説明

カラー印刷とモノトーン印刷のためのドット記録率テーブルの作成

【課題】 ドット記録率テーブルの格納時のサイズを削減することのできる技術を提供する。
【解決手段】 インク量データをドット記録率データに変換するためのドット記録率テーブルとして、モノトーン印刷用ドット記録率テーブルとカラー印刷ドット記録率テーブルとを利用する。モノトーン印刷用ドット記録率テーブルは、よりデータ量の小さなテーブルとして予め準備された原テーブルを用いて作成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カラー印刷とモノトーン印刷に適したドット記録率テーブルを作成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタを用いて、カラー印刷やモノトーン印刷などの種々の印刷を行うことが可能である。モノトーン印刷としては、グレー階調のみを有する画像を再現する印刷(狭義の「モノクロ印刷」)と、グレー以外の色調が付与された画像を再現する印刷(狭義の「モノトーン印刷」)とがある。なお、本明細書では、特に断らない限り、「モノトーン印刷」は狭義のモノクロ印刷も含む広義の意味で使用される。
【0003】
また、インクジェット印刷技術としては、同一のインクに関してサイズの異なる複数のドットを用いる技術(以下、「マルチサイズドット印刷」と呼ぶ)が知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−185809号公報
【0005】
マルチサイズドット印刷を行う場合には、サイズが異なる複数種類のインクドットのそれぞれの記録率を示すドット記録率データを出力するドット記録率テーブルが使用される。ドット記録率テーブルは、各インクのインク量を入力とし、各ドットのドット記録率を出力とするものである。ここで、「ドット記録率」とは、各画素にドットを形成する割合(確率)を示す値である。例えば、100画素中の10画素にドットを形成する場合には、ドット記録率は10%となる。
【0006】
通常は、カラー印刷用のドット記録率テーブルとモノトーン印刷用のドット記録率テーブルとを別個に作成して、プリンタドライバ内に実装することが多い。しかし、近年ではプリンタドライバを構成するファイル全体のデータサイズが増大しているため、ドット記録率テーブルの格納時のサイズを削減したいという要望があった。このような問題は、インクジェットプリンタに限らず、印刷のためのデータ処理を行う場合に共通する問題であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ドット記録率テーブルの格納時のサイズを削減することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による画像処理装置は、
インク量を示すインク量データを、サイズが異なる複数種類のインクドットのそれぞれの記録率を示すドット記録率データに変換するための変換処理を実行するドット記録率変換実行部と、
前記変換処理に用いられるドット記録率テーブルとして、モノトーン印刷用ドット記録率テーブルとカラー印刷ドット記録率テーブルとのうちの一方を前記ドット記録率変換実行部に提供するテーブル設定部と、
を備え、
前記テーブル設定部は、前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルよりもデータ量の小さなテーブルとして予め準備された原テーブルを用いて前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルを作成することを特徴とする。
【0009】
この画像処理装置では、小さなデータ量を有する原テーブルからモノトーン印刷用ドット記録率テーブルを作成するので、ドット記録率テーブルの格納時のサイズを削減することが可能である。
【0010】
前記テーブル設定部は、前記カラー印刷用ドット記録率テーブルを前記原テーブルとして用い、前記カラー印刷用ドット記録率テーブル内のデータ点を補間することによって前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルを作成するようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、カラー印刷用ドット記録率テーブルを、モノトーン印刷用ドット記録率テーブルの原テーブルとしても利用できるので、テーブルの数自体を削減することが可能である。
【0012】
前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルは、折れ線で表される入出力特性を有しており、
前記原テーブルは、前記入出力特性を示す折れ線の節点のみを表すテーブルであり、
前記テーブル設定部は、前記原テーブルの前記節点の間を補間することによって前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルを作成するものとしてもよい。
【0013】
この構成によれば、原テーブルは少数の節点のデータのみで構成されているので、ドット記録率テーブルの格納時のサイズを更に削減することが可能である。
【0014】
