カラー画像形成装置
【課題】タンデム方式のカラー画像形成装置において、中間転写ベルトに転写された第1ステーションで形成したマークに対して第2ステーション以降のステーションで、各々形成したマークのずれを検知して感光体ドラムの回転速度を制御して色ずれ補正を行う際、中間転写ベルトの速度変動が色ずれ補正を行う際の障害となり得る。
【解決手段】転写媒体の速度変動周期をTfb、第2目盛りが形成された上流側の像担持体の位置と下流側の像担持体の位置との間を転写媒体が移動する時間をTsとするとき、Ts/Tfbが正の整数値となるように設定する。
【解決手段】転写媒体の速度変動周期をTfb、第2目盛りが形成された上流側の像担持体の位置と下流側の像担持体の位置との間を転写媒体が移動する時間をTsとするとき、Ts/Tfbが正の整数値となるように設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真記録方式を用いたカラープリンタ、カラー複写機等の複数の画像形成部を有する装置に関し、特に、記録媒体搬送方向の色ずれを低減し、高品位な画像出力が可能なカラー画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のカラー画像形成装置においては、高速化のためにタンデム型と呼ばれる方式が各種提案されている。この方式は、複数の画像形成部を有し、中間転写ベルト上、あるいは搬送ベルト上に保持された記録材上に順次異なる色(ブラックBk、シアンC、マゼンタM、イエローY)の像を転写する方式である。
【0003】
ところが、複数の画像形成部を有するタンデム型方式のカラー画像形成装置の問題点としては、部材製造上の寸法誤差や組立精度等の原因による動作むらは避けられない。このような原因により中間転写ベルト上に重ね合わされた各色の画像位置が一致せず、色ずれ(位置ずれ)を生じることが挙げられる。
【0004】
そこで、特許文献1に開示されているような補正方法が既に提案されている。この方法は、先ず各色の画像形成部において原稿画像情報に対応した位置検出用マークの可視画像を形成する。そして各画像形成部にて形成され移動部材上に転写された位置検出用マークを検知する位置検出用マーク検知手段を設ける。この位置検出用マーク検知手段から出力された検出信号に基づいて転写画像ずれを補正すべく、各画像形成部を制御する。
【0005】
この補正方式は、検知以降に形成される画像が1次転写を行う時に色ズレが無くなるように露光のタイミングや感光体ドラムの回転速度を補正するのであって、検知時に既に形成された画像に対しては補正を行わない。即ち、補正が反映されるのは露光手段にて画像を形成してから中間転写ベルト1に転写されるまでの時間経った後である。よって、この補正方法は、主にカラー画像形成装置の内部温度の変化や各部材の劣化など経時的な変動に起因するカラーレジずれに対して補正するものである。
【0006】
しかしながら、カラーレジずれには、上記のような長時間で変動する要因の他に、短時間で変動するものがある。即ち、感光体ドラムや中間転写ベルトを回転駆動する駆動ローラーやギア、駆動モーター等の主として回転体が変動要因で短時間に変動するカラーレジずれがある。しかし、この短時間でのカラーレジずれに関しては、上記補正方式では補正出来なかった。
【0007】
これに対し、特許文献2には、画像形成を行っているときに位置補正を実施するために、トナーを用いないで作成された画像パターンを読み取って位置合わせを行う方法が示される。第1の画像形成ドラムはベルトにより駆動され、下流側の像形成ドラムはそれぞれのモータにより駆動される。書き込み器が第1のドラムに対応付けられ、ベルトに符号を書き込む。
【0008】
また、書き込み器はドラムに対応するエンコーダから得られたパルス信号と同期されている。書き込み方式は磁気記録方式を用いている。書き込まれた符号は検出器により読み出される。検出器の各々は、ベルトの局所的変位を示す信号をそれぞれのコントローラへ送出する。コントローラは、対応するドラムのエンコーダから信号を更に受信し、下流側のドラムの変位が符号により制御されるように、このドラムの駆動モータのフィードバック制御を行う。
【0009】
このように構成することによって、全ての画像形成媒体を、画像担体の運動から求められた目標速度に制御することができ、これにより、全ての画像歪み間の差はゼロに減少されるとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭64−6981号公報
【特許文献2】特開平10−293435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
転写媒体である中間転写ベルトには一般に速度変動があり、中間転写ベルトの速度むらが色ずれ補正を行う際の障害となり得る。しかしながら、従来技術においては、この障害を問題視して解決することの開示あるいは示唆がされていない。
【0012】
そこで本発明は、転写媒体の速度変動が有っても、安定して色ずれの無いカラー画像を形成することができるカラー画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明に係わるカラー画像形成装置は、夫々が回転可能であって、夫々の有効画像領域に露光することで色に対応した現像剤による画像を形成するように所定方向に順に配置される複数の像担持体と、前記複数の像担持体に対向する移動可能な転写媒体と、前記像担持体に対して前記転写媒体を介して対向し、前記像担持体に形成される画像を前記転写媒体に夫々転写する複数の転写部材と、前記複数の像担持体に夫々備わる有効画像領域外の目盛り描画領域に前記現像剤による画像と対応した第1目盛りを形成する第1目盛り形成手段と、前記現像剤による画像の転写時に、前記転写媒体にあって有効画像領域外に、前記第1目盛りの内で上流側の目盛りに基づいて第2目盛りを形成する第2目盛り形成手段と、下流側の前記像担持体の前記第1目盛りを検出する第1検出手段と、前記第1検出手段と前記転写媒体の移動方向における位置が一致し、前記第2目盛りを検出する第2検出手段と、前記第1検出手段および前記第2検出手段による前記第1目盛りおよび前記第2目盛りの検出ずれを減少させるように、前記下流側の像担持体の回転速度を制御する制御手段と、を有するカラー画像形成装置であって、前記転写媒体の速度変動周期をTfb、前記第2目盛りが形成された前記像担持体の位置と下流側の前記像担持体の位置との間を前記転写媒体が移動する時間をTsとするとき、Ts/Tfbが正の整数値となるように設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、転写媒体の速度変動が有っても、安定して色ずれの無いカラー画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)乃至(d)は夫々感光体ドラムと中間転写ベルトの速度が同じ第1の実施形態の構成図である。
【図2】感光体ドラムと中間転写ベルトの速度が異なる第2の実施形態の構成図である。
【図3】一般的なタンデム方式のカラー電子写真装置の画像を形成する部分の構成図である。
【図4】本発明に適用する色ずれ補正方法のシステム構成図である。
【図5】(a)、(b)は夫々画像位置情報の一例を示す図である。
【図6】色ずれ補正を説明するための構成図である。
【図7】色ずれ補正のフローチャートである。
【図8】色ずれ補正制御量の算出を説明するための図である。
【図9】(a)乃至(d)は夫々色ずれ補正制御量の発散条件を表す図である。
【図10】(a)乃至(h)は夫々色ずれ補正制御量のシミュレーション波形である。
【図11】(a)、(b)は夫々色ずれ補正制御量の発散を説明する図である。
【図12】(c)、(d)は夫々色ずれ補正制御量の発散を説明する図である。
【図13】(e)、(f)は夫々色ずれ補正制御量の発散を説明する図である。
【図14】第2マークを説明する図である。
【図15】(a)乃至(d)は第2マークを説明するタイミングチャートである。
【図16】中間転写ベルト上の第2マークを示す図である。
【図17】(a)乃至(d)は読み取り時に速度変動が影響しない条件を説明すための図である。
【図18】(a)乃至(d)は読み取り時の第2マーク通過間隔のシミュレーション波形である。
【図19】読み取り時に速度変動が影響しない条件のシミュレーション結果の図である。
【図20】(a)乃至(d)は読み取り時に速度変動が影響しない条件を表す図である。
【図21】(a)乃至(d)は色ずれ補正制御量の発散条件を説明するための図である。
【図22】色ずれ補正の可否を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
図3は、4個の感光体ドラムで構成されるタンデム型方式のカラー画像形成装置の概要構成図である。通常、タンデム型方式の画像形成装置では、等速で回転移動する一本の中間転写ベルト1上に4本、あるいはそれ以上の像担持体である感光ドラム2が複数配置される。図3で、感光ドラム2は、夫々が等角速度で回転可能であって、異なる色であるイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBkの像を形成するよう、上流側より下流側に向けて所定方向に順に配置される。中間転写ベルト1は、感光体ドラム2に対向する移動可能な転写媒体として機能する。
【0017】
図4において、4つの感光体ドラム等は、左から順番にY、M、C、Kという記号を付与して区別し、中間転写ベルト1上にはY、M、C、Kの順に転写される。これらの4つを大別するためにYステーション、Mステーション、Cステーション、Kステーションと呼ぶ。本実施形態におけるカラー画像形成装置では、フルカラーの他、単色カラー例えば黒以外に赤のみ、黒単色による画像形成が可能である。
【0018】
図3において、3は感光体ドラム2の表面に均一な帯電量の電荷を与える1次帯電器である。また、4は感光体ドラム2の表面にレーザー光を露光して潜像画像を形成する露光手段、5はそのレーザー光を生成するレーザー光源とレンズやポリゴンミラーなどで構成されるレーザー光学系である。6はレーザー光学系5からのレーザー光を感光体ドラム2に照射するための折り返しミラーである。7はレーザー光、8は露光手段4にて形成された潜像画像にトナーを付着させてトナー画像を形成する現像手段である。
【0019】
9は感光体ドラム2上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト1に転写を行うための転写部材である1次転写ローラー、10は感光体ドラム2上の残留したトナーを除去するクリーナーである。また、11は中間転写ベルト1を本図に示さない駆動モーターを用いて回転移動させる駆動ローラ、12は中間転写ベルトを支持する駆動手段をもたない従送ローラである。更に、13は中間転写ベルトに転写されたトナー画像を記録媒体に2次転写する1対の2次転写ローラー、14は記録媒体の給紙を行う1対の給紙ローラである。
【0020】
図3の構成図を用いてタンデム方式でのカラー画像の形成方法を説明する。記録を行う画像は本図に示さない画像処理手段にて4つの色に色分解する。各感光体ドラム2に対応する露光手段4を用いて、4つの色の画像を感光体ドラム上に潜像画像として形成する。このとき、中間転写ベルト1上に4つの色に分解した画像が正しく重なるように、タイミングをずらして画像を形成する。形成された潜像画像は、現像手段8にてトナーを付着させてトナー画像を形成する。4つの感光体ドラム2にて形成された4色のトナー画像は、1次転写手9にて順次、中間転写ベルトに重ね合わさるように転写(1次転写)を行い、カラーのトナー画像を形成する。
【0021】
記録媒体である記録材としての記録紙は、中間転写ベルト1に転写されたカラーのトナー画像が2次転写ローラー13に到達するタイミングに合せて、給紙ローラ14にて搬送される。中間転写ベルト1に転写されたカラーのトナー画像は、2次転写ローラー13にて記録媒体に転写(2次転写)され、本図に示さない定着手段にて定着される。以上のような動作によって記録媒体にカラー画像の記録が行われる。
【0022】
(色ずれ補正)
1)色ずれ補正の概要
図4で、最上流側のYステーションで形成された感光体ドラム2上の第1マーク15Yは、Yステーションの1次転写ローラー9にて中間転写ベルト1に転写され、第2マーク16が形成される。下流側のMステーションでは、第1マーク読み取り手段17Mと、第2マーク読み取り手段18Mを用いて、第1マーク15Mと第2マーク16の同じ画像位置を示すマークの通過を有効画像領域に先んじて検知する。
【0023】
この通過時間差から、ずれ量を算出し、転写位置にてYとMの色ずれが無くなるように、感光体ドラム2Mの速度を補正制御する。更に下流側のCステーション、Kステーションにおいても、同様に色ずれ補正制御を行う。このように色Yに対して色M、色C、色Kの色ずれ補正を行うことで、Y,M、C、K相互の色ずれを無くするようにしている。
【0024】
2)画像形成部におけるドラム上の静電潜像目盛り(第1目盛り)
第1マークに関しては、露光手段4により画像信号に従ってレーザ光を走査して静電潜像を形成する。このとき、感光ドラム2の露光位置を延長した位置で、有効画像領域外の両端部に、有効画像を書き込む前後のレーザー光の照射により静電潜像目盛り線を書き込む。即ち、移動方向に交差する方向における有効画像領域外となる側端部であって、且つ移動方向において有効画像領域よりも先行する領域から始まり、夫々の有効画像領域に至る目盛り描画領域に、現像剤による画像と対応した第1の静電潜像目盛りを形成する。
【0025】
第1の静電潜像目盛りである静電潜像目盛り線は、画像を感光ドラム2に書き込む前の感光ドラム2が回転駆動を開始した直後から形成され、即ち有効画像領域の先端部より先行する余白部あるいは紙間部から形成が開始される。そして、第1感光ドラム2での画像形成が終了するまで静電潜像目盛り線の感光ドラム2への書き込みが連続して続けられる。即ち、15Y、15M、15C、15Kは各感光体ドラム上の画像の位置を示す第1マークで、露光手段4を用いて画像形成と同時に画像の領域外に潜像として形成される。
