説明

カードコネクタ

【課題】カードの凹部側を先にしてカードコネクタに挿入しても、コンタクトの接点部が凹部内に入り込むのを防止できるカードコネクタを得る。
【解決手段】カード2に接触させる複数のコンタクト4の弾性変形部4aに設けた接点部4bを片面に出没可能に露出させると共に各コンタクト4の各基部4cを絶縁支持させたベース板5と、ベース板5の両縁部に支持させてカード挿入通路6を形成するカバー部材7とを備えている。ベース板5には各コンタクト4の各弾性変形部4aに対応する位置に窓部8を設ける。各弾性変形部4aには、各接点部4bの側部に沿って接点部4bから離れて存在する補助片4eをそれぞれ分岐して設ける。各補助片4eの自由端は、各接点部4bの自由端より先方に突出して設ける。各補助片4eの自由端の先端部は、各弾性変形部4aがフリーの状態で斜めの傾斜で窓部8内に入っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば識別情報が書き込まれたSIMカードの如きカードを差し込み接続するカードコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のカードコネクタ1は、図6(A)(B)(C)乃至図8に示すように、カード2の端子アレー3に接触させるための複数のコンタクト4の弾性変形部4aに設けられた接点部4bを片面に出没可能に露出させると共に各コンタクト4の各基部4cを絶縁支持させたベース板5と、該ベース板5の両縁部に支持されて該ベース板5の片面を覆うことにより両者の間にカード挿入通路6を形成する金属製のカバー部材7とを備えている。各コンタクト4は、本例ではカード挿入通路6の挿入方向の前後に2段に配置されている。各コンタクト4は、本例ではカード挿入通路6の幅方向に3列に配置されている。カード挿入通路6は、図8で左側が入口部6aで、右側がカード先端位置決め部6bとなっている。初段の各コンタクト4の弾性変形部4aと2段目の各コンタクト4の弾性変形部4aとは、カード2の挿入の障害にならないように、図8に示す如く入口部6aからカード先端位置決め部6bに向かう方向に自由端が向いている。初段の各コンタクト4の端子部4dは、入口部6aの外に突出されている。2段目の各コンタクト4の端子部4dは、初段の端子部4dとは逆向きでカード先端位置決め部6bの外に突出されている。このように初段の各コンタクト4の弾性変形部4aと2段目の各コンタクト4の弾性変形部4aとが入口部6aからカード先端位置決め部6bに向かう方向に延び、且つ2段目の各コンタクト4の端子部4dを、初段の端子部4dとは逆向きに突出させるため、2段目の各コンタクト4はU字状に湾曲されている。ベース板5には、図8に示すように、各コンタクト4の各接点部4bを有する各弾性変形部4bに対応する位置にカード2の挿抜により各接点部4bをベース板5の肉厚空間に沈下させたり該肉厚空間より上昇させたりする窓部8がそれぞれ設けられている。カードコネクタ1のベース板5は、基板9の上に設置されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このようなカードコネクタ1では、図7に示すように、このカードコネクタ1に挿入するカード2に例えばストラップ取り付け用のカード孔の如き凹部10が設けられていることが多い。
【特許文献1】特開2002−343505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようにカード2に凹部10が設けられていて、図7に示すように、ユーザーが間違ってこの凹部10側を先にしてカードコネクタ1に挿入して、2段目のコンタクト4の接点部4bが該凹部10に嵌ってしまうと、その後に誤りに気づいてカード2をカードコネクタ1から抜こうとしたとき、2段目のコンタクト4の接点部4bが凹部10の内壁に当たり、カード2が抜けない問題点があった。無理にカード2を抜くと、コンタクト4の接点部4bを座屈させてしまう問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、カードに凹部が設けられていて、この凹部側を先にしてカードコネクタに挿入しても、コンタクトの接点部が凹部内に入り込むのを防止できるカードコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の構成を説明すると、次のとおりである。
【0007】
