説明

カップ部を備えた成形シートとカバーシートとのシール装置

【課題】カップ部(2)付きの成形シート(1)をカバーシート(3)と接合して密封する装置において、成形シートのカップ部(2)と、送りロール(5)の凹陥部(6)との精確な位置決めを確実に実現できるものを提供する。
【解決手段】カップ部(2)のための凹陥部(6)を周面に備え、ロール駆動部(4)によって駆動可能な送りロール(5)と、この送りロール(5)に組み合わさって回転可能なシールロール(8)とを備え、これらロールの間を通過するようにして、成形シート(1)及びカバーシート(3)を処理可能である。送りロール(5)の寸法を変化させることで、カップ部(2)と凹陥部(6)との間の位置・姿勢の関係を正しく補正することができるように、送りロール(5)には、圧力室(15)が設けられ、該圧力室(15)は圧力媒体配管(16)を通じて圧力媒体供給源(17)に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール装置に関する。特には、カップ部を備える成形シート(成形加工を施したシートまたはフィルム、特には樹脂シート)をカバーシートと接合して各カップ部を密封するためのシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなシール装置は、ロール駆動部でもって駆動可能であり、周面に複数の凹陥部を備える送りロールと、送りロールに組み合わされて回転するシールロールとを備え、これらロールの間に、成形シートとカバーシートとを通しつつ接合してカップ部を密封することができる。
【0003】
成形シートのシールの際、成形シートのポケット部に対する、送りロールに設けられた凹陥部の位置・姿勢を精確にコントロールするのには困難が伴う。すなわち、上記装置の作動中に、カップ部が精確に凹陥部に配置され、これにより、カップ部が凹陥部の縁部に接して損傷を受けないようにするのには困難が伴う。成形シートについてのこのような損傷を防ぐために、ドイツ特許DE 10 2004 010 202 B3により、次のような装置が知られている。送りロールが、送りロールの回転軸に平行の2つの部分からなり、送りロールにおける、これら2つの部分の間の間隔が、好ましくは変更可能である。これにより、凹陥部に対するカップ部の精確な位置決めが確実に行われる。このような装置は、実際の使用により基本的に実証されている。但し、比較的高価である。
【特許文献1】ドイツ特許DE 10 2004 010 202 B3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の根底をなす課題は、導入部で述べたような装置について、成形シートのカップ部を、送りロールの凹陥部中へと精確に位置決めするということを確実に実現できるように構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、導入部で述べたような装置において、送りロール中に、圧力室を設け、該圧力室が、圧力媒体配管を通じて圧力媒体供給源に接続していることによって解決される。
【発明の効果】
【0006】
このような形態であると、まず、送りロールが、周方向に一体の構成でもって当接することとなる。送りロールの周面は、送りロールを構成する材料の弾性変形性の枠内で、圧力室に印加された圧力によって変形可能である。したがって、送りロールの回転軸の位置が固定されている場合に、周方向に形成された凹陥部の位置・姿勢を、成形シートに押圧成形して設けられたカップ部に合わせることを可能にする。この位置合わせは迅速に行うことができる。送りロールは、外力の作用についての機械的な慣性が小さいからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
このような目的のために、本発明において、送りロールは、弾性係数(ヤング率)の小さい材料からなるのが好ましい。小さな圧力でもって送りロールについての比較的大きな長さの変更ないし寸法の変更を実現できるからである。したがって、長さや寸法の変更は、同じ応力に対して、より少ない抵抗でもって起こることとなる。特には、送りロールが、金属よりも小さい弾性係数を有する材料からなるならば好ましい。このような観点から、樹脂を、送りロールの材料として用いるならば好ましい。
【0008】
良好な機械的特性及び化学的特性を得る観点からは、送りロールがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるのが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンは、引っ張り弾性率(縦弾性係数)が例えば420N/mm2(ニュートン/平方ミリメートル)(0.42GPa)であり、例えば69000N/mm2(69GPa)の引っ張り弾性係数を有するアルミニウムに比べて、著しく小さい。