【0026】
17Mは感光体ドラムMの表面上の第1マークMを読み取る第1マーク読み取り手段Mである。同様に17Cは感光体ドラムCの表面上の第1マークCを読み取りる第1マーク読み取り手段C、17Kは感光体ドラムKの表面上の第1マークKを読み取りる第1マーク読み取り手段Kである。この3つの読み取り手段は1次転写位置Aの近傍に取り付けられている。
【0027】
18Mは、中間転写ベルト1上の第2マーク16をMステーションの1次転写位置の近傍で読み取る第2マーク読み取り手段である。同様に18Cは、中間転写ベルト1上の第2マーク16をCステーションの1次転写位置の近傍で読み取る第2マーク読み取り手段Cである。また、18Kは中間転写ベルト1上の第2マーク16をKステーションの1次転写位置の近傍で読み取る第2マーク読み取り手段Kである。
【0028】
画像の位置を示すマークの一例を図5を用いて説明する。図5(a)はYステーションで形成する第1マークYの例で、感光体ドラムの回転方向である副走査方向4ライン毎に第1マークが感光体ドラムの端部の画像領域外に連続して形成する。図5(b)はMステーションで形成する第1マークの例である。これらの第1マークには、同じ画像位置を示すアドレスを付与する。図5におけるMEM−Y(n)やMEM−M(n)はこのアドレスの一例である。
【0029】
このアドレスは第1マークに記しても良いが、第1マークの形成開始後のカウント値を用いても良い。図5では画像の有無に関係なく、連続した第1マークの例を示している。Cステーション、Kステーションも同様の第1マークを形成する。
【0030】
3)最上流側で中間転写ベルトへ転写される静電潜像目盛り(第2目盛り)
16は中間転写ベルト上の画像位置を示す第2マークで、Yステーションの第1マークYを転写ローラー9を用いて中間転写ベルト1に転写したものである。尚、同じステーションの第1マーク読み取り手段と第2マーク読み取り手段の副走査方向の読み取り位置は同じ位置に設置する。尚、副走査方向とは回転および搬送方向である。また、主走査方向とは感光体ドラムの回転軸方向および搬送方向に対して搬送面内で直交する方向である。今後の説明では主走査方向と副走査方向という表現を用いる。
【0031】
19は中間転写ベルト1上の第2マーク16を消去するための第2マーク・クリーナーである。尚、第2マーク・クリーナーは本図に図示しない中間転写ベルト・クリーナを用いても良い。
【0032】
最上流側の画像形成部では、静電潜像が、現像手段により、マイナスに帯電したイエローYトナーによって現像される。このとき、感光ドラム2の両端部の静電潜像目盛り線には、トナーを現像しないようにするため、現像手段8の現像領域が静電潜像目盛り線の領域の内側で、一次転写ローラ9の幅より狭い範囲になるように長さが定められている。
【0033】
ここで、第1画像を形成するYトナー像が第1感光ドラム2と中間転写ベルト1が接触する第1転写部において中間転写ベルト1に転写される。このとき、中間転写ベルト1の表面の両端部の感光ドラム2に形成された静電潜像目盛り線も、中間転写ベルト1の表面側(感光ドラム側)に設けられた被転写部に転写される。
【0034】
4)色ずれ補正の制御システムと制御フロー
図6は図4の4つのステーションの内、色ずれ補正を行っているMステーション、Cステーション、Kステーションのいずれか1つのステーションを抜粋した構成図である。図6において、20は感光体ドラム2を駆動する感光体ドラム駆動モーター、21はこの感光体駆動モーター20の駆動力を感光体ドラム21に伝達するギアやベルトなどの駆動伝達機構である。位置補正量算出手段101は、第1マーク読み取り手段17で検知した第1マーク通過時刻と第2マーク読み取り手段18で検知した第2マーク通過時刻の検出ずれを認識し、検出ずれを減少させるように、感光体ドラム21の回転速度を制御する。
【0035】
具体的には検出位置である転写位置にて、ずれ量である時間差を算出し、時間差が“0”になるような感光体ドラム2の速度を算出する。102は位置補正量算出手段101で算出された速度に従って感光体駆動モーター20が回転する様な駆動信号を生成する感光体ドラム駆動制御手段である。201は第1マーク読み取り手段17で読み取った第1マーク読み取り信号。202は第2マーク読み取り手段18で読み取った第2マーク読み取り信号である。203は位置補正量算出手段101で算出された感光体ドラム速度指令信号。204は感光体ドラム駆動制御手段で生成された感光体ドラム駆動信号である。
【0036】
ここで、図6において色ずれ補正の方法を図7のフローチャートと対応させながら説明する。図6において、第1マーク読み取り手段17および第2マーク読み取り手段18は転写位置AよりYステーション側(図の左側)に、マーク1つ分離れた位置に取り付けているものとする。感光体ドラム2の第1マーク15が第1マーク読み取り手段17を通過した時刻を位置補正量算出手段101にて記憶する。この時刻をTdとする。これは図7のフローチャートの処理Aで行っている。
【0037】
同様に同じ画像位置を示す中間転写ベルト1の第2マーク16が第2マーク読み取り手段18を通過した時刻を位置補正量算出手段101にて記憶する。この時刻をTbとする。これは図7のフローチャートの処理Bで行っている。2つのマーク共に記憶したら位置補正量算出手段101にて、2つの時刻Td、Tbの差が、転写位置Aにて“0”になるように第1マークの速度、つまり感光体ドラム2の速度を算出する。これは図7のフローチャートの処理Cで行っている。
【0038】
算出した感光体ドラム2の速度は感光体ドラム速度指令信号203を通して感光体ドラム駆動制御手段102に送られる。感光体ドラム駆動制御手段102は送られてきた感光体ドラム速度指令信号203の速度で回転す様に感光体ドラム駆動信号204を設定し直す。感光体ドラム駆動モーター20は新たに設定された感光体ドラム駆動信号204に従って感光体ドラム2を回転駆動する。これは図7のフローチャートの処理Dで行っている。以上の処理を繰り返して色ずれを補正を行っている。
【0039】
5)ベルト速度変動と色ずれ補正
図4で説明したように、本実施形態を適用できる色ずれ補正方式は、Yステーションで転写して形成された第2マークYに対してMステーション、Cステーション、Kステーション各々の第1マークとのずれ量を検知する。そして、下流側の各感光体ドラム2の速度を制御して色ずれを補正する方式である。
【0040】
即ち、Yステーションで形成した第1マークは中間転写ベルト1に転写されて中間転写ベルト上の第2マークが形成される。この第2マークが、Mステーションの転写位置近傍に設けた第2マーク読み取り手段にて、どの様に読み取られるかを図14の構成図と図15のタイミングチャート、図16の中間転写ベルト上の第2マークの図を用いて説明する。
【0041】
図14は図4の構成図においてYステーションとMステーションの部分のみ限定した構成図である。尚、中間転写ベルトの駆動ローラー等の本説明に必要の無い機構は省略している。図15(a)はYステーションの転写位置における第1マークYの通過の様子を示したタイミングチャートである。通常では、第1マークYは連続して形成される。しかし、説明しやすいように図15においてはMEM_D0、MEM_D1、MEM_D2、MEM_D3の4つの第1マークYのみを記載している。
【0042】
MEM_D0が通過する時間をt0、MEM_D1が通過する時間をt1、MEM_D2が通過する時間をt2、MEM_D3が通過する時間をt3とする。T1はMEM_D0が通過してからMEM_D1が通過するまでの経過時間、T2はMEM_D1が通過してからMEM_D21が通過するまでの経過時間、T3はMEM_D2が通過してからMEM_D3が通過するまでの経過時間である。本実施形態においては、Yステーションの感光体ドラムは偏心や回転ムラの無い理想的な回転動作を行っているものとする。
【0043】
よって、T1、T2、T3は共に露光手段4にて第1マークを形成するマーク露光周期Δtとなり、等間隔で通過するものとする。このときの中間転写ベルト1の速度Vbを示したものが図15(b)である。通常は複雑な正弦波の組み合わせであるが、説明しやすいようにt0、t1、t2、t3の各間は一定の速度とし、t0とt1間はVb1、t1とt2間はVb2、t2とt3間はVb3であるものとする。
【0044】
図16は転写された第2マークを示した図で、MEM_D0とMEM_D1との間の長さである距離をLd1、MEM_D1とMEM_D2との間の長さである距離をLd2、MEM_D2とMEM_D3との間の距離をLd3とする。MEM_D0を転写してからMEM_D1を転写するまでは、中間転写ベルはVb1の速度で搬送され、その間の経過時間はT1であるためMEM_D0とMEM_D1との間の距離Ld1は以下のような速度と時間の積で求められる。
【0045】
Ld1=Vb1*T1・・・(1)
同様に、Ld2、Ld3は以下の式で求められる。
【0046】
Ld2=Vb2*T2・・・(2)
Ld3=Vb3*T3・・・(3)
この第2マークがMステーションの第2マーク読み取り手段を通過する時のタイミングチャートが図15(c)である。MEM_D0が読み取られる時間をt10、MEM_D1が読み取られる時間をt11、MEM_D2が通読み取られる時間をt12、MEM_D3が読み取られる時間をt13とする。
また、MEM_D0が読み取られてからMEM_D1が読み取られるまでの経過時間をT11、MEM_D1が読み取られてからMEM_D2が読み取られるまでの経過時間をT12とする。また、MEM_D2が読み取られてからMEM_D3が読み取られるまでの経過時間をT13とする。
【0047】
この時の中間転写ベルト1の速度Vbを示したものを図15(b)に示し、t10とt11間はVb11、t11とt12間はVb12、t12とt13間はVb13とする。MEM_D0が読み取られてからMEM_D1が読み取られるまでの経過時間T11は、中間転写ベルト1はVb11の速度で搬送され、この間のマーク間距離はLd1であるから、以下のように距離を速度で割った式で求められる。
【0048】
T11=Ld1/Vb11・・・(4)
同様にT12、T13は以下の式で求められる。
【0049】
T12=Ld2/Vb12・・・(5)
T13=Ld3/Vb13・・・(6)
式(1)を式(4)に、式(2)を式(5)に、式(3)を式(6)にそれぞれ代入すると以下のようになる。
【0050】
T11=Vb1/Vb11*T1・・・(7)
T12=Vb2/Vb12*T3・・・(8)
T13=Vb3/Vb13*T3・・・(9)
図15(a)で説明したように、Yステーションの感光体ドラムは回転ムラの無い理想的な回転をしているのでT1、T2、T3は共にマーク露光周期Δtに置き換えることが出来る。よって、式(7)〜式(9)は以下のようになる。
【0051】
T11=Vb1/Vb11*Δt・・・(10)
T12=Vb2/Vb12*Δt・・・(11)
T13=Vb3/Vb13*Δt・・・(12)
したがって、第2マークの通過間隔は、一定周期であるマーク露光間隔Δtに対して、転写した時の中間転写ベルトの速度と読み取る時の中間転写ベルトの速度との比に比例することが解る。この比の変動が第2マークの変動となる。色ずれ補正はこの第2マークの変動に対して第1マークを合わせるような制御を行う事になる。
【0052】
6)マークの発生位置および検出位置におけるベルト速度変動の位相一致化
中間転写ベルト1の速度変動が無い場合には,Vb1、Vb2,Vb3,Vb11、Vb12、Vb13は全て規定速度であるVboであるため、T11、T12、T13は共にΔtとなる。つまり、Mステーションの第2マーク読み取り手段Mを通過する第2マークはマーク露光間隔Δtの等間隔となる。
【0053】
中間転写ベルト1の速度変動が有る場合においても、Vb1=Vb11かつVb2=Vb12かつVb3=Vb13であれば、Vb1≠Vb2≠Vb3≠Vbであっても第2マークは常にマーク露光間隔Δtの等間隔となる。この条件を満たすのは、中間転写ベルトが一定周期で速度変動している場合において、Yステーションで転写した時の中間転写ベルトの速度変動とMステーションで読み取る時の中間転写ベルトの速度変動の位相が一致する場合である。このことを図17を用いて説明する。
【0054】
図17において、中間転写ベルトが規定速度Vboで回転移動した時、Yステーションの転写位置AからMステーションの第2マーク読み取り手段Mまでのステーション間時間をTsとする。また、中間転写ベルト1の速度変動周期をTfbとする。中間転写ベルトの速度変動を示す4つのタイミングチャートは(a)がTs/Tfb=2、(b)がTs/Tfb=2.1、(c)がTs/Tfb=2.5、(d)がTs/Tfb=3という条件の速度変動を示している。
【0055】
この4つのタイミングチャートの中で、Yステーションで転写した時の中間転写ベルトの速度とMステーションで読み取る時の中間転写ベルトの速度が同じものは、(a)のTs/Tfb=2と(d)のTs/Tfb=3である。この2つの波形は、転写位置Aから始まっている波形をMステーションの読み取り位置にシフトしても連続性がある。つまり位相が一致している。この2つは共にTs/Tfbが正の整数であり、他の2つは小数でる。よって、位相が一致ずる条件は、Ts/Tfbが正の整数の時である。
【0056】
このことを確認するために行ったシミュレーション結果が図18と図19である。図18は図17の4つの条件における中間転写ベルトの速度VbとMステーションの第2マーク読み取り手段Mを通過する第2マーク通過間隔Tbのシミュレーション結果である。図18(a)は図17(a)と同じくTs/Tfb=2の場合、図18(B)は図17(b)と同じくTs/Tfb=2.1の場合、図18(c)は図17(c)と同じくTs/Tfb=2.5の場合である。
【0057】
