説明

カーナビゲーション装置

【課題】表示画面に表示される情報と、実際の周囲の道路状況とを対応させて容易に理解することが可能なカーナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】カーナビゲーション装置1は、車両位置検出手段3により検出された車両位置と設定された目的地情報とに基づいて、目的地までの経路検索を行い、車両走行に伴って変化する車両位置に応じて表示画面8に経路案内画像を表示させて車両を目的地まで誘導する機能を備える。カーナビゲーション装置1では、現在の車両位置と次に曲がるべき交差点の位置との距離が所定距離以内である場合において、矢印画像表示手段11が、次に曲がるべき方向に対応する矢印方向の矢印画像を記録手段6より読み出して、撮影手段2により撮影された道路状況画像に重畳表示させて表示手段8に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーナビゲーション装置に関し、より詳細には、車両位置検出手段により検出された車両位置と設定された目的地情報とに基づいて、目的地までの経路検索を行い、該経路検索の結果に従って、車両走行に伴って変化する車両位置に対応する経路案内画像を表示画面に表示させて、車両を目的地まで誘導するカーナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なカーナビゲーション装置では、GPS(Global Positioning System)や、ジャイロセンサなどを組み合わせて車両の位置情報および進行方向情報などを測定するロケータ機能と、ロケータ機能により測定された車両位置などに対応する地図データを地図データベースから読み出して表示画面などに表示させる地図制御機能と、ユーザにより設定された目的地に基づいて、ロケータ機能により測定された車両位置から目的地までの適正な経路検索を行う経路検索機能と、経路検索機能により求められた目的地までの経路に沿って、音声ガイドで案内を行ったり、交差点などにおいて拡大された画像を表示させたりして車両を目的地まで誘導する誘導機能とを有している(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
ユーザによって目的地が設定(入力)されてガイド処理が開始されると、カーナビゲーション装置では、車両位置に該当する地図データなどを表示画面に表示させつつ音声ガイドなどを行うことによって目的地までの経路を案内する。運転者は、表示画面に表示される画像により車両の位置および周囲の道路状況を知ることができ、また交差点の拡大表示や音声ガイドによって、曲がるべき交差点などを予め知ることが可能となる。
【0004】
今日では、記録手段(ハードディスクやメモリカードなど)の記録容量が飛躍的に増大したことから、多くの地図画像データなどを記録することが可能となっている。このため、一般的なカーナビゲーション装置では、車両が交差点に差し掛かった際に、実際の交差点の周囲の状況を再現したコンピュータグラフィックスなどを表示画面に表示させることにより、運転者に周囲の道路状況を知らせて、経路案内を行う手法が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−317955号公報(第3−6頁、第1図参照)
【特許文献2】特開2002−277260号公報(第3−5頁、第2図参照)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】カロッツェリア サイバーナビカタログ '09 Vol.2(2009年5月発行) パイオニア株式会社 23頁−24頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、実際の交差点の周囲の状況を再現したコンピュータグラフィックス画像を表示画面に表示させても、実際の交差点の状況とコンピュータグラフィックス画像とでは、どうしても相違する部分が生じてしまい、必ずしも全ての交差点の案内がわかりやすいものであるとは言えなかった。
【0008】
また、実際の交差点の周囲の状況が変わってしまうと(例えば、目印となる店舗名などが変わってしまうと)、コンピュータグラフィックスとして表示される交差点画像と、実際の交差点の状況とに差異が生じてしまい、運転者に戸惑いなどを与えるおそれがあり得るという問題があった。
【0009】
