説明

カチオン性粒子によるdsRNAのベクター化、および局所使用

【課題】カチオン性粒子によるdsRNAのベクター化、および局所使用を提供する。
【解決手段】界面活性剤ミセル、ブロックまたは非ブロックポリマーミセル、カチオン性リポソームおよびニオソーム、カチオン性オレオソームおよびカチオン性ナノエマルジョン、ならびにカチオン性の有機または無機粒子およびナノカプセルから選択されるカチオン性粒子によるdsRNAのベクター化に関し、また、少なくとも1のdsRNAおよび少なくとも1のカチオン性粒子の結合を含む皮膚、粘膜、または眼に対する局所用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤ミセル、ブロックまたは非ブロックポリマーミセル、カチオン性リポソームおよびニオソーム、カチオン性オレオソームおよびカチオン性ナノエマルジョン、ならびにカチオン性の有機または無機粒子およびナノカプセルから選択される、カチオン性粒子によるdsRNAのベクター化に関する。また、少なくとも1のdsRNAおよび少なくとも1のカチオン性粒子の結合を含む皮膚、粘膜または眼に対する局所用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケアまたはヘアケアなどの化粧品分野だけでなく、皮膚および医薬分野における特異的な生物活性などの特異的な活性を有する物質の使用に関する研究が行われている。
【0003】
近年、dsRNA、特にsiRNA(12〜40ヌクレオチドを含む)の使用により、標的タンパク質の合成阻害において、特異的活性を得ることが可能にされてきた。
【0004】
生じる分子構造は、12〜40個のヌクレオチドからなる二本鎖RNA断片を含む。標的mRNAの分解は、RISC(RNA誘導型サイレンシング複合体)として知られている複合体の活性化により達成され、RISCはdsRNAのアンチセンス鎖のmRNAへの固定化により作用する。これらの二本鎖RNAオリゴヌクレオチドは、dsRNAまたはsiRNA(「低分子干渉」RNA)としても知られている。Tuschl T.、Chem.Biochem.2001、2、239〜245頁;Nykanen A et al.、Cell 2001、107、309〜321頁;Dorsett Y.、Nature、April 2004、Vol.3、318〜329頁;およびDownward,J.、BMJ 2004、328、1245〜1248頁参照。
【0005】
しかしながら、分子量約15から17kDであってもよいこれらのsiRNAの局所適用は、浸透性の問題を生じさせるので、これを最適化しなければならない。実際に、選択されたsiRNAに対して特異的な活性を有効にするには、標的細胞の(ケラチノサイトまたはメラノサイトなど)細胞質まで浸透させる必要がある。あいにく、皮膚を保護する機能を有する部位である角質層は浸透し難い。したがって、siRNAの皮膚への浸透を可能にする溶液が、依然として求められている。
【0006】
予期せぬことに、本出願人は、siRNAとカチオン性粒子との結合により、それらが皮膚などの組織の標的細胞に浸透する際に非常に有意な改善効果を得ることが可能となることを見出した。浸透するとすぐに、RISC上に固定されることによりsiRNAは活性となる。浸透は、siRNA上に固定される蛍光マーカーにより評価することができ、その活性は、定量的PCRまたは標的メッセンジャーに相当するタンパク質をアッセイすることによって標的メッセンジャーを定量することにより、その活性を評価し得る。本発明のカチオン性粒子は、界面活性剤ミセル、ブロックまたは非ブロックポリマーミセル、カチオン性のリポソームおよびニオソーム、カチオン性オレオソーム、カチオン性ナノエマルジョン、ならびにカチオン性の有機または無機粒子およびナノカプセルであってもよい。一般的に、本発明の粒子の平均粒径は、1マイクロメートル未満である必要がある。
【0007】
国際出願公開WO03/101376号は、少なくとも1の二本鎖RNAオリゴヌクレオチドを含む化粧用製剤について記載している。この出願では、オリゴヌクレオチドは、必ずPEIまたはキトサンなどのカチオン性ポリマーと複合化する必要があり、その後、このオリゴヌクレオチドとカチオン性ポリマーの複合体は、リポソームまたはニオソーム中に封入することができ、かつ/または、リポソーム、ニオソーム、オレオソーム、ナノ粒子およびナノカプセルなどの粒子表面で吸着され得る。
【0008】
したがって、この特許文献によれば、dsRNAは、ある種の粒子と結合させる前に、カチオン性ポリマーと必ず複合化する必要がある。さらに、界面活性剤ミセルは、siRNAのベクター化に効果的な薬液として記載されていない。
【0009】
論文Intercellular adhesion molecule-1 suppression in skin by topical delivery of anti-sense oligonucleotides、Mehta et al.(J.Invest.Dermatol.115、805〜812、2000)中で、著者らは、25%の界面活性剤を含むエマルジョン(10%のステアリン酸グリセリルおよび15%の40 OEステアレート)中で一本鎖RNAを搬送する。この論文はsiRNAに言及していないという事実に加え、提案されている薬液は、良好な皮膚耐性と両立しない。実際に、25%の界面活性剤は皮膚の保護機能を破壊する効果を有するので、外部要素に対する浸透性を増加させ、劇的にその脱水を促進させるであろう。つまり、本発明により想定される応用分野で求められていない結果となる。
【0010】
刊行物Lipidic carriers of siRNA:differences in the formulation,cell uptake and delivery with plasmid DNA、Spagnou et al.(Biochemistry、43、13348〜56、2004)中では、著者らは、コレステリルオキシカルボニル-3,7-ジアザノン-1,9-ジアミン(CDAN)で「カチオン化」されたリポフェクタミン2000またはDOPEリポソームなどのカチオン性リポソームを用いている。安全性を理由に、リポフェクタミンはヒト皮膚で用いることはできないため、より採用しやすく、また、製品を市場に導入するのに経済的に妥当性のある溶液を探す試みがなされるであろう。
【0011】
他の出版物(Yano Junichi et al.、Clinical Cancer Research、2004、Spagnou et al.、Biochemistry,2004、および、Ma Zheng et al.、Biochemical and Biophysical Research Communications、2004)は、siRNAを、非常に酸化に対して敏感にさせる不飽和結合を含むオレイル鎖脂質と、リン脂質とからなるカチオン性小胞と結合させることを提案しており、これらの小胞は、経時的にそれほど安定でないので、調製後直ちに使用することが意図されている。
【0012】
国際特許出願WO2004/046354号には、皮膚機能異常のために、好ましくは、真皮レベルで、siRNAを使用することが記載されている。PITならびにW/O、O/WおよびW/O/Wエマルジョンなどの記載されている組成物はすべて非イオン性である。この特許出願では、皮膚構造にsiRNAが浸透するのを促進させるためには、カチオン性粒子中のカチオン性界面活性剤を用いることが主要かつ重要な関心事であるという観点から評価がなされていない。さらに、国際特許出願WO96/28132号に記載のように、PITはμmサイズ未満であってもよいが、必ず非イオン性でなければならない。
【0013】
国際特許出願WO03/106636号は、ポリヌクレオチドと塩化セチルトリアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤とを結合させ、複合体を形成することについて記載している。その後、35から50℃の温度でのインキュベーションステップによりこの複合体を安定化させる必要がある。
【0014】
第2ステップでは、混合物を脱水し、それから粉末を得ることが可能であり、その後、選択された溶媒で希釈し、使用(注射)されるであろう。複合体が形成されると、両親媒性脂質を追加することにより安定化させることも可能であり、これは非イオン性界面活性剤であることができる。その後、この三元結合体を脱水して粉末を得た後、適当な水溶液中に希釈される。
【0015】
国際特許出願WO03/106636号には、複合体がCMC(臨界ミセル濃度)未満で形成される可能性があるので、ポリヌクレオチドおよびカチオン性界面活性剤の複合体を形成するためには、カチオン性界面活性剤の濃度がCMCより高い必要があるということは、明記していない。ミセルを形成可能な他の両親媒性化合物の追加が想定されているのは、この複合体が形成されてすぐのときのみである。このように、両親媒性ミセルへのポリヌクレオチドおよびカチオン性界面活性剤の複合体の組み込みが達成される。したがって、カチオン性粒子をポリヌクレオチドと結合させることに関する問題は、この文献では言及されていない。
【特許文献1】国際出願WO03/101376号
【特許文献2】WO2004/046354号
【特許文献3】WO96/28132号
【特許文献4】WO03/106636号
【特許文献5】WO04/035013号
【特許文献6】欧州特許出願第0705593号
【特許文献7】欧州特許出願第0728460号
【特許文献8】欧州特許出願第0879589号
【特許文献9】欧州特許出願第1010413号
【特許文献10】欧州特許出願第1010414号
【特許文献11】欧州特許出願第1010416号
【特許文献12】欧州特許出願第1013338号
【特許文献13】欧州特許出願第1016453号
【特許文献14】欧州特許出願第1018363号
【特許文献15】欧州特許出願第1025898号
【特許文献16】欧州特許出願第1120102号
【特許文献17】米国特許出願第5364633号
【特許文献18】米国特許出願第5411744号
【特許文献19】欧州特許出願第705593号
【特許文献20】欧州特許出願第0447318号
【特許文献21】欧州特許出願第0557489号
【特許文献22】欧州特許出願第0780115号
【特許文献23】欧州特許出願第1025901号
【特許文献24】欧州特許出願第1029587号
【特許文献25】欧州特許出願第1034839号
【特許文献26】欧州特許出願第1414390号
【特許文献27】フランス特許出願第2830776号
【特許文献28】欧州特許出願第1342471号
【特許文献29】フランス特許出願第2848879号
【特許文献30】フランス特許出願第04/50057号
【特許文献31】米国特許出願第4874554号
【特許文献32】米国特許出願第4137180号
【特許文献33】WO00/44895号
【特許文献34】WO01/36646号
【特許文献35】WO99/32619号
【特許文献36】WO01/29058号
【特許文献37】WO00/44914号
【特許文献38】米国特許出願第2004014956号
【特許文献39】米国特許出願第2004054155号
【特許文献40】WO01/75164号
【特許文献41】米国特許出願第20030088087号
【非特許文献1】Tuschl T.、Chem.Biochem.2001、2、239〜245頁
【非特許文献2】Nykanen A et al.、Cell 2001、107、309〜321頁
【非特許文献3】Dorsett Y.、Nature、April 2004、Vol.3、318〜329頁
