説明

カゼイン複合体

レスベラトロールおよびカゼインを含む複合体、それらの製造方法、それらの使用およびそれらを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、カゼイン複合体に関する。より詳しくは、本発明はカゼインおよびレスベラトロールを含む複合体、それらの製造方法、それらの使用、およびそれらを含む組成物に関する。カゼインおよびレスベラトロールを含む複合体は、カゼインレスベラトロール複合体であることが好ましい。
【0002】
系統的命名法では3,4’,5−トリヒドロキシスチルベンであるレスベラトロールは、天然に存在する公知の化合物であり、その有用な生物学的特性や薬理作用から、近年、大きな関心が持たれている。レスベラトロールは、いわゆる「フレンチ・パラドックス」が生じる理由であることも含めて、多くの治療ならびに病気予防の性質を示すことが報告されている。脂肪やアルコールを高濃度で含む地中海料理で生活する人々に、予想されるようなガンや心疾患の増加が観察されないという事実が、フレンチ・パラドックスである。例えば、皮膚腫瘍および白血病の抑制のみならず、血小板の凝集および凝固の抑制に関しても、各種の細胞実験や動物実験で、レスベラトロールの効果が示されている。さらに、レスベラトロールが、血管弛緩薬、抗菌剤および殺菌剤であることも示されている。最近、レスベラトロールにより高脂肪食を与えたマウスの寿命が延びることを示すデータが公表されている。
【0003】
したがって、レスベラトロールは、特定の病気および症候群の予防および治療に有用なだけでなく、哺乳類、好ましくはヒトの身体的、精神的、さらにそれを超える健康状態を広く改善するのにも有用な化合物にますますなりつつある。このことにより、長期保存が可能で、特に水性溶媒に対する溶解度が高いことから広範な用途、例えば、食品、飼料、医薬品および化粧品、特に飲料への適用が可能になる、安定な(物理的、化学的、色彩的、味覚的)形態および製剤で使用できるレスベラトロールを製造することが要求されてきている。
【0004】
レスベラトロールは水に対する溶解性/分散性が非常に低いことから、約10〜20mg/240mlのレスベラトロール濃度の最終透明溶液を製造するために飲料産業が通常用いる、長い期間にわたって良好な安定性を有する濃縮原液を調製することは、不可能でないまでも困難である。
【0005】
これらの困難を解決すること、そして、多くの技術分野、特に食品および飲料産業で広範な用途が可能になるようなレスベラトロールの物理的形態を提供することが、本発明の目的である。ここで意外にも、これらの困難がカゼインとの複合体の形態でレスベラトロールを使用することによって解決され得ることが明らかとなった。
【0006】
したがって、本発明の主たる態様は、レスベラトロールのカゼインとの複合体に関する。
【0007】
用語「レスベラトロール」は、ここでは、最も広い意味で使用され、トランス型およびシス型のレスベラトロールそれ自身、それらの生理学的に許容される誘導体、代謝物および類似物を含む。好ましい一実施形態では、用語「レスベラトロール」は、一般式
【化1】


(式中、Aは炭素−炭素の単結合または二重結合を示し、二重結合はトランス型であってもシス型であってもよく、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は互いに独立して、水素、水酸基、エーテル化水酸基またはエステル化水酸基を示す)
に包含される化合物を含む。好ましくは、Aが二重結合(−CH=CH−)である化合物Iである。
【0008】
符号Aで示す炭素−炭素二重結合は、トランス型であってもシス型であってもよいが、上記式Iは、シス型/トランス型混合物もまた含むと理解される。しかしながら、Aがトランス型の炭素−炭素結合である式Iの化合物が好ましい。
【0009】
