説明

オレフィン系重合体

【課題】ポリオレフィンセグメントと極性ポリマーセグメントとの分散性が良好なオレフィン系重合体(PO)を提供すること。
【解決手段】下記要件(1)〜(4)を同時に満たすことを特徴とするPO。(1)エチレン由来ユニット(α),CH=CH−R(Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基)由来ユニット(β)の各含量及び(α)+(β)の合計含量が特定範囲。(2)芳香族ビニル化合物由来ユニット(γ)、不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種類以上のラジカル重合性単量体由来ユニット(λ)の各含量及び(γ)+(λ)の合計含量特定範囲。(3)プロトンNMRスペクトルで二つの特定範囲のケミカルシフトの面積の比が特定範囲。(4)触媒存在下アルコール処理した時、処理前のPOの重量と処理後のPOの室温下でのクロロホルム不溶成分の重量、処理前のPO中の(α),(β)を合計した重量分率との間に一定の関係が成立。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンは、軽量かつ安価な上に、優れた物性と加工性を持つという特性を有する反面、印刷性、塗装性、接着性、耐熱性、耐衝撃性、親水性、刺激応答性および他の極性を有するポリマーとの相容性などの高機能性を付与するという観点ではその高い化学的安定性が妨げとなっている。この欠点を補い、ポリオレフィンに機能性を持たせる方法として、例えば高圧ラジカル重合法によってエチレンと酢酸ビニルやメタクリル酸エステルなどの極性モノマーを共重合させる方法や、ポリオレフィンに極性モノマーをグラフトさせる方法などが一般的に広く用いられている。
【0003】
ポリオレフィンに極性モノマーをグラフトさせる場合、ラジカル開始剤の存在下にポリオレフィンと極性モノマーを反応させる方法が一般的に行われているが、このような方法によって得られたグラフト共重合体には、極性モノマーの単独重合体や未反応のポリオレフィンが含まれる場合が多くまたグラフト構造も不均一なものであるため、得られる共重合体中のポリオレフィン部と極性ポリマー部との分散性が悪く、接着性や塗装性、他の樹脂との相容性などの機能が充分に発現しない場合があった。
【0004】
上記のような極性モノマーの単独重合体の生成を抑制し、かつポリオレフィン部と極性ポリマー部との分散性が良好なブロックポリマーを合成する方法について、例えばWO98/02472号公報には、アルキルホウ素含有ポリオレフィンを利用し、ホウ素含有基を過酸化物に変換してメチルメタクリレートなどの極性モノマーをラジカル重合する方法が開示されている。
【0005】
また、本出願人らによる特開2004−131620号公報によれば、オレフィンと極性モノマーとの共重合により得られたポリオレフィン中の極性基を、ラジカル重合開始剤に変換してメチルメタクリレートなどの極性モノマーをラジカル重合する方法が開示されている。
【0006】
本発明者らはこのような従来技術のもと検討した結果、α−オレフィンに由来するユニットと酸素原子および/または窒素原子を含む特定のオレフィン系重合体が、上記のような問題を解決しうることを見出した。
【特許文献1】WO98/02472号公報
【特許文献2】特開2004−131620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリオレフィンセグメントと極性ポリマーセグメントとの分散性が良好なオレフィン系重合体に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、該課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、下記要件(1)〜(4)を同時に満たすオレフィン系重合体が上記課題を解決しうることを見出し、本発明に至った。
(1)エチレンに由来するユニット(α)の含量が0〜89重量%、CH=CH−R(Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基)で示されるα−オレフィンに由来するユニット(β)の含量が1〜90重量%であり、かつユニット(α)と(β)の合計含量が10〜90重量%の範囲である。
(2)芳香族ビニル化合物に由来するユニット(γ)の含量が1〜90重量%、不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種類以上のラジカル重合性単量体に由来するユニット(λ)の含量が0〜89重量%であり、かつユニット(γ)と(λ)の合計含量が10〜90重量%の範囲である。
(3)プロトンNMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト0.40〜0.95ppmのピーク面積(X)と4.70〜5.15ppmのピーク面積(Y)の比((Y)/(X))が0.00001以上である。
(4)酸触媒または塩基触媒の存在下アルコール処理を行った時に、処理前のオレフィン系重合体の重量(P)と処理後のオレフィン系重合体の室温下でのクロロホルム不溶成分の重量(Q)、処理前のオレフィン系重合体中のユニット(α)と(β)とを合計した重量分率(R)との間に下記式(1)で示される関係が成り立つ。
【0009】
(Q)/(P)−0.5(R)>0.5 ・・・(1)
【発明の効果】
【0010】
本発明のオレフィン系重合体は、ポリオレフィンセグメントと極性ポリマーセグメントとの分散性が良好であり、接着性や塗装性、他の樹脂との相容性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のオレフィン系重合体について具体的に説明する。
本発明に係るオレフィン系重合体は、下記要件(1)〜(4)を同時に満たすことを特徴とする。
(1)エチレンに由来するユニット(α)の含量が0〜89重量%、CH=CH−R(Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基)で示されるα−オレフィンに由来するユニット(β)の含量が1〜90重量%であり、かつユニット(α)と(β)の合計含量が10〜90重量%の範囲である。
(2)芳香族ビニル化合物に由来するユニット(γ)の含量が1〜90重量%、不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種類以上のラジカル重合性単量体に由来するユニット(λ)の含量が0〜89重量%であり、かつユニット(γ)と(λ)の合計含量が10〜90重量%の範囲である。
(3)プロトンNMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト0.40〜0.95ppmのピーク面積(X)と4.70〜5.15ppmのピーク面積(Y)の比((Y)/(X))が0.00001以上である。
(4)酸触媒または塩基触媒の存在下アルコール処理を行った時に、処理前のオレフィン系重合体の重量(P)と処理後のオレフィン系重合体の室温下でのクロロホルム不溶成分の重量(Q)、処理前のオレフィン系重合体中のユニット(α)と(β)とを合計した重量分率(R)との間に下記式(1)で示される関係が成り立つ。
(Q)/(P)−0.5(R)>0.5 ・・・(1)
【0012】
