説明

カートン用打ち抜き刃の切目列構造。

【課題】 カートン開封にあたり、使用者の個人差やカートンの保持状態の変化等によるジッパーラインを外れた剪断応力の変化によっても、所定の破断予定線どおりの開封が可能な切目形状を有する、耐久性および経済性に優れた打ち抜き刃の切目列構造。
【解決手段】 一方の長尺の打ち抜き刃の刃先部で形成される直線状基部切刃と、該直線状基部切刃に連接すると共に前記刃先部を切り開き一方向へ折り曲げられる斜線状枝部切刃とで形成された鉤状切刃部と、隣接して並行する他方の長尺の打ち抜き刃が刃先部で形成される直線状基部切刃と、該直線状基部切刃に連接すると共に前記刃先部を切り開き、前記一方の長尺の打ち抜き刃と相反する方向へ折り曲げられる斜線状枝部切刃とで形成された鉤状切刃部とが、それぞれ同一のピッチで設けられ、それぞれの鉤状切刃部を合わせることによって略Y字形状の切目列を形成するカートン用打ち抜き刃の切目列構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用紙器構造のうち、特にカートンの開封に使用するジッパー(切り破り用破断線)に関するカートン用打ち抜き刃の切目列構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙器構造のうち、特にカートンと呼ばれる折り畳み式筒状構成を有する紙箱で、しかも筒状胴部の両端を糊着して閉塞した、いわゆるシールエンドカートンにおいて、前記両端閉塞部や筒状胴部の開封にあたっては、紙箱の所定部位に予め断続する切刃構造部分を穿設することにより破断予定部位とし、使用にあたって前記破断予定部位を破断し開封することが行われており、前記切目列構造部分として、断続する切刃によるミシン目構造や、先端を鉤状に折り曲げた切刃を断続して設ける鉤状切目列によるジッパー構造が多く用いられている。
図7に示す従来例のカートンHは、筒状胴部の正面板102を平行して横断する断続した鉤状切目列J、J’間に形成されたジッパー帯部114と該ジッパー帯部114の上辺両側端から胴部左右側面板101、103(図に表れない)を斜めに横断して穿設される破断ミシン目N、N(図に表れない)とからなり、背面板104(図に表れない)に設けられた折線によるヒンジ部を支点として仰開型に開閉する蓋構造のカートンを示しており、該カートンHにおいて正面板102を平行して横断するジッパー帯部114を構成する鉤状切目列J、J’は、平行する直線部と該直線部それぞれの開封始端側の端部が平行線の対向側(内側)向きに鉤状に曲げられた斜線部とで構成されている。
前記切刃は、通常、カートンの切線を形成するよう片側の側縁を刃先部、反対側の側縁を埋め込み部とする、0.7mm厚、23.6mm幅の帯状の鋼板を、カートン図面に倣って、分断並びに折り曲げ加工され、積層した合板(台板)に埋め込んで製造される打ち抜き型の一部を構成するものであって、カートン打ち抜き工程において、台板に組み込まれた打ち抜き型と、これに対向する面板(金属プレート上にプレスボード等を貼り込んで、打ち抜き型を雄型とし、これに対する雌型としたもの。カウンタープレートと呼ばれることもある。)とを打抜機に取り付け、両者間に板紙等を挿入した後、瞬間的圧力加工を施して打ち抜き加工するものである。尚、カートンの折り曲げに使用される折線部分も、刃先部を持たない帯状の鋼板によって形成される罫押し刃が、同様の加工を施され、打ち抜き型の一部に組み込まれるものである。
尚、カートン等の打ち抜きに用いられる打抜機には、一般に平圧式と輪転式とがある。輪転式の場合は、打ち抜き型、面板共にシリンダー状に加工されたものが使用され、比較的、型の寿命が長く、打ち抜き精度がよく、準備に時間を取らない等の長所はあるが、極めてコスト高となり、大量且つ長期に渉る製品(カートン)にしか使用されない。これに対し平圧式は、汎用性があって、従来から広く一般的に使用されている。
又、平圧式打抜機に使用される打ち抜き型は、通常、カートンブランク図面に倣い、あるいはカートンブランク図面のデジタルデータに従って出力されるレーザー光で、一般的には18mmの厚みを持つ前記台板に溝状の彫刻を施し、その溝内に前記折り曲げ加工された帯状の鋼板からなる打ち抜き刃、罫押し刃等を埋設し、固定して製造されている。
【0003】
図7に示したカートンHにおけるジッパー帯部114すなわち直線部を平行とした鉤状切刃部の断続による帯状開封部の操作は、カートン胴部の角部に設けられた摘まみ部を摘まみ、ジッパーラインすなわち正面板102を横断する鉤状切目列J、J’の直線部の延長方向を開封方向とし移動させ、ジッパー帯部114を引き上げる操作により、移動方向への剪断応力と、平行する直線部終端からそれぞれジッパー帯部内向きの剪断応力とで、それぞれの直線部切目終端から移動方向内向きへの引き裂き破断が発生し、次に配設されているそれぞれの鉤状切目部の斜線部切目に到達する。この操作の連続によりジッパー部が破断され開封操作が行われるものである。しかしながら、カートンの保持等の状況や、操作方法の個人差により、開封する方向が偏向した場合、上記操作による破断の連続が正しく行われず、直線部終端から斜線部への引き裂き部分でジッパーラインから外れてしまい、破断予定箇所以外に破断が進んで層間剥離を起こし部分的に印刷が剥がれて美観を損ねたり、必要な表示部分を損って使用に支障を来たしたり、帯状のジッパー部が途中で千切れてしまうという惧れがあった。