【非特許文献4】Downward,J.、BMJ 2004、328、1245〜1248頁
【非特許文献5】「Intercellular adhesion molecule-1 suppression in skin by topical delivery of anti-sense oligonucleotides」、Mehta et al.(J.Invest.Dermatol.115、805〜812、2000)
【非特許文献6】「Lipidic carriers of siRNA:differences in the formulation,cell uptake and delivery with plasmid DNA」、Spagnou et al.(Biochemistry、43、13348〜56、2004)
【非特許文献7】Yano Junichi et al.、Clinical Cancer Research、2004、Spagnou et al.、Biochemistry,2004
【非特許文献8】Ma Zheng et al.、Biochemical and Biophysical Research Communications、2004
【非特許文献9】1998年および続編のMcCutcheon's「Emulsifiers and Detergents」
【非特許文献10】Sambrook et al.、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第2版(1989)
【非特許文献11】DNA cloning、volume I and II、D.N.Glover(1985年版)
【非特許文献12】Oliginucleotide Synthesis、M.J.Gaits(1984年版)
【非特許文献13】Nucleic Acid Hybridation、B.D.HamesおよびS.J.Higgins(1984年版)
【非特許文献14】Transcription and Translation、B.D.HamesおよびS.J.Higgins(1984年版)
【非特許文献15】Animal Cell Culture、R.I.Freshney(1986年版)
【非特許文献16】Immobilised Cells and Enzymes、IRL Press(1986)
【非特許文献17】B.Pertal、A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)
【非特許文献18】Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells、J.H.MillerおよびM.P.Calos、Cold Spring Harbor Laboratory(1987年版)
【非特許文献19】Methods in Enzymology、vol.154、WuおよびGrossman、ならびに、155、Wu,MayerおよびWalker(1987)
【非特許文献20】Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology、Academic Press、London、Scopes(1987)
【非特許文献21】Protein Purification:Principle and Practice、第2版、Springer-Verlag、N.-Y.
【非特許文献22】Handbook of Experimental Immunology、vol.I-IV、C.D.WeirおよびC.C.Blackwell(1986)
【非特許文献23】Asselineau D.et al.、Exp Cell Res 1985 Aug;159(2):536〜539頁
【非特許文献24】Lenoir MC et al.、Dev Biol 1988 Dec;130(2):610〜20頁
【非特許文献25】Regnier M.et al.、J Invest Dermatol 2000 Jan;114(1):220〜220頁
【非特許文献26】Regnier M;et al.、J Invest Dermatol 1997 Oct;109(4):510〜2頁
【非特許文献27】Regnier M.et al.、In Vitro Cell Dev Biol 1988 Jul;24(7):625〜32頁
【非特許文献28】Cohen C.et al.、J Invest Dermatol 1995 Jan;104(1):159〜159頁
【非特許文献29】Tinois E.et al.、Exp Cell Res 1991 Apr;193(2):310〜319頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の目的は第1に、少なくとも1の二本鎖RNAオリゴヌクレオチドを含む局所または点眼用組成物であって、二本鎖RNAオリゴヌクレオチドが界面活性剤ミセル、特に非イオン性の両親媒性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤のミセル、ブロックポリマーミセル、特にカチオン性の両親媒性ブロックポリマーのミセル、非イオン性の両親媒性ブロックポリマーのミセルおよびカチオン性の両親媒性ブロックポリマーのミセル、および非イオン性の両親媒性ブロックポリマーおよびカチオン性界面活性剤のミセル、非イオン性およびカチオン性界面活性剤のリポソーム、ニオソーム、オレオソーム、ナノエマルジョン粒子、ナノカプセル、有機粒子または無機粒子から選択され、10から80mVのゼータ電位で、粒径1μm以下の少なくとも1のカチオン性粒子と結合していることを特徴とする組成物に関する。
【0017】
局所用組成物は、身体の表面、すなわち、皮膚、毛髪、爪、歯、粘膜および眼に適用するのに好適な組成物であると解される。
【0018】
本発明は、カチオン性粒子と、粒子の表面に付着するであろう少なくとも1のdsRNAとの結合体に関するものであり、媒体として作用するカチオン性粒子は、化粧料、皮膚、および/または眼科用として、皮膚構造、および、皮膚、粘膜、さらには眼の標的細胞に結合体を浸透させることを可能にする。
【0019】
本発明のカチオン性粒子は、1μm以下、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは300nm以下の粒径を有する粒子であり、これは例えば、Brookhaven Co.製のBI90プラス型のレーザー粒度計で測定することができ、また、Coultronics Co.製のDELSA 440型ゼータメーターで測定可能なゼータ電位が10から80mVである。
【0020】
以下に、本発明で用いることが可能なカチオン性粒子の大まかなリストを提供する。
【0021】
[界面活性剤ミセル]
これは、両親媒性分子が、特定の臨界温度CMCを超えて、水または油に溶解されたときに自発的に形成する凝集体である。
【0022】
本発明の範囲で使用することができるミセルは、少なくとも1のカチオン性界面活性剤から構成されている。このカチオン性界面活性剤は、1以上の非イオン性両親媒性界面活性剤と結合されることができる。
【0023】
当業者は、1998年および続編のMcCutcheon's「Emulsifiers and Detergents」中の非イオン性およびカチオン性の界面活性剤を有利に選択するであろう。非限定的例示として、本発明の範囲で使用することができるカチオン性界面活性剤を以下に列挙する。
【0024】
限定するものではないが、使用可能な非イオン性界面活性剤は、POE、グリセロールおよびポリグリセロール、オキシエチレン基を有するかまたは有しないソルビタン、スクロース、オキシエチレン基を有するかまたは有しないグルコース、マルトース、ならびに、POP-POEのアルキルおよびポリアルキル(C6〜C30、飽和または不飽和、分枝または直鎖状)エステルまたはエーテルがある。
【0025】
非イオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との混合物の場合、各重量比は99/1から1/99であろう。
【0026】
ミセルを形成する界面活性剤の割合は、そのCMCに依存するであろう。しかし、本発明の範囲では、ミセル界面活性剤の濃度は、組成物の全重量に対して、0.1から10重量%の間であり、好ましくは0.2から5重量%の間であろう。
【0027】
[ブロックポリマーミセル]
両親媒性ブロックポリマーのミセルは、国際特許出願WO04/035013号に記載される方法で調製することができる。
【0028】
本発明のdsRNAと結合したミセルの調製に有用なブロックコポリマーは、特に、両親媒性ブロックポリマーであり、好ましくは、非イオン性の、ジブロックまたはトリブロックタイプであり、これらは水と接触するとすぐにミセルを形成し得る。特に、ジブロック型(A-B)またはトリブロック型(A-B-A)のもので、ここでAは非イオン性親水性ポリマーブロックに相当し、Bは疎水性ポリマーブロックに相当する。ポリマーの分子量は、1000から100,000の間であってもよく、A/B割合は、1/100から50/1の間であってもよい。
【0029】
非イオン性親水性ポリマーブロックは、エチレンポリオキシド(POE)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリアクリル酸(PAA)の中から選択することができる。
【0030】
疎水性ポリマーブロックは、ポリスチレン、ポリ(tert-ブチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリジメチルシロキサン、C3〜C6のアルキレンのポリオキサイド、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリロイシン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレンから選択することができる。
【0031】
ブロックコポリマーは、以下のブロックコポリマーから選択されることが好ましい。
- プロピレンポリオキシド/エチレンポリオキシド
- ポリスチレン/ポリオキシエチレン
- ポリメチルメタクリレート/ポリオキシエチレン
- ポリブチルメタクリレート/ポリオキシエチレン
- ポリオキシブチレン/ポリオキシエチレン
- ポリカプロラクトン/ポリオキシエチレン
- ポリエチレン/ポリオキシエチレン
- ポリオキシエチレン/ポリオキシブチレン/ポリオキシエチレン
【0032】
本発明の範囲では、ミセル組成物に以下を加えることが必要である。
- ブロックのうちの1つがカチオン性で例えば、以下の中から選択することができるカチオン性両親媒性ブロックポリマー:
- トリメチルエチルアンモニウムポリメタクリレート;
- 四級化ジメチルアミノエチルポリメタクリレート;
- ポリメチルビニルイミダゾリウム;
- 塩化ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウム;
非イオン性両親媒性ブロックポリマーとカチオン性両親媒性ブロックポリマーとの結合は、2つの割合が99/1から1/99の間となり、
および/または、
- 以下に列挙するような少なくとも1のカチオン性界面活性剤。
【0033】
この場合、非イオン性両親媒性ブロックポリマーおよびカチオン性界面活性剤の各割合は、50/50から99/1の間となるであろう。
【0034】
本発明の範囲では、カチオン性界面活性剤と結合しているか、または結合していない、ブロックポリマーミセルの濃度は、組成物の全重量に対して、0.1から10重量%の間であり、好ましくは0.2から5重量%の間である。