本発明のオレフィン系重合体中に含まれる、エチレンに由来するユニット(α)の含量は、通常0〜89重量%の範囲内であり、好ましくは0〜85重量%である。また、本発明のオレフィン系重合体に含まれる、CH=CH−R(Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基)で示されるα−オレフィンに由来するユニット(β)の含量は、通常1〜90重量%の範囲内であり、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは20〜85重量%である。CH=CH−R(Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基)で示されるα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数が4〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンから選ばれる少なくとも1種以上のα−オレフィンが好ましい。
【0013】
本発明のオレフィン系重合体中に含まれる上記エチレンに由来するユニット(α)とα−オレフィンに由来するユニット(β)との合計含量は、通常10〜90重量%の範囲内であり、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは15〜70重量%である。上記ユニット(α)と(β)の合計含量が10重量%未満であると、重合体中のオレフィン部が少なすぎてオレフィン部と極性部との分散性が悪くなり、また、ポリオレフィン材料との接着性や相容性が充分に発現しなくなる恐れがある。一方、90重量%を超えると、重合体中の極性部が少なすぎてオレフィン部と極性部との分散性が悪くなり、また、極性樹脂材料との接着性や相容性が充分に発現せず好ましくない。
【0014】
本発明のオレフィン系重合体中に含まれる、芳香族ビニル化合物に由来するユニット(γ)の含量は、通常1〜90重量%の範囲内であり、好ましくは1〜85重量%である。また、本発明のオレフィン重合体に含まれる、不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種類以上のラジカル重合性単量体に由来するユニット(λ)の含量は、通常0〜89重量%であり、好ましくは0〜85重量%である。
【0015】
本発明に係る芳香族ビニル化合物の具体例としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩などが挙げられ、好ましくはスチレンである。
【0016】
本発明に係る不飽和カルボン酸およびその誘導体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸およびその塩類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル化合物類、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル化合物類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル類、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル類、マレイミド、N−アルキル置換マレイミド類などが挙げられる。
【0017】
本発明のオレフィン系重合体中に含まれる芳香族ビニル化合物に由来するユニット(γ)と不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種類以上のラジカル重合性単量体に由来するユニット(λ)との合計含量は、通常10〜90重量%の範囲内であり、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは15〜70重量%である。上記ユニット(γ)と(λ)の合計含量が90重量%を超えると、重合体中のオレフィン部が少なすぎてオレフィン部と極性部との分散性が悪くなり、また、ポリオレフィン材料との接着性や相容性が充分に発現しなくなる恐れがある。一方、10重量%未満であると、重合体中の極性部が少なすぎてオレフィン部と極性部との分散性が悪くなり、また、極性樹脂材料との接着性や相容性が充分に発現せず好ましくない。
【0018】
本発明のオレフィン系重合体は、プロトンNMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト0.40〜0.95ppmのピーク面積(X)と4.70〜5.15ppmのピーク面積(Y)の比((Y)/(X))が0.00001以上であることを特徴とする。なお、プロトンNMRスペクトルのケミカルシフト値は、ハイブリッドポリマーを1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2あるいはo−ジクロロベンゼン−d4に溶かして濃度0.1〜10wt%としたものを120℃で400MHzNMRを用いて測定し、得られたスペクトルにおいて1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2のプロトンシグナルを5.95ppmあるいはo−ジクロロベンゼン−d4の高磁場側プロトンシグナルを6.90ppmとして決定したものである。
【0019】
0.40〜0.95ppmの範囲に検出されるピークは、主としてオレフィン系重合体中のポリオレフィン部に由来するピークと考えられる。具体例としては、例えばプロピレンユニットの主鎖のメチレン基および側鎖のメチル基、1−ブテンユニットの側鎖のメチル基、1−ヘキセンユニットの側鎖のメチル基、1−オクテンユニットの側鎖のメチル基、4−メチル−1−ペンテンユニットの側鎖の2個のメチル基のプロトンなどが挙げられる。
【0020】
4.70〜5.15ppmの範囲に検出されるピークには、オレフィン系重合体中のポリオレフィン部と極性ポリマー部との結合部の構造に由来するピークが存在すると考えられる。その具体的構造は明らかではないが、炭素−炭素不飽和結合に由来するプロトンのピークと考えられ、例えばJ. Am. Chem. Soc., 120, 2308 (1998)やPolymer, 45, 2883 (2004)に記載されているような三置換型の炭素−炭素二重結合である可能性が挙げられる。
【0021】
本発明に係るオレフィン系重合体においては、ケミカルシフト0.40〜0.95ppmのピーク面積(X)と4.70〜5.15ppmのピーク面積(Y)の比((Y)/(X))が0.00001以上であり、さらに0.00005以上であることが好ましい。ピーク面積比((Y)/(X))が0.00001未満であると、ポリオレフィン部と極性ポリマー部との結合が極端に少ないために互いの分散性が悪く、接着性や塗装性、相容性などが不充分となり、好ましくない。
【0022】
本発明のオレフィン系重合体においては、酸触媒または塩基触媒の存在下アルコール処理を行った時に、処理前のオレフィン系重合体の重量(P)と処理後のオレフィン系重合体の室温下でのクロロホルム不溶成分の重量(Q)、処理前のオレフィン系重合体中のユニット(α)と(β)とを合計した重量分率(R)との間に下記式(1)で示される関係が成り立つ。
【0023】
(Q)/(P)−0.5(R)>0.5 ・・・(1)
本発明において用いられるアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、ステアリルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどの1価のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1、6−へキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの2価のアルコール類、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類などが挙げられる。
