説明

カード用コネクタ装置

【課題】短いカードと、本来接触させてはならない長いカードに関連して設けられるコンタクト端子との接触を防ぐことができるカード用コネクタ装置の提供。
【解決手段】第1カード1と、この第1カード1よりも幅広肉厚で長さの短い第2カード2とがそれぞれ選択的に装着可能な所定の装着部3bを有するハウジング3と、第1カード1の複数の接触部1bとそれぞれ接触可能な複数の第1コンタクト端子4と、第2カード2の複数の接触部2bとそれぞれ接触可能な複数の第2コンタクト端子5とを備え、第2カード2の挿入に伴って、この第2カード2と第1コンタクト端子4とが接触しないように、第1コンタクト端子4を押し下げるカム部16dを含むカム機構を備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類のカード、特に幅狭肉薄のカードと、このカードよりも幅広肉厚のカードとを選択的に装着可能なカード用コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、例えば特許文献1に示されるものがある。この従来技術は、幅狭肉薄のカードと、このカードよりも幅広肉厚のカードとを選択的に装着可能なカード用コネクタ装置であり、上述の2つのカードを選択的に装着可能な所定の装着部を有するハウジングと、上述のそれぞれのカードに対応して設けられ、それぞれのカードの接触部に接触可能な複数の第1,第2コンタクト端子と、それぞれのカードを所定の装着部から排出させるスライド部材とを備えた構成になっている。上述した第1コンタクト端子と第2コンタクト端子は、カードの挿抜方向に沿って互いに並設されている。
【0003】
上述した2つのカードのうちの幅広肉厚カードは、幅狭肉薄カードよりも長さ寸法が長く設定されている。また、この従来技術は、幅狭肉薄のカードの側部を案内するために、このカードの側部に対向するハウジングの側壁部分に、カード案内部材すなわちガイド部材を回動可能に、すなわち進退可能に設けた構成になっている。幅広肉厚のカードがハウジングに挿入された際には、そのカードの挿入に応じてガイド部材がハウジングの壁部内に後退するようになっている。
【特許文献1】特開2004−71257公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術にあって、装置の長さ方向を小さくするために、長さ寸法の長いカードに関連させて装置の奥側に設けられる第1コンタクト端子と、長さ寸法の短いカードに関連させて装置の手前側に設けられる第2コンタクト端子とを接近させて配置するようにした場合には、長さ寸法の短いカードの押し込みに伴って、この短いカードと、本来接触してはならない長いカードに関連して設けられる第1コンタクト端子とが接触し、誤動作を生じる懸念がある。
【0005】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、短いカードと、本来接触させてはならない長いカードに関連して設けられるコンタクト端子との接触を防ぐことができるカード用コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、第1カードと、この第1カードよりも幅広肉厚で長さの短い第2カードとがそれぞれ選択的に装着可能な所定の装着部を有するハウジングと、上記第1カードの複数の接触部とそれぞれ接触可能な複数の第1コンタクト端子と、上記第2カードの複数の接触部とそれぞれ接触可能な複数の第2コンタクト端子とを備え、上記第2カードの挿入に伴って、この第2カードと上記第1コンタクト端子とが接触しないように、上記第1コンタクト端子を押し下げるカム機構を備えたことを特徴としている。
【0007】
このように構成した本発明は、長いカードである第1カードを所定の装着部に装着させた際には、この第1カードの接触部と第1コンタクト端子とが接触し、この第1カードに対する信号の送受信が可能となる。また、短いカードである第2カードを所定の装着部に装着させた際には、この第2カードの接触部と第2コンタクト端子とが接触し、この第2カードに対する信号の送受信が可能となる。また、このように短いカードである第2カードが押し込まれた際には、カム機構によって第1コンタクト端子が第2カードと接触しないように押し下げられる。すなわち、短いカードと、本来接触させてはならない長いカードに関連して設けられる第1コンタクト端子との接触を防ぐことができる。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、上記カム機構が、上記第1カードの上記接触部と接触可能な上記第1コンタクト端子の凸部を突出可能にさせる窓部を有し回動可能な板状部と、この板状部に固設され、上記第2カードによって押圧されるカム部とを含むことを特徴としている。このように構成した本発明は、カム機構が、板状部と、この板状部に固設されるカム部を含む簡単な構成であるので、このカム機構の製作が容易である。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、上記第1カード及び上記第2カードを上記所定の装着部から排出させるスライド部材を備えたことを特徴としている。このように構成した本発明は、所定の装着部に装着された第2カードを排出させるために、第2カードを押し込んでスライド部材をオーバーストロークさせた際でも、上述したカム機構によって第2カードと第1コンタクト端子との接触を生じることがない。