説明

オーバーレイ金属コーティングの堆積によるタービン構成部品内の空気流量の調整

【課題】 複数の空気流孔(122)を有するタービン構成部品(22、26)内の空気流量を調整する方法を提供する。
【解決手段】 本方法は、前記タービン構成部品(22、26)を通る空気流量を調整するために、空気流孔(122)の少なくともいくつかを部分的に塞ぎ、それによってその部分的に塞がれた孔(122)の容量を変更できるように、タービン構成部品(22、26)の表面(74、82)上にオーバーレイ金属コーティング(130)を堆積させる段階を含む。また、タービン構成部品(22、26)を通る空気流量を調整するために、空気流孔(122)の少なくともいくつかをオーバーレイ金属コーティング(130)で部分的に塞いでその容量を変更した、複数の空気流孔(122)を有するタービン構成部品(22、26)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーレイ金属コーティングを堆積させることによって、空気流孔を有するタービン構成部品、例えば、ガスタービン構成部品内の空気流量を調整することに関する。本発明は、さらに、かかるオーバーレイ金属コーティングを堆積させることによって空気流量を調整したタービン構成部品に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼器ライナなどの多くのガスタービン構成部品には複数の空気流孔が形成されている。これらの孔は、構成部品を冷却するとともに、構成部品と機関の主流路を流れる高温ガスとの間で流体バリアが形成されるように、構成部品内で膜流空気(film air)を移送するためのものである。燃焼器ライナの冷却は、高温表面上に空気を流すことに加えて、内筒中に形成された典型的には直径約0.02〜約0.03インチ(約508〜約762ミクロン)の極く小さな空気流孔のアレイを介して空気流を送ることにより内筒内側の燃焼側に沿って形成される冷却空気の薄層によってももたらされる。この膜冷却はまた、通常内筒の前方縁部に沿って一列に配置された「ナゲット」孔、および通常内筒の表面全体にわたって複数の列に配置された、はるかに多くの空気流をより均質にするための「滲出」孔を介しても促進される。これらの「滲出」孔は、通常、内筒の「低温」すなわち給気側から「高温」すなわち燃焼側に、下流方向へある角度をなすかまたは傾斜しており、通常、周方向に配置されている。例えば、特許文献1を参照されたい。一般に「多孔膜冷却」と呼ばれるこの構成では、空気流孔を通る流量によって内筒表面に接する高温燃焼ガスが希釈され、この空気流孔を通る流量によって内筒壁の対流冷却がもたらされるので、内筒を冷却するのに必要な空気流量が全体的に減少している。これらのより小径の「ナゲット」空気流孔および「滲出」空気流孔に加えて、希釈空気を燃焼領域に導入するためのより大径の孔(通常「希釈孔」と呼ばれる)もまた間隔を置いて設けられている。例えば、本発明の譲受人に譲渡された特許文献2の図2および特許文献3の図3を参照されたい。
【0003】
1つまたは複数の燃焼器ライナに高温ガスが放射され伝導されるために生じる熱疲労から内筒を保護する助けとなるように、これらの燃焼器ライナの燃焼側を遮熱コーティングで覆うことがある。本発明の譲受人に譲渡された特許文献3を参照されたい。この特許は、燃焼器ライナを熱絶縁するための物理的気相成長法を開示している。これらの燃焼器ライナは、ある期間稼動した後、通常は、交換、修理、汚染物質(例えば酸化堆積物および残留燃焼生成物)の洗浄および/または除去、亀裂、および内筒が受けてきた、熱により生じたその他の応力のため機関から取り外される。これらの亀裂の少なくともいくつかは、より小径の「ナゲット」孔および「滲出」孔を含む様々な孔にわたって延びる。
【0004】
部品もしくは構成部品、または部品の一部分もしくは構成部品の一部分を修理するには、通常、その表面を適切に洗浄する必要がある。洗浄中、遮熱コーティングおよび汚染物質は、通常、化学的および/または機械的プロセス、例えば通常の酸ストリップ法によって燃焼器ライナから除去される。燃焼器ライナの修理、特に一般に運転および使用中に内筒に生じる亀裂の修理によって、極く小さな「ナゲット」孔および「滲出」孔の少なくともいくつかが塞がる、埋まる、詰まる、またはその他の形で遮られることになり、そのため、それらの孔を再び開口するために化学的および/または機械的プロセスが必要となることがある。これらの空気流孔の再開口、ならびにコーティングおよび汚染物質を除去する化学的ストリップ法によって、これらの孔が位置する燃焼器ライナの金属基材までもがいくらか除去されることがあり、その結果これらの孔が拡大することになる。こうした拡大した空気流孔は、これらの内筒の空気流量を大幅に増大するおそれがあり、望ましくない。実際に、このような洗浄および修理のサイクルを数回経ると、燃焼器ライナがもはや使用不可能になるほど空気流量が増大することがある。
