び肺癌のリスク/発生率のいずれも低下させることが示されている。
【0007】
2003年、Unilever Research and Development Vlaardingen(オランダ)のブッシュ及びその協働者は、デアセトキシジアルデヒドのリングストロシドアグリコンが高品質バージンオリーブ油に関連する咽喉の後方における強い刺激的(燃焼する)感覚の主成分であると特定した(Andrewes,P.et al.(2003)J.Agric.Food Chem.57:1415−1420)。Firmenich社の研究においても同じ結論に達した(Firmenich,Inc.研究)。文献データ(Montedoro、G.et al.(1993)J.Agric.Food Chem.41:2228−2234)との比較と組み合わせた1及び2Dの一連のNMR実験(Andrewes,P.et al.(2003)J.Agric.Food Chem.57:1415−1420)を用いて、1の構造を特定した。
【0008】
【化20】

【0009】
この絶対立体化学は未決定のままであった。1が咽喉の後方における強い刺激的な(灼熱感)感覚の原因であるという前述の結論は、ヒト感覚研究と併せて、広範囲な一連のHPLC画分解析、脱落解析並びにその相関関係、及び加水分解研究に基づくものであった。しかしながら、Andrewesらは、「灼熱感を引き起こしている共溶出化合物」は1の合成を完了せずに除去することができなかったことを認め、それは「非常に挑戦的」なことであると述べた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はオレオカンタール1(図1)の両エナンチオマーのエナンチオ選択性全合成を提供するものであり、更にそれらの構造を確認するだけでなく、オリーブ油刺激物の絶対立体化学の特定を可能にするものでもある。前記合成によって、更なる生物学的試験/官能試験に対する両エナンチオマーへの有効な経路が提供される。研究によると、左旋性(−)である1のエナンチオマー(図1)が高級なオリーブ油を用いて試験した咽頭の後方における感覚刺激性の特性の原因であることが示された。
【0011】
従って、本発明は単離及び精製された脱アセトキシジアルデヒドであるリングストロシドアグリコンを提供するものであり、発明者等はそれをオレオカンタールと名付けた。本発明はまた、以下の一般式を有するオレオカンタールの機能的誘導体を提供するものであり、
【0012】

