説明

カムロブの成形方法

【課題】成形荷重が低く、しかも、カムトップに欠肉のないカムロブの成形方法を提供する。
【解決手段】一次中間成形品W1を成形する第一工程と、カムトップ8となる予定のカムトップ予定部6の径方向の肉厚が、カムベース9となる予定のカムベース予定部7の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔3を成形すると共に、カムトップ予定部側の外周にカムベース予定部7のベース円より径方向外側に突出した位置決め部5が成形された二次中間成形品W2を成形する第二工程と、位置決め部5を三次中間成形品成形ダイに当接させることによって位置決めし、二次中間成形品W2を軸線方向に押圧して、カムトップ8、カムベース9、及び予備孔3が変形した変形孔4が成形された三次中間成形品W3を鍛造にて成形する第三工程と、変形孔4より大きいカムロブ孔10を成形してカムロブW5を成形する第四工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の内燃機関に使用されるカムシャフトのカムロブの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カムロブの成形方法においては、熱間鍛造により、略円柱状の素材を軸線方向に押圧して樽状の一次中間成形品を成形し、続いて、樽状の一次中間成形品の軸心に、軸線に対する垂直断面形状が略円形の予備孔を打ち抜き、二次中間成形品を成形した後、二次中間成形品の予備孔にポンチを打ち込んで予備孔を埋め、この二次中間成形品を再度熱間鍛造して、カムロブに近い三次中間成形品を成形する。その後、三次中間成形品のポンチを引き抜いてカムロブ孔を形成し、カムロブ外形を切削加工により仕上てカムロブを成形している(特許文献1参照)。
【0003】
また、異なるカムロブの成形方法においては、冷間鍛造により、略円柱状の素材を軸線方向に押圧して外形にバリを有するカムロブを成形した後、カムロブの軸心に、軸線に対する垂直断面形状が略円形の予備孔とカムロブ外周のバリを同時に打ち抜き、その後更に、カムロブの外周を鍛造し、予備孔に余肉を張り出させ、カムロブの軸心に、軸線に対する垂直断面形状が略円形のカムロブ孔を打ち抜き、カムロブを成形している(特許文献2参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に示されるカムロブの成形方法においては、二次中間成形品の予備孔にポンチを打ち込んで予備孔を埋め、この二次中間成形品を再度鍛造するため、鍛造時に外周側にのみ肉が流動し、予備孔内に肉が流動できないため、成形荷重が高くなるという問題があった。
【0005】
一方、特許文献2に示されるカムロブの成形方法においては、カムロブの外形に欠肉が無いようにカムロブの外周に大きなバリを成形している。このため、成形型内でカムロブの外周にバリが成形された後は、肉が成形型内を流動できないので、成形荷重が高くなるという問題があった。
【特許文献1】特開平8−90139号公報
【特許文献2】特開2006−169961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、特許文献1において、一次中間成形品の軸心に、軸線に対する垂直断面形状が略円形の予備孔を成形した二次中間成形品に、ポンチで予備孔を埋めることなく、軸線方向に押圧して外周に加えて予備孔内に肉が流動できるようにし、成形荷重が低い状態で三次中間成形品を成形する方法が考えられる。
【0007】
しかし、予備孔は、一次中間成形品の軸心に成形され、しかも、予備孔内にも肉が流動するため、外周がカムベースから外側に突出するカムトップに十分に肉を流動させることができず、カムトップに欠肉が生じるという問題が発生する。
【0008】
このため、一次中間成形品にカムトップとなる予定のカムトップ予定部の径方向の肉厚が、カムベースとなる予定のカムベース予定部の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔を成形した略円柱状の二次中間成形品を軸線方向に押圧して、成形荷重が低い状態で、かつ、カムトップ側へ肉の流動量を増加させることにより、カムトップに欠肉がない三次中間成形品を成形する方法が考えられる。
