説明

カーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法

この発明は、カーボンナノチューブ自体が有するすぐれた電気伝導と熱伝導特性並びに強度特性をできるだけ活用し、ジルコニアなどの耐腐食性、耐熱性を有するセラミックスの特徴を生かしたカーボンナノチューブ分散複合材料とその製造方法の提供を目的とし、長鎖状のカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブのみを予め放電プラズマ処理したものを含む)を焼成可能なセラミックスや金属粉体とボールミルや遊星ミルなどで混練分散し、さらに混練分散材を放電プラズマ処理し、これを放電プラズマ焼結にて一体化することで、焼結体内に網状にカーボンナノチューブを巡らせることができ、セラミックスや金属粉体基材の有する特性とともにカーボンナノチューブの電気伝導特性と熱伝導特性並びに強度特性を有効利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、炭化けい素などの耐腐食性、耐熱性を有するセラミックスの本来の特徴を生かしかつ電気伝導性と熱伝導性並びに優れた強度特性を付与した複合材料に関し、長鎖状のカーボンナノチューブをセラミックスや金属粉体の焼結体内に網状に分散させたカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
今日、カーボンナノチューブを用いて種々の機能を持たせた複合材料が提案されている。例えば、優れた強度と成形性並びに導電性を兼ね備えた成形体を目的として、平均直径が1〜45nm、平均アスペクト比が5以上であるカーボンナノチューブを、炭素繊維、金属被覆炭素繊維、カーボン粉末、ガラス繊維などの充填材を混練したエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの樹脂中に分散させたカーボン含有樹脂組成物を加工、成形して得ることが提案(特開2003−12939)されている。
また、アルミニウ厶合金材の熱伝導率、引っ張り強度を改善する目的で、アルミニウム合金材の含有成分である、Si,Mg,Mnの少なくとも一種を、カーボンナノ繊維と化合させ、カーボンナノ繊維をアルミニウム母材に含有させたアルミニウム合金材が提案されている。これは、カーボンナノ繊維を0.1〜5vol%溶融アルミニウ厶合金材内に混入し、混練した後ビレットとし、該ビレットを押出成形して得られたアルミニウム合金材の押出型材として提供(特開2002−363716)されている。
さらに、燃料電池のセパレータ等に適用できる成形性に優れた高導電性材料を目的として、PPSやLCP等の流動性に優れた熱可塑性樹脂に金属化合物(ホウ化物:TiB、WB、MoB、CrB、AlB、MgB、炭化物:WC、窒化物:TiN等)およびカーボンナノチューブを適量配合することにより、成形性と導電性を両立させた樹脂成形体が提案(特開2003−34751)されている。
また、電気的性質、熱的性質、機械的性質の向上を図るために、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、ゴム及び熱可塑性エラストマーなどの有機高分子のマトリックス中にカーボンナノチューブを配合して磁場中で配向させ、一定方向に配列されて複合された状態で成形された複合成形体が提案され、カーボンナノチューブとマトリックス材料との濡れ性や接着性を向上させるために、カーボンナノチューブの表面をあらかじめ脱脂処理や洗浄処理などの種々処理を施すことが提案(特開2002−273741)されている。
カーボンナノチューブを含むフィールドエミッタとして、インジウム、ビスマスまたは鉛のようなナノチューブ濡れ性元素の金属合金、Ag,AuまたはSnの場合のように比較的柔らかくかつ延性がある金属粉体等の導電性材料粉体とカーボンナノチューブをプレス成形して切断や研摩後、表面に突き出しナノチューブを形成し、該表面をエッチングしてナノチューブ先端を形成、その後金属表面を再溶解し、突き出しナノチューブを整列させる工程で製造する方法が提案(特開2000−223004)されている。
多様な機能を多面的に実現し、機能を最適にするためのセラミックス複合ナノ構造体を目的に、ある機能を目的に選定する複数の多価金属元素の酸化物にて構成されるように、例えば異種の金属元素が酸素を介して結合する製造方法を選定して、さらに公知の種々方法にて、短軸断面の最大径が500nm以下の柱状体を製造することが提案(特開2003−238120)されている。