また、ジッパーラインがカートンの紙目方向(カートンに使用される板紙例えばコートボール紙等を抄造の際に形成される紙繊維の流れ方向を示すもので、板紙等の用紙は特に紙目方向に裂け易い構造を持っている。)に対して、斜めに傾斜している場合や、曲線を描いている場合には、使用する板紙の裂け易い方向すなわち紙目方向へ破断が進む傾向があり、特に問題が発生しやすかった。尚、通常カートンに使用される坪量が160g/m2以上のコートボール等板紙では、板紙の抄造時に5〜6層の抄き合わせがなされているので、引き裂きがジッパーラインを外れた箇所からの層間剥離が広がり易い。
【0004】
上記問題に対し、ジッパー部の切目形状をY字状に形成して、開封領域をジッパーラインどおりに開封できるジッパーの打ち抜き刃の切目列が提案されている(例えば、特許文献1)。すなわち、特許文献1に示されたものでは、従来、ジッパーラインの直線部終端からの引き裂き破断を鉤状切目に配設された斜線部で受けていた形状を、直線部の延長線上に対し対称に開いたV字形状端部で受けることにより、開封する方向が偏向してもV字形状端部のどちらかの斜線部で受けることができ、斜線部に連続する直線部に破断が継続されるものである。
【特許文献1】特開平10−296883号公報
【0005】
前記特許文献1に示された発明に係るジッパーの打ち抜き型において、Y字形のジッパーを形成する打ち抜き刃の切目列は、詳細な構成は後述するが、図3(a)、(b)に示すように、従来形と同様の鉤状切刃部を片側に連続して有する長尺の打ち抜き刃B−1と、Y字形の一方の斜線部に相当する短い切刃部を片側に連続して形成する長尺の打ち抜き刃B−2の両者を、図3(a)の平面図のように、帯状部分が平行で、且つ所定の間隔をもって台板に埋め込んで仕上げたものである。尚、図3(b)に示すように、打ち抜き刃の切刃部と反対側の側縁D−1、D−2は埋め込み部である。
上記打ち抜き刃の切目列のうち、長尺の打ち抜き刃B−2はY字形の一方の斜線部に相当する短い切刃部を形成するもので、従来のように斜線部のみの切刃を埋め込むものに対して耐久性があり、台板からの抜け落ちを防ぐことができるとされている。しかしながら、切刃部分のみを残し、それ以外の帯状部を飛び出さないようにする段差部E−1の形成という特殊な加工を施す為の加工時間を要し、コストが上昇する点で、経済性に問題がある。さらに、長尺の打ち抜き刃B−2によって形成される斜線部切刃C−3は、もう一方の長尺の打ち抜き刃B−1によって形成される直線部切刃C−1に一体に連続するものではないので、例えば大量の打ち抜き加工により、経時的に短い切刃部の曲がり等移動が生じた場合、ジッパーラインによる破断が連続しない惧れがある。
以上から、加工性に優れ、加工時間が短縮できる打ち抜き刃の構成による打ち抜き型からなり、しかも、ジッパーラインによる破断の連続が損われることの無いジッパースタイルが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決するためになしたものであって、カートンの部分的開封にあたり、使用者による個人差や、カートンの保持状態の変化によって生じるジッパーラインを外れた開封方向の変化によっても、所定の破断予定線どおりの開封が可能な切目列形状をカートンに形成することが可能な打ち抜き刃の構造で、また、その加工性に優れることにより加工時間が短縮でき、さらに耐久性のある打ち抜き刃の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、帯状の鋼板の一側縁を刃先部とし反対側の側縁を埋め込み部とするカートン用打ち抜き刃で形成される切目列構造であって、一方の長尺の打ち抜き刃の刃先部で形成される直線状基部切刃と、該直線状基部切刃に連接すると共に前記刃先部を切り開き一方向へ折り曲げられる斜線状枝部切刃とで形成され、前記斜線状枝部切刃を開封始端側とした鉤状切刃部が所定のピッチで設けられ、前記一方の長尺の打ち抜き刃に隣接して並行する他方の長尺の打ち抜き刃の刃先部で形成される直線状基部切刃と、該直線状基部切刃に連接すると共に前記刃先部を切り開き前記一方の長尺の打ち抜き刃と相反する方向へ折り曲げられる斜線状枝部切刃とで形成され、前記斜線状枝部切刃を開封始端側とした鉤状切刃部が前記一方の長尺の打ち抜き刃と同一のピッチで設けられ、隣接して並行する長尺の打ち抜き刃のそれぞれの鉤状切刃部によって略Y字形状の切目列を形成することを特徴とするカートン用打ち抜き刃の切目列構造である。このように構成することによって、切目列の終端からの切り破りを受け止めた斜線状枝部切目は連続して直線状基部切目に継続し、不連続部分での逸れによる層間剥離などの不具合を発生することがなく、また、従来、打ち抜き型製作にあたって、加工時間を要し、経済的に問題のあったY字形状の打ち抜き刃の切目列構造を、加工性の良好なものとすると共に、調整の為の手間も少なくすることができ、加工及び調整時間の短縮により、コストダウンを図ると共に、従来のY字形状切目列を形成する短い切刃部の構成による損耗等も発生せず、板紙製のカートンへの適用を行って、所定の破断予定線での開封を可能とするものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記略Y字形状の切目列を構成する打ち抜き刃がそれぞれ片切刃の打ち抜き刃からなり、且つ前記直線状基部切刃部分において前記片切刃の刃先の無い面同士を密着させて構成することを特徴とする請求項1記載のカートン用打ち抜き刃の切目列構造で、請求項1の発明と同様に、切目列の終端からの切り破りを受け止めた斜線状枝部切目は連続して直線状基部切目に継続し、不連続部分での逸れによる層間剥離などの不具合を発生することがなく、しかも、密接する直線状基部切刃間の空隙による層間剥離等の発生がなく、見栄えを損うことがない。