説明

カテーテル電極に選択的にエネルギーを供給するためのシステムおよび方法

【課題】インピーダンス測定値に基づいてカテーテル電極に選択的にエネルギーを供給して、改善されたアブレーション能力および改善されたエネルギー効率を提供するシステム、方法、およびカテーテルに関する。
【解決手段】本発明は、先端部電極と共に概ね連続的な組織接触面を形成するカテーテル径方向電極の選択的なエネルギー供給に関する。この選択は、各径方向電極の組織との接触の程度を示唆するインピーダンス測定値に基づいて行われる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、心臓の電気診断および治療用のカテーテルに関し、詳細には、マッピングおよびアブレーション用のカテーテルに関する。
【0002】
〔発明の背景〕
心室頻拍(VT)が最も一般的である心不整脈は、主な死因である。患者の大部分では、VTは、心室の内面に近接した1mm〜2mmの病変に起因する。あるVTの治療法では、心臓の電気経路をマッピングして病変の位置を求め、活性部位をアブレーションする。
【0003】
参照して全ての開示内容を本明細書に組み入れる米国特許第5,546,951号、米国特許出願第08/793,371号、および国際公開第WO96/05768号に、心臓内の正確な位置に応じて、局所活性時間などの心組織の電気特性を検出するための方法が開示されている。このようなデータは、遠位端部に電気センサおよび位置センサを備えた1または複数のカテーテルを心臓内に挿入して得られる。カテーテル先端部の正確な3次元位置は、カテーテルの位置センサによって確認できる。位置センサは、電磁界などの外部で生成される非イオン化フィールド内でのその位置センサの正確な位置に応じた信号を生成して作動する。位置情報の取得と同時に、電気情報も、カテーテルの遠位先端部に設けられた少なくとも1つの電極によって得られる。カテーテルに設けられたセンサによる位置情報および電気情報の正確な検出には、通常は、カテーテル電極が組織に接触しているという高い確度が必要である。
【0004】
このようなデータに基づいた心臓の電気活性の地図の作成方法が、参照して全ての開示内容を本明細書に組み入れる、それぞれ1998年7月24日出願の米国特許出願第09/122,137号および1999年7月22日出願の米国特許出願第09/357,559号、および欧州特許出願第974,936号に開示されている。臨床環境では、心室の電気活性の詳細で包括的な地図を作成するために、心臓内の100またはそれ以上の部位でデータを蓄積するのは一般的でない。上記した位置センサの使用は、心室の活性の詳細で正確な地図を作成するのに有用である。
【0005】
ポジションセンサすなわち位置センサを含むカテーテルを用いて、心臓の表面における点の経路を決定することもできる。このような経路を用いて、組織の収縮性などの機械運動特性を推論することができる。参照して全ての開示内容を本明細書に組み入れる米国特許第5,738,096号に開示されているように、このような運動特性を示す地図は、局所電気情報を示す地図に重ね合わせることができ、心臓の十分な数の点で経路情報を収集して作成することができる。このような運動特性の正確な地図では、カテーテルの先端部が心組織に接触している状態でデータが取得されたという確信が必要である。
【0006】
上記したように作成した詳細な地図は、例えば、心臓の電気活性の伝播を変更して正常な心リズムを回復させる組織アブレーションなどの治療行為の決定の基準として役立つであろう。心臓アブレーションでは、通常は無線周波数(RF)範囲のエネルギーを、遠位端部にアブレーション電極を有するカテーテルによって、心臓の内面の選択された点に供給する。アブレーションは、遠位先端部電極を異常な電気活性部位に接触させて、遠位先端部電極に接続された外部RF発生器から遠位先端部電極を介したRFエネルギーの供給を開始して行う。アブレーションは、遠位先端部電極が心壁に接触している場合に最も効率的となる。先端部電極と心壁が接触していない場合または接触が不十分な場合は、RFエネルギーが血液中に散逸したり、先端部電極の故障の可能性と同時に血餅形成の可能性もある。したがって、電極と組織の接触を検出して接触を確実にする方法およびシステムによってマッピングとアブレーションの両方を行うことが重要である。
【0007】
米国特許第5,935,079号、同第5,891,095号、同第5,836,990号、同第5,836,874号、同第5,673,704号、同第5,662,108号、同第5,469,857号、同第5,447,529号、同第5,341,807号、同第5,078,714号、およびカナダ特許出願第2,285,342号を含め、多数の文献に、電極と組織の接触を決定するための方法が報告されている。例えば、米国特許第5,935,079号、同第5,836,990号、同第5,447,529号、および同第6,569,160号などの多数の文献では、先端部電極と戻り電極との間のインピーダンスを測定して電極と組織の接触を決定している。参照して全ての開示内容を本明細書に組み入れる米国特許第6,569,160号に開示されているように、血液のインピーダンスは、組織のインピーダンスよりも通常は低いことが一般に知られている。したがって、組織との接触は、一連の電極の前後のインピーダンスを、電極が組織に接触している場合の予め測定したインピーダンス値、および電極が血液のみに接触している場合の予め測定したインピーダンス値と比較して検出される。
【0008】
一般的なアブレーション電極の不都合な点は、外傷の大きさがアブレーション電極の向きによって決まるため、外傷の大きさの正確な予測が困難なことである。例えば、7フレンチ(約2.22mm)のカテーテル(外径が2mmを少し超える)は、その遠位端部に、約4mm〜約8mmの長さのアブレーション先端部電極を備えている。アブレーション電極が、組織に対して垂直に配置されると、電極の比較的小さい表面積が組織に接触する。これとは対照的に、アブレーション電極が、組織に対して概ね平行に配置される、すなわちアブレーション電極が組織の側面に配置されると、比較的大きい表面積が組織に接触する。外傷の大きさは、組織と接触している表面積の大きさに関連する場合が多く、特に血液の方が組織よりも導電性が高いため、組織と全く接触していない電極部分を介して相当のエネルギーが喪失する。
【0009】
さらに、先端部電極の過熱により、電極表面における炭化および/または血栓の形成を含め、合併症が起こりうる。炭化および血栓が生成されると、アブレーションの際またはアブレーションの後のカテーテルの抜き取りの際に、この炭化および血栓が電極から分離することがあり、危険である。
【0010】
〔発明の概要〕
本発明は、インピーダンス測定値に基づいてカテーテル電極に選択的にエネルギーを供給して、改善されたアブレーション能力および改善されたエネルギー効率を提供するシステム、方法、およびカテーテルに関する。具体的には、本発明は、先端部電極と共に概ね連続的な組織接触面を形成するカテーテル径方向電極の選択的なエネルギー供給に関する。この選択は、各径方向電極の組織との接触の程度を示唆するインピーダンス測定値に基づいて行われる。
【0011】