請求項1に記載の発明は、カードの端子アレーに接触させるための複数のコンタクトの弾性変形部に設けられた接点部を片面に出没可能に露出させると共に前記各コンタクトの各基部を絶縁支持させたベース板と、該ベース板の両縁部に支持されて該ベース板の片面を覆うことにより両者の間にカード挿入通路を形成するカバー部材とを備え、前記ベース板には前記各コンタクトの前記各接点部を有する前記各弾性変形部に対応する位置に前記カードの挿抜により前記各接点部を前記ベース板の肉厚空間に沈下させたり該肉厚空間より上昇させたりする窓部が設けられているカードコネクタであって、
前記各弾性変形部には前記各接点部の側部に沿って該接点部から離れて存在する補助片がそれぞれ分岐して設けられ、前記各補助片の自由端は前記各接点部の自由端より先方に突出して設けられ、前記各補助片の自由端の先端部は前記各弾性変形部がフリーの状態で斜めの傾斜で前記窓部内に入っていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成に加え、前記各補助片が、対応する前記接点部に沿って該接点部を包囲する環状をなしていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1の構成に加え、前記各補助片が、対応する前記接点部に沿って該接点部の少なくとも片側に延びる構造をなしていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項の構成に加え、前記接点部が逆U字状に湾曲し、前記補助片も逆U字状に湾曲し、前記弾性変形部がフリーの状態で前記接点部の頂部が前記補助片の頂部より低くなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカードコネクタでは、コンタクトの弾性変形部には接点部の側部に沿って該接点部から離れて存在する補助片が分岐して設けられ、該補助片の自由端は接点部の自由端より先方に突出して設けられ、該補助片の自由端の先端部は弾性変形部がフリーの状態で斜めの傾斜で窓部内に入っているので、カードがその凹部側を先にして挿入された場合、この凹部にコンタクトの弾性変形部に設けられている接点部が対応する状態になっても、この接点部に先行して併設されている補助片がカードの凹部の先に存在して該カードの下面で押し下げられており、その結果弾性変形部と一体の接点部と補助片とは該補助片がカードの下面で押し下げられると弾性変形部の下降により接点部も下降し、カードの凹部に嵌らなくなる。それゆえ、カードを後退させると、接点部の先端が凹部の内面に当たらず、コンタクトの接点部を座屈させることなく、カードを後退させることができる。
【0012】
各補助片が、対応する接点部に沿って該接点部を包囲する環状をなしていると、各補助片の形状が安定し、接点部を安全に保護することができる。
【0013】
また各補助片が、対応する接点部に沿って該接点部の少なくとも片側に延びる構造をなしていると、接点部を安全に保護することができる。
【0014】
接点部が逆U字状に湾曲し、補助片も逆U字状に湾曲し、弾性変形部がフリーの状態で接点部の頂部が補助片の頂部より低くなっていると、接点部と補助片とを安定して作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るカードコネクタを実施するための最良の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、前述した図6(A)(B)(C)乃至図8と対応する部分には、同一符号を付けて示している。
【0016】
図1乃至図4は本発明に係るカードコネクタの一例を示したもので、図1は本例のカードコネクタの部分平面図、図2は図1のX−X′断面図、図3は図2に示すカードコネクタにカードを逆向きに挿入した状態の断面図、図4は図3のP部の拡大図である。
【0017】
本例のカードコネクタ1においては、各コンタクト4の各弾性変形部4aには各接点部4bの側部に沿って該接点部4bから離れて存在する補助片4eがそれぞれ分岐して設けられている。各補助片4eは、対応する接点部4bに沿って該接点部4bを包囲する環状をなしている。各補助片4eの自由端は、各接点部4bの自由端より先方に突出して設けられている。各補助片4eの自由端の先端部は、図2に示すように、各弾性変形部4aがフリーの状態で斜めの傾斜で窓部8内に入っている。各接点部4bは逆U字状に湾曲し、各補助片4eも逆U字状に湾曲している。各弾性変形部4aがフリーの状態で各接点部4bの頂部が補助片4eの頂部より低くなっている。
【0018】
