説明

オートテンショナの振動測定装置及び振動測定方法

【課題】オートテンショナの振動を測定する装置の省スペース化を図り、自動車のエンジンルームでも制約なく取り付け得るようにする。
【解決手段】オートテンショナ1における固定部材3と揺動部材10のアーム14との間に、揺動部材10のアーム14の揺動に伴って湾曲変形可能な板ばね材34を掛け渡し、この板ばね材34の歪みを歪みゲージ40で検出して、その検出値に基づいて揺動部材10のアーム14の振動を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートテンショナにおいてテンションプーリを軸支した可動部の振動を測定する振動測定装置及び振動測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車エンジンのベルト式補機駆動システム等において、ベルトに張力を付与する一方、その張力付与動作をダンピングすることでベルトの振動(ばたつき)を抑えて安定したトルク伝達を行わせるようにしたオートテンショナは知られている。
【0003】
具体的には、上記オートテンショナは、例えばエンジンに取付固定される固定部材と、この固定部材のスピンドル部(軸部)にボス部において回動可能に外嵌合されて支持され、アーム等の先端部にテンションプーリが回転自在に支持された可動部と、この可動部のボス部周りに配置され、一端部が固定部材に、また他端部が可動部にそれぞれ係止され、捩りトルクにより固定部材に対し可動部をテンションプーリがベルトを押圧する方向に回動付勢する捩りコイルばねと、可動部の揺動を減衰する減衰手段とを備えている。
【0004】
ところで、このようなオートテンショナを含むベルト駆動系の性能を評価するために、ベルトの張力変動に加えて、オートテンショナの性能を評価する必要がある。オートテンショナの性能を評価するためには、テンションプーリを含む可動部の振動を正確に測定することが必要となる。
【0005】
このようなオートテンショナの振動を測定する場合、従来、オートテンショナの可動部の回動角度をポテンシオメータの出力抵抗値で測定するもの(従来技術1)や、特許文献1に示されるように、オートテンショナに対しレーザ変位計を配置し、そのレーザをオートテンショナの可動部に当てたときの反射光から可動部の距離の変動を測定して可動部の振動を測定するもの(従来技術2)が知られている。
【特許文献1】特開2003―42838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来技術1のものでは、ポテンシオメータの本体をオートテンショナの固定部に取付固定するためのスペースや、可動部をポテンシオメータの入力部(回転部)に揺動一体に連結するための治具のスペース等が、例えば可動部の揺動中心に沿った方向に必要となる。
【0007】
一方、後者の従来技術2のものでは、オートテンショナから離れた位置に取り付けられるレーザ照射部の取付スペースが必要となる。
【0008】
すなわち、いずれのものでも、大きな取付スペースが必要であり、例えば自動車に搭載されたエンジンの補機駆動システムに装着した状態のオートテンショナについては、上記取付スペースをエンジンルーム内の狭いスペースに確保することが困難であり、その取付けに大きな制約が生じるという問題がある。
【0009】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、オートテンショナの可動部の振動を測定するシステムの構造を特定することで、その測定システムの省スペース化を図り、自動車のエンジンルーム等でも制約なく取り付け得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、オートテンショナの可動部と固定部との間に変形可能な可撓部材を配置し、この可撓部材の変形に伴う歪みを検出することにより、可動部の振動を測定するようにした。
【0011】
具体的には、請求項1の発明では、固定部材に揺動可能に支持され、揺動中心とオフセットした部分にプーリが回転自在に軸支された可動部と、上記プーリがベルトを押圧する方向に上記可動部を付勢する付勢手段と、可動部の揺動を減衰する減衰手段とを備え、ベルトの張力を自動的に調整するオートテンショナに対し、上記可動部の振動を測定するオートテンショナの振動測定装置が対象である。