【0005】
空気流量の制御に関する問題は、供給元による燃焼器ライナの製造段階で生じることもある。これらの極く小径の「ナゲット」孔および「滲出」孔を、特に傾斜角度で通常数千個も形成するには、通常、特殊な機械加工プロセス、例えばレーザ法や放電機械加工法(EDM)などを用いて内筒に穿孔する。穿孔のパターンおよび寸法によってある程度の制御は可能であるものの、それでもなお、空気流量が所望の範囲内となるように、一貫したパターンおよび寸法の孔を有する燃焼器ライナを形成することは極めて難しい。さらに、レーザ穿孔またはEDM穿孔によって孔を生成する際に、孔の表面に沿ってリキャスト層が形成される。続いて燃焼器ライナをストリッピングおよび洗浄する際に、このリキャスト層も除去されることがあり、その結果、孔が拡大し、空気流量が増大することになる。
【0006】
かかる空気流孔を有するタービン構成部品内の空気流量を調整する方法が、特許文献4に開示されている。この方法は、空気流孔を通る空気流を少なくとも部分的に遮るように、物理的気相成長(PVD)法(例えば電子ビームPVD)によって構成部品の外側表面および/または内側表面上に遮熱コーティングを堆積させるものである。この方法は、空気流孔を通る空気流量を調整可能にするものの、物理的気相成長装置がある寸法を有するので、一部のタービン構成部品に使用するには融通がきかないことがある。さらに、遮熱コーティングは一般にセラミック材料を含み、このセラミック材料は、オーバーレイ金属接着コーティング層がなければ、長期間にわたって金属表面に適切に固着しているとは限らない。上記特許文献3を参照すると、遮熱コーティング120を堆積させる前に、燃焼器ライナ14の内側燃焼表面40上にNiCrAlYを接着コーティング層110として約0.1〜0.25mm(約4〜約10ミル)溶射することが開示されている。
【0007】
したがって、各孔の空気容量がそれぞれ変更された、特に、後の修理、交換、洗浄、および/または除去工程の間に拡大した、より小径の空気流孔を多量に有する燃焼器ライナなどのタービン構成部品(例えばガスタービン構成部品)内の空気流量を経済的かつ一様に調整できれば望ましい。また、最終的な製造後、既に付着させた遮熱コーティングを除去せずに、または実質的に除去せずにタービン構成部品内を流れる空気流量を調整できれば望ましい。さらに、供給元による製造段階で(すなわちOEM構成部品)空気流量が許容範囲内となるように調整する必要がある、空気流孔を有する燃焼器ライナなどのタービン構成部品内の空気流量を調整できれば望ましい。さらに、空気流孔を有する種々多様なタービン構成部品、特に数千個もの空気流孔を有する構成部品、例えば燃焼器ライナ内の空気流量を調整できるように融通性を持たせることができれば望ましい。
【特許文献1】特開2003−114023号公報
【特許文献2】特開2002−139220号公報
【特許文献3】米国特許第6620457号
【特許文献4】特開2002−097968号公報
【特許文献5】特開平04−330302号公報
【特許文献6】特開平05−141270号公報
【特許文献7】特開2002−004805号公報
【特許文献8】特開2002−089206号公報
【特許文献9】特開平06−093404号公報
【特許文献10】米国特許第5047612号
【特許文献11】特開昭61−259777号公報
【非特許文献1】Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,3rd Ed.,Vol.15,page 255
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、オーバーレイ金属コーティングを堆積させることによって、空気流孔を有するタービン構成部品、例えば、ガスタービン構成部品内の空気流量を調整する方法を提供すること、およびかかるオーバーレイ金属コーティングを堆積させることによって空気流量を調整したタービン構成部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、複数の空気流孔を有するタービン構成部品(例えばガスタービン構成部品)内の空気流量を調整する方法に関する。この方法は、タービン構成部品内を流れる空気流量を調整するために、空気流孔の少なくともいくつかを部分的に塞ぎ、それによってその部分的に塞いだ空気流孔の容量を変更できるように、タービン構成部品の表面上にオーバーレイ金属コーティングを堆積させる段階を含む。