【0013】
式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORである。
【0014】
オレオカンタールを含む化学式Iの化合物は、集合的に本明細書において「オレオカンタール」と称す。「オレオカンタール」の用語は、具体的に、脱アセトキシジアルデヒドであるリングストロシドアグリコンを指す。
【0015】
本発明は、オレオカンタールの精製されたエナンチオマーの合成方法を提供する。
【0016】
本発明は更に、食品添加物(例えば調味料、甘味阻害剤、スパイス、調味料、及び防腐剤)、医薬品(例えば抗酸化剤、マイクロGタンパク質及び関連キナーゼ阻害剤、Aβ42阻害剤、プレセニリン修飾子、γ−セクレターゼ阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬、解熱剤、風邪並びにインフルエンザ症緩和剤、COX−1、Cox−2阻害剤、Cox−3阻害剤、リポオキシゲナーゼ阻害剤、及び損傷治療剤)、化粧品、動物性忌避剤、及び哺乳類の刺激受容体遺伝子、遺伝子産物、対立遺伝子、スプライス変異、代替転写物などの開発手段を含む様々な製剤におけるオレオカンタールの使用方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本願明細書において参照され当業者によって確立された参照研究、特許、特許出願、及び科学文献はそれぞれ、本質的かつ独立的にこの参照により本願明細書に同程度に組み込まれるものである。本願明細書におけるあらゆる引例と本明細書における具体的な教示との間の矛盾はいずれも、後者の利益となるように解決されるべきである。
【0018】
様々な定義がこの文書の全体を通じて作られている。ほとんどの単語は、当業者による言葉の意味を有する。具体的に以下で定義された単語、又は本文書ではない他の文書で定義された単語は、本発明の文脈の全体において、及び当業者に一般的に理解されるように提供される意味を有する。単語又は語句の技術的に理解されている定義と、本明細書における具体的な教示としての単語又は語句の定義との間の矛盾は、後者を支持することにより解消される。本願明細書において用いられる表題は、便宜上のものであり、限定するものとして解釈されない。
【0019】
化学合成の一般的な原理を記載した標準的な参考資料は、当業者にとって周知であり、例えば、A.I.Vogel,VOGEL’S TEXTBOOK OF PRACTICAL ORGANIC CHEMISTRY(5TH EDITION)WILEY,N.Y.1989、及びORGANIC SYNTHESES.9 collective volumes;Index for vol.1−8;Wiley,N.Y.が挙げられる。
【0020】
当業者に周知の組み換えDNA技術の一般的な原則を記載している標準的な参考資料としては、Ausubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley&Sons,New York,1998、Kaufman et al.,Eds.,HANDBOOK OF MOLECULAR AND CELLULAR METHODS IN BIOLOGY AND MEDICINE,CRC Press,Boca Raton,1995、McPherson,Ed.,DIRECTED MUTAGENESIS:A PRACTICAL APPROACH,IRL Press,Oxford,1991が挙げられる。
【0021】
本明細書で用いられる「味覚認知」は、味覚刺激に対する反応(例えば、生化学的に、行動的に)或いは感度を指す。本明細書において用いられる「味覚刺激」とは、例えば生化学レベル(例えば味覚受容体の活性化又は抑制)又は行動のレベル(例えば嗜好、無関心、又は嫌悪)で、哺乳類が知覚する甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つの味覚要素のうちの少なくとも1つの味覚反応を誘発する任意の化合物を指す。「味覚認識」又は「味覚刺激」、或いはその異なる形態のものは、哺乳類による神経信号の伝達の結果生体内の味覚感覚を引き起こすことを含むが、これを必要とするわけではない。味覚認識の変形例としては、生化学反応、摂食反応、味覚の嗜好性、又は化合物に対する反応における一般的な行動の変性(それらが増進、抑制、又は変化したもの)が挙げられる。
【0022】
「アシル」は、直鎖又は分枝鎖アルキル−C=O基を指す。「チオアシル」は、直鎖又は分枝鎖アルキル−C=S基を指す。好ましいアシル及びチオアシル基は、アルキル基に1〜約6個の炭素原子を有する低級アルカノイル及び低級チオアルカノイルを含み、更にそれらの範囲のすべての組合せ及びサブコンビネーションを含む。
【0023】
「アルキル」は、直鎖又は分岐鎖であり、更にその炭素鎖中に1〜20個の炭素原子を含む飽和脂肪族炭化水素基を指し、更にそれらの範囲のすべての組合せ及びサブコンビネーションを含む。好ましいアルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり、その炭素鎖中に1〜約10個の炭素原子を含む。分岐鎖とは、例えばメチル、エチル、又はプロピルなどの低級アルキル基が直鎖アルキルに結合していることを意味する。
【0024】
「低級アルキル」は、1〜約6個の炭素原子を有するアルキル基、及びそれらの範囲のすべての組合せ及びサブコンビネーションを指す。
【0025】
「シクロアルキル」とは、約3〜約10の炭素原子を有する脂肪族環、及びそれらの範囲のすべての組合せ及びサブコンビネーションを指す。好ましいシクロアルキル基は、前記環の中に約4〜約7個の炭素原子を有するシクロアルキル基である。
【0026】
「カルバモイル」は、HN−C=O基を指す。アルキルカルバモイル及びジアルキルカルバモイルはそれぞれ、そのカルバモイルの窒素が1又は2つのアルキル基によって置換されていることを指す。
【0027】
「カルボキシル」はCOOH基を指す。
【0028】
「アルコキシ基」はアルキル−O基を指し、ここで「アルキル」は前述したものである。低級アルコキシ基が好ましい。例示的なアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、及びn−ブトキシが挙げられる。
【0029】
「アルコキシアルキル」は、前述したアルキル基が前述したアルコキシ基によって置換されたものを指す。
【0030】
「アルコキシカルボニル」は、アルコキシ−C=O基を指す。
【0031】
「アリール」は、約6〜10個の炭素を含む芳香族炭素環式ラジカル、及びそれらの範囲のすべての組合せ及びサブコンビネーションを指す。典型的なアリール基には、フェニル及びナフチルが含まれる。
【0032】
「アラルキル」は、アリールラジカルによって置換されたアルキル基を意味する。「選択的に置換されたアラルキル」及び「選択的に置換されたアリール」は、アリール基又はアラルキル基のアリール基が、例えば、アルキル、アルコキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、カルボアルコキシ、シアノ、アルキルアミノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプチル、アルキルメルカプチル、トリハロアルキル、カルボキシアルキル、又はカルバモイルを含む1若しくはそれ以上の置換基によって置換され得るものを意味する。
【0033】
「アラルコキシカルボニル」は、アラルキル−O−C=O基を指す。
【0034】
「アリールオキシカルボニル」は、アリール−O−C=O基を指す。
【0035】
「カルバルコキシ」は化学式C2n+1OHのアルコールによってエステル化されたカルボキシル置換基を指し、ここでnは1〜約6である。
【0036】
「ハロゲン」(又は「ハロ」)は、塩素(クロロ)、フッ素(フルオロ)、臭素(ブロモ)、又はヨウ素(ヨード)を指す。前記ハロゲン(又はハロ)の中では塩素(又はクロロ)が好ましい。
【0037】
「ヘテロサイクリル」は、環中の1若しくはそれ以上の原子が例えばN、O、又はSなどの炭素以外成分である、4〜約10個の環員を含む環構造を指す。ヘテロサイクリル基は、芳香族又は非芳香族であっても良く、すなわち、環が飽和しているか、部分的に不飽和であり、或いは完全に不飽和であっても良い。好ましいヘテロサイクリル基としては、例えば、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、イソキノリニル、キノリニル、キナゾリニル、イミダゾリル、ピロリル、フラニル、チエニル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、ピペリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、及びモルホンリニル基が挙げられる。
【0038】
「選択的に置換されたヘテロサイクリル」は、1若しくはそれ以上の置換基で置換されたヘテロシクリル基を意味し、ここで前記置換基は、例えばアルコキシ、アルキルアミノ、アリール、カルボアルコキシ、カルバモイル、シアノ、ハロ、ヘテロサイクリル、トリハロメチル、ヒドロキシ、メルカプチル、アルキルメルカプチル、及びニトロを含む。
【0039】
「ヒドロキシアルキル」とは、ヒドロキシ基によって置換されたアルキル基を指す。ヒドロキシ低級アルキル基が好ましい。典型的な好ましい基としては、例えば、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、及び3−ヒドロキシプロピルが挙げられる。
【0040】
「水素化触媒」とは、水素の付加を容易にする、有機合成の分野で周知のあらゆる化合物を指す。水素化触媒は、これらに限定されないが、炭素上のパラジウム、炭素上の水酸化パラジウム、鉛で汚染された炭酸カルシウム上のパラジウム、及び炭素上のプラチナを含む。
【0041】
「スルホン化剤」とは、アルコールと反応してスルホン酸エステルを提供する有機合成分野で周知のあらゆる試薬を指す。例として、これらに限定されないが、塩化メタンスルホニル、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタン塩化スルホニル、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、塩化ベンゼンスルホニル、塩化p−トルエンスルホニル物、p−トルエンスルホニル無水物が挙げられる。「スルホン酸エステル」とは、スルホン化剤が酸捕捉剤の存在下でアルコールと作用する場合、−OA(AはSOR’であり、R’はスルホン化剤から誘導されるものである)を形成する化合物を与える基を含む。
【0042】
「還元剤」とは、例えばケトンをアルコールに還元するなど、炭素原子の酸化状態を還元する有機合成分野で周知のあらゆる試薬を指す。還元剤としては、これらに限定されないが、例えばリチウムボロヒドリド及び水素化ホウ素ナトリウムを含むホウ化水素など、水素化物誘導体が挙げられる。
【0043】
「メチル化剤」とは、メチル基をアルコールに供与してエーテルを形成する有機合成分野で周知のあらゆる試薬を指す。メチル化剤としては、これらに限定されないが、例えばヨウ化メチル、塩化メチル、臭化メチルなどのメチルハライド、及びジメチル硫酸が挙げられる。
【0044】
「酸捕捉剤」とは、出発原料又は生成物と反応することなくプロトンを受け入れることができる有機合成分野で周知のあらゆる種を指す。
【0045】
「連結する」とは、多段階工程を指し、ここで前記工程は、好ましくは中間化合物を一時的に単離及び/又は精製することなく、実質的に連続であるか逐次的な方法で実行されるもの(すなわち2つ以上の工程を含んでいる方法)を指す。
【0046】
「薬学的に許容可能である」とは、安全な医学判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は適度な利点と危険率との比に比例した合併症の問題などを引き起こすことなく、ヒト及び動物組織との接触に適した化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。
【0047】
「薬学的に許容可能な塩」とは、開示された化合物の誘導体であって、親化合物が酸性又は塩基性塩に変形されたものを指す。薬学的に許容可能な塩の例としては、これらに限定されるわけではないが、例えばアミンなどの塩基性残基の金属塩又は有機酸塩、例えばカルボン酸などの酸性残渣のアルカリ塩又は有機塩、及び同類のものが挙げられる。このように、「酸付加塩」は、酸の付加によって調製された親化合物の対応する塩誘導体を指す。前記薬学的に許容可能な塩は、従来の非毒性の塩類、又は例えば、非毒性の無機酸或いは有機酸から形成される親化合物の第四級アンモニウム塩を含む。例えば、このような従来の非毒性塩類としては、例えば塩化水素、臭化水素、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導されるもの、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、及び同類のものなどの有機酸から調製される塩類が挙げられる。特定の酸性又は塩基性化合物は、双性イオンとして存在していても良い。遊離酸、遊離塩基、及び双性イオンを含む化合物のすべての形態は、本発明の範囲内であることが考慮される。
【0048】
本願明細書に記載され、且つ特許請求の範囲である合成方法における反応は、有機合成の当業者によって容易に選択される適切な溶媒において実行される。一般に、適切な溶媒は、反応が実行される温度、すなわち溶媒の凍結温度から溶媒の沸騰温度の範囲において、出発原料(反応体)、中間体、又は生成物と実質的に反応しない溶媒である。所定の反応は、1つの溶媒又は複数の溶媒の混合物中で実行される可能性がある。特定の反応に応じて、反応後の特定のワークアップに適した溶媒が選択される可能性がある。本明細書で用いられる適切な溶媒としては、これらに限定されないが、例えば塩素化溶媒、炭化水素溶媒、芳香族溶媒、エーテル溶媒、プロトン性溶媒、極性非プロトン溶媒、及びそれらの混合物が含まれる。
【0049】
適切なハロゲン化溶媒としては、これらに限定されないが、四塩化炭素、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム、クロロホルム、ブロモクロロメタン、ジブロモメタン、塩化ブチル、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、2−クロロプロパン、ヘキサフルオロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、フルオロトリクロロメタン、クロロトリフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、四フッ化炭素、ジクロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,2−ジクロロ四フッ化エタン、及びヘキサフルオロエタンが含まれる。
【0050】
適切な炭化水素溶媒としては、これらに限定されるものではないが、例えばシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、エチルベンゼン、m−、o−、又はp−キシレン、オクタン、インダン、ノナン、ベンゼン、エチルベンゼン、及びm−、(o)−、p−キシレンなどのアルカン又は芳香族溶媒が含まれる。
【0051】
適切なエーテル溶媒としては、これらに限定されないが、ジメトキシメタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、フラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、アニソール、又はt−ブチルジメチルエーテルが含まれる。
【0052】
適切なプロトン性溶媒としては、これらに限定されないが、水、メタノール、エタノール、2−ニトロエタノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコール、1−、2−、又は3−ペンタノール、ネオペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェノール、及びグリセロールが含まれる。
【0053】
適切な非プロトン性溶媒としては、これらに限定されないが、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide:DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide:DMAC)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(1,3−dimethyl−3,4,5,6−tetrahydro−2(1H)−pyrimidinone:DMPU)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(1,3−dimethyl−2−imidazolinone:DMI)、N−メチルピロリジノン(N−methylpyrrolidinone:NMP)、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル(acetonitrile:ACN)ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide:DMSO)、プロピオニトリル、蟻酸エチル、メチルアセテート、ヘキサクロロアセトン、アセトン、エチルメチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、t−ブチル酢酸塩、スルホラン、N,N−ジメチル・プロピオンアミド、ニトロメタン、ニトロベンゼン、及びヘキサメチルホスホルアミドが含まれる。
【0054】
本明細書において用いられる「実質的に純粋な形態」の用語は、本方法を用いて調製した化合物が好ましくは実質的に有機不純物を含まないことを意味する。本明細書において用いられる「有機不純物」の用語は、有機物質、化合物など、所望の生成物以外を指し、それらは一般的に、例えば未反応出発試薬、未反応中間化合物などを含む合成有機化学変換と関係している。好ましい形態において、本発明の方法は、例えばHPLCなど標準解析手法によって測定されるように、少なくとも約75%純粋である化合物を提供する。好ましくは、本発明の方法を用いて調製した化合物は、少なくとも約80%純粋であり、より好ましくは少なくとも約85%の純度を有する。さらにより好ましくは、本発明の方法を用いて調製した化合物は、少なくとも約90%純粋であり、より好ましくは少なくとも約95%の純度を有する。特に好ましい実施形態において、本発明の方法を用いて調製した化合物は、約95%以上純粋であり、特に好ましくは約100%の純度を有する。
【0055】
一般的に、置換された化学的部分は、水素を置き換えた1若しくはそれ以上の置換基を含む。典型的な置換基としては、例えば、ハロ(F、Cl、Br、I)アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル(OH)、ニトロ(NO)、ニトロシル(NO)、シアノ(CN)、シアネート(CNO)、チオシアネート(SCN)、アミノ(例えばNH、NHR’、NR’)、アジド(N)、カルボキシル(COOH)、C(O)R’、OR’、C(O)OR’、NHC(O)R’、アミノカルボニル、チオール、チオラート(SR’)、スルホン酸(SOH)、ホスホン酸(POH)、SOR’、ホスフィノ(PH、PHR’、PR’)、シリル(SiR’、SiHR’、SiHR’、SiH)などが含まれる。上述した置換基に関して、各R’部分は独立して、例えばH、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルなどのいずれかである。
【0056】
本発明の方法は、ジアステレオマーの混合物をもたらす場合がある。従って、一部の実施形態において、当該方法は、必要に応じて、ジアステレオマーを分離するための分離工程を含む可能性がある。ジアステレオマーを分離のための方法は周知の技術であって、例えば、選択的な反応性が関与するキラルカラムクロマトグラフィー、HPLC、再結晶、又は古典的分解能方法が挙げられる。一部の実施形態においては、不斉合成を用いることにより、特定のジアステレオマーが得られる。
【0057】
本明細書において用いられる「ポリヌクレオチド」は、核酸分子を指し、ゲノムDNA、cDNA、RNA、mRNA、混合重合体、組換え核酸、断片、及びその変異体などを含む。本発明のポリヌクレオチド断片は、言及するポリヌクレオチドの、少なくとも10、好ましくは少なくとも12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、75、又は100の連続ヌクレオチドを有する。前記ポリヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む。前記ポリヌクレオチドは、天然に存在するか或いは天然に存在しないポリヌクレオチドである。本明細書で使用される「合成されたポリヌクレオチド」とは、酵素による方法とは反対に、単に化学的方法のみによって産生されたポリヌクレオチドを指す。従って「完全に」合成されたDNA配列とは、化学的手段によって完全に産生されたものであり、「部分的に」合成されたDNAsとは、結果として生じたDNAの一部分のみが化学的手段によって産生されたものを包含する。本発明の前記ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖である。本発明のポリヌクレオチドは、当業者によって容易に理解されるように、化学的に修飾されているか、或いは非天然又は誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む場合がある。このような修飾には、例えば、標識、メチル化、1若しくはそれ以上のヌクレオチドの類似態への置換、例えば非電荷結合(例えばメチルホスホネート、リン酸トリエステル、アミド亜リン酸エステル、カルバミン酸エステルなど)、荷電結合(例えばホスホロチオネート、ホスホロジチオネートなど)、懸垂部分(例えばポリペプチドなど)、インターカレータ(例えばアクリジン、ソラレンなど)、キレート剤、アルキル化剤、及び修飾結合(例えばαアノマー核酸など)などのインターヌクレオチド修飾が含まれる。また、水素結合及び他の化学的相互作用を介して指定した配列と結合する機能において、ポリヌクレオチドを模倣する合成分子が含まれる。このような分子は周知であり、例えば、その分子の主鎖においてペプチド結合をリン酸塩結合に置換したものを含む。
【0058】
「組換え核酸」は、ヌクレオチド配列の2つの断片の組合せによって生成される核酸である。前記組合せは、例えば、化学的手段、或いは遺伝子工学によってなされるものである。
【0059】
本明細書において用いられる「ポリヌクレオチド増幅」は、特定のポリヌクレオチド配列の複製数を増加させる技術に関する幅広い範囲を指す。一般的に、標的核酸の鎖(複数)のいずれか一方若しくは両方の増幅には、例えばDNAポリメラーゼ、リガーゼ、RNAポリメラーゼ、又はRNA依存性逆転写酵素など、1若しくはそれ以上の核酸−修飾酵素が使用される。典型的なポリヌクレオチド増幅としては、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)、核酸配列に基礎をおいた増幅法(nucleic acid sequence based amplification:NASB)、自立的配列増複製(self−sustained sequence replication:3SR)、鎖置換活性(strand displacement activation:SDA)、リガーゼ連鎖反応、Qβレプリカーゼシステムなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。様々な他のクローニング及びインビトロ増幅方法論が当業者に周知である。このような技術の例は、例えばBerger et al.,Guide to Molecular Cloning Techniques,METHODS IN ENZYMOLOGY 152,Academic Press,Inc.,カリフォルニア州,サンディエゴ,バーガーにおいて見出され、これはこの参照により本願明細書に完全に組み込まれるものである。
【0060】
本願明細書において用いられる「オリゴヌクレオチド」又は「プライマー」の用語は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において用いられる充分な数の塩基を有する一連の結合ヌクレオチド残基を指す。この短配列は、ゲノム又はcDNA配列に基づいており(或いはそれらから設計されており)、特定の細胞又は組織において、同一の、類似の、又は相補的なDNA又はRNAの存在を増幅、確認、又は明らかにするために用いられる。オリゴヌクレオチドは、少なくとも約10のヌクレオチド、及び約50ものヌクレオチド、多くの場合12又は15〜約30のヌクレオチドを有する核酸配列の一部分を含む。それらは化学的に合成され、プローブとして使用することが可能である。「プライマー対」とは、増幅される標的配列の5’末端とハイブリダイズする5’上流プライマーと、増幅される標的配列の相補鎖の3’末端とハイブリダイズする3’下流プライマーとを含む一組のプライマーを指す。
