説明

オートクレーブの熱風循環方法とオートクレーブの熱風循環装置

【課題】成形材に対する熱伝播効率をより一層向上させると共に省力運転を可能とするオートクレーブのガス循環方法および装置を提供する。
【解決手段】圧力容器2内に、マッフル炉3を設置し、前記マッフル炉3内を流通するガスへ熱量を補給し、以って、前記圧力容器2内で材料を加圧、加熱、冷却し、成形材を接着、成形するオートクレーブの熱風循環方法において、前記マッフル炉3内の長手軸に沿うガスの主たる流れに混・乱流を発生させる螺旋流を形成するオートクレーブの熱風循環方法とその装置。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材料を加圧、加熱して、硬化、接着・成形するのに用いられるオートクレーブの熱風循環方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機、レーシングカー、産業機械等の部品として使用されるところの、複合材料(FRP、CFRPなど)を用いた積層構造体又は強化合せガラス、プラズマディスプレーガラス等の成形材料を、加圧、加熱して、硬化、接着、成形するためにオートクレーブにおける熱風循環方法及びその装置が用いられる。
従来、接着又は圧着成形する材料をオートクレーブ内で加圧、加熱する際の、オートクレーブ内における熱風循環方法として、例えば、特開昭58−62018号公報、特開昭60−258996号公報、特開昭61−94742号公報、特開昭62−28228号公報、特開平2−14730号公報記載のもの等、多数が知られている。
【0003】
これらのオートクレーブの熱風循環方法は、次のように実施される。成形材を治具・工具及び台車と共にワークゾーン内に収容したのち、扉で圧力容器を密閉すると共に、バルブを開いて加圧設備から(通常)高圧ガスを圧力容器内に供給して成形材を治具・工具に対し加圧する。一方、モーターを駆動して循環ファンを回転させ、ヒーター・クーラーにより加熱・調整した前記高圧ガスを風胴を介して吸引し、これを放射方向に圧力容器底壁に沿って旋回させながら外通風路方向に送り出し、扉側に向かって流通させる。
【0004】
そして、圧力容器内壁に沿って、マッフル炉外壁との間を略、水平に流れる高温・高圧ガスは、圧力容器の他端(扉)壁面に当って反転し、マッフル炉の一方の開口部からワークゾーン内に流入し、成形材、治具・工具及び台車に沿って略、水平に流れ、再び、クーラー・ヒーター及び風胴を介して循環ファン側に吸引されるような循環流を形成している。
【0005】
上述のような熱風循環方式(仮りに水平循環型と称する)を採用した従来のオートクレーブでは、循環ファン一台でオートクレーブ内の高圧・高温ガスを水平方向に流しているので、ガスが(ワークゾーン内で)上流側から下流側へ流れる途中で、成形材(治具・工具及び台車を含む)に熱を与えた分だけ、下流側の雰囲気温度が低下する。
【0006】
このタイプでは、長尺材料に沿って水平方向に雰囲気ガスが流れるので流速ムラはでき難いが、長手軸方向の中央部付近で台車や材料の影響で、ワークゾーンの上部側が流れ易く偏流が生じる傾向がある。加えて、成形材が異形の場合は、ワークゾーン内の流速分布が乱れ、雰囲気ガスの温度分布・風速にバラツキが生じる。又、機械構造的に見ても、負荷熱量はマッフル炉の炉床部の方が天井部に比べて圧倒的に大きくなるので、床面に向かって温度も下がり易く、ガス流速も低下する。
要するに、稼働時にワークゾーン内空間域で雰囲気ガスの上下流方向で温度差が生じる。ワークゾーン内空間の雰囲気ガスの温度分布に不均一が生じると、加工後の成形品の品質にバラツキが生じる恐れもあり、加工時間に余裕を採らねばならず、稼働能率に影響する。
【0007】
上述の水平循環型とは異なり、オートクレーブ内での高圧・加熱ガスの流通経路として、断面循環型と呼ばれる方式が知られている。これは、一端開口に密封式扉を備えた筒形圧力容器内空間に、これと略、同心に両端開放のマッフル炉を設けて、前記圧力容器内壁とマッフル炉外壁との間に外通風路(風胴)を形成すると共に、マッフル炉内空間をワークゾーンとして、この空間に成形材、治具・工具及び台車などを収納する。
【0008】
そして、前記圧力容器(マッフル炉)内空間を長手軸方向に境界無しで複数セクションに区画し、各セクション毎に、それぞれ圧力容器の上部外壁の長手軸線方向に沿い、圧力容器(若しくは、マッフル炉)の軸心線に直角方向の回転軸を備えた撹拌モーターを配置し、当該回転軸を、圧力容器壁を貫いて外通風路内に延伸させて、先端にそれぞれ撹拌扇を取り付け、これらを外通風路内に配置する。