【0012】
そして、上記固定部材と可動部との間に掛け渡され、可動部の移動に応じて湾曲変形可能な可撓部材と、この可撓部材の歪みを検出する歪み検出手段と、この歪み検出手段の検出値に基づいて可動部の振動を測定する測定部とを備えていることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によると、オートテンショナの固定部材に支持されている可動部が付勢手段により付勢されることにより、プーリがベルトを押圧して、そのベルトに張力が付与される。また、負荷の変動によりベルト張力が変化してプーリが可動部と共に固定部材に対し移動すると、その移動が減衰手段により減衰される。このことで、ベルトの振動やばたつきがを抑えられて安定したトルク伝達が行われる。
【0014】
そして、上記のように可動部が固定部に対し移動すると、固定部材と可動部との間に掛け渡されている可撓部材が可動部の移動に応じて湾曲変形し、その可撓部材に歪みが生じる。この歪みが歪み検出手により検出され、測定部ではこの歪み検出手段の検出値に基づいて可動部の振動が測定される。
【0015】
こうして固定部材と可動部との間に可撓部材を掛け渡し、その変形歪みを検出して可動部の振動を測定するので、オートテンショナに対し可撓部材及び歪み検出手段を設けるだけでよく、それらの取付スペースが極めて小さくて済み、オートテンショナの振動測定装置を自動車のエンジンルーム等であっても制約なく取り付けることができる。しかも、また、レーザ変位計を用いた振動測定装置に比べて安価に製作することができる。
【0016】
請求項2の発明では、上記可撓部材は板ばね材とする。この板ばね材は、変形をしても復元性を持つものであり、望ましい可撓部材が容易に得られる。尚、この板ばね材は、上記付勢手段の付勢力に影響を与えない程度のばね力を持つものとするのがよい。
【0017】
請求項3の発明では、上記可撓部材は固定部材と可動部との間に、固定部材又は可動部の一方に固定されかつ他方に保持された状態で掛け渡されている構成とする。このことで、可撓部材は固定部材と可動部との双方に固定した場合のように拘束されず、可撓部材をスムーズに変形させて可動部の振動を精度良く測定することができる。
【0018】
請求項4の発明では、上記測定部は、予め歪み検出手段の検出値と可動部の振動との関係を表す特性を設定していて、その特性に基づき歪み検出手段の検出値から可動部の振動値を演算するように構成されているものとする。このことで、可動部の振動測定がスムーズに行われる。
【0019】
請求項5の発明では、可動部は、基端部が固定部材に揺動可能に支持される一方、先端部にプーリが軸支されたアームを有するものとする。このことで、アームタイプのオートテンショナの振動測定装置の省スペース化及び低価格化を図ることができる。
【0020】
請求項6の発明は、固定部材に揺動可能に支持され、揺動中心とオフセットした部分にプーリが回転自在に軸支された可動部と、上記プーリがベルトを押圧する方向に上記可動部を付勢する付勢手段と、可動部の揺動を減衰する減衰手段とを備え、ベルトの張力を自動的に調整するオートテンショナに対し、上記可動部の振動を測定する方法であって、この発明では、上記固定部材と可動部との間に掛け渡され、可動部の移動に応じて湾曲変形可能な可撓部材の歪みを検出して、その検出値に基づいて可動部の振動を測定することを特徴とする。この発明でも、請求項1の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明の如く、請求項1及び6の発明によると、オートテンショナにおける固定部材と可動部との間に湾曲変形可能な可撓部材を配置し、この可撓部材の歪みに基づいて可動部の振動を測定するようにしたことにより、オートテンショナの測定装置の取付スペースの省スペース化を図って、自動車のエンジンルーム等に対する取付けの容易化、及び振動測定装置の低価格化を図ることができる。
【0022】
請求項2の発明によると、可撓部材を板ばね材としたことにより、望ましい可撓部材が容易に得られる。
【0023】
請求項3の発明によれば、可撓部材を固定部材又は可動部の一方に固定しかつ他方に保持したことにより、可撓部材をスムーズに変形させて可動部の振動を精度良く測定することができる。
【0024】