【0009】
しかし、カムトップ予定部、カムベース予定部、及び予備孔を成形した略円柱状の二次中間成形品を、三次中間成形品を成形する三次中間成形品成形ダイの型彫空間に配置する時、二次中間成形品を三次中間成形品成形ダイまで把持するチャック等の影響により、二次中間成形品が周方向に回転し、二次中間成形品の径方向の肉厚が厚いカムトップ予定部が、三次中間成形品成形ダイのカムトップを成形するカムトップ成形部と対向することができず、成形された三次中間成形品のカムトップに欠肉が生じるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情により鑑みなされたもので、一次中間成形品にカムトップとなる予定のカムトップ予定部の径方向の肉厚が、カムベースとなる予定のカムベース予定部の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔を成形した二次中間成形品を成形し、この二次中間成形品を、三次中間成形品を成形する三次中間成形品成形ダイの型彫空間で、周方向の位相がずれないように配置して、成形荷重が低く、しかも、カムトップに欠肉のないカムロブの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のカムロブの成形方法は、外周が軸心を中心に半円形状のカムベースと、外周がカムベースから外側に突出するカムトップと、軸心を中心に軸線方向に貫通するカムロブ孔と、を有するカムロブの成形方法において、一次中間成形品を成形する第一工程と、一次中間成形品にカムトップとなる予定のカムトップ予定部の径方向の肉厚が、カムベースとなる予定のカムベース予定部の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔を成形すると共に、カムトップ予定部側の外周にカムベース予定部のベース円より径方向外側に突出した位置決め部が成形された二次中間成形品を成形する第二工程と、二次中間成形品の位置決め部を三次中間成形品を成形する三次中間成形品成形ダイに当接させることによって位置決めし、二次中間成形品を軸線方向に押圧して、カムトップ、カムベース、及び予備孔が変形した変形孔が成形された三次中間成形品を鍛造にて成形する第三工程と、変形孔より大きいカムロブ孔を成形してカムロブを成形する第四工程と、を有することを第1の特徴とする。
【0012】
本発明のカムロブの成形方法は、二次中間成形品の位置決め部が、三次中間成形品の外周形状の一部と一致していることを第2の特徴とする。
【0013】
本発明のカムロブの成形方法は、三次中間成形品にサイジング加工を施し、表面粗度の低いカムロブ外周面を有する四次中間成形品を鍛造にて成形することを第3の特徴とする。
【0014】
本発明のカムロブの成形方法は、一次中間成形品に、軸線に対する垂直断面形状が円の一部が欠けた欠円形状である予備孔を成形した二次中間成形品を成形することを第4の特徴とする。
【0015】
本発明のカムロブの成形方法は、一次中間成形品に、軸心から偏心した予備孔を成形した二次中間成形品を成形することを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の特徴のカムロブの成形方法によれば、一次中間成形品にカムトップとなる予定のカムトップ予定部の径方向の肉厚が、カムベースとなる予定のカムベース予定部の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔を成形することにより、カムベース側より肉量が必要なカムトップ側に予め肉量を多く配置することができる。しかも、カムトップ予定部側の外周にカムベース予定部のベース円より径方向外側に突出した位置決め部が成形された二次中間成形品を成形する第二工程と、二次中間成形品の位置決め部を三次中間成形品を成形する三次中間成形品成形ダイに当接させることによって位置決めし、二次中間成形品を軸線方向に押圧して、カムトップ、カムベース、及び予備孔が変形した変形孔が成形された三次中間成形品を鍛造にて成形する第三工程と、を有するため、二次中間成形品のカムトップ予定部を正確に三次中間成形品成形ダイのカムトップを成形するカムトップ成形部と対向するように配置することができ、カムトップ側に欠肉のないカムロブを成形することができる。