【0009】
また、各セクション毎に、前記撹拌扇に対向してマッフル炉底壁にそれぞれ、ヒーター・クーラーを重ねて配置する。なお、各撹拌扇のガス吸い込み口は、それぞれ対面するマッフル炉壁に開口しており、各ヒーターを・クーラーの配置位置には、それぞれ外通風路とワークゾーン内空間との連通口を穿設する。
【0010】
そして、圧力容器内の天井側でマッフル炉の外側に配置された撹拌扇は、撹拌モーターの駆動によって回転し、ワークゾーン内のガスを吸込み口から吸い込んで、これを外通風路側の左右方向で圧力容器内壁に沿って遠心、送風(矢印方向)すると、外通風路内のガスは、その流れに押し出され底部連通口を介しマッフル炉内に流入して上昇流を形成し、その際、ヒーター・クーラーにより加熱・調整されて、ワークゾーン内に送り込まれる。
このガスは、ヒーター・クーラーを通過する間に加熱、調整され、さらに成形材(治具・工具及び台車を含む)の間を通り、再び、撹拌扇に戻るような、断面循環流を形成する。
【0011】
上記に説明の断面循環流は、圧力容器の長手軸方向に境界無しで区画した各セクション内で、それぞれ略、独立して生じる。各セクション毎にヒーター・クーラーの制御を行い、ワークゾーン内空間域での雰囲気の温度を調節する。尤も、ワークゾーン内でマッフル炉底のヒーター・クーラー側から撹拌扇に立ち上がる各循環流の間には境界が無いから、相互に干渉がある事は当然である。
また、相互に加熱温度を制御して、ワークゾーン内長手軸方向の雰囲気の温度を可及的に均一になし得る。
【0012】
この撹拌扇の回転によるガスの断面循環流は、圧力容器内壁とマッフル炉外壁との間に形成された外通風路を圧力容器内周壁に沿って両側下方に流下し、オートクレーブの底部付近に配置されたヒーター・クーラーの連通口を通過して、ワークゾーン内に流れ、再び、マッフル炉天井の開口を介して撹拌扇の吸い込み口に戻る。
【0013】
要するに、加熱ガスは、各セクション毎に独立して圧力容器内壁に沿って流れワークゾーン(セクション毎)内を循環して、マッフル炉(ワークゾーン)の長手軸方向の流れ要素は、積極的には与えられることがない。
即ち、当該ガス流は、さきに見た水平循環型のガス熱風流路の形を、マッフル炉内の各セクション断面内に現出したと理解することができる。但し、異なる処は、ワークゾーン内で加熱ガスが、形成材(治具・工具及び台車を含む)の面(長手方向)に対し直角方向に流れる事である。
【0014】
上述のような熱風循環方式(ここでは断面循環型と称する)を採用した従来のオートクレーブでは、加熱ガスは、各セクション毎に殆ど独立して循環し、ワークゾーン内での長手軸方向の雰囲気温度が、例えば、各セクションの接続(隣接)部分で、若干、平均よりも低下する曲線となる。
【0015】
このタイプの循環流では、さきに述べたように長尺材料に対して直角方向に雰囲気ガスが流れるため、成形材の形状又は積載形式によっては、セクション内で殆ど流れが生じない場所ができる。従って、成形材の段積みは不可で、一段積みでも上面と下面とでは温度差が生じる事がある。また、長尺材料の処理には不向きである。
【0019】
要約すると、上述のように、従来構造、ガス循環方式のオートクレーブでは、加工材の長さが長い程、上流側と下流部との雰囲気温度の差が大きくなる傾向にある。又、機械構造的に見ても、負荷熱量は炉床部の方が天井部に比べて圧倒的に大きくなるので、床面に向かって温度も下がり易く、ガスの流速も低下傾する。ワークゾーン内のガス流れが成形材に直角方向の場合は、成形材の上下面で温度差が生じ易く、流れが生じない場所ができる事がある。流速分布が乱れ、雰囲気ガスの温度分布・風速にバラツキが生じる。
【0016】
そして、ワークゾーン内における雰囲気ガスの温度分布が不均一だと、成形品の品質にバラツキが生じる恐れがあって成形材の装填方法にも留意する必要があり、又、加工時間に余裕を採らねばならず、オートクレーブの稼働能率に影響する。
特に、最近の航空機の開発目標としての、高速化・機体の軽量化に伴って、繊維強化プラスチックの多用化が進展しており、長尺用複合材の一体加工設備の整備要望が急速に高まり、長尺用オートクレーブの設置が早急に求められる情勢になっている。
【0017】
そこで、本願出願人は、上述した各不都合な現状を解決するオートクレーブのガス循環方法・装置を提案した。