【0010】
本発明のもう1つの実施形態は、タービン構成部品内を流れる空気流量を調整するために、空気流孔の少なくともいくつかをオーバーレイ金属コーティングで部分的に塞いでその容量を変更した、複数の空気流孔を有するタービン構成部品に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法およびタービン構成部品は、いくつかの利益および利点を提供する。それらには以下のものが含まれるが、それだけに限定されるものではない。(1)複数の空気流孔を有する、燃焼器ライナなどのタービン構成部品内の空気流量を所望の空気流量仕様または範囲内となるように修正または是正することができる。(2)かかる空気流孔を有する特定の領域または面積において、必要または要求に応じて空気流量を局所的に是正または変更することができる。(3)既に使用した、または運転中の、複数の空気流孔を有する燃焼器ライナおよび他のタービン構成部品を、コスト効果の高い形で効率よく修復および修理することができる。(4)タービン構成部品のかかる修復または修理を、元のまたは再生した遮熱コーティングを除去せずに、またはその他の方法で構成部品の物理的特性もしくは化学的特性、または物理的寸法の望ましくない変更を行わずに実施することができる。(5)所望の動作仕様または動作限界よりも大きい空気流量で製造されたタービン構成部品を修復または再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書では、「複数の空気流孔を有するタービン構成部品」という用語は、少なくとも2つ、通常は多数の、空気がその中を循環する、一般に構成部品を冷却するための空気流孔を有する任意のタービン機関部品(例えば、ガスタービン機関部品)を指す。かかるタービン構成部品の代表的な例として、例えば、本発明の譲受人に譲渡された特開平04−330302号公報、特開平05−141270号公報、特開2002−004805号公報、および特開2002−089206号公報(これらはすべて参照により組み込む)に開示されているようなタービンシュラウド、例えば、本発明の譲受人に譲渡された特開2003−114023号公報、特開2002−139220号公報、および米国特許第6620457号(Farmer他)(これらはすべて参照により組み込む)に開示されているような燃焼器ライナ、ならびに熱シールド、静翼、インピンジメントリング、ノズルなどが含まれるが、これらに限られるものではない。本発明は、特に、複数の、より典型的には多数のかかる空気流孔を有する燃焼器ライナおよび他のタービン構成部品を対象とし、より具体的には、複数の、より典型的には多数の、一般に「多孔膜冷却」と呼ばれる冷却方式を実現する滲出冷却空気流孔を有する燃焼器ライナを対象とする。「多孔膜冷却」については、上記特開2003−114023号公報、特開2002−139220号公報、および上記米国特許第6620457号(これらはすべて参照により組み込む)を参照されたい。
【0013】
本明細書では、「1つまたは複数の空気流孔」という用語は、タービン構成部品内の空気流量を調整、変更、またはその他の形で制御するための、空気が通過またはその他の形で循環する孔を指し、通常、この孔によって直接または間接的にタービン構成部品の冷却が実現または促進される。すなわち、この孔はナゲット孔または滲出孔などの冷却孔である。
【0014】
本明細書では、「オーバーレイ金属コーティング」という用語は、溶射堆積技術によって溶射、付着、またはその他の方法で堆積させることができる任意の金属コーティングを指し、しばしば、遮熱コーティング材料を堆積させる前に金属基材上に追加の金属コーティングを堆積させるために使用される。これらのオーバーレイ金属コーティングは、MCrAlYコーティングを含み、Mは、鉄、ニッケル、白金、コバルト、またはその合金などの金属である。一般に、本発明で使用するオーバーレイ金属コーティングは、NiCrAlYコーティングである。
【0015】