エーテル化またはエステル化水酸基は、1〜26個の炭素原子を有する、非置換または置換で、直鎖または分岐鎖のアルキル基から誘導されたものであってもよく、あるいは、1〜26個の炭素原子を有する、非置換または置換で、直鎖または分岐鎖の、脂肪族、アラリファティック(araliphatic)または芳香族カルボン酸から誘導されたものであってもよい。エーテル化水酸基は、さらに、グリコシド基であってもよく、エステル化水酸基は、さらに、グルクロニド基または硫酸基であってもよい。Aが−CH=CH−である式Iの化合物の例としては、レスベラトロール(R1、R3およびR5=水素、R2、R4およびR6=水酸基)、ピセアタノール(R3およびR5=水素、R1、R2、R4およびR6=水酸基)、およびラポンチゲニン(R5=水素、R1,R3、R4およびR6=水酸基、およびR2=メトキシ基)が挙げられる。Aが−CH−CH−である式Iの化合物の例としては、ジヒドロレスベラトロール(R1、R3およびR5=水素、R2、R4およびR6=水酸基)、ジヒドロピセアタノール(R3およびR5=水素、R1、R2、R4およびR6=水酸基)、およびトリスチン(R3およびR5=水素、R2、R4およびR6=水酸基、およびR1=メトキシ基)が挙げられる。これらの化合物はいずれもよく知られており、かつ、市販されているか、または当該技術分野で周知の方法で得ることができる。
【0010】
本発明の目的のためには、レスベラトロールは天然由来であってもよいし、合成由来であってもよい。いずれの場合もトランス異性体が多く、合成由来の場合は殆ど全てがトランス異性体である。
【0011】
レスベラトロールの代謝物には、例えば、ジヒドロレスベラトロール、ピセアタノール、ジヒドロピセアタノールおよびトリスチン(3−メチル−ジヒドロピセアタノール)がある。
【0012】
本発明のレスベラトロール成分は、古典的化学合成法、または、遺伝子工学、形質転換体などの微生物学的方法を用いて、合成または半合成により生成することができ、あるいは、天然源、例えばブドウの種、ピーナッツまたはオオイタドリの抽出物などから得られることを意味する、概ね濃縮かつ精製された形態の天然由来のものとすることもできる。さらに、レスベラトロールは、単独の活性化合物として使用してもよいし、先に定義したように2種以上の化合物の混合物として使用してもよい。
【0013】
用語「カゼイン」は、ここでは、カゼインと称する乳タンパク質の画分のあらゆる成分に関連する。それらは、当業者に知られており、サブグループとしてα−、β−、γ−、κ−およびλ−カゼインを含み、個々に得られるか、またはそれらの天然に存在するかもしくは合成して調製された混合物の形態で得られる。これらのサブグループの中にも、乳が由来する動物の種類や品種に応じて、多くの遺伝的変異体が存在する。本発明においては、ヒトを含むあらゆる種類の哺乳動物からの乳を、カゼイン源として使用することができる。好ましい供給源はウシ由来の乳である。カゼインタンパク質は、それらのアミノ酸配列、並びに、それらの二量体、三量体およびより大きいオリゴマーの形成のしやすさから区別されるが、それとは別にリン酸塩基および炭水化物基の量が異なっている。炭水化物基には、ガラクトース基、ガラクトサミン基およびN−アセチル−ノイラミン酸基がある。用語「カゼイン」は、ここでは、また、カゼインタンパク質の塩基との塩を含む。なかでもアルカリ金属(ナトリウム、カリウム)塩およびアルカリ土類金属(カルシウム)塩、並びに、アンモニウム塩が好ましい。通常は、ペプチド鎖が硫黄架橋によって結合している三量体またはより大きいオリゴマーとして産出するκ−カゼインは、カルシウムイオンの存在下で、天然に産生される濃度の乳に溶解する唯一の主要カゼイン成分である。さらに、κ−カゼインは、カルシウムイオンと共に沈殿するカゼインフラクションを、複合体を形成することにより、そうした沈殿から保護することができる。γ−カゼインは、乳のタンパク質分解酵素によるβ−カゼインの分解生成物であり、λ−カゼインは、インビトロでα−カゼインをプラスミン(アルカリ性のウシプロテイナーゼ)と共にインキュベートすることによって得られるα−カゼインのフラグメントを主に含有する。したがって、本発明に関連して使用されるとき、用語「カゼイン」は、完全な長鎖カゼインの、酵素による切断を含む加水分解によって得られる、カゼインのフラグメントまたは加水分解物もまた包含する。酵素による切断が、一般に、明確なフラグメントを生成する位置選択性切断であるのに対し、酸性またはアルカリ性条件での加水分解は、あまり明確ではない比較的短いペプチド鎖の混合物を生成する。加水分解度(DH)はかなり変化させることができ、1〜70%、好ましくは1〜10、15、20、25、30または35%の範囲の任意の値をとることができる。これは%で表された数のペプチド結合がそれぞれ切断されていることを意味する。十分にコントロールした加水分解条件下では、典型的な分子量分布を有するペプチドの混合物が得られる。