上述の樹脂中やアルミニウム合金中に分散させようとするカーボンナノチューブは、得られる複合材料の製造性や所要の成形性を得ることを考慮して、できるだけ長さの短いものが利用されて、分散性を向上させており、カーボンナノチューブ自体が有するすぐれた電気伝導と熱伝導特性を有効に活用しようとするものでない。
また、上述のカーボンナノチューブ自体を活用しようとする発明では、例えばフィールドエミッタのように具体的かつ特定の用途に特化することができるが、他の用途には容易に適用できず、一方、ある機能を目的に多価金属元素の酸化物を選定して特定の柱状体からなるセラミックス複合ナノ構造体を製造する方法では、目的設定とその元素の選定と製造方法の確率に多大の工程、試行錯誤を要することが避けられない。
【発明の開示】
この発明は、例えば絶縁性であるが、耐腐食性、耐熱性を有する炭化けい素やアルミナなどのセラミックス並びに汎用性や延性等を有する金属の特徴を純粋に生かし、これに電気伝導性と熱伝導性を付与した複合材料の提供を目的とし、セラミックスや金属粉体基材の有する特性とともにカーボンナノチューブ自体、その本来的な長鎖状や網状の構造が有するすぐれた電気伝導と熱伝導特性並びに強度特性をできるだけ活用したカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法の提供を目的としている。
発明者らは、先に独立行政法人 科学技術振興機構の開発委託に基づき開発した、カーボンナノチューブを基材中に分散させた複合材料において、カーボンナノチューブの電気伝導特性と熱伝導特性並びに強度特性を有効利用できる構成について種々検討した結果、長鎖状のカーボンナノチューブを焼成可能なセラミックスや金属粉体とボールミルなどで混練分散、あるいはさらに分散剤を用いて湿式分散し、得られた分散材を放電プラズマ焼結にて一体化することで、焼結体内に網状にカーボンナノチューブを巡らせることができ、前記目的を達成できることを知見した。
発明者らは、上記のプロセスにおいて、カーボンナノチューブに予め放電プラズマ処理した場合、セラミックスとの混練分散が良好になることを知見していたが、さらに分散や解砕について検討を加えた結果、得られた分散材を放電プラズマ焼結する前に、該分散材に所要温度で放電プラズマ処理しておくと、得られた焼結体中に分散一体化する網状のカーボンナノチューブの分散状況並びに均一化がより良好になって、目的とする電気伝導性、熱伝導性並びに強度がより向上することを知見し、この発明を完成した。
すなわち、この発明は、セラミックス粉体又は金属(その合金を含む)粉体あるいは前記両方の混合粉体と、10wt%以下の長鎖状カーボンナノチューブ(予め放電プラズマ処理したものを含む)とを、混練分散する工程、あるいはさらに分散剤を用いて前記粉体とカーボンナノチューブとを湿式分散させる工程、得られた混練分散材を放電プラズマ処理する工程、得られた分散材を放電プラズマ焼結する工程とを有することを特徴とするカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法である。
この発明による複合材料は、耐腐食性、耐熱性に優れるアルミナ、ジルコニア等のセラミックス粉体、耐食性や放熱性にすぐれた純アルミニウ厶、アルミニウム合金、チタンなどの金属粉体の焼結体を基体とすることで、前記材料自体が本来的に腐食性や高温環境下でのすぐれた耐久性を有しており、これに長鎖状カーボンナノチューブを均一に分散させたことにより、カーボンナノチューブ自体が有するすぐれた電気伝導と熱伝導特性並びに強度とを併せて、所要特性の増強、相乗効果、あるいは新たな機能を発揮させることができる。
この発明による複合材料は、セラミックス粉体又は金属粉体あるいはセラミックスと金属との混合粉体と長鎖状カーボンナノチューブを、公知の粉砕解砕ミル、ボールなどのメディアを用いる各種ミル等で混練分散させて、分散材を放電プラズマ処理後に放電プラズマ焼結するという比較的簡単な製法で製造でき、例えば、腐食、高温環境下での電極や発熱体、配線材料、熱伝導度を向上させた熱交換器やヒートシンンク材料、ブレーキ部品、あるいは燃料電池の電極やセパレータ等として応用することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、プラズマ焼結温度と電気伝導率との関係を示すグラフである。
図2は、焼結加圧力と電気伝導率との関係を示すグラフである。