【0061】
本明細書において用いられる「プローブ」の用語は、例えば、使用に応じて少なくとも約10〜約8,500ヌクレオチドもの、可変的な長さの核酸配列を指す。プローブは、同一、類似的、或いは相補的な標的配列が一本鎖又は二本鎖である標的核酸配列の検出に用いられる。より長いプローブは、通常、天然又は組換え源から得られ、非常に特異的であり、オリゴマー又はより短いプローブよりゆっくりハイブリダイズする。それらは、一本鎖又は二本鎖であり、そして、PCR、メンブレン系ハイブリダイゼーション、又はELISAのような技術において、特異性を有するように注意深く設計されている。
【0062】
本明細書において用いられる「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」又は「ストリンジェントな条件」の語句は、プローブ、プライマー、又はオリゴヌクレオチドがそれらの標的配列にハイブリダイズする条件を指すものであり、前記標的配列は最小限の数のものであるが他の配列ではない。ストリンジェントな条件は配列に依存しているため、異なる状況で変化する。より長い配列は、その適切な相補鎖に対する特異性によってより高温でハイブリダイズする。通常、ストリンジェントな条件としては、所定のイオン強度及びpHにおいて、特定の配列に対する熱融解点(T)より約5℃低い温度が選択される。前記Tは、(所定のイオン強度、pH、及び核酸濃度下において)標的配列と相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である。通常、前記標的配列は過剰に存在するため、Tにおいて、プローブの50%は平衡状態でそれらの相補鎖にハイブリダイズされる。ストリンジェントな温度条件は、一般的に30℃以上の温度を含み、一般的には37℃以上であり、45℃以上であっても良い。ストリンジェントな塩条件は、通常1.0M未満であり、一般的には0.5M未満であり、0.2M未満であっても良い。一般的に、ストリンジェントな条件とは、塩濃度が約1.0Mのナトリウムイオン、通常pH7.0〜8.3において約0.01〜1.0Mのナトリウムイオン(又は他の塩類)であり、温度が短いプローブ、プライマー、又はオリゴヌクレオチドに関しては少なくとも約30℃であり、長いプローブ、プライマー、又はオリゴヌクレオチドに関しては少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件は、例えばホルムアミドなどの不安定な物質を添加することによって達成される可能性がある。
【0063】
本明細書において用いられる「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、目的の標的核酸の少なくとも一部に相補的であり、特に生理学的条件下で前記標的核酸配列にハイブリダイズする核酸分子を指す。本明細書で用いられる「二重鎖RNA」又は「dsRNA」の用語は、small interfering RNA(siRNA)を含むRNA干渉が可能な二本鎖RNA分子を指す(たとえばBass(2001)Nature 411:428−429、Elbashir et al.(2001)Nature,411:494−498を参照)。
【0064】
本願明細書において用いられる「相補的」の用語は、核酸分子のヌクレオチド単位間のWatson−Crick型塩基対を指す。
【0065】
「マーカー遺伝子」又は「レポーター遺伝子」の用語は、発現の際に、直接的又は間接的に、標準技術によって容易に特定可能である形質転換細胞において、物理的、形態学、又は生化学レベルで表現型を提供する産物をコードしている遺伝子を指し、毒素又は抗生物質(例えばアンピシリン、ネオマイシン、及びメトトレキサートなど)に対する耐性を与えるタンパク質をコードしている遺伝子、栄養要求性欠乏症を補足するタンパク質をコードしている遺伝子、及び天然培地からは入手不可能な重要な構成要素を提供するタンパク質をコードしている遺伝子が含まれるが、これに限定されるものではない。標識遺伝子の例としては、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein:GFP)、赤色蛍光タンパク質(red fluorescent protein:DsRed)、アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase:AP)、β−ラクタマーゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(chloramphenicol acetyltransferase:CAT)、アデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase:ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(aminoglycoside phosphotransferase:NEOr、G418r)、ジヒドロ葉酸還元酵素(dihydrofolate reductase:DHFR)、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(hygromycin−B−phosphotransferase:HPH)、チミジンキナーゼ(thymidine kinase:TK)、lacZ(β−ガラクトシダーゼをコードするもの)、β−ラクタマーゼ、ルシフェラーゼ(luciferase:luc)、及びキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(xanthine guanine phosphoribosyltransferase:XGPRT)が含まれる。本発明の実施と関連した多数の標準的な方法と同様に、当業者であればマーカー又はレポーター機能を与えることができる更なる配列に気づくであろう。したがって、このリストは、単に使用可能な例を示すものであり、本発明を限定するものでない。
【0066】
本願明細書において使用される「プロモーター」の用語は、目的核酸分子の発現を調整、制御、又は増進させているものを指し、例えばアデノウイルス、SV40、パーボウイルス、ワクシニアウイルス、サイトメガロウイルス、又は哺乳類のゲノムDNAなどの供給源に由来するものである。適切なプロモーターの例には、CMV、MSH2、trp、lac、ファージ、及びTRNAプロモーターが含まれるが、これらに限定されるわけではない。酵母において用いることが可能な適切なプロモーターとしては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼのような構成的プロモーター、及び様々な他の糖分解酵素遺伝子プロモーター(例えばエノラーゼ又はグリセルアルデヒド−3−リン酸塩デヒドロゲナーゼ)、又はアルコール脱水素酵素2プロモーター又は金属チオニンプロモーターなどの誘導性プロモーターが含まれるが、これらに限定されるわけではない。また、本発明の実施と関連した多数の標準的な方法と同様に、当業者であればマーカー又はレポーターの発現を指示する機能を与えることができる更なるプロモーターに気づくであろう。したがって、前記リストは、単に使用可能な例を示すのみであり、本発明を制限するものではない。
【0067】
「実施可能な状態で連結する」とは、構成要素が機能的な関係である並列状態を指す。例えば、プロモーターが配列の転写又は発現を制御する場合、プロモーターは実施可能な状態で結合しているか、又はコード配列に連結している。
【0068】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、本願明細書において同義的に用いられる。「ポリペプチド」とは、アミノ酸のポリマーを指し、それらの特定の長さには関連しない。本発明のポリペプチドは、ペプチド断片、誘導体、及び融合タンパク質を含む。ペプチド断片は、好ましくは、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、又は100のアミノ酸を有する。本発明の一部のペプチド断片は、生物学的に活性である。生物学的活性は、参照ペプチドと関連した免疫原性、リガンド、結合、及び活性を含む。本発明の免疫原性ペプチド及び断片は、エピトープに特異的な免疫反応を引き起こし、ここで前記「エピトープ」とは、ペプチドの免疫原性決定要素を指し、好ましくは少なくとも3、5、8、9、10、15、20、30、40、45、又は50のアミノ酸を含む。本発明の一部の免疫原性ペプチドは、そのペプチドに特有の免疫反応を引き起こす。本発明のポリペプチドは、天然及び非天然ペプチドを含む。この用語には、修飾されたポリペプチド(そのような修飾の例には、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、カルボキシル化、ユビキチン結合、標識化、などが含まれる)、類似体(例えば非天然アミノ酸、置換された結合など)、及び機能的模倣体が含まれる。ポリペプチドを標識化する様々な方法は周知の技術であって、32P又は35Sなどの放射性同位体、標識化された抗リガンド(例えば抗体)に結合したリガンド、フルオロフォア、化学発光薬品、酵素、及び抗リガンドを含む。
【0069】
本願明細書において使用される「アミノ酸」の用語は、アミノ基及びカルボキシル基の両方を含む分子を意味する。一部の実施形態において、前記アミノ酸は、α−、β−、γ−、又はδ−アミノ酸であり、それらの立体異性体及びラセミ化合物を含む。本願明細書において使用される「L−アミノ酸」の用語は、α−炭素の近辺においてL型の立体配置を有するα−アミノ酸であり、すなわち一般化学式CH(COOH)(NH)−(側鎖)のカルボン酸でL型立体配置を有するもの意味する。「D−アミノ酸」の用語は、同様に、一般化学式CH(COOH)(NH)−(側鎖)のカルボン酸であって、α−炭素近辺でD型立体配置を有するものを意味する。L−アミノ酸の側鎖は、天然及び非天然部分を含む。非天然(すなわち自然ではない)アミノ酸側鎖は、例えば、アミノ酸類似体など、天然アミノ酸の側鎖の代わりに用いられる部分である。アミノ酸置換基は、例えばそのカルボニル基、酸素原子、又はカルボニル炭素原子を介して、又はそのアミノ基を介して、又はその側鎖にある官能基を介して結合している。
【0070】
アミノ酸配列は、アミノ(N)からカルボキシ(C)の方向に左から右へと示される。N末端α−アミノ基及びC末端β−カルボキシ基は配列には表されない。ヌクレオチド配列は、5’から3’方向に左から右へと一本鎖が示される。ヌクレオチド及びアミノ酸はIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature委員会によって推奨される方法において表されるか、或いはアミノ酸はそれらの3つの文字コード記号表示によって表される。
【0071】
本願明細書において使用される「結合」の用語は、2つのタンパク質又は化合物、関連タンパク質又は化合物、或いはそれらの組み合わせの間の物理的或いは化学的相互作用を意味する。結合には、イオン性、非イオン性、水素結合、ファン・デル・ワールス、疎水的相互作用などが含まれる。物理的相互作用の結合は直接の又は間接的なものであり、間接的な結合は、他のタンパク質又は化合物の作用を介して又はそれらに起因して形成される。直接結合とは、他のタンパク質又は化合物の作用を介して或いはその作用によって生じるものではなく、代わりに他の実質的化学中間体がない相互作用を指す。結合は、多くの異なる方法で検出される。非限定的な例として、2つの分子の間の物理的な結合相互作用は、標識化化合物を用いて検出可能である。結合を検出する他の方法は、当業者に周知である。
【0072】
本願明細書において使用される「接触」の用語は、目的分子の物理的近辺に、直接的又は間接的に、化合物を一緒にまとめることを意味する。接触は、例えば、任意の数の緩衝液、塩類、溶液中で、或いは細胞又は細胞抽出物中で起こるものである。
【0073】
本願明細書において使用される「調整する」又は「修飾する」の用語は、特定の活性又はタンパク質の量、品質、又は効果を増加或いは減少させることを意味する。「修飾物質」は、アゴニスト、アンタゴニスト、及びそれらの同族体に対するインビトロ及びインビボ分析において同定される任意の抑制又は活性分子を指し、例えば本明細書で定義される断片、変異体、及び擬似物質など、実質的に分子と同じ生物学的活性を及ぼすものを含む。「阻害剤」又は「アンタゴニスト」は、活性を低下、減少、阻止、抑制、遅延させる調整化合物、或いは生物学的活性、分子の発現、又は目的の経路を不活性にする、感度を下げる、又は反応を抑制する調整化合物である。「誘導物質」、「活性剤」、又は「アゴニスト」は、目的の分子又は経路を増強する、誘導する、刺激する、開放させる、促進する、活性化を強化する、感度を高める、或いはアップレギュレートする調整化合物である。本発明の好ましい一部の実施形態において、目的分子の発現又は生物学的活性、或いは目的経路の抑制又はアップレギュレートのレベルは、約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上減少(抑制又はダウンレギュレート)又は増加(アップレギュレート)することを指す。前記抑制又はアップレギュレートは直接的であっても良く、すなわち目的分子又は目的経路そのものを操作するか、或いは間接的でであっても良く、すなわち目的分子又は目的経路に影響する分子又は経路を操作するものである。
【0074】
「精製された」又は「実質的に精製された」ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、天然の(又は野生型)核酸又はポリペプチドを自然に伴う他の細胞成分から、及び/又は他の不純物(例えばアガロースゲル)から実質的に分離されているものである。精製されたポリペプチド又はタンパク質は、検体の約60%〜99%W/W以上で含まれており、約90%、約95%、又は約98%純粋であってもよい。本明細書において使用される「単離された」の用語は、その自然の環境から取り出された分子を指す。単離された核酸分子の例には、ベクターに含まれる組換えDNA分子、異種宿主細胞で維持された組換えDNA分子、部分的又は実質的に精製された核酸分子、及び合成DNA又はRNAが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0075】
本明細書で用いられる「約」とは、基準値の+/−10%を指す。
【0076】
本願明細書において使用される「異型」ヌクレオチド又はアミノ酸配列は、例えば、目的配列のアイソフォーム、種属の変異体、対立遺伝子変異体、及び断片などを含む相同体に関連する。「相同核酸配列」、「相同アミノ酸配列」、又はそれらの変異体は、参照配列のヌクレオチドレベルにおいてある程度の同一性によって特徴付けられる配列、或いは少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、より好ましくは100%のアミノ酸レベルが相同であることによって特徴付けられる配列を指す。
【0077】
周知のように、遺伝暗号の縮重のため、目的のヌクレオチド配列によってコードされたものと同じポリペプチドに対してコード可能な多数のDNA及びRNA分子が存在する。従って、本発明は、発現において、目的の核酸分子によってコードされたポリペプチドをコードする他のDNA及びRNA分子を考慮する。本願明細書において具体的に開示されたもの以外のDNA及びRNA分子は、特定のアミノ酸に対するコドンの変化によって単に特徴づけられており、これらは本発明の範囲内である。
【0078】
アミノ酸の「挿入」、「置換」、又は「欠失」は、アミノ酸配列に対する、又はアミノ酸配列内の変化である。特定のアミノ酸配列において許容される変化は、組換えDNA技術を用いて、合成的にペプチドを産生することによって、或いは核酸配列に系統的にヌクレオチドを挿入、欠失、又は置換することによって、実験的に決定される。天然のアミノ酸配列の変更は、多くの周知の技術のいずれかによって達成可能である。例えば、突然変異は、例えばオリゴヌクレオチドによって誘導される突然変異生成など、当業者に周知の方法によって、ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドの特定の位置に導入され得る。。
【0079】
本発明の化学変異体は、天然のオレオカンタールの生物学的活性を実質的に示すか、或いは改良された活性を有するものである。本明細書で使用される「生物学的活性」とは、生体系における目的分子又は目的経路の特定の機能(例えば抗酸化活性、抗炎症性活性など)の値を指す。「野生型生物学的活性」とは、目的分子又は目的経路の機能の正常値を指す。「低下した生物学的活性」とは、その分子又は経路の生物学的活性の参照値と比較して目的分子又は目的経路の機能の減少値を指す。「増加した生物学的活性」とは、その分子又は経路の生物学的活性の参照値と比較して、目的分子又は目的経路の機能の増加した値を指す。例えば、増加した生物学的活性とは、目的分子又は目的経路の野生型生物学的活性と比較して、生物学的活性の増加した値を指す。「天然オレオカンタールの実質的な生物学的活性」の提示とは、本発明の範囲内の変異体が置換基を含むことを示しており、オレオカンタールの1若しくはそれ以上の化学部分が異なる化学部分によって置換されることを意味し、そのような化合物は、オレオカンタールの生物活性を保持する、実質的にオレオカンタールと同じ生物活性を有する、或いは天然オレオカンタールと比較して改善された生物活性を有するものである。
【0080】
本発明のスクリーニング方法によって同定される核酸分子又はポリペプチドのヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列は、Gapped BLAST(Altschul,et al.(1997)Nucl.Acids Res.25:3389)を用いて、ヌクレオチド及びアミノ酸配列データバンク中の類似領域を探索するために使用される。簡潔に述べると、Basic Local Alignment Search Toolを支持するBLASTアルゴリズムは、配列類似性の決定に適している(Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−410)。ソフトウェア又はBLAST分析は、National Center for Biotechnology Informationを通じて一般公開されている。このアルゴリズムは、データベース配列において同じ長さの単語に合わせた場合、正の値を有する幾つかの閾値スコアTに合致するか又は満足するクエリ配列において、長さWの短い単語を認識することによって高いスコアの配列対(high scoring sequence pair:HSP)をまず初めに認識することに関与する。Tは、近傍単語スコア閾値と呼ばれる(Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−410)。これらの初期の近傍単語のヒットは、それらを含むHSPを発見するために検索を始めるためのシーズとして作用する。前記単語ヒットは、累積的アライメントスコアが増加されるように各配列に沿って両方の方向に伸長させることができる。各方向への前記単語ヒットの伸長は、以下の場合に停止される。(1)前記累積的アライメントスコアが、その最大達成値から数量Xずつ低下する、(2)1若しくはそれ以上の負のスコアの残留アライメントの蓄積のため、前記累積的スコアが、ゼロ又はそれ以下になる、又は(3)いずれかの配列の末端に到達する。このBLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXは、アライメントの感受性及び速度を決定するものである。前記BLASTプログラムには、デフォルトとして11の単語の長さ(W)、50のBLOSUM62スコアマトリックス(Henikoff,et al.(1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919)、10の期待値(E)、M=5、N=4、及び両方の鎖の比較が使用される。前記BLASTアルゴリズム(Karlin,et al.(1993) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877)及びGapped BLASTは、2つの配列間の類似性の統計分析を実行する。前記BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの基準は、最小合計確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチド間又はアミノ酸配列間の適合が偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸を参照核酸と比較して最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、及び最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は遺伝子又はcDNAと類似しているとみなされる。
【0081】
本明細書で用いられる用語「模倣体」とは、参照化合物と立体配置的に類似している化合物を指す。模倣体は、参照化合物と構造的且つ機能的に等価なものである。
【0082】
「患者」及び「対象」の用語は、本願明細書において同義的に用いられており、両生類、トリ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、バッファロー、ラマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、齧歯動物、サル、類人猿、及びヒトを含むが、これに限定されるものではない。「宿主細胞」には、例えば細菌細胞などの原核細胞、酵母細胞及び動物性細胞などの真核細胞などが含まれ、これらに限らないが、無脊椎動物細胞(例えば昆虫細胞及びネマトーダ細胞など)、両生類細胞(例えばカエル細胞)、特に哺乳動物細胞(例えばヒト、齧歯類、イヌ科、ネコ科、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、サル)、又は植物細胞が含まれる。「齧歯動物」には、例えば、ネズミ及びマウスが含まれる。発現用宿主として利用可能な哺乳類細胞株は周知であり、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection:ATCC)から入手可能な多数の不死化細胞株が含まれ、これらに限らないが、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese hamster ovary:CHO)細胞、ヒーラー細胞、乳児ハムスター腎臓(baby hamster kidney:BHK)細胞、サル腎臓細胞(monkey kidney cells:COS)、N1E−115(Liles et al.,(1986) J.Biol.Chem.261:5307−5313)、PC12ヒト肝臓癌細胞(例えばHepG2)が挙げられる。
【0083】
本明細書で用いられる「治療」の用語は、疾患又は病気の予防、治療、又は回復が成功したあらゆる兆候を指す。治療は、これらに限らないが、例えば寛解、緩解、受容体活性の正常化、症状又は副作用の数又は重症度の減少、或いは患者の退化又は減退速度の緩徐化を含むあらゆる目的又は主観的パラメータを含む。治療はまた、リスクが高い状態にある患者、又は疾患若しくは病気であることが疑われるが、その症状をまだ経験していないか若しくは呈していない患者において、症状の発症を予防することを含む。
【0084】
本願明細書において使用される「化合物」の用語は、定義可能な任意の化学物質又は分子の意味であり、小分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチド又は核酸を含むがこれに限らない。このような化合物は、天然又は合成物である。
【0085】
本明細書で用いられる「苦味」とは、キニン、カフェイン、及び特定の他のアルカロイドなどの化合物の溶液によって特徴付けられる基本の味覚であって、主にヒトの舌の後方にある味蕾によって感知するものであり、強烈な、鋭い、刺激的な、或いは強くて不快なものである。
【0086】
本願明細書において使用される「甘味」は糖(例えばショ糖及びブドウ糖)、アルコール、グリコール、一部の小分子、及び一部のアミノ酸の溶液によって特徴づけられる基本的な味覚を指しており、主にヒトの舌の先端上の味蕾によって感知するものであり、好ましく又は気持ちよいものとして認められる。
【0087】
本願明細書において使用される「酸味」は、酢の溶液及び非常に未熟な果物のジュースによって特徴づけられる基本的な味覚を指しており、すっぱいか又は鋭く、ピリッとした、又はヒリヒリするものである。
【0088】
オレオカンタールは、以下の一般式を有しており、
【0089】
【化22】