【0024】
アルコール処理の際に用いられる酸触媒としては、例えばトリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸、塩酸や硫酸などの無機酸、三塩化ホウ素や塩化アルミニウム、四塩化チタンなどのルイス酸などを用いることができる。塩基触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの無機塩基、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの有機塩基、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどの金属アルコキシド類、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジンなどのアミン類が挙げられる。加える酸触媒または塩基触媒の量は、オレフィン系重合体100重量部あたり、0.1〜20重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0025】
アルコール処理に用いられる溶媒としては、具体例として、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロロエチレン、テトラクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒等をあげることができる。好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロロエチレン、テトラクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0026】
アルコール処理の方法については、例えば以下のような方法が用いられる。オレフィン系重合体を溶媒に懸濁させ、あるいは溶解させて、アルコールおよび酸触媒または塩基触媒を加え、通常−80℃〜250℃の温度、好ましくは室温以上溶媒の沸点以下の温度で反応させた後、反応液をメタノールやアセトンなどのポリオレフィンが溶解しない溶媒中に室温下で加え、析出したポリマーをろ過して濾物と濾液とに分別する。得られた濾物を室温下、クロロホルム中に投じて攪拌し、再びろ過して濾物と濾液とに分別し、得られた濾物がクロロホルム不溶成分となる。
【0027】
以下、本発明のオレフィン系重合体の製造方法について詳述する。本発明のオレフィン系重合体は、例えば、以下の(工程1)(工程2)を順次実施することにより製造される。
(工程1)ポリオレフィンとハロゲン化剤との反応によりハロゲン変性ポリオレフィンを製造する工程。
(工程2)上記(工程1)で製造されたハロゲン変性ポリオレフィンをマクロ開始剤として、ラジカル重合性単量体から選ばれる1種以上のモノマーを原子移動ラジカル重合する工程。
(工程1)は、ポリオレフィンとハロゲン化剤との反応によりハロゲン変性ポリオレフィンを製造する工程である。
【0028】
本工程で用いられるポリオレフィンとしては、例えば下記の(イ)〜(ホ)からなる群から選ばれる重合体が挙げられる。
(イ)CH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体。
(ロ)CH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体。
(ハ)CH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と下記一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物との共重合体。
(ニ)CH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体。
(ホ)前記(イ)〜(ニ)で表される重合体を不飽和カルボン酸またはその誘導体により、変性したポリオレフィン。
【0029】
【化1】

【0030】
(上記一般式(2)において、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、qが1の場合には、RおよびRは、それぞれ独立に、下記の原子または炭化水素基を表し、qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。)
上記一般式(2)において、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表す。
【0031】
ここで、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。また炭化水素基としては、それぞれ独立に、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、または炭素原子数3〜15のシクロアルキル基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基が挙げられ、ハロゲン化アルキルとしては、上記のようなアルキル基を形成している水素原子の少なくとも一部がフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0032】
これらの基は低級アルキル基を含有していてもよい。さらに上記一般式(2)において、R15とR16とが、R17とR18とが、R15とR17とが、R16とR18とが、R15とR18とが、あるいはR16とR17とがそれぞれ結合して(互いに共同して)、単環または多環を形成していてもよい。ここで形成される単環または多環としては、具体的に以下にようなものが挙げられる。
【0033】
【化2】

【0034】
なお上記例示において、1および2の番号を賦した炭素原子は、上記一般式(2)において、それぞれR15(R16)またはR17(R18)が結合している炭素原子を表す。
【0035】
上記一般式(2)で表される環状オレフィンとしては、具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2- エン誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3- デセン誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3- ウンデセン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3- ドデセン誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]-3- ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4- ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12,3.19,12.08,13]-3- ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4- ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4- ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16 ]-4- エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-5- エイコセン誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5- ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5- ドコセン誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.03,8.02,10.012,21.014,19]-5- ペンタコセン誘導体、ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]-5-ヘキサコセン誘導体などが挙げられる。
