説明

カルダン継手により案内される弁閉鎖部材を備える弁装置

本発明は、車両の圧力媒体操作式の装置の弁装置(1)であって、弁部材(10)により弁座(20)に関して圧力媒体のための流動横断面を開放又は閉鎖するために開放位置又は閉鎖位置に移動可能な少なくとも1つの弁閉鎖部材(18)を備える弁装置(1)に関する。本発明では、弁閉鎖部材(18)が、弁部材(10)に少なくとも1つのカルダン継手(16)により結合されており、弁部材(10)に対して空間的に旋回可能であるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、請求項1の前段部に記載の、車両の圧力媒体操作式の装置の弁装置であって、弁部材により弁座に関して圧力媒体のための流動横断面を開放又は閉鎖するために開放位置又は閉鎖位置に移動可能な少なくとも1つの弁閉鎖部材を備える弁装置に関する。
【0002】
本発明の前提となる、車両の空気圧式のブレーキ装置内のブレーキ圧を制御するための弁装置は、欧州特許第0304610号明細書において公知であり、入口弁のための電磁式の制御弁と、出口弁のための電磁式の制御弁とを有している。電磁式の制御弁は、それぞれ、電磁石の通電に基づいて2つの対向する弁座に関して可動の、プランジャの形態の柱状の弁部材を有している。プランジャの端部側には、それぞれ1つの弁座と協働する弁閉鎖部材が形成されている。一端側の弁閉鎖部材は、エラストマー面により形成され、他端側の弁閉鎖部材は、球面により形成される。
【0003】
弁閉鎖部材を対応する弁座に密着させるべく、電磁石により加えなければならない力は、弁閉鎖部材が弁座の周方向で見て均等に弁座に当接し得るか否かに強く依存している。この均等な当接は、通常の公差により弁閉鎖部材及び/又は対応する弁座における幾何学的な狂いが発生し得るので、常に保証されているわけではない。したがって、幾何学的な関係が理想的な場合と比較して、弁座における信頼性の高いシールを実現するには、より大きな操作力が必要である。このより大きな力は、特に、軸の狂いに基づいてまず弁閉鎖部材と弁座との間で片当たりが生じるときに、密な接触を全周にわたって形成するために必要である。このとき、弁閉鎖部材及び/又は弁座は変形する。
【0004】
このことは、一方では、この変形により不都合な摩耗が弁閉鎖体あるいは弁座に発生するために不都合である。他方、流動横断面を閉鎖するための弁部材のより大きな操作力は、より高いエネルギ消費に加え、弁装置の決して精度がよいとは言えない開ループ制御可能性あるいは閉ループ制御可能性を招く。このことは、比較的大きなヒステリシスにより生じる。この特性は、特に車両の安全上重要なブレーキ装置に関して、例えばABS、ASR又はESPの枠内での制御動特性が悪化するので、不都合である。より大きな公差の場合には、弁の閉鎖位置において、それどころか漏れが発生する場合がある。
【0005】
これに対して本発明の根底にある課題は、上述の形態の弁装置を、上述の欠点が回避されるように改良することである。
【0006】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴により解決される。
【0007】
発明の概要
本発明は、弁閉鎖部材が、弁部材に少なくとも1つのカルダン継手により結合されており、弁部材に対して空間的に旋回可能であるようにすることを提案する。
【0008】
このような真のカルダン継手は、周知の如く、弁部材に配設された一方のフォークと、弁閉鎖部材に配設された他方のフォークとを備え、一方のフォークは、他方のフォークに対して相対的に中心軸線に関して90°ずらされて配置されており、十字ピンにより回動可能に結合されている。
【0009】
例えば弁のピストン又はプランジャである弁部材に対して相対的な、弁座と直接協働する弁閉鎖部材の空間的な旋回可能性に基づいて、より大きな幾何学的なエラー、特に弁閉鎖部材あるいは弁部材のより大きな軸あるいは角度の狂いも補償することが可能である。
【0010】
この手段は、従来技術に対する一連の利点をもたらす。一方では、弁座、弁部材あるいは弁閉鎖部材がより大きな公差を伴って形成可能であるため、コストの削減が実現可能である。他方、弁閉鎖部材が弁座に対して自由に配向可能であるので、弁座及び弁閉鎖部材の、変形による負荷は軽減される。このことは、特に、ポリマーからなる弾性的な弁閉鎖部材に当てはまる。これにより、同時に、弁のシールは改善され、特に低温時の弁のシールが改善される。さらに弁のヒステリシスは、低減される。
【0011】
弁部材との弁閉鎖部材の旋回可能な結合のために考え得る球継手と比較して、カルダン継手は、カルダン継手の十字ピンの直径が、常により大きな球継手の直径より小さいので、偏差をより小さな調節モーメントに基づいてより繊細に補償可能であるという利点を有している。さらに、製造手間あるいは製造コストは、例えば規格化されたピンが使用可能であり、かつより大きな公差が許容可能であるので、球継手の製造手間あるいは製造コストより小さい。これは、球継手の場合、ボール及びボールソケットの調整に、相対的に手間あるいはコストがかかることによる。
【0012】
従属請求項に記載された手段により、独立請求項に記載の発明の好ましい態様及び改良が可能である。
【0013】
特に好ましくは、一方ではシール作用を向上させるために、かつ他方ではより小さな幾何学的なエラーの付加的な補償を可能にするために、弁座にかつ/又は弁閉鎖部材の、弁座に面した作用面に、弾性的なシール面が設けられている。
【0014】
一態様では、弁部材が、空気圧式の弁の空気圧式に操作可能なピストンとして形成されている。択一的には、弁部材は、電磁式の弁のプランジャにより形成されてもよく、弁閉鎖部材は、カルダン継手を介してピストンあるいはプランジャに旋回可能に結合されている。
【0015】
特に好ましくは、弁装置が、本発明が形成されている車両のブレーキ装置又はエアサスペンションの空気圧式、液圧式、電気空気圧式又は電気液圧式の弁である。