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記略Y字形状の切目列を所定の間隔を隔てて並行に設け、両略Y字形状の切目列間にジッパー帯部を形成したことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のカートン用打ち抜き刃の切目列構造で、加工性を良好なものとした略Y字形状の打ち抜き刃の切目列構造によってジッパー帯部を形成できるので、ジッパー帯部の開封にあたって、引き裂き方向がジッパーラインに従い易く、ジッパー帯部のちぎれも防ぐことができるという、開封性に優れたジッパー部形状とすると共に、加工性の良好なものとし、且つ調整の為の手間を少なくすることができ、加工及び調整時間の短縮により、コストダウンを図ることができる。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記略Y字形状の切目列に対し、所定の間隔を隔てて並行に、長尺の打ち抜き刃の刃先部で形成される直線状基部切刃と、該直線状基部切刃に連接すると共に前記刃先部を切り開き一方向へ折り曲げられる斜線状枝部切刃とで形成され、該斜線状枝部切刃を開封始端側とした鉤状切刃部が前記略Y字形状の切目列と同一のピッチで設けられた鉤状切目列を設け、前記略Y字形状の切目列と前記鉤状切目列との間にジッパー帯部を形成したことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のカートン用打ち抜き刃の切目列構造で、上記の構成により、特に、カートン胴部構成板を斜めに横断するジッパー帯部開封において、打ち抜き型に使用する長尺の打ち抜き刃を一部省略できるので、打ち抜き型のコストを抑えることが可能となり、カートンの斜め横断する開封部位においては、連続した破断により容易に開封することができる。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記略Y字形状の切目列が、全長或いは部分的な区間で曲線状に配設されることを特徴とする請求項1または2いずれかに記載のカートン用打ち抜き刃の切目列構造で、このように構成することにより、カートンにおける曲線状の開封部位においても連続した破断により容易に開封することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカートン用打ち抜き刃の切目列構造は、開封破断部を、近接して並行する直線状基部切刃と、該並行する直線状基部刃切刃の同じ側の端部からそれぞれ相反する側へ折り曲げて直線的に延設される斜線状枝部切刃とからなるそれぞれの鉤状切刃部の連続した配設により、略Y字形状の切目列を形成することによって、開封始端側からの破断開封をY字形状の斜線状枝部切刃部分で受け、次に配設される略Y字形状への開封連続を容易に伝播させることができると共に、従来のY字形状切目列によるジッパーに比較して、打ち抜き型の製作加工が容易となり加工時間が短縮されることや、調整の為の時間が短縮されることによるコストダウンなどの経済的な効果がある。
【0013】
略Y字形状に形成され、それぞれ並行する直線状基部切刃と、該直線状基部切刃の一端部から折り曲げられ直線的に延設された斜線状枝部切刃とは、それぞれ一体に形成されているので、従来のY字形状切目列から形成されるジッパー部のうち、頭部の一方の短い斜線状枝部切刃が、直線状基部切刃に連接して形成されない為に発生する脱落等の損耗が発生せず、より耐久性に優れるとともに、大量の打ち抜き加工によって、短い斜線状枝部切刃が部分的移動等により直線状基部切刃に連続せず破断が不連続となるようなことが発生しない。
【0014】
また、略Y字形状の切目列を構成する打ち抜き刃を、それぞれ片切刃の打ち抜き刃を用い、且つ直線状基部切刃部分において、片切刃の刃先の無い面同士を密着させて構成することにより、密接する直線状基部切刃間の空隙が生じず、切刃間の層間剥離の発生がなく、見栄えを損うことがないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明につき、図面等を用いて以下に詳述する。図1(a)は本発明に係るカートン用打ち抜き刃の切目列構造を用いてジッパー帯を配設された実施例のカートンのブランク状態を示す展開平面図。図1(b)は同じく実施例のカートンの説明用斜視図。図1(c)は同じく実施例のカートンの開封展示状態を示す説明用斜視図。図2(a)は従来の鉤状切目列によるジッパー帯部の説明用拡大平面図。図2(b)は従来のY字形状切目列によるジッパー帯部の説明用拡大平面図。図3(a)は従来のY字形状切目列の打ち抜き刃構成を示す説明用平面図。図3(b)は同じく従来のY字形状切目列の打ち抜き刃構成を示す説明用斜視図。