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、上記第1カード及び上記第2カードが上記所定の装着部に至ったときに、上記スライド部材をロック可能なロック機構を備えるとともに、上記スライド部材が、所定の排出位置とロック位置との間にあることを検出可能な、また、ロック位置にあることを検出可能な、さらに、オーバーストローク位置にあることを検出可能な検出手段を備えたことを特徴としている。このように構成した本発明は、ロック機構によってスライド部材をロックすることにより、所定の装着部に保持された第1カードあるいは第2カードに対する安定した信号の送受信が可能となる。また、検出手段により、スライド部材がロック位置にあることが、また、オーバーストローク位置にあることが、さらに、これらの両位置以外の位置にあることが検出されるので、第1カード及び第2カードに対する信号の送受信制御を高精度に行なうことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、第2カードの挿入に伴って、この第2カードと第1コンタクト端子とが接触しないように、第1コンタクト端子を押し下げるカム機構を備えたことから、短いカードと、本来接触させてはならない長いカードに関連して設けられる第1コンタクト端子との接触を防ぐことができ、このような接触による誤動作の発生を防止でき、信頼性の高いカード用コネクタ装置を実現できる。また、第1コンタクト端子と第2コンタクト端子とを接近させて配置することによる装置の小型化も実現可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下,本発明に係るカード用コネクタ装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0013】
[本実施形態に使用される第1カード]
図1は本発明に係るカード用コネクタ装置の一実施形態に使用される第1カードを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は側面図、(d)図は裏面図である。
【0014】
この図1に示すように、本実施形態に係るカード用コネクタ装置に使用される複数のカードのうちの第1カード1は、先端部1a付近の裏面側に、この図1の(d)図に示すように信号の送受信に際して活用される複数の接触部1bを備えている。また、図1の(a)図に示すように、一方の側部に凹部1cを備えている。この第1カード1は、幅狭肉薄のカードである。
【0015】
[本実施形態に使用される第2カード]
図2は本発明に係るカード用コネクタ装置の一実施形態に使用される第2カードを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は側面図、(d)図は裏面図である。
【0016】
この図2に示すように、本実施形態に係るカード用コネクタ装置に使用される複数のカードのうちの第2カード2は、先端部2a付近の裏面側に、この図2の(d)図に示すように信号の送受信に際して活用される複数の接触部2bを備えている。また、図2の(a)図に示すように、両側部に凹部2cを備えている。この第2カード2は、幅広肉厚のカードである。すなわち、この第2カード2の幅寸法W2は、図1に示す第1カード1の幅寸法W1よりも広く設定され、この第2カード2の厚さ寸法t2は、第1カード1の厚さ寸法t1よりも厚く設定されている。なお、第2カード2の長さ寸法L2は、第1カード1の長さ寸法L1よりも短く設定されている。
【0017】
[本実施形態の構成]
図3は本実施形態に係るカード用コネクタ装置の構成を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図、図4は図3に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図、図5は図3のA−A断面拡大図、図6は本実施形態に備えられるガイド部材を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は側面図である。
【0018】
図3に示すように、本実施形態は、本体を形成する樹脂製のハウジング3を備えている。図示しないがハウジング3上にはカバー部材が配置される。ハウジング3は、上述の第1カード1及び第2カード2が装着される所定の装着部3bを有する。このハウジング3には、第1カード1の複数の接触部1bとそれぞれ接触可能な複数の第1コンタクト端子4と、第2カード2の複数の接触部2bとそれぞれ接触可能な複数の第2コンタクト端子5とがインサート成形されている。第1コンタクト端子4は装置の奥側位置に、第2コンタクト端子5は装置の手前側位置に、それぞれカード挿抜方向に沿って並設されている。
【0019】
また、同図3に示すように、第1カード1及び第2カード2を所定の装着部3bから排出させるスライド部材6を備えている。このスライド部材6は、図示しない付勢部材によってハウジング3の挿入口3aの方向に、すなわちカード排出方向に付勢されている。
【0020】