【0090】
式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORである。
【0091】
「オレオカンタール」は具体的にデアセトキシジアルデヒドであるリングストロシドアグリコンであり、これは単一の異性体(エナンチオマー)として存在する。この(−)−エナンチオマーは天然物であって、以下の化学式を有する。
【0092】
【化23】

【0093】
オレオカンタールの前記エナンチオマーは、以下の方法によって合成及び精製される。
【0094】
【化24−1】

【0095】
【化24−2】

【0096】
D−リボースは、アセトン及びメタノール中、強酸(例えば塩酸)によって化学式Iに変換され、化学式Iaが得られる。化学式Iaの化合物は、ハロゲン化試薬(例えばヨウ素)、ホスフィン(PPh)イミダゾールによる処理、続いて金属ハロゲン交換(例えばBuLi又はZn)により、開環して化学式IIaのアルデヒドが得られる。その後、化学式IIaの化合物は、適切な溶媒(例えばテトラヒドロフラン)中、CH=CH−MgBrと接触させることにより、化学式IIIaの化合物が得られ、これは適切な溶媒(例えばジクロロメタン(dichloromethane:DCM))中、Grubbs触媒、続いて酸化試薬(例えばピリジニウム塩化クロム(pyridinium chlorochromate;PCC))との処理によって、化学式IVaの化合物に変換される。化学式IVaの化合物は、適切な溶媒(例えば酢酸エチル(EtOAc))中、水素及びパラジウムとの接触によって、シクロペンタノン(化学式Va)が得られる。(−)−シクロペンタノン(化学式Va)は、リチウムヘキサメチルジシリアジド(lithium hexamethyldisilazide:LHMDS)、続いてヘキサメチルホスホルアミド(hezamethylphosphoramide:HMPA)、ジメチル亜鉛、及びブロモ酢酸アルキル(例えばメチル、エチル、tert−ブチル)を処理することにより、(−)−(3,4−ジメトキシ−2−オキソ−シクロペンチル)−酢酸エステル(化学式VIa)が得られる。化学式VIaの化合物は、低温、好ましくは−40℃以下において、臭化(又はヨウ化)エチルトリフェニルホスフィンを用いて、ウィティッヒエチル化される。このエステルは加水分解され(化学式VIIIa)、化学式VIIIaの化合物はホスフィン、ジアルキルアゾジカルボン酸塩(例えばジエチル又はジイソプロピル)(DEAD又はDIAD)の存在下、4−ヒドロキシフェネチルアルコールとの接触によって、化学式IXaが得られる。この隣接ジオール部分の遊離的且つ酸化的開裂によって(−)−オレカンタール(化学式Xa)が得られる(図3を参照)。
【0097】
【化25】