【0009】
使用条件によっては、ポリテトラフルオロエチレンの耐荷重性を超えるので、代替の樹脂としてポリアミドが用いられる。
【0010】
室温における樹脂の引っ張り弾性率は、非エラストマーの場合、一般に0.01〜10Gpaであり、典型的には0.1〜3Gpaである。これに対して、構造材として用いられる金属の引張り弾性率は、一般に30〜300Gpaであり、典型的には69〜210Gpaである。樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(引っ張り弾性率が0.4〜0.6Gpa)の他にも、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキル共重合体(PFA:引っ張り弾性率が0.3〜0.35Gpa)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキル共重合体(FEP:引っ張り弾性率が0.3〜0.35Gpa)その他のパーフルオロ樹脂、またはその他のフッ素樹脂を好ましく用いることができる。また、他の好ましい樹脂であるポリアミドとしては、例えばナイロン11(引っ張り弾性率が0.5〜1.3Gpa)、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66等を用いることができる。引っ張り弾性率は、例えばASTM D638にしたがって測定される。
【0011】
本発明の枠内において、圧力室(圧力を印加可能な閉じた空洞部)が複数備えられているならば、特に好ましい。このようであると、送りロールの周面の幾何学的な形状を変形させることなしに、より大きな寸法変化を引き起こすことができる。
【0012】
送りロールが、シャフトが差し込まれるハブ、その他の中心部を有し、この中心部から送りロールの周面へと複数のスポークが突き出しているならば好ましいことが知られた。ここでのスポークは、圧力室の壁として、周方向に均等に分布する複数の圧力室を互いに分離する。スポークは、さらに、応力をハブに伝える役割を果たす。
【0013】
送りロールの製造及びメンテナンスを簡略化するためには、圧力室が、送りロールに軸方向から取り付けられた2つのカバーにより閉じられているのが好ましい。外気と圧力室中との圧力比の変更によって送りロールの径が変化したとしても、カバーそのものは、外気に対する圧力室中の圧力比の変更によって、何らの長さの変化をも起こす必要がなく、圧力漏れが起きないことを確実にするだけで良い。装置の作動中に所要の密閉性を確実に実現するためには、両側面のカバーが、圧力室を貫く一つ、または必要ならば複数のスペーサー付きボルト(スペーサーボルト;spacer bolt)によって接続されることが想定されている。このことによって、両カバーが確実に密封され、また、送りロールの形状の対称性に悪影響を与えることがないということが確実になっている。
【0014】
原理上は、送りロールに回転可能に接続された可撓性の圧力媒体配管を通じて、圧力媒体が圧力室に導かれるという実施形態をとることができる。しかしながら、作動の確実性を高める観点からは、このような可撓性の圧力媒体配管を省き、圧力媒体配管が、回転O-リング軸シールからなる導管接続部その他の、本発明の実施形態に係る回転フィードスルー(rotary feedthrough:回転式で密封式の導管接続部)を通じて圧力媒体供給源に接続しているのが好ましい。
【0015】
成形シートのカップ部に対する凹陥部の位置・姿勢について、エラーを補正するためだけでなく、そのように位置決めエラーの予防的な防止を可能にするためには、成形シートのカップ部の位置・姿勢を捉えるための、制御システムの一部としてのセンサーが備えられる。このようであると、送りロールの圧力室に対して相応の圧力を印加することにより、送りロールの径は、カップ部を凹陥部に正しく位置決めするのに必要な寸法となる。
【0016】
送りロールの温度を捉えるためのセンサーが備えられるならば好ましい。特には、樹脂を送りロールの材料として選択した場合に、金属に比べて熱伝導性が小さいからであり、シールロールからの熱流入を調整または制御し、温度の変化により引き起こされた送りロールの体積変化を、送りロールの直径を決定する際に考慮に入れることができるようにするからである。
【0017】
送りロールの圧力値の変更をなるべくフレキシブルにするためには、圧力媒体配管に、比例バルブ及び/またはマルチウェイ(回路切り替え)バルブが取り付けられる。すなわち、比例バルブ及び回路切り替え式バルブのうちの少なくとも一方を取り付けるのが好ましい。このようなバルブは、所望の圧力に精確に設定・調整したり、複数の圧力レベルの間で切り替えるのに役立つ。
【0018】