カテーテル上の電極に選択的にエネルギーを供給するためのシステムは、カテーテル本体と先端部電極および複数の径方向電極を有する先端部分とを有するカテーテル、および戻り電極を含む。このシステムは、インピーダンス試験信号を生成する信号生成器およびマルチプレクサーを含む。マルチプレクサーは、信号生成器と特定の径方向電極との間の電気的な接続を常に変更する第1のモード、および信号生成器を選択された径方向電極に接続する第2のモードで作動するように構成されている。システムは、インピーダンス測定回路をさらに含む。インピーダンス測定回路は、組織との接触を示唆する各径方向電極のインピーダンス測定値を生成するように構成されている。システムはまた、マルチプレクサーが第1のモードまたは第2のモードで作動するようにコマンドを出すように構成されているマイクロコントローラを含む。アブレーションエネルギー源も、先端部電極および選択された径方向電極にエネルギーを供給するために設けられている。
【0012】
本発明の方法は、カテーテル本体と先端部電極およびこの先端部電極の近位側の複数の径方向電極を備えた先端部分とを含むカテーテルを用意するステップ、および戻り電極を用意するステップを含む。この方法は、インピーダンス試験信号を生成するように構成された信号生成器を用意するステップ、および信号生成器と特定の径方向電極との間の電気的な接続を変更するステップをさらに含む。この方法は、各径方向電極が組織との接触を示唆するインピーダンス試験信号を受け取っている時に、各径方向電極のインピーダンス測定値を得るステップ、およびインピーダンス測定値が最も高い径方向電極を特定するステップをさらに含む。この方法は、残りの径方向電極を除いて、インピーダンスの測定値が最も高い径方向電極と信号生成器との間の電気的な接続を維持するステップ、および選択されなかった径方向電極を除いて、インピーダンスが最も高い径方向電極にアブレーションエネルギーを供給するステップをさらに含む。
【0013】
本発明のカテーテルは、外壁、近位端部、遠位端部、および内部を通る1つの中心内腔を有するカテーテル本体と、このカテーテル本体の近位端部における制御ハンドルとを含む。カテーテルはまた、近位端部および遠位端部を有する可撓性チューブのセグメントを備える先端部分を含み、この可撓性チューブセグメントは、内部を通る少なくとも1つの内腔を有し、この先端部分の近位端部が、カテーテル本体の遠位端部に固着され、先端部電極が、この先端部分のチューブの遠位端部に固着されている。さらに、複数の径方向電極が、先端部電極のすぐ近位側のチューブに固着されており、各径方向電極は、先端部電極と共に、特定の概ね連続的な組織接触面を形成するように構成されている。
【0014】
〔詳細な説明〕
本発明の上記および他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めば、よりよく理解できるであろう。
【0015】
本発明は、改善されたエネルギー効率でアブレーションするためのシステムおよび方法、ならびにこのようなシステムおよび方法に用いるカテーテルを提供する。本発明は、先端部電極と共に概ね連続的な組織接触面を形成するカテーテル径方向電極の選択的なエネルギー供給に関する。この選択は、各径方向電極の組織との接触の大きさを示唆するインピーダンスの測定値に基づいて決定される。
【0016】
図1を参照すると、カテーテル10は、近位端部および遠位端部を有する細長いカテーテル本体12、このカテーテル本体の遠位端部における中間部分14、カテーテル本体の近位端部における制御ハンドル16、およびカテーテル本体の遠位端部における潅流先端部分26を含む。この先端部分は、先端部電極28、およびこの先端部電極のすぐ近位側の複数の径方向電極37を有する。カテーテルの先端部分26は、患者の体内のカテーテルの位置および向きを決定するために電磁位置センサ72を備えることもできる。
【0017】
図2および図2Aを参照すると、カテーテル本体12は、1つの軸方向すなわち中心内腔18を備えた細長い管状構造を含む。カテーテル本体12は、可撓性すなわち曲げることができるが、その長さに沿って実質的に非圧縮性である。カテーテル本体12は、あらゆる適当な構造にすることができ、あらゆる適当な材料から形成することができる。現在好適な構造は、ポリウレタンまたはPEBAXからなる外壁20を含む。この外壁20は、制御ハンドル16が回転する時にカテーテル10の中間部分14がこの回転に一致して回転するように、カテーテル本体12の捩り剛性を高めるステンレス鋼などの埋込み編メッシュを含む。
【0018】
カテーテル本体12の外径は、それ程重要ではないが、好ましくは、約8フレンチ(直径が約2.55mm)、より好ましくは7フレンチ(直径が約2.22mm)以下である。同様に、外壁20の厚みもそれ程重要ではないが、中心内腔18が、少なくともプーラーワイヤ50、リード線40、42、44、第1の潅流チューブセグメント88、およびセンサケーブル74を受容できるように十分に薄い。所望に応じて、外壁20の内面は、改善された捩じり剛性が得られるように強化チューブ22で裏打ちされる。強化チューブ22の近位端部は、接着接合部15によって外壁に固定されている。強化チューブ22の遠位端部は、接着接合部17によって外壁に固定されている。特に好適なカテーテルは、外径が約0.090インチ〜約0.094インチ(約2.286mm〜約2.388mm)、内径が約0.061インチ〜約0.065インチ(約1.549mm〜約1.651mm)の外壁20を有する。
【0019】
図3A〜図3Cに示されているように、カテーテル本体12の遠位側の中間部分14は、複数の内腔を備えたチューブ19の短い部分を含む。第1の内腔30は、電極リード線40、42、および44を受容している。第2の内腔32は、プーラーワイヤ50を受容している。第3の内腔34は、電磁位置センサ72のセンサケーブル74を受容している。第4の内腔36は、第1の注入チューブセグメント88に移送される流体の通過を可能にし、遠位端部が先端部電極28内にある第2の注入チューブ89の近位部分を受容している。チューブ19は、好ましくはカテーテル本体12よりも可撓性に優れた適当な非毒性材料から形成される。チューブ19の現在好適な材料は、ブレードポリウレタン(braided polyurethane)、すなわち編ステンレス鋼などの埋込みメッシュを備えたポリウレタンである。各内腔の大きさは、それ程重要ではないが、リード線、プーラーワイヤ、センサケーブル、または任意の他の構成要素を受容するのに十分な大きさである。
【0020】
カテーテルの有効長さ、すなわち体内に挿入できる部分は、所望に応じて様々にすることができる。好ましくは、有効長さの範囲は、約110cm〜約120cmである。中間部分14の長さは、有効長さに対して比較的小さい割合であり、好ましくは、約3.5cm〜約10cm、より好ましくは、約5cm〜約6.5cmである。
【0021】
カテーテル本体12を中間部分14に取り付けるための好適な手段が、図2に例示されている。中間部分14の近位端部は、カテーテル本体12の外壁20の内面に受容される外周面ノッチ24を含む。中間部分14とカテーテル本体12は、接着剤などで取り付けられている。
【0022】