【特許文献1】特許第4109660号公報
【0018】
このオートクレーブのガス循環方法(装置)は、図6及び図7に示すように、圧力容器2内に同容器と略、同心に設置した両端開放のマッフル炉3の外壁と前記圧力容器2内壁との間に外通風路4を設け、前記マッフル炉3の一方端に隣接してクーラー16・メインヒーター15を設けると共に、クーラー16・メインヒーター15に対して直列に圧力容器2の一端に配置した循環ファン8を駆動し、マッフル炉3内のガスをクーラー16・メインヒーター15を通して吸引し外通風路4を流通させ、圧力容器2の他方端で反転して、再び、マッフル炉3内に戻すような循環経路を形成し、圧力容器2内で材料を加圧・加熱、冷却し、成形材を接着成形するオートクレーブにおいて、前記マッフル炉内を長手軸方向に境界を設けずに複数のセクションに区画し、それぞれのセクション毎に、圧力容器2外壁の長手軸方向に間隔を置いて撹拌用モーター13を設置し、前記モーター13のシャフトを圧力容器2の長手軸心に対して直角方向に配置し、その端部を前記外通風路4及びマッフル炉3壁を貫通して前記炉内に伸出せしめ、前記シャフトの先端に撹拌扇14を取り付け、対応してマッフル炉3内側壁に補助ヒーター17を設置し、各補助ヒーター17によってマッフル炉3内を流通するガスへ成形材・治具・工具等に消費した熱量を補給する一方、撹拌扇14で前記ガス流を撹拌・混合して、マッフル炉3内のガスの主たる流れに混・乱流を発生させるものであった。
【0019】
そして、マッフル炉3内を長手軸方向に境界を設けずに複数のセクションに区画し、それぞれのセクション毎に温度調節センサーJ、J1、J2、J3、J4を配置して、前記温度調節センサーJ、J1、J2、J3、J4からの信号に基づき、各セクション内の雰囲気温度を設定値に保持するよう、補助ヒーター17の出力を制御するものであった。
【0020】
このように構成したことにより、即ち、ワークゾーン10内を、長手軸方向に境界を設けず各セクションに区画し、それぞれのセクション毎に補助ヒーター17を配置して、ゾーン内を上流側から下流側へガスが流れる途中で成形材等に吸収された熱量を補充し、水平方向での加熱ガス流の温度を略、一定に維持するようにしたことで、上流側と下流側との間に生じる雰囲気ガスの温度差を大幅に減少させ(例えば、2°C以内)、オートクレーブでの成形品の均一性成形・仕上がりの良さと、接着・成形工程の時間の短縮とを期待する事ができた。
【0021】
又、各セクション毎に補助ヒーター17を配置しただけでは、ヒーター17の熱量配分に不均一が生じる恐れがあるので、ワークゾーン内の上部付近に撹拌扇14を設け熱風を拡散、循環させ、雰囲気の温度分布の均等を図った。但し、前記撹拌扇14は各セクション内でガスの撹拌を行うだけであるので、ワークゾーン内を長手軸方向に上流側から下流側に流れるガス流量は、圧力容器2底に配置した熱風循環ファン8の風量ということである。
【0022】
そして、ワークゾーン10内の加熱ガスの主流に対し、直交する方向に撹拌扇14で加熱ガスを補助的に拡散・混合させる事により、従来技術において直角断面内に生じるガスの偏流を減少させる結果、成形材に接触するガスの流速ムラが減少し、全体的に温度差を減少させる。従って、ガスの平均流速は水平方向の何処の断面においても略、一定で、断面内の流速ムラを解消し、水平方向でのガスの温度分布を、略、一定に保つことができることになった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上述のように本願出願人が提案したオートクレーブのガス循環方法(装置)によれば、それまでのガス循環方法(装置)の持つ問題点を解消するものであったが、次の問題があることが新たに判明した。
即ち、各セクション毎に補助ヒーター17を配置し、ワークゾーン内の上部付近に撹拌扇14を設け、熱風を拡散、循環させ、雰囲気の温度分布の均等を図っているが、その攪拌扇14による攪拌流は、図6及び図7に示すように、各セクション毎で、マッフル炉3の中心軸線方向に対して直交する横断面において、個々に形成されることとなるため、
1.ガスを攪拌扇14の下方(マッフル炉3の中心)から吸引し、単に円周方向に攪拌流を排出したのでは、現実的には、図7に示すように攪拌流が移動し、マッフル炉3の底部まで十分に到達し難く、成形材11(被加工材)の全体に渡って均等に熱伝播を果すことが難しい、