本明細書では、「溶射堆積法」という用語は、オーバーレイ金属コーティングを溶射、付着、またはその他の方法で堆積させる任意の方法を指し、この方法は、オーバーレイコーティング材料を加熱し、一般に少なくとも部分的または完全に熱溶融し、その加熱/溶融した材料を、通常、加熱したガス流内で同伴させることよって、被覆すべき金属基材上に堆積させるものである。適当な溶射堆積技術には、空気プラズマ溶射(APS)や真空プラズマ溶射(VPS)などのプラズマ溶射、高速フレーム(HVOF)溶射、爆発溶射、溶線式溶射など、ならびにこれらの技術の組合せが含まれる。本明細書で使用するのに特に適した溶射堆積技術は、プラズマ溶射である。複数の適当なプラズマ溶射技術が当業者には周知である。例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,3rd Ed.,Vol.15,page 255およびそこに記された引用、ならびに特開平06−093404号公報、米国特許第5047612号、および特開昭61−259777号公報(本明細書に引用により組み込む)を参照されたい。これらは、本明細書で使用するのに適したプラズマ溶射の様々な態様について教示している。一般に、通常のプラズマ溶射技術では、熱プルームを発生させる高温プラズマを形成する。オーバーレイ金属コーティング材料を例えば粉末状でプルーム中に供給し、このプルームを被覆すべきベース金属基材の方に向ける。堆積前のベース金属基材表面の洗浄、(ガンから基板までの)溶射距離、溶射パス回数の選択、粉末供給速度、粒子速度、トーチ出力、プラズマガスの選択、酸化物の化学量論比を調整するための酸化制御、堆積角度、付着させたコーティングの後処理などのプラズマ溶射条件などの関連する様々な段階およびプロセス条件を含めて、かかるプラズマ溶射被覆技術の様々な詳細もまた、当業者には周知である。適当なプラズマ溶射システムが、例えば、上記米国特許第5047612号に記載されており、この特許を引用により組み込む。
【0016】
本明細書では、「含む」という用語は、本発明において多種多様な組成物、構成要素、材料、層、段階などを併せて使用できることを意味する。したがって、「含む」という用語は、より限定的な用語「基本的に〜からなる」および「〜からなる」を包含するものである。
【0017】
本明細書では、量、部、比および百分率はすべて、別段の指定がない限り重量による。
【0018】
本発明の方法およびタービン構成部品の様々な実施形態を、図面を参照して下記で論じることによりさらに説明する。図面を参照すると、図1は、10で全体を示す、本発明の方法が有用な、複数、より典型的には多数の空気流孔を有する少なくとも1つの構成部品を含むガスタービン機関燃焼器を示す。図1に示すように、燃焼器10は、14で示すカウルアセンブリ、22で示す外側燃焼器ライナ、および26で全体を示す内側燃焼器ライナを含む。外側内筒22および内側内筒26は、外側燃焼器外筒30と内側燃焼器外筒34の間に配設されている。外側内筒22および内側内筒26は、中心線軸(図示せず)の周りでほぼ環形をなすとともに、その間で燃焼室38を画定するように径方向に互いに間隔を置いて配置されている。外側内筒22および外側外筒30によってその間に矢印42で示す外側流路が形成され、内側内筒アセンブリ26および内側外筒34によってその間に矢印46で示す内側流路が形成されている。
【0019】
カウルアセンブリ14は、外側内筒22および内側内筒26の上流端部に取り付けられている。圧縮空気を燃焼器10内に導入するための環状開口50が、カウルアセンブリ14に形成されている。圧縮空気は、圧縮機(図示せず)から供給され、図1の矢印54で全体的に示す方向に流れる。圧縮空気は、燃焼を助けるために主に開口50を通って流れるとともに部分的には外側流路42および内側流路46にも流れ込み、そこで、少なくとも部分的に外側内筒22および内側内筒26に冷却空気流を供給する。環状ドーム板58が、内筒22および26それぞれの上流端部付近でそれらの間に配設され、内筒22および26を相互接続している。複数のスワラアセンブリ62が周方向に間隔を置いてドーム板58に取り付けられている。各スワラアセンブリ62は、開口50から圧縮空気を受け取るとともに、対応する燃料管66から燃料を受け取る。燃料および空気は、スワラアセンブリ62によって撹拌(swirl)混合され、得られた燃料/空気混合物が燃焼室38内に排出される。図1は単式環状燃焼器を示すが、本発明の方法は、2段式および3段式環状燃焼器を含めて、多孔膜冷却方式の内筒を使用するどんなタイプの燃焼器にも適用可能であることに留意されたい。かかる2段式環状燃焼器の代表的な例の1つとして、2段のスワラアセンブリ62および対応する各燃料管66、ならびに1つの中間シールド68を有する例を図2に示す。
