説明

カメラに基く雨及び汚れセンサ装置、運転者確認及び疲労検査のためヘッドアップディスプレイの光学素子の使用

本発明は、ヘッドアップディスプレイを生じる装置を持つ車両に関し、画像センサ(6)及び集束素子(8)を含むカメラが、光学又は機械素子(5)を介して静的又は動的にヘッドアップディスプレイの光路へ導入される。前窓ガラスの外側の範囲(7)が集束されて画像センサ(6)上に写像されるように、集束素子(8)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイを生じる装置従って前窓ガラスを介して運転者の視野へ情報を投影する装置を持つ車両に関する。
【0002】
ヘッドアップディスプレイは、情報を運転者の眼へ投影するために使用される。それにより若干の場合計器(回転速度計、ナビゲーションディスプレイ)を見ること、従って眼の時間がかかりかつくたびれさせる余分な順応が不要になる。ヘッドアンプディスプレイから運転者の眼への投影光路は、大抵の場合運転者又は所定の眼範囲(アイボックス)の大きさ及び位置に合わされる。
【背景技術】
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102004031311号明細書は、利用者の瞳孔を写像できる画像センサマトリクスを持つ投影面に情報を表示する光学装置を示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の重要な考えは、画像センサ及び集束素子を含むカメラを静的又は動的にヘッドアップディスプレイの光路へ導入することである。集束素子として例えばレンズを用いることができる。画像センサとしてなるべくCMOS又はCCDチップが使用される。
【0005】
ヘッドアップディスプレイの光学系へカメラの導入は、ビームスプリッタを介して又は例えばチョッパ車上にあって機械的に導入されるカメラによっても行うことができる。鏡反射カメラと折畳み鏡結合も考えられる。ヘッドアップディスプレイの特定の投影範囲を使用する必要がない場合、カメラが光路に静的に存在していてもよいであろう。カメラはハンディカメラに一致していてもよい。
【0006】
本発明の主要な利点は、カメラのためにヘッドアップディスプレイの光学素子の利用により、多くの構造的超過支出なしに、特別の新しい機能が実現可能なことである。これらの機能を以下詳細に説明する。
【0007】
カメラを光路へ入れることにより、カメラに基く雨センサを実現することができる。本発明によれば、前窓ガラスの外側の範囲が集束されて画像センサ上に写像されるように、カメラの集束素子が設けられる。前窓ガラスの外側で写像される範囲は、ヘッドアップディスプレイの仮想光路が延びている範囲に相当する。こうしてヘッドアップディスプレイの光学系は、特に雨検出のため前窓ガラス上の比較的大きいセンサ面を得るために利用される。カメラ画像の評価により、前窓ガラス上の雨又は汚れ粒子を確実に検出することができる。
【0008】
今までの雨センサは前窓ガラスの上部範囲に取付けられ、従って自動車の運転者が前窓ガラスを通して見る前窓ガラス部分に相当しない前窓ガラス部分を観察する。運転者の視野にあるがセンサの視野には存在しない局部的な水ぬれ(例えば水たまりからのしぶき)及び汚れは、センサによっては検出できない。今までの雨センサは約2.5cmの比較的小さいセンサ面積を持ち、それが確実で速やかな雨検出を制限していた。これらの雨センサは、黒印刷の切欠きを通して外から見えて、車両デザインを一部乱していた。今までの雨センサは、孤立したセンサとして、車両の制限された区域にある構造空間、付加的な通信及び給電用の導線、及び前窓ガラスの黒印刷にある窓切欠きを必要とした。量産車両にある今までの雨センサは、しばしば故障しやすく、不当な窓ふき又は窓ふきの中止により、自動車の運転者を立腹させた。
【0009】
今までの光電子雨センサ又はカメラに基く雨センサに対して本発明による雨センサ装置は、ヘッドアップディスプレイの光学素子に関して大きい利点を与える。即ちセンサ面は運転者の視野にあり、センサは運転者により気づかれない。雨及び汚れは、運転者にとって重要な範囲で直ちに検出される。センサ面積は、現存の雨センサ装置と比較して大きい。それにより一層速やかで確実な検出が可能である。現在利用されている約2.5cmのセンサ面積と比較して、投影用ヘッドアップディスプレイは、約300cmの窓ガラス面積に及んでいる。外部からセンサが見えないので、デザイン上の利点が与えられる。カメラの電子装置をヘッドアップディスプレイの電子装置に統合することができ、それにより費用及び構造空間が節約される。前窓ガラスに大きい視野を持つカメラに基くセンサは、適当に高い画素解像度により、今までの雨センサの問題(例えば霧雨)を解決し、更に乾いた汚れの検出のような更に多くの別の機能を可能にする。別の利点は、窓ガラス浄化装置の拭き取り結果を判断可能なことである。ヘッドアップディスプレイにあるカメラに基く雨センサは上方を見て、他の道路使用者による障害要因から大幅に保護されている。
【0010】