2.隣接の攪拌扇14は、乱流としての攪拌流を受けて攪拌しなければならないために、大きな駆動力を必要とすると共に乱流となることで、成形材11(被加工材)の全体に対して常に確実な接触状態を形成することが難しい、
3.隣接するセクションの攪拌流が相互に干渉し合こととなるので、循環ファン8の方に向けて流れる主流に対してスムースな流れの受け継ぎが阻害され、成形材11(被加工材)に対する効率のよい熱伝播が得難いのみならず、循環ファン8の駆動抵抗が増大する、
といった問題が生じるのである。
【0024】
本発明は、自ら提案を成したオートクレーブのガス循環方法・装置における更なる問題点を解消し、成形材に対する熱伝播効率をより一層向上させると共に省力運転を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明にかかる方法は、上記目的を達成するために、圧力容器内に、その半径方向に所定の間隔を隔てて、同容器と略同心状に両端開放のマッフル炉を設置して、前記圧力容器内壁との間に外通風路を形成し、前記マッフル炉の一方端に隣接して主加熱冷却器を設けると共に、前記圧力容器の一端に配置した循環ファンを駆動し、前記マッフル炉内のガスを、前記主加熱冷却器を通して吸引し前記外通風路に流通させ、前記圧力容器の他方端で反転して、再び、前記マッフル炉内に戻すことで主たるガスの流れの循環経路を形成し、前記マッフル炉内を長手軸方向に境界を設けずに複数のセクションに区画し、それぞれのセクション毎に、前記圧力容器の外壁の長手軸方向に間隔を置いて少なくとも二つの第1及び第2の撹拌器を設けて、当該セクション毎に攪拌流を形成させ、前記マッフル炉内の対向する側壁に補助ヒーターを設置し、各補助ヒーターによって前記マッフル炉内を流通するガスへ熱量を補給し、以って、前記圧力容器内で材料を加圧、加熱、冷却し、成形材を接着、成形するオートクレーブの熱風循環方法において、
前記外通風路から前記マッフル炉内に至るガスを前記第1の撹拌器によって一方から吸引し、他方から前記マッフル炉の長手軸を中心として、前記循環ファンの方に向かう螺旋流を形成するように前記長手軸に対して角度を持たせて排出し、その螺旋流を前記第2の撹拌器によって一方から吸引し、他方から前記マッフル炉の長手軸を中心とした螺旋流を形成するように排出し、以って、前記マッフル炉内の長手軸に沿うガスの主たる流れに混・乱流を発生させる螺旋流を形成することを特徴とする。
【0026】
本発明にかかる装置は、上記目的を達成するために、圧力容器内に、その半径方向に所定の間隔を隔てて、同容器と略同心状に両端開放のマッフル炉を設置して、前記圧力容器内壁との間に外通風路を形成し、前記マッフル炉の一方端に隣接して主加熱冷却器を設けると共に、前記圧力容器の一端に配置した循環ファンを駆動し、前記マッフル炉内のガスを、前記主加熱冷却器を通して吸引し前記外通風路に流通させ、前記圧力容器の他方端で反転して、再び、前記マッフル炉内に戻すことで主たるガスの流れの循環経路を形成し、前記マッフル炉内を長手軸方向に境界を設けずに複数のセクションに区画し、それぞれのセクション毎に、前記圧力容器の外壁の長手軸方向に間隔を置いて少なくとも二つの第1及び第2の撹拌器を設けて、当該セクション毎に攪拌流を形成させ、前記マッフル炉内の対向する側壁に補助ヒーターを設置し、各補助ヒーターによって前記マッフル炉内を流通するガスへ熱量を補給し、以って、前記圧力容器内で材料を加圧、加熱、冷却し、成形材を接着、成形するオートクレーブの熱風循環装置において、
前記第1及び第2の撹拌器に、前記マッフル炉の長手軸を中心として、前記循環ファンの方に向かう螺旋流を形成するように、前記外通風路から前記マッフル炉内に至るガスを一方から吸引する吸引ダクトと、他方から前記長手軸に対して角度を持たせて排出する排気ダクトとを夫々設け、以って、前記マッフル炉内の長手軸に沿うガスの主たる流れに混・乱流を発生させる螺旋流を形成するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかるオートクレーブの熱風循環方法及びオートクレーブの熱風循環装置によれば、攪拌器によるマッフル炉内におけるガスの撹拌を、循環ファンの方に向かうマッフル炉内に沿う螺旋流とし、循環ファンの方に向けてマッフル炉内の中心を流れるガスの主流との干渉を極力避ける状態で共存させ、以って、螺旋流を生かした成形材全体への均等な熱伝播を行いながら、攪拌器及び循環ファンの駆動力を低減させることができる利点を有する。