【0098】
D−リボースは、アセトン中、強酸(例えば塩酸)によって、化学式XIに変換される。化学式XIの化合物は、臭化(又はヨウ化)メチルトリフェニルホスフィンによる処理、続いてジオールの酸化的開裂によって、化学式IIbの化合物が得られる。その後、化学式IIbの化合物は、適切な溶媒(例えばテトラヒドロフラン)中、CH=CH−MgBrとの接触によって化学式IIIbの化合物が得られ、これは、適切な溶媒(例えばジクロロメタン(dichloromethane:DCM))中、Grubbs触媒、続いて酸化試薬(例えばピリジニウム塩化クロム(pyridinium chlorochromate:PCC)又はMnO)との処理によって化学式IVbの化合物に変換される。化学式IVbの化合物は、適切な溶媒(例えば酢酸エチル(EtOAc))中、水素、触媒との接触により、(+)−シクロペンタノン(化学式Vb)が得られる。(+)−シクロペンタノン(化学式Vb)は、リチウムヘキサメチルジシルアジド(Lithium hexamethyldisilazide:LHMDS)、続いてヘキサメチルリン酸トリアミド(hexamethyl phosphoramide:HMPA)ジメチル亜鉛、及びブロモ酢酸アルキル(例えばメチル、エチル、tert−ブチル)との処理によって、(+)−(3,4−ジメトキシ−2−オキソ−シクロペンチル)−酢酸エステル(化学式VIb)が得られる。化学式VIbの化合物は、低温、好ましくは−40℃以下において、臭化(又はヨウ化)エチルトリフェニルホスフィンを用いてウィッティヒエチル化される。このエステルは加水分解され(化学式VIIIb)、化学式VIIIbの化合物はホスフィン、ジアルキルアジドカルボン酸(例えばジエチル又はジイソプロピル)(DEAD又はDIAD)の存在下、4−ヒドロキシフェニルアルコールとの接触により化学式IXbが得られる。この隣接ジオール部分はこの隣接ジオール部分の遊離的且つ酸化的開裂によって(+)−オレオカンタール(化学式Xb)が得られる(図4を参照)。
【0099】
本発明は、上記一般式を有するオレオカンタールの模倣体を考慮するものである。オレオカンタールの模倣体又は類似体(構造の重要な部分を模倣するために調整される立体配置的に類似した化合物)は、薬学的な使用のために設計される。模倣体はオレオカンタールと同様に用いることが可能であるため、機能的等価物である。構造機能等価物の生成は、当業者に周知のモデル化及び化学設計の技術によって達成可能である。このような立体配置的に類似した構造物はすべて本発明の範囲内であることが理解される。
【0100】
周知の薬学的活性化合物に対する模倣体の設計は、「鉛」化合物に基づく医薬品の開発に対する周知のアプローチである。例えば活性化合物が困難であるか合成に費用がかかる場合、又は、例えば、一部のペプチドは、消化管のプロテアーゼによって急速に分解する傾向があるため、口腔用組成物の不適切な活性物質である場合など、特定の投与方法に不適当な場合に、前述の設計をすることが望ましい。
【0101】
模倣体の設計には一般的に採用されるいくつかの工程がある。まず、その感覚刺激特性を決定する際に決定的及び/又は重要である化合物の特定部分が決定される。このような決定は、オレオカンタールの場合、系統的に一般式のR基を変化させて抗炎症性活性の試験を行うことによって、すなわち、例えば実施例に記載されている分析法によってなされる。
【0102】
一旦、化合物の活性領域が特定されると、その構造は、例えば分光技術、X線回折データ、及びNMRなどの情報源の範囲のデータを用いて、その物性(例えば立体化学、結合、大きさ、及び/又は電荷など)に従ってモデル化される。当業者に知られている計算解析、類似性マッピング(原子間の結合というよりむしろ活性領域の電荷及び/又は容積をモデル化する)、及び他の技術は、このモデリング工程で用いられることが可能である。このアプローチの変形例において、前記化合物の三次元構造がモデル化される。
【0103】
一般式の候補は、オレオカンタールを模倣するどの化学基が挿入可能であるかによって選択される。前記一般式及びオレオカンタールに挿入される化学基は、この模倣体の合成が容易となるように、且つ薬理学的に許容なものであって、オレオカンタールの生物学的活性を保持しながら生体内で分解しないものであるように都合よく選択される。更なる最適化又は修飾は、その後、インビボ試験又は臨床試験に対して、1若しくはそれ以上の最終的な模倣体に到達するように実行可能である。
【0104】
オレオカンタールの使用
A.食品添加物
本発明のオレオカンタールは、高級オリーブ油で見いだされる感覚刺激特性を提供する。前記オレオカンタールは、高級エキストラバージンオリーブ油のような風味の油を与えるために、低級油に加えられる場合がある。このように前記オレオカンタールは、風味剤又は調味料として作用する。本発明のオレオカンタール及び調製物は、オリーブ油の好ましい刺激感覚を提供することによって風味又は食品を高めるために、他の食品に加えられても良い。
【0105】
本発明のオレオカンタールは、食品、経口製剤、及び口腔衛生製品(例えば歯みがき、マウスウォッシュ、呼気清涼剤、フィルム、キャンディ、舐剤など)に添加され、経口用製品の感覚刺激を体感させるための刺激物を提供する。
【0106】
オレオカンタールはまた、甘味抑制を提供し、又は他の甘味抑制剤の構造設計を可能にする。このような甘味抑制剤は、増量ため及び食品本体及びテクスチャに変更を加えるために炭水化物が加える場合に有用である。
【0107】
最後に、オレオカンタールは食品に刺激を付加するために用いられても良く、例えば、チリ、マスタード、タマネギ、四川省コショウ、及びショウガなどの他の香辛料と同じように、香味及び美食の体感を増強する。
【0108】
B.防腐剤
本発明のオレオカンタール及び製剤は、直接食料品に加えられても良く、防腐剤として作用する。前記食料品はヒト又は動物が消費するものである。特にこの保存方法のために好ましい食料品は、習慣的に油の中で保存する物である。この方法において、適切且つ有効なオレオカンタール又はその製剤の量は、直接食料品に、又は食料品が保存される油に加えられる。
【0109】
本発明の他の一実施形態において、前記オレオカンタール又はその製剤は、包装前に前記食料品を被覆するために用いられる。前記製剤は食料品に吹き付けられるか、又は食料品を前記製剤中に浸漬しても良い。他の実施形態では、前記オレオカンタール又はその製剤は、腐敗を防止するために食料品と接触する包装材の内面に塗布されても良い。前記被覆は、例えば、内部表面上に吹き付けられるか又は内部表面上へ積層される薄膜である。本発明の他の実施形態において、前記食料品を保存するために用いられる包装材は、前記オレオカンタール又はその製剤で含浸される。防腐剤を包装材又は食品中に組み込むための全ての実施形態は、従来技術において周知であり、あらゆる適切な手段が使用可能である。あらゆる理論に拘束されることなく、この保存製剤及びオレオカンタールは、それらが防腐剤として作用する抗バクテリア及び抗真菌性特性を備えている。
【0110】
C.医薬組成物
医薬品として使用される場合、本発明のオレオカンタールは通常薬学的組成物の形態で投与される。そのような化合物は、経口、経直、経皮、皮下、静脈、筋肉内、鼻腔内に投与され得る。この化合物は、注射可能な組成物及び経口投与用組成物の両方として効果的である。このような組成物は、医薬品技術において周知の方法で調製され、少なくとも一つの活性化合物を含む。
【0111】
本発明はまた、薬学的に許容可能な担体を有するオレオカンタール化合物に加えて、他の活性成分を有する薬学的組成物を含む。本発明の組成物において、前記活性成分は通常、賦形剤と混合され、賦形剤で希釈され、或いはカプセル、小袋、紙、又は他の容器の形態である担体中に包装される。前記賦形剤が希釈剤として機能する場合、その賦形剤は固体、半固体、又は液体物質であり、これらは活性成分のための溶媒、担体、又は媒体として作用する。従って、前記薬学的組成物は錠剤、ピル、粉末、舐剤、小袋、カシェ剤、エリキシル、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアゾール(固体として又は液体媒体において)、例えば活性化合物を1〜10重量%含む軟膏、ソフト及びハードゼラチンカプセル、坐薬、無菌注射可能溶液、及び無菌包装粉末の形態である。
【0112】
適切な賦形剤の一部の例として、ラクトース、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカントゴム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、無菌水、シロップ、及びメチルセルロースが挙げられる。前記製剤は、さらに、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油などの平滑剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁物質、例えばメチル−及びプロピルヒドロキシ−ベンゾアートなどの保存剤、甘味剤、及び香料を含ものであっても良い。本発明の組成物は、患者に投与後、活性成分の速放性、持続性、又は遅延性放出を提供できるように、周知の方法を使用することによって製剤化することが可能である。
【0113】
前記組成物は、好ましくは、単位投薬形態中、各投与量に約0.001〜約1g、より一般的には約1〜約30mgの活性成分を含むように製剤化される。「単位投薬形態」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳類のための単一投与量として適切な物理的に分離した単位を指し、各単位は所望の薬学的賦形剤と共に、所望の治療効果を発生させるために算出した所定量の活性物質を含む。好ましくは、上述の化学式Iの化合物は、薬学的不活性担体と均衡を保ちながら、薬学的組成物の約20重量%以下、よりで好ましくは15重量%以下で使用される。
【0114】
前記活性化合物は、広い投与量範囲にわたって効果的であり、一般に薬学的有効量で投与される。しかしながら、実際に投与される化合物の量は、治療する病気、選択された投与経路、実際に投与された化合物、及びその相対活量、個々の患者の年齢、体重、及び反応、患者の症状の重症度などの関連した環境を考慮して医師によって決定されることが理解される。
【0115】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主要な活性成分は、医薬賦形剤と混合されることにより、本発明の化合物の均質混合物を含む固体製剤構成物が形成される。このような予備製剤組成物を均質であると称する場合、前記活性成分は、例えば錠剤、ピル、及びカプセルなどの有効な単位投与量形態に均等に容易に小分けできるように、前記組成物全体にわたって均一に分散されている。このような固体予備製剤はその後、例えば本発明の活性成分を0.1〜約500mg含む上述した種類の単位投与量形態に小分けされる。
【0116】
本発明の錠剤又はピルはコーティングされていても良く、或いは長期にわたる作用の利点を提供する投与量形態を提供するように混合されていても良い。例えば、前記錠剤又はピルは、内部投与成分及び外部投与成分を有することができ、後者は前者を覆う外皮の形態中に存在する。この2つの成分は、胃の中での崩壊を阻止することに役立つ腸溶層によって分離されており、前記内部投与成分が無傷で十二指腸に移行できるようになっており遅延放出される。様々な物質が上述のような腸溶性の層又はコーティングのために使用され、そのような物質としては、シェラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースなどの物質と共に、数多くのポリマー性の酸、及びポリマー性の酸の混合物が含まれる。
【0117】
当然ながら、さらに、本発明の組成物は、持続放出形態に製剤化され、望ましくない副作用を最小限に抑えながら治療効果を最適化するために、1若しくはそれ以上の任意の成分の速度制御放出を提供する。持続放出に対して適切な投与形態には、様々な崩壊速度を有する層状になった錠剤、又は活性成分に含浸され、且つ錠剤に成型された、制御放出ポリマーマトリックス、又はこのように含浸又はカプセル化した多孔性ポリマーマトリックスを含むカプセルが含まれる。
【0118】
経口投与又は注射による投与のために本発明の新規な組成物が取り込まれている液体形態には、水溶液、好ましくは香味シロップ、水性又は油性懸濁液、及び綿実油、ゴマ油、ココナッツ油、又はピーナッツ油などの食用油を使用した香味エマルション、及びエリキシル剤、及び同様な薬学的賦形剤が含まれる。
【0119】
吸入剤又は吸入法のための組成物には、薬学的に許容可能な水性溶媒又は有機溶媒中の溶液及び懸濁物、或いはその混合物及び粉末が含まれる。前記液体又は固体組成物は、適切な薬学的に許容可能な担体物質を含むものであっても良い。好ましくは、前記組成物は、局部的又は全身効果のための経口又は鼻呼吸経路によって投与される。この組成物は、好ましくは薬学的に許容可能な溶媒中、不活性ガスを用いて霧状にされていても良い。霧状にされた溶液は噴霧装置から直接吸入されるか、或いは前記噴霧装置がフェイスマスクテント又は断続的な人工呼吸器に取り付けられる。溶液、懸濁物、又は粉末組成物は、好ましくは経口的に又は経鼻的に、適切な方法で前記製剤を送達する装置から投与されても良い。
【0120】
(1)風邪の症状軽減
本発明のオレオカンタールは、風邪又はインフルエンザの症状を治療する方法において用いられても良い。製剤は、活性成分としてオレオカンタールを含むように、例えば経口的、経腸的、経鼻的或いは吸入剤として取り入れられる他の活性成分と組み合わせて製剤化されても良い。
【0121】
経口的に取り入れられる場合の前記オレオカンタール製剤は、棒キャンディ、即時溶解フィルム、錠剤、シロップ、液体、液体ゲル、カプセル等の形態である。
【0122】
調製物中のオレオカンタールの量は、当技術分野の医師によって成人又は小児に対して適した投与量に調節されるか、或いは当技術分野の獣医師によって様々な動物の使用に適した投与量に調節される。薬剤の投与量は、対象の重量又は表面積に基づいて決定され得る。正確な投与量を決定するあらゆる方法が受け入れられる。
【0123】
前記オレオカンタールは、好ましくは上述したように、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤、又は担体(本明細書において集合的に「担体」物質と称す)と共に製剤化される。
【0124】
(2)咽頭炎のための反対刺激剤
本発明のオレオカンタールは、例えば風邪又はインフルエンザに伴って生じる咽喉炎に対する反対刺激剤として有効である。当該オレオカンタールは、咽頭炎を緩和させるための他の成分と組み合わせて適用されるか、又は単一活性成分として提供されても良い。当該オレオカンタールに基づいた咽喉炎製剤は、錠剤、菱形、棒キャンディ、チューインガム、又は咽頭スプレーの形態であっても良い。前記製剤は、公知技術のあらゆる手段によって調製及び包装されても良い。
【0125】
例えば、固体投与形態は、例えば酸性度調整剤、乳濁剤、安定化剤、緩衝剤、調味剤、甘味料、着色剤、及び防腐剤など、投与形態において周知の他の成分を含むものであっても良い。例えば舐剤は、真空下で舐剤基剤(例えば糖及び液体グルコース)を加熱し、過剰の水を除去し、残余成分を前記混合物中に混ぜ合わせることによって調製されても良い。この結果生じた混合物はその後、所望の形状に引き伸ばされる。前記舐剤は冷却され、適切な包装体に包装される。舐剤は通常患者が舐めることによって当該オレオカンタールが放出される。チュアブル固体投与製剤は、チュアブルキャンディ製品又はチューインガムを調製するために用いられる方法によって作られても良い。例えば、チュアブル固体投与形態は、選択的に起泡剤、湿潤剤、潤滑油、調味剤、及び着色剤の添加剤と共にオレオカンタールが添加された糖及びグルコースシロップの押し出し成形された混合物から調製され得る(Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Volume 1,Second Edition edited by H A Lieberman, L Lachman and J B Schwartz published in 1989を参照)。
【0126】
スプレー製剤は、例えば安定化剤、緩衝剤、調味剤、甘味料、着色剤、及び防腐剤などのほかの成分を含む液体媒体中に当該オレオカンタールを溶解又は懸濁させることによって調製され得る。例えば、スプレーは、水溶性である構成成分を水中に溶解させ、更に非水溶性成分を共存溶媒(例えばアルコール)中に溶解させることによって調製され得る。その2つの相はその後混合され、その結果生じた混合物は濾過され、分配容器に入れられる。前記分配容器は、定量手動操作スプレー機構が備えられていても良く、又は前記ディスペンサーは加圧噴霧剤を含んでも良く、適切な供給用バルブが取り付けられ得る。
【0127】
(3)鼻充血抑制薬
本発明のオレオカンタールは、鼻充血抑制薬として有効である。当該オレオカンタールは、他の鼻充血抑制薬と組み合わせて適用されるか、又は唯一の活性成分として提供されても良い。当該オレオカンタールを基剤とした鼻腔投与製剤は、洗浄液又は鼻霧の形態であっても良い。前記製剤は、鼻洗浄液及び鼻霧に対して公知技術のあらゆる方法によって調製及び包装され得る。
【0128】
(4)抗酸化剤
オレオカンタールは抗酸化活性を有すると考えられており、癌を含む様々な疾病を治療または予防するために用いることが可能である。当該オレオカンタールは、損傷に直接塗布することによって、或いは包帯又は縫合物等の被覆剤又は含浸剤として、損傷治癒を促進するために使用されても良い。
【0129】
オレオカンタールの抗酸化効果は、化粧品製剤においても利用可能である。この組成物は皮膚又は毛髪を保護する物質であるか、或いは坑太陽光組成物である。本発明によると、化学式(I)の化合物及び好ましくはオレオカンタールは一般に、1〜1,000mgの範囲の量で存在する。一部の実施形態において、オレオカンタール又はオレオカンタール誘導体は、約5〜800mgの量で存在する。他の実施態様において、オレオカンタール又はオレオカンタール誘導体は、約10〜750mgの量で存在する。他の実施態様において、オレオカンタール又はオレオカンタール誘導体は、約25〜600mgの量で存在する。他の実施態様において、オレオカンタール又はオレオカンタール誘導体は、約50〜500mgの量で存在する。特定の実施形態において、オレオカンタール又はその誘導体は、1、5、10、20、25、50、75、100、125、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、又は1,000mgで存在する。
【0130】
本発明による組成物において、化学式(I)の化合物は、抗酸化物質として作用する。これらの組成物は、例えば毛髪塗料、毛髪セッティングローション、毛髪処理又はほつれをほぐすローション、シャンプー、染色シャンプー、染髪料組成物などの毛管組成物、及び例えばネイルエナメル液、皮膚処理クリーム及び油、ファンデーション、口紅などの化粧品、浴用オイル又はクリームなどの皮膚ケア製品、及び保管期間中、それらの構成要素によって酸化的安定性の問題を呈する他の化粧品組成物であっても良い。
【0131】
(5)鎮痛
本発明のオレオカンタールは、痛みを治療及び予防するために使用されても良い。前記化合物は、これらに限らないが、インフルエンザ又は他のウイルス感染、感冒、腰及び首の痛み、月経困難症、頭痛、歯痛、捻挫及び挫傷、筋炎、神経痛、関節滑膜炎、慢性関節リウマチを含む関節炎、変形性関節症(骨関節炎)、痛風及び強直性脊椎炎、滑液嚢炎、火傷、損傷、癌及び外科的及び歯科的処置に伴った痛みなど、様々な症状に関連した痛みを緩和するために使用され得る。
【0132】
(6)抗炎症薬
本発明のオレオカンタールは、抗炎症剤として用いることが可能である。当該オレオカンタールは、これらに限らないが、乾癬、癌、喘息、アレルギー性鼻炎、呼吸障害症候群、炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性大腸症候群、潰瘍性大腸炎、片頭痛、多発動脈炎、甲状腺炎、無形成性貧血、ホジキン病、硬皮症、1型糖尿病、重症筋無力症、多発性硬化症、サルコイドーシス、虚血性腎臓病、ネフローゼ症候群、ベシェの症候群、多発性筋炎、歯肉炎、結膜炎、血管病心筋の虚血、心臓病、ストローク、及び高血圧を含む炎症を特徴とする疾患を治療又は予防する方法において使用され得る。
【0133】
(7)ミクロGタンパク質及び関連キナーゼ阻害剤
本発明のオレオカンタールは、例えばイブプロフェンなどの非ステロイド性の抗炎症剤で見出されたものと類似の方法によって、アルツハイマーのプラーク又は濃縮体に関連したAβ42の発達を治療又は予防するために製剤化されても良い。特定の理論に縛られることなく、イブプロフェン及びオレオカンタールは、ミクロGタンパク質を阻害し、キナーゼに関連し、アルツハイマーの患者の脳中にあるプラーク及び濃縮体に関連した例えばAβ42の発達に関連するRas及びRockを阻害すると考えられている。オレオカンタールはまた、γ−セクレターゼを阻害し、プレセニリンの立体構造を変化させるように作用するものであり、これらの2つの物質の活性はいずれもアルツハイマーのプラーク及び濃縮体の現象に関連している。
【0134】
特定の非ステロイド系抗炎症薬が、Aβアミロイド前駆体タンパク質(Aβ amyloid precursor protein:APP)処理経路において、他の活性を顕著に変えることなくγ−セクレターゼを阻害すると考えられている。APPの特定の突然変異及びプレセニリンで知られているすべての突然変異を有する患者において、APPは、40〜42残基(Aβ42)のタンパク分解性断片の量が大きく増加するように処理されている(Weggen et al.(2001)Nature 414(8):212)。特定のNSAIDsは、NSAIDの抗炎症性活動に関連したシクロオキシゲナーゼ活性から独立した機構によってAβ42の産生を減らす効果を有するように見える。前記活性化合物のラセミ混合物として投与される多くのNSAIDsに対して、特定のエナンチオマー(S−エナンチオマー)が、シクロオキシゲナーゼ活性、すなわち抗炎症効果を阻害する役割を果たしているように見える(Weggen et al.(2001)Nature 414(8):212)。当該NSAIDsのR−エナンチオマーがAβ42産生の低下を媒介する可能性があることも明らかにされており、NSAIDsを長期間使用した際に見られるアルツハイマー病及び認識障害におけるリスク減少に役割を果たしている可能性がある(Morihara et al.(2002)J.Neurochem.83:1009−1012)。
【0135】
また、アルツハイマー病及び認識障害の発症リスクの低下に相関するものとして、とりわけオリーブ油の消費が一般的に高い、いわゆる地中海の食物があげられる。このように、本明細書において見出されたオレオカンタールの感覚神経刺激特性とイブプロフェンに対する類似性との関連に関する考察、及びNSAIDsの長期使用とオリーブ油の食事摂取量との関連性の観察により、オレオカンタールが神経変性障害(例えば、アルツハイマー病及びアミロイド斑及び濃縮体と関連する他の認識障害)の治療及び予防のために用いることが可能であることが示唆される。このような神経変性障害の治療及び予防は、オレオカンタールのラセミ混合物、又はオレオカンタールの精製されたエナンチオマーのうちの1つを用いて行われる。
【0136】
(8)口腔外科及び癌の口腔照射治療
本発明のオレオカンタールは、口腔外科と癌の口腔照射治療との併用使用においても治療剤として有効である。特定の操作理論に縛られることなく、当該オレオカンタールは、その抗炎症活性によって、外科的処置又は口腔照射によって生じた口腔内の炎症を抑制すると考えられる。当該オレオカンタールは処置前、処置後、又は処置の間、又はこのような治療計画を組合せた時点において投与され得る経口洗浄液として形成される。前記洗浄液におけるオレオカンタールの量は、治療的有効量であり、当業者によって容易に決定される。
【0137】
D.動物忌避剤
オレオカンタールは、その感覚刺激特性によって、動物忌避剤として有効であると考えられる。この化合物は、飼猫、齧歯動物、アライグマ、イヌ、コヨーテなどの犬科動物を含む肉食及び雑食動物、及び鳥類を忌避させるために用いられ得る。
【0138】
本発明の方法は、オレオカンタールを忌避的有効量単独で、又は前記有効量と適切な担体とを組み合わせて、動物を忌避させる場所に適用させる工程を有する。適切な担体は、例えば水、炭化水素、アルコール、乳化剤、及びヒト安全性の観点から受け入れられる家庭用スプレー製剤又は医薬品において一般的に見いだされる他の液体などの液体希釈液を含む。澱粉などの不活性固体担体が有用であり、前記化合物を徐放性製剤に組み込むことが望ましい。
【0139】
例えば金属又はプラスチックごみ入れ、ビニール袋、紙、及びボール箱など、捨てられた食物廃棄物の容器に当該オレオカンタールを適用させることが望ましい。更に、本願明細書において開示される忌避化合物は、様々な食用の可能性のある組成物に組み込まれても良く、これが消費された場合、動物は害を受けるか又は殺傷される。このような組成物の例は、液体不凍液である。
【0140】
本発明の別の観点において、消費又は利用する物質、或いは消費又は利用しやすい物質から鳥類を忌避する方法が提供され、この方法は、前記物質に少なくとも1つのオレオカンタールの鳥類忌避量を与える工程を有する。
【0141】
液体担体を使用しても良く、この忌避剤は物質にスプレーするものであっても良い。例えば米国特許第2,967,128号を参照(これはこの参照により本願明細書に完全に組み込まれる)。この化合物は、鳥類を忌避するための液体に分散していても良い。前記忌避剤は、米国特許第4,790,990号明細書において開示されているように、その持続性を改善するために、少なくとも部分的に固体媒体中に封じ込められていても良い。前記溶媒は、前記忌避剤が少なくとも部分的にカプセル化するか、乳化するか、又は実質的に一様に分散した修飾デンプン、油、又はポリマーである。この忌避化合物及び溶媒は、鳥類によって消費される固体全体にわたって分散されているため、処理した食物を食べるという可能性を減らすものである。
【0142】
本発明の特定の実施形態は、例えば産業廃水又は農業汚水、鉱山池及び空港滑走路及び駐車場のような人工の表面上の独立した水など、飲料に適さない液体を消費するか又は利用することから鳥類を忌避する方法を対象とする。「飲料に適さない」とは、鳥によって消費又は利用され、ヒト又は鳥が損害を被る液体又は水生生息地を指す。
【0143】
E.発見
オレオカンタールの絶対構造に関する知識によって、オレオカンタール受容体、関連遺伝子の識別が可能となる。受容体をスクリーニングするための分析法は周知であり、オレオカンタール受容体を決定するために使用される。咽頭後部組織はオレオカンタールと相互作用することが知られており、この組織は単離されており、オレオカンタールの細胞への結合性、更にオレオカンタールの分子シグナリング経路を決定するための様々な分析法に用いられている。
【0144】
標識化したオレオカンタールは、推定オレオカンタール受容体を含む細胞型を決定するための組織結合研究において用いられる。標識化オレオカンタールに結合した細胞は、周知技術のあらゆる方法によって視覚化される。例えば、これらに限定されるものではないが、オレオカンタールは放射性同位元素(例えば125I、35S、32P、33P、H)、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、又は免疫原性標識を用いて標識化される。他の実施態様において、発光又は蛍光分子がオレオカンタール分子に結合される。前記標識化オレオカンタールは、生体内元位置(in situ)で細胞と結合可能であり、顕微鏡下で視覚化される。或いは、懸濁液中の細胞は前記標識化オレオカンタールによって標識化されていても良く、標識化細胞は例えば細胞自動解析−分離装置(fluorescence−activated cell sorter:FACS)などを用いたフローサイトメトリーによって標識化されていない細胞から分離されても良い。例えば、標識化細胞は、以降の遺伝子解析のために収集される。
【0145】
一部の実施形態において、分子は、複合オレオカンタールが結合によってその受容体に交差結合できるオレオカンタールに接合される。これは、周知技術のあらゆる手段によって実行され得る。その後、この交差結合した受容体は細胞から単離、精製され、N末端アミノ酸が配列決定され得る。N末端基アミノ酸の特定については、変性オリゴヌクレオチドがアミノ酸配列をコードしているオリゴヌクレオチドの可能な組合せに基づいて合成されることができ、さらに前記オリゴヌクレオチドが前記オレオカンタール受容体をコードしている遺伝子を特定する様々な方法において使用され得る。一部の実施形態において、前記変性オリゴヌクレオチドは、遺伝子ライブラリーを調べるために用いられる。前記遺伝子ライブラリーは特にヒト細胞である動物性細胞から形成されているか、又はオレオカンタールに感受性の周知の動物性細胞由来の特異的な細胞種ライブラリーであっても良い。他の実施形態において、前記ライブラリーは、オレオカンタール感受性細胞の特徴配列を反映する遺伝子のサブセットから成るように、オレオカンタール感受性細胞及びオレオカンタール非感受性細胞から共通に発現された遺伝子を除去することによって形成されるサブトラクティブライブラリーであっても良い。他の実施形態において、前記変性オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの第2セットによって対にされ、前記オレオカンタール受容体のアミノ酸配列をコードしている配列を含むポリヌクレオチドがRT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)によって増幅される。オリゴヌクレオチドのこのような第2セットは、例えば、mRNAのポリ−アデノシン領域にアニール化されるオリゴ−dTを含む。このRT−PCR反応は、オレオカンタール感受性細胞から抽出されるRNAで実行される。このような遺伝子の解析に対する方法及び技術は、従来技術において周知であり、本願明細書で参照される参考文献及び出典物において見いだされるものである。
【0146】
しかしながら、本発明の更なる態様は以下に例示されており、これらの実施例は単に本発明を説明するのみのものであり、本発明の範囲はこの実施例に対して、又はこの実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0147】
デアセトキシジアルデヒド型リグストロシドのアグリコン「オレオカンタール」の単離
A.オレオカンタールの合成
発明者らは、逆合成的に、シクロペンタンジオール(7)の鏡像異性体型から、ジオール部分の酸化的開裂を介して(1)の両方の鏡像異性体を得られることを想定した(図1)。必要なシクロペンタンジオール(7)は、シクロペンタノン(+)−および(−)−(10)から、アルキル化を介して立体選択的に側鎖を凸面から導入し、続いて立体選択的Wittingエチル化を行い、更にアセトニド部分の除去により、生成する(スキーム1)。
【0148】
【化26】