【0035】
本発明の変形では、前述のカチオン性両親媒性ブロックポリマーから構成されるミセルを形成することも可能である。
【0036】
[リポソームおよびニオソーム]
非イオン性リポソームを形成可能な非イオン性両親媒性脂質は、特に、欧州特許出願第0582503号に記載されたものである。
【0037】
特に、非イオン性両親媒性脂質は、1〜60個のエチレンオキシド単位を有するポリエチレングリコール、ソルビタン、2〜60エチレンオキシド単位を有するソルビタン、2〜30個のエチレンオキシド単位を有するグリセロール、2〜15個のグリセロール単位を有するポリグリセロール、スクロース、2〜30個のエチレンオキシド単位を有するグルコース、および、ポリオール基当りのアルキル鎖の数が1〜10個であり、C5〜C17の飽和または不飽和、直鎖状または分枝アルキル鎖を有する少なくとも1の脂肪酸により形成される群から選択される少なくとも1のポリオールのエステル混合物から構成することが可能である。
【0038】
「エステルの混合物」という表現は、異なる化学ファミリーの純粋なエステルの混合物だけではなく、様々な割合の同じファミリーの複数の化学的に純粋なポリオールエステルを含むすべての生成物も含む。これは特に、式CO-(OCH2-CHOH-CH2)n-OHのポリグリセロールエステルなどの、疎水性部位に統計式を有する生成物の場合である。ここでnは統計的値であり、n=1、n=2、n=3、n=4などの様々な割合のエステルを含むことができる。これは、C5〜C17アルキル鎖を含むヤシ脂肪酸エステル、またはC17アルキル鎖が異性体の複合混合物であるイソステアリン酸エステルなどの親油性部位に複数のアルキル鎖を含むエステルの場合もある。同一のポリオールのモノ-、ジ-、トリ-またはポリエステルの混合物からなる生成物の場合もある。他の種類の不純物と共に小胞を形成することが可能な単独のエステルしか含まないであろう生成物は、本発明には使用できないであろうことに留意する必要がある。
【0039】
実際にはエステルの混合物であることにより、本発明に単独で使用可能な市販のエステルとしては、例えば以下のものがある。
- 商品名「SPAN 20、40、60および80」でICI Co.より市販されているソルビタン(またはソルビトール無水物)および脂肪酸の部分エステル;
- 商品名「SI 10 R NIKKOL」でNIKKO Co.より市販されているイソステアリン酸ソルビタン;
- 商品名「TWEEN 61」でICI Co.より市販されている4つのエチレンオキシド単位を有するステアリン酸ソルビタン;
- 商品名「MYR J 45」でICI Co.より市販されている8個のエチレンオキシド単位を有するステアリン酸ポリエチレングリコール;
- 商品名「MYS 4」でNIKKO Co.により市販されている式EMI6.1のモノステアリン酸ポリエチレングリコール、式中、nは4である;
- UNICHEMA Co.より市販されている、分子量400、ケミカルグレードまたはバイオテクノロジーで製造されるグレードのステアリン酸ポリエチレングリコール;
- 商品名「HOSTACERINE DGS」でHOECHST Co.より市販されている4つのエチレンオキシド単位を有するステアリン酸ジグリセリル;
- 商品名「TETRAGLYN 1S」でNIKKO Co.より市販されているステアリン酸テトラグリセロール;
- SOLVAY Co.より市販されているイソステアリン酸ジグリセリル;
- 商品名「EMALEX DSG 2」でNIHON Co.より市販されているジステアリン酸ジグリセリル;
- 商品名「F50、F70、F110およびF160 CRODESTA」でCRODA Co.より市販されているモノ-、ジ-およびトリパルミトステアリン酸スクロース;
- 商品名「GRILLOTEN PSE 141 G」でGRILLO Co.より市販されているモノ-およびジパルミトステアリン酸スクロースの混合物;
- 商品名「ARLATONE 2121」でICI Co.より市販されているステアリン酸スクロースおよびヤシ脂肪酸スクロースの混合物;
- 商品名「GLUCAM E 20ジステアレート」でAMERCHOL Co.より市販されている20個のエチレンオキシド単位を有するジステアリン酸メチルグルコース
【0040】
勿論、すでに混合物であるこれらの様々な生成物の混合配合物または純粋な生成物とこれらの生成物との混合配合物を使用することもできる。
【0041】
カチオン性界面活性剤は、分散液がpH5から8となるように以下のリストから選択される。ここで、脂質相における非イオン性両親媒性脂質の量とカチオン性界面活性剤の量との重量比は50/1から50/25の間であり、脂質相と水性分散相との間の重量比は1/1,000から300/1,000の間である。
【0042】
[オレオソーム]
本発明に係るオレオソームは、欧州特許出願第0705593号に記載されている。オレオソームは、水相に分散されて、ラメラ液晶皮膜を与える油球から形成される水中油型エマルジョンから構成され、各油球は、エマルジョンに5〜8のpHを与える、少なくとも1の親油性表面活性剤、少なくとも1の親水性表面活性剤および少なくとも1のカチオン性界面活性剤から得られる、モノラメラ層またはオリゴラメラ層(凍結切片化後、透過型電子顕微鏡下で見ることができる1〜10個の層)で個々に覆われていることを特徴としており、被覆された油球は、平均直径500nm未満である。
【0043】
親油性表面活性剤および親水性表面活性剤は、約12個以上の炭素原子を有する、各々少なくとも1の飽和脂肪鎖を含む。より好ましくは、この脂肪鎖は、16〜22個の炭素原子を含む。
【0044】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、親油性表面活性剤は、約2〜約5の間のHLBを有している。よく知られているように、HLB(親水性/親油性バランス)により理解される、表面活性剤の親水性基の次元と強度との間および親油性基の次元と強度との間の均衡がある。
【0045】
このような親油性表面活性剤の例としては、スクロースジステアレート、ジグリセリルジステアレート、テトラグリセリルトリステアレート、デカグリセリルデカステアレート、ジグリセリルモノステアレート、ヘキサグリセリルトリステアレート、デカグリセリルペンタステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ジエチレングリコールモノステアレート、パルミチン酸およびステアリン酸のグリセロールエステル、2 OEポリオキシエチレンモノステアレート(2個のオキシエチレン単位を含む)、モノ-およびジベヘン酸グリセリル、ならびに、ペンタエリスリトールテトラステアレートがある。
【0046】
親水性表面活性剤は、HLBが約8〜約12の間であることが好ましい。
【0047】
このような親水性表面活性剤の例としては、以下の化合物を挙げることができる。ポリオキシエチレン(4 OE)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20 OE)ソルビタントリステアレート、ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(8 OE)モノステアレート、ヘキサグリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレン(10 OE)モノステアレート、ポリオキシエチレン(12 OE)ジステアレートおよびポリオキシエチレン(20 OE)メチルグルコースジステアレート。
【0048】
カチオン性界面活性剤は、以下に挙げる化合物の中から選択することができる。
【0049】
[ナノエマルジョン]
カチオン性粒子は、水相中に分散された油相を含む水中油型ナノエマルジョンの中からも選択することができ、油球は、数平均粒径が100nm未満であり、少なくとも1の非イオン性両親媒性脂質および1のカチオン性両親媒性脂質を含む少なくとも1の両親媒性脂質から構成されることを特徴とし、油相および両親媒性脂質は、両親媒性脂質に対する油相の重量比が3〜10となるような量で存在している。
【0050】
ナノエマルジョンは、一般的に、青みを帯びた透明な外観を有している。これらの透過率は、600nmでの透過率の係数(10〜90%の範囲)または濁度により測定される。本発明の組成物の濁度は、60〜400NTU、好ましくは70〜300NTUにわたり、この濁度は、約25℃で、携帯用HACH濁度計、モデル2100 Pで測定される。
【0051】
本発明のナノエマルジョンの油球は、数平均粒径が100nm未満、好ましくは20〜80nm、さらに好ましくは40〜60nmにわたる。小球の大きさが減少すると、皮膚表層への活性剤の浸透を促進させることを可能とする(媒体効果)。
【0052】
本発明によるナノエマルジョンは、4〜45℃の温度で調製されることが好ましいので、感熱性活性剤と適合性がある。
【0053】
これらの分散液は、特に欧州特許出願第0728460号、第0879589号、第1010413号、第1010414号、第1010416号、第1013338号、第1016453号、第1018363号、第1025898号および第1120102号に記載されている。これらの出願のすべてに、粒子の安定性を改善するために、イオン性界面活性剤が非イオン性界面活性剤(または混合物)に加えられるであろうことが明記されている。
【0054】
本発明の場合、1以上のカチオン性界面活性剤がもっぱらイオン性界面活性剤として用いられるであろう。
【0055】
上述の参考文献で示された割合が採用されるべきであり、カチオン性界面活性剤の例としては、全粒子に共通のリストが用いられるであろう。
【0056】
非イオン性界面活性剤、好ましくは水に溶解可能または分散可能なものは、少なくとも1つの疎水性配列および少なくとも1つの親水性配列を含んでいる。
【0057】
本発明の非イオン性両親媒性脂質は、以下から選択されることが好ましい。
1/ シリコーン処理した界面活性剤、
2/ 少なくとも1つの飽和または不飽和、直鎖状または分枝状、特に不飽和または分枝したC8〜C22のアルキル鎖を含む少なくとも1の脂肪酸と少なくとも1のポリオールとのエステルから選択される、45℃未満の温度で液体である両親媒性脂質であって、このポリオールは、1〜60個のエチレンオキシド単位を含むポリエチレングリコール、ソルビタン、2〜30個のエチレンオキシド単位を含むことができる、グリセロール、および2〜15個のグリセロール単位を含むポリグリセロールにより構成される群から選択される。
3/ 脂肪酸と糖のエーテル、脂肪酸と糖のエステル、
4/ グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステルおよびオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステル、エトキシル化脂肪酸エーテルならびにエトキシル化脂肪酸エステルから選ばれる、45℃の温度で固体である界面活性剤、
5/ エチレンオキシド(A)とプロピレンオキシド(B)とのブロックコポリマー、およびこれらの界面活性剤の混合物。
【0058】
1/ 本発明で用いることができるシリコーン処理した界面活性剤は、少なくとも1つのオキシエチレン鎖-OCH2CH2-および/またはオキシプロピレン鎖-OCH2CH2CH2-を含むシリコーン化化合物である。米国特許出願第5364633号および同A5411744号に記載されたものを挙げることができる。
【0059】
本発明で使用されるシリコーン処理した界面活性剤は、好ましくは式(II)の化合物である:
【化1】