所望に応じて、スペーサ(不図示)を、強化チューブ22が存在する場合はその遠位端部と中間部分14の近位端部との間のカテーテル本体内に配置することができる。スペーサは、カテーテル本体12と中間部分14の接合部における柔軟性の移行部となり、この接合部が、折れたり捩じれたりしないでスムーズに曲がることができる。このようなスペーサを有するカテーテルは、参照して開示内容を本明細書に組み入れる米国特許第5,964,757号に開示されている。
【0023】
図4Aおよび図4Bを参照すると、中間部分14の遠位端部に、先端部分26が設けられている。好ましくは、先端部分26は、チューブ19の外径とほぼ同じ直径を有する。例示されている実施形態では、先端部分26は、先端部電極28、およびこの先端部電極28の近位側の位置センサ72を受容するプラスチックハウジングすなわち短いチューブ35を有する。プラスチックハウジング35の近位端部は、チューブ19の遠位端部に形成された外周ノッチ24(図3Aおよび図3B)を受容しており、ポリウレタン接着剤などで結合されている。好ましくは、プラスチックハウジングは約1cmの長さである。
【0024】
先端部電極28は、全体的に中実であるが、流路38を有する。図示されている実施形態では、流路38は、軸方向分岐路47、およびこの軸方向分岐路の遠位端部から先端部電極28の外面に向かって径方向に延びる複数の横方向分岐路48を含む。流路の構造は、所望に応じて様々に変更できることを理解できよう。
【0025】
先端部電極28の近位端部に、盲孔31が形成されている。この盲孔31は、その位置が、プーラーワイヤ50を受容している第2の内腔32に概ね一致している。詳細は後述するが、先端部電極28に接続されるプーラーワイヤの遠位端部およびリード線40の遠位端部は共に、盲孔31内に固定することができる。好適な先端部電極は、有効長さ、すなわちこの先端部電極の遠位端部からチューブ35の遠位端部までの距離は約3.5mmであり、実際の長さ、すなわちこの先端部電極の遠位端部から近位端部までの距離は約4.0mmである。
【0026】
先端部電極28は、その近位端部に形成されたステム41によってプラスチックハウジング35に取り付けられている。このステム41は、チューブ35の遠位端部によって受容されている。ステム41は、接着剤などで取り付けられている。プーラーワイヤ50およびリード線40は、先端部電極28を先端部分26の所定の位置に保持する役割を果たしている。
【0027】
本発明に従えば、先端部分26は、概ね同じ大きさを有し、同じ角度の間隔で配置された複数の細長い径方向電極37iを有する。先端部分26のチューブ35に取り付けられている。各電極37iは、並んで配置され、全体としてチューブ35の周りを約360度に亘って取り囲んでいる。各径方向電極を近接する径方向電極から電気的に絶縁するために、各径方向電極間に長手方向のギャップが設けられている。このギャップは、例えばポリウレタンなどの非導電性材料43で満たすことができる。したがって、電極37iは、チューブのほぼ全周を覆っている。さらに、電極37iの遠位端部が、先端部電極のすぐ近位側に位置するため、先端部分26が非垂直角に位置する場合は、先端部電極28と少なくとも1つの径方向電極37iが、組織54との概ね連続的な細長い接触面53を形成する。図5に示されているように、径方向電極37bは、先端部電極28と共に、組織54との大きな概ね連続的な接触面53を形成して、大きな外傷59を形成可能である。組織表面の形状によって異なるが、概ね連続的な接触面53の大きさは、先端部分26が組織表面55に対して概ね垂直すなわち約90度の場合に一般に最小となり、先端部分28の組織表面55に対する角度が大きくなるにつれて増大し、先端部分26が組織表面55に対して概ね平行、すなわち組織表面に延在して約0度の角度の場合に最大となる。
【0028】
詳細は後述するが、本発明は、アブレーションの際に改善されたエネルギー効率が得られるように、組織との接触が最大な径方向電極(例えば、図5の電極37b)の選択的なエネルギー供給を可能にする。すなわち、組織と全くまたは殆ど接触していない径方向電極(例えば、図5の電極37a、37c、および37d)にアブレーションエネルギーを供給しないで、エネルギーを慎重に供給して、周囲の血液へのエネルギー損失を最小限にする。本発明の特徴に従えば、n個の径方向電極37a〜37nを設けることにより、各径方向電極が、カテーテルの先端部分の外周組織接触面の1/n部分を占める。そして、唯1つの径方向電極(すなわち、組織との接触が最大な径方向電極)を介してアブレーションエネルギーを供給することにより、径方向電極の1/nの表面積は、当然、電流密度を増大させる。電流密度が高いため、低電力での使用が可能となり、カテーテル10による効率が大幅に向上する。
【0029】
図5に示されているように、特に先端部電極が組織に押圧されると、先端部電極は、その位置により、組織と概ね良好に接触する。したがって、開示されている実施形態では、先端部電極28は、操作者によってアブレーションエネルギーが供給される場合は、常にアブレーションエネルギーを受け取り、この慎重な方法の影響を受けない。
【0030】
さらに、径方向電極に選択的にエネルギーを供給することにより、先端部分26は、加熱しにくくなるため、組織が、炭化および血栓などの過熱に関連したリスクの影響を受けにくくなる。
【0031】
当分野の一般的な技術者であれば、径方向電極の個数は、様々にすることができ、各径方向電極が全体としてチューブ35の周りを約360度に亘ってその外周面を覆えば、少なくとも2個〜約8個の範囲とすることができる。例示されている実施形態では、4つの四分円電極37a〜37dが設けられており、各電極は、概ね矩形であり、チューブ35の周りを約90度覆っている。各径方向電極の長さは、約4.0mm〜10mmとすることができ、好ましくは約8.0mmである。当分野の一般的な技術者であれば、各径方向電極の幅は、カテーテルの先端部分の大きさおよび径方向電極の個数によって決まることを理解できよう。
【0032】
中間部分14のチューブ19の遠位部分にリング電極56を設けることもできる。例示されている実施形態では、径方向電極37の近位側に3つのリング電極が設けられている。リング電極56により、操作者が、カテーテル10の先端部分36から電気生理学的データを収集することができる。したがって、リング電極の存在およびその個数は、所望に応じて様々にすることができる。
【0033】
先端部電極28、径方向電極37、およびリング電極56は、あらゆる好適な材料、例えば機械加工されたプラチナイリジウム棒材(90%プラチナ/10%イリジウム)から形成することができる。
【0034】
先端部電極28、径方向電極37、およびリング電極56のそれぞれは、別個のリード線に接続されている。リード線40、42、および44は、中間部分14の第1の内腔30、カテーテル本体12の中心内腔18、および制御ハンドル16の中を通って、適当なモニタ(不図示)にプラグインできる入力ジャック(不図示)まで近位端部が延びている。カテーテル本体12の中心内腔18、制御ハンドル16、および中間部分14の中を通るリード線40、42、44の部分は、ポリイミドが好ましいが、あらゆる好適な材料から形成できる非導電保護シース39に覆われている。シース39は、その遠位端部が、ポリウレタン接着剤などで第1の内腔30内に接着されて中間部分14の遠位端部に固定されている。例示されている実施形態では、2つのシース39Aおよび39Bが設けられている。シース39Aは、先端部電極28のリード線40および径方向電極37のリード線42に用いられる。シース49Bは、リング電極56のリード線44に用いられる。シース39Bの遠位端部は、最も近位側のリング電極56の近位側に位置する。シース39Aの遠位端部は、径方向電極37の近位側に位置する。