本発明のその他の利点は以下の記載から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施に際しては、次の構成を用いることが好ましい。
先ず、前記第1及び第2の撹拌器の排気ダクトの前記長手軸に対する角度が、10度から45度の範囲であることが好ましい。
このような角度でのガスの排気が形成する螺旋のピッチが、熱伝播効率を考える上で好適であり、同時に螺旋がスムースに形成されるものである。
【0029】
また、前記第1及の撹拌器から所定の角度で排出される螺旋流の一螺旋ピッチよりも前記第1の撹拌器と第2の攪拌器との間隔が大きく設定されているのが好ましい。
通常、第1の撹拌器と第2の攪拌器とは、攪拌器による所定の一螺旋ピッチ(P)の間隔で配置されるが、マッフル炉の中心及び全体としては、循環ファンによる主流の吸引力が作用しているので、現実には、排気ダクトの角度による所定の一螺旋ピッチよりも延びた螺旋流が形成されることになる。従って、予め、こうした一螺旋ピッチより大きな間隔位置に第2の攪拌器を設置しておくことが、スムースな螺旋流の引継ぎを行うことができることになるのである。
【実施例】
【0030】
図1は、本発明の方法を実施する装置の一実施例の縦断面図、図2は、図1のA−A矢視断面図、図3は、平面図である。
図中、全体構造、使用されている部品名、形状、添付符号はそれぞれ、前述の本発明出願人の特許である引用文献1におけるオートクレーブの解説に挙げたものと、一部部材の名称が異なる他は、基本的に同一である。
【0031】
この装置の基本構成は、次の通りである。一方開放端に密閉可能な扉(蓋)1を備えた筒形圧力容器2内に、その半径方向に所定の間隔を隔てて、同容器2と略同心状に両端開放のマッフル炉3を設置して、前記圧力容器2内壁との間に外通風路4を形成し、前記マッフル炉3の一方端(図示では右端)に隣接して主加熱冷却器5(クーラー5a,ヒーター5b)を設けると共に、前記圧力容器2の一端(図示では右端)に配置した循環ファン8を、モーター7によって駆動し、前記マッフル炉3内のガスを、前記主加熱冷却器5(クーラー5a,ヒーター5b)を通して吸引し前記外通風路4に流通させ、前記圧力容器2の他方端(図示では左端)で反転して、再び、前記マッフル炉3内に戻すことで主たるガスの流れの循環経路を形成し、前記マッフル炉3内を長手軸方向に境界を設けずに複数のセクションに区画し、それぞれのセクション毎に、前記圧力容器2の外壁の長手軸方向に間隔を置いて第1乃至第4の攪拌器14A,14B,14C,14Dを設けて、当該セクション毎に攪拌流を形成させ、前記マッフル炉3内の対向する側壁に、前記圧力容器2の外壁の長手軸方向に間隔を置いて補助ヒーター17a、17b、17c、17dを夫々設置し、補助ヒーター17a、17b、17c、17dによって前記マッフル炉3内を流通するガスへ熱量を補給し、以って、前記圧力容器2内で材料を加圧、加熱、冷却し、成形材を接着、成形するように構成されている。
【0032】
特に、本実施例においては、第1乃至第4の攪拌器14A,14B,14C,14Dが次のように構成されている。即ち、前記ワークゾーン10を長手軸方向に境界を設けず複数のセクションに区画すると共に、それぞれのセクション毎に、筒形圧力容器2の上部外壁の軸線方向に沿い前記容器2の軸心に直角方向の回転軸を備えた撹拌モーター13a、13b、13c、13dを配置し、当該回転軸を圧力容器2壁、外通風路(ガス循環路)4及びマッフル炉3壁を貫いてワークゾーン10内に延伸させ、先端にそれぞれ撹拌扇14a、14b、14c、14dを取り付けると共に前記攪拌扇14a、14b、14c、14dは、ワークゾーン10内、マッフル炉3内壁天井付近に配置され、それぞれ区画された各セクション内に流通するガスを格別に撹拌、混合するが、更に次の構成を備えている。
【0033】
即ち、前記第1乃至第4の撹拌器14A,14B,14C,14Dに、前記マッフル炉3の長手軸を中心として、前記循環ファン8の方に向かう螺旋流を形成するように、前記外通風路4から前記マッフル炉3内に至るガスを一方から吸引する吸引ダクト18と、他方から前記長手軸に対して角度を持たせて排出する排気ダクト19とを夫々設け、以って、前記マッフル炉3内の長手軸に沿うガスの主たる流れに混・乱流を発生させながら螺旋流を形成するように構成したものである。前記吸引ダクト18と排気ダクト19は、前記攪拌扇14a、14b、14c、14dのケーシングと板金により一体形成されているが、別体構成のものとしてよもよく、成形素材も樹脂製等、異なるものであってもよい。