【0017】
また、二次中間成形品の軸線方向に貫通する予備孔により、カムベースとカムトップとを有する三次中間成形品の成形時、肉が二次中間成形品の外周側に加えて予備孔内に流動し、三次中間成形品成形ダイ内で肉の流動が促進されるので、成形荷重を低くすることができる。このため、三次中間成形品成形ダイ、及び三次中間成形品を成形する三次中間成形品成形装置を小型化でき、製造コストを大幅に削減することができる。
【0018】
本発明の第2の特徴のカムロブの成形方法によれば、二次中間成形品の位置決め部が、三次中間成形品の外周形状の一部と一致しているため、三次中間成形品を成形する際に、肉の流動量を削減でき、成形荷重を更に低くすることができる。
【0019】
本発明の第3の特徴のカムロブの成形方法によれば、三次中間成形品にサイジング加工を施し、表面粗度の低いカムロブ外周面を有する四次中間成形品を鍛造にて成形するため、新たにカムロブ外周面を研削し、その後に研磨する必要がなく、加工コストを大幅に削減することができる。しかも、カムロブをサイジング加工する方が、カムロブの外周面を研磨する場合よりも、カムプロフィールの基準値に対するバラツキを抑えることができる。
【0020】
本発明の第4の特徴のカムロブの成形方法によれば、一次中間成形品に、軸線に対する垂直断面形状が円の一部が欠けた欠円形状である予備孔を成形した二次中間成形品を成形するため、カムトップ予定部に必要な肉量を容易に配置することができる。また、欠けた箇所を大きく設計するとともに、予備孔の直径を大きく設計すれば(例えば、大きな半月状)、三次中間成形品の成形時、予備孔内に多くの肉を流動させることができ、成形荷重を更に低くすることができる。
【0021】
本発明の第5の特徴のカムロブの成形方法によれば、一次中間成形品に、軸心から偏心した予備孔を成形した二次中間成形品を成形するため、カムトップ予定部に必要な肉量を容易に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1乃至図8は、本発明の第一実施例を示すもので、図1の(ア)及び(イ)は一次中間成形品を表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図であり、(ウ)及び(エ)は二次中間成形品を表し、(ウ)は断面正面図、(エ)は平面図であり、図1の(オ)及び(カ)は三次中間成形品を表し、(オ)は断面正面図、(カ)は平面図であり、図1の(キ)及び(ク)は四次中間成形品を表し、(キ)は断面正面図、(ク)は平面図であり、図1の(ケ)及び(コ)はカムロブを表し、(キ)は断面正面図、(ク)は平面図である。図2は二次中間成形品を成形する冷間鍛造成形工程を表し、左半部が成形前、右半部が成形後の状態を表す断面平面図である。図3は三次中間成形品を成形する冷間鍛造成形工程を表し、左半部が成形前、右半部が成形後の状態を表す断面平面図である。図4は四次中間成形品を成形する冷間鍛造成形工程を表し、左半部が成形前、右半部が成形後の状態を表す断面平面図である。図5は二次中間成形品成形ダイを表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図である。図6は三次中間成形品成形ダイ及び三次中間成形品成形ダイの型彫空間内に配置された二次中間成形品を表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図である。
【0023】
まず、本発明の第一実施例の一次中間成形品W1からカムロブW5までの加工形状について説明する。一次中間成形品W1は、図1の(ア)及び(イ)に示す如く、円柱形状である。二次中間成形品W2は、図1の(ウ)及び(エ)に示す如く、二次中間成形品W2の軸心X2及び軸心X2周辺に、軸線X2に対する垂直断面形状が、円の一部が欠けた欠円形状である予備孔3が、軸線X2方向に貫通成形されている。この円の一部が欠けた欠円部3aによって、カムトップ8となる予定のカムトップ予定部6の径方向の肉厚が、カムベース9となる予定のカムベース予定部7の径方向の肉厚よりも厚くなっている。また、カムトップ予定部6側の外周にカムベース予定部7のベース円より径方向外側に突出した第一位置決め部5a及び第二位置決め部5bからなる位置決め部5が成形されている。