説明

オレフィン重合用触媒および超高分子量・狭分子量分布ポリエチレンの製造方法

【課題】高い重合活性を示し、かつ重合時の微粉生成量が少なく、粒子性状に優れたオレフィン重合用触媒の提供。
【解決手段】(A)1種以上のモノオレフィンと、1種以上の複数のオレフィン部が有るモノマーと、1種以上の極性基が有るモノマーとから得られるクロスリンク構造を有する重合体粒子が凝集した二次粒子からなる高分子担体に、(B)下記一般式(I)の遷移金属化合物と、(C)有機アルミニウム化合物とが担持されてなるオレフィン重合用触媒;


(式中、Mは周期律表第3〜11族の遷移金属原子、mは1〜6の整数、R1〜R6及びXは互いに同一でもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基等。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィンの重合用触媒および超高分子量・狭分子量分布ポリエチレンの製造方法に関し、更に詳しくは、特定の有機高分子担体に、サリチルアルジミン配位子を有する特定の遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物とが担持されてなるオレフィン重合用触媒およびこの触媒を用いる超高分子量・狭分子量分布ポリエチレンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、オレフィン重合用触媒として不活性有機溶媒に可溶な遷移金属化合物(均一系触媒)が注目され、これらの中でも、特にメタロセン化合物が特に知られている。
メタロセン化合物を用いたオレフィン重合法としては、有機アルミニウムオキシ化合物を助触媒として不活性な炭化水素中でオレフィンを重合するスラリー重合法、液化したオレフィンモノマー中で重合する塊状重合法、気体のオレフィンモノマー中で重合する気相重合法などが挙げられるが、いずれの場合も重合中に生成するポリマーまたは有機アルミニウムオキシ化合物が反応器内壁に付着し、除熱能力の低下を引き起こし、さらに、反応器内で塊状物を生成し、ポリオレフィンの製造設備の安定な運転に支障を来たす。また、生成ポリマーの粒子径が非常に小さく、ポリマーの嵩密度も低く、生産性を著しく低下させる問題がある。
【0003】
このような問題を解決する手段として、有機アルミニウムオキシ化合物をシリカゲル、アルミナ等の無機酸化物に担持させ、メタロセン化合物と接触させて得られる単体担持触媒を用いる方法が知られている(例えば特許文献1〜5参照)。
【0004】
しかしながら、シリカゲル、アルミナ等のような無機酸化物にメタロセン化合物および/または有機アルミニウムオキシ化合物を担持した触媒を用いて合成したポリオレフィンは、製品中に担体として使用したシリカゲル、アルミナのような比較的硬質の無機物が残留しており、これが製品の異物としてフィシュアイの原因となり、製品の価値を低下させると共に、成形機、溶融混練機または造粒機に装着されているフィルターなどを詰まらせ、工業的に安定な運転を困難にするといった問題が生じることがある。
【0005】
また、繊維に成型するときに、異物として存在して繊維切れの原因となる。
この問題を解決する方策の1つとして、シリカゲル、アルミナ等のような無機担体の代わりに、下記[化2]で表される単量体から導かれる構成単位がクロスリンクしたポリマーネットワーク構造を有する一次粒子(ナノパーティクル)が可逆凝集した二次粒子(ミクロパーティクル)から成る有機高分子担体を用いることが提案されており(特許文献6参照)、実際、ジルコノセン触媒を提案された担体に担持することで高いエチレン重合活性を実現している。
【0006】
一方、最近新しいオレフィン重合触媒として、サリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物と有機金属化合物からなる触媒が提案されており、この触媒は高いオレフィン重合活性を示す(特許文献7参照)。しかし、当該遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物と無機化合物担体からなるオレフィン重合用触媒を用いてオレフィン(共)重合体を製造した場合、十分な重合活性が得られないという問題があった。
【0007】
このような従来技術のもと高い重合活性でα−オレフィンを重合しうる触媒について研究した結果、前記有機高分子担体に前記遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物
とを担持した触媒は、高い重合活性でオレフィンを重合することができ、しかも得られた重合体は微粉量が少なく、粒子性状に優れることを見出した。そして、このような触媒を用いてエチレンを重合すると、分子量分布が狭い超高分子量の重合体が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
なお、狭分子量分布ポリエチレンの製造に関しては、メタロセン化合物を主成分とする触媒成分を無機化合物担体に担持した触媒系が知られているが(特許文献8参照)、重合体の分子量は低く、超高分子領域には達していない。一方、超高分子量ポリエチレンについては、従来、無機マグネシウム化合物を担体としてチタン等の遷移金属を担持した触媒を用いて製造されているが、分子量分布は広い。
【特許文献1】特開昭60−35006号公報
【特許文献2】特開昭61−108610号公報
【特許文献3】特開昭61−296008号公報
【特許文献4】特開昭63−66206号公報
【特許文献5】特開平2−173104号公報
【特許文献6】国際公開第02/004528号パンフレット
【特許文献7】特開平11−315109号公報
【特許文献8】特開平7−196722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、高い重合活性を示し、かつ重合時の微粉生成量が少なく、粒子性状に優れたオレフィン重合体が得られるようなオレフィン重合用触媒を提供することを目的としている。
【0010】
また本発明はこのような良好な性質の触媒を用いた超高分子量・狭分子量分布ポリエチレンの製造方法を提供することを目的としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、高い重合活性で、微粉量が少なく、粒子性状に優れるオレフィン重合体を製造することができる。また、本発明の担体担持型のオレフィン重合用触媒は、シリカゲル、アルミナのような無機化合物を含まないので、得られたオレフィン重合体は、製品がフィシュアイを発生したり、成形機、溶融混練機または造粒機に装着されているフィルターなどを詰まらせるといった問題を生じさせることがない。
【0012】
本特許に係る超高分子量・狭分子量分布ポリエチレンの製造方法によると、Mw/Mnが3.5以下、かつ極限粘度[η]が10dl/g以上であり、樹脂中に実質上シリカゲルに由来するSi原子を含まないポリエチレンを製造することができる。
【0013】
この超高分子量・狭分子量分布ポリエチレンは、耐摩耗性、耐衝撃性、自己潤滑性、耐薬品性、軽量性、食品安定性、寸法安定性に優れる上に、分子量分布が狭いことで紡糸繊維の破断強度向上が期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、
(A)少なくとも1種のオレフィニックモノマーと、少なくとも1種の複数のオレフィン部を有するモノマーと、少なくとも1種の極性基を有するモノマーとから得られるクロスリンクしたポリマーネットワーク構造を有する重合体からなる粒子が凝集した二次粒子からなる有機高分子担体に、
(B)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物と、
(C)有機アルミニウム化合物と
が担持されてなることを特徴としている;
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、Mは周期律表第3〜11族の遷移金属原子を示し、
mは、1〜6の整数を示し、
1〜R6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、また、mが2以上の場合にはR1
〜R6で示される基のうち2個の基が連結されていてもよく(但し、R1同士が結合されることはない)、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)。
【0017】
本発明では、前記オレフィニックモノマーがスチレンであることが好ましく、前記複数のオレフィン部を有するモノマーがジビニルベンゼンであることが好ましい。
本発明に係る超高分子量・狭分子量分布ポリエチレンの製造方法は、上記オレフィン重合触媒を用い、エチレン単独、またはエチレンと炭素原子数が3〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンを重合することによって、
(1)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が10dl/g以上であり、
(2)分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下であり、
(3)重合体中のSi原子含有量が5重量ppm以下である
重合体を製造することを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るオレフィン重合用触媒および超高分子量・狭分子量分布ポリエチレンの製造方法について具体的に説明する。
本発明に係るオレフィン重合触媒は、特定の有機高分子担体(A)に、(B)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物と、(C)有機アルミニウム化合物とが担持されてなる。
【0019】
(A)有機高分子担体
本発明で用いられる(A)有機高分子担体は、少なくとも1種のオレフィニックモノマーと、少なくとも1種の複数のオレフィン部を有するモノマーと、少なくとも1種の極性
基を有するモノマーとから得られるクロスリンクしたポリマーネットワーク構造を有する重合体からなる粒子(一次粒子(ナノパーティクル))が凝集した二次粒子(ミクロパーティクル)からなる。
【0020】
クロスリンクしたポリマーネットワークを有する重合体は、少なくとも1種のオレフィニックモノマー(エチレン性不飽和結合を有する単量体)(P)と、少なくとも1種の複数のオレフィン部分を有するモノマー(エチレン性不飽和結合を複数有する単量体)(Q)と、少なくとも1つの極性基を有するモノマー(R)との共重合体である。
【0021】
【化2】