図4(a)は従来のY字形状切目列の別の打ち抜き刃構成を示す説明用平面図。図4(b)は従来のY字形状切目列の別の打ち抜き刃構成を示す説明用斜視図。図5(a)は本発明に係る略Y字形状切目列の打ち抜き刃の構成を示す説明用平面図。図5(b)は同じく本発明に係る略Y字形状切目列の打ち抜き刃の構成を示す説明用斜視図。図6(a)は本発明に係るカートン用打ち抜き刃の切目列構造を用いてジッパー帯を配設されたカートンの他の展開例を示す説明用斜視図。図6(b)は同じく本発明に係るカートン用打ち抜き刃の切目列構造を用いたカートンのさらに他の展開例を示す説明用斜視図。図6(c)は同じく本発明に係るカートン用打ち抜き刃の切目列構造を用いてジッパー帯を配設されたカートンのさらに他の展開例を示す説明用斜視図。図7は従来の鉤状切目列からなるジッパー帯を用いたカートンの説明用斜視図。図8(a)は打ち抜き刃の代表的種類と形状を示す説明用部分側面図。図8(b)は本発明に係る略Y字形状切目列に片切刃を用いた構成を示す説明用斜視図である。
【0016】
図1(a)は本発明に係るカートン用打ち抜き刃の切目列構造を用いてジッパー帯を配設された実施例のカートンのブランク状態を示す展開平面図であって、板紙等シート材を打ち抜き加工して形成されるブランクPは、折線L1、L2、L3、L4を介して貼着板5、左側面板1、正面板2、右側面板3、背面板4を順に連設し、前記左側面板1の上部延長上には折線L5、L6を介して天面板6、差込板7が順に連設され、前記正面板2、背面板4の上部延長上にはそれぞれ折線L7、L8を介してそれぞれ耳片8、9が延設されており、前記左側面板1、正面板2、右側面板3、背面板4の下部延長上には折線L9、L10、L11、L12を介してそれぞれ底部構成板10、11、12、13が延設されている。前記正面板2の下端辺から所定の距離を隔てて平行に、2条の鉤状切目列J、J’からなる帯状のジッパー14が中央からそれぞれ左右両側面板に向けて刻設され、さらに前記帯状のジッパー14を形成する鉤状切目列J、J’は前記左右両側面板1、3に至って、角部からそれぞれ斜め上方へ傾斜する近接して並行する直線状基部切刃と該並行する直線状基部切刃の一端部からそれぞれ相反する側へ延設される斜線状枝部切刃とからなる鉤状切目列により略Y字形状切目列K、K’に形成され、前記斜線状枝部切刃を始端側として形成される傾斜ジッパー帯部15、15がそれぞれ前記左側面板1及び右側面板3の上端辺略中央部まで刻設されている。尚、左側面板1の上辺の折線L5は、前記切目列K、K’との交点間で切目M、さらに左端折線L1との間を破断ミシン目Nとし、また、前記底部構成板10、12のそれぞれ右端角部には折線L13、L14を介して貼着片10’、12’が延設されている。
【0017】
図1(b)は同じく実施例のカートンの説明用斜視図で、予め底部構成板10、11、12、13が折線L9、L10、L11、L12を用いて折り込まれると共に、折線L13、L14を折り曲げて貼着片10’、12’が前記底部構成板11、13に貼着された後、折線L2及びL4を折り畳み背面板4と貼着板5とが貼着され扁平に折り畳まれたカートンを、起立させ、内容物を充填後、天面板6を被せると共に、差込板7を差し込んで、組み立て完了した状態を示している。ちなみにカートンQは、通常、菓子や雑貨等が収納される小型のカートンや袋を、小売に対応した複数個(例えばダース単位や10個単位)を集合包装すると共に、店頭において展示可能とした展示兼用搬送カートンである。
【0018】
カートンQの開封にあたっては、先ず正面板2の下端辺から所定距離を隔てて刻設され、中央から開封される従来型の鉤状切目列J、J’からなるジッパー帯部14を左右方向に引き破り正面板2の両側角部に至り、連続して、略Y字形状の切目列K、K’で形成される傾斜ジッパー帯部15、15をそれぞれ左右側面板1及び3の上端辺中央近傍まで引き破り、次いで、左側面板1の上端辺に刻設された切目M及び破断ミシン目Nを切り破り、背面板4の上端辺の破断ミシン目L8を切り破ることにより、カートンQの正面板2の上部及び左右両側面板1、3の前部、並びに天面板6からなるカートン上部構成部分及び耳片9を切除して、図1(c)に示すように、内容物Xが露出した正面板2、背面板4、左右両側面板1、3及び底部構成板で形成される略トレー状の展示可能状態に開封するものである。
【0019】
図2(a)、(b)は従来型の切目列を使用したジッパー帯部の比較説明用拡大平面図であって、特に図1に示す実施例のカートンのように、カートンの胴部を斜めに横断するジッパー帯部に関するもので、図中、右斜め上を指す矢印はジッパーの開封方向、水平双方向を指す矢印はカートンの紙目方向を示している。尚、周知の事項ではあるが、「紙目」とは板紙等用紙の抄造工程において、紙繊維が抄造の流れ方向に並んだ状態を言い、用紙はこの紙目方向に引き裂け易いという性質を有している。
図2(a)は鉤状切目列によるジッパー帯部の説明用拡大平面図で、斜線状枝部切刃を開封始端側とし直線状基部切刃を開封終端側として折り曲げ形成された鉤状切刃を開封方向に連続した切目列がそれぞれ所定の距離を隔てて内向きに対向して帯状のジッパーを形成している。連続する鉤状切刃間の繋ぎ部Tの引き裂きには、図中、上辺の鉤状切刃のように、直線状基部切刃の終端Sに作用する剪断応力の方向(点線矢印で示す)が開封方向に従っているか、紙目方向に偏りを見せても、斜線状枝部切刃が受け止める位置に存在するため、引き裂きが次の切目に伝播するが、下辺の鉤状切刃のように、直線状基部切刃の終端Sに作用する剪断応力の方向が紙目方向に偏りを見せると、次の切目に伝播せず、ジッパー帯部による開封が不能となり、例えばジッパー中間部からの紙剥けやジッパーのちぎれ等の不都合が発生する。