三次中間成形品W3は、図1の(オ)及び(カ)に示す如く、外形が後述する最終成形品であるカムロブW5とほぼ同一である。すなわち、三次中間成形品W3の外形は、半円形状のカムベース9及びカムベース9から外側に突出するカムトップ8を有する。三次中間成形品W3の軸心X3周辺には、軸線X3に対する垂直断面形状が、一部が欠けた略楕円形状の変形孔4が、軸線X3方向に貫通成形されている。四次次中間成形品W4は、図1の(キ)及び(ク)に示す如く、外形が後述する最終成形品であるカムロブW5と同一である。すなわち、四次中間成形品W4の外周面の表面粗度は、三次中間成形品W3の外周面の表面粗度より低くなる。カムロブW5は、図1の(ケ)及び(コ)に示す如く、軸心X5周辺に、軸心X5に軸線X5方向に貫通するカムロブ孔10が成形されている。このカムロブ孔10は、軸線X5に対する垂直断面形状が円形状で、四次中間成形品W4の変形孔4より径方向に大きい。
【0024】
次に二次中間成形品W2を成形する二次中間成形品成形装置11、三次中間成形品W3を成形する三次中間成形品成形装置21、及び四次中間成形品W4を成形する四次中間成形品成形装置31について図2乃至図4に基づいて説明する。
【0025】
図2に示す二次中間成形品成形装置11は、第一移動型12及び第一固定型13より構成される。第一移動型12は、一次中間成形品W1に予備孔3を貫通して二次中間成形品W2を成形するピアスパンチ14を有する。第一固定型13は、二次中間成形品W2を成形するための第一型彫空間15を有する二次中間成形品成形ダイ16、二次中間成形品成形ダイ16の軸心部に配置され、二次中間成形品W2を成形する第一型彫空間15の一部を構成し、成形された二次中間成形品W2を二次中間成形品成形ダイ16の外に押出す第一ノックアウト17、第一ノックアウト17を進退自在に保持する第一ノックアウトホルダー18を有する。第一ノックアウト17の内部には、二次中間成形品W2に予備孔3を成形した際に成形される二次中間成形品余肉部19を二次中間成形品成形装置11の外に排出する排出路20が設けられている。ここで、ピアスパンチ14は、二次中間成形品W2のカムトップ予定部6の径方向の肉厚が、カムベース予定部7の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線X12に対する垂直断面形状が欠円形状である。
【0026】
図3に示す三次中間成形品成形装置31は、第二移動型32及び第二固定型33より構成される。第二移動型32は、第二パンチ34を有する。第二固定型33は、三次中間成形品W3を成形するための第二型彫空間35を有する三次中間成形品成形ダイ36、三次中間成形品成形ダイ36の軸心部に配置され、三次中間成形品W3を成形する第二型彫空間35の一部を構成し、成形された三次中間成形品W3を三次中間成形品成形ダイ36の外に押出す第二ノックアウト37、第二ノックアウト37を進退自在に保持する第二ノックアウトホルダー38を有する。
【0027】
図4に示す四次中間成形品成形装置51は、第三移動型52及び第三固定型53より構成される。第三移動型54は、第三パンチ54を有する。第三固定型53は、三次中間成形品W3をサイジングして四次中間成形品W4を成形するための第三型彫空間55を有する四次中間成形品成形ダイ56、四次中間成形品成形ダイ56の軸心部に配置され、四次中間成形品W4を成形する第三型彫空間55の一部を構成し、成形された四次中間成形品W4を四次中間成形品成形ダイ56の外に押出す第三ノックアウト57、第三ノックアウト57を進退自在に保持する第三ノックアウトホルダー58を有する。
【0028】
次に二次中間成形品W2を成形する二次中間成形品成形ダイ16及び三次中間成形品W3を成形する三次中間成形品成形ダイ36について図5及び図6に基づいて説明する。
【0029】
二次中間成形品成形ダイ16は、図5の(ア)に示す如く、軸線X6方向に延びる二次中間成形品W2を成形するための第一型彫空間15を有し、図5の(イ)に示す如く、二次中間成形品W2のカムトップ予定部6を成形するカムトップ予定部成形部15c、二次中間成形品W2のカムベース予定部7を成形するカムベース予定部成形部15dを有する。また、カムトップ予定部成形部15cとカムベース予定部成形部15dの間でカムトップ予定部成形部側に、カムベース予定部成形部15dのベース円より径方向外側に突出し、二次中間成形品W2に、第一位置決め部5aを成形する第一位置決め成形部15a、及び第二位置決め部5bを成形する第二位置決め成形部15bを有する。