【0022】
オレフィニックモノマー(P)のR1〜R4は、水素原子、ハロゲン原子、直鎖または分岐のアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール基を示し、これらの基はヘテロ置換基を有していても良い。モノマー(P)としては、スチレンが好ましい。
【0023】
上述の複数のオレフィン部分を有するモノマー(Q)のR5は、直鎖または分岐のアル
キレン、アルケニレン、アラルキル、アリーレン基を示し、これらはの基はヘテロ置換基を有していても良い。R6〜R9は、水素原子、ハロゲン原子、直鎖または分岐のアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール基を示し、これらの基はヘテロ置換基を有していても良い。モノマー(Q)としては、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0024】
極性基を有するモノマー(R)のAは、ハロゲンまたは、酸素、窒素等のヘテロ原子含有基を有する直鎖または分岐のアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール基またはヘテロ環式カルボニル残基を示す。R10〜R11は、水素原子、ハロゲン原子、直鎖または分岐のアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール基を示し、これらの基はヘテロ置換基を有していても良い。上記モノマー(R)の極性基部は、WO02/004528号パンフレットに記載のとおり、様々なの極性基に変換したものを使用することができる。また、シクロペンタジエニル基およびその誘導体に変換することも可能である。極性基含有モノマー(R)としては、酸素含有基、特に、ヒドロキシル基またはポリエーテル基含有の化合物に変換したものを使用することが好ましい。例えば以下のような構造のものを挙げることができる。
【0025】
【化3】

【0026】
また、極性基含有モノマー(R)として、ビニルピリジン等の窒素含有モノマーも使用可能であり、4−ビニルピリジンが好ましい。
上記モノマー(P)、(Q)および(R)を共重合させる際、その比率(モル比)は、モノマー(P)は30%〜60%、モノマー(Q)は2%〜20%、モノマー(R)は30%〜60%であることが好ましい。
【0027】
本発明で用いられるクロスリンクしたポリマーネットワーク構造を有する重合体からなる粒子は、例えば図1に示すような構造を有している。
有機高分子担体の一次粒子(ナノパーティクル)の平均径は10nm〜400nmであることが好ましい。
【0028】
前述の一次粒子(ナノパーティクル)が可逆凝集して二次粒子(ミクロパーティクル)を形成することでポリマー担体が形成されるが、そのポリマー担体の二次粒子(ミクロパーティクル)の平均径は1μm〜800μmであることが好ましい。
【0029】
本発明で用いられる(A)有機高分子担体を構成する一次粒子(ナノパーティクル)の製造方法は特に制限はないが、例えば乳化重合により製造することができ、具体的にはWO02/004528号パンフレットに記載されている。
【0030】
また、二次粒子(ミクロパーティクル)は、後述するようにオレフィン重合用触媒調製時に形成される。
(B)遷移金属化合物
本発明で用いられる遷移金属化合物は、下記一般式(I)で表される。
【0031】
【化4】