前記原テーブルの出力ビット数は前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルの出力ビット数と等しく、前記原テーブルの入力ビット数は前記モノトーン印刷用テーブルの入力ビット数よりも小さな値に設定されているものとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、原テーブルのサイズをさらに小さくすることができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、画像処理方法および画像処理装置、印刷方法および印刷装置、プリンタドライバ、印刷方法または印刷装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.変形例:
【0018】
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としての画像処理システムの構成を示す説明図である。このシステムは、画像処理装置としてのコンピュータ200と、画像出力装置としてのプリンタ300とを含んでいる。
【0019】
コンピュータ200には、画像データファイルMFに基づいて印刷データを生成するためのプリンタドライバ210がインストールされている。プリンタドライバ210は、色変換部214と、ハーフトーン処理部216と、出力処理部218とを備えている。色変換部214とハーフトーン処理部216は、印刷画素毎のドットの記録状態(形成状態)を表すドットデータを生成するドットデータ生成部としての機能を実現するモジュールである。
【0020】
プリンタドライバ210で生成された印刷データPDは、出力処理部218からプリンタ300に供給される。印刷データPDは、印刷解像度を有する主走査ライン上の各画素についてインクドットの記録状態を表すドットデータと、副走査送り量を特定する副走査送り量データとを含んでいる。
【0021】
プリンタドライバ210の機能を実現するためのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で供給し得る。このような記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物等のコンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
【0022】
図2は、本発明の実施例における色変換部214とハーフトーン処理部216の内部構成を示すブロック図である。色変換部214は、色変換実行部230と、色変換テーブル設定部232とを備えている。色変換テーブル設定部232は、印刷モード(カラー印刷/モノトーン印刷)に応じて、カラー印刷用3次元色変換ルックアップテーブル(3D−LUT)234aと、モノトーン印刷用1次元色変換ルックアップテーブル(1DーLUT)234bとのうちの一方を選択して色変換実行部230に提供する。カラー印刷用3D−LUT234aは、3つの入力画素値(例えばRGB値)の組を、複数のインク(例えばCMYK)のインク量データの組に変換するテーブルである。モノトーン印刷用1D−LUT234bは、1つの入力画素値(例えばグレー多階調値)を複数のインクのインク量データに変換するテーブルである。ここで、「1次元」及び「3次元」は、入力データのチャンネル数を意味している。
【0023】
出力データのチャンネル数は、2つのLUT234a,234bで等しく、これは、プリンタ300に実装されているインクの数に等しいのが普通である。但し、モノトーン印刷用の無彩色インク(Kインク)としては、濃度の異なる複数の無彩色インクも利用することが好ましい。
【0024】
出力データのビット数は、カラー印刷用3D−LUT234aが8ビット/色であり、モノトーン印刷用1D−LUT234bは16ビット/色である。このように、モノトーン印刷用の1D−LUT234bの出力ビット数は、カラー印刷用の3D−LUT234aの出力ビット数よりも大きいことが好ましい。この理由は、モノトーン印刷ではほとんどすべての画素がグレー近傍の色で再現され、また、グレー近傍の色はわずかな色調(色相や彩度)の変化が有彩色よりも目に付きやすいためである。すなわち、モノトーン印刷用1D−LUT234bの出力ビット数を大きな値に設定しておくことによって、より微妙な色調を正確に再現することが可能になる。
【0025】
ハーフトーン処理部216は、ドット記録率変換実行部240と、ハーフトーン処理実行部242と、ドット記録率テーブル設定部244とを備えている。ドット記録率テーブル設定部244は、印刷モードに応じて、カラー印刷用ドット記録率テーブル246aとモノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bとのうちの一方を選択してドット記録率変換実行部240に提供する。2つのドット記録率テーブル246a,246bは、CMYK各インクのインク量データを、サイズの異なる複数種類のドットのドット記録率データに変換するテーブルである。ここでは、大、中、小の3種類のドットが生成可能であると仮定している。CMYK各色のドット記録率データは、ハーフトーン処理実行部244でハーフトーン処理されて、各インクのドットの形成状態を示すドットデータに変換される。ここでは、「ドット無し」、「小ドット」、「中ドット」、「大ドット」の4つの形成状態を区別するために、各インク毎に2ビットのドットデータが生成される。