図18(d)は図17(d)と同じくTs/Tfb=3の場合の結果である。図18において、細線が中間転写ベルトの速度Vb、太線が第2マーク通過間隔Tbである。時間軸はYステーションにて転写が開始された時間を0(s)としているため、第2マーク通過間隔TbはMステーションの第2マーク読み取り手段Mに到達される時間である1(s)から始まる波形となっている。その他のシミュレーション条件は以下の通りである。尚、ステーション間距離は、Yステーションの転写位置AとMステーションの第2マーク読み取り手段Mの読み取り位置との間の距離である。
【0058】
・中間転写ベルトの規定速度:300(mm/s)
・ステーション間距離:300(mm)
・中間転写ベルトの速度変動量:±3(mm/s)
・マーク露光間隔:Δt=1(ms)
図18(a)のTs/Tfb=2と図18(d)のTs/Tfb=3において第2マーク通過間隔Tbは1(ms)一定となっている。図18(b)のTs/Tfb=2.1においてはTb=1±0.006(ms)、図18(d)のTs/Tfb=2.5においてはTb=1±0.02(ms)というように変動量は異なるものの中間転写ベルトの速度変動と同じ周期で変動する結果が得られた。つまり、Ts/Tfbが正の整数となる場合、速度変動の影響を無くすことができる。
【0059】
この条件を確認するために、Ts/Tfbが0.1〜5の範囲内で変化させた時の第2マーク通過間隔変動量ΔTbをシミュレーションした結果を示したのが図19である。図19において、横軸がTs/Tfbの値で、縦軸がΔTbである。Ts/Tfbが1、2、3、4、5の整数の時にΔTbが“0”になっていることからTs/Tfbが正の整数の時に第2マーク通過間隔が変動しないことが確認できる。
【0060】
即ち、中間転写ベルトの速度変動の位相がマーク発生位置とマーク検出位置で一致することから、マーク発生時点のベルト速度とマーク検出時点のベルト速度が一致することでマーク検出にベルト速度変動が影響しないこととなる。
【0061】
Ts/Tfb=m
mは正の整数(m=1、2、3、・・・)
Ts:Yステーションの転写位置AからMステーションの第2マーク読み取り手
段Mまでのステーション間時間
Tfb:中間転写ベルト1の速度変動周期
ここで、Yステーションの転写位置AからMステーションの第2マーク読み取り手
段Mまでのステーション間距離をL、中間転写ベルトの規定速度をVbo、mを正の整数値とするとき、以下のように変換される。
【0062】
L/(Vbo*Tfb)=m
図20は図17において速度変動が影響しないステーション間距離の条件を示した図である。図20(a)はTs/Tfb=1、図20(b)はTs/Tfb=2、図20(c)はTs/Tfb=3、図20(d)はTs/Tfb=4となる条件を示している。
【0063】
6)ベルト速度変動とドラム速度制御(発散問題)
図6の構成において、露光手段4に使用しているレーザー光学系5は、高速で回転するポリゴンミラーを用いて主走査方向にスキャンさせている。このポリゴンミラーは回転ムラが微少であっても画質劣化が顕著に表れてしまうため、高精度な定速制御を行っている。よって、画像形成中のスキャンの周期は一定周期になる。このように一定周期で露光することを非同期露光と呼ぶ。
【0064】
色ずれを補正は図6で説明したように感光体ドラム2の回転速度を積極的に変動させている。よって、非同期露光で第1マーク15や画像を形成すると副走査方向のスキャンピッチが変動する。よって、第1マーク15のピッチも感光体ドラム2の速度によって変動する。また、第2マーク16は中間転写ベルト上1に等ピッチ形成されていても中間転写ベルトの速度変動によって、第2マーク読み取り手段18で検知される時間間隔は変動する。
【0065】
シミュレーションを行った結果、中間転写ベルト1の速度変動周期が特定の周期において、感光体ドラムの回転速度が発振(以降は発散と呼ぶ)する結果が得られ、発散という問題があることが解った。シミュレーションを解析した結果、発散する条件は以下であることが解った。
【0066】
発散条件:Tfd/Tfb=n (n=1、2、3、・・・)
Tfd=露光−転写間時間をTfd
Tfb=中間転写ベルト1の速度変動周期
図9はこの発散条件を示したものである。 図9では露光−転写間時間Tfdを中間転写ベルトの速度変動周期Tfbで割った値が1、2、3、4の4つの場合を示している。このようにTfd/Tfb=n (n=1、2、3、・・・)となる周期が発散する周期である。
【0067】
図10(a)〜図10(g)は露光―転写間時間Tfdと中間転写ベルトの速度変動周期Tfbを表1のようにした時の中間転写ベルトと感光体ドラムの速度のシミュレーション結果である。太線が中間転写ベルトの速度、細線が感光体ドラムの速度である。尚、この時、中間転写ベルトの速度は300(mm/s)に対して表1のTfbの周期で±3(mm/s)の速度変動を与え、制御遅延の無い理想的な制御を行った場合の結果である。Tfdは露光−転写間時間、Tfbは中間転写ベルトの速度変動周期である。
【0068】
【表1】
【0069】
図10(a)〜図10(h)のシミュレーション結果より、Tfd/Tfbが1.0の図10(a)、2.0の図10(c)、3.0の図10(g)、5.0の図10(h)のように正の整数になる条件では感光体ドラムの速度が発散する結果が得られた。また、Tfd/Tfbが1.9の図10(b)、2.1の図4(d)、2.5の図4(e)、2.9の図10(f)のように小数を含む値の条件では発散しない結果が得られた。
この発散の詳細を図11乃至図13を用いて説明する。図11乃至図13は、時間経過により図11(a)〜図13(f)の順に6つの時間における第1マークと第2マークについて説明する。各図の左側は露光部または転写部を拡大した図である。
尚、共通条件を以下に示す
条件:感光体ドラム2と中間転写ベルト1の基本とする基準速度は共にV。
【0070】
マークを形成する周期をΔt。
【0071】
中間転写ベルトの速度VbはVbo±ΔVで変動(単一周波数)。
【0072】
Ldは速度Vのときのマーク間ピッチ。
【0073】
感光体ドラムの偏心および回転ムラ等の無い理想的な回転。
【0074】
感光体ドラムの速度制御は遅延が無く理想的に追従する。
【0075】
第1マーク読み取り手段17および第2マーク読み取り手段18
の位置は転写位置より露光方向(左方向)に1〜2マーク分、
離れた位置
図11は、1番目のマークが転写位置から1マーク分手前にきた時間t(1)である。ここでMEM_D(0)は感光体ドラム2の第1マーク、MEM_B(0)は中間転写ベルト1の第2マークである。この時、中間転写ベルトの速度Vbは図中に示すようにΔVだけ速かったとする。感光体ドラム2は基準速度Vで回転しているため、位置ずれは無い。よって、第2マークMEM_B(0)は速度が速い分、本図の右側の方に早く進んでしまい位置ずれが生じる。
【0076】
第1マークは位置ずれが無いためこの第2マークの位置ずれ量ΔLb(1)が色ずれとなる。MEM_D(0)が転写位置にてMEM_B(0)に追いつくように感光体ドラムの速度Vdを速める。本図では、ずれ量ΔLb(1)をΔtで割った値だけ早めた V+ΔLb(1)/Δt とする。尚、図7で説明した方法で求めても良い。この時に露光手段4により第1マークMEM_D(1)が形成される。
【0077】
図11(b)は、図11(a)よりΔtだけ経過した時間t(2)を示す。Δt経過したため次の第1マークMEM_D(2)が形成される。この間、感光体ドラムは中間転写ベルトのマークに追いつく為、規定の速度VよりΔLb(1)/Δtだけ速い。よってMEM_D(1)とのマーク間ピッチLd(2)はLd+ΔLb(1)と云うようにΔLb(1)だけ広くなる。
【0078】
図12(c)は時刻t(1)で形成した第1マークMEM_D(1)が転写位置にきた時間t(3)である。この時、中間転写ベルトの速度Vbは図中に示すようにΔVだけ速かったとする。よって、第2マークMEM_B(2)は速度が速い分、本図の右側の方に早く進んでしまい、第2マークの位置ずれが生じる。この時の第2マークの位置ずれ量をΔLb(3)とする。この時、第1マークMEM_D(2)と転写位置にいるMEM_D(1)とのマーク間ピッチLd(2)はLd+ΔLb(1)であるため、所定の位置より本図の左側にΔLb(1)だけ位置がずれている。
【0079】
これが第1マークの位置ずれ量である。よって、MEM_D(2)とMEM_B(2)の色ずれ量は2つの位置ずれ量の和であるΔLb(1)+ΔLb(3)となり第1マークMEM_D(2)の方が遅れている。MEM_D(2)が転写位置にてMEM_B(2)に追いつくために、感光体ドラムの速度VdをV+[ΔLb(1)+ΔLb(3)]/Δtに速度補正する。この時に露光手段4により第1マークMEM_D(3)が形成される。
【0080】
図12(d)は図12(c)よりΔtだけ経過した時間t(4)である。Δt経過したため、次の第1マークMEM_D(4)が形成される。この間、感光体ドラムは中間転写ベルトの第2マークに追いつく為、ドラム規定速度Vdoより[ΔLb(1)+ΔLb(3)]/Δtだけ速い。よってMEM_D(3)とのマーク間ピッチLd(4)はLd+ΔLb(1)+ΔLb(3)と云うように中間転写ベルトの速度変動分ΔLb(3)にマーク間ピッチ変動分ΔLb(1)を加算した分、広くなる。
【0081】
図13(e)は時刻t(3)で形成した第1マークMEM_D(3)が転写位置にきた時間t(5)である。この時、中間転写ベルトの速度Vbは図中に示すようにΔVだけ速かったとする。よって、第2マークMEM_B(4)は速度が速い分、本図の右側の方に早く進んでしまい、第2マークの位置ずれが生じる。この時の第2マーク位置ずれ量をΔLb(5)とする。この時、第1マークMEM_D(4)と転写位置にいるMEM_D(3)とのマーク間ピッチLd(4)はLd+ΔLb(1)+ΔLb(3)であるため、所定の位置より本図の左側にΔLb(1)+ΔLb(3)だけ位置がずれている。
【0082】
これが第1マークの位置ずれ量である。よって、MEM_D(4)とMEM_B(4)の色ずれ量は2つの位置ずれ量の和であるΔLb(1)+ΔLb(3)+ΔLb(5)となり、第1マークMEM_D(4)の方が遅れるている。MEM_D(4)が転写位置にてMEM_B(4)に追いつくために、感光体ドラムの速度VdをVdo+[ΔLb(1)+ΔLb(3)+ΔLb(5)]/Δtに速度補正する。この時に露光手段4により第1マークMEM_D(5)が形成する。
【0083】
図13(f)は図11(e)よりΔtだけ経過した時間t(6)である。Δt経過したため次の第1マークMEM_D(6)が形成される。この間、感光体ドラムは中間転写ベルトのマークに追いつく為、ドラム規定速度Vdoより[ΔLb(1)+ΔLb(3)+ΔLb(5)]/Δtだけ速い。よってMEM_D(5)とのマーク間ピッチLd(6)はLd+ΔLb(1)+ΔLb(3)+ΔLb(5)と云うように中間転写ベルトの速度変動分ΔLb(5)にマーク間ピッチ変動分ΔLb(1)+ΔLb(3)を加算した分、広くなる。以上の説明において、感光体ドラムの速度Vdは表2のように補正している。
【0084】
【表2】
【0085】
表2より、感光体ドラムの速度Vdは時間t(1)、t(3)、t(5)の各々の中間転写ベルトの速度変動によるずれ量の累積になっていることが解る。時間t(1)はMEM_D(1)が露光された時間であり、時間t(3)はMEM_D(1)が転写された時間である。同様に時間t(3)はMEM_D(3)が露光された時間であり、時間t(5)はMEM_D(3)が転写された時間である。つまり露光−転写間時間ごとの累積となる。
【0086】
図11及至図13で説明したように、時間t(1)、t(3)、t(5)における中間転写ベルトの速度変動が常に最大値(V+ΔV)となる場合には、感光体ドラムの速度Vdは増大することになる。速度変動が周期的な変動だと発散になる。図9の条件がこれに当てはまる事が解る。よって、図9で説明した条件において、図10のように感光体ドラムの速度制御量が発散することが説明できる。
【0087】
図9は図4で説明した方法で色ずれ補正を行う時の課題である感光体ドラムの制御量の発散条件を示した図であった。発散条件は、以下の式を満足する。
【0088】
発散条件:Tfd/Tfb=n
nは正の整数(n=1、2、3、・・・)
Tfd=露光−転写間時間をTfd
Tfb=中間転写ベルト1の速度変動周期
(発散問題の解消)
図9の発散条件の図と図20を見比べると、それぞれ4つの中間転写ベルト1の速度変動の周期が同じ関係である事が解る。よって、図20に示すように、図17のステーション間時間Tsを図9の露光−転写間時間Tfdの整数倍の時間、例えば同じ時間にすると、前述の発散問題の解消を図ることができる。
【0089】
尚、感光体ドラム2も中間転写ベルト1も同じ規定速度の場合には、同じ時間で移動する長さである距離は同じである。よって、露光−転写間距離、即ち感光体ドラムの周上距離をD、ベルト表面上距離であるステーション間距離(Yステーションの転写位置AとMステーションの第2マーク読み取り手段Mの読み取り位置との間の距離)をLとすると、D=Lという関係になる。この関係を図にしたのが図21である。図21ではYステーションとMステーションしか記載していない。
【0090】
しかし実際には図4のようにCステーション、Kステーションも実在する。一般的には4つのステーションの露光−転写間距離Dは同じである。ステーション間距離LはYステーションからの距離であるから、D=Lを満足するためにはMステーション、Cステーション、Kステーションは同じ位置に配置しなくてはならない。これは不可能である。即ち、Cステーション、Kステーションでは発散問題が解消できないこととなる。
【0091】
しかし、図15で説明したように速度変動を取り除ける条件は、Yステーションで転写した時の中間転写ベルトの速度変動とMステーションで読み取る時の中間転写ベルトの速度変動の位相が一致するという条件である。よって、ステーション間距離Lは露光−転写間距離Dの整数倍でも成り立つ。