【0036】
上記のような一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物は、シクロペンタジエンと対応する構造を有するオレフィン類とを、ディールス・アルダー反応させることによって製造することができる。これらの環状オレフィンは、単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
≪(イ)CH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体≫
本発明で用いられるCH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体(イ)において、CH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物としては、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素数が4〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが挙げられる。これらの例示オレフィン類の中では、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンから選ばれる少なくても1種以上のオレフィンを使用することが好ましい。
【0038】
本発明で用いられるCH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体(イ)としては、上記のα−オレフィン化合物を単独重合または共重合して得られるものであれば特に制限はないが、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのエチレン系重合体、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー、プロピレンブロックコポリマーなどのプロピレン系重合体、ポリブテン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ヘキセン)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−(4−メチル−1−ペンテン)共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−(4−メチル−1−ペンテン)共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、プロピレン−オクテン共重合体などが好ましく挙げられる。
【0039】
≪(ロ)CH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体≫
本発明で用いられるCH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体(ロ)において、CH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物としては、上記(イ)の項で記載したものと同様のα−オレフィン化合物が挙げられ、芳香環を有するモノオレフィン化合物としては、具体的には、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系化合物やビニルピリジンなどが挙げられる。本発明で用いられるCH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体(ロ)としては、上記のα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物とを共重合して得られるものであれば特に制限はない。
【0040】
≪(ハ)CH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と上記一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物との共重合体≫
本発明で用いられるCH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と上記一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物との共重合体(ハ)において、CH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物としては、上記(イ)の項で記載したものと同様のα−オレフィン化合物が挙げられ、上記環状モノオレフィン化合物から誘導される構成単位は、下記一般式(3)で示される。
【0041】
【化3】

【0042】
上記一般式(3)において、n、m、q、R1 〜R18ならびにRa 、Rb は式(2)と同じ意味である。
【0043】
≪(ニ)CH2=CH−CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体≫
本発明で用いられるCH2=CH-CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体(ニ)において、CH2=CH-CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物としては、上記(イ)の項で記載したものと同様のα−オレフィン化合物が挙げられ、不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸およびその誘導体や不飽和ジカルボン酸およびその誘導体、ビニルエステル類が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ハライド、(メタ)アクリル酸アミド、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、マレイン酸ハライド、マレイン酸アミド、マレイン酸イミド、酢酸ビニルや酪酸ビニルなどの脂肪族ビニルエステル類などが挙げられる。本発明で用いられるCH2=CH-CH2x+1(xは0または正の整数)で示されるα−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体(ニ)としては、上記のα−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体であれば特に制限はないが、前記α−オレフィン化合物を50モル%以上含有するものが好ましい。
【0044】
≪(ホ)前記(イ)〜(ニ)で表される重合体を不飽和カルボン酸またはその誘導体により、変性したポリオレフィン≫
本発明で用いられる、前記(イ)〜(ニ)で表される重合体を不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性した変性ポリオレフィン(ホ)において、不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、具体的には、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、マレイン酸ハライド、マレイン酸アミド、マレイン酸イミドなどが挙げられる。前記(イ)〜(ニ)で表される重合体を不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性する方法としては、例えば、有機過酸化物などのラジカル発生剤の存在下、あるいは紫外線や放射線の存在下に不飽和カルボン酸またはその誘導体を前記(イ)〜(ニ)で表される重合体と反応させる方法などが挙げられる。