本発明の好ましい展開は、カメラと運転者の眼範囲の同時観察により、前窓ガラスの雨検出と汚れ検出の組合わせである。このため集束光路において例えば部分的に挿入される板の屈折作用の原理により動作する2焦点集束装置が設けられている。それにより2つの物体面が得られる。即ち前窓ガラス上の足跡面の一部を、第1の物体面において雨滴への光反射を検出して窓拭き機を駆動するために使用することができる。第2の物体面は運転者の眼範囲である。画像センサは、第1の部分範囲において集束される前窓ガラス外側の記録を供給し、第2の部分範囲において集束される運転者の部分範囲において前窓ガラスが鏡として作用する。ヘッドアップディスプレイの光路は逆の方向に利用される。画像センサの第2の部分範囲は、運転者のアイボックス(眼範囲)からの光放射を受け、集束素子の配置に基いて運転者の眼及び周囲の視覚部分がカメラ画像から検出されて確認される。運転者確認は、種々のやり方で有利である(例えば点火の解除、動き止め、子供保護、安全機能及び快適機能の個人化)ことがわかる。運転者確認システムは、更にモジュール化される光源を介して援助される。これは内部空間照明の電圧変化によって行うことができる。それにより運転者は、車両の発信前に速やかにかつ確実に確認される。運転者の眼範囲の観察は、疲労の検出のためにも使用可能である。車線確認機能と組合わせて、疲労を車線の逸脱の原因として確実に検出し、運転者への適当な通報(振動、音響信号、内部空間照明の光パルス等)により、危険状況を緩和することができる。
【0011】
ヘッドアップディスプレイは、光パターンを窓ガラスへ投影することができ、これらの光パターンを例えば雨検出のため使用することができる。同様に大気圏は、前窓ガラスを介してヘッドアップディスプレイにより有利に照明される。付加的な照明が必要な場合、それをIR照明として行うことができる。
【0012】
雨又は汚れを一層よく検出するため、前窓ガラス部分の照明は、必要な場合ヘッドアップディスプレイにより周期的に行うことができる。ヘッドアップディスプレイの投影される光の一部は、一般に上方を窓ガラスから分離される。運転者がこの窓ガラス照明により妨げられないようにするため、IR光の付加的な挿入も考えられる。ヘッドアップディスプレイの不可視波長範囲(例えば赤外線)にあって面を覆う周期的光信号により、雨検出を照明することができる。赤外線による視野部分(アイボックス)の照明が考えられる(例えばヘッドアップディスプレイによる付加的なIR光源の重畳される面投影として)。こうして走行中に、運転者の眼を周期的に観察することができる。
【0013】
好ましい実施形態では、偏光フィルタが、光学又は機械素子と画像センサとの間の光路に少なくとも一部設けられている。
【0014】
眼の観察を最適化するため、周囲から(前窓ガラスを通して上から)カメラ装置への光放射を阻止するために、偏光フィルタが設けられ、このフィルタにより、前窓ガラスを経て車両内部空間から反映されない光放射が吸収される。
【0015】
雨検出のため前窓ガラスの外側を照明する場合、照明の好ましい偏光装置を使用しないと、光放射の非常に僅かな部分のみが、傾斜した前窓ガラスにおいて眼の範囲へ反射される。ヘッドアップディスプレイ光源により意識的に回避される照明のために偏光装置が適切に使用されると、反射される割合は一層少ない。光の最大割合がこうして前窓ガラスを通過する。雨滴又は汚れにより、全反射又は後方散乱される光は、こうして雨及び汚れの検出に役立つ。
【0016】
カメラにより前窓ガラスの外側と眼の範囲を同時に観察する際、両方の範囲の照明が、互いに逆の偏光方向を持つ2つの部分範囲を持つ偏光フィルタにより行われ、画像センサにおける両方の範囲の写像が、互いに逆の偏光方向を持つ2つの部分範囲を持つ別の偏光フィルタにより行われるのがよい。
【0017】
従って焦点深度範囲が物体面としての前窓ガラス及び物体面としてのアイボックス上に延びるカメラが提案され、対物レンズと感じやすい画像センサ面との間の部分的偏光フィルタ被覆が、即ち所定の画像範囲(アイボックス及び雨検出用前窓ガラス範囲)のための偏光フィルタ作用が反転されているように、設計されている。従って逆に偏光される光による雨センサの適切な照明により、物体検出用の一層確実なアルゴリズムを開発するために、少なくとも2つの異なる物体面の区別を援助することができる。1つ又は複数の偏光フィルタの動的挿入も考えられる。なぜならば、両方の物体検出過程を速い検出速度に設計する必要がないからである。偏光されないか又はアイボックス光放射に対してなるべく逆に偏光されて向けられている可視光による、雨検出のために設けられる前窓ガラス面の照明も、同様に考えられる。
【0018】
必要なカメラを周囲光を求めるために使用し、ヘッドアップディスプレイ、空調装置及び車両照明のために重要なセンサ情報を供給することができる。
【0019】
センサは、例えば人間と車両との間の通信インタフェースとして、別の役割を引受けることもできる。例えば印刷された符号を持つカードをヘッドアップディスプレイの前窓ガラス足跡上に置くか、又は指紋をカメラにより評価することによって、適用を例えば車両の開放とすることもできるであろう。これは、カメラの焦点を前窓ガラス外面に合わせることによって可能である。
【0020】
有利な構成では、画像センサのデータの評価に基いて、運転者検出、疲労検出、雨又は汚れ検出の援助機能の少なくとも1つを使用する。
【0021】