【0026】
モノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bは、ドット記録率テーブル設定部244によって、モノトーン印刷用原テーブル248から生成される。この原テーブル248は、モノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bよりもデータ量の小さいテーブルとして構成されている。
【0027】
図3(A),(B)は、カラー印刷用ドット記録率テーブル246aとモノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bの内容を示している。このグラフの横軸はインク量であり、横軸はドット記録率である。図3(A)に示すカラー印刷用のテーブル246aは、入力と出力がともに8ビットのテーブルである。一方、図3(B)に示すモノトーン印刷用のテーブル246bは、入力が16ビットで出力が8ビットのテーブルである。なお、図3(A)と図3(B)の2つの横軸の長さの比は正しくなく、簡略化されて描かれている。本実施例では、2つのテーブル246a,246bの入力ビット数は、それぞれの色変換LUT234a,234b(図2)の出力ビット数と一致している。但し、両者を異なる値に設定してもよい。
【0028】
図4(A),(B)は、2つのドット記録率テーブル246a,246bの一部を拡大して示している。カラー印刷用ドット記録率テーブル246aは、入力ビット数が小さいので、図4(a)の例のように、急峻な部分では入力値(インク量)の値が1つ変化したときに出力値(ドット記録率)がジャンプする可能性がある。一方、モノトーン印刷用のドット記録率テーブル246bは、入力ビット数が多いので、図4(b)の例のように出力値(ドット記録率)のジャンプがほとんど無い。前述したように、モノトーン印刷においては、グレー近傍の色の微妙な色調を正確に再現したいという要望がある。図4(B)の例では出力値のジャンプがほとんど無いので、この要望を実現できる特性を示していることが理解できる。
【0029】
ところで、一般に、テーブルのサイズ(データサイズ)は、入力エントリ数と、1エントリのビット数とを乗じた値になる。従って、図3(A),(B)の例では、モノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bのサイズは、カラー印刷用ドット記録率テーブル246aのサイズの256倍である。このような大サイズのテーブル246bをプリンタドライバ210に予め実装するようにした場合には、プリンタドライバ210のインストール用ファイルのデータ量が大きくなる。この問題は、インストール用ファイルを格納する記憶媒体(例えばCD−ROM)の容量や、ネットワークを介してインストール用ファイルを転送する際の転送時間の点で大きな負担となる。また、サイズの大きなテーブルは、その作成に多大な手間を要するという問題もある。
【0030】
そこで、第1実施例では、プリンタドライバ210にはモノトーン印刷用のドット記録率テーブル246bを予め実装しておかずに、カラー印刷用ドット記録率テーブル246aのみを実装する(すなわちコンピュータ200のハードディスクに格納する)。そして、このカラー印刷用のテーブル246aからモノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bを作成する。換言すれば、第1実施例では、カラー印刷用ドット記録率テーブル246aを、モノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bの原テーブル248(図2)として使用する。
【0031】
図5は、第1実施例におけるドット記録率テーブルの準備手順を示すフローチャートである。ステップS1では、カラー印刷用ドット記録率テーブル246aのみを準備する。具体的には、プリンタドライバ210のインストール時にカラー印刷用ドット記録率テーブル246aをコンピュータ200内のハードディスクに格納するが、モノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bはインストール用ファイル内に存在しないのでハードディスク内に格納しない。
【0032】
ステップS2では、ドット記録率テーブル設定部244が、モノトーン印刷とカラー印刷のいずれが実行されるか否かを判断する。モノトーン印刷が実行される場合には、ステップS3において、ドット記録率テーブル設定部244が、カラー印刷用ドット記録率テーブル246aを補間することによってモノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bを作成する。一方、カラー印刷が実行される場合には、ステップS4において、ドット記録率テーブル設定部244が、カラー印刷用ドット記録率テーブル246aを単に選択する。
【0033】