【0032】
(なお、N……Mは、一般的には配位していることを示すが、本発明においては配位して
いてもしていなくてもよい。)
一般式(I)中、Mは周期表第3〜11族の遷移金属原子(3族にはランタノイドも含まれる)を示し、好ましくは3〜9族(3族にはランタノイドも含まれる)の金属原子であり、より好ましくは3〜5族および9族の金属原子であり、特に好ましくは4族または5族の金属原子である。具体的には、スカンジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルト、ロジウム、イットリウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウムなどであり、好ましくはスカンジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、コバルト、ロジウムなどであり、より好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、コバルト、ロジウム、バナジウム、ニオブ、タンタルなどであり、特に好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウムである。
【0033】
mは、1〜6、好ましくは1〜4の整数を示す。
1〜R6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
【0034】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基として具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシルなどの炭素
原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル、アリル、イソプロペニルなどの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;
エチニル、プロパルギルなど炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;
シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;
シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニルなどの炭素原子数が5〜30の環状不飽和炭化水素基;
フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;
トリル、iso-プロピルフェニル、tert-ブチルフェニル、ジメチルフェニル、ジ-tert-
ブチルフェニルなどのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
【0035】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0036】
また、上記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえば、ベンジル、クミルなどのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコキシ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキ
シル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。
【0037】
これらのうち、特に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシルなどの炭素原子数1
〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
【0038】
酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基としては、上記例示したものと同様のものが挙げられる。
ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物;フラン、ピランなどの含酸素化合物;チオフェンなどの含イオウ化合物などの残基;およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0039】
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基など、具体的には、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル-t-ブチルシリル、ジメチル(ペンタフルオ
ロフェニル)シリルなどが挙げられる。これらの中では、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、トリフェニルシリルなどが好ましい。特にトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリルが好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシなどが挙げられる。
【0040】
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換したものが挙げられる。
次に上記で説明したR1〜R6の例について、より具体的に説明する。
【0041】
酸素含有基のうち、アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシなどが、アリーロキシ基と
しては、フェノキシ、2,6-ジメチルフェノキシ、2,4,6-トリメチルフェノキシなどが、アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p−クロロベンゾイル基、p-メトキシベンソイル基などが、エステル基としては、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、メトキシカルボニル、フェノキシカッルボニル、p-クロロフェノキシカルボニルなどが好ましく例示される。
【0042】
窒素含有基のうち、アミド基としては、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルベンズアミドなどが、アミノ基としては、ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジフェニルアミノなどが、イミド基としては、アセトイミド、ベンズイミドなどが、イミノ基としては、メチルイミノ、エチルイミノ、プロピルイミノ、ブチルイミノ、フェニルイミノなどが好ましく例示される。
【0043】
イオウ含有基のうち、アルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ等が、アリー
ルチオ基としては、フェニルチオ、メチルフェニルチオ、ナルチルチオ等が、チオエステル基としては、アセチルチオ、ベンゾイルチオ、メチルチオカルボニル、フェニルチオカルボニルなどが、スルホンエステル基としては、スルホン酸メチル、スルホン酸エチル、スルホン酸フェニルなどが、スルホンアミド基としては、フェニルスルホンアミド、N−メチルスルホンアミド、N−メチル−p−トルエンスルホンアミドなどが好ましく挙げられる。
【0044】
なお、R6 は水素以外の置換基であることが好ましい。すなわち、R6 はハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基が好ましい。特にR6 は、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリーロキシ基、アリールチオ基、アシル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、アミノ基、イミド基、イミノ基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、シアノ基、ニトロ基またはヒドロキシ基であることが好ましく、さらにハロゲン原子、炭化水素基、炭化水素置換シリル基であることが好ましい。
【0045】
6 として好ましい炭化水素基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル
などの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニリル、トリフェニリルなどの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;および、これらの基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基などの置換基がさらに置換した基などが好ましく挙げられる。
【0046】
6として好ましい炭化水素置換シリル基としては、メチルシリル、ジメチルシリル、
トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル-tert-ブチルシリル、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリルなどが挙げられる。特に好ましくは、トリメチルシリル、トリエチルフェニル、ジフェニルメチルシリル、イソフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル-t-ブチルシリル、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)
シリルなどが挙げられる。
【0047】
本発明では、R6としては特に、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の分岐状アルキル基、およびこれらの基の水素原子を炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基で置換した基(クミル基など)、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基から選ばれる基であることが好ましく、あるいはフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラニル、フェナントリルなどの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基、または炭化水素置換シリル基であることも好ましい。
【0048】
1〜R6は、これらのうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0049】
また、mが2以上の場合には、R1〜R6で示される基のうち2個の基が連結されていて
もよい。さらに、mが2以上の場合にはR1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士
、R6同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0050】
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。なお、nが2以上の場合には、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0051】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基としては、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシルなどのアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの炭素原子数が3〜30のシクロアルキル基;ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどのアリールアルキル基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、ナフチル、メチルナフチル、アントリル、フェナントリルなどのアリール基などが挙げられる。また、これらの炭化水素基には、ハロゲン化炭化水素、具体的には炭素原子数1〜20の炭化水素基の少なくとも一つの水素がハロゲンに置換した基も含まれる。
【0052】
これらのうち、炭素原子数が1〜20のものが好ましい。ヘテロ環式化合物残基としては、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられる。
酸素含有基としては、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、ヒドロキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコシキ基;フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリーロキシ基;フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基;アセトキシ基;カルボニル基などが挙げられる。
【0053】
イオウ含有基としては、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、メチルスルフォネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p−トルエンスルフォネート、トリメチルベンゼンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p−クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基;メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンジルスルフィネート、p−トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネートなどのスルフィネート基;アルキルチオ基;アリールチオ基などが挙げられる。
【0054】
窒素含有基として具体的には、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、アミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基;フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられる。
【0055】
ホウ素含有基として具体的には、BR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよ
いアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。リン含有基として具体的には、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン基;トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィンなどのトリアリールホスフィン基;メチルホスファイト、エチルホスファイト、フェニルホスファイトな
どのホスファイト基(ホスフィド基);ホスホン酸基;ホスフィン酸基などが挙げられる。
【0056】
ケイ素含有基として具体的には、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、フェニルシリル、ジフェニルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどの炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニルなどのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
【0057】
ゲルマニウム含有基として具体的には、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基が挙げられる。
【0058】
スズ含有基として具体的には、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、より具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をスズに置換した基が挙げられる。
ハロゲン含有基として具体的には、PF6、BF4などのフッ素含有基、ClO4、Sb
Cl6などの塩素含有基、IO4などのヨウ素含有基が挙げられる。
【0059】
アルミニウム含有基として具体的には、AlR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有
してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。
なお、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0060】
以下に、上記一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
なお、下記具体例においてMは遷移金属元素であり、個々には、Sc(III)、Ti(III)、Ti(IV)、Zr(III)、Zr(IV)、Hf(IV)、V(IV)、Nb(V)、Ta(V)、Co(II)、
Co(III)、Rh(II)、Rh(III)、Rh(IV)を示すが、これらに限定されるものではない。これらのなかではTi(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)が好ましい。
【0061】
Xは、Cl、Br等のハロゲン、もしくはメチル等のアルキル基を示すが、これらに限定されるものではない。また、Xが複数ある場合は、これらは同じであっても、異なっていても良い。
【0062】
nは金属Mの価数により決定される。例えば、2種のモノアニオン種が金属に結合している場合、2価金属ではn=0、3価金属ではn=1、4価金属ではn=2、5価金属ではn=3になる。たとえば金属がTi(IV)の場合はn=2であり、Zr(IV)の場合はn=2であり、Hf(IV)の場合はn=2である。
【0063】
【化5】