このスライド部材6は、図5に示すように、挿入口3a側の位置に、第1カード1の厚さ方向に位置する面部、例えば表面部を案内するガイド部6aを有するとともに、このガイド部6aに連設され、第1カード1の先端部1aが係合する第1係合部6bと、この第1係合部6bより挿入口3a側に位置し、第2カード2の先端部2aが係合する第2係合部6cを有する。
【0021】
さらに、図3に示すように、後述の可動接点を形成するねじりコイルばね9が取り付けられる取り付け部6dを有するとともに、ハートカム8を備えている。このハートカム8は、往路8aと、復路8bと、これらの往路8aと復路8bとの間に形成されるロック部8cとを有する。上述したハウジング3に、摺動ピン7が揺動自在に取り付けられており、この摺動ピン7の先端部7aがハートカム8に係合している。
【0022】
上述したハートカム8と摺動ピン7とによって、第1カード1及び第2カード2がハウジング3内の所定の装着部3bに至ったときに、スライド部材6をロック可能なロック機構が構成されている。
【0023】
なお、スライド部材6には、第1カード1の凹部1c及び第2カード2の一方の凹部2cに係合可能な凸部14aを有し、これらの第1カード1及び第2カード2を保持可能な第1付勢部材14と、第2カード2の他方の凹部2cに係合可能な凸部15aを有し、この第2カード2を保持可能な第2付勢部材15とを設けてある。
【0024】
また、上述したねじりコイルばね9と対向するハウジング3の表面部には、ねじりコイルばね9の一方の脚部9aが常時接触する共通接点10と、ねじりコイルばね9の他方の脚部9bがそれぞれ選択的に接触する第1固定接点11と第2固定接点12とを形成してある。第1固定接点11と第2固定接点12との間の部分は、絶縁領域13となっており、ねじりコイルばね9の脚部9bが、この絶縁領域13に至るまでスライド部材6が移動したとき、このスライド部材6が上述したロック機構でロックされるようになっている。すなわち、絶縁領域13は、スライド部材6のロック位置に対応させて設けてある。
【0025】
上述した可動接点を形成するねじりコイルばね9と、共通接点10と、第1固定接点11及び第2固定接点12と、絶縁領域13とによって、スライド部材6が、所定の排出位置とロック位置との間にあることを検出可能な、また、ロック位置にあることを検出可能な、さらに、オーバーストローク位置にあることを検出可能な検出手段が構成されている。
【0026】
また、本実施形態は、スライド部材6を除いた図4及び図6に示すように、第1カード1の側方を案内するガイド部16cを有し、ハウジング3の両側壁間に位置するカード挿抜経路上に配置されるとともに、第2カード2の挿入に伴って押し下げられるガイド部材16を備えている。
【0027】
このガイド部材16は、第1カード1の接触部1bと接触可能な第1コンタクト端子4の凸部4aを突出可能にさせる例えば複数の窓部16aを有し、ハウジング3に回動可能に取り付けられる例えば平板から成る板状部16bを含み、この板状部16bにガイド部16cを固設してある。
【0028】
また、本実施形態は、第2カード2の挿入に伴って、この第2カード2と第1コンタクト端子4とが接触しないように、第1コンタクト端子4を押し下げるカム機構を備えている。
【0029】
このカム機構は、上述したガイド部材16の板状部16bと、この板状部16bに固設され、第2カード2によって押圧されるカム部16dとによって構成されている。上述した第1カード1を案内するガイド部16cは、例えばカム部16dの側面に形成されている。
【0030】
[本実施形態への第1カード挿入動作]
図7は本実施形態に第1カードが挿入される直前の状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図、図8は図7に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図である。図9は本実施形態に第1カードが挿入された状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図、図10は図9に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図、図11は図9のB−B断面拡大図である。図12は本実施形態の所定の装着部に第1カードが装着された状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図、図13は図12に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図、図14は図12のC−C断面拡大図である。図15は第1カードの排出に際し、図12に示す状態からスライド部材をオーバーストロークさせた状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図、図16は図15に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図、図17は図15のD−D断面拡大図である。
【0031】
図7に示すように、幅狭肉薄で長いカードである第1カード1の挿入前にあっては、スライド部材6は図示しない付勢部材の付勢力によってカード排出位置に保持されている。このとき、ハウジング3に取り付けられた摺動ピン7の先端部7aはハートカム8の往路8aの基端に位置している。また、図8に示すように、ガイド部材16の板状部16bは、ハウジング3の表面部とほぼ平行な状態に保持され、第1コンタクト端子4の凸部14aのそれぞれは板状部16に形成された窓部16aのそれぞれから突出された状態に保持される。また、可動接点を形成するねじりコイルばね9の脚部9aは共通接点10に接触し、脚部9bは第1固定接点11に接触した状態に保たれる。