【0045】
本発明に用いられる(イ)〜(ホ)からなる群から選ばれるポリオレフィンを製造する条件や方法については特に制限はないが、例えばチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒、ポストメタロセン触媒などのような公知の遷移金属触媒を用いた配位アニオン重合や、高圧下あるいは放射線照射下でのラジカル重合などの方法を用いることができる。また、上記方法で製造したポリオレフィンを熱やラジカルで分解したものを用いることもできる。
【0046】
なお、本発明に用いられるポリオレフィンは、上述のように炭素−炭素二重結合を一つだけ有するモノオレフィン化合物あるいは、芳香環を有するモノオレフィン化合物から構成されていることが必要であり、炭素−炭素二重結合を複数有する化合物、例えばヘキサジエンやオクタジエンなどの直鎖状ジエン化合物、ジビニルベンゼンなどのスチレン系ジエン化合物、ビニルノルボルネンやエチリデンノルボルネンなどの環状ジオレフィン化合物などを上記α−オレフィン化合物と共重合して得られる重合体を用いた場合、後述するハロゲン化の段階でジエン化合物に由来する不飽和結合同士が架橋してゲル化するため好ましくない。したがって本発明では、ハロゲン化させるポリオレフィンとして、上記のような(イ)〜(ホ)からなる群から選ばれるポリオレフィンが用いられ、これらは2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0047】
本工程で用いられるハロゲン化剤としては、上記(イ)〜(ホ)から選ばれるポリオレフィンをハロゲン化してハロゲン変性ポリオレフィンを製造できるものであれば特に制限はないが、具体的には、塩素、臭素、ヨウ素、三塩化リン、三臭化リン、三ヨウ化リン、五塩化リン、五臭化リン、五ヨウ化リン、塩化チオニル、塩化スルフリル、臭化チオニル、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモカプロラクタム、N−ブロモフタルイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、N−クロログルタルイミド、N−ブロモグルタルイミド、N,N‘−ジブロモイソシアヌル酸、N−ブロモアセトアミド、N−ブロモカルバミド酸エステル、ジオキサンジブロミド、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド、ピリジニウムヒドロブロミドペルブロミド、ピロリドンヒドロトリブロミド、次亜塩素酸t−ブチル、次亜臭素酸t−ブチル、塩化銅(II)、臭化銅(II)、塩化鉄(III)、塩化オキサリル、IBrなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは塩素、臭素、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモカプロラクタム、N−ブロモフタルイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、N−クロログルタルイミド、N−ブロモグルタルイミド、N,N‘−ジブロモイソシアヌル酸であり、より好ましくは臭素および、N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモカプロラクタム、N−ブロモフタルイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、N−ブロモグルタルイミド、N,N‘−ジブロモイソシアヌル酸などのN−Br結合を有する化合物である。
【0048】
ポリオレフィンとハロゲン化剤との反応は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、例えば窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが挙げられる。また、本発明の反応には、必要に応じて溶媒を使用することができる。溶媒としては反応を阻害しないものであれば何れでも使用することができるが、例えば、具体例として、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロロエチレン、テトラクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒等をあげることができる。好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロロエチレン、テトラクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0049】
ハロゲン化剤との反応においては、反応を促進するために必要に応じてラジカル開始剤を添加することもできる。ラジカル開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビス-2-アミジノプロパン塩酸塩、アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩または4,4’-アゾビス-4-シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、2,4-ジクロル過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジイソプロピルジカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、tert-ブチルペルオキシラウレート、ジ-tert-ブチルペルオキシフタレート、ジベンジルオキシドまたは2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド等の過酸化物系開始剤、または過酸化ベンゾイル-N,N-ジメチルアニリンまたはペルオキソ二硫酸−亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系開始剤等が挙げられる。これらのうち、アゾ系開始剤または過酸化物系開始剤が好ましく、更に好ましくは、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジイソプロピルジカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチルである。これらのラジカル開始剤は、単独でもまたは2種以上を同時にまたは順次に使用することもできる。
【0050】
また、ポリオレフィンとハロゲン化剤とを反応させる方法については、従来公知の種々の方法が採用できる。例えば、ポリオレフィンを溶媒に懸濁させ、あるいは溶解させて、通常−80℃〜250℃の温度、好ましくは室温以上溶媒の沸点以下の温度で、ハロゲン化剤と必要に応じてラジカル開始剤などを添加混合して反応させる方法、あるいはポリオレフィンをその融点以上、例えば、180〜300℃の温度で溶融混練下にハロゲン化剤と必要に応じてラジカル開始剤とを接触させる方法などが挙げられる。