【0020】
外側内筒22および内側内筒26はそれぞれ、ほぼ環状で軸方向に延びた形状の、単一壁の金属シェルを含む。図1および2に示すように、外側内筒22は、燃焼室38内で高温燃焼ガスに面する高温すなわち燃焼表面または燃焼側70と、外側流路42内で比較的低温の空気と接触する低温すなわち給気表面または給気側74とを有する。同様に、外側内筒26は、燃焼室38内で高温燃焼ガスに面する高温すなわち燃焼表面または燃焼側78と、内側流路46内で比較的低温の空気と接触する低温すなわち給気表面または給気側82とを有する。図2に具体的に示すように、内筒22および26はそれぞれ、内筒22および26を燃焼器10内に固定するための、84および86で全体を示す前部バンド、ならびに88および90で全体を示す後部板ばねシールリップを有する。
【0021】
図1に示すように、外側内筒22および内側内筒26には、多数の空気流孔が形成されている。例示の目的で示した図3を参照すると、内側内筒26が示されており、この内筒は、内筒の前方端部にある、94で全体を示す比較的小さなナゲット冷却孔の1つの列と、98で全体を示すさらに小さな滲出冷却孔の複数の列を含む、いくつか配置されたアレイと、低温側82(または外側内筒22の場合74)から高温側78(または外側内筒22の場合70)に延びる、102で全体を示すより大きな希釈孔の少なくとも1つの列とを有する。希釈孔102は、空気を燃焼室38に導入し、その数は、一般に、ナゲット孔94、およびとりわけ滲出孔98よりもはるかに少なく、かつ孔94および98の断面積よりもかなり大きな断面積を有する。滲出孔98は、通常、低温側74、82からそれぞれの高温側70、78に下流方向へ軸方向に傾斜している。したがって、外側流路42および内側流路46からナゲット孔94および滲出孔98を通って流れる空気は、下流方向に誘導され、その結果内筒22および26のそれぞれの高温側70、78上に冷却膜が形成されることになる。
【0022】
高温すなわち燃焼側78から見た図4を参照すると、内側内筒26について、ナゲット孔94、滲出孔98、および希釈孔102の代表的な配置が示されている。図4に示すように、内筒26の上流端部から下流端部に進んで、106で示す、周方向に延びるナゲット孔94の列が内筒の上流端部に形成され、このナゲット孔列106の後ろに、横方向に間隔を置いて配置された周方向に延びる、110で全体を示す滲出孔98の列が多数配置されている。列106のナゲット孔94および列110の滲出孔98は、典型的には直径が約0.01〜約0.05インチ(約254〜約1270ミクロン)、より典型的には約0.02〜約0.03インチ(約508〜約762ミクロン)であり、それらの孔の間隔は直径で孔約3〜約10個分である。
【0023】
また、図4に示すように、114で示す周方向に延びる主希釈孔102の列が内筒26の上流端部の方に配置され、この主希釈孔の下流に、118で示す周方向に延びる副希釈孔の列が配置されている。主希釈孔114および副希釈孔118は、典型的には直径が約0.1〜約0.75インチ(約2.5〜約19mm)であり、主希釈孔114の直径は、一般に副希釈孔118の直径よりも大きい。直径および孔間隔に応じて、典型的には約20〜約60個の主希釈孔114および約20〜約120個の副希釈孔118が内筒に形成される。
【0024】
図5を参照すると、外側内筒22に形成された滲出冷却孔の1つの断面が122で示されており、この孔は、内筒22の低温側74から高温側70に、下方に傾斜した角度で下流端部の方に延びている。(内側内筒26に形成された滲出冷却孔の断面も同様である。すなわち、内筒26の低温側82から高温側78に、上方に傾斜した角度で下流端部の方に延びている。)図5に示すように、高温側70には、一般に、126で全体を示す追加の遮熱コーティング(TBC)がその上に形成されている。孔122を通る空気流量を調整するために、溶射堆積技術を用いた装置(図示せず)によって低温すなわち給気側70上に130で示すオーバーレイ金属コーティングを堆積(例えば溶射)させる。134で示す、コーティング130を堆積させる際の特定の溶射角度は、孔122の傾斜角度を含めた様々な要因に応じて決めることができる。例えば図5に示すように、コーティング130を堆積させる際の溶射角度134は、孔122の傾斜角度と同じかまたは同程度とすることができ、あるいは孔122の傾斜角度とは異なってもよい。
【0025】