【0032】
このような状態において、第1カード1がハウジング3の挿入口3aから挿入されると、図9〜11に示すように、この第1カード1の先端部1aがスライド部材6内に入り込み、このスライド部材6の表面部がガイド部6aによって案内され、第1カード1の先端部1aがスライド部材6の第1係合部6bに係合する。このとき、スライド部材6に設けられた付勢部材14は、第1カード1の側部の凹部14aに係合する。すなわち、第1カード1は、スライド部材6に設けられた第1付勢部材14によって保持された状態になる。
【0033】
この状態から、第1カード1が押し込まれると、第1カード1の先端部1aによってスライド部材6が装置の奥側に向かって移動し、第1カード1の先端部1aは図13に示すように、ガイド部材16のガイド部16cによって両側部が案内され、これに伴って摺動ピン7の先端部7aがハートカム8の往路8aからロック部8cまで摺動し、図12に示すように、このロック部8cにおいて摺動ピン7が係止され、スライド部材6の移動が停止する。すなわち、スライド部材6はロック位置に至る。この間、第1カード1は第1付勢部材14によって保持される。
【0034】
また、スライド部材6が上述のようにロック位置まで移動する間、ねじりコイルばね9の脚部9aが共通接点10上を摺動し、脚部9bが第1固定接点11上を摺動し、スライド部材6がロック位置に至ったとき、ねじりコイルばね9の脚部9bが第1固定接点11から離脱し、絶縁領域13と接触する。すなわち、スライド部材6がカード排出位置からロック位置に至る前までは、ねじりコイルばね9を介して共通接点10と第1固定接点11が導通してオンとなり、スライド部材6がロック位置に至ったとき、ねじりコイルばね9の脚部9bが絶縁領域13に接触することによりオフとなる。このオフによってスライド部材6がロック位置にあることが検出される。
【0035】
上述のように、スライド部材6がロック位置に保持されたとき、すなわち第1カード1がハウジング3の所定の装着部3bに装着されたとき、第1カード1の接触部1bと第1コンタクト端子4の凸部4aとが接触し、この第1カード1に対する信号の送受信が可能となる。
【0036】
また、このように第1カード1が所定の装着部3bに保持されている状態から排出されるときには、再び第1カード1が奥側に向かって押し込まれる。これによってスライド部材6がオーバーストロークし、図15に示すように、摺動ピン7の先端部7aはハートカム8のロック部8cから離脱して復路8bに進入し、スライド部材6のロックが解除される。また、図16に示すように、ねじりコイルばね9の脚部9aは共通接点10上を摺動するものの、脚部9bは絶縁領域13から離脱して第2固定接点12上を摺動する。これにより、ねじりコイルばね9を介して、共通接点10と第2固定接点12とが導通し、オンとなる。すなわち、スライド部材6がロック解除され、オーバーストローク位置にあることが検出される。
【0037】
このように、スライド部材6をオーバーストロークさせている状態から、第1カード1に加えていた押し込み力を弱めると、図示しない付勢部材の付勢力によってスライド部材6は、挿入口3a方向に、すなわちカード排出方向に移動し、このスライド部材6によって第1カード1が排出され、上述した図9〜11に示す状態に復帰する。この間、摺動ピン7の先端部7aはハートカム8の復路8b上を摺動し、往路8aの基端に至る。また、ねじりコイルばね9の脚部9aは共通接点10上を摺動し、脚部9bは第2固定接点12に接触している状態から、絶縁領域13に接触する状態となり、さらに、第1固定接点11に接触する状態となる。すなわち、オンからオフに、さらにオフからオンに変化する。
【0038】
このようにして、カード排出位置まで排出された第1カード1は、その端部を把持して容易に引き抜くことができる。このとき、第1カード1の先端部1aはスライド部材6のガイド部6aから離れ、第1付勢部材14の凸部14aは第1カード1の凹部1cから離脱する。
【0039】
[本実施形態への第2カード挿入動作]
図18は本実施形態に第2カードが挿入される直前の状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図、図19は図18に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図である。図20は本実施形態に第2カードが挿入された状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図、図21は図20に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図、図22は図20のE−E断面拡大図である。図23は本実施形態の所定の装着部に第2カードが装着された状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図、図24は図23に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図、図25は図23のF−F断面拡大図である。図26は第2カードの排出に際し、図23に示す状態からスライド部材をオーバーストロークさせた状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図、図27は図26に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図、図28は図26のG−G断面拡大図である。