さらに、交差点に車両が進入する場合における実際の交差点の景色は、車両の進行に伴って動的に変化するのに対して、表示画面に表示されるコンピュータグラフィックス画像は停止表示されたままの状態(静的な状態)であることが多いため、動的に変化する景色と静的に停止表示されたコンピュータグラフィックス画像との整合性を図り、実際の道路状況を理解することは容易ではないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、表示画面に表示される周囲の道路状況の情報と、実際の周囲の道路状況とを容易に対応させて理解することが可能なカーナビゲーション装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るカーナビゲーション装置は、車両位置検出手段により検出された車両位置と設定された目的地情報とに基づいて、目的地までの経路検索を行い、該経路検索の結果に従って、車両走行に伴って変化する車両位置に対応する経路案内画像を表示画面に表示させて、車両を目的地まで誘導するカーナビゲーション装置であって、車両の進行方向側の道路状況を撮影する撮影手段と、該撮影手段により撮影された道路状況画像を表示するための前記表示画面を有する表示手段と、前記車両位置検出手段により検出された現在の車両位置と前記経路検索により求められた次に曲がるべき交差点の位置との距離を求める距離検索手段と、様々な矢印方向からなる複数の矢印画像を記録する記録手段と、前記距離検索手段により求められた距離が所定距離以内である場合に、次に曲がるべき方向に対応する矢印方向の矢印画像を前記記録手段より読み出して、前記撮影手段により撮影された道路状況画像に重畳表示させて前記表示画面に表示させる矢印画像表示手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るカーナビゲーション装置では、車両の進行方向側の道路状況を撮影する撮影手段が設けられ、表示画面に撮影手段によって撮影された道路状況画像が表示される。つまり、従来のカーナビゲーション装置のように、コンピュータグラフィックスなどによって人工的に作り出した画像(虚像)を用いて交差点の周囲の道路状況を表示画面に表示するのではなく、運転者が視認している車両前方側の道路状況がそのまま撮影手段で撮影されて表示されることになる。このため、本発明に係るカーナビゲーション装置では、表示画面に表示される道路状況画像と実際の車両前方側の道路状況とが一致することになり、従来のカーナビゲーション装置のように、表示画面に映し出される虚像と、実際の車両前方側の道路状況とを頭の中でマッチングさせる作業を行う必要がなくなるので、表示画面に表示される画像に基づいて交差点などの状況を違和感なくかつ瞬時に判断することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係るカーナビゲーション装置では、実際に車両前方を撮影した道路状況画像に対して、次に曲がるべき交差点の方向が矢印画像により重畳表示されるため、運転者に認識させるべき画像情報量を低減させることができ、運転者は表示手段を一見しただけで矢印画像により容易かつ瞬時に曲がるべき方向を判断することが可能となる。
【0014】
さらに、本発明に係るカーナビゲーション装置では、撮影手段で撮影された画像が表示手段に表示されることになるため、従来のカーナビゲーション装置のように、道路状況を2次元または3次元で示した地図画像データを記録手段などに記録させる必要がなくなる。このため、カーナビゲーション装置の記録手段などに記録させておくべきデータ量を大幅に低減させることが可能になる。さらに、地図画像データを記録手段などに記録させる必要がなくなるため、道路の周囲の状況が変更された場合であっても、従来のカーナビゲーション装置のように定期的に地図画像データを更新する必要性が低くなり、地図画像データの更新に伴う更新負担を低減させることが可能となる。
【0015】
また、上記カーナビゲーション装置において、前記記録手段は、前記矢印画像の矢印方向毎に、矢印の大きさが異なる複数の矢印画像を記録し、前記矢印画像表示手段は、前記距離検索手段により求められた距離が前記所定距離である場合には、次に曲がるべき方向に対応する矢印方向の矢印画像であって矢印の大きさが大きな矢印画像を前記記録手段より読み出して、前記撮影手段により撮影された道路状況画像に重畳表示させて前記表示画面に表示させ、車両走行に伴って前記距離が短くなるに従って、矢印の大きさが段階的に大きくなるように矢印画像を前記記録手段より読み出して、前記撮影手段により撮影された道路状況画像に重畳表示させて前記表示画面に表示させるものであってもよい。
【0016】