図3Aはこの発明によるチタンをマトリックスとしたカーボンナノチューブ分散複合材料の強制破面の電子顕微鏡写真の模式図、図3Bは強制破面の拡大電子顕微鏡写真の模式図である。
図4は、この発明による繭状のカーボンナノチューブの電子顕微鏡写真の模式図である。
図5は、この発明によるアルミナをマトリックスとしたカーボンナノチューブ分散複合材料の電子顕微鏡写真の模式図である。
図6Aはこの発明による銅をマトリックスとしたカーボンナノチューブ分散複合材料の強制破面の電子顕微鏡写真の模式図、図6Bは強制破面の拡大電子顕微鏡写真の模式図である。
図7Aはこの発明によるジルコニアをマトリックスとしたカーボンナノチューブ分散複合材料の強制破面の電子顕微鏡写真の模式図、図7Bは強制破面の拡大電子顕微鏡写真の模式図である。
図8Aはこの発明による混練解砕後のアルミニウ厶粒子の電子顕微鏡写真の模式図、図8BはAの拡大電子顕微鏡写真の模式図である。
図9Aはこの発明による混練解砕後に放電プラズマ処理したアルミニウム粒子の電子顕微鏡写真の模式図、図9BはAの拡大電子顕微鏡写真の模式図である。
図10は、図9Aの拡大電子顕微鏡写真の模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
この発明において、使用するセラミックス粉体には、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウム、炭化けい素、窒化けい素等の公知の高機能、各種機能を有するセラミックスを採用することができる。例えば耐腐食性、耐熱性等の必要とする機能を発揮する公知の機能性セラミックスを採用するとよい。
セラミックス粉体の粒子径としては、必要な焼結体を形成できる焼結性を考慮したり、カーボンナノチューブとの混練分散時の解砕能力を考慮して決定するが、およそ10μm以下が好ましく、例えば大小数種の粒径とすることもでき、粉体種が複数でそれぞれ粒径が異なる構成も採用でき、単独粉体の場合は5μm以下、さらに1μm以下が好ましい。また、粉体には球体以外に繊維状、不定形や種々形態のものも適宜利用することができる。
この発明において、使用する金属粉体には、純アルミニウム、公知のアルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅合金、ステンレス鋼等を採用することができる。例えば耐腐食性、熱伝導性、耐熱性等の必要とする機能を発揮する公知の機能性金属を採用するとよい。
金属粉体の粒子径としては、必要な焼結体を形成できる焼結性、並びにカーボンナノチューブとの混練分散時の解砕能力を有するおよそ100μm以下、さらに50μm以下の粒子径のものが好ましく、大小数種の粒径とすることもでき、粉体種が複数でそれぞれ粒径が異なる構成も採用でき、単独粉体の場合は10μm以下が好ましい。また、粉体には球体以外に繊維状、不定形、樹木状や種々形態のものも適宜利用することができる。なお、アルミニウムなどは50μm〜150μmが好ましい。
この発明において、使用する長鎖状のカーボンナノチューブは、文字どおりカーボンナノチューブが連なり長鎖を形成したもので、これらが絡まったりさらには繭のような塊を形成しているもの、あるいはカーボンナノチューブのみを放電プラズマ処理して得られる繭や網のような形態を有するものを用いる。また、カーボンナノチューブ自体の構造も単層、多層のいずれも利用できる。
この発明による複合材料おいて、カーボンナノチューブの含有量は、所要形状や強度を有する焼結体が形成できれば特に限定されるものでないが、セラミックス粉体又は金属粉体の種や粒径を適宜選定することで、例えば重量比で90wt%以下を含有させることが可能である。
特に、複合材料の均質性を目的とする場合は、例えばカーボンナノチューブの含有量を3wt%以下、必要に応じて0.05wt%程度まで少なくし、粒度の選定等の混練条件と混練分散方法を工夫する必要がある。
この発明によるカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法は、
(P)長鎖状カーボンナノチューブを放電プラズマ処理する工程、
(1)セラミックス粉体又は金属粉体あるいはセラミックスと金属との混合粉体と、長鎖状カーボンナノチューブとを、混練分散する工程、
(2)さらに、分散剤を用いて前記粉体とカーボンナノチューブとを湿式分散させる工程、
(3)混練分散材を放電プラズマ処理する工程、