【0035】
リード線42および44は、あらゆる従来の技術によって径方向電極37およびリング電極56に取り付けられる。これらの電極の1つにリード線を接続するには、まずチューブ19または35を通る小さな孔を形成するのが好ましい。このような孔は、例えば、チューブに針を挿入して、永久的な孔が形成されるように針を十分に加熱して形成することができる。次に、リード線を、マイクロフックなどを用いて孔に通す。次に、リード線の両端の全てのコーティングを剥がして、電極の下側にハンダ付けまたは溶接する。次に、電極を孔の上に配置して(リング電極の場合は、孔の上の位置にスライドさせる)ポリウレタン接着剤などで所定の位置に固定する。
【0036】
先端部分26は、チューブ35の内腔に結合された電磁位置センサ72を有する。電磁センサケーブル74が、この電磁位置センサの近位端部から、先端部分14の第3の内腔34およびカテーテル本体12の中心内腔18の中を通って制御ハンドル16内に延びている。図1に示されているように、電磁センサケーブル74が、制御ハンドル16の近位端部から延出して、アンビルカルコード98を介して、回路基板(不図示)を受容するセンサ制御モジュール75まで延びている。別法では、回路基板は、例えば、参照して開示内容の全てを本明細書に組み入れる米国特許第5,964,757号に開示されているように、制御ハンドル16内に受容することもできる。電磁センサケーブル74は、プラスチックで覆われたシース内に封入された複数のワイヤを含む。センサ制御モジュール75内で、電磁センサケーブル74のワイヤが、回路基板に接続されている。回路基板は、電磁センサ72から受けとった信号を増幅し、この信号を、図1に示されているようにセンサ制御モジュール75の近位端部におけるセンサコネクタ77によってコンピュータが理解できる形態でコンピュータに送信する。また、カテーテルが唯1回の使用用にデザインされているため、回路基板は、カテーテルの使用後約24時間で回路基板をシャットダウンするEPROMチップを含むことができる。こうすることにより、カテーテル、または少なくとも電磁センサが、2回使用されることがない。本発明に使用するのに適した電磁センサは、参照して開示内容を本明細書に組み入れる米国特許第5,558,091号、同第5,443,489号、同第5,480,422号、同第5,546,951号、同第5,568,809号、および同第5,391,199号、ならびに国際公開第95/02995号に開示されている。好適な電磁マッピングセンサ72は、長さが約6mm〜約7mmであり、直径が約1.3mmである。
【0037】
再び図2を参照されたい。プーラーワイヤ50は、カテーテル本体12の中を通り、その近位端部が制御ハンドル16(図6を参照)に固定され、その遠位端部が先端部電極28(図4Aを参照)に固定されている。プーラーワイヤは、ステンレス鋼やニチノールなどのあらゆる好適な材料から形成され、好ましくはテフロン(登録商標).RTM.などのコーティングを有する。このようなコーティングは、プーラーワイヤに滑性を付与する。プーラーワイヤは、約0.006インチ(約0.152mm)から約0.010インチ(約0.254mm)の直径を有するのが好ましい。
【0038】
圧縮コイル52が、プーラーワイヤ50を覆うようにカテーテル本体12内に配置されている。圧縮コイル52は、カテーテル本体12の近位端部から中間部分14の遠位端部に延びている。圧縮コイル52は、好ましくはステンレス鋼であるあらゆる好適な金属から形成される。圧縮コイル52は、可撓性すなわち曲げることができ、非圧縮性となるように緊密に巻かれている。圧縮コイルの内径は、好ましくは、プーラーワイヤ50の直径よりもわずかに大きい。プーラーワイヤ50に設けられたテフロン(登録商標).RTM.コーティングにより、プーラーワイヤ50が圧縮コイル52内を自由にスライドすることができる。所望に応じて、特に、リード線40、42、44が保護シース39によって覆われていない場合、圧縮コイルの外面を、例えばポリイミドチューブから形成される可撓性の非導電性シースによって覆い、カテーテル本体12内の他のあらゆるワイヤと圧縮コイル52との接触を防止することができる。
【0039】
圧縮コイル52は、その近位端部が、接着接合部51によってカテーテル本体12の強化チューブ22の近位端部に固定され、その遠位端部が、接着接合部57によって中間部分14に固定されている。接着接合部51および57は共に、ポリウレタン接着剤などを含むのが好ましい。このような接着剤は、カテーテル本体12の外面と中心内腔18との間に形成された孔から注射器などによって注入することができる。このような孔は、例えば、針などをカテーテル本体12の外壁20および強化チューブ22に刺入して、永久的な孔が形成されるように十分に加熱して形成することができる。次に、接着剤を、圧縮コイル52の外面に孔から導入し、その外周面に行き渡らせて、圧縮コイル52の全外周面の周りに接着接合部を形成する。
【0040】
図4Aに示されているように、プーラーワイヤ50は、その遠位端部が、盲孔31内で先端部電極に固定されている。プーラーワイヤ50を先端部電極28内に固定するための好適な方法では、金属チューブ46をプーラーワイヤ50の遠位端部に加締めて、金属チューブ46を盲孔31の内部でハンダ付けする。プーラーワイヤ50を先端部電極28内に固定することにより、さらなる支持が得られ、先端部電極28が先端部分26から脱落しにくくなる。別法では、プーラーワイヤ50は、先端部分26のチューブ35に取り付けるか、または中間部分14のチューブ19の遠位部分に取り付けることができる。中間部分14の第2の内腔32内において、プーラーワイヤ50が、好ましくはテフロン(登録商標).RTM.であるプラスチック製のシース58の中を通っている。このシース58は、中間部分14が撓んだ時に、プーラーワイヤ50がチューブ19の壁部内に刺さるのを防止する。
【0041】
中間部分14を撓ませるカテーテル本体12に対するプーラーワイヤ50の長手方向の運動は、制御ハンドル16の好適な操作によって行われる。図6に示されているように、制御ハンドル16の遠位端部は、プーラーワイヤ50を操作するためのつまみ62を備えたピストン60を含む。カテーテル本体12の近位端部は、収縮スリーブ64によってピストン60に接続されている。
【0042】
プーラーワイヤ50、リード線40、42、44、およびセンサケーブル74は、ピストン60の中を通っている。プーラーワイヤ50は、ピストン60の近位側に位置する固定ピン66に固定されている。ピストン60の内部において、センサケーブル74は、好ましくはポリウレタンから形成される別の保護シース91の中を通っている。保護シース39A、39B、および91は、接着接合部63で、好ましくはポリウレタン接着剤などによってピストン60に固定し、リード線40、42、44、およびセンサケーブル74が制御ハンドル16内を長手方向に移動できるようにして、ピストン60がプーラーワイヤ50を操作するために調節された場合に、リード線40、42、44、およびセンサケーブル74が破損しないようにする。プーラーワイヤが接着接合部63の近傍で長手方向に移動できるように、ピストン60の内部で、プーラーワイヤ50が、好ましくはポリイミドチューブである移送チューブ27の中を通っている。