このように、本発明に係るカーナビゲーション装置では、距離検索手段により求められた距離が所定距離である場合において、矢印画像表示手段が、次に曲がるべき方向に対応する矢印方向の矢印画像であって矢印の大きさが大きな矢印画像を記録手段より読み出して、撮影手段により撮影された道路状況画像に重畳表示させて表示画面に表示させ、車両走行に伴って距離が短くなるに従って、矢印の大きさが段階的に大きくなるように矢印画像を記録手段より読み出して、撮影手段により撮影された道路状況画像に重畳表示させて表示画面に表示させる。このため、運転者は、表示画面に表示される矢印画像の矢印方向により、曲がるべき方向を瞬時に判断できると共に、矢印画像の大きさによって、曲がるべき位置までの距離を感覚的に容易に判断することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るカーナビゲーション装置によれば、車両の進行方向側の道路状況を撮影する撮影手段が設けられ、表示画面に撮影手段によって撮影された道路状況画像が表示される。つまり、従来のカーナビゲーション装置のように、コンピュータグラフィックスなどによって人工的に作り出した画像(虚像)を用いて交差点の周囲の道路状況を表示画面に表示するのではなく、運転者が視認している車両前方側の道路状況がそのまま撮影手段で撮影されて表示されることになる。このため、本発明に係るカーナビゲーション装置では、表示画面に表示される道路状況画像と実際の車両前方側の道路状況とが一致することになり、従来のカーナビゲーション装置のように、表示画面に映し出される虚像と、実際の車両前方側の道路状況とを頭の中でマッチングさせる作業を行う必要がなくなるので、表示画面に表示される画像に基づいて交差点などの状況を違和感なくかつ瞬時に判断することが可能となる。
【0018】
また、本発明に係るカーナビゲーション装置では、実際に車両前方を撮影した道路状況画像に対して、次に曲がるべき交差点の方向が矢印画像により重畳表示されるため、運転者に認識させるべき画像情報量を低減させることができ、運転者は表示手段を一見しただけで矢印画像により容易かつ瞬時に曲がるべき方向を判断することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明に係るカーナビゲーション装置では、撮影手段で撮影された画像が表示手段に表示されることになるため、従来のカーナビゲーション装置のように、道路状況を2次元または3次元で示した地図画像データを記録手段などに記録させる必要がなくなる。このため、カーナビゲーション装置の記録手段などに記録させておくべきデータ量を大幅に低減させることが可能になる。さらに、地図画像データを記録手段などに記録させる必要がなくなるため、道路の周囲の状況が変更された場合であっても、従来のカーナビゲーション装置のように定期的に地図画像データを更新する必要性が低くなり、地図画像データの更新に伴う更新負担を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に係るカーナビゲーション装置を示した斜視図であって、(a)は正面斜視図を示し、(b)は背面斜視図を示している。
【図2】本実施の形態に係るカーナビゲーション装置の概略構成を示したブロック図である。
【図3】本実施の形態に係るカーナビゲーション装置のCPUにおける処理内容の一例を示したフローチャートである。
【図4】本実施の形態に係るカーナビゲーション装置の表示モニタに表示される画像の一例を示した第1の図である。
【図5】本実施の形態に係るカーナビゲーション装置の表示モニタに表示される矢印画像の画像例を示した図である。
【図6】本実施の形態に係るカーナビゲーション装置の表示モニタに表示される画像の一例を示した第2の図である。
【図7】本実施の形態に係るカーナビゲーション装置の表示モニタに表示される画像の一例を示した第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るカーナビゲーション装置の一例を、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1(a)は、本実施の形態に係るカーナビゲーション装置の正面斜視図を示し、(b)は背面斜視図を示している。本実施の形態に係るカーナビゲーション装置1は、いわゆるPND(Portable Navigation Deviceまたは、Personal Navigation Device)であり、インストルメントパネルなどに設置台15を用いて着脱可能に取り付けることが可能となっている。カーナビゲーション装置1は、正面に表示モニタ(表示手段)8が設けられており、さらに側部に様々なボタン(入力部7)が設けられている。また、カーナビゲーション装置1の背面には、カメラ(撮影手段)2が設けられている。通常、PNDはインストルメントパネルに載置され、表示モニタ8が車室側を臨むように設置されるため、背面に設けられたカメラ2により、車両前方側の道路状況(車両進行方向の様子)を撮影することが可能となっている。
【0023】
図2は、本実施の形態に係るカーナビゲーション装置1の概略構成を示したブロック図である。カーナビゲーション装置1は、カメラ2と、GPS(Global Positioning System:車両位置検出手段)3と、ジャイロセンサ4と、車速センサ5と、データ記録部(記録手段)6と、入力部7と、表示モニタ(表示手段)8と、音声出力部9と、ナビゲーション処理部10とを備えている。ここで、ロケータ機能として、GPS3とジャイロセンサ4と車速センサ5とが機能し、地図制御機能として、カメラ2とナビゲーション処理部10とが機能し、経路検索機能として、データ記録部6とナビゲーション処理部10とが機能し、誘導機能として表示モニタ8と音声出力部9とナビゲーション処理部10とが機能する。