本工程により得られるハロゲン変性ポリオレフィンのハロゲン含有率は、0.01〜70重量%、好ましくは0.02〜50重量%、さらに好ましくは0.05〜30重量%である。本発明では、このようなハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選ばれ、これらの組み合わせであってもよい。ハロゲン変性ポリオレフィン中に存在するハロゲン原子含有量は、例えば元素分析やイオンクロマトグラフィーなどの方法により測定することができる。
【0051】
(工程2)は、上記(工程1)で製造されたハロゲン変性ポリオレフィンをマクロ開始剤として、ラジカル重合性単量体から選ばれる1種以上のモノマーを原子移動ラジカル重合する工程である。なお、本発明のマクロ開始剤とは、原子移動ラジカル重合の開始能を有する重合体であり、分子鎖中に原子移動ラジカル重合の開始点となりうる部位を有する重合体を表す。
【0052】
本発明における原子移動ラジカル重合とは、リビングラジカル重合の一つであり、有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属を中心金属とする金属錯体を触媒としてラジカル重合性単量体をラジカル重合する方法である。具体的には、例えば、Matyjaszewskiら、Chem. Rev., 101, 2921 (2001)、WO96/30421号公報、WO97/18247号公報、WO98/01480号公報、WO98/40415号公報、WO00/156795号公報、あるいは澤本ら、Chem. Rev., 101, 3689 (2001)、特開平8−41117号公報、特開平9−208616号公報、特開2000−264914号公報、特開2001−316410号公報、特開2002−80523号公報、特開2004−307872号公報などが挙げられる。用いられる開始剤としては、例えば有機ハロゲン化物やハロゲン化スルホニル化合物が挙げられるが、特に炭素−炭素二重結合または炭素−酸素二重結合のα位に存在する炭素−ハロゲン結合、あるいは一つの炭素原子上に複数のハロゲンが付加した構造が開始剤構造として好適である。本発明のハロゲン変性ポリオレフィンにおいては、炭素−炭素二重結合のα位に存在する炭素−ハロゲン結合、あるいは一つの炭素原子上に複数のハロゲンが付加した構造を開始剤構造として利用することができる。
【0053】
本工程において、ハロゲン変性ポリオレフィンをマクロ開始剤として使用することによるオレフィン系重合体の製造方法は、基本的には上記ハロゲン変性ポリオレフィンの存在下、遷移金属を中心金属とする金属錯体を触媒としてラジカル重合性単量体を原子移動ラジカル重合させるものである。
【0054】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体である。更に好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル若しくはその誘導体、1,10−フェナントロリン若しくはその誘導体、又はテトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン若しくはヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等が配位子として添加される。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)も、触媒として好適である。
【0055】
本工程で用いられるラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸およびその塩類(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩などのスチレン類、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル化合物類、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル化合物類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル化合物類などが挙げられる。これらの化合物は、単独で、または2種類以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0056】
本工程において、重合方法は特に限定されず、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状・懸濁重合などを適用することができる。本工程のラジカル重合において使用できる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば何れでも使用することができるが、例えば、具体例として、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒等をあげることができる。また、水を溶媒として、懸濁重合、乳化重合することもできる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0057】
反応温度はラジカル重合反応が進行する温度であれば何れでも構わず、所望する重合体の重合度、使用するラジカル重合開始剤および溶媒の種類や量によって一様ではないが、通常、−100℃〜250℃である。好ましくは−50℃〜180℃であり、更に好ましくは0℃〜160℃である。反応は場合によって減圧、常圧または加圧の何れでも実施できる。上記重合反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0058】
上記の方法により生成したオレフィン系重合体は、重合に用いた溶媒や未反応のモノマーの留去あるいは貧溶媒による再沈殿などの公知の方法を用いることにより単離される。更に、得られたポリマーをソックスレー抽出装置を用い、アセトンやTHFなどの極性溶媒で処理することで、副生したホモラジカル重合体を除去することが可能である。
上記(工程1)(工程2)を実施することにより、本発明のオレフィン系重合体が製造される。
【0059】
オレフィン系重合体、これを含む熱可塑性樹脂組成物およびこれらの用途
本発明に係るオレフィン系重合体は種々の用途に使用でき、例えば以下の用途に使用できる。
(1)フィルムおよびシート 本発明に係るオレフィン系重合体からなるフィルムおよびシートは、柔軟性、透明性、粘着性、防曇性、耐熱性、分離性のいずれかに優れている。
(2)本発明に係るオレフィン系重合体からなる層を少なくとも1層含む積層体 例えば農業用フィルム、ラップ用フィルム、シュリンク用フィルム、プロテクト用フィルム、血漿成分分離膜、水選択透過気化膜などの分離膜例、イオン交換膜、バッテリーセパレータ、光学分割膜などの選択分離膜など。
(3)マイクロカプセル、PTP包装、ケミカルバルブ、ドラッグデリバリーシステム。
【0060】
(4)改質材樹脂用改質剤として用いると、耐衝撃性、流動性、塗装性、結晶性、接着性、透明性などの改質効果がある。
ゴム用改質剤として用いると、耐候性、耐熱性、接着性、耐油性などの改質効果がある。ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレン系ゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM等)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO等)、シリコーンゴム(Q)、フッ素系ゴム(FKM等)等の架橋型ゴム;スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、アミド系、塩化ビニル系等の熱可塑型ゴムが挙げられる。
【0061】