請求項4の発明によると、可撓部材の検出値に基づいて可動部の振動を測定する測定部は、予め歪み検出手段の検出値と可動部の振動との関係を表す特性を設定していて、その特性に基づき歪み検出手段の検出値から可動部の振動値を演算するものとしたことで、可動部の振動測定をスムーズに行うことができる。
【0025】
請求項5の発明によると、可動部は、基端部が固定部材に揺動可能に支持される一方、先端部にプーリが軸支されたアームを有するものとしたことにより、アームタイプのオートテンショナの振動測定装置の省スペース化及び低価格化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0027】
図1及び図2において、1は本発明の実施形態に係るオートテンショナで、このオートテンショナ1は、ベルト伝動システムとしての例えば自動車用エンジンの補機駆動システムに用いられている。
【0028】
すなわち、上記補機駆動システムは、図示しないが、例えば自動車に搭載されているエンジンEのクランク軸に取り付けられたVリブドプーリからなるクランクプーリ、空調機用コンプレッサ(補機)の回転軸に取り付けられた同様のコンプレッサプーリ、パワーステアリング用ポンプ(補機)の回転軸に取り付けられた同様のPSポンププーリ、オルタネータ(補機)の回転軸に取り付けられた同様のオルタネータプーリ、同様のアイドラプーリ、及び、冷却ファンを回転駆動するための平プーリからなるファンプーリを備え、これらプーリ間にVリブドベルトからなる伝動ベルトB(図1で仮想線にて示す)が、上記Vリブドプーリからなる各プーリにあってはベルト内面をプーリに接触させた正曲げ状態で、また平プーリからなるファンーリにあってはベルト外面をプーリに接触させた逆曲げ状態でそれぞれ巻き付けられて、いわゆるサーペンタインレイアウトで巻き掛けられており、エンジンEの回転によりベルトBを各プーリ間で走行させて各補機を駆動するようにしている。
【0029】
上記ベルトBにおいてクランクプーリから出る側の緩み側スパンにアームタイプの上記オートテンショナ1が配置されており、このオートテンショナ1により、緩み側スパンをベルト外面側から押圧してベルト張力を自動的に調整するようにしている。
【0030】
上記オートテンショナ1は、図3にも示すように、エンジンEに取付固定される固定部材3と、この固定部材3に揺動可能に支持された可動部としての揺動部材10と、この揺動部材10の揺動中心に対しオフセットした部分(後述するアーム14の先端部)に回転自在に軸支され、ベルトBを逆曲げ状態で押圧する平プーリからなるテンションプーリ17と、捩りトルクにより揺動部材10をテンションプーリ17がベルトBを押圧するベルト押圧方向に回動付勢する付勢手段としての捩りコイルばね20と、上記揺動部材10の揺動を減衰させる3つの減衰手段とを備えている。
【0031】
上記固定部材3は例えばアルミニウム合金等からなる金属製のもので、一端(図3で左端)に開口する有底円筒状(カップ状)の固定部材本体4と、この固定部材本体4の底部に同心状に一体に立設され、先端部が固定部材本体4の開口から突出する先細りテーパ状のスピンドル部5(軸部)とを備えている。固定部材本体4の底部外周面には複数の取付ブラケット6,6,…が突設されており、この各取付ブラケット6において、図外の取付ボルトにより固定部材3をエンジンEに取付固定するようにしている。
【0032】
また、図示しないが、固定部材本体4の側壁には、その開口側から切り欠いた切欠き又は貫通孔からなるばね係止部が形成されている。
【0033】
一方、揺動部材10は、固定部材3と同様に、例えばアルミニウム合金等からなる金属製のもので、一端(図3の右端)に開口する有底円筒状の揺動部材本体11を備え、この揺動部材本体11の外径は固定部材本体4と略同径とされている。揺動部材本体11の側壁には、その開口側から切り欠いた切欠き又は貫通孔からなるばね係止部(図示せず)が形成されている。
【0034】
上記揺動部材本体11の底部には円筒状のボス部12が揺動部材本体11の開口から突出するように同心状に一体に突設され、このボス部12内には、揺動部材本体11の底壁を貫通しかつボス部12先端側に向かって内径が増大するテーパ孔13が形成され、このテーパ孔13のテーパ角度は上記固定部材3のスピンドル部5のテーパ角度と略同じとされている。そして、上記ボス部12は固定部材3のスピンドル部5にボス部12先端側から外嵌合されており、このことで揺動部材10はボス部12にて固定部材3のスピンドル部5に揺動可能(回動可能)に支持され、固定部材本体4と揺動部材本体11とは各々の開口を対向配置して略密閉状の円筒形状を形成している。