【0064】
【化6】

【0065】
【化7】

【0066】
【化8】

【0067】
【化9】

【0068】
【化10】

【0069】
【化11】

【0070】
なお、上記例示中、Meはメチル基、Etはエチル基、iPrはi-プロピル基、tBuはtert-ブチル基、Phはフェニル基を示す。
また、一般式(I)で表される(B)遷移金属化合物としては、下記一般式(I-b)で
表される遷移金属化合物がある。
【0071】
【化12】

【0072】
(式中、Mは周期表第3〜11族の遷移金属原子を示し、
1〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水
素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよく、
Yは、酸素、イオウ、炭素、窒素、リン、ケイ素、セレン、スズおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む2価の結合基を示す。)
一般式(I-b)において、R6またはR10の少なくとも一方、特に両方が、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基であることが好ましい。
【0073】
一般式(I-b)において、M、R1〜R10およびXとしては、一般式(I)の化合物について挙げたM、R1〜R6およびXと同じ基を用いることができる。Xとしては、特に、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20の炭化水素基またはスルホネート基が好ましい。nが2以上の場合、2個以上のXが互いに連結して形成する環は、芳香族環であっても、脂肪族環であってもよい。
【0074】
Yは、酸素、イオウ、炭素、窒素、リン、ケイ素、セレン、スズおよびホウ素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む2価の結合基を示す。
これらの結合基Yは、好ましくは主鎖が原子3個以上、より好ましくは4個以上20個以下、特に好ましくは4個以上10個以下で構成された構造を有する。なお、これらの結合基は置換基を有していてもよい。
【0075】
2価の結合基(Y)として具体的には、−O−、−S−、−Se−などのカルコゲン原子;−NH−、−N(CH3)−、−PH−、−P(CH3)−などの窒素またはリン原子含有基;−SiH2−、−Si(CH3)2−などのケイ素原子含有基;−SnH2−、−Sn
(CH3)2−などのスズ原子含有基;−BH−、−B(CH3)−、−BF−などのホウ素
原子含有基などが挙げられる。炭化水素基としては特に制限はないが−(CH2)4−、−
(CH2)5−、−(CH2)6−などの炭素原子数が3〜20の飽和炭化水素基、シクロヘキシリデン基、シクロヘキシレン基などの環状飽和炭化水素基、これらの飽和炭化水素基の一部が1〜10個の炭化水素基、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン、酸素、イオウ、窒素、リン、ケイ素、セレン、スズ、ホウ素などのヘテロ原子で置換された基、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンなどの炭素原子数が6〜20の環状炭化水素の残基、ピリジン
、キノリン、チオフェン、フランなどのヘテロ原子を含む炭素原子数が3〜20の環状化合物の残基などが挙げられる。
【0076】
以下に、上記一般式(I-b)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これら
に限定されるものではない。
【0077】
【化13】