【0092】
この条件に従って4つのステーションの構成を示したのが図1である。図1において、Mステーションの露光−転写間距離をD1、YステーションとMステーションとのステーション間距離をL1とする。Cステーションの露光−転写間距離をD2、YステーションとCステーションとのステーション間距離をL2とする。Kステーションの露光−転写間距離をD3、YステーションとKステーションとのステーション間距離をL3とする。尚、本図においてもステーション間距離とはYステーションの転写位置Aと各ステーションの第2マーク読み取り手段の読み取り位置との間の距離である。本図では以下のような条件の場合の例である。
【0093】
L1=D1
L2=D2*2
L3=D3*3
併記した中間転写ベルトの速度変動のタイミングチャートの位相は全て一致している事から、このような条件において、色ずれ補正を行うM、C、Kの3つのステーションにおいて発散の影響を無くすことができることが確認できる。
【0094】
以上の説明より発散の影響を防止できる条件は下記の通りである。
【0095】
L=D*k k=1、2、3、・・・
即ち、L/Dが正の整数値となる。
【0096】
L:ステーション間距離(Yステーションの転写位置AとMステーション
の第2マーク読み取り手段Mの読み取り位置との間の距離)
D:露光−転写間距離
本実施形態によれば、中間転写ベルトの速度変動に発散する要因が有っても色ずれ補正の発散が生じないため、長期に渡って高精度な色ずれの補正が可能となる。しかも、部材や制御系を特に追加せずに、安定して色ずれの無いカラー画像を形成することができる。
【0097】
(感光ドラムの移動速度の算出例)
次に、図6の位置補正量算出手段101における感光体ドラム速度の算出例を図8を用いて説明する。図8において、第1マーク読み取り手段17と転写位置Aとの距離Ldを0.6(mm)。第2マーク読み取り手段18と転写位置Aとの距離Lbも0.6(mm)、感光体ドラムの規定速度Vdを300(mm/s)とする。そして、中間転写ベルトの速度Vbを300(mm/s)、第1マーク15が第1マーク読み取り手段17にて検知してからの経過時間Td1を0.12(ms)とする。
【0098】
また第2マーク16が第2マーク読み取り手段18にて検知してからの経過時間Tb1を0.1(ms)とする。第2マーク読み取り手段18と転写位置Aとの距離Lbと中間転写ベルト速度Vbから、第2マーク16が第2マーク読み取り手段18にて検知してから転写位置Aに到達する時間Tbは以下の式より求まる。
【0099】
Tb=Lb/Vb=0.6(mm)/300(mm/s)=2(ms)
ここで、第2マーク16が第2マーク読み取り手段18にて検知してからの経過時間Tb1より、現時点からこれから転写位置Aに到達するまでの時間Tb2を以下の式にて求める。
【0100】
Tb2=Tb−Tb1=2(ms)−0.1(ms)=1.9(ms)・・・式(1)
この時、第1マーク15は第1マーク読み取り手段17で検知してから既にTd1=0.12(ms)経過しているので、移動距離は以下の式で求まる。
【0101】
Ld1=Vd*Td1=300(mm/s)*0.12(ms)=36(μm)
よって、転写位置Aに到達するのに必要な距離Ld2は以下の式で求まる。
【0102】
Ld2=Ld−Ld1=0.6(mm)−36(μm)=564(μm)
式(1)より、第2マーク16はTb2=1.9(ms)後に転写位置Aを通過するので第2マーク15も同時に転写位置Aを通過させるためには、Ld2=564(μm)の距離をTb2=1.9(ms)の時間で移動しなくてはならない。この速度が感光体ドラム2の速度Vdであり、速度は以下の式で求められる。
【0103】
Vd=Ld2/Tb2=564(μm)/1.9(ms)=296.8(mm/s)
《第2の実施形態》
第1の実施形態は感光体ドラムと中間転写ベルトの速度が同じ場合であった。しかし、転写効率の向上や転写時の画質劣化対策として感光体ドラムと中間転写ベルトの速度を数%以内で差を設ける場合がある。本実施形態では速度差がある場合での発散防止条件について説明する。
【0104】
速度差がある場合には第1の実施形態での発散の影響を防止できる以下の条件は成り立たなくなる。
【0105】
L=D*k k=1、2、3、・・・
ステーション間距離Lは図17でのステーション間時間Tsから導き出したものであり、露光−転写間距離Dは図9の露光−転写間時間Tfdから導き出したものである。「時間」というパラメータは目に見えない上に筐体や機器部材を設計する時には用いないパラメータである。よって、「長さ」というパレメータで表現するのが好ましい。第1の実施形態では感光体ドラムも中間転写ベルトの共に同じ速度であるため、距離の関係式に単純に置き換えられたのであって、元々は以下のような時間の関係式で表される。
【0106】
Ts=Tfd*m、m=1、2、3、・・・
中間転写ベルトの速度Vb、感光体ドラムの速度をVdとすると、ステーション間距離Lと露光−転写間距離Dはそれぞれの速度と時間の積で求められるので以下のようになる。
【0107】
L=Vb*Ts
D=Vd*Tfd
この2つの式を時間の関係式に代入すると以下のようになる。
【0108】
L=(Vb/Vd)*D*k k=1、2、3、・・・
即ち、L*Vd/(D*Vb)が正の整数値となるように設定すれば良い。
【0109】
これが速度差がある場合において、発散問題を解消する条件である。図2はこの条件を示す構成図である。図2において中間転写ベルトの速度をVb、Yステーションの速度をVd0、Mステーションの速度をVd1、Cステーションの速度をVd2、Kステーションの速度をVd3とする。その他のD1、D2、D3、L1、L2、L3は第1の実施形態の図1と同じであり、以下のような条件の場合の例である。
【0110】
L1=(Vb/Vd1)*D1
L2=(Vb/Vd2)*D2*2
L3=(Vb/Vd3)*D3*3
例えば感光ドラムの速度より中間転写ベルトの速度の方が速い場合、速度比は1より大きくなるため条件式より求められるステーション間距離を長くなる。同じ時間でも速度が速い方が移動できる距離は長くなる。発散の影響を防止する関係式は時間の関係式においては速度に依存しない。よって速度が速い方が距離が長くなる。このことより、距離の関係式においては中間転写ベルトの方が速い場合にはステーション間距離が長くなることは説明できる。
【0111】
(変形例1)
上記実施形態では、Ts/TfbあるいはL/(Vbo*Tfb)が正の整数値であり、且つ、Tfd/Tfbが正の整数値である場合を説明した。しかし、本発明はこれに限られず、図22に示すようにTs/TfbあるいはL/(Vbo*Tfb)が正の整数値(例えば1)であり、且つTfd/Tfbが正の非整数値(例えば1.5)であっても良い。この場合、マーク発生位置からマーク検出位置の間では、感光ドラムの速度は中間転写ベルトの速度変動に応じて補正制御される。なお、図22において、Ts/TfbあるいはL/(Vbo*Tfb)が正の非整数値(例えば1.5)となる場合は、不適切な設定であることを示す。
【0112】
(変形例2)
上記実施形態においては、転写媒体として中間転写ベルトを用い中間転写ベルトに一次転写した後に記録紙に二次転写するカラー画像形成装置を開示したが、転写媒体として記録紙を用い記録紙に直接転写するカラー画像形成装置であっても良い。この場合、上述した中間転写ベルトの替わりに記録紙を保持する搬送ベルトが用いられ、記録紙搬送ベルトの速度変動周期をTfbとする。そして、第2目盛りが形成された上流側の像担持体の位置と下流側の像担持体の位置との間を記録紙搬送ベルトが移動する時間をTsとするとき、Ts/Tfbが正の整数値となるように設定する。
【0113】
(変形例3)
移動方向に交差する方向において、第2目盛りは第1目盛りと重なるような位置に配置され、第1検出手段、第2検出手段は共通の検出手段として構成されても良い。この場合、第2目盛りは、第1目盛りの各目盛り間隔の中間に各目盛りが配置され、第1目盛りの各目盛りに対し両側に隣接する第2目盛りとの間隔が等しくなるように制御されれば良い。
【符号の説明】
【0114】
1・・中間転写ベルト、2・・感光体ドラム、3・・1次帯電器、4・・露光手段、8・・現像器、9・・ 1次転写ローラー、13・・2次転写ローラー、15・・第1マーク(ドラム)、16・・第2マーク(ベルト)、17・・第1読み取り手段、18・・第2読み取り手段、101・・位置補正量算出手段、102・・感光体ドラム駆動制御手段、201・・第1マーク読み取り信号、202・・第2マーク読み取り信号、203・・感光体ドラム速度指令信号、204・・感光体ドラム駆動信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真記録方式を用いたカラープリンタ、カラー複写機等の複数の画像形成部を有する装置に関し、特に、記録媒体搬送方向の色ずれを低減し、高品位な画像出力が可能なカラー画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のカラー画像形成装置においては、高速化のためにタンデム型と呼ばれる方式が各種提案されている。この方式は、複数の画像形成部を有し、中間転写ベルト上、あるいは搬送ベルト上に保持された記録材上に順次異なる色(ブラックBk、シアンC、マゼンタM、イエローY)の像を転写する方式である。
【0003】
ところが、複数の画像形成部を有するタンデム型方式のカラー画像形成装置の問題点としては、部材製造上の寸法誤差や組立精度等の原因による動作むらは避けられない。このような原因により中間転写ベルト上に重ね合わされた各色の画像位置が一致せず、色ずれ(位置ずれ)を生じることが挙げられる。
【0004】
そこで、特許文献1に開示されているような補正方法が既に提案されている。この方法は、先ず各色の画像形成部において原稿画像情報に対応した位置検出用マークの可視画像を形成する。そして各画像形成部にて形成され移動部材上に転写された位置検出用マークを検知する位置検出用マーク検知手段を設ける。この位置検出用マーク検知手段から出力された検出信号に基づいて転写画像ずれを補正すべく、各画像形成部を制御する。
【0005】
この補正方式は、検知以降に形成される画像が1次転写を行う時に色ズレが無くなるように露光のタイミングや感光体ドラムの回転速度を補正するのであって、検知時に既に形成された画像に対しては補正を行わない。即ち、補正が反映されるのは露光手段にて画像を形成してから中間転写ベルト1に転写されるまでの時間経った後である。よって、この補正方法は、主にカラー画像形成装置の内部温度の変化や各部材の劣化など経時的な変動に起因するカラーレジずれに対して補正するものである。
【0006】
しかしながら、カラーレジずれには、上記のような長時間で変動する要因の他に、短時間で変動するものがある。即ち、感光体ドラムや中間転写ベルトを回転駆動する駆動ローラーやギア、駆動モーター等の主として回転体が変動要因で短時間に変動するカラーレジずれがある。しかし、この短時間でのカラーレジずれに関しては、上記補正方式では補正出来なかった。
【0007】
これに対し、特許文献2には、画像形成を行っているときに位置補正を実施するために、トナーを用いないで作成された画像パターンを読み取って位置合わせを行う方法が示される。第1の画像形成ドラムはベルトにより駆動され、下流側の像形成ドラムはそれぞれのモータにより駆動される。書き込み器が第1のドラムに対応付けられ、ベルトに符号を書き込む。
【0008】
また、書き込み器はドラムに対応するエンコーダから得られたパルス信号と同期されている。書き込み方式は磁気記録方式を用いている。書き込まれた符号は検出器により読み出される。検出器の各々は、ベルトの局所的変位を示す信号をそれぞれのコントローラへ送出する。コントローラは、対応するドラムのエンコーダから信号を更に受信し、下流側のドラムの変位が符号により制御されるように、このドラムの駆動モータのフィードバック制御を行う。
【0009】
このように構成することによって、全ての画像形成媒体を、画像担体の運動から求められた目標速度に制御することができ、これにより、全ての画像歪み間の差はゼロに減少されるとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭64−6981号公報
【特許文献2】特開平10−293435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
転写媒体である中間転写ベルトには一般に速度変動があり、中間転写ベルトの速度むらが色ずれ補正を行う際の障害となり得る。しかしながら、従来技術においては、この障害を問題視して解決することの開示あるいは示唆がされていない。
【0012】
そこで本発明は、転写媒体の速度変動が有っても、安定して色ずれの無いカラー画像を形成することができるカラー画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明に係わるカラー画像形成装置は、夫々が回転可能であって、夫々の有効画像領域に露光することで色に対応した現像剤による画像を形成するように所定方向に順に配置される複数の像担持体と、前記複数の像担持体に対向する移動可能な転写媒体と、前記像担持体に対して前記転写媒体を介して対向し、前記像担持体に形成される画像を前記転写媒体に夫々転写する複数の転写部材と、前記複数の像担持体に夫々備わる有効画像領域外の目盛り描画領域に前記現像剤による画像と対応した第1目盛りを形成する第1目盛り形成手段と、前記現像剤による画像の転写時に、前記転写媒体にあって有効画像領域外に、前記第1目盛りの内で上流側の目盛りに基づいて第2目盛りを形成する第2目盛り形成手段と、下流側の前記像担持体の前記第1目盛りを検出する第1検出手段と、前記第1検出手段と前記転写媒体の移動方向における位置が一致し、前記第2目盛りを検出する第2検出手段と、前記第1検出手段および前記第2検出手段による前記第1目盛りおよび前記第2目盛りの検出ずれを減少させるように、前記下流側の像担持体の回転速度を制御する制御手段と、を有するカラー画像形成装置であって、前記転写媒体の速度変動周期をTfb、前記第2目盛りが形成された前記像担持体の位置と下流側の前記像担持体の位置との間を前記転写媒体が移動する時間をTsとするとき、Ts/Tfbが正の整数値となるように設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、転写媒体の速度変動が有っても、安定して色ずれの無いカラー画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)乃至(d)は夫々感光体ドラムと中間転写ベルトの速度が同じ第1の実施形態の構成図である。