【0035】
上記揺動部材本体11の底壁側外周部には半径方向外側に延びる略板状のアーム14が突設され、このアーム14の先端部には、アーム14に対するボス部12の突出側と同じ側に向かって該ボス部12の軸心と平行に延びるように突出するプーリ軸部15が一体に形成され、このプーリ軸部15に上記テンションプーリ17が軸受部18を介して回転自在に支持されている。つまり、テンションプーリ17は、ボス部12から偏心したプーリ軸部15上の位置に支持されている。
【0036】
上記捩りコイルばね20は、上記揺動部材10のボス部12周りに両端部(タング)を半径方向外側に突出させた状態で配置されている。この一方の端部は上記固定部材本体4のばね係止部に、また他方の端部は揺動部材本体11のばね係止部にそれぞれ係止されている。また、捩りコイルばね20は固定部材本体4と揺動部材本体11との間に軸方向に圧縮されて介装されており、この捩りコイルばね20のコイル径が拡大する方向の捩りトルクにより、揺動部材10を上記テンションプーリ17がベルトBを押圧するベルト押圧方向(図1で反時計回り方向)に回動付勢するようになっている。
【0037】
さらに、上記揺動部材10の揺動を減衰させる3つの減衰手段について説明すると、まず、上記固定部材3のスピンドル部5と揺動部材10のボス部12との間にはテーパ円筒状の樹脂製のインサートベアリング22が介装されている。このインサートベアリング22はスピンドル部5に回動不能に係止固定されており、インサートベアリング22の外周面がボス部12内周面に摺接することで、揺動部材10の回動を減衰させるようにしている。
【0038】
また、上記揺動部材10のボス部12周りには、2つ目の減衰手段としての樹脂製のスプリングサポート23が配置されている。このスプリングサポート23は、ボス部12及び捩りコイルばね20の間に配置されかつ捩りコイルばね20の捩りトルクの反力によりボス部12外周面に押し付けられる略円筒状の摺接部23aと、この摺接部23aのボス部12先端側の端部から半径方向外側に突出し、捩りコイルばね20に軸方向に押圧されて固定部材本体4の内底面に押付固定されるフランジ部23bとを有する。そして、捩りコイルばね20により、スプリングサポート23の摺接部23aが押圧されて揺動部材10のボス部12に、またボス部12も押圧されてインサートベアリング22にそれぞれ押し付けられることで、揺動部材10の回動を減衰させる。
【0039】
さらに、上記固定部材3のスピンドル部5の先端部は、ボス部12内のテーパ孔13(揺動部材本体11の底壁)を貫通してその外面側に突出し、この突出部分には、揺動部材10の抜止めのための金属からなる円板状のプレート部材26が回転不能にかしめ結合等により固定止着されている。このプレート部材26と揺動部材本体11の外面(ボス部12の端面)との間には3つ目の減衰手段としての小径の樹脂製のスラストワッシャ24が挟持されており、このスラストワッシャ24が揺動部材本体11外面に摺接することで、揺動部材10の回動を減衰させる。
【0040】
以上の構成を持つオートテンショナ1に対し、その揺動部材30のアーム14の振動を測定する振動測定装置30が設けられている。すなわち、オートテンショナ1におけるスピンドル部5の先端部表面の中心にはボルト螺合孔7が形成され、このボルト螺合孔7には固定治具32が回動不能に取付固定されている。この固定治具32は略ボルト状のもので、ボルト螺合孔7に螺合締結される取付ねじ部32aと、この取付ねじ部32aが裏面に同心状に一体形成されたヘッド部32bと、このヘッド部32bの表面に同心状(取付ねじ部32aとも同心状)に突出するように一体形成された軸状の取付部32cとを備え、ヘッド部32bを回して取付ねじ部32aをボルト螺合孔7に螺合締結することで、スピンドル部5に対しヘッド部32b及び取付部32cをスピンドル部5の先端部表面から突出させた状態で一体的に固定されている。
【0041】