図6は、第1実施例におけるテーブルの補間の内容を示す説明図である。図6(A)に示すように、この補間では、入力8ビット×1チャンネル/出力8ビット×3チャンネルのテーブル246aのデータ点が補間されて、入力16ビット×1チャンネル/出力8ビット×3チャンネルのテーブル246bが生成される。図6(B)は、データ点の補間の様子を示している。白丸は、カラー印刷用のテーブル246aに存在するデータ点である。より具体的に言えば、これらのデータ点(「原データ点」と呼ぶ)は、カラー印刷用のテーブル246aに存在するデータ点の入力値を8ビット左シフトしたものである。補間処理では、これらの原データ点の間にデータ点(黒丸で示す)が追加される。図6(B)に描かれている追加データ点の数は少ないが、実際には2つの原データ点の間に255個のデータ点を追加することになる。
【0034】
このように、第1実施例では、プリンタドライバ210のインストール時には、モノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bを準備せず、カラー印刷用テーブル246aのみを準備するようにしたので、プリンタドライバ210のインストール用ファイルのサイズを小さくすることが可能である。また、インストール後のプリンタドライバ210用ファイルのデータサイズも小さくすることができる。また、モノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bとしては、カラー印刷用のテーブル246aよりも入力ビット数の大きなものを作成するので、グレー近傍の微妙な色調を正確に表現することが可能である。
【0035】
B.第2実施例:
図7は、第2実施例におけるドット記録率テーブルの準備手順を示すフローチャートである。第2実施例は、図5のステップS1,S3をステップS1a,S3aに変更した点以外は第1実施例と同じである。
【0036】
ステップS1aでは、カラー印刷用ドット記録率テーブル246aとモノトーン印刷用の原テーブル248(図2)とをそれぞれ準備する。すなわち、第2実施例では、原テーブル248は、カラー印刷用ドット記録率テーブル246aとは別個に準備される。具体的には、プリンタドライバ210のインストール時にカラー印刷用ドット記録率テーブル246aと原テーブル248とをコンピュータ200内のハードディスクに格納する。但し、インストール時にモノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bをハードディスク内に格納しない点は第1実施例と同じである。モノトーン印刷用の原テーブル248は、入力のビット数が最終的なドット記録率テーブル246bよりも小さく、データサイズも小さいものである。従って、インストール用ファイルや、インストール後のプリンタドライバ用ファイルの全体のサイズを小さく保つことができる。
【0037】
モノトーン印刷を行う場合には、ステップS3aにおいて、ドット記録率テーブル設定部244が、原テーブル248を補間することによってモノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bを作成する。
【0038】
このように、第2実施例では、プリンタドライバ210のインストール時には、モノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bを準備せず、より小さな原テーブル248を準備するようにしたので、プリンタドライバ210のインストール用ファイルのサイズを小さくすることが可能である。
【0039】
なお、第2実施例では、原テーブル248の入出力特性を、カラー印刷用テーブル246aとは異なる特性に設定することができるという特徴がある。従って、最終的なモノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bとして、第1実施例よりも好ましいテーブルを得ることが可能である。
【0040】
C.第3実施例:
図8は、第3実施例におけるドット記録率テーブルの準備手順を示すフローチャートである。第3実施例は、図5のステップS1,S3をステップS1b,S3bに変更した点以外は第1実施例と同じである。
【0041】
ステップS1bでは、第2実施例と同様に、カラー印刷用ドット記録率テーブル246aとモノトーン印刷用の原テーブル248(図2)とを準備する。但し、原テーブル248は、入力ビット数が最終的なモノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bと同じである点で第2実施例と異なっている。
【0042】
図9(A)は、第3実施例における原テーブル248の内容を表している。この原テーブル248は、各ドットの入出力特性が折れ線で表されており、それらの折れ線の節点(白丸で示す)のデータのみが登録されている。ここで、「節点」とは、折れ線の始点と、終点と、屈折点とを意味している。この原テーブル248は、折れ線で表される入出力特性の節点のデータのみを有しているので、最終的なドット記録率テーブル246bよりもデータサイズがはるかに小さい。従って、インストール用ファイルや、インストール後のプリンタドライバ用ファイルの全体のサイズを小さく保つことができる。
【0043】