【0078】
【化14】

【0079】
なお、上記例示中、Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示す。本発明では、上記のような化合物において、チタン金属をジルコニウム、ハフニウムなどのチタン以外の金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
【0080】
(C)有機アルミニウム化合物
本発明で使用する有機アルミニウム化合物は、
一般式 RamAl(ORbnpq
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される。
【0081】
具体的には、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハイドライド、ジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムアルコキシド、モノアルキルアルミニウムジクロライド、メチルアルモキサンが使用でき、好ましくは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、メチルアルモキサンが使用され、特に好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、メチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサンが使用できる。
【0082】
また、これらの有機アルミニウム化合物は2種以上同時に使用することもでき、好ましい組合わせは、トリイソブチルアルミニウムとメチルアルモキサン、トリノルマルオクチルアルミニウムとメチルアルモキサンである。
【0083】
(D) 遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物
本発明では上記触媒成分の他に必要に応じて(D) 遷移金属化合物(B)と反応して
イオン対を形成する化合物(以下、「イオン化イオン性化合物」ともいう。)を使用することができる。
【0084】
本発明で用いられるイオン化イオン性化合物としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。
【0085】
具体的には、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(II)または(III)で表されるホウ素化合物などを挙げるこ
とができる。
【0086】
【化15】