(4)乾燥した混練分散材を放電プラズマ焼結する工程とを含むもので、(1)(4)、(P)(1)(4)、(1)(2)(4)、(P)(1)(2)(4)、(1)(3)(4)、(P)(1)(3)(4)、(1)(2)(3)(4)、(P)(1)(2)(3)(4)の各工程がある。なお、(1)(2)の工程は、いずれが先でもこれを複数工程適宜組み合せてもよい。
混練分散する工程は、前述の長鎖状のカーボンナノチューブをセラミックス粉体又は金属粉体あるいはセラミックスと金属との混合粉体において、これをほぐし解砕することが重要である。混練分散するには、公知の粉砕、破砕、解砕を行うための各種のミル、クラッシャー、シェイカー装置が適宜採用でき、その機構も回転衝撃式、回転剪断式、回転衝撃剪断式、媒体撹拌式、撹拌式、撹拌羽根のない撹拌式、気流粉砕式など公知の機構を適宜利用できる。
特にボールミルは、公知の横型や遊星型、撹拌型等のミルの如く、ボール等のメディアを使用して粉砕、解砕を行う構成であればいずれの構造であっても利用できる。また、メディアもその材質、粒径を適宜選定することができる。予めカーボンナノチューブのみを放電プラズマ処理した場合は、特に粉体粒径やボール粒径を選定して解砕能を向上させる条件設定を行う必要がある。
この発明において、湿式分散させる工程は、公知の非イオン系分散剤、陽陰イオン系分散剤を添加して超音波式分散装置、ボールミルを始め前述の各種ミル、クラッシャー、シェイカー装置を用いて分散させることができ、前記の乾式分散時間の短縮や高効率化を図ることができる。また、湿式分散後のスラリーを乾燥させる方法は、公知の熱源やスピン法を適宜採用できる。
この発明において、混練分散する工程と湿式分散させる工程は、ドライで混練分散後に湿式分散させる場合の他、湿式分散させてからドライで混練分散したり、ドライ、ウエット、ドライと組み合せるなど種々の混練分散工程パターンを採用することができる。また、同じドライで混練分散する際に、例えば先にカーボンナノチューブとセラミックスを混練分散し、次にこれらに金属粉を混練分散したり、粉体の粒度毎に混練分散を繰り返すこともできる。さらに、ウエットとドライの組み合せにおいて、例えば先にカーボンナノチューブとセラミックスを湿式混練分散し、次に乾燥させた分散材に金属粉をドライ混練分散させるなどの種々の混練分散工程パターンを採用することができる。
この発明において、放電プラズマ焼結(処理)する工程は、カーボン製のダイとパンチの間に乾燥した混練分散材を装填し、上下のパンチで加圧しながら直流パルス電流を流すことにより、ダイ、パンチ、および被処理材にジュール熱が発生し、混練分散材を焼結する方法であり、パルス電流を流すことで粉体と粉体、カーボンナノチューブの間で放電プラズマが発生し、粉体とカーボンナノチューブ表面の不純物などが消失して活性化されるなど等の作用により焼結が円滑に進行する。
カーボンナノチューブのみに施す放電プラズマ処理条件は、特に限定されるものでないが、例えば温度は200℃〜1400℃、時間1分〜15分程度、圧力は0〜10MPaの範囲から適宜選定することができる。
乾式又は湿式あるいはその両方で得た混練分散材を、さらに放電プラズマ処理する工程は、放電プラズマ焼結工程前に行うもので、混練分散材の解砕をより進行させたり、カーボンナノチューブの延伸作用、表面活性化、粉体物の拡散等の作用効果が生じ、後の放電プラズマ焼結の円滑な進行ととともに焼結体に付与する熱伝導性、導電性が向上する。
混練分散材への放電プラズマ処理条件は、特に限定されるものでないが、被処理材料の焼結温度を考慮して、例えば温度は200℃〜1400℃、時間1分〜15分程度、圧力は0〜10MPaの範囲から適宜選定することができる。
この発明において、放電プラズマ焼結は、用いるセラミックス粉体や金属粉体の通常の焼結温度より低温で処理することが好ましい。また、特に高い圧力を必要とせず、焼結時、比較的低圧、低温処理となるように条件設定することが好ましい。また、上記の混練分散材を放電プラズマ焼結する工程において、まず低圧下で低温のプラズマ放電を行い、その後高圧下で低温の放電プラズマ焼結を行う2工程とすることも好ましい。該焼結後の析出硬化、各種熱処理による相変態を利用することも可能である。圧力と温度の高低は、前記2工程間で相対的なものであり、両工程間で高低の差異を設定できればよい。
この発明による複合材料は、上述の比較的簡単な製法で製造でき、腐食、高温環境下での電極や発熱体、配線材料、熱伝導度を向上させた熱交換器やヒートシンク材料、ブレーキ部品として応用することができるが、特に、実施例に示すごとく、800W/mK以上の熱伝導率を得ることが可能となり、これらの材料は例えば予備成形後に放電プラズマ焼結装置にて所要形状に容易に焼成でき、熱交換器の用途に最適である。