【0014】
非常に栄養豊富で、かつまた、アレルゲン含有率を低減した特殊調製粉乳中のタンパク質源として適しているカゼイン加水分解物の例は、デンマーク、Viby、Arla Foods IngredientsのPEPTIGEN(登録商標)IF−2050であり、これは、苦味が抑えられたプロファイルを有する短鎖ペプチドからなり、十分にコントロールした酵素分解により得られる。そのDHは22〜27であり、平均MW(ダルトン)は850〜1200(1500未満:81.7%、1500〜3500:17.2%、3500〜6000:1.1%(w/w))である。
【0015】
本発明の好ましい一実施態様では、天然に存在するカゼインとその加水分解物が使用される。
【0016】
本発明の実施において有用な上記の多様なカゼインは、市販されており、種々の商標で知られている。他方、カゼインは、よく知られた古典的方法にしたがい、スキムミルクを酸(例えば、HCl、HSO、HPO、乳酸など)により、温度範囲35〜50℃、pH4.2〜4.6で処理して沈殿させるか、乳酸産生微生物で発酵させるか、または、プロテイナーゼ(ペプシンまたはレニン)を加え、沈殿物を分離し、洗浄し、乾燥させることによって得ることができる。カゼインのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩(すなわちカゼイナート)は、酸性カゼイン溶液を水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液または水酸化カルシウム溶液でpH6.7に中和することによって得ることができる。市販されているカゼインのカリウム塩の例は、デンマーク、Viby、Arla Foods IngredientsのMIPRODAN(登録商標)55であり、これは、殺菌した新鮮なスキムミルクから、カゼインを酸により沈殿させ、直接中和し、スプレードライすることにより製造される。
【0017】
本発明のカゼイン複合体中のレスベラトロール:カゼインの重量比は、約0.1:99.9〜50:50の範囲、好ましくは1:98〜1:2の範囲であり、例えば、3:97、5:95または15:85とすることができる。
【0018】
本発明の別の態様は、水溶液、好ましくは濃縮形態の水溶液、または乾燥物質としての、上述のカゼイン複合体の製造方法である。この方法はそれ自体公知のやり方で実施され、好ましくはレスベラトロールの溶解度が非常に高い、水と混合可能な有機溶媒中、またはそのような溶媒と水との混合物中のレスベラトロールの溶液または分散液を、カゼイン水溶液と、所定の重量比で、適当な混合装置により、必要ならば加熱しつつ混合し、必要ならばそれにより得られた溶液を濃縮水溶液または乾燥粉末に転換することを含む。あるいは、レスベラトロールをカゼイン含有組成物に単に添加することによって、レスベラトロール−カゼイン複合体を生成させるようにしてもよい。用語「濃縮溶液」は、レスベラトロールの濃度が、複合体の形態をとらない場合より高いことを意味する。水と混合可能な有機溶媒は、モノ−、ジ−または多価アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ−プロパノール、ブタノールなど、またはグリセロール)、アセトンなどのケトン類、または、さらにジメチルホルムアルデヒドなどの極性溶媒である。生理学的に許容される有機溶媒、並びに、食品および飼料技術の分野で使用が認められている溶媒が好ましい。レスベラトロール溶液は、攪拌しながら徐々にカゼイン水溶液に加えることが好ましい。
【0019】
有機溶媒を除去し、残りの水溶液を、当業者に知られた方法、例えば気化乃至蒸発により濃縮することができ、その後、必要ならば、濃縮液を、よく知られた乾燥法、例えば対流乾燥、接触乾燥、凍結乾燥またはスプレードライなどにより、適当な装置を用い、必要ならば同時にまたは後でフラグメント化、例えば粉砕して、乾燥粉末に変換する。分散粉末粒子の複合体の場合、平均粒径乃至平均直径は5〜2000μmの範囲にある。分散液、特に水性分散液では、一次粒径、すなわち凝集していない粒径は、通常、50〜3000nmの範囲、好ましくは250nm未満、例えば100〜250nmまたは50〜250nmの範囲にある。錠剤の用途では、好ましい粒径は100〜850μmである。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、レスベラトロールをカゼイン複合体の形態で水性環境に加えるか、または非複合化化合物としてカゼイン含有環境に加えることによって、あるいは、カゼインをレスベラトロール含有環境に加えることによって、レスベラトロールの水性環境における溶解性/分散性および安定性を高める方法に関する。水性環境は、水溶液であってもよいし、含水組成物であってもよい。カゼイン含有環境は、カゼインを含有するか、またはカゼインで強化された製品を含む。