【0149】
(5)最初に、(+)−および(−)−シクロペンタノン(10)は、スルホキシイミン、および/またはJohnsonによって導入および開発された酵素プロトコル(Johnson, C.R. and T.Penning(1988)J.Am.Chem.Soc.110:4726−4735;Johnson,C.R.(1988)Acc.Chem.Res.31:333−341)を介して調製した。これは少量の合成規模(10〜100mg)では効果的であるが、グラム量のオレオカンタールが必要であるため、より大きな規模での(10)への経路の確保が要求された。この最終点に向かって、発明者らは、スキーム2に概略を示したように、合成アプローチの混成を最適化した(Moon,H.et.al.(2002)Tetrahedron:Aym.13(11):1189−1193;Jin,Y.et al.(2003)J.Org.Chem.68(23):9012−9018;Yang,M.(2004)J.Org.Chem.69(11):3933−3996;Palmer,A.et al.(2001)Eur.J.Org.Chem.66(7):1293−1308;Paquette,L.and S.Biley(1995)J.Org.Chem.60:7849−7856)。重要なことに、(10)の両鏡像異性体は、安価なD−(−)−リボースから7段階にわたって全体で40%の効率によって、多彩なグラム量で調製することが可能性である。両方の配列における重要な要素によって、アルデヒド(12)の鏡像異性体へのビニルグリニャール付加を引き起こすものであり、その後閉環メタセシス(RCM)、PCC酸化、および水素化を行った(スキーム2)。
【0150】
【化27】

【0151】
(+)−および(−)−シクロペンタノン(10)のブロモ酢酸メチルによるアルキル化は、その後、二環式骨格の障害の少ない凸面から立体選択的な方法で側鎖を導入することを予想した。しかしながら、HPMAの存在下、LDAを用いて(−)−(8)をブロモ酢酸メチルでアルキル化する最初の試みは、微量の(−)−(16)を含有する複合混合物のみを与えるのみであった。側鎖の反応を抑制することが報告されているCu(I)の添加(Johnson,C.R.andT.Penning(1988)J.Am.Chem.Soc.2110:4726−4735)、または対応するスズエノラート[THF中、LDAで(−)−(10)を処理し、その後HMPAおよび塩化トリブチルスズで処理して生成]の使用(Suzuki,M.et al.(1985)J.Am.Chem.Soc.107:3348;Nishiyama,H.et al.(1984)Tetrahedron Lett.25:223]のいずれもが、前述の状況を改善するに至らなかった。しかしながら、(−)−(10)の亜鉛エノラート[THF中、1.1当量のLHMDSで(−)−(10)を処理し、その後HMPA(3.0当量)およびジメチル亜鉛(Morita,Y.et al.(1989)J.Org.Chem.54:1787−1788)(1.0当量)によって順番に処理して生成]のブロモ酢酸メチルによるアルキル化は、単一ジアステレオマーとして一貫して55〜60%収率で(−)−(16)を与えた(この反応は、幾つかのベースライン物質を除いてかなり不純物のないものであった。ブロモ酢酸t−ブチルをブロモ酢酸メチルの代わりに使用しても収率は改善されなかった)(スキーム3)。
【0152】
【化28】

【0153】
次に、(−)−(16)のWittingエチル化を、臭化エチルトリフェニルホスフィンを用いて行った。−45℃において塩基としてLDAを用いることにより最良の結果を得た。E−異性体(−)−(17)に有利な優れた立体選択性(ca.,10:1 E:Z)を達成したが、収率はわずか少量(42%)であり、これは(−)−(16)の容易なエノール化によるものであると予想された(Edmunds,M."The Witting Reaction"In MODERN CARBONYL OLEFINATION,Takeda,Ed.,John Wiley&Sons,New Jerse,2004)。興味深いことに、この立体選択性は、反応温度によって顕著に変化した。0℃における前記E:Zの立体選択性は、3.3:1であったのに対し、室温では、選択性は1.6:1であった。このオレフィンのE構造の指定は、NMR NOE解析に基づくものである(スキーム4)。
【0154】
【化29】

【0155】
エステル(−)−(17)(LiOH/THF/HO)の加水分解により、次に酸である(−)−(18)が得られ、この酸は4−ヒドロキシフェネチルアルコールによりMitsunobuエステル化(Mitsunobu,O.(1981)Synthesis 1−28)することにより、収率92%でフェノール(−)−(19)が得られた。予想どおりに、前記Mitsunobu反応は、第一水酸基の位置において完全化学選択的に進行した(Appendino,G.et al.(2002)Org.Lett.4:3839−3841)。その後、(−)−オレオカンタールの合成を完結させるために、隣接ジオール部分(4N塩酸/アセトにトリル)の遊離、および酸化的開裂(NaIO)を経由して達成した。ここで、(−)−オレオカンタール(1)は、全ての観点において(例えば、Hおよび13CNMR、IRおよびHRMS)、バージンオリーブ油から単離された基準試料と同一であり、後者は、文献(Montedoro,G.et al.(1993)J.Agric.Food Chem.41:2228−2234)で報告されているものと同一のスペクトルデータを有していた。(1)の構造指定はまた、COSY NMR解析によっても確認した。合成した(−)−(1)は、バージンオリーブ油から単離した試料から得られたものと同じく([α]25−0.9、c=2.0、CHCl)低い負の旋光性([α]25−0.78、c=0.9、CHCl)を示した。したがって、(−)−オレオカンタール(1)の立体化学は、3S、4Eである。天然生成物(+)−(1)の鏡像異性体は、(+)−(10)で開始して(+)−1([α]25+0.73、c=0.55、CHCl)で完了する同様の反応順序により調製した(スキーム5)。
【0156】
【化30】