また、上記固定治具32の取付部32cには板ばね固定部材31が回動不能に取り付けられ、この板ばね固定部材31に可撓部材としての板ばね材34が固定支持されている。すなわち、上記板ばね固定部材31は、スピンドル部5と略同径の外径を有するリング状のもので、その周方向の一部分が半径方向にスリット状に切断分離されており、この分離部分がばね固定部31aを構成している。このばね固定部31aに対し周方向両側の板ばね固定部材31外周面はそれぞれ段差状に切り欠かれていて、その一方(図1で左側)の段差部31eの側面にはねじ孔31bが、また他方(同右側)の段差部31eの側面にはボルト挿通孔31cが、それぞれ上記ばね固定部31aと略直交する方向に延びかつ該ばね固定部31aを通って連続するように貫通形成されている。そして、上記ばね固定部31aと略直径方向に対向する部分の板ばね固定部材31内周面には、板ばね固定部材31の半径方向に中間部まで延びて板ばね固定部材31の外径を変更容易とするためのスリット31dが形成されており、板ばね固定部材31を固定治具32の取付部32cに対しばね固定部31aがアーム14の方向と略一致するように外嵌合するとともに、そのばね固定部31aに可撓部材としての板ばね材34の基端部を挟み込み、板ばね固定部材31のボルト挿通孔31cに固定ボルト33を挿通して、そのねじ部をねじ孔31bに螺合締結することにより、板ばね固定部材31を外径が小さくなるように変形させて、固定治具32の取付部32c外周面に相対回動不能に取付固定するとともに、同時に、板ばね固定部材31のばね固定部31aに板ばね材34の基端部を挟圧支持するようにしている。尚、この板ばね材34の基端部には上記固定ボルト33を挿通させるための孔34a(又は開口)が形成されている。
【0042】
上記板ばね材34は直線状に延びる薄肉(例えば厚さt=0.3mm)の平板状のものであり、板ばね固定部材31から所定方向、具体的には補機駆動システムが作動停止状態(エンジンの停止状態)にあるときのテンションプーリ17(プーリ軸部15)の軸心とスピンドル部5の中心とを結ぶ平面上を通るように延びている。
【0043】
一方、上記アーム14の先端部寄りの表面には、略L字状に折れ曲がった板材からなる板ばね保持部材36がアーム14と一体的に揺動するようにボルト締結(溶接であってもよい)により取付固定されている。この板ばね保持部材36は一半部がアーム14から突出するように起立し、この起立部分の幅方向中央部にはアーム14の長さ方向に延びるスリット37が形成され、このスリット37に上記板ばね材34の先端寄り部分が嵌挿されている。図4に拡大詳示するように、このスリット37の幅dは板ばね材34の厚さtよりも少し大きくて例えばd=0.5mmとされており、このことで板ばね材34の先端寄り部分はスリット37に摺動可能に保持されている。つまり、板ばね材34は固定部材3のスピンドル部5とアーム14との間に、スピンドル部5に固定されかつアーム14に保持された状態で掛け渡され、アーム14の揺動に応じて湾曲変形可能となっている(図5参照)。
【0044】
さらに、上記板ばね材34において、板ばね固定部材31のばね固定部31aに嵌合された基端部と、板ばね保持部材36のスリット37に嵌挿された先端寄り部分との間の中間部には歪みゲージ40(歪み検出手段)が取付固定されている。この歪みゲージ40は、上記板ばね材34が変形して歪みが発生したときに、その中間部の歪みを歪みゲージ40での応力として検出するもので、歪みに応じた電圧を出力する。
【0045】
また、上記歪みゲージ40の出力は板ばね固定部材31等を経由して測定部42に接続されている。この測定部42はオートテンショナ1の側方に設置されるもので、歪みゲージ40の出力電圧(検出値)に基づいて揺動部材10のアーム14の振動を測定するようになっている。具体的には、測定部42は、予め歪みゲージ40の出力電圧(検出値)とアーム14の振動との関係を表すた特性(例えば計算式やデータマップ等)を記憶していて、この特性に基づき歪みゲージ40の出力電圧からアーム14の振動値を演算するように構成されている。
【0046】
したがって、この実施形態においては、エンジンEの運転中、補機駆動システムにより各補機(空調機用コンプレッサ、パワーステアリング用ポンプ、オルタネータ、ファン)が駆動されているとき、オートテンショナ1の捩りコイルばね20により揺動部材10が回動付勢され、この付勢力によりアーム14先端のテンションプーリ17が伝動ベルトBのスパンを押圧し、このことでベルトBの張力が付与される。