式中、R1、R2、R3は、それぞれ他と独立して、C1〜C6アルキル基または-(CH2)x-(OCH2CH2)y-(OCH2CH2CH2)z-OR4基を表し、ここで、少なくとも1つの基R1、R2またはR3はアルキル基でなく;R4は水素原子、アルキル基またはアシル基であり;Aは0〜200の整数であり;Bは0〜50の整数であり;ただし、AおよびBは同時に0ではなく;xは1〜6の整数であり;yは1〜30の整数であり;zは1〜5の整数である。
【0060】
本発明の好ましい実施形態によれば、式(X)の化合物では、アルキル基は、メチル基であり、xは2〜6の整数であり、yは4〜30の整数である。
【0061】
式(II)のシリコーン化された界面活性剤の例として、式(III)の化合物が挙げられる。
【化2】

式中、Aは20〜105の整数であり、Bは2〜10の整数であり、yは10〜20の整数である。
【0062】
式(II)のシリコーン化された界面活性剤の例としては、式(IV)の化合物も挙げることができる。
【化3】

式中A'およびyは10〜20の整数である。
【0063】
シリコーン化された界面活性剤としては、特に商品名DC 5329、DC 7439-146、DC 2-5695およびQ4-3667でDow Corning Co.により市販されているものを用いることができる。化合物DC 5329、DC 7439-146、およびDC 2-5695は、式(IX)の化合物であり、ここで、それぞれ、Aは22、Bは2、yは12であり;Aは103、Bは10、yは12であり;Aは27、Bは3、yは12である。
【0064】
化合物Q4-3667は、式(IV)の化合物であり、ここで、Aは15、yは13である。
【0065】
2/ 45℃未満の温度で液体である両親媒性脂質は以下の中から特に選択され得る。
- 商品名「Prisorine 3644」でUNICHEMA Co.により市販されている分子量400のポリエチレングリコールイソステアレート(CTFA名:PEG-8イソステアレート);
- SOLVAY Co.より市販されているジグリセリルイソステアレート;
- 商品名「Diglycerin monolaurate」でSOLVAY Co.により市販されている2つのグリセロール単位を含むポリグリセロールラウレート(ポリグリセリル-2ラウレート);
- 商品名「SPAN 80」でICI Co.により市販されているオレイン酸ソルビタン;
- 商品名「NIKKOL SI 10R」でNIKKO Co.により市販されているイソステアリン酸ソルビタン;
- ULICE Co.により市販されているヤシ脂肪酸α-ブチルグルコシドまたはカプリン酸α-ブチルグルコシド。
【0066】
3/ 本発明のナノエマルジョン中で非イオン性両親媒性脂質として使用することができる、脂肪酸および糖のエステルは、45℃以下の温度で固体であることが好ましく、また、特に、C8〜C22脂肪酸とスクロース、マルトース、グルコースまたはフルクトースとのエステルまたはエステル混合物、およびC14〜C22脂肪酸とメチルグルコースとのエステルまたはエステル混合物からなる群より選択され得る。
【0067】
本発明のナノエマルジョンで用いることができるエステルの脂肪残基を形成するC8〜C22またはC14〜C22脂肪酸は、それぞれ8〜22または14〜22個の炭素原子を有する飽和または不飽和直鎖状アルキル鎖を含む。エステルの脂肪残基は、特にステアレート、ベヘネート、アラキドネート、パルミテート、ミリステート、ラウレート、カプレートおよびそれらの混合物の中から選択することができる。好ましくは、ステアレートが用いられる。
【0068】
脂肪酸とスクロース、マルトース、グルコースまたはフラクトースとのエステルまたはエステル混合物の例としては、スクロースモノステアレート、スクロースジステアレート、スクローストリステアレート、およびそれらの混合物が挙げられる。具体的には、商品名「Crodesta F50、F70、F110およびF160」でCroda Co.により市販される製品などが挙げられ、それぞれHLB(親水性/親油性バランス)が5、7、11および16であり;脂肪酸とメチルグルコースとのエステルまたはエステル混合物の例としては、商品名「Tego-care 450」でGoldschmidt Co.により市販されるメチルグルコースおよびポリグリセロール-3のジステアレートを挙げることができる。メチルO-ヘキサデカノイル-6-D-グルコシドおよびO-ヘキサデカノイル-6-D-マルトシドなどの、グルコースまたはマルトースノモノエステルも挙げることができる。
【0069】
本発明のナノエマルジョン中で非イオン性両親媒性脂質として用いることができる脂肪アルコールと糖とのエーテルは、45℃以下の温度で固体であり、特に、C8〜C22脂肪アルコールとグルコース、マルトース、スクロースまたはフルクトースとのエーテルまたはエーテル混合物、およびC14〜C22脂肪アルコールとメチルグルコースとのエーテルまたはエーテル混合物を含む群から選択することができる。特に、アルキルポリグリコシドが挙げられる。
【0070】
本発明のナノエマルジョン中で用いることができるエーテルの脂肪残基を形成するC8〜C22またはC14〜C22脂肪アルコールは、それぞれ8〜22または14〜22個の炭素原子を有する飽和または不飽和直鎖状アルキル鎖を含む。エーテルの脂肪残基が、特に、デシル、セチル、ベヘニル、アラキジル、ステアリル、パルミチル、ミリスチル、ラウリル、カプリルおよびヘキサデカノイル残基およびセテアリルなどのそれらの混合基の中から選択することができる。
【0071】
脂肪アルコールと糖とのエーテルの例としては、例えば、それぞれ商品名「Plantaren 2000」および「Plantaren 1200」でHenkel Co.により市販されるデシルグルコシドおよびラウリルグルコシドなどのアルキルポリグルコシド、例えば、商品名「Montanov 68」でSeppic Co.により、商品名「Tego-care CG90」でGoldschmidt Co.により、また、商品名「Emulgade KE3302」でHenkel Co.により市販されている、セトステアリルアルコールと混合可能なセトステアリルグルコシド、ならびに、例えば、アラキジル(arachidic)およびベヘニルアルコール(behenic alcohol)とアラキジルグルコシドとの混合物の形態で、商品名「Montanov 202」でSeppic Co.により市販されている、アラキジルグルコシドを挙げることができる。
【0072】
この型の非イオン性両親媒性脂質として、特にスクロースモノステアレート、スクロースジステアレート、スクローストリステアレートおよびそれらの混合物、メチルグルコースおよびポリグリセロール-3のジステアレート、ならびにアルキルポリグルコシドが用いられる。
【0073】
4/ 45℃以下の温度で固体である、本発明のナノエマルジョン中で非イオン性両親媒性脂質として用いることができるグリセロールの脂肪酸エステルは、特に、16〜22個の炭素原子および1〜10個のグリセロール残基を有する飽和直鎖状アルキル鎖を含む少なくとも1の酸から形成されるエステルを含む群から選択することができる。1以上のこれらのグリセロールの脂肪酸エステルは、本発明のナノエマルジョン中で用いることができる。
【0074】
これらのエステルは、特に、ステアレート、ベヘネート、アラキデート、パルミテートおよびこれらの混合物の中から選択することができる。好ましくは、ステアレートおよびパルミテートが用いられる。
【0075】
本発明のナノエマルジョン中で用いることができる界面活性剤の例としては、デカグリセロール(10個のグリセロール単位)(CTFA名:ポリグリセリル-10ステアレート、ポリグリセリル-10ジステアレート、ポリグリセリル-10トリステアレート、ポリグリセリル-10ペンタステアレート)のモノステアレート、ジステアレート、トリステアレート、およびペンタステアレート、例えば、それぞれ商品名「Nikkol Decaglyn 1-S、2-S、3-Sおよび5-S」でNikko Co.により市販されている製品など、また、ジグリセロールモノステアレート(CTFA名:ポリグリセリル-2ステアレート)、例えばNikko Co.により商品名「Nikkol DGMS」で市販されている製品などが挙げられる。
【0076】
45℃以下の温度で固体である、本発明のナノエマルジョン中で非イオン性両親媒性脂質として使用することができるソルビタンの脂肪酸エステルは、特に、C16〜C22脂肪酸とソルビタンとのエステルおよびC16〜C22脂肪酸とオキシエチレンソルビタンとのエステルを含む群から選択することができる。これらは、それぞれ16〜22個の炭素原子を有する少なくとも1つの飽和直鎖状アルキル鎖を含む少なくとも1の脂肪酸から構成され、また、ソルビトールまたはエトキシル化ソルビトールから構成される。オキシエチレンエステルは、一般的に、1〜100個のエチレンオキシド単位、好ましくは、2〜40個のエチレンオキシド単位(OE)を含む。
【0077】
これらのエステルは、特に、ステアレート、ベヘネート、アラキデート、パルミテートおよびそれらの混合物から選択することができる。好ましくは、ステアレートおよびパルミテートが用いられる。
【0078】
本発明のナノエマルジョン中で用いることができるソルビタンの脂肪酸エステルおよびオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステルの例としては、ICI Co.により商品名「Span 60」で市販されているソルビタンモノステアレート(CTFA名:ステアリン酸ソルビタン)、ICI Co.により商品名「Span 40」で市販されているソルビタンモノパルミテート(CTFA名:ソルビタンパルミテート)、ICI Co.により商品名「Tween 65」で市販されているソルビタン(20 OE)トリステアレート(CTFA名:ポリソルベート65)を挙げることができる。
【0079】
45℃以下の温度で固体である、本発明のナノエマルジョン中で非イオン性両親媒性脂質として使用することができるエトキシル化脂肪エーテルは、1〜100個のエチレンオキシド単位および16〜22個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪アルコール鎖から形成されるエーテルであることが好ましい。エーテルの脂肪鎖は、特に、ベヘニル、アラキジル、ステアリルおよびセチル残基、ならびにセテアリルなどのそれらの混合基から選択することができる。エトキシル化脂肪エーテルの例としては、商品名「Nikkol BB5、BB10、BB20およびBB30」でNikko Co.により市販される、5、10、20および30個のエチレンオキシド単位(CTFA名:ベヘネス-5、ベヘネス-10、ベヘネス-20、ベヘネス-30)を含むベヘニルアルコールのエーテル、および商品名「Brij 72」でICI Co.より市販されている製品などの2つのエチレンオキシド単位を含むステアリルアルコールエーテル(CTFA名:ステアレス-2)を挙げることができる。
【0080】
45℃以下の温度で固体である、本発明のナノエマルジョン中で非イオン性両親媒性脂質として使用することができるエトキシル化脂肪酸エステルは、1〜100個のエチレンオキシド単位および16〜22個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪酸鎖から形成されるエステルである。エステルの脂肪鎖は、特に、ステアレート、ベヘネート、アラキデートおよびパルミテート残基ならびにそれらの混合物の中から選択することができる。エトキシル化脂肪酸エステルの例としては、商品名「Myrj 52」でICI Co.より販売されている製品(CTFA名:PEG-40ステアレート)などの、40個のエチレンオキシド単位を含むステアリン酸エステルと共に、商品名「Compritol HD5 ATO」でGattefosse Co.により販売されている製品などの8個のエチレンオキシド単位(CTFA名:PEG-8ベヘネート)を含むベヘン酸のエステル挙げることができる。
【0081】
5/ 本発明のナノエマルジョン中の非イオン性両親媒性脂質として用いることができる、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーは、特に、式(V)のブロックコポリマー:
【化4】