【0157】
要約すると、効果的かつ合成スケールの調節可能なオレオカンタール(1)の両鏡像異性体の合成を達成し、それぞれが、安価な(D)−(−)−リボースから6回のクロマトグラフィー分離のみを要する13ステップ(総収率7%)で達成した。オレオカンタールの多数の関連天然生成物に対する構造類似性(Somanadhan,B.et al.(1998)Planta Medica 64:246−50;Takenaka,Y.et al.(2002)Chem.&Pharm.Bull.50(3):384−389;Takenaka,Y.et al.(2002)Phytochemistry59(7):779−787)により、本願明細書において紹介した合成手法が、そのような化合物を構築するに適用可能であることを示唆している。
【0158】
B.オレオカンタールの機能性研究
オレオカンタールの制限的な喉の炎症は、イブプロフェンにより誘引されるものと非常に類似している。観察される知覚刺激性の類似しているため、発明者らは、オリーブ油からオレオカンタールを単離して合成した。市販されているオリーブ油10種について官能的および化学的評価を行ったところ、喉の炎症強度とオレオカンタール濃度との間に強い正の相関関係が見られた。合成オレオカンタールを用いたシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ試験によって、この物質が官能特性と一致して、イブプロフェンに類似した抗炎症特性を有するNSAIDであることが示された。オレオカンタールは、高オリーブ油食に関連した健康上の周知の利点において重要な役割を果たしている可能性がある。さらに、これによって、その他の薬理学的に重要な化合物の特定が、官能特性の類似性に着目することにより促進される。
【0159】
発明者らの研究所における最近の研究によると、イブプロフェン、及びその他の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の一部は、例えば、口や唇に灼熱感も与えるカプサイシンおよびピペリンとは異なり、ほぼ喉のみに刺すような異常な感覚特性を有する。新たに圧搾されたシチリア産オリーブ油の味見をしている時に、イブプロフェンと同一と思われる喉に炎症的な感覚が認められた。実際、高品質のエキストラバージン油は、イブプロフェンを飲み込む際に感じる感覚に類似した、刺すような、あるいは灼熱感的な感覚によって、しばしば特徴づけられる。オリーブ油の原液を飲み込んだ場合、オリーブ油によって、少々の咳や咳払いが誘発される場合がよくある。オリーブ油愛好家は、油を0、1、2、または3咳と分類し、番号の高いものほど優れた品質であるとしている。この感覚特性に関連しているものの実体は、オリーブ油において見出される多くのポリフェノールの1つである、デアセトキシジアルデヒド型リグストロシドのアグリコンであることが、最近報告された。
【0160】
それらの類似した口腔知覚特性に基づいて、発明者らは、オレオカンタールがイブプロフェンの薬理学的特性も共有しているに違いないと推論した。この理論を検証するため、発明者らは、まずオレオカンタールの同一性を確かめ、確実に立証する必要があった。これには、オレオカンタールを単離し定性するための効果的な分析方法の開発が求められた。この化合物の同一性およびその特性を検証するために、2つのアプローチをとった。まず始めに発明者らは、オレオカンタールを用いて精神物理学的実験を行い、特定された化合物の量を市販のオリーブ油における灼熱感の度合いと相関させた。第2に、発明者らはオレオカンタールを合成し、この合成オレオカンタールに関する精神物理学的特性を試験した。最後に、イブプロフェンに似た精神物理学的活性についてオレオカンタールを調べるために、合成した物質を用いたシクロオキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ、および脂質過酸化分析を行った。
【0161】
オレオカンタールを単離および精製するために、発明者らは組織的感覚標的アプローチを用いた。すなわち、発明者らは、Andrewsらにより利用されたものと同様に、単離および精製手続きの各段階において、咽頭刺激化合物の存在をモニターするための手段として味分析を採用した。簡潔に述べると、メタノール/水(80/20体積比)を用いて、刺激物質をオリーブ油から抽出した。逆相HPLC法により、フェノール抽出物を15画分に分離し、このうち1つのみが刺激性のものであった。純粋な物質を得るために、オリーブ油のフェノール抽出物をC18固相抽出カートリッジで予備分画した。HPLC法から得られた咽頭刺激腫瘍物質に関する遅延情報により、3つの異なる溶出溶媒比で混合されたメタノールと水を使用して、主要な共抽出されたその他のフェノール(抽出)化合物から分離することができた。喉の炎症を引き起こす画分のHPLC分析により、いくつかの不溶化合物存在が明らかとなった。このため新しいHPLCグラジェントを開発し、1つの十分に分離されたピークのみが喉炎症性であった。詳細なNMR(1Dおよび2D)分析をこの物質で行った。H−NMRスペクトルでは微量の不純物の存在を示したにも関わらず、主要化合物の構造は、Montedoroによって最初にオリーブ油中に特定され、最近喉炎症物質であると報告された、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル,4−ホルミル−3−(2−オキソエチル)−4−ヘキサン酸エステルである、デアセトキシジアルデヒド型リグストロシドのアグリコンであることが容易に特定された。オレオカンタールの旋光度の測定により、天然の鏡像異性体が左旋光性であることがわかった。
【0162】
喉炎症を引き起こす能力はオリーブ油によって著しく異なる。オレオカンタールがこの官能特性に主に関与しているならば、化合物と喉の炎症度との間に正の相関関係があるはずである。この仮説を検証するため、発明者らは、非公式評価に基づく喉炎症性の度合いが大きく異なる10種の異なるオリーブ油を購入した。10種の油それぞれを少量(1g)でヘキサン−アセトニトリル(液−液)抽出を行い、当該化合物を抽出した。この溶媒抽出物を、逆相HPLCおよび278nmでのUV検出により分析した。オレオカンタールは、アセトニトリルおよび水の溶出勾配で、他の抽出化合物からクロマトグラフ法により分離した。全ての分析は、純粋な単離されたオレオカンタールの複数の溶液を外部標準物質として使用して2回ずつ行った。当該化合物を後に合成した場合であっても、この方法を確認するために標準物質として使用した。全体として、再現性は高く(RSD=4.7%)、回収率も良好(95%)であり較正曲線は直線(r=0.9999)で、定量限界は、<1ppmであった。
【0163】
これら10種の油の咽頭刺激の度合いを17人のボランティアによって定量した。試験間の時間間隔が短いと刺激に敏感になる可能性があるため、各物質を各試験間で1〜2時間あけて、2つの異なるオリーブ油試料を1日当たり2回のみ評価した。被験者は、嗅覚的な手がかりを与えないように鼻用クリップを着用した。喉を確実に刺激するため、味覚検査は、約3.5mLのオリーブ油を口の中に入れて口腔内に3秒間とどめた後、2回に分けて飲み込むことから成る。45秒後、被験者には、一般的に分類された等級尺度である、等級評価のような品質データを作成するために開発された官能尺度を用いて、最大咽頭刺激感覚速度をについて尋ねた。各被験者は、全10種のオリーブ油について2回試験を実施した。
【0164】
これら10種のオリーブ油中のオレオカンタールの濃度、およびこれらの喉炎症の度合いは、統計的に有意差があったことが証明され(r=0.90;図2)、試験したオリーブ油における咽頭刺激の大半にオレオカンタールが関与しているさらなる証拠となった。
【0165】
これらの研究は、オレオカンタールがオリーブ油中に含まれる主要な喉炎症性化合物であることを強く関連づけている。しかしながら、Andrewsらが述べているように、デノボの全合成を完成させた後の感覚分析をせずには、灼熱感を引き起こす微量成分または混合成分が刺激源であることを排除することはできない。オレオカンタールの構造は、立体特異中心を有するため、発明者らは、容易に入手可能なD−リボースから両鏡像異性体を合成した。(+)−および(−)−オレオカンタール両者の合成は、図3および4における左旋性の(−)−鏡像異性体の回収に関して概説されているように、13ステップを要する。両者の合成は、合成スケールの増減が可能であり、7%の全収率を与えるので、官能および薬理学的評価に十分な物質が得られることを実証した。合成オレオカンタールの左旋性(−)−鏡像異性体は、天然物質のものと同じ正負の符号および旋光強度を示した。従って、変異体(1)の絶対的立体方向性(absolute stereodirection)は、図2に示す。
【0166】
オリーブ油およびイブプロフェンの味覚検査に熟練した3人により、標準的な2択法を利用して、非刺激性であるコーン油中に分散した合成化合物(天然の(−)−異性体のみ)を、発明者が評価したオリーブ油の中で最も強力なオリーブ油であるFalconaroオリーブ油で見出される濃度の約2倍濃度で評価した(図1)。
【0167】
試験は2重盲検法で行い、それぞれ2つの検体の3セットを体験させるものであり、このうち1方が合成オレオカンタール添加のもので、他方がブランクの対照試料として提供した。1対の試料うちいずれがより刺激性であるかを示すことを求めた。3人の評価者のそれぞれが、3回の実施で試料を正しく特定し(9試料中9、p<0.01)、3人の全ての評価者が、オリーブ油およびイブプロフェン両者の咳誘発性感覚特徴を有する特徴的な喉の奥の炎症を特定した。予想通り、合成(−)−オレオカンタールの咽頭刺激は、高級オリーブ油から単離されたオレオカンタールと同一であった。重要なことには、この効果は、用量依存性(図2の白抜き三角の破線)であった。10人の被験者に対して、非刺激性の市販のコーン油を原液で、および合成(−)−オレオカンタールまたは苦味物質であるオクタ酢酸スクロース(sucrose octaacetate:SOA)(Sigma−Aldrich社)との混合物を用いて試験を実施した。SOAの添加によって、対象者は炎症性検体の同一性を示すことなく、苦味や別の炎症性の手がかりによって、試験を実施することが可能になった。(−)−オレオカンタールは、10種の試験油中で特定された最高濃度の200μg/mL、およびこの半分および対数的希釈濃度の63.25および20μg/mLで試験を行った。SOAは3段階の(−)−オレオカンタールの刺激強度に匹敵するように、コーン油に添加した(4x10−4、1x10−4、5x10−5M)。被験者は2種強制選択法(two−alternative forced−choice:2FAC)による試験(各被験者について、各濃度で4回試験)および強度評価セッション(各油について4段階評価)に参加した。2AFC試験に対して、被験者は2つの3.0mLのコーン油試料と、対応する強度のSOAおよび(−)−オレオカンタールを強度の低い順に渡され、上述のように油を試験することが求められた。刺激位置についてわからないようにしながら、被験者各試験において、「これらの2つの油のうちどちらが喉でより刺激的でしたか?」および「どちらの方が苦かったですか?」の2つの質問に答えることが求められた。20μg/mLおよび5x10−5Mの濃度レベルでは、大抵の被験者がいくつかの試料について、2つのうち同じ油がより炎症的でより苦いと報告した。このことは、試験参加者が試験範囲内で両者の試験で、その1つの油をより強いものとして快く選択していることを実証している。正しい選択が試験の前に振り分けられた場合、被験者は、混在物のない2つのコーン油間で選択するのに、推定で言い当てるようにした。20μg/mLでは、被験者は、40試験中24が正解で、このことはこの濃度がコーン油での検出限界の濃度レベルに近いことを示している。この他の2つの濃度では、39/40および40/40試験の正解であった。強度評価試験に対して、被験者は、刺激の順に対応させて、8種全ての油を強度の低い順に渡され、各油について一般的に分類された強度尺度に基づいて、喉炎症性および苦味を評価するように求められた。
【0168】
刺激の質および位置が薬理学的活性の信号を与えていると仮定すると、オレオカンタールは、炎症の強力な調節物質である、イブプロフェンの薬理学的特性の少なくともいくつかに類似しているはずである。このことを検証するために、発明者らは、炎症過程の中心である2つの酵素、シクロオキシゲナーゼ(COX)およびリポキシゲナーゼ(LO)の阻害を評価することを選択した。イブプロフェンは、COX−1およびCOX−2の強力な阻害物質ではあるが、リポキシゲナーゼを阻害しない。オレオカンタールのヒツジCOX−1、ヒト組換え型COX−2、および大豆15−リポキシゲナーゼ活性阻害のオレオカンタールの濃度依存性を市販のキット(Cayman Chemical社)を使用して測定した。インドメタシンを正の(阻害性)対照として、シクロオキシゲナーゼ分析に使用し、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)およびカフェイン酸を正の(阻害性)対照としてリポキシゲナーゼ分析で使用した。オレオカンタールの鏡像異性体の両者は、イブプロフェンで観測されたほどリポキシゲナーゼ活性に効果を及ぼすことなく、COX−1およびCOX−2活性の両者の用量依存的阻害性を示した(表1)。オレオカンタール(−)に関するIC50の計算値(阻害性の濃度に対する最小二乗回帰分析)は、COX−1およびCOX−2について、それぞれ21.4μmおよび29.4μmであった。オレオカンタール(+)に関するIC50は、COX−1およびCOX−2のそれぞれに対して、27.9μmおよび40.5μmであった。これらの実験において、オレオカンタールの鏡像異性体の両者が、COX−1およびCOX−2を阻害するのに、等モル濃度で、イブプロフェンよりも強力であった。オレオカンタールの両鏡像異性体は、等モルのα―トコフェノールと同程度で、生体外で金属イオンにより誘導された血清脂質の過酸化を阻害した(データ図示せず)。従って、オレオカンタールは、α―トコフェノールに匹敵する抗酸化活性を示し、アラキドン酸阻害特性(リポキシゲナーゼ阻害のないシクロキシゲナーゼ阻害)を有し、オレオカンタールの両鏡像異性体がイブプロフェンよりも強力な力価を有する古典的なNSAIDsであることを示している。
【0169】
これらのことを総合すると、これらのデータは、オリーブ油中の咽頭刺激化合物がイブプロフェン様の抗炎症物質であるという発明者らの仮説と一致している。重要なことは、これらのオレオカンタールに関する結果は、口からの感覚が生体内での薬理学的分析としていかに役立つかの例を提供するものである点である。これらの結果はさらに、オリーブ油を消費することによる健康面での長所に関するさらなる根拠が、脂質特性、多くのポリフェノールの存在による抗酸化活性、およびリポキシゲナーゼを阻害する抗炎症薬の組み合わせによるものであったことをさらに示唆している。ここで発明者らは、イブプロフェン様の抗炎症性活性を有するオレオカンタールの長期的摂取により健康や快適さを向上する可能性がある、という長所をさらに示唆する。通常範囲上限でオリーブオイル消費者は、1日あたり約50gのオリーブ油を摂取していることと、この油が最大200μg/mLのオレオカンタールを含有していることとを仮定した場合、約10mg/日を消費していることになる。この摂取量が比較的低い(成人の痛みの緩和に対して勧められている用量の−10%)にも関わらず、その他のCOX阻害剤(例えば、アスピリン)の慢性的な低用量が、主に心臓発作のリスクを低減する、健康に重要な益を有することが知られており、やや高い用量では、心臓発作および脳梗塞の両者のリスクを低減することが知られている。
【0170】
抗炎症性活性に加えて、イブプロフェンは、COX非依存性の高アミロイド形成性AB42ペプチドを減少させる能力を有することが最近示されており、このことはおそらく、アルツハイマー病の疫学上証拠を説明するものである。従って、オレオカンタールが同様の活性を有するかを決定することが重要である。
【0171】
オリーブ油中の咽頭刺激化合物が薬理学的活性を有するという最初の仮説は、イブプロフェンとオリーブ油の口腔感覚的な類似性に基づくものであった。このことは、同様の知覚メカニズムではあるが、イブプロフェン(または、オレオカンタール)が、正確にはどのようにして、ほぼ排他的に喉の刺激を引き起こすかが理解しにくいことを暗示している。可能な説明の1つとして、イブプロフェンとオリーブ油の両者に関与する現在知られていない受容体システムの存在が挙げられる。あるいは、またはさらに、両化合物は、自由神経終末への特に容易なアクセスを有している可能性があるが、このことが喉において優先的に起こるかはわかっていない。さらに、このメカニズムが単に自由神経終末への容易なアクセスの1つであるならば、乳酸またはカプサイシン等のその他の親油性刺激物質が同様に喉のみを刺激しないのかが不明である。この知覚メカニズムの解明は、これらの分子の抗炎症活性に対する共通の経路であることを決定するか、またその逆に役立つ可能性がある。食品、香辛料、および風味の知覚特性は、薬理学的活性に関する手がかりを与える可能性があり、従って楽しみを与えるのみではなく、健康を増進させるのに役立つ。
【0172】
【表1】