【0047】
また、ベルトBの張力の変化により揺動部材10のアーム14がテンションプーリ17と共に固定部材3のスピンドル部5回りに揺動(振動)すると、その揺動が3つの減衰手段、つまり樹脂製のインサートベアリング22、スプリングサポート23及びスラストワッシャ24の摺動抵抗により制動減衰され、ベルトBの張力が自動的に調整される。
【0048】
そして、上記ベルトBの張力変化による揺動部材10のアーム14のスピンドル部5回りの振動を測定する場合には、次のように行う。アーム14の振動(揺動)に伴い、固定部材3側のスピンドル部5に固定治具32を介して取り付けられている板ばね固定部材31と、揺動部材10のアーム14に取り付けられている板ばね保持部材36との間に掛け渡されている板ばね材34が、アーム14の移動に応じて湾曲変形し、図5(a)に示すように、アーム14が例えばベルト張力の減少によりベルト押圧方向に移動して図で反時計方向回りに回動したときには、板ばね材34の先端部がアーム14に追従移動して、その板ばね材34は、スピンドル部5における板ばね固定部材31のばね固定部31aへ固定されている基端部から先端側に向かって図で左側に向かうように湾曲変形する。一方、図5(b)に示すように、アーム14が例えばベルト張力の増大によりベルト押圧方向と反対方向に移動して図で時計方向回りに回動したときには、板ばね材34の先端部がアーム14に追従移動して、その板ばね材34は、基端部から先端側に向かって図で右側に向かうように湾曲変形する。
【0049】
このような板ばね材34の湾曲変形により、該板ばね材34に取り付けられている歪みゲージ40に応力が発生し、この応力に応じた電圧が歪みゲージ40から出力される。尚、上記板ばね材34が図5(a)に示す方向と図5(b)に示す方向との2つの方向に湾曲変形したときには、その歪みゲージ40から出力される電圧は正負に異なっている。
【0050】
上記歪みゲージ40からの出力電圧は測定部42に入力され、この測定部42において、予め歪みゲージ40の出力電圧(検出値)とアーム14の振動との関係を設定した特性に基づき、アーム14の振動値を演算する。尚、図6は本発明者が上記実施形態の構成に基づいてアーム14の振動を実測したものであり、オートテンショナ1の振動特性を正確に測定可能となっている。
【0051】
こうして固定部材3と揺動部材10のアーム14との間に板ばね材34を掛け渡し、その変形歪みを歪みゲージ40で検出して揺動部材10のアーム14の振動を測定するので、オートテンショナ1に対し板ばね材34、固定治具32、板ばね固定部材31、板ばね保持部材36及び歪みゲージ40を設けるだけでよく、それらの取付スペースが極めて小さくて済み、オートテンショナ1の振動測定装置30を自動車のエンジンルーム等であっても制約なく取り付けることができる。しかも、また、レーザ変位計を用いた振動測定装置に比べて安価に製作することができる。
【0052】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、板ばね材34の基端部をオートテンショナ1のスピンドル部5に固定し、先端寄り部分をアーム14に係止保持しているが、逆に、板ばね材34の基端部をスピンドル部5に係止保持し、先端寄り部分をアーム14に固定することで、アーム14の揺動に応じて板ばね材34を湾曲変形させるようにしてもよく、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0053】
また、上記実施形態では、可撓部材として板ばね材34を用いているが、その他の可撓部材を用いてもよく、可動部の移動に応じて湾曲変形可能なものであればよい。
【0054】
さらに、上記実施形態は、アームタイプのオートテンショナ1に本発明を適用したものであるが、本発明は他のタイプのオートテンショナに対しても適用できるのは勿論である。例えば、固定軸に円筒状のスリーブを揺動可能に支持し、このスリーブに、固定軸の軸心からオフセットした中心を有するプーリ軸を一体に形成して、このプーリ軸にテンションプーリを回転自在に支持したスリーブタイプのオートテンショナや、減衰手段として油圧式ダンパ或いはピスカス式ダンパ(多板式粘性ダンパ)を備えたオートテンショナ、さらには付勢手段をダンパ外にそれとは別個に設けたオートテンショナ等に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、オートテンショナの振動を測定する装置の省スペース化及び低価格化を図り得る点で極めて有用であり、その産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係るオートテンショナの振動測定装置を示す正面図である。