コーティング130は所望のどんな厚さにも堆積させることができるが、典型的には約1〜約10ミル(約25〜約254ミクロン)、より典型的には約2〜約7ミル(約51〜約178ミクロン)の範囲の厚さで、すなわち比較的薄く堆積させる。オーバーレイ金属コーティングを堆積させる溶射角度134に応じて、コーティング130の一部分が孔122の低温側74端部でその中に入り、138で示すように、孔122を部分的に塞ぐ。孔122のリップ端部142がコーティング130の部分138で部分的に塞がれるので、実際上孔122の直径が縮小することになり、したがって、孔122の有効面積または容量が部分的に塞がれるかまたは制限され、その結果、所与の圧力降下で流路42から(または内筒26に隣接する流路46から)かかる孔122に流入できる空気流の容量が減少することになる。その結果、流路42(または内筒26に隣接する流路46)から孔122内に流入する空気流量が減少する。孔122の大きさまたは数を増減することによって空気流量を制限し、それによって孔122を通る空気流量が指定され、規定され、またはその他の方法で選択されたパターン(例えば1つ(または複数)の、列、アレイ、面積など)、またはその任意の組合せによって制限されるように、コーティング130を堆積させることができる。このように、コーティング130の部分138によって部分的に塞がれる孔122の数、コーティング130の部分138で部分的に塞がれるかかる孔122のパターン、および/またはコーティング130の部分138で孔122が部分的に塞がれる度合いに応じて、内筒22(または26)の空気流量を所望の範囲または仕様内に制御し調整することができる。
【0026】
内筒22および26などのガスタービン構成部品では、空気流孔寸法および空気流路面積は、一般に、空気流量の上限および下限、または仕様に即して厳しく制御されている。燃焼室38では、冷却空気流量または冷却面積が不十分であると、構成部品の耐久性の低下を招きかねない。さらに、冷却空気流量または冷却面積が過大であると、機関の性能、操作性および燃性に悪影響が及びかねない。この状態は、通常、少なくともいくつかの空気流孔122が所望の寸法よりも大きい場合に生じる。これは、以下の2つの要因の結果生じる可能性がある。(1)供給元によるタービン構成部品の製造(すなわちOEM構成部品)後の孔122が指定または所望の寸法または直径よりも大きく、その結果所望の空気流量仕様または範囲を超えてしまう。または(2)供給元によるタービン構成部品の製造後およびタービン構成部品の運転中に孔122が拡大し、その結果所望の空気流量仕様または範囲を超えてしまう。本発明の方法の様々な実施形態は、要因1または2のいずれかのため、所望の大きさよりも大きい孔122を有するタービン構成部品(例えば燃焼器ライナ22および26)に適用可能にするためのものである。
【0027】
孔122の直径は、様々な理由で拡大することがあり(すなわち要因2)、したがって、外側内筒22および内側内筒26を通る空気流量が増大することになる。例えば、孔122の拡大は、外側内筒22および内側内筒26を修理するために使用される様々なプロセス、ならびに孔122が形成される方式によって生じることがある。この様子を図6および7に示す。図6は、レーザ穿孔や電気放電機械加工(EDM)穿孔などの特殊な機械加工プロセスによって形成された孔122を示す。レーザ穿孔またはEDM穿孔の結果、146で全体を示す、材料のリキャスト層が孔122の表面上に形成される。例えば、構成部品の一部分の洗浄プロセスの間、TBC126、内筒22、26は、一般に、アルミナ粒子などの研磨媒体を用いたドライまたはウェットグリットブラスト法で処理される。ウェットグリットブラスト法では、研磨媒体は液体、通常は水中に懸濁しており、次いでこれを高速で溶射してTBC126を除去する。その結果、図7に示すように、リキャスト層146は、通常、部分的または完全に除去され、したがって、孔122の有効直径が、両方向矢印150(図6参照)で示す直径から両方向矢印154(図7参照)で示す直径まで増大または拡大することになる。図5を参照して先に述べた本発明の方法の実施形態を用いると、これらの拡大した孔122の直径154を縮小して、そこを通る空気流量を制御かつ調整することができる。
【0028】
孔122を通る空気流量を調整かつ制御する、すなわち内筒22および26を流れる空気流量を調整かつ制御するための本発明の方法の実施形態は、以下の段階を含む。