【図2】感光体ドラムと中間転写ベルトの速度が異なる第2の実施形態の構成図である。
【図3】一般的なタンデム方式のカラー電子写真装置の画像を形成する部分の構成図である。
【図4】本発明に適用する色ずれ補正方法のシステム構成図である。
【図5】(a)、(b)は夫々画像位置情報の一例を示す図である。
【図6】色ずれ補正を説明するための構成図である。
【図7】色ずれ補正のフローチャートである。
【図8】色ずれ補正制御量の算出を説明するための図である。
【図9】(a)乃至(d)は夫々色ずれ補正制御量の発散条件を表す図である。
【図10】(a)乃至(h)は夫々色ずれ補正制御量のシミュレーション波形である。
【図11】(a)、(b)は夫々色ずれ補正制御量の発散を説明する図である。
【図12】(c)、(d)は夫々色ずれ補正制御量の発散を説明する図である。
【図13】(e)、(f)は夫々色ずれ補正制御量の発散を説明する図である。
【図14】第2マークを説明する図である。
【図15】(a)乃至(d)は第2マークを説明するタイミングチャートである。
【図16】中間転写ベルト上の第2マークを示す図である。
【図17】(a)乃至(d)は読み取り時に速度変動が影響しない条件を説明すための図である。
【図18】(a)乃至(d)は読み取り時の第2マーク通過間隔のシミュレーション波形である。
【図19】読み取り時に速度変動が影響しない条件のシミュレーション結果の図である。
【図20】(a)乃至(d)は読み取り時に速度変動が影響しない条件を表す図である。
【図21】(a)乃至(d)は色ずれ補正制御量の発散条件を説明するための図である。
【図22】色ずれ補正の可否を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
図3は、4個の感光体ドラムで構成されるタンデム型方式のカラー画像形成装置の概要構成図である。通常、タンデム型方式の画像形成装置では、等速で回転移動する一本の中間転写ベルト1上に4本、あるいはそれ以上の像担持体である感光ドラム2が複数配置される。図3で、感光ドラム2は、夫々が等角速度で回転可能であって、異なる色であるイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBkの像を形成するよう、上流側より下流側に向けて所定方向に順に配置される。中間転写ベルト1は、感光体ドラム2に対向する移動可能な転写媒体として機能する。
【0017】
図4において、4つの感光体ドラム等は、左から順番にY、M、C、Kという記号を付与して区別し、中間転写ベルト1上にはY、M、C、Kの順に転写される。これらの4つを大別するためにYステーション、Mステーション、Cステーション、Kステーションと呼ぶ。本実施形態におけるカラー画像形成装置では、フルカラーの他、単色カラー例えば黒以外に赤のみ、黒単色による画像形成が可能である。
【0018】
図3において、3は感光体ドラム2の表面に均一な帯電量の電荷を与える1次帯電器である。また、4は感光体ドラム2の表面にレーザー光を露光して潜像画像を形成する露光手段、5はそのレーザー光を生成するレーザー光源とレンズやポリゴンミラーなどで構成されるレーザー光学系である。6はレーザー光学系5からのレーザー光を感光体ドラム2に照射するための折り返しミラーである。7はレーザー光、8は露光手段4にて形成された潜像画像にトナーを付着させてトナー画像を形成する現像手段である。
【0019】
9は感光体ドラム2上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト1に転写を行うための転写部材である1次転写ローラー、10は感光体ドラム2上の残留したトナーを除去するクリーナーである。また、11は中間転写ベルト1を本図に示さない駆動モーターを用いて回転移動させる駆動ローラ、12は中間転写ベルトを支持する駆動手段をもたない従送ローラである。更に、13は中間転写ベルトに転写されたトナー画像を記録媒体に2次転写する1対の2次転写ローラー、14は記録媒体の給紙を行う1対の給紙ローラである。
【0020】
図3の構成図を用いてタンデム方式でのカラー画像の形成方法を説明する。記録を行う画像は本図に示さない画像処理手段にて4つの色に色分解する。各感光体ドラム2に対応する露光手段4を用いて、4つの色の画像を感光体ドラム上に潜像画像として形成する。このとき、中間転写ベルト1上に4つの色に分解した画像が正しく重なるように、タイミングをずらして画像を形成する。形成された潜像画像は、現像手段8にてトナーを付着させてトナー画像を形成する。4つの感光体ドラム2にて形成された4色のトナー画像は、1次転写手9にて順次、中間転写ベルトに重ね合わさるように転写(1次転写)を行い、カラーのトナー画像を形成する。
【0021】
記録媒体である記録材としての記録紙は、中間転写ベルト1に転写されたカラーのトナー画像が2次転写ローラー13に到達するタイミングに合せて、給紙ローラ14にて搬送される。中間転写ベルト1に転写されたカラーのトナー画像は、2次転写ローラー13にて記録媒体に転写(2次転写)され、本図に示さない定着手段にて定着される。以上のような動作によって記録媒体にカラー画像の記録が行われる。
【0022】
(色ずれ補正)
1)色ずれ補正の概要
図4で、最上流側のYステーションで形成された感光体ドラム2上の第1マーク15Yは、Yステーションの1次転写ローラー9にて中間転写ベルト1に転写され、第2マーク16が形成される。下流側のMステーションでは、第1マーク読み取り手段17Mと、第2マーク読み取り手段18Mを用いて、第1マーク15Mと第2マーク16の同じ画像位置を示すマークの通過を有効画像領域に先んじて検知する。
【0023】
この通過時間差から、ずれ量を算出し、転写位置にてYとMの色ずれが無くなるように、感光体ドラム2Mの速度を補正制御する。更に下流側のCステーション、Kステーションにおいても、同様に色ずれ補正制御を行う。このように色Yに対して色M、色C、色Kの色ずれ補正を行うことで、Y,M、C、K相互の色ずれを無くするようにしている。
【0024】
2)画像形成部におけるドラム上の静電潜像目盛り(第1目盛り)
第1マークに関しては、露光手段4により画像信号に従ってレーザ光を走査して静電潜像を形成する。このとき、感光ドラム2の露光位置を延長した位置で、有効画像領域外の両端部に、有効画像を書き込む前後のレーザー光の照射により静電潜像目盛り線を書き込む。即ち、移動方向に交差する方向における有効画像領域外となる側端部であって、且つ移動方向において有効画像領域よりも先行する領域から始まり、夫々の有効画像領域に至る目盛り描画領域に、現像剤による画像と対応した第1の静電潜像目盛りを形成する。
【0025】
第1の静電潜像目盛りである静電潜像目盛り線は、画像を感光ドラム2に書き込む前の感光ドラム2が回転駆動を開始した直後から形成され、即ち有効画像領域の先端部より先行する余白部あるいは紙間部から形成が開始される。そして、第1感光ドラム2での画像形成が終了するまで静電潜像目盛り線の感光ドラム2への書き込みが連続して続けられる。即ち、15Y、15M、15C、15Kは各感光体ドラム上の画像の位置を示す第1マークで、露光手段4を用いて画像形成と同時に画像の領域外に潜像として形成される。
【0026】
17Mは感光体ドラムMの表面上の第1マークMを読み取る第1マーク読み取り手段Mである。同様に17Cは感光体ドラムCの表面上の第1マークCを読み取りる第1マーク読み取り手段C、17Kは感光体ドラムKの表面上の第1マークKを読み取りる第1マーク読み取り手段Kである。この3つの読み取り手段は1次転写位置Aの近傍に取り付けられている。
【0027】
18Mは、中間転写ベルト1上の第2マーク16をMステーションの1次転写位置の近傍で読み取る第2マーク読み取り手段である。同様に18Cは、中間転写ベルト1上の第2マーク16をCステーションの1次転写位置の近傍で読み取る第2マーク読み取り手段Cである。また、18Kは中間転写ベルト1上の第2マーク16をKステーションの1次転写位置の近傍で読み取る第2マーク読み取り手段Kである。
【0028】
画像の位置を示すマークの一例を図5を用いて説明する。図5(a)はYステーションで形成する第1マークYの例で、感光体ドラムの回転方向である副走査方向4ライン毎に第1マークが感光体ドラムの端部の画像領域外に連続して形成する。図5(b)はMステーションで形成する第1マークの例である。これらの第1マークには、同じ画像位置を示すアドレスを付与する。図5におけるMEM−Y(n)やMEM−M(n)はこのアドレスの一例である。
【0029】
このアドレスは第1マークに記しても良いが、第1マークの形成開始後のカウント値を用いても良い。図5では画像の有無に関係なく、連続した第1マークの例を示している。Cステーション、Kステーションも同様の第1マークを形成する。
【0030】
3)最上流側で中間転写ベルトへ転写される静電潜像目盛り(第2目盛り)
16は中間転写ベルト上の画像位置を示す第2マークで、Yステーションの第1マークYを転写ローラー9を用いて中間転写ベルト1に転写したものである。尚、同じステーションの第1マーク読み取り手段と第2マーク読み取り手段の副走査方向の読み取り位置は同じ位置に設置する。尚、副走査方向とは回転および搬送方向である。また、主走査方向とは感光体ドラムの回転軸方向および搬送方向に対して搬送面内で直交する方向である。今後の説明では主走査方向と副走査方向という表現を用いる。
【0031】
19は中間転写ベルト1上の第2マーク16を消去するための第2マーク・クリーナーである。尚、第2マーク・クリーナーは本図に図示しない中間転写ベルト・クリーナを用いても良い。
【0032】
最上流側の画像形成部では、静電潜像が、現像手段により、マイナスに帯電したイエローYトナーによって現像される。このとき、感光ドラム2の両端部の静電潜像目盛り線には、トナーを現像しないようにするため、現像手段8の現像領域が静電潜像目盛り線の領域の内側で、一次転写ローラ9の幅より狭い範囲になるように長さが定められている。
【0033】
ここで、第1画像を形成するYトナー像が第1感光ドラム2と中間転写ベルト1が接触する第1転写部において中間転写ベルト1に転写される。このとき、中間転写ベルト1の表面の両端部の感光ドラム2に形成された静電潜像目盛り線も、中間転写ベルト1の表面側(感光ドラム側)に設けられた被転写部に転写される。
【0034】
4)色ずれ補正の制御システムと制御フロー
図6は図4の4つのステーションの内、色ずれ補正を行っているMステーション、Cステーション、Kステーションのいずれか1つのステーションを抜粋した構成図である。図6において、20は感光体ドラム2を駆動する感光体ドラム駆動モーター、21はこの感光体駆動モーター20の駆動力を感光体ドラム21に伝達するギアやベルトなどの駆動伝達機構である。位置補正量算出手段101は、第1マーク読み取り手段17で検知した第1マーク通過時刻と第2マーク読み取り手段18で検知した第2マーク通過時刻の検出ずれを認識し、検出ずれを減少させるように、感光体ドラム21の回転速度を制御する。
【0035】
具体的には検出位置である転写位置にて、ずれ量である時間差を算出し、時間差が“0”になるような感光体ドラム2の速度を算出する。102は位置補正量算出手段101で算出された速度に従って感光体駆動モーター20が回転する様な駆動信号を生成する感光体ドラム駆動制御手段である。201は第1マーク読み取り手段17で読み取った第1マーク読み取り信号。202は第2マーク読み取り手段18で読み取った第2マーク読み取り信号である。203は位置補正量算出手段101で算出された感光体ドラム速度指令信号。204は感光体ドラム駆動制御手段で生成された感光体ドラム駆動信号である。
【0036】
ここで、図6において色ずれ補正の方法を図7のフローチャートと対応させながら説明する。図6において、第1マーク読み取り手段17および第2マーク読み取り手段18は転写位置AよりYステーション側(図の左側)に、マーク1つ分離れた位置に取り付けているものとする。感光体ドラム2の第1マーク15が第1マーク読み取り手段17を通過した時刻を位置補正量算出手段101にて記憶する。この時刻をTdとする。これは図7のフローチャートの処理Aで行っている。
【0037】
同様に同じ画像位置を示す中間転写ベルト1の第2マーク16が第2マーク読み取り手段18を通過した時刻を位置補正量算出手段101にて記憶する。この時刻をTbとする。これは図7のフローチャートの処理Bで行っている。2つのマーク共に記憶したら位置補正量算出手段101にて、2つの時刻Td、Tbの差が、転写位置Aにて“0”になるように第1マークの速度、つまり感光体ドラム2の速度を算出する。これは図7のフローチャートの処理Cで行っている。
【0038】
算出した感光体ドラム2の速度は感光体ドラム速度指令信号203を通して感光体ドラム駆動制御手段102に送られる。感光体ドラム駆動制御手段102は送られてきた感光体ドラム速度指令信号203の速度で回転す様に感光体ドラム駆動信号204を設定し直す。感光体ドラム駆動モーター20は新たに設定された感光体ドラム駆動信号204に従って感光体ドラム2を回転駆動する。これは図7のフローチャートの処理Dで行っている。以上の処理を繰り返して色ずれを補正を行っている。