潤滑油用改質剤、例えばガソリンエンジン油、ディーゼルエンジン油、舶用エンジン油、ギア油、機械油、金属加工油、モーター油、マシン油、スピンドル油、絶縁油などの潤滑油用途、またこれらの粘度調節剤、凝固点降下剤として用いることができる。ワックス用改質剤として用いると、接着性、流動性、強度などの改質効果がある。ワックスとしては、モンタンワックス、ピートワックス、オゾケライト・セレシンワックス、石油ワックス等の鉱物性ワックス、ポリエチレン、Fischer-Tropschワックス、化学修飾炭化水素ワックス、置換アミドワックス等の合成ワックス、植物ろう、動物ろうなどが挙げられる。
セメント用改質剤として用いると、成形性、強度などの改質効果がある。セメントとしては、石灰、石こう、マグネシアセメント等の気硬性セメント、ローマンセメント、天然セメント、ポルトランドセメント、アルミナセメント、高硫酸塩スラグセメント等の水硬性セメント、耐酸セメント、耐火セメント、水ガラスセメント、歯科用セメント等の特殊セメント等がある。
【0062】
(5)粘度調節剤、成形性改良剤 凸版印刷インキ、平板印刷インキ、フレキソインキ、グラビアインキ等のインキ、油性塗料、繊維素誘導体塗料、合成樹脂塗料、水性焼き付き塗料、粉状水性塗料、漆等のインキ・塗料の粘度調節剤、成形性改良剤として用いられる。
(6)建材・土木用材料 例えば、床材、床タイル、床シート、遮音シート、断熱パネル、防振材、化粧シート、巾木、アスファルト改質材、ガスケット・シーリング材、ルーフィングシ−ト、止水シート等の建材・土木用樹脂および建材・土木用成形体など。
(7)自動車内外装材およびガソリンタンク 本発明に係る多分岐型ポリマーからなる自動車内外装材、ガソリンタンクは剛性、耐衝撃性、耐油性、耐熱性に優れる。
【0063】
(8)電気、電子部品等電気絶縁材料;電子部品処理用器材;磁気記録媒体、磁気記録媒体のバインダー、電気回路の封止材、家電用素材、電子レンジ用容器などの容器用器材、電子レンジ用フィルム、高分子電解質基材、導電性アロイ基材等。コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケーススイッチコイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、光コネクター、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、電磁シールド材、スピーカーコーン材、スピーカー用振動素子等。
【0064】
(9)水性エマルジョン 本発明に係るオレフィン系重合体を含む水性エマルジョンは、ヒートシール性に優れたポリオレフィン用の接着剤となり得る。
(10)塗料ベース 本発明に係るオレフィン系重合体を含む溶剤分散体は、溶剤に対する分散安定性に優れ、金属や極性樹脂とポリオレフィンを接着する際に良好な接着性を示す。
(11)医療・衛生用材料不織布、不織布積層体、エレクトレット、医療用チューブ、医療用容器、輸液バッグ、プレフィルシリンジ、注射器などの医療用品、医療用材料、人工臓器、人工筋肉、濾過膜、食品衛生・健康用品;レトルトバッグ、鮮度保持フィルムなど。
【0065】
(12)雑貨類デスクマット、カッティングマット、定規、ペンの胴軸・グリップ・キャップ、ハサミやカッター等のグリップ、マグネットシート、ペンケース、ペーパーフォルダー、バインダー、ラベルシール、テープ、ホワイトボード等の文房具:衣類、カーテン、シーツ、絨毯、玄関マット、バスマット、バケツ、ホース、バック、プランター、エアコンや排気ファンのフィルター、食器、トレー、カップ、弁当箱、コーヒーサイフォン用ロート、メガネフレーム、コンテナ、収納ケース、ハンガー、ロープ、洗濯ネット等の生活日用雑貨類:シューズ、ゴーグル、スキー板、ラケット、ボール、テント、水中メガネ、足ヒレ、釣り竿、クーラーボックス、レジャーシート、スポーツ用ネット等のスポーツ用品:ブロック、カード、等の玩具:灯油缶、ドラム缶、洗剤やシャンプー等のボトル、等の容器;看板、パイロン、プラスチックチェーン:等の表示類等。
(13)フィラー改質剤 本発明に係るオレフィン系重合体は、フィラー分散性改良材と分散性の改良されたフィラーを調製するための添加剤などの用途に好適に用いることができる。
(14)相溶化剤 本発明に係るオレフィン系重合体は、相溶化剤として用いることができる。本発明に係るオレフィン系重合体を用いると、ポリオレフィンと、極性基を含有する熱可塑性樹脂とを任意の割合で混合することができる。本発明に係るオレフィン系重合体は、ポリオレフィンセグメントと極性ポリマーセグメントとを有しているので元来非相溶であった成分を混和させることができ、オレフィン系重合体を用いない場合に比べて破断点伸びを著しく向上させることができる。
【0066】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0067】
なお本実施例中の各物性の測定は以下のように行った。
(i)分子量および分子量分布の測定
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を使用して以下の条件で測定した。
測定装置:Waters社製 allianceGPC2000
解析装置:Waters社製Empowerプロフェッショナル
カラム:TSKgel GMH6HT×2+TSKgel GMH6HTL×2
カラム温度:140℃
移動相:o−ジクロロベンゼン(ODCB)
検出器:示差屈折率計
流速:1mL/min
試料濃度:30mg/20mL−ODCB
注入量:500μL
カラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)
【0068】
(ii)プロトンNMR測定
測定装置:日本電子製JNMGSX−400型核磁気共鳴装置
試料管:5mmφ
測定溶媒:o−ジクロロベンゼン−dあるいは1,1,2,2−テトラクロロエタン−d
測定温度:120℃
測定幅:8000Hz
パルス幅:7.7μs(45°)
パルス間隔:6.0s
測定回数:〜8000回
各ピークのケミカルシフトは、o−ジクロロベンゼン−dの高磁場側プロトンを6.90ppm、または1,1,2,2−テトラクロロエタン−dのプロトンを5.95ppmとして決定した。
【0069】
(iii)ハロゲン含量
試料を酸素フラスコ燃焼法にて分解処理し、イオンクロマトグラフ(DIONEX DX−500)にて定量した。
【0070】
(iv)元素分析
C,H,N原子:パーキンエルマー2400II元素分析装置にて測定を行った。
O原子:エレメンタール社製Vario ELIII分析装置にて測定を行った。
【実施例1】
【0071】
(1)ハロゲン変性アイソタクチックポリプロピレンの製造
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、アイソタクチックポリプロピレン(iPP;Mw=128000)75gおよびクロロベンゼン1.5Lを入れ、120℃で2時間加熱攪拌した。その後、N−ブロモスクシンイミド1.7gを加えて100℃で2時間反応を行った。反応液を1.5Lのアセトン中に注ぎ、析出したポリマーを減圧乾燥して74gの白色粉末状変性iPPを得た。得られたポリマー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.43wt%であった。
【0072】