【0040】
図19,20は、第1カード1に比べて幅広肉厚で短いカードである第2カード2の挿入前の状態を示しているが、このときのスライド部材6の位置、摺動ピン7とハートカム8との係合関係、第1コンタクト端子14の凸部14aとガイド部材16の板状部16bの配置関係、及びねじりコイルばね9と、共通接点10及び第1固定接点11との配置関係は、上述した図7,8に示したものと同じである。
【0041】
このような状態において、第2カード2がハウジング3の挿入口3aから挿入されると、図20〜22に示すように、第2カード2の先端部2aがスライド部材6の第2係合部6cに係合する。このときスライド部材6に設けられた付勢部材14の凸部14aは、第2カード2の一方の側部の凹部2cに係合し、付勢部材15の凸部15aは第2カード2の他方の側部の凹部2cに係合する。すなわち、第2カード2は、スライド部材6に設けられた第1付勢部材14及び第2付勢部材15によって保持された状態になる。
【0042】
この状態から第2カード2が押し込まれると、第2カード2の先端部2aによってスライド部材6が装置の奥側に向かって移動し、第2カード2は、ガイド部材16のカム部16dに係合してこのカム部16dを介して板状部16bを下方に回動させる。すなわち、板状部16bの回動によって第2カード2の接触部2bと第1コンタクト端子14の凸部14aとが接触しないように保持される。また、スライド部材6の移動とともに、摺動ピン7の先端部7aがハートカム8の往路8aからロック部8cまで摺動し、図23に示すように、このロック部8cにおいて摺動ピン7が係止され、スライド部材6の移動が停止する。すなわち、スライド部材6はロック位置に至る。この間、第2カード2は、第1付勢部材14及び第2付勢部材15によって保持される。
【0043】
このようにスライド部材6がロック位置まで移動する間の、及びロック位置に至ったときのねじりコイルばね9の脚部9a,9bと、共通接点10、第1固定接点11、絶縁領域13との接触関係は、上述と同じであり、スライド部材6がカード排出位置からロック位置に至るまではオンとなり、ロック位置に至ったときオフとなる。
【0044】
スライド部材6がロック位置に保持されたとき、すなわち第2カード2がハウジング3の所定の装着部3bに装着されたとき、第2カード2の接触部2bと第2コンタクト端子5とが接触し、この第2カード2に対する信号の送受信が可能となる。
【0045】
また、このように第2カード2が所定の装着部3bに保持されている状態から、排出されるときには、再び第2カード2が装置の奥側に押し込まれる。これによってスライド部材6がオーバーストロークし、図26に示すように、摺動ピン7の先端部7aはハートカム8のロック部8cから離脱して復路8bに進入し、スライド部材6のロックが解除される。また、図27に示すように、ねじりコイルばね9を介して、共通接点10と第2固定接点12とが導通し、オンとなる。すなわち、スライド部材6がロック解除され、オーバーストローク位置にあることが検出される。
【0046】
このように、スライド部材6をオーバーストロークさせている状態から、第2カード2に加えていた押し込み力を弱めると、上述したように図示しない付勢部材によってスライド部材6は、カード排出方向に移動し、このスライド部材6によって第2カード2が排出され、上述した図20〜22に示す状態に復帰する。
【0047】
このようにしてカード排出位置まで排出された第2カード2は、その端部を把持して容易に引き抜くことができる。このとき、第1付勢部材14の凸部14a及び第2付勢部材15の凸部15aは、第2カード2の両側部の凹部2cからそれぞれ離脱する。
【0048】
[本実施形態の効果]
以上のように構成した本実施形態によれば、ガイド部材16のガイド部16cによって幅狭肉薄の第1カード1を案内し、挿入された第1カード1の所定の装着部3b方向への移動、及び所定の装着部3bに装着された第1カード1の排出方向への移動を円滑に行なわせることができる。また、第2カード2が挿入されたときには、ガイド部材16の板状部16bが押し下げられることにより、このガイド部16cによる第2カード2の移動に対する規制を除くことができる。また、ガイド部材16は、ハウジング3の両側壁間に位置するカード挿抜経路上に配置されており、したがって、ハウジング3の側壁から進退する部材を設けることなく幅狭肉薄のカードである第1カード1を案内できる。これによって、装置の幅寸法を小さくすることができ、装置の小型化を実現させることができる。また、比較的大きな配置空間を形成し得るカード挿抜経路上にガイド部材16を配置すればよいので、このガイド部材16の組み込み作業を簡単に行なうことができる。
【0049】
また、ガイド部材16が、板状部16bと、この板状部16bに固設されるガイド部16cを含む簡単な構成であるので、このガイド部材16の製作が簡単である。
【0050】