【0021】
本発明のレスベラトロールのカゼイン複合体は、哺乳類、特にヒトの全身的な身体状態および/または精神状態を改善する効力など、文献に記載された様々な有益な活性を有する薬剤としてのレスベラトロールですでに知られているものと同じ方法で、また同じ適用形態および同じ処方で使用することができる。
【0022】
したがって、本発明は、また、医薬品および化粧品の調製物、並びに、飲料などの食品および飼料用サプリメントにおいて、活性薬剤として使用するための、固体および分散/溶解した形態、例えば、自由流動粉体または分散液/溶液、好ましくは水性分散液/溶液のような形態を持つレスベラトロールのカゼイン複合体を含む組成物に関し、また、それらの複合体を、単一活性成分として、または、1種以上の他の生理学的活性成分との組み合わせで含有する、医薬品および化粧品の調製物、食品および飼料用サプリメント、並びに、食品および飼料それ自身に関する。
【0023】
好ましい一態様では、本発明は、本発明のレスベラトロールカゼイン複合体を、安定な溶液の形態、すなわち、リング形成(ringing)または沈殿のない形態、好ましくは光学的に透明な溶液の形態で、栄養を補助する量を含有する飲料に関する。そのような量は、20mg/l〜2000mg/lの範囲にある。
【0024】
用語「飲料」には、濃縮された、または、希釈された形態の、天然または人工のミネラルウォーター、ソフトドリンク、ミネラルドリンク、スポーツドリンク、フルーツジュース、フルーツポンチ、フルーツネクターなど、飲むことが可能なあらゆる種類の水が含まれる。飲料は、全て人工または天然由来である、二酸化炭素、フルーツおよびフルーツフレーバー、水溶性および油溶性ビタミン、並びに、栄養上重要なミネラルおよび微量元素を含んでもよい。一例として、フルーツジュースのフルーツおよびフルーツフレーバーとしては、次のもの:ブドウ、ナシ、パッションフルーツ、パイナップル、バナナ、アプリコット、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、リンゴ、コーラノキ、クランベリー、トマト、マンゴー、パパイヤ、タンジェリン、ネクタリン、プラム、チェリー、ラズベリーおよびニンジンが挙げられる。チョコレートおよび他のフルーツ以外のフレーバーも含めて、これらのフルーツおよびフレーバーの任意の組み合わせが可能である。いかなる種類の乳も、用語「飲料」に含まれ、本発明のレスベラトロール複合体により強化することができる。
【0025】
本発明のニュートラシューティカル組成物、すなわち、活性成分としてレスベラトロールをベースとする、生薬および化粧品の処方物、並びに、食品、飼料および飲料用のサプリメントは、生理学的に許容される受容体(recipient)を使用して、この分野で知られた方法により製造することができる。本発明のニュートラシューティカル組成物は、成人(体重約70kg)に約0.5mg/日〜約2000mg/日、好ましくは約5mg/日〜約500mg/日を十分に投与できるだけの量のレスベラトロールを含有する。
【0026】
このように、ニュートラシューティカル組成物が食品または飲料の場合、それに含まれるレスベラトロールの量は、1食当たり0.2mg〜約500mgの範囲が適切である。ニュートラシューティカル組成物が、医薬品製剤の場合、そうした製剤は、1固形投与単位当たり、例えば1カプセルまたは1錠当たり、約0.5mg〜約500mg、または液体製剤の1日用量当たり約0.5mg〜1日用量当たり約2000mgを含有することができる。
【0027】
以下の実施例で本発明をより詳細に説明する。
【0028】
[実施例1]
溶液A:水分含有率7.54%のカゼインカリウム(Miprodan(登録商標)55、Arla Foods、デンマーク)27.1gを、脱イオン水181.2gに溶解した。