【0024】
カメラ2は、上述したようにカーナビゲーション装置1の背面側に設けられており、車両前方の様子を撮影することが可能となっている。カメラ2によって撮影された映像は、ナビゲーション処理部10に伝達された後に、表示モニタ8へと出力される。GPS3は、人工衛星により発信される複数の電波を受信することによって、電波の受信位置における位置情報(座標情報:緯度および経度)を検出する役割を有している。また、ジャイロセンサ4は、車両の回転角速度、すなわち、旋回角を検出する機能を有している。GPS3およびジャイロセンサ4により検出された情報はナビゲーション処理部10へと出力される。ナビゲーション処理部10では、GPS3により検出される位置情報と、ジャイロセンサ4により検出された方位情報とを組み合わせることによって、車両の現在位置を精度良く検出することが可能となっている。
【0025】
また、車速センサ5は、車輪の回転に伴ってパルス信号を発信する車速パルス発生器(車両側に設置)30よりパルス信号を検出する役割を有している。車速センサ5において検出されたパルス信号は、ナビゲーション処理部10に出力される。ナビゲーション処理部10では、車速センサ5において検出されたパルス信号の検出タイミングなどに基づいて、車両の進行距離(走行距離)を検出することが可能となっている。
【0026】
データ記録部6は、交差点データファイル、ノードデータファイル、道路データファイル、各地域のホテル,ガソリンスタンド,観光地案内等の施設の情報が記録された施設情報データファイルなどから成るデータベースを備えている。また、データ記録部6には、経路を検索するためのデータの他に、走行する車線を示す走行車線画像(例えば、後述する図4および図6に示される走行車線画像20,23)や、次の交差点における進行方向等を表示するための矢印画像(例えば、後述する図4〜図6に示される矢印画像21,22,24)などの各種データなどが記録される。さらに、データ記録部6には、所定の情報を音声出力部9より出力するための音声データも記録されている。
【0027】
交差点データファイルには、各交差点に関するデータ(交差点データ)が記録されており、ノードデータファイルには、ノード点に関するデータ(ノードデータ)が記録されており、道路データファイルには、道路に関するデータ(道路データ)が記録されている。これらのデータファイルに記録されるデータは位置情報に関連づけられてデータ記録部6に記録されている。このため、ナビゲーション処理部10では、GPS3およびジャイロセンサ4に基づいて求められた位置情報により、位置情報に対応する様々な情報をデータ記録部6から読み出すことが可能となっている。
【0028】
ここで、ノードデータとは、少なくとも道路の位置および形状を構成するデータであり、実際の道路の分岐点(交差点、T字路等を含む)、ノード点、および各ノード点間を連結するリンクを示すデータによって構成されている。また、ノード点には、少なくとも道路における屈曲点の位置が示されている。
【0029】
道路データとは、道路に関する様々な情報を構成するデータであり、例えば、道路自体に関する情報として、幅員、勾(こう)配、カント、バンク、路面の状態、道路の車線数、車線数の減少する地点、幅員の狭くなる地点等を備え、また、コーナに関する情報として、曲率半径、交差点、T字路、コーナの入口等を備え、道路属性に関する情報として、踏切、高速道路出口ランプウェイ、高速道路の料金所、降坂路、登坂路、道路種別(国道、一般道、高速道等)等を備えている。
【0030】
カーナビゲーション装置1では、GPS3等により求められた現在の車両位置の情報に基づいて、位置情報に関連づけられた交差点データ、ノードデータおよび道路データから適切な情報を読み出すことが可能であり、読み出された情報によって、車両がどの道路のどの位置を走行しているのかを判断することが可能となっている。
【0031】
なお、データ記録部6には、一般的なカーナビゲーション装置のデータ記録部に記録されるような地図画像データファイルは記録されていない。後述するように、本実施の形態に係るカーナビゲーション装置1では、カメラ2で撮影された車両前方側の道路状況画像に対して、進行方向等(交差点において曲がる方向)を表示するための矢印画像などを重畳表示させて経路案内を行う。このように、撮影された道路状況画像に基づいて経路案内を行うため、本実施の形態に係るカーナビゲーション装置1では、地図画像データ(2次元の地図データや、3次元の地図データ(交差点の3D画像データや拡大画像データなどを含む))を表示させる必要がなくなり、地図画像データを必ずしもデータ記録部6に記録させる必要がなくなる。
【0032】