【0039】
5)ベルト速度変動と色ずれ補正
図4で説明したように、本実施形態を適用できる色ずれ補正方式は、Yステーションで転写して形成された第2マークYに対してMステーション、Cステーション、Kステーション各々の第1マークとのずれ量を検知する。そして、下流側の各感光体ドラム2の速度を制御して色ずれを補正する方式である。
【0040】
即ち、Yステーションで形成した第1マークは中間転写ベルト1に転写されて中間転写ベルト上の第2マークが形成される。この第2マークが、Mステーションの転写位置近傍に設けた第2マーク読み取り手段にて、どの様に読み取られるかを図14の構成図と図15のタイミングチャート、図16の中間転写ベルト上の第2マークの図を用いて説明する。
【0041】
図14は図4の構成図においてYステーションとMステーションの部分のみ限定した構成図である。尚、中間転写ベルトの駆動ローラー等の本説明に必要の無い機構は省略している。図15(a)はYステーションの転写位置における第1マークYの通過の様子を示したタイミングチャートである。通常では、第1マークYは連続して形成される。しかし、説明しやすいように図15においてはMEM_D0、MEM_D1、MEM_D2、MEM_D3の4つの第1マークYのみを記載している。
【0042】
MEM_D0が通過する時間をt0、MEM_D1が通過する時間をt1、MEM_D2が通過する時間をt2、MEM_D3が通過する時間をt3とする。T1はMEM_D0が通過してからMEM_D1が通過するまでの経過時間、T2はMEM_D1が通過してからMEM_D21が通過するまでの経過時間、T3はMEM_D2が通過してからMEM_D3が通過するまでの経過時間である。本実施形態においては、Yステーションの感光体ドラムは偏心や回転ムラの無い理想的な回転動作を行っているものとする。
【0043】
よって、T1、T2、T3は共に露光手段4にて第1マークを形成するマーク露光周期Δtとなり、等間隔で通過するものとする。このときの中間転写ベルト1の速度Vbを示したものが図15(b)である。通常は複雑な正弦波の組み合わせであるが、説明しやすいようにt0、t1、t2、t3の各間は一定の速度とし、t0とt1間はVb1、t1とt2間はVb2、t2とt3間はVb3であるものとする。
【0044】
図16は転写された第2マークを示した図で、MEM_D0とMEM_D1との間の長さである距離をLd1、MEM_D1とMEM_D2との間の長さである距離をLd2、MEM_D2とMEM_D3との間の距離をLd3とする。MEM_D0を転写してからMEM_D1を転写するまでは、中間転写ベルはVb1の速度で搬送され、その間の経過時間はT1であるためMEM_D0とMEM_D1との間の距離Ld1は以下のような速度と時間の積で求められる。
【0045】
Ld1=Vb1*T1・・・(1)
同様に、Ld2、Ld3は以下の式で求められる。
【0046】
Ld2=Vb2*T2・・・(2)
Ld3=Vb3*T3・・・(3)
この第2マークがMステーションの第2マーク読み取り手段を通過する時のタイミングチャートが図15(c)である。MEM_D0が読み取られる時間をt10、MEM_D1が読み取られる時間をt11、MEM_D2が通読み取られる時間をt12、MEM_D3が読み取られる時間をt13とする。
また、MEM_D0が読み取られてからMEM_D1が読み取られるまでの経過時間をT11、MEM_D1が読み取られてからMEM_D2が読み取られるまでの経過時間をT12とする。また、MEM_D2が読み取られてからMEM_D3が読み取られるまでの経過時間をT13とする。
【0047】
この時の中間転写ベルト1の速度Vbを示したものを図15(b)に示し、t10とt11間はVb11、t11とt12間はVb12、t12とt13間はVb13とする。MEM_D0が読み取られてからMEM_D1が読み取られるまでの経過時間T11は、中間転写ベルト1はVb11の速度で搬送され、この間のマーク間距離はLd1であるから、以下のように距離を速度で割った式で求められる。
【0048】
T11=Ld1/Vb11・・・(4)
同様にT12、T13は以下の式で求められる。
【0049】
T12=Ld2/Vb12・・・(5)
T13=Ld3/Vb13・・・(6)
式(1)を式(4)に、式(2)を式(5)に、式(3)を式(6)にそれぞれ代入すると以下のようになる。
【0050】
T11=Vb1/Vb11*T1・・・(7)
T12=Vb2/Vb12*T3・・・(8)
T13=Vb3/Vb13*T3・・・(9)
図15(a)で説明したように、Yステーションの感光体ドラムは回転ムラの無い理想的な回転をしているのでT1、T2、T3は共にマーク露光周期Δtに置き換えることが出来る。よって、式(7)〜式(9)は以下のようになる。
【0051】
T11=Vb1/Vb11*Δt・・・(10)
T12=Vb2/Vb12*Δt・・・(11)
T13=Vb3/Vb13*Δt・・・(12)
したがって、第2マークの通過間隔は、一定周期であるマーク露光間隔Δtに対して、転写した時の中間転写ベルトの速度と読み取る時の中間転写ベルトの速度との比に比例することが解る。この比の変動が第2マークの変動となる。色ずれ補正はこの第2マークの変動に対して第1マークを合わせるような制御を行う事になる。
【0052】
6)マークの発生位置および検出位置におけるベルト速度変動の位相一致化
中間転写ベルト1の速度変動が無い場合には,Vb1、Vb2,Vb3,Vb11、Vb12、Vb13は全て規定速度であるVboであるため、T11、T12、T13は共にΔtとなる。つまり、Mステーションの第2マーク読み取り手段Mを通過する第2マークはマーク露光間隔Δtの等間隔となる。
【0053】
中間転写ベルト1の速度変動が有る場合においても、Vb1=Vb11かつVb2=Vb12かつVb3=Vb13であれば、Vb1≠Vb2≠Vb3≠Vbであっても第2マークは常にマーク露光間隔Δtの等間隔となる。この条件を満たすのは、中間転写ベルトが一定周期で速度変動している場合において、Yステーションで転写した時の中間転写ベルトの速度変動とMステーションで読み取る時の中間転写ベルトの速度変動の位相が一致する場合である。このことを図17を用いて説明する。
【0054】
図17において、中間転写ベルトが規定速度Vboで回転移動した時、Yステーションの転写位置AからMステーションの第2マーク読み取り手段Mまでのステーション間時間をTsとする。また、中間転写ベルト1の速度変動周期をTfbとする。中間転写ベルトの速度変動を示す4つのタイミングチャートは(a)がTs/Tfb=2、(b)がTs/Tfb=2.1、(c)がTs/Tfb=2.5、(d)がTs/Tfb=3という条件の速度変動を示している。
【0055】
この4つのタイミングチャートの中で、Yステーションで転写した時の中間転写ベルトの速度とMステーションで読み取る時の中間転写ベルトの速度が同じものは、(a)のTs/Tfb=2と(d)のTs/Tfb=3である。この2つの波形は、転写位置Aから始まっている波形をMステーションの読み取り位置にシフトしても連続性がある。つまり位相が一致している。この2つは共にTs/Tfbが正の整数であり、他の2つは小数でる。よって、位相が一致ずる条件は、Ts/Tfbが正の整数の時である。
【0056】
このことを確認するために行ったシミュレーション結果が図18と図19である。図18は図17の4つの条件における中間転写ベルトの速度VbとMステーションの第2マーク読み取り手段Mを通過する第2マーク通過間隔Tbのシミュレーション結果である。図18(a)は図17(a)と同じくTs/Tfb=2の場合、図18(B)は図17(b)と同じくTs/Tfb=2.1の場合、図18(c)は図17(c)と同じくTs/Tfb=2.5の場合である。
【0057】
図18(d)は図17(d)と同じくTs/Tfb=3の場合の結果である。図18において、細線が中間転写ベルトの速度Vb、太線が第2マーク通過間隔Tbである。時間軸はYステーションにて転写が開始された時間を0(s)としているため、第2マーク通過間隔TbはMステーションの第2マーク読み取り手段Mに到達される時間である1(s)から始まる波形となっている。その他のシミュレーション条件は以下の通りである。尚、ステーション間距離は、Yステーションの転写位置AとMステーションの第2マーク読み取り手段Mの読み取り位置との間の距離である。
【0058】
・中間転写ベルトの規定速度:300(mm/s)
・ステーション間距離:300(mm)
・中間転写ベルトの速度変動量:±3(mm/s)
・マーク露光間隔:Δt=1(ms)
図18(a)のTs/Tfb=2と図18(d)のTs/Tfb=3において第2マーク通過間隔Tbは1(ms)一定となっている。図18(b)のTs/Tfb=2.1においてはTb=1±0.006(ms)、図18(d)のTs/Tfb=2.5においてはTb=1±0.02(ms)というように変動量は異なるものの中間転写ベルトの速度変動と同じ周期で変動する結果が得られた。つまり、Ts/Tfbが正の整数となる場合、速度変動の影響を無くすことができる。
【0059】
この条件を確認するために、Ts/Tfbが0.1〜5の範囲内で変化させた時の第2マーク通過間隔変動量ΔTbをシミュレーションした結果を示したのが図19である。図19において、横軸がTs/Tfbの値で、縦軸がΔTbである。Ts/Tfbが1、2、3、4、5の整数の時にΔTbが“0”になっていることからTs/Tfbが正の整数の時に第2マーク通過間隔が変動しないことが確認できる。
【0060】
即ち、中間転写ベルトの速度変動の位相がマーク発生位置とマーク検出位置で一致することから、マーク発生時点のベルト速度とマーク検出時点のベルト速度が一致することでマーク検出にベルト速度変動が影響しないこととなる。
【0061】
Ts/Tfb=m
mは正の整数(m=1、2、3、・・・)
Ts:Yステーションの転写位置AからMステーションの第2マーク読み取り手
段Mまでのステーション間時間
Tfb:中間転写ベルト1の速度変動周期
ここで、Yステーションの転写位置AからMステーションの第2マーク読み取り手
段Mまでのステーション間距離をL、中間転写ベルトの規定速度をVbo、mを正の整数値とするとき、以下のように変換される。
【0062】
L/(Vbo*Tfb)=m
図20は図17において速度変動が影響しないステーション間距離の条件を示した図である。図20(a)はTs/Tfb=1、図20(b)はTs/Tfb=2、図20(c)はTs/Tfb=3、図20(d)はTs/Tfb=4となる条件を示している。
【0063】
6)ベルト速度変動とドラム速度制御(発散問題)
図6の構成において、露光手段4に使用しているレーザー光学系5は、高速で回転するポリゴンミラーを用いて主走査方向にスキャンさせている。このポリゴンミラーは回転ムラが微少であっても画質劣化が顕著に表れてしまうため、高精度な定速制御を行っている。よって、画像形成中のスキャンの周期は一定周期になる。このように一定周期で露光することを非同期露光と呼ぶ。
【0064】
色ずれを補正は図6で説明したように感光体ドラム2の回転速度を積極的に変動させている。よって、非同期露光で第1マーク15や画像を形成すると副走査方向のスキャンピッチが変動する。よって、第1マーク15のピッチも感光体ドラム2の速度によって変動する。また、第2マーク16は中間転写ベルト上1に等ピッチ形成されていても中間転写ベルトの速度変動によって、第2マーク読み取り手段18で検知される時間間隔は変動する。
【0065】
シミュレーションを行った結果、中間転写ベルト1の速度変動周期が特定の周期において、感光体ドラムの回転速度が発振(以降は発散と呼ぶ)する結果が得られ、発散という問題があることが解った。シミュレーションを解析した結果、発散する条件は以下であることが解った。
【0066】
発散条件:Tfd/Tfb=n (n=1、2、3、・・・)
Tfd=露光−転写間時間をTfd
Tfb=中間転写ベルト1の速度変動周期
図9はこの発散条件を示したものである。 図9では露光−転写間時間Tfdを中間転写ベルトの速度変動周期Tfbで割った値が1、2、3、4の4つの場合を示している。このようにTfd/Tfb=n (n=1、2、3、・・・)となる周期が発散する周期である。
【0067】
図10(a)〜図10(g)は露光―転写間時間Tfdと中間転写ベルトの速度変動周期Tfbを表1のようにした時の中間転写ベルトと感光体ドラムの速度のシミュレーション結果である。太線が中間転写ベルトの速度、細線が感光体ドラムの速度である。尚、この時、中間転写ベルトの速度は300(mm/s)に対して表1のTfbの周期で±3(mm/s)の速度変動を与え、制御遅延の無い理想的な制御を行った場合の結果である。Tfdは露光−転写間時間、Tfbは中間転写ベルトの速度変動周期である。
【0068】
【表1】
【0069】
図10(a)〜図10(h)のシミュレーション結果より、Tfd/Tfbが1.0の図10(a)、2.0の図10(c)、3.0の図10(g)、5.0の図10(h)のように正の整数になる条件では感光体ドラムの速度が発散する結果が得られた。また、Tfd/Tfbが1.9の図10(b)、2.1の図4(d)、2.5の図4(e)、2.9の図10(f)のように小数を含む値の条件では発散しない結果が得られた。
この発散の詳細を図11乃至図13を用いて説明する。図11乃至図13は、時間経過により図11(a)〜図13(f)の順に6つの時間における第1マークと第2マークについて説明する。各図の左側は露光部または転写部を拡大した図である。
尚、共通条件を以下に示す
条件:感光体ドラム2と中間転写ベルト1の基本とする基準速度は共にV。
【0070】
マークを形成する周期をΔt。
【0071】
中間転写ベルトの速度VbはVbo±ΔVで変動(単一周波数)。
【0072】
Ldは速度Vのときのマーク間ピッチ。
【0073】
感光体ドラムの偏心および回転ムラ等の無い理想的な回転。
【0074】
感光体ドラムの速度制御は遅延が無く理想的に追従する。
【0075】