【0029】
溶液B:レスベラトロール(DSM Nutritional Products、スイス)1.5gを、40℃のエタノール70gに溶解し、この溶液に脱イオン水35gを加えた。
【0030】
208.3gの溶液Aを、106.5gの溶液Bに、40℃で攪拌しながら徐々に加えた。その後、回転蒸発によりエタノールを除去した。残った水性混合物(約208g)を、入り口温度209℃および出口温度105℃のスプレードライヤー(Niro Mobile Minor 2000、コペンハーゲン(Copenhagen)、デンマーク)により乾燥させ、レスベラトロール含有率約5.1%(UV分析に基づく)の粉体を得た。この粉体1.035gを脱イオン水に分散させ、500mlの分散液を調製したところ、3日後で平均粒径127〜130nm、濁度44.8NTUおよびレスベラトロール濃度119ppmであった。
【0031】
[実施例2]
溶液A:水分含有率6.44%のカゼインカリウム(Miprodan(登録商標)55、Arla Foods、デンマーク)34.4gを、脱イオン水235.6gに溶解した。
【0032】
溶液B:レスベラトロール(DSM Nutritional Products、スイス)3.68gを、室温でエタノール156gに溶解した。
【0033】
159.7gの溶液Bを攪拌しながら270gの溶液Aに加えた。この混合物を回転蒸発器の丸底フラスコに入れ、55℃の水浴中で真空引きせずに1時間回転させた。その後、混合物中のエタノールを、回転蒸発により、真空下で除去した。残った水性混合物(約250g)を、入り口温度199℃および出口温度約92℃のスプレードライヤー(Niro Mobile Minor 2000、コペンハーゲン、デンマーク)により乾燥させ、レスベラトロール含有率約10%の粉体を得た。この粉体0.21gを200mlの水に分散させた。殺菌し、室温で暗所に4週間保存した後、サンプルを分析したところ、レスベラトロール濃度は89.2ppmであった。
【0034】
[実施例3]
溶液A:水分含有率6.44%のカゼインカリウム(Miprodan(登録商標)55、Arla Foods、コペンハーゲン、デンマーク)34.4gを、脱イオン水235.6gに溶解した。
【0035】
溶液B:レスベラトロール(DSM Nutritional Products、スイス)3.68gを、室温でエタノール156gに溶解した。
【0036】
159.7gの溶液Bを攪拌しながら270gの溶液Aに徐々に加えた。この混合物を回転蒸発器の丸底フラスコに入れ、50℃の水浴中で真空引きせずに1時間回転させた。その後、混合物中のエタノールと大部分の水を、回転蒸発により、真空下で除去して、レスベラトロールを約6.05%含有するゴム状物質を得た。この物質1.050gを50℃の脱イオン水に分散させ、1000mlの分散液を調製した。室温まで冷却した後、0.1NのHClによりpHを6.5に調節した。その後、混合物をガラス瓶に入れ、70℃で20分間殺菌した。このサンプルを、室温で暗所に6週間保存した。粒径、濁度およびレスベラトロール濃度(UVにより)を測定したところ、それぞれ215nm、25.6NTUおよび63.3ppmであった。
【0037】
[実施例4]
溶液A:水分含有率6.44%のカゼインカリウム(Miprodan(登録商標)55、Arla Foods、コペンハーゲン、デンマーク)15.3gを、脱イオン水236.7gに溶解した。
【0038】
溶液B:レスベラトロール(DSM Nutritional Products、スイス)3.68gを、室温でエタノール156gに溶解した。
【0039】
159.7gの溶液Bを攪拌しながら252gの溶液Aに徐々に加えた。この混合物を回転蒸発器の丸底フラスコに入れ、50℃の水浴中で真空引きせずに1時間回転させた。その後、混合物中のエタノールと水を、回転蒸発により50℃で、真空下で除去した。湿度10%の箱内で、残留物をさらに乾燥させ、その後、真空オーブン中で絶乾状態になるまで乾燥させた後、粉砕して粉末にした。この粉末1.050gを200mlの脱イオン水に分散させ、その後、混合物を70℃で20分間殺菌した。この分散液をガラス瓶に入れ、暗所に保存した。1日後、粒径、濁度およびレスベラトロール濃度(UVにより)を測定したところ、それぞれ259nm、11.4NTUおよび100.6ppmであった。