(式中、x、yおよびzはx+zが2〜100の範囲で、yが14〜60の範囲となるような整数である。)、およびそれらの混合物の中、特に、HLBが2〜16の範囲である式(V)のブロックコポリマーの中から選択することができる。
【0082】
これらのブロックコポリマーは、特に、ポロクサマー(poloxamer)の中から、また、特に、x=z=6、y=39(HLB2)を有する式(V)のICI Co.により商品名「Pluronic L81」で市販されている製品などのポロクサマー231;x=z=10、y=47(HLB6)を有する式(V)のICI Co.により商品名「Pluronic L92」で市販されている製品などのポロクサマー282;およびx=z=11、y=21(HLB16)を有する式(V)のICI Co.より商品名「Pluronic L44」で市販されている製品などのポロクサマー124の中から選択することができる。
【0083】
非イオン性両親媒性脂質として、参照により本明細書に援用する欧州特許出願第705593号に記載されている非イオン性界面活性剤の混合物も挙げることができる。
【0084】
非イオン性両親媒性脂質の中で特に以下のものを用いることができる:
- PEG400イソステアレートまたはPEG-8イソステアレート(8モルのエチレンオキシドを含む)、
- ジグリセリルイソステアレート、
- 2つのグリセロール単位を含むポリグリセロールモノラウレートおよび10個のグリセロール単位を含むポリグリセロールステアレート、
- ソルビタンオレエート、
- イソステアリン酸ソルビタンおよびそれらの混合物。
【0085】
非イオン性両親媒性脂質は、組成物の全重量に対して0.2重量%〜12重量の範囲、好ましくは0.2重量%〜8重量%の範囲、選択的には0.2重量%〜6重量%の範囲の含有量で本発明のナノエマルジョン中に存在することができる。
【0086】
カチオン性両親媒性脂質が以下に記載のリストから選択される。
【0087】
カチオン性両親媒性脂質は、好ましくはナノエマルジョンの全重量に対して0.01〜6重量%、特に0.2〜4重量%の範囲の濃度で本発明のナノエマルジョン中に存在する。
【0088】
油:
本発明のナノエマルジョンの油相は、少なくとも1の油を含む。本発明のナノエマルジョン中で用いることができる油は、以下のものより形成される群から優先的に選択される。
- 脂肪酸およびポリオールのエステルによって形成される動物または植物由来の油、特に、ヒマワリ、トウモロコシ、大豆、アボガド、ホホバ、カボチャ、グレープシード、ゴマおよびヘーゼルナッツ油などの液体トリグリセリド、魚油、トリカプロカプリル酸グリセロール、または、式R9COOR10の植物もしくは動物油(R9は7〜29個の炭素原子を含むより高い脂肪酸の残基を表し、R10は3〜30個の炭素原子、特にアルキルまたはアルケニルを含む直鎖状または分枝単価水素鎖を表す。)、例としては、ピュアセリン(purcellin)オイルまたは液体ホホバワックスがある;
- 例えば、ユーカリノキ、ラバンジン、ラベンダー、ベチベルソウ、リツェアクベバ、シトロン、ビャクダン、ローズマリー、カモミール、セイバリー、ナツメグ、シナモン、ヒソップ、キャラウェイ、オレンジ、ゲラニオール、ケードおよびベルガモットオイルなどの天然または合成エッセンシャルオイル;
- パールリーム油、ポリオレフィンおよび液状カルボン酸エステルなどの合成油;
- ヘキサデカン、イソヘキサデカンおよびパラフィン油などの鉱油;
- ハロゲン化油、特に、例えばペルフルオロトリブチルアミンといったフルオロアミンなどのフルオロカーボン、例えばペルフルオロデカヒドロナフタレンなどのフッ素化炭化水素、フルオロエステルおよびフルオロエーテル;
- 揮発性または不揮発性シリコーン油。
【0089】
合成油として用いることができるポリオレフィンは、特に、ポリ-α-オレフィン、特に水素化または非水素化ポリブテンタイプのもの、好ましくは水素化または非水素化ポリイソブテンがある。
【0090】
合成油として用いることができる液状カルボン酸エステルは、モノ-、ジ-、トリ-またはテトラカルボン酸のエステルであってもよい。エステルの全炭素数は、一般的に10以上であり、好ましくは100未満であり、さらに好ましくは80未満である。このようなエステルは、特に、エステルの全炭素数が、全般的に10以上である飽和または不飽和、直鎖状または分枝C1〜C26脂肪酸および飽和または不飽和、直鎖状または分枝C1〜C26脂肪族アルコールのモノエステルである。C4〜C22のジ-またはトリカルボン酸とC1〜C22のアルコールとのエステルおよびC2〜C26モノ-、ジ-またはトリカルボン酸とジ-、トリ-、テトラ-またはペンタヒドロキシアルコールとのエステルを用いることも可能である。
【0091】
前記に挙げられたエステルの中でも、好ましくは、エチルパルミテート、イソプロピルパルミテート、エチル-2-ヘキシルパルミテートおよび2-オクチルデシルパルミテートなどのアルキルパルミテート;イソプロピルミリステート、ブチルミリステート、セチルミリステートおよび2-オクチルドデシルミリステートなどのアルキルミリステート;ヘキシルステアレート、ブチルステアレートおよびイソブチルステアレートなどのアルキルステアレート;ジオクチルマレートなどのアルキルマレート;ヘキシルラウレートおよび2-ヘキシルデシルラウレートなどのアルキルラウレート;イソノニルイソノナネート;セチルオクタノエートが用いられる。
【0092】
有利には、本発明のナノエマルジョンは、少なくとも1の分子量400以上、特に400〜10,000の範囲、一層有利には400〜5000、さらに400〜5000の油を含む。分子量400以上の油は、動物または植物由来の油、鉱油、合成油およびシリコーン油ならびにこれらの混合物の中から選ぶことができる。この種の油としては、例えば、イソセチルパルミテート、イソセチルステアレート、アボガド油およびホホバ油を挙げることができる。
【0093】
本発明のナノエマルジョンは、ナノエマルジョンの全重量に対し、好ましくは2〜40重量%、特に4〜30重量%、優先的に4〜20重量%の範囲の量の油相(両親媒性脂質を除く、油および他の脂肪性物質)を含む。
【0094】
油相および両親媒性脂質(非イオン性およびイオン性の両親媒性物質)は、好ましくは、両親媒性の液体の量に対する油相の量の重量比が3〜10、優先的には3〜6の範囲で本発明のナノエマルジョン中に存在する。本明細書では、「油相の量」により、両親媒性の液体の量を含まないこの油相の構成成分の全量が理解される。
【0095】
前述の式(I)のウレア誘導体のほかに、特に、必要に応じて組成物の透明度を改良するために、本発明のナノエマルジョンは溶媒を含むことができる。
【0096】
これらの溶媒は、好ましくは、以下から構成される群から選択される。
- エタノールなどのC1〜C8低級アルコール;
- 4〜16、好ましくは8〜12個のエチレンオキシド単位を有する、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびポリエチレングリコールなどのグリコール;
- グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトースおよびスクロースなどの糖。
【0097】
これらの溶媒は、混合物として用いることができる。これらの溶媒が本発明のナノエマルジョン中に存在している場合、これらの溶媒は、好ましくはナノエマルジョンの全重量に対して0.01〜30重量%、より有利にはナノエマルジョンの全重量に対して5〜20重量%の範囲の濃度で用いることができる。アルコールおよび/または糖の量は、ナノエマルジョンの全重量に対して5〜20重量%の範囲であることが好ましく、グリコールの量は、ナノエマルジョンの全重量に対して5〜15重量%の範囲であることが好ましい。
【0098】
調製方法:
先に定義されたようにナノエマルジョンの調製方法は、10℃〜80℃の温度範囲で激しい攪拌下、ウレア誘導体を含む水相を油相と混合し、5×107Paを超える圧力で高圧ホモジナイズするステップを行い、必要に応じて、使用されるポリマーを加えることを含む。本発明の好ましい実施形態によれば、その後、5×107Paを超える圧力で高圧ホモジナイズする別のステップが行われる。高圧ホモジナイズは、好ましくは6×107〜18×107Paの圧力範囲で行われる。剪断は、好ましくは2×106s-1〜5×108s-1、より有利には、1×108s-1〜3×108s-1(s-1は秒-1を示す)の範囲である。このような方法によれば、感熱性の活性化合物と適合性があり、油、特に脂肪性物質を含む香料をこれらを変性させることなく含むことができるナノエマルジョンを得ることが可能となる。
【0099】
[ナノカプセル]
本発明に係るナノカプセルとしては、欧州特許出願第0447318号、同第0557489号、同第0780115号、同第1025901号、同第1029587号、同第1034839号、同第1414390号、フランス特許出願第2830776号、欧州特許出願第1342471号、フランス特許出願第2848879号および同第04/50057号に記載されているものがある。
【0100】
ナノカプセルは、油性のコアおよびポリマーシェルを有するコアシェル粒子である。先に挙げた種々の出願は、種々のポリマーファミリーおよびそれらを得るための種々の方法に関する。カプセルの大きさは、必ず1μmよりも小さく、80nmよりも小さい大きさを得ることが可能である。これらの粒子は、大抵レクチンまたはジメチコンコポリオールから構成されるラメラ液晶相により被覆することができる。皮膜は、水と接触した場合に自然発生的にラメラ液晶相を形成し得る両親媒性脂質から構成される必要がある。ラメラ相を形成することが可能であるこの両親媒性脂質に対して、正のゼータ電位を粒子(ナノカプセル)に与えるカチオン性界面活性剤が加えられるであろう。ラメラ相を形成する両親媒性脂質とカチオン性界面活性剤との重量比は、99/1〜75/25の範囲となるであろう。
【0101】
使用することができるカチオン性界面活性剤には、以下に列挙したものがある。
【0102】
[有機粒子]
本発明の有機粒子は、種々の方法(水への分散、ナノ沈殿(nanoprecipitation)、マイクロエマルジョンなど)により形成される、内部空洞を持たない固体ナノ粒子であり、少なくとも1のポリマーまたは少なくとも1のコポリマーまたはそれらの混合物から構成される。ポリマーまたはコポリマーまたは複数のポリマーまたは複数のコポリマーがカチオン性であるか、あるいは、それらが非イオン性であり且つ以下に記載するカチオン性の界面活性剤が用いられるために、この粒子はカチオン性であり、先に記載されたゼータ電位を有する。ポリマーに対してカチオン性界面活性剤の割合は、0〜25%の範囲であろう。
【0103】
[無機粒子]
本発明のカチオン性無機粒子は、例えばシリカ、TiO2、ZnO、アルミナなどをベースにすることができる。例としては、NalcoのNanomer 2などの、水中にコロイド分散したアルミナ粒子が挙げられる。ClariantおよびGraceもこのようなタイプの粒子を提案している。
【0104】
[本発明のカチオン性粒子の調製に用いることができるカチオン性界面活性剤]
本発明に用いることができるカチオン性界面活性剤を以下に挙げる。このリストは、非制限的である。
【0105】
カチオン性親媒性脂質は、第四級アンモニウム塩、脂肪アミンおよびこれらの塩により構成される群から選択されることが好ましい。
【0106】
第四級アンモニウム塩は、例えば以下のものがある:
- 下記一般式(IV)を有するもの:
【化5】

式中、R1〜R4基は、同一であっても異なっていてもよく、1〜30個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝脂肪族基、または、アリールもしくはアルキルアリールなどの芳香族基を表す。脂肪族基は、特に、酸素、窒素、硫黄およびハロゲンなどのヘテロ原子を含むことができる。脂肪族基は、例えば、約1〜30個の炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、ポリオキシアルキレン(C2〜C6)、アルキルアミド、アルキル(C12〜C22)アミドアルキル(C2〜C6)、アルキル(C12〜C22)アセテートおよびヒドロキシアルキルから選択される;Xは、ハライド、ホスフェート、アセテート、ラクテート、アルキル(C2〜C6)サルフェート、アルキル-またはアルキルアリールスルホネートからなる群より選択されるアニオンである;
【0107】
- 例えば、下記式(V)などのイミダゾリニウムの第四級塩:
【化6】

式中、R5は、8〜30個の炭素原子を含むアルケニルまたはアルキル基を表し、例えば、獣脂脂肪酸から誘導され、R6は、水素原子、C1〜C4アルキル基、または、8〜30個の炭素原子を含むアルケニルもしくはアルキル基を表し、R7はC1〜C4アルキル基を表し、R8は水素原子またはC1〜C4アルキル基を表し、Xはハライド、ホスフェート、アセテート、ラクテート、アルキルサルフェートおよびアルキル-またはアルキルアリールスルホネートからなる群より選択されるアニオンである。好ましくは、R5およびR6は、12〜21個の炭素原子を含むアルケニルまたはアルキル基の混合物を示し、例えば、獣脂脂肪酸から誘導され、R7はメチルを示し、R8は水素を示す。このような生成物は固体であり、例えば、商品名「REWOQUAT W 75」でREWOCo.より市販されている;
【0108】
- 式(VI)の第四級ジアンモニウム塩:
【化7】