このような構造のカードコネクタ1では、図3に示すように、カード2がその凹部10側を先にして挿入された場合、この凹部10にコンタクト4の弾性変形部4aに設けられている接点部4bが対応する状態になっても、この接点部4bに先行して併設されている補助片4eがカード2の凹部10の先に存在して該カード2の下面で押し下げられており、その結果弾性変形部4aと一体の接点部4bと補助片4eとは該補助片4eがカード2の下面で押し下げられると弾性変形部4aの下降により接点部4bも下降し、カード2の凹部10に嵌らなくなる。それゆえ、カード2を後退させると、接点部4bの先端が凹部10の内面に当たらず、コンタクト4の接点部4bを座屈させることなく、カード2を後退させることができる。特に、各補助片4eが、対応する接点部4eに沿って該接点部4bを包囲する環状をなしていると、各補助片4eの形状が安定し、接点部4eを安全に保護することができる。
【0019】
図5は、コンタクト4の弾性変形部4aの先端に設けられている接点部4bと補助片4eの形状の他の例を示す平面図である。
【0020】
本例では、弾性変形部4aの先端に設けられている補助片4eが、対応する接点部4bに沿って該接点部4bの少なくとも片側、本例では両側に延びた構造をなしている。
【0021】
このような構造でも、前記例と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るカードコネクタの一例の部分平面図である。
【図2】図1のX−X′断面図である。
【図3】図2に示すカードコネクタにカードを逆向きに挿入した状態の断面図である。
【図4】図3のP部の拡大図である。
【図5】本発明で、コンタクトの弾性変形部の先端に設けられている接点部と補助片の形状の他の例を示す平面図である。
【図6】(A)(B)(C)は従来のカードコネクタの一例を示したもので、(A)はその平面図、(B)は(A)の右側面図、(C)は(A)の下側面図である。
【図7】従来のカードコネクタの縦断面図である。
【図8】図7に示すカードコネクタにカードを逆向きに挿入した状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 カードコネクタ
2 カード
3 端子アレー
4 コンタクト
4a 弾性変形部
4b 接点部
4c 基部
4d 端子部
4e 補助片
5 ベース板
6 カード挿入通路
6a 入口部
6b カード先端位置決め部
7 カバー部材
8 窓部
9 基板
10 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードの端子アレーに接触させるための複数のコンタクトの弾性変形部に設けられた接点部を片面に出没可能に露出させると共に前記各コンタクトの各基部を絶縁支持させたベース板と、該ベース板の両縁部に支持されて該ベース板の片面を覆うことにより両者の間にカード挿入通路を形成するカバー部材とを備え、前記ベース板には前記各コンタクトの前記各接点部を有する前記各弾性変形部に対応する位置に前記カードの挿抜により前記各接点部を前記ベース板の肉厚空間に沈下させたり該肉厚空間より上昇させたりする窓部が設けられているカードコネクタであって、
前記各弾性変形部には前記各接点部の側部に沿って該接点部から離れて存在する補助片がそれぞれ分岐して設けられ、前記各補助片の自由端は前記各接点部の自由端より先方に突出して設けられ、前記各補助片の自由端の先端部は前記各弾性変形部がフリーの状態で斜めの傾斜で前記窓部内に入っていることを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記各補助片が、対応する前記接点部に沿って該接点部を包囲する環状をなしていることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記各補助片が、対応する前記接点部に沿って該接点部の少なくとも片側に延びる構造をなしていることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項4】
前記接点部が逆U字状に湾曲し、前記補助片も逆U字状に湾曲し、前記弾性変形部がフリーの状態で前記接点部の頂部が前記補助片の頂部より低くなっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−324007(P2007−324007A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154129(P2006−154129)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】