【0040】
[実施例5]
溶液A:水分含有率6.44%のカゼインカリウム(Miprodan(登録商標)55、Arla Foods、コペンハーゲン、デンマーク)11.55gを、脱イオン水278gに溶解した。
【0041】
溶液B:レスベラトロール(DSM Nutritional Products、スイス)3.68gを、室温でエタノール156gに溶解した。
【0042】
159.7gの溶液Bを攪拌しながら289.6gの溶液Aに徐々に加えた。得られた混合物を回転蒸発器の丸底フラスコに入れ、50℃の水浴中で真空引きせずに1時間回転させた。その後、混合物から、エタノールと水を、回転蒸発により50℃で、真空下(15mbar)で除去した。残留物を真空オーブン中、40℃で、絶乾状態になるまでさらに乾燥させた後、粉砕して粉末にした。
【0043】
この粉末0.263gを70℃の脱イオン水1000mlに分散させた。200mlのサンプルをガラス瓶に入れ、70℃で20分間加熱し(完全には分散していない)、完全に分散するまで、再度、90℃で20分間加熱した。粒径、濁度およびレスベラトロール濃度(UVにより)を測定したところ、それぞれ244.9nm、13.8NTUおよび106.5ppmであった。
【0044】
[実施例6]
溶液A:水分含有率6.44%のカゼインカリウム(Miprodan(登録商標)55、Arla Foods、コペンハーゲン、デンマーク)30.2gを、脱イオン水250gに溶解した。
【0045】
159.7gの溶液Aをレスベラトロール1.84gと混合した。この混合物を丸底フラスコ中に入れ、水浴中で1.5時間、75℃で加熱し、その物質をビーカーに移し、マグネティックスターラーで攪拌しながら90〜95℃の水浴中で2時間加熱した。このペーストを真空オーブン中、40℃で終夜乾燥させた。この粉末は、レスベラトロールを約4.82%含有していた。その2.178gを脱イオン水1000mlに分散させ、pHを6.5に調節した後、75℃で20分間殺菌した。粒径は213nm、濁度は33.3NTU、そして、レスベラトロール濃度は107ppmであった。
【0046】
[実施例7]
溶液A:水分含有率6.71%のカゼイン加水分解物(Peptigen(登録商標)IF−2050、Arla Foods、デンマーク)60.6gを、脱イオン水235gに溶解した。
【0047】
溶液B:レスベラトロール(DSM Nutritional Products、スイス)3.68gを、エタノール156gに溶解した。
【0048】
159.68gの溶液Bを攪拌しながら295.6gの溶液Aに徐々に加えた。この混合物を丸底フラスコ中に移し、50℃の水浴中で真空引きせずに1時間、回転蒸発器内で回転させ、その後、真空下で乾燥させた。乾燥物質を粉砕して粉末にした。
【0049】
この粉末(20g)を脱イオン水(180g、pH6.8)に分散させ、15分間攪拌した。この分散液32gを脱イオン水2268gに加え、希釈した重炭酸ナトリウム溶液を用いて6.2のpHを6.8に調節した。この分散液を95℃の水浴中で20分間加熱した。室温まで冷却した後、レスベラトロールを70ppm含有する透明なレスベラトロール分散液を得た。25℃で1週間保存した後も、この溶液は透明であり、依然として70ppmのレスベラトロールを含有していた。
【0050】
[実施例8]
溶液A:水分含有率6.44%のカゼインカリウム(Miprodan(登録商標)55、Arla Foods、コペンハーゲン、デンマーク)60.4gを、脱イオン水500gに溶解した。
【0051】
溶液B:レスベラトロール(DSM Nutritional Products、スイス)3.68gを、エタノール156gに溶解した。
【0052】
159.68gの溶液Bを攪拌しながら溶液A(560.4g)に徐々に加えた。この混合物を丸底フラスコ中に移し、50℃の水浴中で真空引きせずに1時間、回転蒸発器内で回転させて加熱し、その後、真空下で乾燥させた。この乾燥物質を、真空オーブン中、40℃で終夜、さらに乾燥させた。オーブン乾燥した物質を粉砕して粉末にした。
【0053】