式中、R9は、約16〜30個の炭素原子を含む脂肪族基を示し、R10、R11、R12、R13およびR14は、同一または異なっていてもよく、水素原子または1〜4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、Xは、ハライド、アセテート、ホスフェート、ナイトレートおよびメチルサルフェートからなる群より選ばれるアニオンである。このような第四級ジアンモニウム塩は、特に、プロパンタロウ(propane tallow)ジアンモニウムジクロライドを含む;
【0109】
- 少なくとも1つのエステル官能基を含む第四級アンモニウム塩
少なくとも1つのエステル官能基を含み、本発明に用いることができる第四級アンモニウム塩としては、例えば、下記式(VII)のものがある:
【化8】

式中、
- R15は、C1〜C6アルキル基、およびC1〜C6ヒドロキシアルキルまたはジヒドロキシアルキル基から選択され;
- R16は、以下から選択される:
- 下記基
【化9】

- 直鎖状または分枝、飽和または不飽和C1〜C22炭化水素基R20
- 水素原子、
- R18は以下から選択される:
- 下記基
【化10】

- 直鎖状または分枝、飽和または不飽和C1〜C6炭化水素基R22
- 水素原子、
- R17、R19およびR21は、同一または異なっていてもよく、直鎖状または分枝、飽和または不飽和C7〜C21炭化水素基から選択される:
- 同一または異なる、n、pおよびrは、2〜6の整数である;
- yは、1〜10の整数である;
- 同一または異なる、xおよびzは、0〜10の整数である;
- X-は、単体または複合、有機または無機アニオンである;ただし、x+y+zの合計は1〜15であり、xが0である場合は、R16はR20を示し、zが0である場合は、R18はR22を示す。
【0110】
アルキル基R15は、直鎖状または分枝、特に直鎖状であってもよい。
【0111】
好ましくは、R15はメチル、エチル、ヒドロキシエチルまたはジヒドロキシプロピル基を示し、特にメチルまたはエチル基を示す。有利には、x+y+zの合計は、1〜10である。
【0112】
R16が炭化水素基R20である場合、12〜22個の炭素原子を有する長鎖であってもよく、または、1〜3個の炭素原子の短鎖であってもよい。
【0113】
R18が炭化水素基R22である場合には、1〜3個の炭素原子を有することが好ましい。
【0114】
有利には、R17、R19およびR21は、同一または異なり、直鎖状または分枝、飽和または不飽和C11〜C21炭化水素基の中、特に直鎖状または分枝、飽和または不飽和C11〜C21アルキルおよびアルケニル基から選択される。
【0115】
好ましくは、xおよびzは、同一または異なり、0または1である。
【0116】
有利には、yは1である。
【0117】
好ましくは、n、pおよびrは、同一または異なり、2または3に等しく、特に2に等しい。
【0118】
アニオンは、好ましくはハライド(クロライド、ブロマイド、アイオダイド)またはアルキルサルフェートであり、特にメチルサルフェートである。しかし、メタンスルホネート、ホスフェート、ナイトレート、トシレート、アセテートまたはラクテートなどの有機酸由来のアニオン、または、アンモニウムと相容性であり、エステル官能基を有する任意の他のアニオンを用いることができる。
【0119】
アニオンX-は、特にクロライドまたはメチルサルフェートである。
【0120】
特に式(VII)のアンモニウム塩が用いられ、式中、以下のとおりである:
- R15は、メチルまたはエチル基を示し、
- xおよびyは、1に等しく;
- zは0または1に等しく;
- n、pおよびrは2に等しく;
- R16は以下から選択される:
- 下記基
【化11】

- メチル、エチルまたはC14〜C22炭化水素基
- 水素原子;
- R18は以下から選択される:
- 下記基
【化12】

- 水素原子;
R17、R19およびR21は、同一または異なり、直鎖状または分枝、飽和または不飽和C13〜C17炭化水素基から選択され、好ましくは、直鎖状または分枝、飽和または不飽和C13〜C17アルキルおよびアルケニル基から選択される。
【0121】
有利には、炭化水素基は直鎖状である。
【0122】
例として、ジアシルオキシエチルジメチルアンモニウム、ジアシルオキシエチルヒドロキシエチルメチルアンモニウム、モノアシルオキシエチルジヒドロキシエチルメチルアンモニウム、トリアシルオキシエチルメチルアンモニウム、モノアシルオキシエチルヒドロキシエチルジメチルアンモニウムおよびそれらの混合物の塩(特に、クロライドまたはメチルサルフェート)などの式(VII)の化合物を挙げることができる。アシル基は、14〜18の炭素原子を有することが好ましく、特にヤシ油またはヒマワリ油などの植物油に由来することが好ましい。
【0123】
化合物が複数のアシル基を含む場合、これらの基は同一または異なっていてもよい。
【0124】
これらの生成物は、例えば、植物または動物由来の脂肪酸またはそれらの混合物への、オキシアルケン化されていてもよい、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アルキルジエタノールアミンまたはアルキルジイソプロパノールアミンの直接エステル化、または、植物または動物由来の脂肪酸またはそれらの混合物のメチルエステルのエステル交換により得られる。このエステル化に続いて、アルキルハライド(好ましくはメチルまたはエチル)、ジアルキルサルフェート(好ましくはメチルまたはエチル)、メチルメチルスルホネート(methyl methylsulfonate)、メチルパラトルエンスルホネート、または、グリコールもしくはグリセロールクロロヒドリンなどのアルキル化剤による四級化が行われる。
【0125】
このような化合物は、例えば商品名「DEHYQUART」でHENKEL Co.より、商品名「STEPANQUAT」でSTEPAN Co.より、商品名「NOXAMIUM」でCECA Co.より、商品名「REWOQUAT WE 18」でREWOWITCO Co.より市販されている。
【0126】
本発明の組成物は、第四級アンモニウムのモノ-、ジ-およびトリエステルの塩の混合物を含み、ジエステル塩が重量の大半を示すことが好ましい。
【0127】
アンモニウム塩の混合物としては、例えば、15〜30重量%のアシルオキシエチルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムメチルサルフェート、45〜60重量%のジアシルオキシエチルヒドロキシエチルメチルアンモニウムメチルサルフェートおよび15〜30重量%のトリアシルオキシエチルメチルアンモニウムメチルサルフェートを含む混合物であって、アシル基が14〜18個の炭素原子を有し、ヤシ油に由来し、部分的に水素化されていてもよい混合物を使用することができる。米国特許A4874554号および同A4137180号に記載の少なくとも1つのエステル官能基を含むアンモニウム塩を用いることもできる。
【0128】
式(IV)の第四級アンモニウム塩の中でも、一方で、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウムまたはアルキルトリメチルアンモニウムクロライドなどのテトラアルキルアンモニウムクロライドが好ましく、ここで、アルキル基は、約12〜22個の炭素原子を含み、特にベヘニルトリメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムおよびベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライドなどが好ましく、あるいは商品名「CERAPHYL 70」で、VAN DYK Co.により市販されている、ステアルアミドプロピルジメチル(ミリスチルアセテート)アンモニウムクロライドが好ましい。
【0129】
本発明によれば、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライドまたはブロマイドおよびCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)は、最も好ましい第四級アンモニウム塩である。
【0130】
本発明の脂肪アミンは、下記一般式に相当する:
【化13】