これに対し、図2(b)に示すY字形切目列によるジッパー帯部は、斜線状枝部切刃を開封始端側とし直線状基部切刃を開封終端側として折り曲げ形成された鉤状切刃と、該鉤状切刃の折り曲げ部に近接する前記斜線状枝部切刃に対称な斜線状枝部切刃を設けてY字形とし、開封方向に連続した切目列の前記鉤状切刃がそれぞれ所定の距離を隔てて内向きに対向してジッパー帯部を形成している。連続する鉤状切刃間の繋ぎ部Tの引き裂きには、直線状基部切刃の終端Sに作用する剪断応力の方向(点線矢印で示す)が左右いずれの方向に偏っても、Y字形を形成する斜線状枝部切刃が受け止める位置に存在するため、引き裂きが次の切目に伝播し、開封方向に沿った開封が可能となるものである。
しかしながら、鉤状切刃の折り曲げ部に近接する前記斜線状枝部切刃に対称な斜線状枝部切刃は、部分的切刃構造とならざるを得ず、固定角度の振れや固定位置の移動等、その近接部分Uを安定的に調整することが難しく、前記近接部分Uの開きや極端な場合には切刃の脱落により切刃の連続性がなくなることにより、次の切目に伝播せず、帯状ジッパーによる開封が不能となり、例えばジッパー中間部からの紙剥けやジッパーのちぎれ等の不具合が発生する危険性がある。
【0020】
図3(a)及び(b)は、従来のY字形状切目列の打ち抜き刃の構成を示す説明用平面図及び説明用斜視図で、長尺の打ち抜き刃B−1及び同じく長尺の打ち抜き刃B−2とから構成される。
長尺の打ち抜き刃B−1は、図3(b)の斜視図下段に示すように、長尺の打ち抜き刃に、打ち抜き刃の長手方向と同一方向に形成された直線状基部切刃C−1と、該直線状基部切刃に連接すると共に打ち抜き刃の長手方向に対し所定の方向に打ち抜き刃の上部を折曲部Fで折り曲げて形成された斜線状枝部切刃C−2とから構成された鉤状切刃部を、所定のピッチで打ち抜き刃の側縁に設けたもので、他方の側縁は打ち抜き型に埋設される埋め込み部D−1となっている。図3(a)の平面図において、直線状基部切刃C−1の上端の折曲部から左側に略45度の角度で折り曲げられ斜線状枝部切刃C−2とした状態が示されている。
長尺の打ち抜き刃B−2は、図3(b)の斜視図上段に示すように、長尺の打ち抜き刃に、打ち抜き刃の長手方向と同一方向に形成され前記長尺の打ち抜き刃B−1の直線状基部切刃C−1と略等しい長さで切刃部を除いた段差部E−1の一端で打ち抜き刃の長手方向に対し所定の方向に打ち抜き刃の上部を折曲部Fで折り曲げて形成される斜線状枝部切刃C−3が、前記長尺の打ち抜き刃B−1の斜線状枝部切刃C−2と等しい長さで、且つ同様のピッチで打ち抜き刃の側縁に設けたもので、他方の側縁は打ち抜き型に埋設される埋め込み部D−2である。図3(a)の平面図に示すように、長尺の打ち抜き刃B−2は前記長尺の打ち抜き刃B−1に並行し、且つ段差部E−1の下端の折曲部から左側に略45度の角度で折り曲げられ形成される斜線状枝部切刃C−3の先端が前記長尺の打ち抜き刃B−1の直線状基部切刃C−1上端の折曲部に接する位置に配設されることにより、長尺の打ち抜き刃B−1から形成される鉤状切刃を構成する直線状基部切刃C−1と連接する斜線状枝部切刃C−2と、長尺の打ち抜き刃B−2から形成される斜線状枝部切刃C−3とからなるY字状の切刃部を形成する。
上記の如く、長尺の打ち抜き刃B−2の製造にあたっては、斜線状枝部切刃C−3の形成のため、打抜き工程において切刃部がブランクを打ち抜かないもしくはブランク表面に当接しないよう段差部E−1を設ける必要があり、加工前の打ち抜き刃に存在する連続する切刃部の一部を除く加工工程と加工時間を要する。
【0021】
図4(a)及び(b)は、従来のY字形状切目列の打ち抜き刃の別展開例の構成を示す説明用平面図及び説明用斜視図で、長尺の打ち抜き刃B−1と複数の短寸の打ち抜き刃B−3とから構成される。長尺の打ち抜き刃B−1の構成は、前項と同様である。
短寸の打ち抜き刃B−3は、前記長尺の打ち抜き刃B−1の斜線状枝部切刃C−2と等しい長さの斜線状枝部切刃C−4に段差部E−2の長さを加えた埋め込み部D−3の長さを有する打ち抜き刃長手方向からなり、図4(a)の平面図において、前記長尺の打ち抜き刃B−1の直線状基部切刃C−1上端の折曲部に、長尺の打ち抜き刃B−1の長手方向に対し右側に45度の角度で、且つ短寸の打ち抜き刃B−3の切刃C−4の先端が接する位置に配設されることにより、長尺の打ち抜き刃B−1から形成される鉤状切刃部を構成する直線状基部切刃C−1と連接する斜線状枝部切刃C−2と、短寸の打ち抜き刃B−3を構成する斜線状枝部切刃C−4とからなるY字状の打ち抜き刃を形成する。
上記、別展開例のY字形状切目列の打ち抜き刃の製造にあたっては、長尺の打ち抜き刃とは別に、短寸に加工した打ち抜き刃B−3が必要であり、さらに前記短寸の打ち抜き刃B−3は、打抜き工程において切刃部がブランクを打ち抜かないもしくはブランク表面に当接しないよう段差部E−2をそれぞれ設ける必要があり、加工前の打ち抜き刃に存在する連続する切刃部の一部を除く加工工程と加工時間を要する。
【0022】