【0034】
なお、圧力容器2の内壁とマッフル炉3外壁との間に形成された外通風路4は、オートクレーブの加熱ガスの水平往路に使用されているため、撹拌扇14a、14b、14c、14dがその領域で作動する余地は全く無い。
更に、各セクション毎に、撹拌扇14a、14b、14c、14dに対応してマッフル炉3内壁の対向面にそれぞれ、補助ヒーター17a、17b、17c、17dが配置されているものである。また、前記補助ヒーター17a、17b、17c、17dは、容量に較べて薄くかつ表面積を拡げて設け、これらの表面に沿ってガスが流通する事を妨げず、又その間に満遍なく、かつ均等に加熱するように配慮されている。
【0035】
上記吸引ダクト18と排気ダクト19とによって形成される、この撹拌扇14a、14b、14c、14dの回転によるガスの流れは、各セクション内において、図1乃至図3に太線矢印で示す通りであり、これにより、成形材の長手方向中央部で、台車や材料の影響を受けて偏るガスの流れを上部から下底部に、かつ、下底部から上部に流して、螺旋流を形成する。
尚、上記各セクションに所属する前記第1乃至第4の撹拌器14A,14B,14C,14Dの配置は、必ずしも圧力容器2の上部外壁のみを選択する事を要さず、例えば、容器2底面外側壁又は容器の上部外壁と底面外側壁とに交互に分配、配置しても良い。
【0036】
更に、本実施例では、前記第1乃至第4の撹拌器14A,14B,14C,14Dの排気ダクト19の前記長手軸に対する角度(平面視における長手軸に交わる垂線となす角度)が、20度に設定されている。この排気の角度は、10度から45度の範囲であれば、効果的な螺旋流を形成するのに好適である。
【0037】
また、この実施例では、上述の螺旋流が形成され易いように、前記外通風路4から前記マッフル炉3内に至るガスに方向付けをするべく、複数枚からなる整流翼体4Aが、圧力容器2の内壁とマッフル炉3外壁との間に形成された外通風路4の端部に設けられている。この整流翼体4Aは、上述の吸引ダクト18と排気ダクト19と同様に、20度に傾斜されている。これにより、外通風路4の端部から出たガスが、角度をもって圧力容器2の内壁端部に当り、旋回してマッフル炉3に至り、その螺旋流が前記第1の撹拌器14Aにスムースに吸引されることになる。
【0038】
更に、前記各撹拌器14A,14B,14C,14Dから所定の角度(20度)で排出される螺旋流の一螺旋ピッチよりも前記各撹拌器14A,14B,14C,14Dの間隔が大きく設定されている。これは、前記循環ファン8によって、マッフル炉3の中を流れる主流によって、その螺旋流が伸びることを想定したものであり、これにより、前記各撹拌器14A,14B,14C,14Dによるスムースな吸引と排出とが成される。
【0039】
再度、図1に戻って、ワークゾーン10の各セクションには、マッフル炉天井壁を貫いて、それぞれ、温度調節センサーJ、J1、J2、J3、J4が設けてあって、それぞれの信号を主温度調節計TC、補助温度調節計TC1、TC2、TC3,TC4に入力するようにされており、ワークゾーン10内の加熱ガス温度を調節、制御することができる制御システムに繋がっている。
【0040】
図4は、上記制御システムのフローチャートの一実施例を示すもので、主調節センサーJは主温度調節計TCに連結しており、調節計TCは、温度プログラム調節計TPCのコントロールを受けてオートクレーブ全体の雰囲気ガス温度を調節するため、それぞれ、主加熱冷却器5(クーラー5a,ヒーター5b)及び循環ファン8を制御する。各セクションに属する補助センサーJ1、J21、J3、J4は、主温度調節計TCのコントロールの許にある補助温度調節計TC1、TC2、TC3,TC4に信号を入力して、各SCR1(電力調整器)、SCR2、SCR3,SCR4を介して補助ヒーター17a、17b、17c、17dに印加される電力をコントロールするよう配置されている。
【0041】
各セクションの雰囲気温度がプログラム設定値から逸脱したときには、補助ヒーター17a、17b、17c、17dに印加される電力を加減して、循環ガスに与える熱量を調節し、各セクションの雰囲気温度が設定値に戻る方向に制御される。本実施例の場合、撹拌器14A,14B,14C,14Dは、所定回転数で駆動されている。
【0042】
図5は、ワークゾーン10内の長手軸方向の雰囲気温度をグラフにして示したもので、図中、横軸は、ワークゾーンの上流側から下流側長さL、縦軸は、雰囲気温度t°Cとした。ここで、ワークゾーンの上流側から下流側にかけて、温度が一様に昇温維持されていることが分かる。