入力部7は、カーナビゲーション装置1の側部に設けられたボタンなどが該当する。入力部7は、走行開始時の位置を修正したり、目的地を設定(入力)したりする場合などに用いられる。また、入力部7は、側部に設けられたボタンだけには限定されず、表示モニタ8の表示画面に設けられたタッチパネルにより入力操作などが可能である場合には、タッチパネルなどの操作手段も入力部7に該当することになる。ユーザは、ボタンの押下やタッチパネルの操作により、目的地などの様々な情報の入力やモードの設定などを行うことが可能となっている。なお、入力部7として、カーナビゲーション装置1の本体と別に用意されるキーボード、マウス、バーコードリーダ、ライトペン、遠隔操作用のリモコン(リモートコントロール端末)等を構成要素として採用することも可能である。
【0033】
表示モニタ8は、一般的な液晶表示パネルにより構成されており、上述したようなタッチパネル機能を備える場合には、表示画面の表面層側に静電容量方式のタッチパネルなどが設置されている。表示モニタ8には、操作案内、操作メニュー、操作キーの案内などのタッチパネルによる操作に必要な情報や、現在位置から目的地までの経路情報や、経路に沿った案内情報(次述する矢印画像など)等が表示される。
【0034】
なお、車両の現在位置から目的地までの経路案内に関する情報は、予めデータ記録部6に記録されており、ナビゲーション処理部10の制御により各種の経路案内に関する情報を適切なタイミングで表示モニタ8に出力することが可能となっている。さらに、表示モニタ8は、必ずしも液晶表示パネルには限定されず、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイなどにより構成されるものであってもよい。
【0035】
音声出力部9は、図1に示すように、カーナビゲーション装置1の背面端部内側に設けられたスピーカなどであって、例えば、音声合成装置によって合成された音声から成る案内情報等を出力して、運転者に必要な情報を知らせる役割を有している。なお、音声合成装置によって合成された音声データなどは、予めデータ記録部6に記録されており、ナビゲーション処理部10の制御により音声による案内情報を適切なタイミングでスピーカから出力することが可能となっている。
【0036】
ナビゲーション処理部10は、カーナビゲーション装置1におけるナビゲーション処理を実現するための制御処理を行う役割を有している。ナビゲーション処理部10は、CPU(距離検索手段、矢印画像表示手段)11と、RAM12と、ROM13とを有している。RAM12は、CPU11におけるナビゲーション処理の実行に用いられるワーキングメモリとしての役割を有している。また、ROM13には、CPU11での処理を実現するための様々な制御プログラムが記録されており、例えば、目的地までの経路の検索、経路中の走行案内等を行うための各種のプログラム(例えば、図3に示すフローチャートのような処理内容のプログラムなど)や、そのプログラムを実現するために必要な情報が記録されている。
【0037】
CPU11は、カーナビゲーション装置1におけるナビゲーション処理全体の制御を行う役割を有している。CPU11は、GPS3、ジャイロセンサ4、車速センサ5により検出された情報、カメラ2により撮影された車両前方の映像、および、入力部7においてユーザにより入力された情報を受信することが可能となっている。
【0038】
また、CPU11は、GPS3、ジャイロセンサ4、車速センサ5により受信した情報に基づいて、車両の現在位置および進行方向などを判断し、現在位置などに基づいて該当する情報をデータ記録部6に記録される交差点データファイル、ノードデータファイル、道路データファイル、施設情報データファイルなどから抽出して、車両位置の補正や、経路案内処理などを行う。例えば、求められた車両位置と道路データファイルやノードデータファイルに記録される道路に関する情報との比較を行うことにより、車両が道路の存在しない経路を走行していると判断され得る場合には、道路データファイルやノードデータファイルから判定される道路位置へと車両位置を補正する処理を行う。
【0039】
さらに、CPU11は、入力部7により設定された目的地などの情報に基づいて、車両の現在位置から目的地までの経路検索を行い、検索された経路に従って経路誘導(経路案内)を行う。例えば、後述するように、ノードデータに基づいて右折または左折を行うべき交差点に差し掛かったと判断される場合、CPU11は、表示モニタ8に対して曲がる方向を示した矢印画像をカメラ2で撮影された画像に重畳表示させ(例えば、図4(b)および図6(a)(b))、また、必要に応じて音声出力部9により曲がる方向の音声案内などを出力することによって、経路誘導を行う。さらに、経路検索により求めた案内順序を車両が外れてしまった場合には、リルート処理を行うことにより、外れた経路から目的地までの案内経路を再度検索して、改めて誘導を行う。
【0040】