図5(a)及び(b)は、本発明に係る略Y字形状の切目列の打ち抜き刃の構成を示す説明用平面図及び説明用斜視図。(c)は、同じく略Y字形状の切目列の説明用平面図である。
図5(a)は、略Y字形状の切目列の打ち抜き刃の構成を示す説明用平面図で、長尺の打ち抜き刃B−1の構成は、前述の図3にて説明した通り、長尺の打ち抜き刃に、打ち抜き刃の長手方向と同一方向に形成された直線状基部切刃C−1と、直線状基部切刃に連接すると共に打ち抜き刃の長手方向に対し所定の方向に打ち抜き刃の上部を折曲部Fで折り曲げて形成された斜線状枝部切刃C−2とから構成された鉤状切刃部を、所定のピッチで打ち抜き刃の片側に設けたもので、他方の側は打ち抜き型に埋設される埋め込み部D−1となっている。平面図において、直線状基部切刃C−1の上端の折曲部から左側に略45度の角度で折り曲げられ斜線状枝部切刃C−2とした状態が示されている。
長尺の打ち抜き刃B−4の構成は、図5(b)の斜視図上段に示すように、長尺の打ち抜き刃に、打ち抜き刃の長手方向と同一方向に形成された直線状基部切刃C−5と、該直線状基部切刃に連接すると共に打ち抜き刃の長手方向に対し前記長尺の打ち抜き刃B−1の斜線状枝部切刃C−2と逆の方向に打ち抜き刃の上部を折曲部Fで折り曲げて形成された斜線状枝部切刃C−6とから構成された鉤状切刃部を、前記長尺の打ち抜き刃B−1と同一のピッチで打ち抜き刃の側縁に設けたもので、他方の側縁は打ち抜き型に埋設される埋め込み部D−4となっている。図5(a)の平面図に示すように、長尺の打ち抜き刃B−1と長尺の打ち抜き刃B−4とは密接もしくは極めて近接して並行に配設され、同一のピッチにて両者がそれぞれ直線状基部切刃C−1と斜線状枝部切刃C−2、直線状基部切刃C−5と斜線状枝部切刃C−6で形成する背中合わせ状態の鉤状切刃部による略Y字形の打ち抜き刃を形成する。
【0023】
図5(c)は、本発明に係る略Y字形状の切目列の説明用平面図で、略Y字形状に形成された切目は、前項で説明のように、直線状基部切刃C−1と斜線状枝部切刃C−2、直線状基部切刃C−5と斜線状枝部切刃C−6で形成する背中合わせ状態の鉤状切刃部による略Y字形状の打ち抜き刃により形成されており、一方の鉤状切目部すなわち直線状基部切目と該直線状基部切目の一端部から直線的に延設された斜線状枝部切目とにより形成される角度αは、95°〜165°の範囲にあることが好ましく、望ましくは135°〜150°である。また、直線状基部切目の終端Gから次の斜線状枝部切目までの最短距離βに対して、直線状基部切目の長さγは1〜4倍の範囲にあることが好ましく、望ましくは2〜3倍である。
前記角度αが小さすぎ或いは前記最短距離βが大きすぎると、直線状基部切目の終端Gよりの剪断を次の斜線状枝部切目が受けにくくなって引き裂きが継続しない、また、前記角度αが大きすぎ或いは前記最短距離βが小さすぎると、引き裂き抵抗が少なくなり開封し易くなるが、切目を設けられた部分でカートンの構成板自体の面を弱くする欠点があるので、上記の範囲内での、構成板面の強度と引き裂き抵抗のバランスの良い組み合わせによるジッパーの設計が必要となる。
【0024】
図6(a)は、本発明に係るカートン用打ち抜き刃の切目列構造を用いてジッパー帯を配設したカートンの他の実施例を示す説明用斜視図で、カートンRの構成は、先述した図1のカートンQとほぼ同様であって、正面板2の下端辺から所定の距離を隔てて平行に、2条の鉤状切目列J、J’からなるジッパー帯部14が中央からそれぞれ左右両側面板に向けて刻設され、さらに前記ジッパー帯部14を形成する鉤状切目列J、J’は前記左右両側面板1、3に至り、前記鉤状切目列Jは角部から斜め上方へ傾斜し、同じく前記鉤状切目列J’が角部から斜め上方へ傾斜すると共に近接して並行する直線状基部切刃と該並行する直線状基部切刃の一端部からそれぞれ相反する側へ延設される斜線状枝部切刃とからなる鉤状切目列とで略Y字形状に形成され前記斜線状枝部切刃を始端側とする切目列K’となり、前記鉤状切目列Jと前記Y字形切目列K’からなる傾斜ジッパー帯部15’、15’がそれぞれ左側面板1及び右側面板3の上端辺略中央部まで刻設されている。
【0025】
上記構成のカートンRの開封にあたっては、図1に示したカートンと同様に、正面板2の下端辺から所定距離を隔てて刻設され、中央から開封される従来型の鉤状切目列J、J’からなるジッパー帯部14を左右方向に引き破りそれぞれ側辺に至り、連続して、上辺を引き続き鉤状切目列J、下辺を略Y字形状の本願発明に係る切目列K’で形成される傾斜ジッパー帯部15’でそれぞれ左右側面板1及び3の上端辺まで引き破り、次いで、図には表れないが、左側面板1の上端辺に刻設された切目M及び破断ミシン目N、並びに破断ミシン目L8を切り破ることにより、カートンQの正面板2の上部及び左右両側面板1、3の前部、天面板6、並びに背面板4の上端に延設された耳片9を除去して、展示可能状態に開封するものである。