なお、原テーブル248の入力ビット数を、最終的なモノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bよりも小さくすることも可能である。但し、原テーブル248の入力ビット数を、最終的なモノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bの入力ビット数と同じにすれば、節点だけで正確に入出力特性を表すことが可能である。
【0044】
なお、本明細書において、「テーブル」とは、入力と出力との対応関係を表すデータを意味する。従って、「テーブル」としては、いわゆるルックアップテーブル以外の任意のデータ構造を有するものを利用することができる。
【0045】
モノトーン印刷を行う場合には、ステップS3bにおいて、ドット記録率テーブル設定部244が、原テーブル248の節点の間を補間することによってモノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bを作成する。
【0046】
図9(B)は、第3実施例におけるデータの補間の様子を示している。白丸で示す節点は、図9(A)と同じものである。補間処理では、これらの節点(原データ点)の間にデータ点(黒丸で示す)が追加される。図9(B)に描かれている追加データ点の数は少ないが、実際には2つの節点の間にもっと多数のデータ点が追加される。
【0047】
第3実施例においても第2実施例と同様に、原テーブル248の入出力特性を、カラー印刷用テーブル246aとは異なる特性に設定することが可能である。従って、最終的なモノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bとして、第1実施例よりも好ましいテーブルを得ることが可能である。また、原テーブル248は節点のデータのみを有しているので、そのデータサイズを大幅に節約することが可能である。
【0048】
なお、第1ないし第3実施例から理解できるように、モノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bの元となる原テーブル248としては、モノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bよりもデータ量の小さな種々のテーブルを利用することが可能である。
【0049】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0050】
D1.変形例1:
上記実施例では、カラー印刷用とモノトーン印刷用のドット記録率テーブル246a,246bの出力ビット数をいずれも8ビットとしていたが、モノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bの出力ビット数を、カラー印刷用ドット記録率テーブル246aよりも大きな値としてもよい。こうすれば、ハーフトーン処理によって、グレー近傍のより微妙な色調をより正確に再現することが可能になる。
【0051】
なお、ハーフトーン処理としてディザマトリクス(閾値マトリクス)を使用するディザ法を採用する場合には、モノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bの出力ビット数は、ディザマトリクスのサイズ(すなわちハーフトーン処理の分解能)に相当するビット数以下とすることが好ましい。例えば、ディザマトリクスのサイズが128×128画素の場合には、その分解能(=128×128)は14ビット相当の値となる。従って、モノトーン印刷用ドット記録率テーブル246bの出力ビット数も、14ビット以下の値とすることが好ましい。この理由は、ドット記録率テーブル246の出力ビット数を、ハーフトーン処理の分解能に相当するビット数よりも過度に大きく設定しても、ハーフトーン処理によってその階調を再現できないからである。
【0052】
D2.変形例2:
上記実施例では、CMYKの4種類のインクを用いて印刷を行う場合について説明したが、本発明は、任意の種類のインクを用いる場合に適用可能である。
【0053】
D3.変形例3:
上記実施例では、インクジェットプリンタに本発明を適用した例を説明したが、本発明はレーザプリンタなどの他の種類のプリンタにも適用可能である。また、本発明は、一般にカラー印刷機能とモノトーン印刷機能を有する装置に適用可能であり、ファクシミリやコピー機にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例としての画像処理システムの構成を示す説明図である。
【図2】実施例の色変換部214とハーフトーン処理部216の内部構成を示すブロック図である。
【図3】ドット記録率テーブル246a,246bの内容を示すグラフである。
【図4】ドット記録率テーブル246a,246bの一部を拡大して示すグラフである。
【図5】第1実施例におけるドット記録率テーブルの準備手順を示すフローチャートである。
【図6】第1実施例におけるテーブルの補間の内容を示す説明図である。
【図7】第2実施例におけるドット記録率テーブルの準備手順を示すフローチャートである。
【図8】第3実施例におけるドット記録率テーブルの準備手順を示すフローチャートである。
【図9】第3実施例におけるテーブルの補間の内容を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