【0030】
三次中間成形品成形ダイ36は、図6の(ア)に示す如く、軸線X7方向に延びる三次中間成形品W3を成形するための第二型彫空間35を有し、図6の(イ)に示す如く、三次中間成形品W3のカムトップ8を成形するカムトップ成形部35c、三次中間成形品W3のカムベース9を成形するカムベース成形部35dを有する。また、カムトップ成形部35cとカムベース成形部35dの間のカムトップ成形部側に、カムベース予定部成形部15dのベース円より径方向外側に突出し、二次中間成形品W2の第一位置決め部5aと当接する第一位置決め部当接部35a、及び二次中間成形品W2の第二位置決め部5bと当接する第二位置決め部当接部35bを有する。
【0031】
次に円柱状の一次中間成形品W1からカムロブW5を成形する方法を順次説明する。
【0032】
まず、線材を必要な長さに切断した円柱状の素材W0にショット・ボンデ処理等の必要な処理を施し、図1の(ア)及び(イ)に示す如く、一次中間成形品W1を成形する。
【0033】
次に、一次中間成形品W1は、図示せぬ搬送装置により、図2の左半部に示す如く、二次中間成形品成形装置11の二次中間成形品成形ダイ16に成形された第一型彫空間15に投入される。そして、図2の右半部に示す如く、第一移動型12のピアスパンチ14が下降して軸心X2の二次中間成形品余肉部19を打ち抜き予備孔3を成形すると共に、軸線X2方向に押圧して二次中間成形品W2を成形する。ここで、二次中間成形品成形ダイ16は、図5の(イ)に示す如く、カムベース予定部成形部15dのベース円より径方向外側に突出する第一位置決め成形部15a、及び第二位置決め成形部15bを有する。このため、予備孔3が成形された二次中間成形品W2は、図1の(ウ)及び(エ)に示す如く、カムトップ予定部6の径方向の肉厚が、カムベース予定部7の径方向の肉厚よりも厚く、更にカムトップ予定部6側の外周にカムベース予定部7のベース円より径方向外側に突出した第一位置決め部5a及び第二位置決め部5bからなる位置決め部5が成形される。
【0034】
二次中間成形品W2の成形が完了すると、ピアスパンチ14が上昇する。その後、第一ノックアウト17が上昇して、二次中間成形品W2が二次中間成形品成形ダイ16から取り出される。
【0035】
続いて、取り出された二次中間成形品W2は、図示せぬ搬送装置により、図3の左半部に示す如く、三次中間成形品成形装置31の三次中間成形品成形ダイ36に成形された第二型彫空間35に投入される。ここで、三次中間成形品成形ダイ36は、図6の(イ)に示す如く、カムトップ成形部35cとカムベース成形部35dの間のカムトップ成形部側に、カムベース予定部成形部15dのベース円より径方向外側に突出した第一位置決め部5aと第二位置決め部5bとを有する。このため、投入された二次中間成形品W2の第一位置決め部5aが第二型彫空間35の第一位置決め部当接部35aに当接し、第二位置決め部5bが第二位置決め部当接部35bに当接して周方向に位置決めされ、二次中間成形品W2のカムトップ予定部6と三次中間成形品成形ダイ36のカムトップ成形部35cが対向する。そして、図3の右半部に示す如く、第二移動型32の第二パンチ34が下降し、二次中間成形品W2を軸線X2方向に押圧すると、三次中間成形品成形ダイ36のカムトップ成形部方向、及び二次中間成形品W2の予備孔3内に肉が流動して、図1の(オ)及び(カ)に示す如く、外周に半円形状のカムベース9、カムベース9から外側に突出するカムトップ8、及び、カムベース9の軸心X3周辺に、予備孔3が径方向内側に縮小し、軸線X3方向に貫通した変形孔4が成形された三次中間成形品W3を成形する。
【0036】
三次中間成形品W3の成形が完了すると、第二パンチ34が上昇する。その後、第二ノックアウト37が上昇して、三次中間成形品W3が三次中間成形品成形ダイ36から取り出される。
【0037】