【0087】
(式中、Etはエチル基を示す。)
【0088】
【化16】

【0089】
(E)非イオン性界面活性剤
本発明では上記触媒成分の他に必要に応じて、(E)非イオン性界面活性剤を用いることもできる。(E)非イオン性界面活性剤を用いることによって、懸濁重合時の重合壁、壁付着を防止し、生産性を向上させることができる。
【0090】
(E-1)ポリアルキレンオキサイドブロック
(E-1)ポリアルキレンオキサイドブロックは、一般的に非イオン性界面活性剤として用
いられるものであり、従来公知のポリアルキレンオキサイドブロックであれば何ら制限なく使用できる。
【0091】
(E-2)高級脂肪族アミド
(E-2)高級脂肪族アミドは、一般的に非イオン性界面活性剤として用いられるものであ
り、従来公知の高級脂肪族アミドであれば何ら制限なく使用できる。
【0092】
(E-3)ポリアルキレンオキサイド
(E-3)ポリアルキレンオキサイドは、従来公知のポリアルキレンオキサイドであれば何
ら制限なく使用できる。
【0093】
(E-4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル
(E-4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテルは、一般的に非イオン性界面活性剤
として用いられるものであり、従来公知のポリアルキレンオキサイドアルキルエーテルであれば何ら制限なく使用できる。
【0094】
(E-5)アルキルジエタノールアミン
(E-5)アルキルジエタノールアミンは、一般的に非イオン性界面活性剤として用いられ
るものであり、従来公知のアルキルジエタノールアミンであれば何ら制限なく使用できる。
【0095】
(E-6)ポリオキシアルキレンアルキルアミン
(E-6)ポリオキシアルキレンアルキルアミンは、一般的に非イオン性界面活性剤として
用いられるものであり、従来公知のポリオキシアルキレンアルキルアミンであれば何ら制限なく使用できる。
【0096】
このような。(E)非イオン系界面活性剤は、室温で液体であるものが取り扱い性の点で好ましい。また、このような。(E)非イオン系界面活性剤は、原液又は溶媒で希釈後、溶液で使用することが出来る。なお、本発明でいう「希釈」とは、。(E)非イオン系界面活性剤と非イオン系界面活性剤に対して不活性な液体とが混合された状態のものまたは分散された状態のものも全て含む。すなわち、溶液または分散体であり、より具体的には、溶液、サスペンジョン(懸濁液)またはエマルジョン(乳濁液)である。その中でも、非イオン系界面活性剤と溶媒が混合し、溶液状態となるものが好ましい。
【0097】
不活性な液体として例えば、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、不飽
和脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素などが挙げられる。この中でも脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素の場合は、非イオン系界面活性剤と混合することにより溶液状態となるものが好ましい。更に好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油、鉱物油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素と非イオン系界面活性剤と混合することにより溶液状態となるものがよい。
【0098】
オレフィン重合用触媒
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、前記(A)有機高分子担体に、前記(B)遷移金属化合物と、前記(C)有機アルミニウムオキシ化合物とが担持されている。
【0099】
このようなオレフィン重合用触媒は、図2に示すように例えば前述のクロスリンクしたポリマーネットワーク構造を有する重合体(以下単に「重合体」という。)と(C)有機アルミニウムオキシ化合物とを接触させ、次いで(B)遷移金属化合物を接触させることにより調製することができる。
【0100】
具体的には、
(1)加熱した不活性有機溶媒に前記重合体を溶解させた後、(C)有機アルミニウムオキシ化合物および(B)遷移金属化合物を接触する方法
(2)不活性有機溶媒に懸濁させた前記重合体からなる粒子に有機アルミニウムオキシ化合物を接触せさ、次いで(B)遷移金属化合物させる方法
(3)一次粒子(ナノパーティクル)に有機アルミニウムオキシ化合物および(B)遷移金属化合物を接触する方法が挙げられる。
【0101】
(1)および(2)の方法で用いられる不活性有機溶媒は、飽和炭化水素、芳香族炭化水素、エーテルまたはハロゲン化炭化水素であり、好ましくは炭素原子数1〜20の飽和炭化水素、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素、炭素原子数2〜20のエーテルまたは炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素である。さらに具体的には飽和炭化水素としては、ペンタン、ヘプタン、オクタン、イソブタン、ネオペンタン、シクロペンタン、デカリン等が挙げられ、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、エーテルとしては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン
およびジオキサン等が挙げられ、またはハロゲン化炭化水素としてはジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。また、不活性有機溶媒はこれらの混合物であっても良い。
【0102】
(1)の方法では、重合体を不活性有機溶媒で40℃〜250℃、好ましくは60℃〜200℃の接触温度範囲で加熱、溶解させた溶液と(C)有機アルミニウムオキシ化合物および(B)遷移金属化合物とを10分〜24時間の接触時間で混合、接触させる。さらに、接触処理した溶液は、例えば、以下のようにして粉体状の有機アルミニウムオキシ化合物を担持した有機高分子化合物を得ることができる。(i)冷却することによって固体成分を析出させる。(ii)溶液に貧溶媒を加えることによって析出させる。(iii)溶液
をノズルを経て貧溶媒に噴霧し、析出させる。(iv)溶液をスプレードライヤーで溶媒が気化する雰囲気に噴霧し、粉体化させる。(v)溶液から溶媒を除去乾固し、振動ミル、ボールミル等によって粉砕する。(i)〜(v)の操作温度は有機高分子化合物の融点温度以下である。
【0103】
(2)の方法は前記重合体を不活性有機溶媒に懸濁させ、−80℃〜200℃、好ましくは−20℃〜150℃の接触温度範囲で(C)有機アルミニウムオキシ化合物および(B)遷移金属化合物と10分〜24時間の接触時間で混合、接触させる。さらに、この接触処理した懸濁液に貧溶媒を加えても良い。また、懸濁液から溶媒を除去し、さらに振動ミル、ボールミル等によって粉砕してもよい。
【0104】
(3)の方法は、最も簡便な方法であり、実質的には溶媒の不存在下で粉体状の前記重合体をミキサーまたはミル等の混合機または粉砕機で−80℃〜200℃、好ましくは−20℃〜150℃の接触温度範囲で(C)有機アルミニウムオキシ化合物および(B)遷移金属化合物を30分〜24時間の接触時間で混合、接触させる。さらに、得られた粉体を貧溶媒に懸濁させても良い。
【0105】
また、上記の(1)〜(3)の方法における前記重合体と(C)有機アルミニウムオキシ化合物の接触量の割合は、該前記重合体1gに対して(C)有機アルミニウムオキシ化合物に含有されるアルミニウムのモル数として1×10-5〜0.1モル/g、好ましくは1×10-4〜0.01モル/gである。(B)遷移金属化合物と(C)有機アルミニウムオキシ化合物とは、(B)遷移金属化合物の遷移金属のモル数に対する(C)有機アルミニウムオキシ化合物に含有されるアルミニウムのモル数の比(アルミニウム/遷移金属)として1〜10000、好ましくは10〜2000である。
【0106】
本発明において、上記の(1)〜(3)の方法によって得られた(C)有機アルミニウムオキシ化合物を担持した重合体粒子は、不活性有機溶媒で洗浄し、担持されていない(C)有機アルミニウムオキシ化合物を除去することが、(C)有機アルミニウムオキシ化合物の反応器内壁への付着を防止する観点から好ましい。その洗浄方法としては、(C)有機アルミニウムオキシ化合物を担持した重合体を不活性有機溶媒に懸濁させるか、または不活性有機溶媒を該重合体にリンスした後、濾過またはデカンテーションまたは遠心分離して洗浄物を得る方法等が例示される。ここで用いられる不活性有機溶媒は、担持されていない(C)有機アルミニウムオキシ化合物を溶解し、かつ(C)有機アルミニウムオキシ化合物を担持した重合体が不溶な溶媒であることが好ましい。また、洗浄溶媒量及び洗浄回数は特に制限はない。また、洗浄温度は重合体の融点温度以下である。