200…コンピュータ
210…プリンタドライバ
214…色変換部
216…ハーフトーン処理部
218…出力処理部
230…色変換実行部
232…色変換テーブル設定部
234a,234b…色変換ルックアップテーブル
240…ドット記録率変換実行部
242…ハーフトーン処理実行部
244…ドット記録率テーブル設定部
244…ハーフトーン処理実行部
246a,246b…ドット記録率テーブル
300…プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置であって、
インク量を示すインク量データを、サイズが異なる複数種類のインクドットのそれぞれの記録率を示すドット記録率データに変換するための変換処理を実行するドット記録率変換実行部と、
前記変換処理に用いられるドット記録率テーブルとして、モノトーン印刷用ドット記録率テーブルとカラー印刷ドット記録率テーブルとのうちの一方を前記ドット記録率変換実行部に提供するテーブル設定部と、
を備え、
前記テーブル設定部は、前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルよりもデータ量の小さなテーブルとして予め準備された原テーブルを用いて前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルを作成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理置であって、
前記テーブル設定部は、前記カラー印刷用ドット記録率テーブルを前記原テーブルとして用い、前記カラー印刷用ドット記録率テーブル内のデータ点を補間することによって前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルを作成する、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像処理置であって、
前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルは、折れ線で表される入出力特性を有しており、
前記原テーブルは、前記入出力特性を示す折れ線の節点のみを表すテーブルであり、
前記テーブル設定部は、前記原テーブルの前記節点の間を補間することによって前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルを作成する、画像処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理置であって、
前記原テーブルの出力ビット数は前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルの出力ビット数と等しく、前記原テーブルの入力ビット数は前記モノトーン印刷用テーブルの入力ビット数よりも小さな値に設定されている、画像処理装置。
【請求項5】
画像処理方法であって、
(a)インク量を示すインク量データを、サイズが異なる複数種類のインクドットのそれぞれの記録率を示すドット記録率データに変換するための変換処理に用いられるドット記録率テーブルとして、モノトーン印刷用ドット記録率テーブルとカラー印刷ドット記録率テーブルとのうちの一方を提供する工程と、
(b)前記提供されたドット記録率テーブルを用いて前記変換処理を実行する工程と、
を備え、
前記工程(a)は、前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルを提供する際に、前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルよりもデータ量の小さなテーブルとして予め準備された原テーブルを用いて前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルを作成する工程を備える、画像処理方法。
【請求項6】
印刷データを作成するためのプリンタドライバであって、
インク量を示すインク量データを、サイズが異なる複数種類のインクドットのそれぞれの記録率を示すドット記録率データに変換するための変換処理を実行するドット記録率変換実行部と、
前記変換処理に用いられるドット記録率テーブルとして、モノトーン印刷用ドット記録率テーブルとカラー印刷ドット記録率テーブルとのうちの一方を前記ドット記録率変換実行部に提供するテーブル設定部と、
を備え、
前記テーブル設定部は、前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルよりもデータ量の小さなテーブルとして予め準備された原テーブルを用いて前記モノトーン印刷用ドット記録率テーブルを作成することを特徴とするプリンタドライバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−76177(P2006−76177A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263677(P2004−263677)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】