【実施例2】
【0173】
構造活性相関(Structure Activity Relationship:SAR)に関する研究
構造活性相関(SAR)に関する研究をオレオカンタール誘導体の機能の相対活性を決定するのに実施することができる。図5に示すように、以下の構造を有する化合物は、
【0174】
【化32】

【0175】
オレオカンタール誘導体を生成するために、以下から選択される化合物と反応する。
【0176】
【化33】

【0177】
これらの化合物はその後、上述のように活性について試験される。オレオカンタールの相対的効能および力価は、各化合物ごとに決まっており、オレオカンタールの理論による薬物設計のために、構造−機能に関する情報を導くことができる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】図1は、ジアルデヒド及びアルデヒド形態のリングストロシド(5)及びオロロペイン(6)を含むフェノール性化合物(1〜4)を示した図である。
【図2】図2は、様々なオリーブ油の刺激強度をオレオカンタールの濃度に対してプロットしたグラフを示した図である。
【図3】図3は、(−)−オレオカンタール合成スキームを示した図である。
【図4】図4は、(+)−オレオカンタールの合成スキームを示した図である。
【図5】図5は、構造活性相関(Structure Activity Relationship:SAR)研究のスキームを示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式を有する化合物の精製された(−)エナンチオマーを合成する方法であって、
【化1】

(a)適切な溶媒中、強酸を用いてD−リボースを化学式Iの化合物に変換する工程と、
(b)化学式Iの化合物をハロゲン化試薬と接触させた後、続いて開環を誘導する金属−ハロゲン交換させることにより化学式IIaの化合物を得る工程と、
(c)適切な溶媒中、前記化学式IIaの化合物をCH=CH−MgBrと接触させることにより化学式IIIaの化合物を得る工程と、
(d)適切な溶媒中、化学式IIIaの化合物をGrubbs触媒と接触させた後、酸化させることにより化学式IVaの化合物を得る工程と、
(e)適切な溶媒中、前記化学式IVaの化合物をハロゲン及びパラジウム触媒と接触させることにより(−)−シクロペンタノン(化学式Va)を得る工程と、
(f)適切な溶媒中、前記(−)−シクロペンタノンをヘキサメチルジシラザンリチウムと接触させ、続いてヘキサメチルホスホラミド(hexamethylphosphoramide:HMPA)、ジメチル亜鉛、及びブロモ酢酸アルキルと接触させることにより、化学式VIaの化合物を得る工程と、
(g)低温にて、エチルトリフェニルホスフィンブロマイドを用いて前記化学式VIaの化合物をウィッティヒエチル化する工程と、
(h)このエステルを加水分解することにより化学式VIIIaの化合物を得る工程と、
(i)エステル化実施条件下、前記化学式VIIIaの化合物を4−ヒドロキシフェネチルアルコールと接触させることにより化学式IXaの化合物を得る工程と、
(j)この隣接ジオール部分を遊離させる工程と、
(k)酸化的開裂により(−)−オレオカンタール(化学式Xa)を得る工程と
を有する、方法。
【請求項2】
以下の化学式を有する化合物の精製された(+)エナンチオマーを合成する方法であって、
【化2】

(a)アセトン中、強酸を用いてD−リボースを化学式XIの化合物に変換する工程と、
(b)化学式XIの化合物をメチルトリフェニルホスフィンブロマイドと接触させた後、続いて酸化的開裂により化学式IIbの化合物を得る工程と、
(c)適切な溶媒中、前記化学式IIbの化合物をCH=CH−MgBrと接触させることにより化学式IIIbの化合物を得る工程と、
(d)適切な溶媒中、化学式IIIbの化合物をGrubbs触媒と接触させた後、酸化させることにより化学式IVbの化合物を得る工程と、
(e)適切な溶媒中、前記化学式IVbの化合物をハロゲン及びパラジウム触媒と接触させることにより(+)−シクロペンタノン(化学式Vb)を得る工程と、
(f)適切な溶媒中、前記(+)−シクロペンタノンをヘキサメチルジシラザンリチウムと接触させ、続いてヘキサメチルホスホラミド(hexamethylphosphoramide:HMPA)、ジメチル亜鉛、及びブロモ酢酸メチルと接触させることにより、化学式VIbの化合物を得る工程と、
(g)低温にて、エチルトリフェニルホスフィンブロマイドを用いて前記化学式VIbの化合物をウィッティヒエチル化する工程と、
(h)このエステルを加水分解することにより化学式VIIIbの化合物を得る工程と、
(i)エステル化実施条件下、前記化学式VIIIbの化合物を4−ヒドロキシフェネチルアルコールと接触させることにより化学式IXbの化合物を得る工程と、
(j)この隣接ジオール部分を遊離させる工程と、
(k)酸化的開裂により(+)−オレオカンタール(化学式Xb)を得る工程と
を有する、方法。
【請求項3】
以下の化学式を有する化合物であって、
【化3】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORであり、
この化合物はオレオカンタール以外のものである、化合物。
【請求項4】
COX−1、COX−2、COX−3、又はリポキシゲナーゼを阻害する方法であって、
以下の化学式を有する化合物の有効量を投与する工程を有するものであり、
【化4】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORである
方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項7】
請求項5記載の方法において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項8】
抗炎症組成物であって、以下の化学式を有する化合物の治療的有効量と、薬学的許容可能な担体とを有し、
【化5】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORである
抗炎症組成物。
【請求項9】
請求項8記載の組成物において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項10】
請求項9記載の組成物において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項11】
請求項9記載の組成物において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項12】
抗酸化組成物であって、以下の化学式を有する化合物の治療的有効量と、薬学的許容可能な担体とを有し、
【化6】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORである
抗酸化組成物。
【請求項13】
請求項12記載の組成物において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項14】
請求項13記載の組成物において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項15】
請求項13記載の組成物において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項16】
食物の風味を向上させる方法であって、
以下の化学式を有する化合物の有効量を添加する工程を有するものであり、
【化7】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORである
方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項18】
請求項17記載の組成物において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項19】
請求項17記載の組成物において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項20】
以下の化学式を有する化合物の有効量を有する動物忌避剤であって、
【化8】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORである、
動物忌避剤。
【請求項21】
請求項20記載の動物忌避剤において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項22】
請求項21記載の動物忌避剤において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項23】
請求項21記載の方法において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項24】
請求項20記載の動物忌避剤において、この忌避剤は噴射式スプレーである。
【請求項25】
咽頭炎を治療する方法であって、
以下の化学式を有する化合物を有する組成物の有効量と、薬学的許容可能な担体とを咽頭炎に罹患した患者に投与する工程を有し、
【化9】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORである
方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項27】
請求項26記載の方法において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項28】
請求項26記載の方法において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項29】
請求項25記載の方法において、前記組成物は舐剤形態のものである。
【請求項30】
請求項25記載の方法において、前記組成物はスプレー形態のものである。
【請求項31】
食物を保存する方法であって、
以下の化学式の化合物の有効量を食物と接触させる工程を有するものであり、
【化10】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORである
方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項34】
請求項32記載の方法において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項35】
請求項31記載の方法において、前記化合物はフィルムに組み込まれるものである。
【請求項36】
請求項31記載の方法において、前記化合物は前記食物と接触する包装材料に被膜されるものである。
【請求項37】
請求項31記載の方法において、前記化合物は前記食物に直接添加されるものである。
【請求項38】
食料品原料から動物を忌避する方法であって、
以下の化学式を有する化合物の有効量を食料品原料に添加する工程を有するものであり、
【化11】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORである
方法。
【請求項39】
請求項38記載の方法において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項40】
請求項39記載の方法において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項41】
請求項39記載の方法において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項42】
請求項38記載の方法において、前記化合物は、鳥類によって消費されやすいもの以外の食料品原料に添加されるものである。
【請求項43】
請求項38記載の方法において、前記化合物は、ヒト以外の哺乳類によって消費されやすいもの以外の食料品原料に添加されるものである。
【請求項44】
請求項38記載の方法において、前記化合物は、消費した動物に対して有毒な食料品原料に添加されるものである。
【請求項45】
請求項38記載の方法において、前記食料品原料は不凍のものである。
【請求項46】
食料品原料中の甘味の認識を抑制する方法であって、
以下の化学式の化合物の甘味抑制量を食料品原料に添加する工程を有するものであり、
【化12】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORである
方法。
【請求項47】
請求項46記載の方法において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項48】
請求項47記載の方法において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項49】
請求項47記載の方法において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項50】
風邪を治療する方法であって、
以下の化学式を有する化合物の有効量を有する組成物を、治療を必要とする患者に投与する工程を有し、
【化13】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORである
方法。
【請求項51】
請求項50記載の方法において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項52】
請求項51記載の方法において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項53】
請求項51記載の方法において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項54】
請求項50記載の方法において、前記化合物は鼻腔洗浄剤又は噴霧剤として投与されるものである。
【請求項55】
炎症性疾患に罹患した患者を治療する方法であって、
以下の化学式を含有する組成物の有効量を、炎症性疾患に罹患した患者に投与する工程を有し、
【化14】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORであり、
前記組成物は、前記患者の炎症を緩和させるものである、方法。
【請求項56】
請求項55記載の方法において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項57】
請求項56記載の方法において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項58】
請求項56記載の方法において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項59】
請求項55記載の方法において、前記炎症性疾患は、乾癬、癌、喘息、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、スクレオドーマ、I型糖尿病、重症筋無力症、多発性硬化症、サルコイドーシス、虚血腎病、ネフローゼ症候群、ベーチェット病、多発性筋炎、歯肉炎、結膜炎、血管疾患心筋虚血症、心疾患、及び脳卒中から成る群から選択されるものである。
【請求項60】
微生物の増殖を阻害する方法であって、
以下の化学式の化合物を有する組成物の有効量を微生物と接触させる工程を有し、
【化15】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORであり、
前記組成物は微生物の増殖を抑制するものである、方法。
【請求項61】
請求項60記載の方法において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項62】
請求項61記載の方法において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項63】
請求項61記載の方法において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項64】
請求項60記載の方法において、前記組成物は縫合糸又は包帯に組み込まれるものである。
【請求項65】
請求項60記載の方法において、前基礎生物は創傷に適用されるものである。
【請求項66】
オレオカンタール感受性に関連のある遺伝子をスクリーニングする方法であって、
オレオカンタール感受性細胞から形成される発現ライブラリーと検出標識を接合させたオレオカンタールとを接触する工程と、
前記オレオカンタールと結合している発現クローンを特定する工程と、
前記発現クローンをコードするポリヌクレオチドを配列決定し、オレオカンタール感受性と関連のある遺伝子を特定する、前記配列決定する工程と
を有する、方法。
【請求項67】
オレオカンタール感受性に関連のある候補遺伝子をスクリーニングする方法であって、
オレオカンタール感受性細胞において特異的に発現する遺伝子を特定する工程と、
前記特異的に発現する遺伝子の配列を得る工程と、
前記特異的に発現する遺伝子の配列を比較する工程と、
前記配列の類似性を既知の味覚受容体の配列と相互関連させる工程と
を有する方法であって、
味覚受容体に対する高い相同性によってオレオカンタール感受性と関連のある候補遺伝子を特定するものである、方法。
【請求項68】
以下の化学式の精製された(−)異性体。
【化16】

【請求項69】
以下の化学式の精製された(+)異性体。
【化17】

【請求項70】
患者の痛みを治療する方法であって、
以下の化学式の化合物を有する組成物の有効量を患者に投与する工程を有し、
【化18】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORであり、
前記組成物は前記患者の炎症を軽減するものである、方法。
【請求項71】
請求項70記載の方法において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項72】
請求項71記載の方法において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項73】
請求項71記載の方法において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項74】
オレオカンタールを精製する方法であって、
メタール:水=80:20(容積/容積)を用いてオリーブ油を抽出してフェノール性抽出物を得る、前記抽出する工程と、
C18固相抽出カートリッジ上で前記フェノール性抽出物を前分画する工程と、
弱勾配の逆相HPLCによりオレオカンタールを分離する工程と、
咽頭刺激活性を含む画分を選択する工程と、
を有する、方法。
【請求項75】
神経変性疾患を予防する方法であって、
患者に以下の化学式を有する組成物の有効量を投与する工程を有し、
【化19】

式中、
及びRは独立してH又はORであり、
及びRは独立してCHO又はCOORであり、
はH、C〜Cアルキル、又はグリコシドであり、
XはO、NH、又はCHであり、
YはC=CHCH又はCH−COORであり、
ZはC=O又はCH−ORであり、
AはCH又はCH−COORである
方法。
【請求項76】
請求項75記載の方法において、前記化合物はオレオカンタールである。
【請求項77】
請求項76記載の方法において、前記オレオカンタールは(−)−エナンチオマーである。
【請求項78】
請求項76記載の方法において、前記オレオカンタールは(+)−エナンチオマーである。
【請求項79】
請求項75記載の方法において、前記組成物は前記患者のAβ42産生を阻止するものである。
【請求項80】
請求項75記載の方法において、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病及び認知機能障害から成る群から選択されるものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−540545(P2008−540545A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511278(P2008−511278)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/017937
【国際公開番号】WO2006/122128
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【出願人】(507372095)
【Fターム(参考)】