第1マーク読み取り手段17および第2マーク読み取り手段18
の位置は転写位置より露光方向(左方向)に1〜2マーク分、
離れた位置
図11は、1番目のマークが転写位置から1マーク分手前にきた時間t(1)である。ここでMEM_D(0)は感光体ドラム2の第1マーク、MEM_B(0)は中間転写ベルト1の第2マークである。この時、中間転写ベルトの速度Vbは図中に示すようにΔVだけ速かったとする。感光体ドラム2は基準速度Vで回転しているため、位置ずれは無い。よって、第2マークMEM_B(0)は速度が速い分、本図の右側の方に早く進んでしまい位置ずれが生じる。
【0076】
第1マークは位置ずれが無いためこの第2マークの位置ずれ量ΔLb(1)が色ずれとなる。MEM_D(0)が転写位置にてMEM_B(0)に追いつくように感光体ドラムの速度Vdを速める。本図では、ずれ量ΔLb(1)をΔtで割った値だけ早めた V+ΔLb(1)/Δt とする。尚、図7で説明した方法で求めても良い。この時に露光手段4により第1マークMEM_D(1)が形成される。
【0077】
図11(b)は、図11(a)よりΔtだけ経過した時間t(2)を示す。Δt経過したため次の第1マークMEM_D(2)が形成される。この間、感光体ドラムは中間転写ベルトのマークに追いつく為、規定の速度VよりΔLb(1)/Δtだけ速い。よってMEM_D(1)とのマーク間ピッチLd(2)はLd+ΔLb(1)と云うようにΔLb(1)だけ広くなる。
【0078】
図12(c)は時刻t(1)で形成した第1マークMEM_D(1)が転写位置にきた時間t(3)である。この時、中間転写ベルトの速度Vbは図中に示すようにΔVだけ速かったとする。よって、第2マークMEM_B(2)は速度が速い分、本図の右側の方に早く進んでしまい、第2マークの位置ずれが生じる。この時の第2マークの位置ずれ量をΔLb(3)とする。この時、第1マークMEM_D(2)と転写位置にいるMEM_D(1)とのマーク間ピッチLd(2)はLd+ΔLb(1)であるため、所定の位置より本図の左側にΔLb(1)だけ位置がずれている。
【0079】
これが第1マークの位置ずれ量である。よって、MEM_D(2)とMEM_B(2)の色ずれ量は2つの位置ずれ量の和であるΔLb(1)+ΔLb(3)となり第1マークMEM_D(2)の方が遅れている。MEM_D(2)が転写位置にてMEM_B(2)に追いつくために、感光体ドラムの速度VdをV+[ΔLb(1)+ΔLb(3)]/Δtに速度補正する。この時に露光手段4により第1マークMEM_D(3)が形成される。
【0080】
図12(d)は図12(c)よりΔtだけ経過した時間t(4)である。Δt経過したため、次の第1マークMEM_D(4)が形成される。この間、感光体ドラムは中間転写ベルトの第2マークに追いつく為、ドラム規定速度Vdoより[ΔLb(1)+ΔLb(3)]/Δtだけ速い。よってMEM_D(3)とのマーク間ピッチLd(4)はLd+ΔLb(1)+ΔLb(3)と云うように中間転写ベルトの速度変動分ΔLb(3)にマーク間ピッチ変動分ΔLb(1)を加算した分、広くなる。
【0081】
図13(e)は時刻t(3)で形成した第1マークMEM_D(3)が転写位置にきた時間t(5)である。この時、中間転写ベルトの速度Vbは図中に示すようにΔVだけ速かったとする。よって、第2マークMEM_B(4)は速度が速い分、本図の右側の方に早く進んでしまい、第2マークの位置ずれが生じる。この時の第2マーク位置ずれ量をΔLb(5)とする。この時、第1マークMEM_D(4)と転写位置にいるMEM_D(3)とのマーク間ピッチLd(4)はLd+ΔLb(1)+ΔLb(3)であるため、所定の位置より本図の左側にΔLb(1)+ΔLb(3)だけ位置がずれている。
【0082】
これが第1マークの位置ずれ量である。よって、MEM_D(4)とMEM_B(4)の色ずれ量は2つの位置ずれ量の和であるΔLb(1)+ΔLb(3)+ΔLb(5)となり、第1マークMEM_D(4)の方が遅れるている。MEM_D(4)が転写位置にてMEM_B(4)に追いつくために、感光体ドラムの速度VdをVdo+[ΔLb(1)+ΔLb(3)+ΔLb(5)]/Δtに速度補正する。この時に露光手段4により第1マークMEM_D(5)が形成する。
【0083】
図13(f)は図11(e)よりΔtだけ経過した時間t(6)である。Δt経過したため次の第1マークMEM_D(6)が形成される。この間、感光体ドラムは中間転写ベルトのマークに追いつく為、ドラム規定速度Vdoより[ΔLb(1)+ΔLb(3)+ΔLb(5)]/Δtだけ速い。よってMEM_D(5)とのマーク間ピッチLd(6)はLd+ΔLb(1)+ΔLb(3)+ΔLb(5)と云うように中間転写ベルトの速度変動分ΔLb(5)にマーク間ピッチ変動分ΔLb(1)+ΔLb(3)を加算した分、広くなる。以上の説明において、感光体ドラムの速度Vdは表2のように補正している。
【0084】
【表2】
【0085】
表2より、感光体ドラムの速度Vdは時間t(1)、t(3)、t(5)の各々の中間転写ベルトの速度変動によるずれ量の累積になっていることが解る。時間t(1)はMEM_D(1)が露光された時間であり、時間t(3)はMEM_D(1)が転写された時間である。同様に時間t(3)はMEM_D(3)が露光された時間であり、時間t(5)はMEM_D(3)が転写された時間である。つまり露光−転写間時間ごとの累積となる。
【0086】
図11及至図13で説明したように、時間t(1)、t(3)、t(5)における中間転写ベルトの速度変動が常に最大値(V+ΔV)となる場合には、感光体ドラムの速度Vdは増大することになる。速度変動が周期的な変動だと発散になる。図9の条件がこれに当てはまる事が解る。よって、図9で説明した条件において、図10のように感光体ドラムの速度制御量が発散することが説明できる。
【0087】
図9は図4で説明した方法で色ずれ補正を行う時の課題である感光体ドラムの制御量の発散条件を示した図であった。発散条件は、以下の式を満足する。
【0088】
発散条件:Tfd/Tfb=n
nは正の整数(n=1、2、3、・・・)
Tfd=露光−転写間時間をTfd
Tfb=中間転写ベルト1の速度変動周期
(発散問題の解消)
図9の発散条件の図と図20を見比べると、それぞれ4つの中間転写ベルト1の速度変動の周期が同じ関係である事が解る。よって、図20に示すように、図17のステーション間時間Tsを図9の露光−転写間時間Tfdの整数倍の時間、例えば同じ時間にすると、前述の発散問題の解消を図ることができる。
【0089】
尚、感光体ドラム2も中間転写ベルト1も同じ規定速度の場合には、同じ時間で移動する長さである距離は同じである。よって、露光−転写間距離、即ち感光体ドラムの周上距離をD、ベルト表面上距離であるステーション間距離(Yステーションの転写位置AとMステーションの第2マーク読み取り手段Mの読み取り位置との間の距離)をLとすると、D=Lという関係になる。この関係を図にしたのが図21である。図21ではYステーションとMステーションしか記載していない。
【0090】
しかし実際には図4のようにCステーション、Kステーションも実在する。一般的には4つのステーションの露光−転写間距離Dは同じである。ステーション間距離LはYステーションからの距離であるから、D=Lを満足するためにはMステーション、Cステーション、Kステーションは同じ位置に配置しなくてはならない。これは不可能である。即ち、Cステーション、Kステーションでは発散問題が解消できないこととなる。
【0091】
しかし、図15で説明したように速度変動を取り除ける条件は、Yステーションで転写した時の中間転写ベルトの速度変動とMステーションで読み取る時の中間転写ベルトの速度変動の位相が一致するという条件である。よって、ステーション間距離Lは露光−転写間距離Dの整数倍でも成り立つ。
【0092】
この条件に従って4つのステーションの構成を示したのが図1である。図1において、Mステーションの露光−転写間距離をD1、YステーションとMステーションとのステーション間距離をL1とする。Cステーションの露光−転写間距離をD2、YステーションとCステーションとのステーション間距離をL2とする。Kステーションの露光−転写間距離をD3、YステーションとKステーションとのステーション間距離をL3とする。尚、本図においてもステーション間距離とはYステーションの転写位置Aと各ステーションの第2マーク読み取り手段の読み取り位置との間の距離である。本図では以下のような条件の場合の例である。
【0093】
L1=D1
L2=D2*2
L3=D3*3
併記した中間転写ベルトの速度変動のタイミングチャートの位相は全て一致している事から、このような条件において、色ずれ補正を行うM、C、Kの3つのステーションにおいて発散の影響を無くすことができることが確認できる。
【0094】
以上の説明より発散の影響を防止できる条件は下記の通りである。
【0095】
L=D*k k=1、2、3、・・・
即ち、L/Dが正の整数値となる。
【0096】
L:ステーション間距離(Yステーションの転写位置AとMステーション
の第2マーク読み取り手段Mの読み取り位置との間の距離)
D:露光−転写間距離
本実施形態によれば、中間転写ベルトの速度変動に発散する要因が有っても色ずれ補正の発散が生じないため、長期に渡って高精度な色ずれの補正が可能となる。しかも、部材や制御系を特に追加せずに、安定して色ずれの無いカラー画像を形成することができる。
【0097】
(感光ドラムの移動速度の算出例)
次に、図6の位置補正量算出手段101における感光体ドラム速度の算出例を図8を用いて説明する。図8において、第1マーク読み取り手段17と転写位置Aとの距離Ldを0.6(mm)。第2マーク読み取り手段18と転写位置Aとの距離Lbも0.6(mm)、感光体ドラムの規定速度Vdを300(mm/s)とする。そして、中間転写ベルトの速度Vbを300(mm/s)、第1マーク15が第1マーク読み取り手段17にて検知してからの経過時間Td1を0.12(ms)とする。
【0098】
また第2マーク16が第2マーク読み取り手段18にて検知してからの経過時間Tb1を0.1(ms)とする。第2マーク読み取り手段18と転写位置Aとの距離Lbと中間転写ベルト速度Vbから、第2マーク16が第2マーク読み取り手段18にて検知してから転写位置Aに到達する時間Tbは以下の式より求まる。
【0099】
Tb=Lb/Vb=0.6(mm)/300(mm/s)=2(ms)
ここで、第2マーク16が第2マーク読み取り手段18にて検知してからの経過時間Tb1より、現時点からこれから転写位置Aに到達するまでの時間Tb2を以下の式にて求める。
【0100】
Tb2=Tb−Tb1=2(ms)−0.1(ms)=1.9(ms)・・・式(1)
この時、第1マーク15は第1マーク読み取り手段17で検知してから既にTd1=0.12(ms)経過しているので、移動距離は以下の式で求まる。
【0101】
Ld1=Vd*Td1=300(mm/s)*0.12(ms)=36(μm)
よって、転写位置Aに到達するのに必要な距離Ld2は以下の式で求まる。
【0102】
Ld2=Ld−Ld1=0.6(mm)−36(μm)=564(μm)
式(1)より、第2マーク16はTb2=1.9(ms)後に転写位置Aを通過するので第2マーク15も同時に転写位置Aを通過させるためには、Ld2=564(μm)の距離をTb2=1.9(ms)の時間で移動しなくてはならない。この速度が感光体ドラム2の速度Vdであり、速度は以下の式で求められる。
【0103】
Vd=Ld2/Tb2=564(μm)/1.9(ms)=296.8(mm/s)
《第2の実施形態》
第1の実施形態は感光体ドラムと中間転写ベルトの速度が同じ場合であった。しかし、転写効率の向上や転写時の画質劣化対策として感光体ドラムと中間転写ベルトの速度を数%以内で差を設ける場合がある。本実施形態では速度差がある場合での発散防止条件について説明する。
【0104】
速度差がある場合には第1の実施形態での発散の影響を防止できる以下の条件は成り立たなくなる。
【0105】
L=D*k k=1、2、3、・・・
ステーション間距離Lは図17でのステーション間時間Tsから導き出したものであり、露光−転写間距離Dは図9の露光−転写間時間Tfdから導き出したものである。「時間」というパラメータは目に見えない上に筐体や機器部材を設計する時には用いないパラメータである。よって、「長さ」というパレメータで表現するのが好ましい。第1の実施形態では感光体ドラムも中間転写ベルトの共に同じ速度であるため、距離の関係式に単純に置き換えられたのであって、元々は以下のような時間の関係式で表される。
【0106】
Ts=Tfd*m、m=1、2、3、・・・
中間転写ベルトの速度Vb、感光体ドラムの速度をVdとすると、ステーション間距離Lと露光−転写間距離Dはそれぞれの速度と時間の積で求められるので以下のようになる。
【0107】
L=Vb*Ts
D=Vd*Tfd
この2つの式を時間の関係式に代入すると以下のようになる。
【0108】
L=(Vb/Vd)*D*k k=1、2、3、・・・
即ち、L*Vd/(D*Vb)が正の整数値となるように設定すれば良い。
【0109】
これが速度差がある場合において、発散問題を解消する条件である。図2はこの条件を示す構成図である。図2において中間転写ベルトの速度をVb、Yステーションの速度をVd0、Mステーションの速度をVd1、Cステーションの速度をVd2、Kステーションの速度をVd3とする。その他のD1、D2、D3、L1、L2、L3は第1の実施形態の図1と同じであり、以下のような条件の場合の例である。
【0110】
L1=(Vb/Vd1)*D1
L2=(Vb/Vd2)*D2*2
L3=(Vb/Vd3)*D3*3
例えば感光ドラムの速度より中間転写ベルトの速度の方が速い場合、速度比は1より大きくなるため条件式より求められるステーション間距離を長くなる。同じ時間でも速度が速い方が移動できる距離は長くなる。発散の影響を防止する関係式は時間の関係式においては速度に依存しない。よって速度が速い方が距離が長くなる。このことより、距離の関係式においては中間転写ベルトの方が速い場合にはステーション間距離が長くなることは説明できる。