続いて、取り出された三次中間成形品W3は、図示せぬ搬送装置により、図4の左半部に示す如く、四次中間成形品成形装置51の四次中間成形品成形ダイ56に成形された第三型彫空間55に投入される。そして、図4の右半部に示す如く、第三移動型52の第三パンチ54が下降し、三次中間成形品W3を軸線X3方向に押圧して、サイジング加工を施し、外形が所望の寸法精度である四次中間成形品W4を成形する。
【0038】
四次中間成形品W4の成形が完了すると、第三パンチ54が上昇する。その後、第三ノックアウト57が上昇して、四次中間成形品W4が四次中間成形品成形ダイ56から取り出される。
【0039】
取り出された四次中間成形品W4は、図示せぬ搬送装置により、図示せぬカムロブ成形装置に投入される。そして、軸心X5に変形孔4より大きいカムロブ孔10を切削加工により成形して、カムロブ成形装置から排出され、カムロブW5の成形が終了する。
【0040】
本発明のカムロブの成形方法によれば、一次中間成形品W1にカムトップ8となる予定のカムトップ予定部6の径方向の肉厚が、カムベース9となる予定のカムベース予定部7の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔3を成形することにより、カムベース側より肉量が必要なカムトップ側に予め肉量を多く配置することができる。しかも、カムトップ予定部側の外周にカムベース予定部7のベース円より径方向外側に突出した位置決め部5が成形された二次中間成形品W2を成形する第二工程と、二次中間成形品W2の位置決め部5を三次中間成形品W3を成形する三次中間成形品成形ダイ36に当接させることによって位置決めし、二次中間成形品W2を軸線方向に押圧して、カムトップ8、カムベース9、及び予備孔3が変形した変形孔4が成形された三次中間成形品W3を鍛造にて成形する第三工程と、を有するため、二次中間成形品W2のカムトップ予定部6を正確に三次中間成形品成形ダイ36のカムトップ8を成形するカムトップ成形部35cと対向するように配置することができる。
【0041】
また、二次中間成形品W2の軸線X2方向に貫通する予備孔3により、カムベース9とカムトップ8とを有する三次中間成形品W3の成形時、肉が二次中間成形品W2の外周側に加えて予備孔3内に流動し、三次中間成形品成形ダイ36内で肉の流動を促進できる。
【0042】
そして、二次中間成形品W2の位置決め部5が、三次中間成形品W3の外周形状の一部と一致しているため、三次中間成形品W3を成形する際に、肉の流動量を削減できる。
【0043】
更に、三次中間成形品W3にサイジング加工を施し、表面粗度の低いカムロブ外周面を有する四次中間成形品W4を鍛造にて成形するため、新たにカムロブ外周面を研削し、その後に研磨する必要がない。しかも、サイジング加工の方が、カムロブW5の外周面を研磨する場合よりも、カムプロフィールの基準値に対するバラツキを約1/2以下に抑えることができる。
【0044】
更に加えて、一次中間成形品W1に、軸線X2対する垂直断面形状が円の一部が欠けた欠円形状である予備孔3を成形した二次中間成形品W2を成形するため、カムトップ予定部6に必要な肉量を容易に配置することができる。また、欠けた箇所を大きく設計するとともに、予備孔3の直径を大きく設計すれば(例えば、大きな半月状)、三次中間成形品W3の成形時、予備孔3内に多くの肉を流動させることができる。
【0045】
尚、第一実施例では、一次中間成形品W1に、軸線X2対する垂直断面形状が円の一部が欠けた欠円形状である予備孔3を成形して、カムトップ8となる予定のカムトップ予定部6の径方向の肉厚が、カムベース9となる予定のカムベース予定部7の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線X2方向に貫通する予備孔3を有する二次中間成形品W2を成形していたが、図7の(ア)及び(イ)に示す如く、第一実施例と同一の一次中間成形品W101に、図7の(ウ)及び(エ)に示す如く、一次中間成形品W101に、軸心X102から偏心した予備孔103を成形した二次中間成形品W102を成形し、カムトップ108となる予定のカムトップ予定部106の径方向の肉厚が、カムベース109となる予定のカムベース予定部107の径方向の肉厚よりも厚く、カムトップ予定部106側の外周にカムベース予定部107のベース円より径方向外側に突出した第一位置決め部105a及び第二位置決め部105bからなる位置決め部105が成形された二次中間成形品W102を成形してもよい。この場合、予備孔103の直径は、実施例1より若干小さくなる。