(2)iPP−スチレン/アクリロニトリル(AS)共重合体の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、上記(1)で得たハロゲン変性iPP15gとスチレン(St)160mL、アクリロニトリル(AN)40mLを入れて25℃で撹拌した。このスラリーに、臭化銅(I)0.19g、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)0.55mLを加え、80℃で6時間重合を行った。反応液をメタノール1.5L中に注ぎ、析出したポリマーを減圧乾燥して21.0gの固体状ポリマーを得た。得られたポリマー中のプロピレン/St/AN組成比は、プロトンNMR分析より69/20/11(wt%)であった。得られたポリマーの元素分析値から、炭素原子の重量分率(A)と窒素原子の重量分率(B)との比((B)/(A))は0.032と算出された。また、ケミカルシフト0.40〜0.95ppmのピーク面積(X)と4.70〜5.15ppmのピーク面積(Y)の比((Y)/(X))は、0.00054であった(図1参照)。得られたポリマーを温度200℃に設定した熱プレス機にて圧力100kg/cm、時間5分の条件でプレス成型し、その後温度20℃に設定したプレス機にて急速に冷却することにより、厚さ0.5mm、幅および長さ15mmのプレスシートを得た。得られたプレスシートを透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察したところ、PPマトリックス中にASの島相が直径約20〜30nmの大きさで球状に微分散していた。
【0073】
(3)iPP−AS共重合体の酸触媒存在下でのアルコール処理
充分に窒素置換した50mLシュレンク管に、上記(2)で得たiPP−AS共重合体1.0gおよびクロロベンゼン20mL、n−ブタノール12mL、濃硫酸0.5mLを入れ、80℃で9時間加熱攪拌した。反応液を400mLのメタノール中に注ぎ、析出した固体状ポリマーをろ過により回収した。得られた固体状ポリマーを室温下クロロホルム200mL中に入れ、1時間撹拌後再びろ過し、フィルター上のポリマーを80℃で減圧乾燥して固体状ポリマー0.92gを回収した。回収したポリマー中のiPP/AS組成比は、プロトンNMR分析から74/26(wt%)であった。結果を表1に示す。
【0074】
(4)iPP−AS共重合体の塩基触媒存在下でのアルコール処理
充分に窒素置換した100mLシュレンク管に、上記(2)で得たiPP−AS共重合体2.0gおよびクロロベンゼン60mL、メタノール20mL、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(28%)6mLを入れ、80℃で9時間加熱攪拌した。反応液を400mLのメタノール中に注ぎ、析出した固体状ポリマーをろ過により回収した。得られた固体状ポリマーを室温下クロロホルム200mL中に入れ、1時間撹拌後再びろ過し、フィルター上のポリマーを80℃で減圧乾燥して固体状ポリマー1.91gを回収した。結果を表1に示す。
【0075】
〔比較例1〕
市販のPP−AS共重合体(日本油脂製モディパーA3400)のプロトンNMR分析を行ったところ、PP/AS組成比は69/31(wt%)であった。得られたポリマーの元素分析値から、炭素原子の重量分率(A)と窒素原子の重量分率(B)との比((B)/(A))は0.041と算出された。また、ケミカルシフト4.70〜5.15ppmの領域にピークは検出されなかった。上記実施例1(2)と同様の条件で得たプレスシートをTEM観察したところ、PPマトリックス中にASの島相が直径数μmの大きさで不均一に点在していた。得られた共重合体を上記実施例1(3)および(4)と同様の条件でアルコール処理を行った結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0077】
接着性や塗装性、他の樹脂との相容性が要求される分野で最大の性能を発揮するので、関連する産業分野に多大な貢献をすることが見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施例1のPP−AS共重合体のプロトンNMRスペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(1)〜(4)を同時に満たすことを特徴とするオレフィン系重合体。
(1)エチレンに由来するユニット(α)の含量が0〜89重量%、CH=CH−R(Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基)で示されるα−オレフィンに由来するユニット(β)の含量が1〜90重量%であり、かつユニット(α)と(β)の合計含量が10〜90重量%の範囲である。
(2)芳香族ビニル化合物に由来するユニット(γ)の含量が1〜90重量%、不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種類以上のラジカル重合性単量体に由来するユニット(λ)の含量が0〜89重量%であり、かつユニット(γ)と(λ)の合計含量が10〜90重量%の範囲である。
(3)プロトンNMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト0.40〜0.95ppmのピーク面積(X)と4.70〜5.15ppmのピーク面積(Y)の比((Y)/(X))が0.00001以上である。
(4)酸触媒または塩基触媒の存在下アルコール処理を行った時に、処理前のオレフィン系重合体の重量(P)と処理後のオレフィン系重合体の室温下でのクロロホルム不溶成分の重量(Q)、処理前のオレフィン系重合体中のユニット(α)と(β)とを合計した重量分率(R)との間に下記式(1)で示される関係が成り立つ。
(Q)/(P)−0.5(R)>0.5 ・・・(1)
【請求項2】
上記不飽和カルボン酸およびその誘導体が、(メタ)アクリル酸およびその塩、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド類、カルボン酸ビニルエステル類、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル類、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル類、マレイミド、N−アルキル置換マレイミド類から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項3】
上記CH=CH−Rで示されるα−オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンから選ばれることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項4】
上記芳香族ビニル化合物が、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項5】
請求項1に記載のオレフィン系重合体を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のオレフィン系重合体からなることを特徴とするフィルム、シート、接着性樹脂、相溶化剤、樹脂改質剤、樹脂添加剤、フィラー分散剤、または分散体。
【請求項7】
請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とするフィルム、シート、接着性樹脂、相溶化剤、樹脂改質剤、樹脂添加剤、フィラー分散剤、または分散体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−44997(P2008−44997A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219898(P2006−219898)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】