【0107】
本発明の不活性有機溶媒に可溶な重合体と不活性有機溶媒に不溶性の担体からなる触媒を用いてオレフィンを重合する方法において、該有機遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物を担持した有機高分子化合物の使用量は、該有機遷移金属化合物の遷移金属のモル数に対する有機アルミニウムオキシ化合物を担持した有機高分子化合物に含有されるアルミニウムのモル数の比(アルミニウム/遷移金属)として1〜10000、好ましくは10〜2000である。)
本発明において、不活性有機溶媒に不溶性の担体は、上述のカルボニルを有する基を含有する有機ポリマーに上述の有機アルミニウムオキシ化合物を接触することによって有機アルミニウムオキシ化合物を有機ポリマーに担持したものが好ましく例示され、有機アルミニウムオキシ化合物は有機ポリマーと化学的な結合によって担体に保持されている。したがって、不活性有機溶媒に可溶な有機遷移金属化合物と不活性有機溶媒に不溶性な担体からなる触媒は、有機遷移金属化合物はカルボニルを有する基を含有する有機ポリマーに担持した有機アルミニウムオキシ化合物を介して担持されており、有機遷移金属化合物が有機ポリマーのカルボニルを有する基との化学結合によって、または有機ポリマーに含浸させることによって直接、有機ポリマーに担持されているものではないと推定される。
【0108】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、前記触媒にオレフィンが予備重合した予備重合触媒であってもよい。
重合方法
本発明に係るオレフィンの重合方法では、上記のようなオレフィン重合触媒の存在下に、オレフィンを重合または共重合することによりオレフィン重合体を得る。
【0109】
本発明において重合に用いられるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン
、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィンが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0110】
本発明では、重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0111】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、(B)遷移金属化合物は、反応容積1リットル当り、通常10-12〜10-2モル、好ましくは
10-8〜10-3モルとなるような量で用いられる。(B)遷移金属化合物と(C)有機アルミニウムオキシ化合物とは、(B)遷移金属化合物の遷移金属のモル数に対する(C)有機アルミニウムオキシ化合物に含有されるアルミニウムのモル数の比(アルミニウム/遷移金属)として1〜10000、好ましくは10〜2000である。
【0112】
この際、必要に応じて(D)有機アルミニウム化合物を用いることができる。この場合、(D)有機アルミニウム化合物の量は、(B)遷移金属化合物中の遷移金属1モルあたり、2000モル以下、好ましくは50〜1000モルの量であることが好ましい。また(D)有機アルミニウム化合物のかわりに、担体に担持されたものとは別に、有機アルミニウムオキシ化合物を加えてもよい。
【0113】
重合温度は、スラリー重合法を実施する際には、通常−50〜100℃、好ましくは0〜90℃の範囲であることが望ましく、液相重合法を実施する際には、通常0〜250℃、好ましくは20〜200℃の範囲であることが望ましい。気相重合法を実施する際には、通常0〜120℃、好ましくは20〜100℃の範囲であることが望ましい。重合圧力は、通常、常圧〜100kg/cm2 、好ましくは常圧〜50kg/cm2 の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0114】
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。
超高分子量・狭分子量分布ポリエチレン
本発明に係るオレフィンの重合方法では、上記重合触媒成分の存在下、エチレン単独、またはエチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくともひとつ以上のα−オレフィンを重合することが好ましい。このとき得られるポリエチレン中のエチレン成分の比率は90〜100%、好ましくは95〜100%であり、α−オレフィン成分の比率は0〜10%、好ましくは0〜5%であることが好ましい。使用されるα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、この中でも特にプロピレン、ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンが好ましい。
【0115】
上述したような本発明に係るオレフィンの重合方法により製造されたポリエチレンは、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が10dl/g以上、好ましくは15dl/g以上である。
【0116】
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(Mw/Mn)が、3.5以下、好ましくは3以下である。
さらに、ポリマー中のSi原子含有量が5重量PPM以下、好ましくは3重量PPMである。
【0117】
なお、本発明において極限粘度[η]、分子量分布、Si原子含有量は下記手段によって測定した。
極限粘度[η]
極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した値である。すなわち造粒ペレット約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求める。
【0118】
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
分子量分布(Mw/Mn)
Mw/Mnはミリポア社製GPC−150を用い以下のようにして測定した。
【0119】
分離カラムは、TSK GNH HTであり、カラムサイズは直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロルベンゼン(和光純
薬)及び酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で
移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは東ソー社製を用いた。
【0120】
Si原子含有量
ポリマー中のSi原子は、所定量のポリマー成分を650℃の電気炉で恒量になるまで灰化して、ICP発光分析(高周波プラズマ発光分析)法により定量分析を行った。
【0121】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0122】
[合成例:Ti錯体−1]
充分に乾燥、アルゴン置換した100mlの反応器に、化合物(a)1.55g(5.68mmol)とジエチルエーテル30mlを仕込み、−78℃に冷却し攪拌した。これにn−ブチルリチウム3.80ml(n−ヘキサン溶液、1.58M、6.00mmol)を5分かけて滴下し、そのままの温度で2時間攪拌した後、ゆっくりと室温まで昇温し、室温でさらに3時間攪拌してリチウム塩を調整した。この溶液を、−78℃に冷却した四塩化チタン2.84ml(トルエン溶液、1.00M、2.84mmol)を含むジエチルエーテル溶液30mlに滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで戻しながら14時間攪拌を続けた。反応液の溶媒留去した後、得られた固体を塩化メチレン50mlに溶解し、不溶物をガラスフィルターで除去した。ろ液を減圧濃縮し、析出した固体をジエチルエーテルとn−ヘキサンで再沈し、減圧乾燥することによりTi錯体−1で示される赤褐色粉末の化合物:を0.47g(収率25%)を得た。
【0123】
FD-質量分析(M+):662
1H-NMR(CDCl3): 1.64(s,18H) 1.17-1.57(m,24H) 4.01(m,2H) 6.96(t,2H) 7.24(dd,2H) 7.57(dd,2H) 8.14(s,2H)
【0124】
【化17】