次に、車両が交差点に差し掛かった場合において、ナビゲーション処理部10が、交差点の直前で表示モニタ8に矢印画像を重畳表示させて、経路誘導を行う処理を、表示モニタ8の表示画面を示しつつ説明する。
【0041】
図3は、ナビゲーション処理部10における経路案内処理、特に所定の交差点で右折または左折の誘導を行う場合の経路案内処理を示したフローチャートである。図3に示すフローチャートの処理には、ナビゲーション処理部10により経路検索処理が行われて経路案内が開始された後の処理内容が示されている。
【0042】
図4(a)は、車両が道路に沿って真っ直ぐに走行している状態における表示モニタ8の表示画面を示している。表示モニタ8の表示画面には、車両の走行している車線を示すための走行車線画像20が重畳表示されている。通常、この走行車線画像20は、カメラ2で撮影された車両進行方向側の道路状況画像に対応して、車両前方に表示される走行車線を強調するようにして重畳表示される。
【0043】
経路案内が開始されて、少なくとも走行位置から70m以内に右折すべき交差点や左折すべき交差点が存在しない場合には、図4(a)に示すように、道路に沿って走行することを促すため、カメラ2により撮影された車両前方側の道路状況画像に対して、車両が走行している車線を示す走行車線画像20が重畳表示されて表示モニタ8に表示される(ステップS.1)。
【0044】
次に、CPU11は、既に求められている経路案内に従って走行した場合において、GPS3等により求められた現在の車両位置から70m以内の位置に、次に曲がるべき交差点(右折すべき交差点や左折すべき交差点など)が存在するか否かを判断する(ステップS.2)。右折等すべき交差点が存在しない場合(ステップS.2においてNoの場合)、CPU11は、再度処理をステップS.1に戻して、カメラ2により撮影された画像に対して、走行車線画像20を重畳表示させた画像を表示モニタ8に表示させる処理を行う(ステップS.1)。
【0045】
一方で、70m以内に右折等すべき交差点が存在する場合(ステップS.2においてYesの場合)、CPU11は、図4(b)に示すように、カメラ2によって撮影された画像に対して曲がるべき方向を指す小さめの矢印画像21と走行車線画像20とを重畳表示させて表示モニタ8に表示させる(ステップS.3)。図4(b)においては、左折する場合に表示される左向きの矢印画像21が示されている。なお、この矢印画像は、曲がるべき交差点位置までの距離に応じてその大きさが異なっている。
【0046】
図5(a)〜(f)には、現在位置から曲がるべき交差点位置までの距離に応じて異なる矢印画像を示している。図5(a)は交差点位置までの距離が70mから30mまでの距離に該当する場合に表示される左折用の矢印画像であり、図5(b)は交差点位置までの距離が70mから30mまでの距離に該当する場合に表示される右折用の矢印画像である。また、図5(c)は交差点位置までの距離が30mから5mまでの距離に該当する場合に表示される左折用の矢印画像であり、図5(d)は交差点位置までの距離が30mから5mまでの距離に該当する場合に表示される右折用の矢印画像である。さらに、図5(e)は交差点位置までの距離が5mから0mまでの距離に該当する場合に表示される左折用の矢印画像であり、図5(f)は交差点位置までの距離が5mから0mまでの距離に該当する場合に表示される右折用の矢印画像である。
【0047】
このように、表示される矢印画像の方向とその大きさとにより、運転者は曲がるべき方向とその交差点位置までの距離を一瞬にして判断することが可能となる。また、矢印画像がカメラ2により撮影された道路状況画面に重畳表示されるため、従来のカーナビゲーション装置に用いられるようなコンピュータグラフィックス画面を表示させるよりも、運転者が違和感を感じることがなくなり、さらに曲がるべき方向および距離を瞬時に判断することが可能となる。
【0048】
なお、矢印画像は、カメラ2に表示される画像の表示の邪魔にならないように、矢印の内部が透過された矢印画像21が用いられている。また、交差点位置までの距離が70m〜30mの場合には、曲がるべき交差点位置が現在位置から遠いため、走行車線画像20の先端部分は、カメラ2により撮影された画像の水平線位置まで伸びた画像が用いられる。さらに、CPU11は、必要に応じて音声出力部9より合成音による経路案内に関するアナウンス(例えば、「70m先、左方向です。」などの音声案内)を行う。
【0049】
その後、CPU11は、GPS3などにより求められた現在位置と、既に検索された経路検索の結果とに基づいて、次に曲がるべき交差点位置までの距離が30m以内であるか否かを判断する(ステップS.4)。曲がるべき交差点位置までの距離が30m以内でない場合(ステップS.4においてNoの場合)、CPU11は、再度処理をステップS.3に戻して、カメラ2により撮影された画像に対して、小さめの矢印画像21と走行車線画像20とを重畳表示させた画像を表示モニタ8に表示させる(ステップS.3)。