樹脂製の送りロールからの悪影響を防止するには、送りロールとシールロールとの間におけるカバーシート及び成形シートの存在を検知するセンサーが備えられる。シートがない場合のセンサー信号にしたがって、シールロールを送りロールから引き離すことや、送りロールへ向けての引き下げが行われないようにすることができるからである。
【0019】
以下に、図面に描かれた本発明の実施例について詳細に説明する。
【0020】
図面には、充填済みのカップ部2を備える成形シート1と、カバーシート3とについて、密封を実現するように接合するのに用いられる装置が描かれている。カバーシート3は、不図示の貯留ロールにストックされており、加熱可能なシールロール8と送りロール5との間へと導かれる。必要ならば方向転換ロールの助力を受けて導かれる。送りロール5は、ロール駆動部4によって駆動可能であり、周面に、成形シート1のカップ部2のための凹陥部6を備えている。特には図2及び3から知られるように、送りロール5中に圧力室15が形成されている。好ましい実施形態においては、複数の圧力室15が設けられる。圧力室15は、圧力配管16を通じて圧力媒体供給源17に接続している。送りロール5は、弾性係数の小さい材料からなり、この弾性係数は、例えば金属に比べて著しく小さい。金属は、例えば、アルミニウムの場合に69000N/mm2(69GPa)の弾性係数を有する。適した材料としては、樹脂、特には、弾性係数が420N/m2(0.42GPa)であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が用いられる。このようであると、約15バール(約1.5MPa)の圧力印加により、約0.5mmの直径の拡大が実現可能であり、これに対応する周面の伸びが実現可能である。このような伸びは、カップ部2に対する凹陥部6の位置・姿勢についての所要のわずかな補正を行うのに充分である。複数の圧力室15への均等な圧力の付与は、図2から知られるように、以下のようにして達成される。送りロール5にハブ7が備えられ、このハブ7から周面へと複数のスポーク10が突き出す。これらスポーク10は、圧力室の壁として、周方向に均等に分布する複数の圧力室15を仕切り構成する。圧力室15は、送りロール5に軸方向から取り付けられる2枚のカバー11によって閉じられる(図1)。
【0021】
両側にある2つのカバー11は、圧力室15を貫いて延びるスペーサー付きボルト14によって互いに接続されている。このようにして、確実な密封を得ることができる。必要ならば、Oリングでもって、長い作動期間にわたって確実な密封を担保することができる。圧力媒体配管16は、回転フィードスルー(回転軸シール式の導管接続部)12を通じて、圧力媒体供給源17に接続されている。このようであるので、回転駆動可能な送りロール5には、圧縮空気その他の所要の圧力媒体を、容易に供給することができる。
【0022】
本実施形態の装置には、成形シート1のカップ部2の位置・姿勢を捉えるための、制御システムの一部としてのセンサー9が、さらに備えられる(図1)。このようにして、該カップ部2の位置・姿勢と、成形シート1の既知の搬送速度と、送りロール5の既知の回転速度とに基づき、凹陥部6へと搬送されるカップ部2を基準とした凹陥部6の正しい位置・姿勢を決定する。作動の確実性をさらに向上させるためには、送りロール5の温度を捉えるためのセンサーと、カバーシート3及び成形シート1が送りロール5とシールロール8との間にあることを捉えるためのセンサーとが、本実施形態の装置に、追加して割り当てられる。このようにして、加熱可能なシールロール8が、樹脂製の送りロール5に当接するのを防止する。圧力媒体配管16には比例バルブ13及び/または回路切り替えバルブが取り付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の装置についての模式的な斜視図である。
【図2】送りロールのみを取り出して示した斜視図である。圧力室を閉じるカバーを省いた状態で描いている。
【図3】図2の送りロールの側面図である。圧力室に圧力を印加した際の応力を、複数の矢印によって表している。
【図4】送りロールの断面、及び、送りロールの使用に必要なアセンブリーを示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 成形シート 2 カップ部 3 カバーシート 4 ロール駆動部
5 送りロール 6 凹陥部 7 ハブ 8 シールロール
9 センサー 10 スポーク 11 カバー
12 回転フィードスルー 13 比例バルブ 14 スペーサー付きボルト
15 圧力室 16 圧力媒体配管 17 圧力媒体供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品が充填されたカップ部(2)またはその他の複数のカップ部(2)を備える成形シート(1)をカバーシート(3)と接合してカップ部を密封するためのシール装置であって、カップ部(2)のための凹陥部(6)を周面に備えていてロール駆動部(4)でもって駆動可能な送りロール(5)と、この送りロール(5)に組み合わさって回転するシールロール(8)とからなり、送りロール(5)とシールロール(8)との間にて、成形シート(1)及びカバーシート(3)を通過させてシール処理することが可能であるシール装置において、