【0043】
制御ハンドルの機構および作動は、参照して開示内容の全てを本明細書に組み入れる米国特許題6,602,242号に開示されている。当分野の通常の技術者であれば、1本のプーラーワイヤまたは複数のプーラーワイヤ(2方向に撓ませる場合)を操作するための他の制御ハンドルを本発明に用いることができることを理解できよう。
【0044】
図7は、カテーテル10を用いて、インピーダンスの測定値に基づいてシステムによって決定される組織との接触が最大な径方向電極に選択的にエネルギーを供給してアブレーションするためのシステム100を例示している。径方向電極37iはそれぞれ、別個のリード先端側42iによってカテーテルのハンドル16に接続されている。このカテーテルハンドル16から、システム100に電気的に接続されている。信号生成器102が、約10kHz〜約100kHz、好ましくは約50kHzの高周波数範囲の約2μAの、例えば交流(AC)信号である高周波数試験信号を、高出力インピーダンスバッファ106を介してマルチプレクサー104に送る。マルチプレクサー104は、複数のチャネル108iを有する。各チャネル108iは、同じ電流を受け取るように特定の径方向電極37iに接続されている。
【0045】
戻り電極110も、信号生成器102によって駆動される。戻り電極110への信号は、まずインバータ112によって位相が反転され、高出力インピーダンスバッファ114によって調整される。
【0046】
本発明の特徴に従えば、システム100は、各径方向電極の組織との接触の程度を示唆する各径方向電極のインピーダンスを測定するために、インピーダンス測定回路115を提供する。インピーダンス測定値が最も高い径方向電極のみにエネルギーを供給することにより、選択された径方向電極および先端部電極が、先端部電極だけよりも大きい組織との接触面積を形成し、アブレーションエネルギーが、組織と全くまたは殆ど接触していない他の径方向電極で浪費されない。インピーダンス測定回路115は、差動増幅器116、増幅器118、および同期検出器120を含む。差動増幅器116は、具体的には、選択された径方向電極37iおよび戻り電極110の前後の電圧である差分信号を測定する。この差分信号は、増幅器118によってさらに増幅される。増幅器118の出力は、同期検出器120に送られ、この同期検出器120が、AC信号を直流(DC)信号に変換し、外部のノイズに対するシステム100の感度を低下させる。次に、マイクロコントローラ122が、同期検出器120からの信号を用いてマルチプレクサー104を制御する。このため、マイクロコントローラは、少なくともカテーテル10における複数の径方向電極37iであるマルチプレクサー104の複数のチャネル108iを等しくする同期検出器120からの複数の異なるインピーダンス信号を、記憶されている各インピーダンス値に関連したチャネル108iにおける識別信号と共に、メモリ124に連続的に記憶する。したがって、マイクロコントローラ122は、組織との接触が最大な径方向電極37iのはずであるインピーダンス値が最も高いチャネル108i(従って径方向電極37i)を常に識別することができる。
【0047】
図7のフローチャートを参照すると、マイクロコントローラ122によって実行されるシステム100の動作を以下に説明する。蛍光透視ガイドまたは他の好適なガイド手段の下で、カテーテルを患者の体内に導入する。カテーテルを、適当な血管から患者の心臓内に送り、心室内に配置する。システム100およびマイクロコントローラ122の電源を入れる(ブロック130)。マイクロコントローラ122が、信号生成器を起動し、マルチプレクサーにコマンドを出して、このマルチプレクサーがスイッチモードで作動するようにする(ブロック132)。マルチプレクサーは、チャネル108i間で常に切り替え、信号生成器102からのインピーダンス試験信号が、常にただ1つの径方向電極37iに流れるようにする(ブロック134)。インピーダンス測定回路115は、マルチプレクサー108が、異なるチャネル108i間での切り替えの際に各径方向電極37iのインピーダンスを測定し(ブロック136)、このインピーダンス測定値が、各径方向電極の新しいインピーダンス測定値で常に更新されるメモリに記憶される。
【0048】
カテーテルの操作者が、アブレーションの準備ができて、押し込み起動接点(push-to-activate contact)129(図7)などの入力をトリガーすると(問合わせ138)、この押し込み起動接129が、マイクロコントローラ122に信号を送り、このマイクロコントローラ122がメモリ124にアクセスし、インピーダンス値が最も高いチャネル108を特定する(ブロック140)。2つ以上の径方向電極が同じ最大インピーダンス測定値を有する場合(ブロック141)、マイクロコントローラ122は、最も高いインピーダンス測定値の最も新しい径方向電極を選択する(ブロック142)。いずれの場合も、次に、マイクロコントローラ122が、マルチプレクサー104にコマンドを出して、このマルチプレクサー104が、ロック(または静止)モードに切り替え、アブレーション処置の間、マルチプレクサーの接続を特定されたチャネルに維持する(ブロック143)。
【0049】
次に、マイクロコントローラ122は、アブレーション電源126およびスイッチ128を使用可能にする(ブロック144)。スイッチ128は、先端部電極28にエネルギーを供給し、リード線がマルチプレクサー104から電流を受け取っている選択された径方向電極にアブレーション電流を流すことができる(ブロック146)。先端部電極28と選択された径方向電極37iを合わせた接触面が、改善されたエネルギー効率でより大きな外傷を形成する。なぜなら、アブレーション電流が、先端部電極28と、組織との接触が最大の唯1つの径方向電極37iに流れるためである。
【0050】
操作者は、アブレーション処置を完了して、ボタンまたはスイッチを解除すると、マイクロコントローラ122が、アブレーション電源126およびスイッチ128を切り(ブロック150)、マルチプレクサー104をスイッチモードの動作に戻す(ブロック132)。したがって、マルチプレクサー104が、そのチャネル108間で常に切り替える状態に戻り、信号生成器102からの試験信号が、異なるチャネルを介して各径方向電極37iに送られる。マイクロコントローラ122は、インピーダンス測定回路115からの各径方向電極37iのインピーダンス信号を受け取る状態に戻り、インピーダンス値が、記憶されているインピーダンス値のそれぞれに関連したチャネルの識別情報と共に、常にメモリ124に記憶され、リフレッシュされる。
【0051】
上記説明は、本発明の現在好適な実施形態を参照して行った。本発明が属する分野および技術における技術者であれば、記載した構造に対する改良および変更を、本発明の原理、概念、および範囲から著しく逸脱することなく実施できることを理解できよう。したがって、上記説明は、添付の図面に例示した正確な構造に限定されると解釈されるべきものではなく、むしろ、本発明の完全で公正な範囲を規定する添付の特許請求の範囲に一致すると解釈されるべきものである。