また、スライド部材6のガイド部6aによって第1カード1の厚さ方向に位置する面部、すなわち表面部も案内される。これによって、より精度の良い第1カード1の案内を実現させることができる。
【0051】
また、例えばスライド部材6の第1係合部6bと第2係合部6cとの間隔を、第1カード1の長さ寸法L1と第2カード2の長さ寸法L2の差にほぼ等しく設定すれば、ハウジング3の所定の装着部3bに第1カード1を装着させたときにハウジング3の挿入口3aから外に出るこの第1カード1の端部の長さ寸法と、ハウジング3の所定の装着部3bに第2カード2を装着させたときにハウジング3の挿入口3aから外に出るこの第2カード2の端部の長さ寸法とをほぼ同じ寸法とすることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、短いカードである第2カード2が押し込まれた際には、ガイド部材16の板状部16b及びカム部16dを含むカム機構によって第1コンタクト端子4が第2カード2の接触部2bと接触しないように押し下げられる。すなわち、短いカードである第2カード2と、本来接触させてはならない長いカードである第1カード1に関連して設けられる第1コンタクト端子4との接触を防ぐことができ、このような接触による誤動作の発生を防止できる。これによって信頼性の高いカード用コネクタ装置を実現できる。また、第1コンタクト端子4と第2コンタクト端子5とを接近させて配置させることによる装置の小型化も実現可能である。
【0053】
また、カム機構が、ガイド部材16の一部である板状部16bと、この板状部16bに固設されるカム部16dを含む簡単な構成であるので、このカム機構の製作が容易である。
【0054】
また、本実施形態は、所定の装着部3bに装着された第2カード2を排出させるために、第2カード2を押し込んでスライド部材6をオーバーストロークさせた際でも、上述したカム機構によって第2カード2と第1コンタクト端子4との接触を生じることがない。
【0055】
また、可動接点を形成するねじりコイルばね9と、共通接点10と、第1固定接点11及び第2固定接点12と、絶縁領域13とを含み、スライド部材6が、所定の排出位置とロック位置との間にあることを検出可能な、また、ロック位置にあることを検出可能な、さらに、オーバーストローク位置にあることを検出可能な検出手段を備えたことから、この検出手段により、スライド部材6がロック位置にあることが、また、オーバーストローク位置にあることが、さらに、これらの両位置以外の位置にあることが検出されるので、第1カード1及び第2カード2に対する信号の送受信制御を高精度に行なうことができ、この点でも高い信頼性を確保することができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、ねじりコイルばね9と、共通接点10、第1固定接点11、第2固定接点12、及び絶縁領域13との配置関係を、スライド部材6のロック位置でオフとなり、オーバーストローク位置でオンとなり、それ以外の位置でオンとなる関係に構成してあるが、これとは逆にスライド部材6のロック位置でオンとなり、オーバーストローク位置でオフとなり、それ以外の位置でオフとなる関係に、ねじりコイルばね9と、共通接点10と、ねじりコイルばね9の脚部9bが接触する固定接点及び絶縁領域とを配置した構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るカード用コネクタ装置の一実施形態に使用される第1カードを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は側面図、(d)図は裏面図である。
【図2】本発明に係るカード用コネクタ装置の一実施形態に使用される第2カードを示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は側面図、(d)図は裏面図である。
【図3】本実施形態の構成を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図である。
【図4】図3に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図である。
【図5】図3のA−A断面拡大図である。
【図6】本実施形態に備えられるガイド部材を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は側面図である。
【図7】本実施形態に第1カードが挿入される直前の状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図である。
【図8】図7に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図である。
【図9】本実施形態に第1カードが挿入された状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図である。
【図10】図9に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図である。
【図11】図9のB−B断面拡大図である。
【図12】本実施形態の所定の装着部に第1カードが装着された状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図である。