【0016】
より詳細な点は、一実施の形態についての以下の説明から看取可能である。
【0017】
以下に、本発明の一実施の形態を図面に示し、以下の説明において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の有利な実施の形態に係る車両のブレーキ装置の弁の断面図である。
【0019】
実施の形態の説明
図1に断面図で示した弁1は、例えば、商用車両の空気圧式のブレーキ装置の空気圧式の2ポート2位置方向制御弁である。
【0020】
弁1は、圧力チャンバ2内を支配する空気圧の押圧力によりプリロードばね装置4の作用に抗して操作可能な、弁ハウジング8内においてガイドブシュ6内を直動案内されるピストン10を、弁部材として有している。このピストン10は、プリロードばね装置4とは反対方向に延びガイドブシュ6内の通路12に突入するピストンロッド14において、端部側でカルダン継手16により弁閉鎖部材18に、全方位に旋回自在に結合されている。
【0021】
弁閉鎖部材18は、例えばプレート状であり、ガイドブシュ6に端部側で形成された弁座20と協働して、弁閉鎖位置の枠内で弁閉鎖部材18が弁座20に密に当接した際には、作業室22と弁出口24との間の流動が遮断され、弁開放位置の枠内で弁閉鎖部材18が弁座20から持ち上がった際には、最小値と最大値との間で任意の流動横断面が、作業室22と弁出口24との間で開放されるように機能する。
【0022】
特に好ましくは、弁閉鎖部材18は、弁座20に面した面に環状凹部26を有している。環状凹部26内には、例えばエラストマーからなる弾性のリング28が保持されている。リング28は、弁座20に設けられた相補的なシール面30と協働する。
【0023】
圧力チャンバ2に圧力を加えることにより、あるいは圧力チャンバ2から圧力を抜くことにより、弁閉鎖位置あるいは弁開放位置が形成される。
【0024】
カルダン継手16は、ピストンロッド14に配設された一方のフォーク32と、弁閉鎖部材18に配設された他方のフォーク34とを有している。一方のフォーク32は、他方のフォーク34に対して相対的に中心軸線36に関して好ましくは90°ずらされて配置されており、十字ピン38により回動可能に結合されている。しかし、別の態様のカルダン継手16も可能である。
【0025】
カルダン継手16に基づいて、弁閉鎖部材18は、ピストン10に対して全方位に、すなわち空間的にすべての方向に旋回可能である。これにより、弁閉鎖部材18及び/又は弁座20及び/又は弁部材(ピストン)10間の幾何学的なエラーが補償可能である。
【0026】
本発明は、上述の弁に限定されるものではなく、弁閉鎖部材が弁座と所定の幾何学的な所与の条件下で協働するありとあらゆる弁のために適している。
【符号の説明】
【0027】
1 弁
2 圧力チャンバ
4 プリロードばね装置
6 ガイドブシュ
8 弁ハウジング
10 ピストン
12 通路
14 ピストンロッド
16 カルダン継手
18 弁閉鎖部材
20 弁座
22 作業室
24 弁出口
26 環状凹部
28 リング
30 シール面
32 フォーク
34 フォーク
36 中心軸線
38 十字ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の圧力媒体操作式の装置の弁装置(1)であって、弁部材(10)により弁座(20)に関して前記圧力媒体のための流動横断面を開放又は閉鎖するために開放位置又は閉鎖位置に移動可能な少なくとも1つの弁閉鎖部材(18)を備える弁装置(1)において、前記弁閉鎖部材(18)は、前記弁部材(10)に少なくとも1つのカルダン継手(16)により結合されており、前記弁部材(10)に対して空間的に旋回可能であるようにされていることを特徴とする、車両の圧力媒体操作式の装置の弁装置。
【請求項2】
前記カルダン継手(16)が、前記弁部材(10)に配設された一方のフォーク(32)と、前記弁閉鎖部材(18)に配設された他方のフォーク(34)とを備え、前記一方のフォーク(32)は、前記他方のフォーク(34)に対して相対的に中心軸線(36)に関して90°ずらされて配置されており、十字ピン(38)により回動可能に結合されている、請求項1記載の弁装置。
【請求項3】
前記弁座(20)にかつ/又は前記弁閉鎖部材(18)の、前記弁座(20)に面した作用面に、弾性的なシール面(28)が設けられている、請求項1又は2記載の弁装置。
【請求項4】
前記弁部材(10)は、空気圧式の弁の空気圧式に操作可能なピストンを含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の弁装置。
【請求項5】
前記弁装置が、車両のブレーキ装置又はエアサスペンション装置の空気圧式、液圧式、電気空気圧式又は電気液圧式の弁である、請求項1から4までのいずれか1項記載の弁装置。

【図1】
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【公表番号】特表2013−515921(P2013−515921A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545241(P2012−545241)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069836
【国際公開番号】WO2011/076645
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(597007363)クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (110)
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D−80809 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】