【0052】
〔実施の態様〕
(1)カテーテル上の電極に選択的にエネルギーを供給するためのシステムにおいて、
カテーテル本体、ならびに、先端部電極および複数の径方向電極を有する先端部分、を有するカテーテルと、
戻り電極と、
インピーダンス試験信号を生成する信号生成器と、
前記信号生成器と特定の径方向電極との間の電気的な接続を常に変更する第1のモード、および前記信号生成器を選択された径方向電極に接続する第2のモードで作動するように構成されたマルチプレクサーと、
組織との接触を示唆する各径方向電極のインピーダンス測定値を生成するように構成されたインピーダンス測定回路と、
前記マルチプレクサーが前記第1のモードまたは前記第2のモードで作動するように、前記マルチプレクサーにコマンドを出すように構成されたマイクロコントローラと、
前記先端部電極および前記選択された径方向電極にエネルギーを供給するように構成されたアブレーションエネルギー源と、
を含む、システム。
(2)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
選択されていない径方向電極を除いた、前記選択された径方向電極にアブレーションエネルギーを供給するように構成されたアブレーション電源、
をさらに含む、システム。
(3)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記マイクロコントローラは、前記選択された径方向電極を識別するように構成されている、システム。
(4)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記マイクロコントローラは、前記インピーダンス測定値に基づいて、前記選択された径方向電極を識別するようにさらに構成されている、システム。
(5)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
各前記径方向電極は、前記先端部電極と共に、特定の概ね連続した細長い組織接触面を形成するように構成されている、システム。
【0053】
(6)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記複数の径方向電極は、4個である、システム。
(7)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記選択された径方向電極は、最大のインピーダンス測定値を有する、システム。
(8)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記先端部電極および前記選択された径方向電極は、アブレーション電流を受け取る、システム。
(9)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
複数の前記径方向電極は、概ね等しい大きさである、システム。
(10)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記径方向電極は、前記先端部分の周りに概ね同じ角度で設けられている、システム。
【0054】
(11)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記インピーダンス測定値を記憶するメモリ、
をさらに含む、システム。
(12)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記インピーダンス測定回路は、差動増幅器および同期検出器を含む、システム。
(13)実施態様(12)に記載のシステムにおいて、
前記インピーダンス測定回路は、増幅器をさらに含む、システム。
(14)実施態様(11)に記載のシステムにおいて、
前記メモリは、新しいインピーダンス測定値で常にリフレッシュされる、システム。
(15)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記インピーダンス試験信号は、約10kHz〜約100kHzの範囲の周波数の交流電流を含む、システム。
【0055】
(16)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記インピーダンス試験信号は、約50kHzの周波数の交流電流を含む、システム。
(17)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記径方向電極は、前記先端部電極のすぐ近位側に位置する、システム。
(18)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記カテーテルは、前記先端部分で潅流を行えるように構成されている、システム。
(19)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記カテーテルは、前記先端部分に電磁位置センサを有する、システム。
(20)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記カテーテルは、前記径方向電極の近位側に少なくとも1つのリング電極を有する、システム。
【0056】
(21)実施態様(1)に記載のシステムにおいて、
前記複数の径方向電極の個数は、約2個〜約8個の範囲である、システム。
(22)カテーテル電極に選択的にエネルギーを供給する方法において、
カテーテル本体、ならびに、先端部電極およびこの先端部電極の近位側の複数の径方向電極を備えた先端部分、を含むカテーテルを用意するステップと、
戻り電極を用意するステップと、
インピーダンス試験信号を生成するように構成された信号生成器を用意するステップと、
前記信号発生器と特定の径方向電極との間の電気的な接続を切り替えるステップと、
各前記径方向電極がインピーダンス試験信号を受け取っている時に、各前記径方向電極の組織との接触を示唆するインピーダンス測定値を得るステップと、
インピーダンス測定値が最も高い径方向電極を特定するステップと、
残りの径方向電極を除いて、前記インピーダンス測定値が最も高い径方向電極と前記信号生成器との間の電気的な接続を維持するステップと、
選択されなかった径方向電極を除いて、前記インピーダンス値が最も高い径方向電極にアブレーションエネルギーを供給するステップと、
を含む、方法。
(23)実施態様(22)に記載の方法において、
アブレーション処置の間、前記信号発生器と前記インピーダンス測定値が最も高い径方向電極との間の電気的な接続を維持する、方法。
(24)アブレーションカテーテル上の電極にエネルギーを選択的に供給するためのシステムにおいて、
カテーテル本体を有するカテーテルであって、先端部電極および当該先端部電極の近位側の複数の径方向電極を有する先端部分を有する、前記カテーテルと、
戻り電極と、
インピーダンス試験信号を生成する信号生成器と、
前記信号発生器と特定の径方向電極との間の電気的な接続を常に変更する第1のモード、および前記信号発生器を選択された径方向電極に接続する第2のモードで作動するように構成されたマルチプレクサーと、
前記マルチプレクサーが前記第1のモードで作動している場合に、組織との接触を表す各径方向電極のインピーダンス測定値を供給するように構成されたインピーダンス測定回路と、