【0111】
(変形例1)
上記実施形態では、Ts/TfbあるいはL/(Vbo*Tfb)が正の整数値であり、且つ、Tfd/Tfbが正の整数値である場合を説明した。しかし、本発明はこれに限られず、図22に示すようにTs/TfbあるいはL/(Vbo*Tfb)が正の整数値(例えば1)であり、且つTfd/Tfbが正の非整数値(例えば1.5)であっても良い。この場合、マーク発生位置からマーク検出位置の間では、感光ドラムの速度は中間転写ベルトの速度変動に応じて補正制御される。なお、図22において、Ts/TfbあるいはL/(Vbo*Tfb)が正の非整数値(例えば1.5)となる場合は、不適切な設定であることを示す。
【0112】
(変形例2)
上記実施形態においては、転写媒体として中間転写ベルトを用い中間転写ベルトに一次転写した後に記録紙に二次転写するカラー画像形成装置を開示したが、転写媒体として記録紙を用い記録紙に直接転写するカラー画像形成装置であっても良い。この場合、上述した中間転写ベルトの替わりに記録紙を保持する搬送ベルトが用いられ、記録紙搬送ベルトの速度変動周期をTfbとする。そして、第2目盛りが形成された上流側の像担持体の位置と下流側の像担持体の位置との間を記録紙搬送ベルトが移動する時間をTsとするとき、Ts/Tfbが正の整数値となるように設定する。
【0113】
(変形例3)
移動方向に交差する方向において、第2目盛りは第1目盛りと重なるような位置に配置され、第1検出手段、第2検出手段は共通の検出手段として構成されても良い。この場合、第2目盛りは、第1目盛りの各目盛り間隔の中間に各目盛りが配置され、第1目盛りの各目盛りに対し両側に隣接する第2目盛りとの間隔が等しくなるように制御されれば良い。
【符号の説明】
【0114】
1・・中間転写ベルト、2・・感光体ドラム、3・・1次帯電器、4・・露光手段、8・・現像器、9・・ 1次転写ローラー、13・・2次転写ローラー、15・・第1マーク(ドラム)、16・・第2マーク(ベルト)、17・・第1読み取り手段、18・・第2読み取り手段、101・・位置補正量算出手段、102・・感光体ドラム駆動制御手段、201・・第1マーク読み取り信号、202・・第2マーク読み取り信号、203・・感光体ドラム速度指令信号、204・・感光体ドラム駆動信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々が回転可能であって、夫々の有効画像領域に露光することで色に対応した現像剤による画像を形成するように所定方向に順に配置される複数の像担持体と、
前記複数の像担持体に対向する移動可能な転写媒体と、
前記像担持体に対して前記転写媒体を介して対向し、前記像担持体に形成される画像を前記転写媒体に夫々転写する複数の転写部材と、
前記複数の像担持体に夫々備わる有効画像領域外の目盛り描画領域に前記現像剤による画像と対応した第1目盛りを形成する第1目盛り形成手段と、
前記現像剤による画像の転写時に、前記転写媒体にあって有効画像領域外に、前記第1目盛りの内で上流側の目盛りに基づいて第2目盛りを形成する第2目盛り形成手段と、
下流側の前記像担持体の前記第1目盛りを検出する第1検出手段と、
前記第1検出手段と前記転写媒体の移動方向における位置が一致し、前記第2目盛りを検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段および前記第2検出手段による前記第1目盛りおよび前記第2目盛りの検出ずれを減少させるように、前記下流側の像担持体の回転速度を制御する制御手段と、
を有するカラー画像形成装置であって、
前記転写媒体の速度変動周期をTfb、前記第2目盛りが形成された位置と前記第2目盛りを検出する前記第2検出手段の位置との間を前記転写媒体が移動する長さをL、前記転写媒体の規定速度をVboとするとき、L/(Vbo*Tfb)が正の整数値となるように設定したことを特徴とするカラー画像形成装置。
【請求項2】
夫々が回転可能であって、夫々の有効画像領域に露光することで色に対応した現像剤による画像を形成するように所定方向に順に配置される複数の像担持体と、
前記複数の像担持体に対向する移動可能な転写媒体と、
前記像担持体に対して前記転写媒体を介して対向し、前記像担持体に形成される画像を前記転写媒体に夫々転写する複数の転写部材と、
前記複数の像担持体に夫々備わる有効画像領域外の目盛り描画領域に前記現像剤による画像と対応した第1目盛りを形成する第1目盛り形成手段と、
前記現像剤による画像の転写時に、前記転写媒体にあって有効画像領域外に、前記第1目盛りの内で上流側の目盛りに基づいて第2目盛りを形成する第2目盛り形成手段と、
下流側の前記像担持体の前記第1目盛りを検出する第1検出手段と、
前記第1検出手段と前記転写媒体の移動方向における位置が一致し、前記第2目盛りを検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段および前記第2検出手段による前記第1目盛りおよび前記第2目盛りの検出ずれを減少させるように、前記下流側の像担持体の回転速度を制御する制御手段と、
を有するカラー画像形成装置であって、
前記転写媒体の速度変動周期をTfb、前記第2目盛りが形成された位置と前記第2目盛りを検出する前記第2検出手段の位置との間を前記転写媒体が移動する時間をTsとするとき、Ts/Tfbが正の整数値となるように設定したことを特徴とするカラー画像形成装置。
【請求項3】
前記転写媒体の速度をVb、前記下流側の前記像担持体の速度をVd、前記第2目盛りが形成された位置と前記第2目盛りを検出する前記第2検出手段の位置との間を前記転写媒体が移動する長さをL、前記像担持体に関し、露光が行われる位置と転写が行われる位置との間を前記像担持体が移動する長さをDとするとき、
L*Vd/(D*Vb)が正の整数値となるように設定したことを特徴とする請求項1または2に記載のカラー画像形成装置。
【請求項4】
前記転写媒体の速度Vbと前記像担持体の速度Vdが等しい値であり、L/Dが正の整数値となるように設定したことを特徴とする請求項3に記載のカラー画像形成装置。
【請求項5】
前記第1目盛りは、前記複数の像担持体に夫々備わる目盛り描画領域であって、移動方向に交差する方向における有効画像領域外の側端部であって且つ移動方向において前記有効画像領域よりも先行する領域から始まり前記夫々の有効画像領域に至る目盛り描画領域に前記現像剤による画像と対応した静電潜像目盛りとして形成され、
前記第2目盛りは、前記転写媒体にあって移動方向に交差する方向における有効画像領域外の側端部に、前記第1目盛りの内、上流側の目盛りを前記現像剤による画像の転写時に静電潜像目盛りとして転写されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカラー画像形成装置。
【請求項6】
移動方向に交差する方向において、前記第2目盛りは前記第1目盛りと重なるような位置に配置され、
前記第1検出手段、前記第2検出手段は共通の検出手段として構成され、前記第2目盛りは、前記第1目盛りの各目盛り間隔の中間に各目盛りが配置され、前記第1目盛りの各目盛りに対し両側に隣接する前記第2目盛りとの間隔が等しくなるように制御されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のカラー画像形成装置。
【請求項7】
前記転写媒体は、中間転写ベルトであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカラー画像形成装置。
【請求項8】
前記転写媒体は、搬送ベルトに保持される記録材であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカラー画像形成装置。
【請求項1】
夫々が回転可能であって、夫々の有効画像領域に露光することで色に対応した現像剤による画像を形成するように所定方向に順に配置される複数の像担持体と、
前記複数の像担持体に対向する移動可能な転写媒体と、
前記像担持体に対して前記転写媒体を介して対向し、前記像担持体に形成される画像を前記転写媒体に夫々転写する複数の転写部材と、
前記複数の像担持体に夫々備わる有効画像領域外の目盛り描画領域に前記現像剤による画像と対応した第1目盛りを形成する第1目盛り形成手段と、
前記現像剤による画像の転写時に、前記転写媒体にあって有効画像領域外に、前記第1目盛りの内で上流側の目盛りに基づいて第2目盛りを形成する第2目盛り形成手段と、
下流側の前記像担持体の前記第1目盛りを検出する第1検出手段と、
前記第1検出手段と前記転写媒体の移動方向における位置が一致し、前記第2目盛りを検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段および前記第2検出手段による前記第1目盛りおよび前記第2目盛りの検出ずれを減少させるように、前記下流側の像担持体の回転速度を制御する制御手段と、
を有するカラー画像形成装置であって、
前記転写媒体の速度変動周期をTfb、前記第2目盛りが形成された位置と前記第2目盛りを検出する前記第2検出手段の位置との間を前記転写媒体が移動する長さをL、前記転写媒体の規定速度をVboとするとき、L/(Vbo*Tfb)が正の整数値となるように設定したことを特徴とするカラー画像形成装置。
【請求項2】
夫々が回転可能であって、夫々の有効画像領域に露光することで色に対応した現像剤による画像を形成するように所定方向に順に配置される複数の像担持体と、
前記複数の像担持体に対向する移動可能な転写媒体と、
前記像担持体に対して前記転写媒体を介して対向し、前記像担持体に形成される画像を前記転写媒体に夫々転写する複数の転写部材と、
前記複数の像担持体に夫々備わる有効画像領域外の目盛り描画領域に前記現像剤による画像と対応した第1目盛りを形成する第1目盛り形成手段と、
前記現像剤による画像の転写時に、前記転写媒体にあって有効画像領域外に、前記第1目盛りの内で上流側の目盛りに基づいて第2目盛りを形成する第2目盛り形成手段と、
下流側の前記像担持体の前記第1目盛りを検出する第1検出手段と、
前記第1検出手段と前記転写媒体の移動方向における位置が一致し、前記第2目盛りを検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段および前記第2検出手段による前記第1目盛りおよび前記第2目盛りの検出ずれを減少させるように、前記下流側の像担持体の回転速度を制御する制御手段と、
を有するカラー画像形成装置であって、
前記転写媒体の速度変動周期をTfb、前記第2目盛りが形成された位置と前記第2目盛りを検出する前記第2検出手段の位置との間を前記転写媒体が移動する時間をTsとするとき、Ts/Tfbが正の整数値となるように設定したことを特徴とするカラー画像形成装置。
【請求項3】
前記転写媒体の速度をVb、前記下流側の前記像担持体の速度をVd、前記第2目盛りが形成された位置と前記第2目盛りを検出する前記第2検出手段の位置との間を前記転写媒体が移動する長さをL、前記像担持体に関し、露光が行われる位置と転写が行われる位置との間を前記像担持体が移動する長さをDとするとき、
L*Vd/(D*Vb)が正の整数値となるように設定したことを特徴とする請求項1または2に記載のカラー画像形成装置。
【請求項4】
前記転写媒体の速度Vbと前記像担持体の速度Vdが等しい値であり、L/Dが正の整数値となるように設定したことを特徴とする請求項3に記載のカラー画像形成装置。
【請求項5】
前記第1目盛りは、前記複数の像担持体に夫々備わる目盛り描画領域であって、移動方向に交差する方向における有効画像領域外の側端部であって且つ移動方向において前記有効画像領域よりも先行する領域から始まり前記夫々の有効画像領域に至る目盛り描画領域に前記現像剤による画像と対応した静電潜像目盛りとして形成され、
前記第2目盛りは、前記転写媒体にあって移動方向に交差する方向における有効画像領域外の側端部に、前記第1目盛りの内、上流側の目盛りを前記現像剤による画像の転写時に静電潜像目盛りとして転写されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカラー画像形成装置。
【請求項6】
移動方向に交差する方向において、前記第2目盛りは前記第1目盛りと重なるような位置に配置され、
前記第1検出手段、前記第2検出手段は共通の検出手段として構成され、前記第2目盛りは、前記第1目盛りの各目盛り間隔の中間に各目盛りが配置され、前記第1目盛りの各目盛りに対し両側に隣接する前記第2目盛りとの間隔が等しくなるように制御されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のカラー画像形成装置。
【請求項7】
前記転写媒体は、中間転写ベルトであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカラー画像形成装置。
【請求項8】
前記転写媒体は、搬送ベルトに保持される記録材であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカラー画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図20】
【図21】
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【公開番号】特開2012−226095(P2012−226095A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93220(P2011−93220)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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