この粉末(2.5g)を攪拌しながら脱イオン水(47.5g)に分散させた。分散液を3000rpmで5分間、遠心分離し(Sigma Centrifuge 6−10、Sigma Laborzentrifugen GmbH、ドイツ)、非分散物質を除去した。上澄み液を凍結乾燥させ、1.7gの粉末を得た。この粉末(1g)を脱イオン水(9g)に懸濁させ、10%の均質な分散液を得た。この分散液のサンプルを試験管に採り、室温で3時間、その後、5℃で1日、保存した。試験管の上部より少量のサンプルを採取し、その後、混合した後のサンプルを採取した。試験管の上部から採取したサンプルと、混合後に採取したサンプルのレスベラトロール含有率は、それぞれ0.422%および0.425%であった。この結果により分散の安定性が示された。この高濃度の分散液は、医薬品および化粧品、食品および飼料の分野で、特に飲料の分野で、各種用途に便利良く使用することができる。
【0054】
この実施例は、レスベラトロール複合体が非複合化レスベラトロール(純レスベラトロール)より優れている利点を示している。非複合化レスベラトロールが0.005%を超える分散液(類似の分散条件でもはるかに低くなる可能性がある)では、レスベラトロールの沈殿が生じるであろう。
【0055】
[実施例9]
レスベラトロール−カゼイン複合体として、実施例8に記載のオーブン乾燥した物質(非分散物質が遠心分離により除去されていない)を使用した。比較のために、結晶レスベラトロールを含有させた。
【0056】
複合化したレスベラトロールおよび結晶レスベラトロールを、pH6.8または3.0の脱イオン水に分散させ、最終目標分散濃度60および80ppmを得た。希HClまたはNaHCOを使用してpHを調節し、所望のpHとした。このサンプルを80℃になるまで水浴中で加熱し、その後、80℃に1分間保持した。このサンプルを暗所に25℃および5℃で保存した。保存中、いくつかのサンプルで、レスベラトロールが再結晶化し、沈殿を生じた。UV法により上澄み中のレスベラトロール濃度を測定した。結果を下記に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
[実施例10]
[10%ジュース含有飲料の調製]
[a)10%レスベラトロール複合体原液]
レスベラトロール複合体(6%レスベラトロール)10gを脱イオン水90gに加え、攪拌する。
【0059】
[b)ジュース化合物]
脱イオン水328.4gを、濃縮オレンジジュース(65°ブリックス)483.3gおよび濃縮レモンジュース(45°ブリックス)173.3gに加える。静かに攪拌し、濃縮ジュースを水和させる。油性オレンジフレーバー5gとβ−カロチン(10%CWS、DSM)10gを10%原液のまま加え、ロータステータ型ホモジナイザーで予備乳化する。高圧ホモジナイザーでジュース化合物を均質化する。
【0060】
[c)飲料の調製]
安息香酸ナトリウム0.2gを脱イオン水100mlに溶解させる。その後、シュガーシロップ(64°ブリックス)156.2g、アスコルビン酸微粉末0.4g、クエン酸(50%w/w溶液)5g、ペクチン溶液(2%w/w)10g、ジュース化合物30gおよび10%レスベラトロール複合体原液13.3gを、攪拌しながら順に加える。その後、このシロップに水道水または炭酸水を加えて1リットルの飲料にする。
【0061】
[実施例11]
[10%ジュース含有飲料の調製]
[a)10%レスベラトロール複合体原液]
レスベラトロール複合体(6%レスベラトロール)50gを脱イオン水450gに加え、攪拌する。
【0062】
[b)ジュース化合物]
脱イオン水328.4gを、濃縮オレンジジュース(65°ブリックス)483.3gおよび濃縮レモンジュース(45°ブリックス)173.3gに加える。静かに攪拌し、濃縮ジュースを水和させる。油性オレンジフレーバー5gとβ−カロチン(10%CWS、DSMから)を10%原液のまま加え、ロータステータ型ホモジナイザー中で予備乳化する。10%レスベラトロール複合体原液444.4gを加える。高圧ホモジナイザーでジュース化合物を均質化する。
【0063】
[c)飲料の調製]
安息香酸ナトリウム0.2gを脱イオン水100mlに溶解させる。その後、シュガーシロップ(64°ブリックス)156.2g、アスコルビン酸微粉末0.4g、水性クエン酸(50%w/w溶液)5g、ペクチン溶液(2%w/w)10gおよびジュース化合物30gを、攪拌しながら順次加える。その後、このシロップに水道水または炭酸水を加えて1リットルの飲料にする。
【0064】
[実施例12]
[ニアーウォータードリンクの調製]