前記マルチプレクサーが前記第1のモードまたは前記第2のモードで作動するように、前記マルチプレクサーにコマンドを出すように構成されたマイクロコントローラと、
前記インピーダンス測定値を記憶するように構成されたメモリと、
前記先端部電極および前記選択された径方向電極にエネルギーを供給するように構成されたアブレーションエネルギー源と、
前記アブレーションエネルギーを前記選択された径方向電極に接続するように構成されたスイッチと、
を含む、システム。
(25)実施態様(24)に記載のシステムにおいて、
前記メモリは、前記記憶されたインピーダンス測定値に関連した径方向電極識別データを記憶するようにさらに構成されている、システム。
【0057】
(26)実施態様(24)に記載のシステムにおいて、
前記メモリは、新しいインピーダンス測定値でリフレッシュされる、システム。
(27)カテーテル電極に選択的にエネルギーを供給する方法において、
カテーテル本体、ならびに、先端部電極および当該先端部電極の近位側の複数の径方向電極を備えた先端部分、を含むカテーテルを用意するステップと、
戻り電極を用意するステップと、
インピーダンス試験信号を生成するように構成された信号生成器を用意するステップと、
前記信号発生器から特定の径方向電極への電気的な接続を変更するステップと、
各前記径方向電極がインピーダンス試験信号を受け取っている時に、各前記径方向電極の組織との接触を示唆するインピーダンス測定値を得るステップと、
前記インピーダンス測定値に関連した径方向電極識別データおよび前記インピーダンス測定値を記憶するステップと、
インピーダンス測定値が最も高い径方向電極を特定するステップと、
残りの径方向電極を除いて、前記インピーダンス測定値が最も高い径方向電極と前記信号生成器との間の電気的な接続を維持するステップと、
選択されなかった径方向電極を除いて、前記インピーダンス値が最も高い径方向電極および前記先端部電極にアブレーションエネルギーを供給するステップと、
を含む、方法。
(28)アブレーションカテーテルにおいて、
外壁、近位端部、および遠位端部、を有するカテーテル本体であって、当該カテーテル本体の中を通る1つの中心内腔を有する、前記カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の前記近位端部に設けられた制御ハンドルと、
近位端部および遠位端部を有する可撓性チューブのセグメントを含む先端部分であって、前記可撓性チューブは、当該可撓性チューブの中を通る少なくとも1つの内腔を有し、前記先端部分の近位端部が、前記カテーテル本体の前記遠位部分に固着されている、前記先端部分と、
前記先端部分の前記チューブの前記遠位端部に固着された先端部電極と、
前記先端部電極のすぐ近位側の前記チューブに固着された複数の径方向電極であって、これらの各径方向電極が、前記先端部電極と共に、特定の概ね連続した組織接触面を形成するように構成されている、前記複数の径方向電極と、
を含む、アブレーションカテーテル。
(29)実施態様(28)に記載のアブレーションカテーテルにおいて、
前記先端部電極は、前記先端部分の内腔に連通した少なくとも1つの流路を含み、
前記流路は、少なくとも1つの横方向流路を含むか、または前記先端部電極の相互連結孔によって形成されている、
アブレーションカテーテル。
(30)実施態様(29)に記載のアブレーションカテーテルにおいて、
近位端部および遠位端部を有する注入チューブ、
をさらに含み、
前記注入チューブは、前記カテーテル本体の前記中心内腔および前記先端部分の内腔の中を通り、この注入チューブの遠位端部が、前記先端部電極の前記流路の前記近位端部に固定されており、これにより、流体が、前記注入チューブを通って、前記先端部電極の前記流路に入り、前記先端部電極を介して、前記先端部電極の外面に流れることができる、
アブレーションカテーテル。
【0058】
(31)実施態様(28)に記載のアブレーションカテーテルにおいて、
前記制御ハンドルの操作によって前記先端部分を撓ませるための手段、
をさらに含む、アブレーションカテーテル。
(32)カテーテル上の電極に選択的にエネルギーを供給するためのシステムにおいて、
カテーテル本体、ならびに、先端部電極および複数の径方向電極を有する先端部分、を有するカテーテルと、
戻り電極と、
インピーダンス試験信号を生成するための手段と、
第1のモードで、前記信号生成器と特定の径方向電極との間の電気的な接続を変更し、第2のモードで、前記信号生成器を選択された径方向電極に接続するための手段と、
組織との接触を示唆する各径方向電極のインピーダンスを測定するための手段と、
前記第1のモードまたは前記第2のモードで作動するように変更するための手段を制御するための手段と、
アブレーションエネルギーを用いて、前記先端部電極および前記選択された径方向電極にエネルギーを供給するための手段と、
を含む、システム。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に従ったカテーテルの実施形態の側面図である。
【図2】第1の直径に沿って切り取られた、カテーテル本体および中間部分の実施形態の側断面図である。
【図2A】第1の直径に対して概ね垂直な第2の直径に沿って切り取られた、図2のカテーテル本体および中間部分の側断面図である。
【図3A】第1の直径に沿って切り取られた、中間部分および先端部分の実施形態の側断面図である。
【図3B】第1の直径に対して概ね垂直な第2の直径に沿って切り取られた、図3Aの中間部分および先端部分の側断面図である。
【図3C】図3Aの線3C‐3Cに沿って切り取られた、中間部分の長手方向の断面図である。
【図4A】先端部分の実施形態の側断面図である。
【図4B】図4Aの線4B‐4Bに沿って切り取られた、先端部分の長手方向の断面図である。
【図5】アブレーションして外傷を形成するために組織に接触している本発明のカテーテルの実施形態の模式的な斜視図である。
【図6】制御ハンドルの実施形態の側断面図である。
【図7】本発明に従ったカテーテル電極に選択的にエネルギーを供給するためのシステムの実施形態の模式的な線図である。
【図8】本発明に従ったカテーテル電極に選択的にエネルギーを供給する方法を模式的に例示するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル上の電極に選択的にエネルギーを供給するためのシステムにおいて、
カテーテル本体、ならびに、先端部電極および複数の径方向電極を有する先端部分、を有するカテーテルと、
戻り電極と、
インピーダンス試験信号を生成する信号生成器と、
前記信号生成器と特定の径方向電極との間の電気的な接続を常に変更する第1のモード、および前記信号生成器を選択された径方向電極に接続する第2のモードで作動するように構成されたマルチプレクサーと、
組織との接触を示唆する各径方向電極のインピーダンス測定値を生成するように構成されたインピーダンス測定回路と、
前記マルチプレクサーが前記第1のモードまたは前記第2のモードで作動するように、前記マルチプレクサーにコマンドを出すように構成されたマイクロコントローラと、
前記先端部電極および前記選択された径方向電極にエネルギーを供給するように構成されたアブレーションエネルギー源と、
を含む、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