【0050】
一方で、曲がるべき交差点位置までの距離が30m以内である場合(ステップS.4においてYesの場合)、CPU11は、図6(a)に示すように、矢印画像22と、走行車線画像23とを、カメラ2により撮影された画像に対して重畳表示させる(ステップS.5)。図6(a)に示す矢印画像22は、図4(b)に示した矢印画像21よりも大きめの矢印画像(中位の大きさの矢印画像)であり、図5(c)に示した矢印画像に該当する画像である。このように矢印の大きさが大きくなることにより、運転者は曲がるべき交差点位置が近づいてきたことを容易に認識することが可能となる。また、CPU11は、必要に応じて音声出力部9より合成音による経路案内に関するアナウンス(例えば、「30m先、左方向です。」などの音声案内)を行う。
【0051】
さらに、走行車線画像23には、その先端位置が、図4(b)に示す位置(カメラ2により撮影された画像の水平線位置)よりも下側にシフトした画像が用いられる。これは、交差点位置が近づいてくることにより、次に曲がるべき交差点位置がカメラ2により撮影された水平線位置よりも下側へと移動するため、この移動に対応させることにより、視覚的な違和感を少なくしたものである。
【0052】
その後、CPU11は、GPS3などにより求められた現在位置と、既に検索された経路検索情報とに基づいて、曲がるべき交差点位置までの距離が5m以内であるか否かを判断する(ステップS.6)。曲がるべき交差点位置までの距離が5m以内でない場合(ステップS.6においてNoの場合)、CPU11は、再度処理をステップS.5に戻して、カメラ2により撮影された画像に対して、矢印画像22と走行車線画像23とを重畳表示させた画像を表示モニタ8に表示させる(ステップS.5)。
【0053】
一方で、曲がるべき交差点位置までの距離が5m以内である場合(ステップS.6においてYesの場合)、CPU11は、図6(b)に示すように、矢印画像24を、カメラ2により撮影された画像に対して重畳表示させる(ステップS.7)。図6(b)に示す矢印画像24は、図4(b)に示した矢印画像21よりも、さらに、図6(a)に示した矢印画像22よりも大きい矢印画像(大きめの矢印画像)であり、図5(e)に示した矢印画像に該当する画像である。このように矢印の大きさがさらに大きくなることにより、運転者は曲がるべき交差点位置の直前位置まで車両が近づいてきたことを容易に認識することが可能となる。
【0054】
なお、現在位置から交差点位置までの距離が5m以内である場合には、走行車線画像は表示されない。交差点位置までの距離が短いため、カメラ2により撮影された画像において必ずしも走行車線画像を示す必要がないためである。さらに、表示モニタ8において走行車線画像を示さずに矢印画像24だけを示すことにより、曲がるべき交差点位置に車両が差し掛かったことをより顕著に運転者に認識させることができる。また、CPU11は、必要に応じて音声出力部9より合成音による経路案内に関するアナウンス(例えば、「まもなく、左方向です。」などの音声案内)を行う。
【0055】
そして、CPU11は、所定の交差点で右折または左折の誘導を行う場合の経路案内処理を一端終了し、その後、目的地に到達するまでの間に、図3に示した処理を繰り返し実行する。なお、ステップS.7の処理の後に、車両が誘導案内に従って交差点を曲がった場合には、その後に図3に示す処理をそのまま繰り返し実行することになる。しかしながら、車両が誘導案内に示した交差点と異なる交差点で曲がってしまった場合や、曲がらずにそのまま直進してしまった場合、CPU11は、リルート処理により再度経路検索を行い、求められた経路検索の結果に従って、図3に示した処理を繰り返し実行することになる。
【0056】
以上、説明したように、本実施の形態に係るカーナビゲーション装置1では、経路検索の結果とGPS3等により求められた現在位置情報とによって、曲がるべき交差点が現在位置から所定距離(例えば、70m以内)まで近づいたと判断される場合に、CPU11が、曲がるべき交差点までの距離に応じて、カメラ2により撮影された道路状況画像に対して異なる大きさの矢印画像を重畳表示させた画像を表示モニタ8に表示させる。このため、運転者は、表示モニタ8に表示された矢印画像の大きさによって、交差点位置までの距離を感覚的に容易に判断することが可能になると共に、矢印方向によって曲がるべき方向を瞬時に認識することが可能となる。
【0057】
さらに、表示モニタ8には、交差点における周囲の状況をコンピュータグラフィックスを用いて人工的に作り出した画像(虚像)ではなく、車両前方の実際の状況がカメラ2により撮影されて表示されるので、表示モニタ8に表示される画像(実際の画像)と実際の車両前方の状況とが一致することになる。このため、従来のカーナビゲーション装置のように、表示モニタ8に映し出される虚像と、実際の車両前方の状況とを頭の中でマッチングさせる作業を行う必要がなくなるので、表示モニタ8に表示される画像による状況判断を違和感なくかつ瞬時に行うことが可能となる。