この水平循環型ガス流の雰囲気温度は、ワークゾーン10内を成形材11に沿って流れ下る間に、成形材11、治具・工具、台車等に熱を奪われて、漸次、温度が低下する傾向にあるが、上流側から下流側に連なる補助ヒーター17a、17b、17c、17dの制御と撹拌器14A,14B,14C,14Dの回転とによって、その都度、熱量を補充され、ワークゾーン10内の各部分の雰囲気ガスの温度を所望の範囲内に制御する事ができる。従って、長尺材料、異形成形品の成形加工にも最適で、かつ、複数段積みの装填も可能である。ワークゾーン10内の各部分の雰囲気ガスの温度を所望の範囲内で制御する事ができたから、異形材、成形品に部分的な加工ムラが生じるおそれが無いし、操業(稼働)時間の短縮、作業効率も向上する。
【0043】
上記装置により、本発明の方法は、次のように実施できる。即ち、一方開放端に密閉可能な扉(蓋)1を備えた筒形の圧力容器2内に、その半径方向に所定の間隔を隔てて、同容器2と略同心状に両端開放のマッフル炉3を設置して、前記圧力容器2内壁との間に外通風路4を形成し、前記マッフル炉3の一方端に隣接して主加熱冷却器5を設けると共に、前記圧力容器2の一端に配置した循環ファン8を駆動し、前記マッフル炉3内のガスを、前記主加熱冷却器5を通して吸引し前記外通風路4に流通させ、前記圧力容器2の他方端で反転して、再び、前記マッフル炉3内に戻すことで主たるガスの流れの循環経路を形成する。
【0044】
そして、前記マッフル炉3内を長手軸方向に境界を設けずに複数のセクションに区画し、それぞれのセクション毎に、前記圧力容器2の外壁の長手軸方向に間隔を置いて第1乃至第4の撹拌器14A,14B,14C,14Dを設けて、当該セクション毎に攪拌流を形成させ、前記マッフル炉2内の対向する側壁に補助ヒーター17a、17b、17c、17dを設置し、各補助ヒーター17a、17b、17c、17dによって前記マッフル炉3内を流通するガスへ熱量を補給し、以って、前記圧力容器2内で材料を加圧、加熱、冷却し、成形材を接着、成形する。
【0045】
この際、前記外通風路4から前記マッフル炉3内に至るガスを前記第1の撹拌器14Aによって一方から吸引し、他方から前記マッフル炉3の長手軸を中心として、前記循環ファン8の方に向かう螺旋流を形成するように前記長手軸に対して角度を持たせて排出し、その螺旋流を前記第2の撹拌器14Bによって一方から吸引し、他方から前記マッフル炉3の長手軸を中心とした螺旋流を形成するように排出し、以って、前記マッフル炉3内の長手軸に沿うガスの主たる流れに混・乱流を発生させる螺旋流を形成するのであり、これを、第3及び第4撹拌器14C,14Dで繰り返し行うのである。その螺旋流は、前記循環ファン8へと吸引される。
【0046】
ここで、上記第1乃至第4の撹拌器14A,14B,14C,14Dの排気ダクト19の前記長手軸に対する角度(平面視における長手軸に交わる垂線となす角度)が、20度に設定されている。しかし、この角度は、10度から45度の範囲であれば、効果的な螺旋流形成の目的が達成される。
【0047】
また、前記各撹拌器14A,14B,14C,14Dから所定の角度で排出される螺旋流の一螺旋ピッチよりも前記各攪拌器14A,14B,14C,14Dの間隔が大きく設定され、前記循環ファン8への吸引により、形成された螺旋流が延びることを見越したものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ワークゾーン容量が巨大なオートクレーブに対しても、ワークゾーン内空間域における成形材に対する熱伝播効率を高め、且つ、省エネ化を図り、加工ムラのない安定した成形品を、経済的に製造することで、航空機その他、大型で品質の安定した積層材の成形を必要とする産業の発展に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明にかかるガス循環装置の一実施例を示す横断面略図。
【図2】本発明にかかるガス循環装置の一実施例を示す図1のA−A矢視断面図。
【図3】本発明にかかるガス循環装置の一実施例を示す平面図。
【図4】本発明にかかるガス循環装置の制御装置のフローチャート。
【図5】本発明にかかるガス循環装置の制御温度を示すグラフ。
【図6】従来技術を示すガス循環装置の横断面略図。
【図7】従来技術を示すガス循環装置の図6の要部断面図。