【実施例1】
【0125】
[固体触媒成分A−1の調製]
担体合成例−1:ラテックスパーテイクルの合成:
Lutensol AT50(商品名、CH3-(CH2)16-18-(CH2-CH2-O)49-CH2-CH2-OH)(0.325mmol、800mg)とセチルトリメチルアンモニウムブロミド(0.11mmol、40mg)を蒸留水200mlに混合し、40℃で30分撹拌して乳濁液を調製した。次に、スチレン(10g、96.15mmol)、4−ビニルピリジン(9.9g,93.8mmol)及び、ジビニルベンゼン(0.96g、7.4mmol)をヘキサデカン(840mg,3.71mmol)を混合し10分間撹拌したものを、先に調製した乳濁液に添加し、1200rpmで30分環撹拌した。これを氷浴下、7分間超音波処理し、次に、15分間アルゴンで脱酸素した後、70℃に加熱した。これに、α,α'−アゾジイソブチルアミジンジヒドロクロリド(400mg,1.47mmol)を20mlの蒸留水に溶解し15分間アルゴンで脱酸素して調製したラジカル開始剤を添加し、15時間乳化重合を行った。得られた分散体をペーパーフィルターでろ過した後、ポリエーテルサルフォン膜200ml撹拌セルを用い、1リットルの蒸留水で透析した。ここで得られた分散体を50mlに濃縮し、減圧下フリーズドライすることで、固体触媒成分A−1を18g得た。
【0126】
[固体触媒成分A−2の調製]
触媒担持例−1:
担体合成例1で得られた固体触媒成分A−1をシュレンク中70℃で真空乾燥した。ここで乾燥したA−1(300mg)に、溶媒を留去して減圧乾燥したメチルアミノキサン(300mg)を混合し、脱水トルエン(5ml)を添加したものを、20分間超音波処理し、その後10分間撹拌した。この混合物を氷浴で0℃に冷却し、これに、合成例−1で合成したTi錯体−1(20mg、20mmol)/脱水トルエン(4ml)溶液を3.7ml加えた。これを室温に戻し、撹拌しながら減圧乾燥した。得られたポリマーを100μmのふるいにかけ、固体触媒成分A−2を得た。100μm以下のものを重合用に用いた。
【0127】
[重合]
U型の撹拌機のついた1リットルのSUS反応器に1時間窒素気流下80℃で加熱乾燥した。これを40℃まで冷却後、トリオクチルアルミニウム(TOA:1.36mmol)をスカベンジャーとして加え、続いてPPG−b−PEG−bPEG(0.5mg)/トルエン(0.5ml)を添加した。反応器を密閉し、400mlの液化イソブタンをアルゴン圧で注入した。エチレンを34barまで注入した後、反応系を撹拌しながら触媒担持例−1で調製した担持Ti触媒−1固体触媒成分 15mg)をアルゴン圧で系内に添加した。エチレン圧を40barまで昇圧し、65℃で6時間重合を行った。エチレン
、及びイソブタン加圧を止め、脱圧して常圧に戻し、反応液を塩酸(3ml)/メタノール(500ml)混合液中に加え、12時間撹拌した。得られたポリマーをろ別し、メタノール(500ml)で洗浄後、75℃で12時間減圧乾燥を行うことで、[η]16.3、分子量分布(Mw/Mn):2.20、分子量(Mv):134万、嵩比重:430g/lのポリエチレンを123g得た。
【実施例2】
【0128】
[固体触媒成分A−3の調製]
触媒担持例−2:
Ti錯体−1(40mg、40mmol)を用いた以外は、担体合成例−1及び触媒担持例−1と同様の方法で固体触媒成分A3を得た。
【0129】
[重合]
固体触媒成分A3(14mg)を用いた以外は、実施例−1と同様の方法で重合実験を行い、[η]16.4、分子量分布(Mw/Mn):2.23、分子量(Mw):128万、嵩比重:480g/lのポリエチレンを135g得た。
【実施例3】
【0130】
[固体触媒成分A−4の調製]
触媒担持例−3:
MAO(190mg)、及び、Ti錯体−1(10mg)を用いた以外は、担体合成例−1及び触媒担持例−1と同様の方法で固体触媒成分A−4を得た。
【0131】
[重合]
固体触媒成分A−4(10mg)を用い、50℃で重合した以外は、重合実施例−1と同様の方法で、[η]19.1、分子量分布(Mw/Mn):2.74、分子量(Mw):172万、嵩比重:450g/lのポリエチレンを180g得た。
[比較例1]
【実施例4】
【0132】
[固体触媒成分A−5の調製]
触媒担持例−4:
Si(CH3)2(2-Methylbenzindenyl)2ZrCl2(15mmol)を用いた以外は触媒担持例−
1と同様の方法で固体触媒成分A−5を得た。
【0133】
[重合]
固体触媒成分A−5(15mg)を用いた以外は、重合実施例−1と同様の方法で重合を行ったがポリエチレンはほとんど得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の方法による得られる超高分子量・狭分子量分布エチレン系重合体は、物性に悪影響を与えるSi原子に由来するシリカゲルを実質上含まず、低分子量成分等も含まないため、繊維などの成型時に高い強度を示す。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明で用いられるクロスリンクしたポリマーネットワークを有する重合体からなる粒子(1次粒子(ナノパーティクル))のイメージ図である。
【図2】本発明のオレフィン重合触媒の調製工程と触媒構造のイメージ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1種のオレフィニックモノマーと、少なくとも1種の複数のオレフィン部を有するモノマーと、少なくとも1種の極性基を有するモノマーとから得られるクロスリンクしたポリマーネットワーク構造を有する重合体からなる粒子が凝集した二次粒子からなる有機高分子担体に、
(B)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物と、
(C)有機アルミニウム化合物と
が担持されてなることを特徴とするオレフィン重合用触媒;
【化1】

(式中、Mは周期律表第3〜11族の遷移金属原子を示し、
mは、1〜6の整数を示し、
1〜R6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、また、mが2以上の場合にはR1
〜R6で示される基のうち2個の基が連結されていてもよく(但し、R1同士が結合されることはない)、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)。
【請求項2】
前記オレフィニックモノマーがスチレンであることを特徴とする請求項1記載のオレフィン重合触媒。
【請求項3】
前記複数のオレフィン部を有するモノマーがジビニルベンゼンであることを特徴とする請求項1または2記載のオレフィン重合触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン重合触媒を用い、エチレン単独、またはエチレンと炭素原子数が3〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンを重合することによって、
(1)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が10dl/g以上であり、
(2)分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下であり、
(3)重合体中のSi原子含有量が5重量ppm以下である
重合体を製造することを特徴とする超高分子量・狭分子量分布ポリエチレンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−306929(P2006−306929A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128112(P2005−128112)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(505157555)マックスプランク インスティテュート フューア ポリマーフォルシュング (1)
【Fターム(参考)】