【図2】オートテンショナの振動測定装置を示す側面図である。
【図3】オートテンショナの内部構造を示す断面図である。
【図4】板ばね材の保持構造を拡大して示す正面図である。
【図5】アームの揺動に伴う板ばね材の湾曲変形を示す図1図相当図である。
【図6】オートテンショナの振動測定データの具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
B 伝動ベルト
1 オートテンショナ
3 固定部材
10 揺動部材(可動部)
14 アーム
17 テンションプーリ
20 捩りコイルばね
22 インサートベアリング(減衰手段)
23 スプリングサポート(減衰手段)
24 スラストワッシャ(減衰手段)
30 振動測定装置
31 板ばね固定部材
34 板ばね材(可撓部材)
36 板ばね保持部材
37 スリット
40 歪みゲージ(歪み検出手段)
42 測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材に揺動可能に支持され、揺動中心とオフセットした部分にプーリが回転自在に軸支された可動部と、上記プーリがベルトを押圧する方向に上記可動部を付勢する付勢手段と、可動部の揺動を減衰する減衰手段とを備え、ベルトの張力を自動的に調整するオートテンショナに対し、上記可動部の振動を測定する装置であって、
上記固定部材と可動部との間に掛け渡され、可動部の移動に応じて湾曲変形可能な可撓部材と、
上記可撓部材の歪みを検出する歪み検出手段と、
上記歪み検出手段の検出値に基づいて可動部の振動を測定する測定部とを備えたことを特徴とするオートテンショナの振動測定装置。
【請求項2】
請求項1のオートテンショナの振動測定装置において、
可撓部材は板ばね材であることを特徴とするオートテンショナの振動測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2のオートテンショナの振動測定装置において、
可撓部材は固定部材と可動部との間に、固定部材又は可動部の一方に固定されかつ他方に保持された状態で掛け渡されていることを特徴とするオートテンショナの振動測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つのオートテンショナの振動測定装置において、
測定部は、予め歪み検出手段の検出値と可動部の振動との関係を表す特性を設定していて、該特性に基づき歪み検出手段の検出値から可動部の振動値を演算するように構成されていることを特徴とするオートテンショナの振動測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つのオートテンショナの振動測定装置において、
可動部は、基端部が固定部材に揺動可能に支持される一方、先端部にプーリが軸支されたアームを有することを特徴とするオートテンショナの振動測定装置。
【請求項6】
固定部材に揺動可能に支持され、揺動中心とオフセットした部分にプーリが回転自在に軸支された可動部と、上記プーリがベルトを押圧する方向に上記可動部を付勢する付勢手段と、可動部の揺動を減衰する減衰手段とを備え、ベルトの張力を自動的に調整するオートテンショナに対し、上記可動部の振動を測定する方法であって、
上記固定部材と可動部との間に掛け渡され、可動部の移動に応じて湾曲変形可能な可撓部材の歪みを検出して、
その検出値に基づいて可動部の振動を測定することを特徴とするオートテンショナの振動測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−119063(P2006−119063A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309177(P2004−309177)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】