【図13】図12に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図である。
【図14】図12のC−C断面拡大図である。
【図15】第1カードの排出に際し、図12に示す状態からスライド部材をオーバーストロークさせた状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図である。
【図16】図15に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図である。
【図17】図15のD−D断面拡大図である。
【図18】本実施形態に第2カードが挿入される直前の状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図である。
【図19】図18に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図である。
【図20】本実施形態に第2カードが挿入された状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図である。
【図21】図20に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図である。
【図22】図20のE−E断面拡大図である。
【図23】本実施形態の所定の装着部に第2カードが装着された状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図である。
【図24】図23に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図である。
【図25】図23のF−F断面拡大図である。
【図26】第2カードの排出に際し、図23に示す状態からスライド部材をオーバーストロークさせた状態を示す図で、特にカバー部材を除いた状態を示す平面図である。
【図27】図26に示す状態からスライド部材を除いた状態を示す平面図である。
【図28】図26のG−G断面拡大図である。
【符号の説明】
【0058】
1 第1カード
1a 先端部
1b 接触部
1c 凹部
2 第2カード
2a 先端部
2b 接触部
2c 凹部
3 ハウジング
3a 挿入口
3b 所定の装着部
4 第1コンタクト端子
4a 凸部
5 第2コンタクト端子
6 スライド部材
6a ガイド部
6b 第1係合部
6c 第2係合部
6d 取り付け部
7 摺動ピン(ロック機構)
7a 先端部
8 ハートカム(ロック機構)
8a 往路
8b 復路
8c ロック部
9 ねじりコイルばね(検出手段)
9a 脚部
9b 脚部
10 共通接点(検出手段)
11 第1固定接点(検出手段)
12 第2固定接点(検出手段)
13 絶縁領域
14 第1付勢部材
14a 凸部
15 第2付勢部材
15a 凸部
16 ガイド部材
16a 窓部
16b 板状部(カム機構)
16c ガイド部
16d カム部(カム機構)
L1 長さ寸法
L2 長さ寸法
W1 幅寸法
W2 幅寸法
t1 厚さ寸法
t2 厚さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1カードと、この第1カードよりも幅広肉厚で長さの短い第2カードとがそれぞれ選択的に装着可能な所定の装着部を有するハウジングと、上記第1カードの複数の接触部とそれぞれ接触可能な複数の第1コンタクト端子と、上記第2カードの複数の接触部とそれぞれ接触可能な複数の第2コンタクト端子とを備え、
上記第2カードの挿入に伴って、この第2カードと上記第1コンタクト端子とが接触しないように、上記第1コンタクト端子を押し下げるカム機構を備えたことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記カム機構が、上記第1カードの上記接触部と接触可能な上記第1コンタクト端子の凸部を突出可能にさせる窓部を有し回動可能な板状部と、この板状部に固設され、上記第2カードによって押圧されるカム部とを含むことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項3】
上記請求項1または2記載の発明において、
上記第1カード及び上記第2カードを上記所定の装着部から排出させるスライド部材を備えたことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項4】
上記請求項3記載の発明において、
上記第1カード及び上記第2カードが上記所定の装着部に至ったときに、上記スライド部材をロック可能なロック機構を備えるとともに、
上記スライド部材が、所定の排出位置とロック位置との間にあることを検出可能な、また、ロック位置にあることを検出可能な、さらに、オーバーストローク位置にあることを検出可能な検出手段を備えたことを特徴とするカード用コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2008−4433(P2008−4433A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174081(P2006−174081)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】