(a)コーティング130を付着させる前に、まず孔122を通る空気流量を測定する(determine)段階。(b)先に述べたように、内筒22および/または26の低温側74、82にコーティング130を付着させる段階。(c)コーティング130を付着させた後、孔122を通る空気流量を測定する段階。(d)所望の度合いの空気流量が得られるまで、必要に応じて段階(b)および(c)を繰り返す段階。かかる方法の実施形態は、本発明の譲受人に譲渡された特開2002−097968号公報(参照により組み込む)に開示された技術を適切に改変して実施することができる。本発明の方法の実施形態向けに改変した特開2002−097968号公報の方法は、以下の段階を含む。(1)コーティング130を付着させる前に、孔122全体にわたって所定の圧力降下を生じさせる段階。(2)所定の圧力によって生じる、孔122を通る空気流量を計算する段階。(3)コーティング130を堆積させた後に孔122を通る空気流量が予め選択した空気流量の範囲内となるように、測定した孔122を通る空気流量に基づいて選択した厚さのコーティング130を堆積させる段階。予め選択した所望の空気流量範囲の最小空気流量は、一般に、機関運転中、内筒22および26を選択された最高温度よりも低く維持するのに十分な空気流が孔122を通るように選択される。この最高温度は、内筒22および26の寿命要件を満たす環境をもたらすように計算される。この範囲の最大空気流量は、一般に、他の構成部品をそれぞれの寿命要件を満たす最高温度よりも低く維持するのに十分な空気流が確実にガスタービン機関内の他の構成部品内を流れるように選択される。極端な温度変化の結果生じる、局所的な空気流の変動もまた、構成部品の寿命に悪影響を及ぼしかねないが、これもまた、本発明のこの実施形態に従って是正することができる。
【0029】
本発明の方法で使用できるように改変した特開2002−097968号公報の方法(図3参照)を用いる際、コーティング130を低温側74、82に堆積させる前および堆積させた後に、圧流スタンドによって燃焼器ライナ22、26などのタービン構成部品をチェックする。加圧後、圧流スタンドの上流端部と下流端部で圧力に差があるので、燃焼器ライナ22、26の孔122全体にわたって圧力降下が生じる。上流および下流の圧力が分かるので、孔122を通る空気流量を計算することができる。タービン構成部品またはその一部分について、この空気流量を予め選択した所望の空気流量範囲と比較する。空気流量が予め選択した所望の空気流量範囲内であり、燃焼器ライナ22、26がその他の点で所望の構成部品仕様または範囲を満たす場合、この部品は使用できる状態にある(すなわち、使用可能である)。
【0030】
しかし、空気流量が予め選択した所望の空気流量範囲を超える場合、燃焼器ライナ22、26上に追加のコーティング130の層を堆積させる。被覆した燃焼器ライナ22、26の孔122を通る空気流量を前回通り再度測定し、測定した空気流量を再度予め選択した範囲と比較する。この代替法の一実施形態では、測定した空気流量が、予め選択した所望の空気流量の範囲内になるまでこれらの段階を繰り返し行うことができる。一般に、この代替法では、コーティング130を堆積させる段階は、1度だけ繰り返せばよい。
【0031】
予め選択した所望の空気流量範囲の最小空気流量は、機関運転中、タービン構成部品(例えば燃焼器10)を選択された最高温度よりも低く維持するのに十分な空気流が孔122を通るように選択される。この最高温度は、構成部品の寿命要件を満たす環境をもたらすように計算される。この範囲の最大空気流量は、ガスタービン機関の他の構成部品内を十分な空気流が確実に流れ、他の構成部品が確実にそれぞれの寿命要件を満たす最高温度よりも低く維持されるように選択される。
【0032】
本発明の特定の実施形態について説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変形形態が可能であることは当業者には明らかであろう。なお、特許請求の範囲に記載された符号は、理解容易のためであってなんら発明の技術的範囲を実施例に限縮するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の方法が有用な燃焼器ライナを有する代表的なガスタービン燃焼器の切欠斜視図である。
【図2】本発明の方法が有用な燃焼器ライナを有する2段式環状燃焼器の拡大断面図である。
【図3】図2に示す燃焼器ライナの拡大断面図である。
【図4】空気流孔の代表的な配置を示す図3の燃焼器ライナ外側表面の部分拡大図である。
【図5】本発明の方法によって付着されたコーティングを示す外側燃焼器ライナの拡大断面図である。
【図6】傾斜した滲出冷却孔のレーザ穿孔またはEDM穿孔によって形成されたリキャスト層を示す、図5と同様の図である。