実施例及び図面が以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】 ヘッドアップディスプレイの光路を示す。
【図2】 ビームスプリッタを介して画像センサに写像する際の光路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には、ヘッドアップディスプレイを生じる装置を持つ車両が示されている。発光器とも称される光源4は、運転者による前窓ガラスの前の範囲に指針1として認められる電磁放射線を生じる。凹面鏡(転向鏡又は自由形状鏡)2を介して光路が広げられて、前窓ガラス3へ向けられる。前窓ガラス3の所で光線の主要部分が車両内部へ反射されて、運転者9の眼の範囲へ当たる。運転者は、前窓ガラスの前の範囲に仮想画像1を見る。
【0024】
光源4と転向鏡2との間にあって図1に示される範囲5は、光線分割又は光線転向のための付加的な光学又は機械素子5のための可能な組込み位置である。
【0025】
図2には、付加的な光学素子5としてビームスプリッタ立方体が、図1によるヘッドアップディスプレイの光路へ、そこに示す範囲内で挿入されている。ビームスプリッタ立方体の下には、集束素子8及び画像センサ6が設けられている。ヘッドアップディスプレイの仮想光路の範囲で前窓ガラス3上にある雨滴7は、ヘッドアップディスプレイの転向鏡2及びビームスプリッタ立方体5を経て、集束素子8により画像センサ6へ写像される。雨滴7は、ヘッドアップディスプレイの電磁放射線のうち前窓ガラス3の所で車両内部へ反射されない小さい部分により照らされる。この実施例において集束素子8は、ヘッドアップディスプレイの仮想光路が通る前窓ガラス3の外側の範囲7が集束されて画像センサ6上に写像されるように設定されている。カメラ6,8の画像データから、前窓ガラス3上における雨滴7又は汚れ粒子の存在を知って、窓拭き機又は窓拭きプログラムの操作用信号を発生することができる。この場合雨又は汚れ粒子が検出される前窓ガラスの範囲が運転者の視野にあっても、雨センサは外部からは見えない利点がある。
【符号の説明】
【0026】
1 仮想画像
2 凹面鏡
3 前窓ガラス
4 光源
5 光線分割又は光線転向用の光学又は機械素子
6 画像センサ
7 ヘッドアップディスプレイの仮想光路の範囲にある前窓ガラス上の雨滴
8 集束素子
9 眼の範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドアップディスプレイを生じる装置(2,3,4)を持つ車両であって、画像センサ(6)及び集束素子(8)を含むカメラが、光学又は機械素子(5)を介して静的又は動的にヘッドアップディスプレイの光路へ導入されるものにおいて、前窓ガラスの外側の範囲(7)が集束されて画像センサ(6)上に写像されるように、集束素子(8)が設けられていることを特徴とする、車両。
【請求項2】
集束素子(8)が2焦点写像を可能にし、2焦点写像の際運転者の眼範囲(9)が画像センサ(6)の第1の部分範囲に、また前窓ガラス(3)の外側の範囲(7)が画像センサ(6)の第2の部分範囲に、集束されて写像されている、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
画像センサ(6)に写像される前窓ガラス(3)の外側の範囲又は運転者の眼範囲(9)の照明が赤外線波長範囲で行われ、画像センサ(6)が赤外線波長範囲の光線を検出できる、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
偏光フィルタが、光学又は機械素子(5)と画像センサ(6)との間の光路に少なくとも一部設けられている、先行する請求項の1つに記載の車両。
【請求項5】
両方の範囲(7,9)の照明が、互いに逆の偏光方向を持つ2つの部分範囲を持つ偏光フィルタにより行われ、画像センサ(6)における両方の範囲(7,9)の写像が、互いに逆の偏光方向を持つ2つの部分範囲を持つ別の偏光フィルタにより行われる、請求項2に記載の車両。
【請求項6】
画像センサ(6)のデータの評価に基いて、運転者検出、疲労検出、雨又は汚れ検出の援助機能の少なくとも1つを持つ、先行する請求項の1つに記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−511431(P2013−511431A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540283(P2012−540283)
【出願日】平成22年10月16日(2010.10.16)
【国際出願番号】PCT/DE2010/001219
【国際公開番号】WO2011/063779
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(503355292)コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (79)
【氏名又は名称原語表記】Conti Temic microelectronic GmbH
【住所又は居所原語表記】Sieboldstrasse 19, D−90411 Nuernberg, Germany
【Fターム(参考)】