選択されていない径方向電極を除いた、前記選択された径方向電極にアブレーションエネルギーを供給するように構成されたアブレーション電源、
をさらに含む、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記マイクロコントローラは、前記選択された径方向電極を識別するように構成されている、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記マイクロコントローラは、前記インピーダンス測定値に基づいて、前記選択された径方向電極を識別するようにさらに構成されている、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、
各前記径方向電極は、前記先端部電極と共に、特定の概ね連続した細長い組織接触面を形成するように構成されている、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記複数の径方向電極は、4個である、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記選択された径方向電極は、最大のインピーダンス測定値を有する、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記先端部電極および前記選択された径方向電極は、アブレーション電流を受け取る、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、
複数の前記径方向電極は、概ね等しい大きさである、システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記径方向電極は、前記先端部分の周りに概ね同じ角度で設けられている、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記インピーダンス測定値を記憶するメモリ、
をさらに含む、システム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記インピーダンス測定回路は、差動増幅器および同期検出器を含む、システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、
前記インピーダンス測定回路は、増幅器をさらに含む、システム。
【請求項14】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記メモリは、新しいインピーダンス測定値で常にリフレッシュされる、システム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記インピーダンス試験信号は、約10kHz〜約100kHzの範囲の周波数の交流電流を含む、システム。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記インピーダンス試験信号は、約50kHzの周波数の交流電流を含む、システム。
【請求項17】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記径方向電極は、前記先端部電極のすぐ近位側に位置する、システム。
【請求項18】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記カテーテルは、前記先端部分で潅流を行えるように構成されている、システム。
【請求項19】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記カテーテルは、前記先端部分に電磁位置センサを有する、システム。
【請求項20】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記カテーテルは、前記径方向電極の近位側に少なくとも1つのリング電極を有する、システム。
【請求項21】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記複数の径方向電極の個数は、約2個〜約8個の範囲である、システム。
【請求項22】
カテーテル電極に選択的にエネルギーを供給する方法において、
カテーテル本体、ならびに、先端部電極およびこの先端部電極の近位側の複数の径方向電極を備えた先端部分、を含むカテーテルを用意するステップと、
戻り電極を用意するステップと、
インピーダンス試験信号を生成するように構成された信号生成器を用意するステップと、
前記信号発生器と特定の径方向電極との間の電気的な接続を切り替えるステップと、
各前記径方向電極がインピーダンス試験信号を受け取っている時に、各前記径方向電極の組織との接触を示唆するインピーダンス測定値を得るステップと、
インピーダンス測定値が最も高い径方向電極を特定するステップと、
残りの径方向電極を除いて、前記インピーダンス測定値が最も高い径方向電極と前記信号生成器との間の電気的な接続を維持するステップと、
選択されなかった径方向電極を除いて、前記インピーダンス値が最も高い径方向電極にアブレーションエネルギーを供給するステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
アブレーション処置の間、前記信号発生器と前記インピーダンス測定値が最も高い径方向電極との間の電気的な接続を維持する、方法。
【請求項24】
アブレーションカテーテルにおいて、
外壁、近位端部、および遠位端部、を有するカテーテル本体であって、当該カテーテル本体の中を通る1つの中心内腔を有する、前記カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の前記近位端部に設けられた制御ハンドルと、
近位端部および遠位端部を有する可撓性チューブのセグメントを含む先端部分であって、前記可撓性チューブは、当該可撓性チューブの中を通る少なくとも1つの内腔を有し、前記先端部分の近位端部が、前記カテーテル本体の前記遠位部分に固着されている、前記先端部分と、
前記先端部分の前記チューブの前記遠位端部に固着された先端部電極と、
前記先端部電極のすぐ近位側の前記チューブに固着された複数の径方向電極であって、これらの各径方向電極が、前記先端部電極と共に、特定の概ね連続した組織接触面を形成するように構成されている、前記複数の径方向電極と、
を含む、アブレーションカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−185505(P2007−185505A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−355050(P2006−355050)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(500520846)バイオセンス・ウェブスター・インコーポレイテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster, Inc.
【住所又は居所原語表記】3333 Diamond Canyon Road, Diamond Bar, California 91765, U.S.A.
【Fターム(参考)】