ジッパー帯部の従来例の説明でも述べたが、図1及び図6に示すような、カートンの胴部を斜めに横断するジッパー帯を設け、開封方向が斜め上向きの場合、ジッパーを構成する各切目の終端からの剪断応力の方向は、使用する人の個人的差異はあるが、図2(a)に示すように、比較的、紙目方向へ偏って働く傾向にあり、ジッパー帯部下辺の切目列の破断において、次の切目に伝播せず、ジッパー帯部による開封が不能となり、例えばジッパー帯部終端からの紙剥けやジッパーのちぎれ等の不都合が発生する。逆に、ジッパー帯部上辺の切目列の破断においては、ジッパーを構成する各切目の終端からの剪断応力の方向が紙目方向へと偏っても、次の切目に伝播し易い傾向にあることから、上記展開例の傾斜ジッパー帯部15’のように、上辺切目列を鉤状切目列とし、下辺切目列を略Y字形状の本願発明に係る切目列とするジッパー帯部を用いても、引き裂きが次の切目に伝播し、開封方向に沿った開封が可能となるものである。この構成により、打ち抜き型に使用する長尺の打ち抜き刃を一部省略できるので、さらに打ち抜き型のコストを抑えることが可能となる。
【0026】
図6(b)に示すカートンVは、正面板22の下端中央部に穿設された平行な垂直線で形成される摘み片の両側上端より連続し、正面板22と折線を介して連設される天面板26との開封領域の両側辺に、左右対称で湾曲線状に開封方向を正面板22から天面板26方向として略Y字形切目列をそれぞれ配設した平面置き形のカートンで、摘み片からの持ち上げ操作により、正面板22から天面板26に渉る略楕円形状の領域を開封するものである。このようにカートンを略Y字状の切目列が、曲線状に配設されて開封される場合は、開封方向が配設されるそれぞれの切目において変化するため、紙目方向や使用する人の個人的差異、カートンの保持状態等、様々な条件変化により、ジッパーラインを外れることがあり、開封部位の切目の全箇所に亘って、本発明に係る打ち抜き刃構造を用いて略Y字形の切目列を用いることにより、安定的且つ整然とした開封方向に沿った開封が可能となるものである。
【0027】
図6(c)に示すカートンWは、カートン胴部を構成する正面板32を水平に横断する帯状ジッパー部を引き裂いた後、帯状ジッパーの両側上端から左右両側面板31、33(図面に表れない)を斜めに横断するミシン目破断線を切り離し、該ミシン目破断線の両端間を結んで背面板34(図面に表れない)を横断するヒンジ用折線で折り曲げることにより、カートン上端の蓋部が仰開する、いわゆるヒンジリッドカートンである。このようにジッパー帯部がカートン胴部を水平に横断する場合は、ジッパーを構成する各切目の終端からの剪断応力の方向が、一般的には紙目に沿って水平に、或いはジッパーの引き上げ操作により両端から内向きに働き、従来の鉤状切目列からなるジッパーによる引き裂きが可能であるが、逆に使用する人の個人的差異や、カートンの保持状態により、却ってジッパーラインを外れることがあり、図のように、上下辺に略Y字形状の切目列によるジッパー帯部を用いれば、開封方向に沿った開封がより安定的に可能となるものである。
【0028】
図8(a)は打ち抜き刃の代表的種類と形状を示す説明用部分側面図。図8(b)は本発明に係る略Y字形状切目列に片切刃を用いた構成を示す説明用斜視図であるが、打ち抜きに用いる打ち抜き刃は、カートン製造に用いられる紙質や紙厚、或いは製造ロット数などにより、図8(a)に示す打ち抜き刃形状から使用する種類が選択されるものであって、図3〜図5に示したように、両刃のものが一般に使用される。本発明に係るカートン用打ち抜き刃の略Y字形状の切目列は、図5に示したように両刃の打ち抜き刃を使用して直線状基部切刃を密接させた場合、それぞれの切刃の先端間は0.7mmの空隙が生じ、図1(a)(b)及び図6(a)(b)(c)の展開平面図や斜視図に現われるように、2条の切目が打ち抜き形成される。先述のように、略Y字形状の切目列の働きにより、開封方向への連続した切り破りが可能となるものであるが、前記2条の切目により、一部で2条の切目間での層間剥離が発生し、見栄えを悪くする場合がある。
図8(b)に示す、片切刃を用いた略Y字形状の打ち抜き刃の構成(符号は省略)は、それぞれ長尺の片切刃の打ち抜き刃を用い、直線状基部切刃部分を片切刃の刃先の無い面同士を背中合わせに密接もしくは密着させて構成し、それぞれ同じ側の一端を相反する方向へ折り曲げて斜線状枝部切刃を形成して、もってY字形状の切目部を構成するものであり、これを直線状基部切刃の直線の延長方向に連続して切目列を構成する打ち抜き刃の構造であって、密接もしくは密着した直線状基部切刃部分の切刃の先端間は、設計図面上は0.2mmの空隙を生じるものであるが、実際上の打ち抜き工程においては、1条の切目に打ち抜かれ、該1条の切目の一端からそれぞれ連続する斜線状枝部切目が形成されることとなり、、打ち抜きによりカートン表面上には折り曲げ部に不連続部分の無いY字形状切目が形成されることとなる。
上記構成により、切目列の終端からの切り破りを受け止めた斜線状枝部切目は連続して直線状基部切刃に継続し、不連続部分による破断の不連続という不具合を発生することがない。また、両刃の打ち抜き刃による略Y字形状の打ち抜き刃の構成のように、密接する直線状基部切刃間の空隙による層間剥離の発生がなく、見栄えを損うことが無い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)本発明に係るカートン用打ち抜き刃の切目列構造を用いてジッパー帯を配設された実施例のカートンのブランク状態を示す展開平面図。 (b)同じく実施例のカートンの説明用斜視図。 (c)同じく実施例のカートンの開封展示状態を示す説明用斜視図。
【図2】(a)従来の鉤状切目列によるジッパー帯部の説明用拡大平面図。 (b)従来のY字形状切目列によるジッパー帯部の説明用拡大平面図。