安息香酸ナトリウム0.2gを脱イオン水100mlに溶解させる。アスコルビン酸0.4g、蔗糖7.2g、クエン酸(50%w/w水溶液)2g、水溶性ジンジャーエールフレーバー0.1gおよび水溶性レモンフレーバー0.2gを加えて攪拌する。10%レスベラトロール原液(実施例10aを参照)13.3gを加え、攪拌する。水道水もしくは炭酸水またはミネラルウォーターを加えて1リットルの飲料にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レスベラトロールおよびカゼインを含む複合体。
【請求項2】
カゼインが、カゼインのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩もしくはアンモニウム塩、またはカゼインの加水分解物である請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
レスベラトロール:カゼイン成分の重量比が0.1:99.9〜50:50である請求項1または2に記載の複合体。
【請求項4】
平均粒径が5〜2000μmの分散粉末粒子の形態を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項5】
食料、飼料用サプリメントとしての、または、医薬品もしくは化粧品調製物の成分としての請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項6】
分散液の形態を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項7】
一次粒径が50〜3000nmの範囲にある請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体を含む組成物。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合体を含有する食品または飼料。
【請求項10】
請求項1〜4および6〜7のいずれか一項に記載の複合体を含有する飲料。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合体と生理学的に許容される担体とを含有する医薬品または化粧品調製物。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合体または組成物の製造方法であって、レスベラトロール、または好ましくは、レスベラトロールの溶解度が非常に高い、水と混合可能な有機溶媒中、または、そのような溶媒と水との混合物中のレスベラトロールの溶液もしくは分散液を、カゼイン水溶液と混合し、必要ならばそれにより得られた溶液を濃縮溶液または乾燥粉末へと転換するか、あるいは、レスベラトロールをカゼイン含有組成物に単に添加することを含む方法。
【請求項13】
レスベラトロールをカゼイン複合体の形態で水性環境に加えるか、または非複合化化合物としてカゼイン含有環境に加えることによって、あるいは、カゼインをレスベラトロール含有環境に加えることによって、レスベラトロールの水性環境における溶解性/分散性および安定性を高める方法。
【請求項14】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合体の、食品または飼料用サプリメントとしての使用。
【請求項15】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合体の、医薬活性剤としての、または、化粧品調製物における使用。
【請求項16】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合体の、哺乳動物の身体または精神状態を改善させるための使用。
【請求項17】
本明細書中、特に実施例に言及して記載された本発明。

【公表番号】特表2010−500303(P2010−500303A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523181(P2009−523181)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006821
【国際公開番号】WO2008/017415
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】