送りロール(5)中には、圧力室(15)が形成され、この圧力室(15)が、圧力媒体配管(16)を通じて圧力媒体供給源(17)に接続されていることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
送りロール(5)は、引っ張り弾性率が金属よりも小さい材料からなることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
送りロール(5)が樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載のシール装置。
【請求項4】
送りロール(5)がフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項2または3に記載のシール装置。
【請求項5】
送りロール(5)がポリテトラフルオロエチレン樹脂からなることを特徴とする請求項4に記載のシール装置。
【請求項6】
送りロール(5)がポリアミド樹脂からなることを特徴とする請求項3に記載のシール装置。
【請求項7】
圧力室(15)が複数備えられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシール装置。
【請求項8】
送りロール(5)が中心部(7)を備え、この中心部(7)から周面に向けて複数のスポーク(10)が突き出し、これらスポーク(10)は、周方向に均等に分布するように配置された複数の圧力室(15)間を仕切る壁をなしていることを特徴とする請求項7に記載のシール装置。
【請求項9】
圧力室(15)が、軸方向から送りロール(5)に取り付けられた2つのカバー(11)によって閉じられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のシール装置。
【請求項10】
両側の2つのカバー(11)が、圧力室(15)を貫いて延びるスペーサー付きボルト(14)を通じて、互いに接続されていることを特徴とする請求項9に記載のシール装置。
【請求項11】
圧力媒体配管(16)が、回転軸とのシール部を有する導管接続部を通じて、圧力媒体供給源(17)に接続していることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のシール装置。
【請求項12】
制御システムの一部分として、成形シート(1)のカップ部(2)を捉えるためのセンサー(9)が備えられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のシール装置。
【請求項13】
送りロール(5)の温度を捉えるためのセンサーが備えられていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のシール装置。
【請求項14】
圧力媒体配管(16)中に、比例バルブ及び/または回路切り替え式バルブが取り付けられることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のシール装置。
【請求項15】
送りロール(5)とシールロール(8)との間における、カバーシート(3)及び成形シート(1)の存在を検知するためのセンサーが備えられることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のシール装置。
【請求項16】
圧力媒体が、圧縮空気またはその他の流体であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のシール装置。
【請求項17】
圧力室(15)は、圧力を印加した際に外径のみが変化するように設けられたことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−306502(P2006−306502A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124471(P2006−124471)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(502023516)ウールマン パック−ジステメ ゲーエムベーハー ウント コンパニ カーゲー (19)
【氏名又は名称原語表記】Uhlmann Pac−Systeme GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Uhlmannstrasse 14−18, 88471 Laupheim, Deutschland
【Fターム(参考)】