【図3】(a)従来のY字形状切目列の打ち抜き刃構成を示す説明用平面図。 (b)従来のY字形状切目列の打ち抜き刃構成を示す説明用斜視図。
【図4】(a)従来のY字形状切目列の別の打ち抜き刃構成を示す説明用平面図。 (b)従来のY字形状切目列の別の打ち抜き刃構成を示す説明用斜視図。
【図5】(a)本発明に係る略Y字形状切目列の打ち抜き刃の構成を示す説明用平面図。 (b)本発明に係る略Y字形状切目列の打ち抜き刃の構成を示す説明用斜視図。 (c)本発明に係る略Y字形状の切目列の説明用平面図。
【図6】(a)本発明に係るカートン用打ち抜き刃の切目列構造を用いてジッパー帯を配設されたカートンの他の展開例を示す説明用斜視図。 (b)同じく本発明に係るカートン用打ち抜き刃の切目列構造を用いたカートンのさらに他の展開例を示す説明用斜視図。 (c)本発明に係るカートン用打ち抜き刃の切目列構造を用いてジッパー帯を配設されたカートンのさらに他の展開例を示す説明用斜視図。
【図7】従来の鉤状切目列によるジッパー帯を用いたカートンの説明用斜視図。
【図8】(a)打ち抜き刃の代表的種類と形状を示す説明用部分側面図。 (b)本発明に係る略Y字形状切目列に片切刃を用いた構成を示す説明用斜視図。
【符号の説明】
【0030】
P ブランク
Q カートン
1、31 左側面板
2、22、32 正面板
3、23 右側面板
4 背面板
5 貼着板
6、26、36 天面板
7 差込板
8、9 耳片
10、11、12、13 底部構成板
14 ジッパー帯部
15、15’ 傾斜ジッパー帯部
101 左側面板
102 正面板
106 天面板
114 ジッパー帯部
J、J’ 鉤状切目列
K、K’ 略Y字状切目列
L1〜L7、L9〜Ll4折線
L8 折線(破断ミシン目)
M 切目
N 破断ミシン目
S 直線状基部切刃の終端
T 鉤状切刃間の繋ぎ部
U 斜線状枝部切刃近接位置
B−1〜B−4 打ち抜き刃
C−1、C−5 直線状基部切刃
C−2〜C−4、C−6 斜線状枝部切刃
D−1〜D−4 埋め込み部
E−1、E−2 段差部
F 折曲部
G 直線状基部切目の終端
α 直線状基部切目と斜線状枝部切目との角度
β 直線状基部切目終端と斜線状枝部切目の最短距離
γ 直線状基部切目の長さ
H 従来例のカートン
R、V、W 他の実施例のカートン
X 収納された内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の鋼板の一側縁を刃先部とし反対側の側縁を埋め込み部とするカートン用打ち抜き刃で形成される切目列構造であって、一方の長尺の打ち抜き刃の刃先部で形成される直線状基部切刃と、該直線状基部切刃に連接すると共に前記刃先部を切り開き一方向へ折り曲げられる斜線状枝部切刃とで形成され、前記斜線状枝部切刃を開封始端側とした鉤状切刃部が所定のピッチで設けられ、前記一方の長尺の打ち抜き刃に隣接して並行する他方の長尺の打ち抜き刃の刃先部で形成される直線状基部切刃と、該直線状基部切刃に連接すると共に前記刃先部を切り開き前記一方の長尺の打ち抜き刃と相反する方向へ折り曲げられる斜線状枝部切刃とで形成され、前記斜線状枝部切刃を開封始端側とした鉤状切刃部が前記一方の長尺の打ち抜き刃と同一のピッチで設けられ、隣接して並行する長尺の打ち抜き刃のそれぞれの鉤状切刃部によって略Y字形状の切目列を形成することを特徴とするカートン用打ち抜き刃の切目列構造。
【請求項2】
前記略Y字形状の切目列を構成する打ち抜き刃がそれぞれ片切刃の打ち抜き刃からなり、且つ前記直線状基部切刃部分において前記片切刃の刃先の無い面同士を密着させて構成することを特徴とする請求項1記載のカートン用打ち抜き刃の切目列構造。
【請求項3】
前記略Y字形状の切目列を所定の間隔を隔てて並行に設け、両略Y字形状の切目列間にジッパー帯部を形成したことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のカートン用打ち抜き刃の切目列構造。
【請求項4】
前記略Y字形状の切目列に対し、所定の間隔を隔てて並行に、長尺の打ち抜き刃の刃先部で形成される直線状基部切刃と、該直線状基部切刃に連接すると共に前記刃先部を切り開き一方向へ折り曲げられる斜線状枝部切刃とで形成され、該斜線状枝部切刃を開封始端側とした鉤状切刃部が前記略Y字形状の切目列と同一のピッチで設けられた鉤状切目列を設け、前記略Y字形状の切目列と前記鉤状切目列との間にジッパー帯部を形成したことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のカートン用打ち抜き刃の切目列構造。
【請求項5】
前記略Y字形状の切目列が、全長或いは部分的な区間で曲線状に配設されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のカートン用打ち抜き刃の切目列構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−29975(P2010−29975A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194303(P2008−194303)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】