【符号の説明】
【0050】
2:圧力容器
3:マッフル炉
4:外通風路
5:主加熱冷却器
8:循環ファン
10:ワークゾーン
13a:撹拌モーター
14A:第1の攪拌器
14B:第2の攪拌器
17a:補助ヒーター
18:吸引ダクト
19:排気ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器内に、その半径方向に所定の間隔を隔てて、同容器と略同心状に両端開放のマッフル炉を設置して、前記圧力容器内壁との間に外通風路を形成し、前記マッフル炉の一方端に隣接して主加熱冷却器を設けると共に、前記圧力容器の一端に配置した循環ファンを駆動し、前記マッフル炉内のガスを、前記主加熱冷却器を通して吸引し前記外通風路に流通させ、前記圧力容器の他方端で反転して、再び、前記マッフル炉内に戻すことで主たるガスの流れの循環経路を形成し、前記マッフル炉内を長手軸方向に境界を設けずに複数のセクションに区画し、それぞれのセクション毎に、前記圧力容器の外壁の長手軸方向に間隔を置いて少なくとも二つの第1及び第2の撹拌器を設けて、当該セクション毎に攪拌流を形成させ、前記マッフル炉内の対向する側壁に補助ヒーターを設置し、各補助ヒーターによって前記マッフル炉内を流通するガスへ熱量を補給し、以って、前記圧力容器内で材料を加圧、加熱、冷却し、成形材を接着、成形するオートクレーブの熱風循環方法において、
前記外通風路から前記マッフル炉内に至るガスを前記第1の撹拌器によって一方から吸引し、他方から前記マッフル炉の長手軸を中心として、前記循環ファンの方に向かう螺旋流を形成するように前記長手軸に対して角度を持たせて排出し、その螺旋流を前記第2の撹拌器によって一方から吸引し、他方から前記マッフル炉の長手軸を中心とした螺旋流を形成するように排出し、以って、前記マッフル炉内の長手軸に沿うガスの主たる流れに混・乱流を発生させる螺旋流を形成することを特徴とするオートクレーブの熱風循環方法。
【請求項2】
圧力容器内に、その半径方向に所定の間隔を隔てて、同容器と略同心状に両端開放のマッフル炉を設置して、前記圧力容器内壁との間に外通風路を形成し、前記マッフル炉の一方端に隣接して主加熱冷却器を設けると共に、前記圧力容器の一端に配置した循環ファンを駆動し、前記マッフル炉内のガスを、前記主加熱冷却器を通して吸引し前記外通風路に流通させ、前記圧力容器の他方端で反転して、再び、前記マッフル炉内に戻すことで主たるガスの流れの循環経路を形成し、前記マッフル炉内を長手軸方向に境界を設けずに複数のセクションに区画し、それぞれのセクション毎に、前記圧力容器の外壁の長手軸方向に間隔を置いて少なくとも二つの第1及び第2の撹拌器を設けて、当該セクション毎に攪拌流を形成させ、前記マッフル炉内の対向する側壁に補助ヒーターを設置し、各補助ヒーターによって前記マッフル炉内を流通するガスへ熱量を補給し、以って、前記圧力容器内で材料を加圧、加熱、冷却し、成形材を接着、成形するオートクレーブの熱風循環装置において、
前記第1及び第2の撹拌器に、前記マッフル炉の長手軸を中心として、前記循環ファンの方に向かう螺旋流を形成するように、前記外通風路から前記マッフル炉内に至るガスを一方から吸引する吸引ダクトと、他方から前記長手軸に対して角度を持たせて排出する排気ダクトとを夫々設け、以って、前記マッフル炉内の長手軸に沿うガスの主たる流れに混・乱流を発生させる螺旋流を形成するように構成したことを特徴とするオートクレーブの熱風循環装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の撹拌器の排気ダクトの前記長手軸に対する角度が、10度から45度の範囲であることを特徴とする請求項2のオートクレーブの熱風循環装置。
【請求項4】
前記第1及の撹拌器から所定の角度で排出される螺旋流の一螺旋ピッチよりも前記第1の撹拌器と第2の攪拌器との間隔が大きく設定されていることを特徴とする請求項2又は請求項3のオートクレーブの熱風循環装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−12945(P2011−12945A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174773(P2009−174773)
【出願日】平成21年7月4日(2009.7.4)
【出願人】(000139632)株式会社芦田製作所 (2)
【Fターム(参考)】