【0046】
そして、二次中間成形品W102が押圧されて成形された三次中間成形品W103は、図7の(オ)及び(カ)に示す如く、半円形状のカムベース109及びカムベース109から外側に突出するカムトップ108を有する。尚、二次中間成形品W102の予備孔103が圧縮され、三次中間成形品W103に成形された変形孔104の直径は、第一実施例より若干小さくなる。その後、三次中間成形品W103にサイジング加工が施され、成形された四次中間成形品W104は、図1の(キ)及び(ク)に示す如く、カムロブW105の外周と同一の表面粗度を有する半円形状のカムベース9及びカムベース9から外側に突出するカムトップ8を有する。最後に、四次中間成形品W104の軸心X104に、カムロブ孔110が切削加工により成形され、図7の(ケ)及び(コ)に示す如く、軸線X105方向に貫通するカムロブ孔110が成形されたカムロブW105となる。
【0047】
この他、第一実施例の二次中間成形品W2の予備孔3は、1回の鍛造工程で成形しているが、複数回の鍛造工程で成形してもよい。更に、第一実施例及び第二実施例では、予備孔3,103内に肉を流動させながら押圧でき、成形荷重が低くなるので、冷間鍛造で三次中間成形品W3を成形しているが、600〜900℃に温めて鍛造する温間鍛造、温間鍛造以上の温度に一次中間成形品W1、二次中間成形品W2、三次中間成形品W3、及び四次中間成形品W4を加熱して鍛造する熱間鍛造に適用することも可能である。
【0048】
加えて、二次中間成形品W3,W103の予備孔3,103は、カムトップ予定部6,106の径方向の肉厚が、カムベース予定部7,107の径方向の肉厚よりも厚くなるのであれば、他の形状(例えば、多角形)であってもよい。
【0049】
更に、二次中間成形品成形装置11、三次中間成形品成形装置31、及び三次中間成形品成形装置51は、上下に各移動型12,32,52及び各固定型13,33,53を配置しているが、水平方向に配置してもよい。二次中間成形品成形装置11、三次中間成形品成形装置31、及び三次中間成形品成形装置51の各移動型12,32,52及び各固定型13,33,53は、更に適宜分割して複数の型を組み付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第一実施例であり、図1の(ア)及び(イ)は一次中間成形品を表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図、(ウ)及び(エ)は二次中間成形品を表し、(ウ)は断面正面図、(エ)は平面図、図1の(オ)及び(カ)は三次中間成形品を表し、(オ)は断面正面図、(カ)は平面図、図1の(キ)及び(ク)は四次中間成形品を表し、(キ)は断面正面図、(ク)は平面図、図1の(ケ)及び(コ)はカムロブを表し、(キ)は断面正面図、(ク)は平面図である。
【図2】本発明の第一実施例の二次中間成形品を成形する冷間鍛造成形工程を表し、左半部が成形前、右半部が成形後の状態を表す断面平面図である。
【図3】本発明の第一実施例の三次中間成形品を成形する冷間鍛造成形工程を表し、左半部が成形前、右半部が成形後の状態を表す断面平面図である。
【図4】本発明の第一実施例の四次中間成形品を成形する形工程を表し、左半部が成形前、右半部が成形後の状態を表す断面平面図である。
【図5】本発明の第一実施例の二次中間成形品成形ダイを表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図である。
【図6】本発明の第一実施例の三次中間成形品成形ダイ及び三次中間成形品成形ダイの型彫空間内に配置された二次中間成形品を表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図である。
【図7】本発明の第二実施例であり、図1の(ア)及び(イ)は一次中間成形品を表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図、(ウ)及び(エ)は二次中間成形品を表し、(ウ)は断面正面図、(エ)は平面図、図1の(オ)及び(カ)は三次中間成形品を表し、(オ)は断面正面図、(カ)は平面図、図1の(キ)及び(ク)は四次中間成形品を表し、(キ)は断面正面図、(ク)は平面図、図1の(ケ)及び(コ)はカムロブを表し、(キ)は断面正面図、(ク)は平面図である。