【0058】
さらに、本実施の形態に係るカーナビゲーション装置1では、カメラ2で撮影された画像が表示モニタ8に表示されることになるため、従来のカーナビゲーション装置のように、コンピュータグラフィックスを用いて2次元または3次元で示した地図画像データをデータ記録部6に記録させる必要がない。このため、カーナビゲーション装置1において記録させておくべきデータ量を低減させることが可能になるとともに、道路の周囲の状況が変更された場合であっても、従来のカーナビゲーション装置のように定期的に地図画像データを更新する負担を低減させることが可能となる。
【0059】
以上、本発明に係るカーナビゲーション装置の一例を、図面を用いて詳細に説明したが、本発明に係るカーナビゲーション装置は、上述した実施の形態に係るカーナビゲーション装置1には限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、上述した実施の形態においては、図5(a)〜(f)に示したように、曲がるべき交差点位置に応じて3段階の大きさの異なる矢印画像を表示させる場合について説明を行ったが、表示される矢印画像の大きさは3段階の異なる大きさの画像には限定されず、2つの大きさの異なる矢印画像であってもよく、また4段階以上に細分化された複数の矢印画像を用いて、段階的に表示させる構成とするものであってもよい。
【0061】
また、矢印方向は、図5(a)〜(f)に示したように、右折方向と左折方向との2種類には限定されない。例えば、交差点が三叉路、五叉路、六叉路などである場合には、右折方向と左折方向との2種類では曲がるべき方向を正確に指し示すことができない場合もあるので、図7に示すように斜め方向を示す矢印画像25などを用いて曲がるべき方向を表示モニタ8に表示させる構成とするものであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 …カーナビゲーション装置
2 …カメラ(撮影手段)
3 …GPS(車両位置検出手段)
4 …ジャイロセンサ
5 …車速センサ
6 …データ記録部(記録手段)
7 …入力部
8 …表示モニタ(表示手段)
9 …音声出力部
10 …ナビゲーション処理部
11 …(ナビゲーション処理部の)CPU(距離検索手段、矢印画像表示手段)
12 …(ナビゲーション処理部の)RAM
13 …(ナビゲーション処理部の)ROM
15 …設置台
20、23 …走行車線画像
21、22、24、25 …矢印画像
30 …車速パルス発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両位置検出手段により検出された車両位置と設定された目的地情報とに基づいて、目的地までの経路検索を行い、該経路検索の結果に従って、車両走行に伴って変化する車両位置に対応する経路案内画像を表示画面に表示させて、車両を目的地まで誘導するカーナビゲーション装置であって、
車両の進行方向側の道路状況を撮影する撮影手段と、
該撮影手段により撮影された道路状況画像を表示するための前記表示画面を有する表示手段と、
前記車両位置検出手段により検出された現在の車両位置と前記経路検索により求められた次に曲がるべき交差点の位置との距離を求める距離検索手段と、
様々な矢印方向からなる複数の矢印画像を記録する記録手段と、
前記距離検索手段により求められた距離が所定距離以内である場合に、次に曲がるべき方向に対応する矢印方向の矢印画像を前記記録手段より読み出して、前記撮影手段により撮影された道路状況画像に重畳表示させて前記表示画面に表示させる矢印画像表示手段と
を備えることを特徴とするカーナビゲーション装置。
【請求項2】
前記記録手段は、前記矢印画像の矢印方向毎に、矢印の大きさが異なる複数の矢印画像を記録し、
前記矢印画像表示手段は、前記距離検索手段により求められた距離が前記所定距離である場合には、次に曲がるべき方向に対応する矢印方向の矢印画像であって矢印の大きさが大きな矢印画像を前記記録手段より読み出して、前記撮影手段により撮影された道路状況画像に重畳表示させて前記表示画面に表示させ、車両走行に伴って前記距離が短くなるに従って、矢印の大きさが段階的に大きくなるように矢印画像を前記記録手段より読み出して、前記撮影手段により撮影された道路状況画像に重畳表示させて前記表示画面に表示させること
を特徴とする請求項1に記載のカーナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−149835(P2011−149835A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11575(P2010−11575)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】