【図7】滲出冷却孔からリキャスト層が除去された状態を示す、図6と同様の図である。
【符号の説明】
【0034】
10 ガスタービン機関燃焼器
14 カウルアセンブリ
22 外側燃焼器ライナ
26 内側燃焼器ライナ
30 外側燃焼器外筒
34 内側燃焼器外筒
38 燃焼室
42 外側流路
46 内側流路
50 環状開口
58 環状ドーム板
62 スワラアセンブリ
66 燃料管
68 中間シールド
70、78 燃焼側
74、82 給気側
84、86 前部バンド
88、90 後部板ばねシールリップ
94 ナゲット冷却孔
98 滲出冷却孔
102 希釈孔
106 ナゲット孔列
110 滲出孔列
114 主希釈孔
118 副希釈孔
122 滲出冷却孔
126 遮熱コーティング(TBC)
130 オーバーレイ金属コーティング
134 溶射角度
138 コーティング130の一部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空気流孔(122)を有するタービン構成部品(22、26)内の空気流量を調整する方法であって、前記タービン構成部品(22、26)内を流れる空気流量を調整するために、前記空気流孔(122)の少なくともいくつかを部分的に塞ぎ、それによって前記部分的に塞がれた孔(122)の容量を変更できるように、前記タービン構成部品(22、26)の表面(74、82)上にオーバーレイ金属コーティング(130)を堆積させる段階を含む方法。
【請求項2】
前記オーバーレイ金属コーティング(130)が溶射堆積によって堆積される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記タービン構成部品が燃焼器ライナ(22、26)である、請求項1乃至2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
前記燃焼器ライナが、給気側(74、82)および燃焼側(70、78)を有し、前記空気冷却孔(122)が前記給気側(74、82)から前記燃焼側(70、78)に延び、前記オーバーレイ金属コーティング(130)が前記給気側(74、82)上に堆積される、請求項1乃至3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記空気流孔(122)が、254乃至1270ミクロンの範囲の直径を有する滲出冷却孔(110)の複数の列を含む、請求項1乃至4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記オーバーレイ金属コーティング(130)が、25乃至254ミクロンの厚さに堆積される、請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記オーバーレイ金属コーティング(130)が、プラズマ溶射によって堆積される、請求項1乃至6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記オーバーレイ金属コーティング(130)が、MCrAlYコーティングを含み、Mは、鉄、ニッケル、白金、コバルト、およびその合金からなる群から選択された金属である、請求項1乃至7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記オーバーレイ金属コーティング(130)が、少なくともいくつかの所望よりも大きい空気流孔(122)を有するOEMタービン構成部品(22、26)に堆積される、請求項1乃至8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記オーバーレイ金属コーティング(130)が、前記タービン構成部品(22、26)の供給元による製造後に拡大した少なくともいくつかの空気流孔(122)を有するタービン構成部品上に堆積される、請求項1乃至9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項記載の方法に従って作成されたタービン機関構成部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−71274(P2006−71274A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250507(P2005−250507)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】