【符号の説明】
【0051】
3,103 予備孔
4,104 変形孔
5,105 位置決め部
6,106 カムトップ予定部
7,107 カムベース予定部
8,108 カムトップ
9,109 カムベース
10,110 カムロブ孔
35 第二型彫空間
36 三次中間成形品成形ダイ
W1,W101 一次中間成形品
W2,W102 二次中間成形品
W3,W103 三次中間成形品
W4,W104 四次中間成形品
W5,W105 カムロブ
X2,X102 二次中間成形品の軸心
X5,X105 カムロブの軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周が軸心(X5,X105)を中心に半円形状のカムベース(9,109)と、外周がカムベース(9,109)から外側に突出するカムトップ(8,108)と、軸心(X5,X105)を中心に軸線方向に貫通するカムロブ孔(10,110)と、を有するカムロブの成形方法において、
一次中間成形品(W1)を成形する第一工程と、
前記一次中間成形品(W1)に前記カムトップ(8,108)となる予定のカムトップ予定部(6,106)の径方向の肉厚が、前記カムベース(9,109)となる予定のカムベース予定部(7,107)の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔(3,103)を成形すると共に、カムトップ予定部側の外周にカムベース予定部(7,107)のベース円より径方向外側に突出した位置決め部(5,105)が成形された二次中間成形品(W2,W102)を成形する第二工程と、
該二次中間成形品(W2,W102)の位置決め部(5,105)を三次中間成形品(W3,W103)を成形する三次中間成形品成形ダイ(36)に当接させることによって位置決めし、二次中間成形品(W2,W102)を軸線方向に押圧して、前記カムトップ(8,108)、前記カムベース(9,109)、及び前記予備孔(3,103)が変形した変形孔(4,104)が成形された三次中間成形品(W3,W103)を鍛造にて成形する第三工程と、
前記変形孔(4,104)より大きい前記カムロブ孔(10,110)を成形して前記カムロブ(W5,W105)を成形する第四工程と、を有することを特徴とするカムロブの成形方法。
【請求項2】
前記二次中間成形品(W2,W102)の位置決め部(5,105)が、前記三次中間成形品(W3,W103)の外周形状の一部と一致していることを特徴とする請求項1に記載のカムロブの成形方法。
【請求項3】
前記三次中間成形品(W3,W103)にサイジング加工を施し、表面粗度の低いカムロブ外周面を有する四次中間成形品(W4,W104)を鍛造にて成形することを特徴とする請求項1又は2に記載のカムロブの成形方法。
【請求項4】
前記一次中間成形品(W1)に、軸線(X2)に対する垂直断面形状が円の一部が欠けた欠円形状である前記予備孔(3)を成形した前記二次中間成形品(W2)を成形することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のカムロブの成形方法。
【請求項5】
前記一次中間成形品(W101)に、軸心(X102)から偏心した前記予備孔(103)を成形した前記二次中間成形品(W102)を成形することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のカムロブの成形方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−106952(P2009−106952A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280280(P2007−280280)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000238360)武蔵精密工業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】