- R1は、8〜30個、好ましくは10〜24個の炭素原子を有する、飽和または不飽和、分枝または直鎖状炭化水素鎖である。
- R2およびR3は、1〜10個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する、飽和または不飽和、分枝または直鎖状炭化水素の中から独立に選択される。
- R2およびR3は、また、互いに独立に、水素原子であってもよい。
- Mは、1〜10であり、好ましくは1〜5である。
【0131】
非限定的例として、以下のものが挙げられるであろう:ステアリルアミン、ステアレートアミノエチルエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド、ステアレートジエチレントリアミン、ステアルアミドプロピルジメチルアミン、ステアルアミドプロピルジエチルアミン、ステアルアミドエチルジエチルアミン、ステアルアミドエチルジメチルアミン、パルミトアミドプロピルジメチルアミン、パルミトアミドプロピルジエチルアミン、パルミトアミドエチルジエチルアミン、パルミトアミドエチルジメチルアミン、ベヘンアミドプロピルジメチルアミン、ベヘンアミドプロピルジエチルアミン、ベヘンアミドエチルジエチルアミン、ベヘンアミドエチルジメチルアミン、アラキドアミドプロピルジメチルアミン、アラキドアミドプロピルジエチルアミン、アラキドアミドエチルジエチルアミン、アラキドアミドエチルジメチルアミン。
【0132】
市販されている脂肪アミンとして、CrodaのIncromine BB、NikkolのAmidoamine MSPおよびInolexのLexaminesを挙げることができる。
【0133】
他の脂肪アミンとして、Saboが例えば、特にSabominaシリーズとして販売している、例えば、ステアリルアミン、ステアレートアミノエチルエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミドおよびステアレートジエチレントリアミンを挙げることができる。
【0134】
Kao CorpのAcetamineシリーズなどの脂肪アミンアセテートも挙げられるであろう。
【0135】
これらの脂肪アミンは、Akzo NobelのBerols 380、390、453および455、EthomeensまたはCondea ChemieのMarlazins L10、OL2、OL20、T15/2およびT50などのように、エトキシル化されていることもできる。
【0136】
本発明の粒子は、化粧料、皮膚科および眼科を目的としたすべての医薬担体に導入することができる。例として、ローション、血清、ゲル、およびすべてのタイプのエマルジョンが挙げられるであろう。
【0137】
本発明に用いることができる二本鎖RNAオリゴヌクレオチド(またはdsRNA(二本鎖RNA)、siRNA(低分子干渉RNA))は、真核細胞の遺伝子発現を全体的にまたは部分的に阻害することができる二本鎖核酸断片であり、これらの二本鎖RNAオリゴヌクレオチドは、一般的に12〜40個のヌクレオチド、好ましくは20〜25個のヌクレオチドを含む。これらの二本鎖オリゴヌクレオチドは、一本のセンス鎖と一本のアンチセンス鎖とから構成されており、分解される標的メッセンジャーRNAの配列に対応する。二本鎖RNAオリゴヌクレオチドは、2〜6個のヌクレオチドの自由端または不対末端(unpaired end)を有する。
【0138】
本発明の二本鎖RNAオリゴヌクレオチドは、置換、欠失または挿入により改変された1以上のヌクレオチドを含む二本鎖RNAオリゴヌクレオチドであってもよく、これらの改変は、二本鎖RNAのオリゴヌクレオチド配列が、分解機構で標的mRNA断片を特異的に認識させることを可能とするものであろう。
【0139】
二本鎖RNAのオリゴヌクレオチドが、例えばより良好な安定性を与える修飾された骨格を有することも可能であろう。
【0140】
例えば、天然RNA鎖のホスホジエステル結合を、少なくとも1つの窒素または硫黄原子を含むように修飾することができる。さらに、本発明の二本鎖RNAオリゴヌクレオチドは、4つの古典的塩基以外の塩基を含むことができる。
【0141】
二本鎖RNAオリゴヌクレオチドの二本鎖構造は、2つの相補的一本鎖RNAを対形成させることにより、または、独特の「自己相補的」一本鎖RNA、もしくは、換言すると、一本鎖を折畳むことにより対形成し、二重らせんを形成することができる相補的配列の2つの断片を含むものにより、得ることができる。
【0142】
二本鎖RNAオリゴヌクレオチドの例としては、国際特許出願WO00/44895号、WO01/36646号、WO99/32619号、WO01/29058号、WO00/44914号またはWO03/101376号に記載されたものを挙げることができる。
【0143】
また、「stealth RNA」として知られている二本鎖RNAのオリゴヌクレオチドであってもよく、例えば、Invitrogen Co.により市販されているもの、および、米国特許出願2004054155号および同2004014956号に記載のものが特に挙げられ、非限定的例として、末端のうちの1つが2'-O-メチル基を末端に含むように修飾される二本鎖RNAのオリゴヌクレオチドがある。
【0144】
二本鎖RNAオリゴヌクレオチドは、多数のin vivoまたはin vitro合成法により、手作業または自動で合成することができる。
【0145】
in vitro合成法は、例えば、選択されたDNA(またはcDNA)配列モデルの転写を達成する、ポリメラーゼRNA(例えばT3、T7またはSP6など)を用いることによるなど、化学的または酵素的であってもよい。
【0146】
二本鎖RNAのin vivo合成のための多くの方法が文献に記載されている。これらの方法は、様々な細胞型の細菌またはより高等な生物で達成することができる(Sambrook et al.、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第2版(1989);DNA cloning、volume I and II、D.N.Glover(1985年版);Oliginucleotide Synthesis、M.J.Gaits(1984年版);Nucleic Acid Hybridation、B.D.HamesおよびS.J.Higgins(1984年版);Transcription and Translation、B.D.HamesおよびS.J.Higgins(1984年版);Animal Cell Culture、R.I.Freshney(1986年版);Immobilised Cells and Enzymes、IRL Press(1986);B.Pertal、A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells、J.H.MillerおよびM.P.Calos、Cold Spring Harbor Laboratory(1987年版);Methods in Enzymology、vol.154、WuおよびGrossman、ならびに、155、Wu,MayerおよびWalker(1987);Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology、Academic Press、London、Scopes(1987);Protein Purification:Principle and Practice、第2版、Springer-Verlag、N.-Y.ならびにHandbook of Experimental Immunology、vol.I-IV、C.D.WeirおよびC.C.Blackwell(1986))。特許出願WO01/36646号、同WO01/75164号および米国特許出願第20030088087号に記載の合成方法も参照することができる。
【0147】
当業者は、使用目的および選択されるオリゴヌクレオチドの活性に適した二本鎖RNAオリゴヌクレオチド濃度を選択するであろう。二本鎖RNAオリゴヌクレオチド濃度は、限定するものではないが、1nM〜100mMとすることが可能であろう。
【0148】
本発明の第2の目的は、少なくとも1の二本鎖RNAオリゴヌクレオチドと、界面活性剤ミセル、ブロックポリマーミセル、非イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤からなるリポソーム、ニオソーム、オレオソーム、ナノエマルジョン粒子、ナノカプセル、有機粒子または無機粒子から選択される、大きさが1μm以下、好ましくは500nm以下または300nm以下で、ゼータ電位が10〜80mVの少なくとも1のカチオン性粒子とを含む組成物の、化粧目的での局所的使用または眼への使用に関する。
【0149】
本発明の他の目的は、少なくとも1の二本鎖RNAオリゴヌクレオチドと、界面活性剤ミセル、ブロックポリマーミセル、非イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤からなるリポソーム、ニオソーム、オレオソーム、ナノエマルジョン粒子、ナノカプセル、有機粒子または無機粒子から選択される、大きさが1μm以下、ゼータ電位が10〜80mVの少なくとも1のカチオン性粒子とを含む組成物の局所的適用または眼への適用を含む化粧処置方法に関する。
【0150】
化粧、皮膚、眼または薬学上のケアを目的として、皮下注射または眼注などの侵襲性の方法を避ける方法が求められている。本発明のsiRNAと結合したカチオン性粒子は、懸濁液として、皮膚、粘膜または眼に局所的に適用することができ、または、ローション、血清、乳状化または非乳状化ゲル、水中油型、油中水型および多様なエマルジョン、マイクロエマルジョンなどの許容可能な化粧料担体に導入することもできる。この化粧料担体への導入は、siRNAと結合した粒子の安定性を危険にさらすものではないということに注意すべきであろう。
【0151】
非限定的例として、カチオン性粒子によりベクター化されたdsRNAを含む本発明の組成物は、光老化または加齢老化、しわ、顔および/または身体の皮膚の弾力性の低下、脂漏性の疾患、油肌、乾燥肌および色素斑の予防および/または治療をするよう設計することが可能であろう。これらの組成物は、毛髪の減少を遅くし、毛髪の成長を刺激し、毛質を改善し、望まない毛髪の再生を制限または予防するよう設計することなどもできる。
【0152】
これらの組成物は、皮膚または眼科疾患を治療するよう設計することもできる。
【0153】
siRNAと結合した粒子の浸透を促進するために、皮膚の浸透性を変えることが可能である。したがって、Tewameter TM210またはDermalab of Cortex Technologyを用いて、IWL(不感蒸泄)を測定することにより、皮膚の浸透性を制御することが可能である。
【0154】
例として、以下の方法を使用することが可能であろう:
- ストリッピング(corneodisk、「ワニス」)、ケミカルピーリングまたは機械的皮膚剥離術;
- 脱脂効果を有する1以上の溶媒の混合物による前処理;
- 洗浄用起泡性製品による皮膚の洗浄;
- 例えば、処置すべき皮膚表面を不浸透性の合成膜(Blendermなど)で覆うことによるか、または、ワセリンのコーティングを適用することによる、密封する前処置または後処置。このことは、皮膚の自然のIWLを遮断し、表皮の脂質の超水和を引き起こし、一層透過性とする効果を有する。
【0155】
本発明の組成物の適用後、分子の皮膚への浸透を促進するために、例えばイオン導入法または電気穿孔法などの当業者に公知の方法を使用することも可能である。
【0156】
最後に、本発明は、少なくとも1の二本鎖RNAオリゴヌクレオチドの局所的浸透または目への浸透を促進する剤として、界面活性剤ミセル、ブロックポリマーミセル、非イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤からなるリポソーム、ニオソーム、オレオソーム、ナノエマルジョン粒子、ナノカプセル、有機粒子または無機粒子から選択される、大きさが1μm以下、ゼータ電位10〜80mVのカチオン性粒子を使用するという目的を有する。
【0157】
図面中の以下のFigは、実施例2に記載の試験を説明している。
I.Episkinにおける細胞ターゲティング-6日目
Fig.I-1:Block-It Fluorescent Oligo(DAPI)
Fig.I-2:Block-It Fluorescent Oligo+リポフェクトアミン2000(DAPI)
Fig.I-3:Block-It Fluorescent Oligo+E2(×40、DAPI)
Fig.I-4:E2(×40、DAPI)
Fig.I-5:Block-It Fluorescent Oligo+E2(×100、DAPI)
Fig.I-6:Block-It Fluorescent Oligo+E2(×100)
II.Episkinにおける細胞ターゲティング-13日目
Fig.II-1:Block-It Fluorescent Oligo(×40、DAPI)
Figure IIIAおよびIIIB:HaCaT細胞の生存度についての、様々な濃度でのオクチルグルコシドおよびCTABを含む処方の効果の視覚化
【発明を実施するための最良の形態】
【0158】
〔実施例〕
(実施例1−処方)
カチオン性ミセル:
例:
モル比5/1のオクチルβ-グルコシド/セチルトリアンモニウムブロミド
E1:蒸留水中100mM
E2:蒸留水中50mM
E3:蒸留水中25mM
E4:蒸留水中12.5mM
【0159】
2種の界面活性剤(非イオン性+カチオン性)を、蒸留水に溶解する。siRNA(20μM)の懸濁液を1:1〜1:9(siRNA:ミセル)の体積で加え、比例的にミセル濃度を減少させる。
- 蒸留水中でモル比5/1のデシルb-グルコシド/ベヘニルトリアンモニウムクロライドのミセル。前述の実施例と同じ濃度で調製される。
【0160】
[カチオン性リポソーム]
- 実施例1:「流動性のある」小胞
PEG 400イソステアレート 5.5%
ベヘニルトリアンモニウムクロライド 0.5%
蒸留水 100%にするのに十分な量
【0161】
- 実施例2:「強固な」小胞
ソルビタンパルミテート 2.75%
コレステロール 2.75%
ベヘニルトリアンモニウムクロライド 0.5%
蒸留水 100%にするのに十分な量
【0162】
これらの実施例のリポソーム懸濁液を、透析により調製する。小胞の構成成分である脂質を、オクチルβ-グルコシドの水溶液に可溶化する。その後、72時間、この溶液を水に対して透析にかける。
【0163】
siRNAの懸濁液を加え、小胞の濃度を約3%の脂質にするが、この値は単なる指標である。
【0164】
[カチオン性オレオソーム]
油相
Stearainerie Dubois製のスクロースモノ/ジステアレート 0.45%
ソルビタン(4 OE)ステアレート(Tween 61 Uniquema) 0.30%
ベヘニルトリアンモニウムクロライド 0.21%
ビタミンEアセテート 0.5%
ホホバ油 0.5%
ヘプタン酸ステアリル 1%
揮発性シリコーン油SE 1%
ビタミンFグリセリド 0.5%
防腐剤 0.02%
BHT 0.01%
水相
蒸留水 100%にするのに十分な量
防腐剤 0.1%
【0165】
この分散液は、約170nmの粒子サイズを得るために、高圧ホモジナイズにより調製する。次いで、1:1〜1:20(siRNA:オレオソーム)の範囲の割合でsiRNA(20μM)の懸濁液を加える。その後、siRNAは粒子の表面で複合化されるであろう。
【0166】
[カチオン性ナノカプセル]
有機相
ポリカプロラクトン(MW:50000) 1%
ビタミンE 1%
ジメチコンコポリオールDC2 5695(Dow Corning) 0.5%
ベヘニルトリアンモニウムクロライド 0.21%
アセトン 200ml
水相
Pluronic F68 0.5%
蒸留水 200ml
【0167】
有機相を攪拌しながら水相に導入する。次いで、アセトンおよび100mlの水相を蒸発させて、220nmの大きさのナノカプセルの懸濁液を得る。次いで、1:1〜1:20(siRNA:ナノカプセル)の範囲の割合でsiRNA(20μM)の懸濁液を加える。その後、粒子の表面で、siRNAが複合化されるであろう。
【0168】
[有機ナノ粒子]
有機相
ポリエチレンアジペート(Scientific Polymer Products) 2%
ジメチコンコポリオールDC2 5695(Dow Corning) 0.5%
ベヘニルトリアンモニウムクロライド 0.21%
アセトン 200ml
水相
Pluronic F68 0.5%
蒸留水 200ml
【0169】
有機相を、攪拌しながら水相に導入する。次いで、アセトンおよび100mlの水相を蒸発させ、180nmの大きさのナノ粒子の懸濁液を得る。次いで、siRNA(20μM)の懸濁液を、1:1〜1:20(siRNA:ナノ粒子)の範囲の割合で加える。その後、粒子の表面でsiRNAが複合化されるであろう。
【0170】
[カチオン性ナノエマルジョン]
油相
Uniqema製のPEG 400イソステアレート 1%
ベヘニルトリアンモニウムクロライド 1%
アボカド油 1%
ホホバ油 3%
シクロペンタメチルシロキサン 2%
水相
蒸留水 30%
ジプロピレングリコール 10%
希釈相
希釈水 100%にするのに十分な量
防腐剤 0.1%
【0171】
激しく攪拌しながら油相を水相に分散させることにより、エマルジョンを調製する。次いで、得られる懸濁液を、超高圧ホモジナイザーで約1200bの圧力で数回ホモジナイズする。粒子の大きさは50nmのオーダーで、懸濁液は透明である。その後、希釈相を加える。
【0172】
上記ケースと同様に、1:1〜1:20(siRNA:ナノエマルジョン)の範囲の割合でsiRNA(20μM)の懸濁液を加える。その後、siRNAは粒子の表面で複合化されるであろう。
【0173】
(実施例2−細胞ターゲティング)
細胞および組織ターゲティングを、EPISKIN SNC.により開発された再構成表皮モデルで行った。2つの相の成長機構のモデルを、ミセル/siRNA複合体の局所適用のために選択した:
∨ 層形成および角質化の始まりの表皮に相当する、表皮の増殖の6日目に1回適用。
∨ 重層化し、かつ、角質化した表皮に相当する、表皮の増殖の13日目に1回適用。
【0174】
選択したsiRNAは、取扱説明書「Block-It Transfection Kit」(Catalog ref.No.:13750-070、Invitrogen)に記載のように、Block-It Fluorescent Oligo(20μM)である。これは、フルオレセインと結合した25-ヌクレオチド二本鎖RNAである。コードされた配列はヒトゲノムと相同性を持たないので、非機能性にしている。このヌクレオチドは、細胞ターゲティングの試験用に特別に開発された。これがトランスフェクトされると、細胞質に存在することになり、また、細胞核にも浸透する。
【0175】
ミセル/siRNA複合体の調製:
取扱説明書「Block-It Transfection Kit」(Catalog ref.No.:13750-070、Invitrogen)に記載のように、3μlのBlock-It Fluorescent Oligo(20μM)を、9μlのカチオン性ミセルE2(モル比5/1のオクチルβ-グルコシド/セチルトリアンモニウムブロマイド、蒸留水中50mM)と混合する。
【0176】
リポフェクトアミン2000/siRNA混合物の調製:
製造元のプロトコルに従って、3μlのBlock-It Fluorescent Oligo(20μM)を50μlのOptiMEM(Invitrogen)中に希釈し、12μlのOptiMEMに希釈した3μlのリポフェクトアミン2000(Invitrogen)と混合する。この溶液を常温で20分間インキュベートし、リポソームおよびsiRNAを複合化する。
【0177】
対照溶液の調製:
∨ 3μlのBlock-It Fluorescent Oligo(20μM)を、9μlのOptiMEM中に希釈する。
∨ 9μlのカチオン性ミセルE2(モル比5/1のオクチルβ-グルコシド/セチルトリアンモニウムブロマイド、蒸留水中50mM)を、3μlのOptiMEM中に希釈する。
【0178】
その後、様々な混合物および溶液を、EPISKIN表皮の様々なサンプルに沈着させ、浸漬条件で、37℃で48時間、5%CO2の存在下、EPISKINキットにより供給された分化培地にインキュベートする。その後、サンプルをドライアイスとエタノールとの混合物中で凍結させ、クリオスタット(MICROM HM560)によって5μmの切片に切断する。切片は、1.5μgのDAPIを含むVectrashield mounting medium(Vector Laboratories)に固定し、フルオレセインおよびDAPIに適切なフィルターを用い、免疫蛍光条件下で観察する。
【0179】
観察:
∨ 6日目にトランスフェクトされた表皮:Block-It Fluorescent Oligo(Fig.I-1)の溶液またはリポフェクトアミン2000の混合物(Fig.I-2)は、形成された角質層を越えてBlock-It Fluorescent Oligoを浸透させることはないが、E2およびBlock-It Fluorescent Oligoの混合物は、RNA二本鎖の表皮への浸透を可能にする(Fig.I-3、I-5、I-6)ことが観察される。E2を単独で適用した場合には、非特異的マーキングは検出されない(Fig.I-4)。この観察の驚くべき特徴は、すべての表皮細胞で、Block-It Fluorescent Oligoの均一な存在により強調されることであるが、従来のトランスフェクションは増殖している細胞でしか効果的でないことが当業者により知られている。再構成皮膚では、基底細胞しか増殖しないが、基底細胞の上は分化される。
∨ 13日目にトランスフェクトされた表皮:6日目と同様、Block-It Fluorescent Oligoの溶液単独では角質層に浸透しない(Fig.II-1)。6日目よりも低い効率および均等性であっても、E2およびBlock-It Fluorescent Oligoの混合物は、角質層の様々な層および表皮の様々な細胞にフルオレセント二本鎖が浸透するのを可能にする(Fig.II-2、II-3)。
【0180】
(実施例3−様々な濃度でオクチルグルコシドおよびCTABの処方が、HaCaT細胞の死亡率に与える影響)
E2処方の効果:モル比5/1の50mMのオクチルグルコシド/CTABのミセルは、HaCaT細胞(40,000細胞/ウェルが蒔かれた500μlの培地、B-It:Block-It Fluorescent Oligo(Invitrogen))に関する以下の手順に従って、4日間のインキュベーションにより得られる。
【0181】
40,000個のHaCaT細胞/ウェルを、500μlの完全DMEM+10%ウシ胎児血清を含む24ウェルプレート2つに蒔く。
【0182】
1μlのBlock-It Fluorescent Oligo(Invitrogen)を、モル比5/1の50mMオクチルグルコシドおよびCTABのミセルから構成される、1〜15μlのミセル溶液E2に希釈し、培地に加え、ミセル溶液の最終濃度を0.1〜1.5mMにする。
【0183】
その後、37℃で4日間、細胞をインキュベートし、2つのうちの1つのサンプル用の培地を1日目に取り替え、その後、写真撮影する。
【0184】
得られる結果を、Figure IIIAおよびIIIBに示す。
【0185】
1日目に培地を取り替えてまたは取り替えないで同じ処理にかけた細胞間では、相違は観察されない。
【0186】
CMC(約1mM)未満のミセル溶液濃度では、高い死亡率が観察され、その遊離状態では媒体が毒性効果を示すが、CMC(1.5mM)より上では良好な細胞生存率が観察される。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】Fig.I-1:Block-It Fluorescent Oligo(DAPI)。Fig.I-2:Block-It Fluorescent Oligo+リポフェクトアミン2000(DAPI)。Fig.I-3:Block-It Fluorescent Oligo+E2(×40、DAPI)。Fig.I-4:E2(×40、DAPI)。
【図2】Fig.I-5:Block-It Fluorescent Oligo+E2(×100、DAPI)。Fig.I-6:Block-It Fluorescent Oligo+E2(×100)。Fig.II-1:Block-It Fluorescent Oligo(×40、DAPI)。
【図3】Fig.II-2:Block-It Fluorescent Oligo+E2(×40、DAPI)。Fig.II-3:Block-It Fluorescent Oligo+E2(×40)。
【図4】Figure IIIAは、HaCaT細胞の生存度についての、様々な濃度でのオクチルグルコシドおよびCTABを含む処方の効果の視覚化。
【図5】Figure IIIBは、HaCaT細胞の生存度についての、様々な濃度でのオクチルグルコシドおよびCTABを含む処方の効果の視覚化。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の二本鎖RNAオリゴヌクレオチドを含む局所または点眼用組成物であって、前記二本鎖RNAオリゴヌクレオチドが、界面活性剤ミセル、ブロックポリマーミセル、非イオン性およびカチオン性界面活性剤のリポソーム、ニオソーム、オレオソーム、ナノエマルジョン粒子、ナノカプセル、有機粒子または無機粒子から選択される、粒径1μm以下、ゼータ電位10〜80mVの少なくとも1のカチオン性粒子と結合していることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記カチオン性粒子が粒径500nm以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カチオン性粒子が粒径300nm以下である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カチオン性粒子が、非イオン性の両親媒性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤のミセルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ブロックコポリマーミセルが、カチオン性の両親媒性ブロックポリマーのミセル、非イオン性の両親媒性ブロックポリマーとカチオン性の両親媒性ブロックポリマーとのミセル、および、非イオン性の両親媒性ブロックポリマーとカチオン性界面活性剤とのミセルから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1の二本鎖RNAオリゴヌクレオチドと、界面活性剤ミセル、ブロックポリマーミセル、非イオン性およびカチオン性界面活性剤のリポソーム、ニオソーム、オレオソーム、ナノエマルジョン粒子、ナノカプセル、有機粒子または無機粒子から選択される、粒径1μm以下、ゼータ電位10〜80mVの少なくとも1のカチオン性粒子とを含む組成物の化粧目的での局所または点眼での使用。
【請求項7】
前記カチオン性粒子の大きさが500nm以下または300nm以下である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
少なくとも1の二本鎖RNAオリゴヌクレオチドと、界面活性剤ミセル、ブロックポリマーミセル、非イオン性およびカチオン性界面活性剤のリポソーム、ニオソーム、オレオソーム、ナノエマルジョン粒子、ナノカプセル、有機粒子または無機粒子から選択される、粒径1μm以下、ゼータ電位10〜80mVの少なくとも1のカチオン性粒子とを含む組成物の局所または点眼適用を含む、化粧処理方法。
【請求項9】
局所適用の前に、ストリッピング、ケミカルピーリング、機械的皮膚剥離術、脱脂効果を有する1以上の溶媒の適用、または洗浄用起泡性製品による皮膚の洗浄から選択される皮膚の前処理が行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
局所適用後に、密封する後処理を行う、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1の二本鎖RNAオリゴヌクレオチドの局所的浸透または眼への浸透を促進する試薬としての、界面活性剤ミセル、ブロックポリマーミセル、非イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤からなるリポソーム、ニオソーム、オレオソーム、ナノエマルジョン粒子、ナノカプセル、有機粒子または無機粒子から選択される、大きさが1μm以下、ゼータ電位10〜80mVのカチオン性粒子の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−321801(P2006−321801A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−139475(P2006−139475)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】