【実施例】
[実施例1]
平均粒子径0.6μmのアルミナ粉体と、長鎖状のカーボンナノチューブを、アルミナ製のボウルとボールを用いたボールミルで分散させた。まず、5wt%のカーボンナノチューブを配合し、予め十分に分散処理したアルミナ粉体を配合し、それらの粉末同士をドライ状態で96時間の混練分散を行った。
さらに、分散剤として非イオン性界面活性剤(トリトンX−100、1wt%)を加え、2時間以上、超音波をかけて湿式分散した。得られたスラリーをろ過して乾燥させた。
乾燥した混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、1300℃〜1500℃で5分間のプラズマ固化した。その際、昇温速度は100℃/Min、230℃/Minとし、15〜40MPaの圧力を負荷し続けた。得られた複合材料の電気伝導率を測定し、図1、図2の結果を得た。
[実施例2−1]
平均(ピーク)粒子径10μm以下の純チタン粉体と、平均粒子径30μmの純チタン粉体を種々割合で混ぜた純チタン粉体と、10wt%の長鎖状のカーボンナノチューブを、チタン製のボウルとボールを用いたボールミルで、ドライ状態で100時間以上の混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、1400℃で5分間の放電プラズマ焼結した。その際、昇温速度は250℃/Minとし、10MPaの圧力を負荷し続けた。得られた複合材料の電気伝導率を測定した結果、750〜1000Siemens/mとなった。
[実施例2−2]
平均粒子径10μm〜20μmの純チタン粉体と、0.1wt%〜0.25wt%の長鎖状のカーボンナノチューブ(CNT)を、チタン製の容器を用いた遊星ミルで、分散メディアを使用することなくドライ状態で2時間以下の種々時分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、900℃で10分間の放電プラズマ焼結した。その際、昇温速度は100℃/Minとし、60MPaの圧力を負荷し続けた。
得られた複合材料(CNT0.25wt%添加)の強制破断面の電子顕微鏡写真図を図3に示す。スケールが10μmオーダーの図3Aを1.0μmオーダーに拡大した際の網状のカーボンナノチューブの電子顕微鏡写真図を図3Bに示す。
得られた複合材料の熱伝導率を測定した結果、18.4W/mKであった。なお、純チタン粉体のみを上記条件の放電プラズマ焼結して得た固化体の熱伝導率は、13.8W/mKであり、この発明による複合材料の熱伝導率は、約30%上昇したことが分かる。
[実施例2−3]
平均粒子径10μm〜20μmの純チタン粉体と、0.05wt%〜0.5wt%の長鎖状のカーボンナノチューブとの混練解砕において、カーボンナノチューブのみを予め放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、575℃で5分間の放電プラズマ処理したものと同処理を行わないものを用意し、それぞれチタン製の容器を用いた遊星ミルで、分散メディアを使用することなくドライ状態で60分以下の種々分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、900℃で10分間の放電プラズマ焼結した。その際、昇温速度は100℃/Minとし、60MPaの圧力を負荷し続けた。
得られた複合材料(CNT0.25wt%添加)の熱伝導率を測定した結果、カーボンナノチューブのみを予め放電プラズマ処理した場合は17.2W/mK、放電プラズマ処理なしの場合は、11W/mKであった。なお、前記結果から純チタン粉体の粒径とカーボンナノチューブ量並びに解砕条件との間に最適範囲が存在すると考えられるが、最適範囲外であっても、解砕前の放電プラズマ処理が熱伝導率の向上に大きく寄与することが分かる。
[実施例3−1]
カーボンナノチューブだけを予め放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、1400℃で5分間の放電プラズマ処理した。得られた繭状のカーボンナノチューブの電子顕微鏡写真図を図4に示す。
平均粒子径0.5μmのアルミナ粉体と、上記カーボンナノチューブを、アルミナ製のボウルとボールを用いたボールミルで分散させた。まず、5wt%のカーボンナノチューブを配合し、次いで十分に分散させたアルミナ粉体を配合し、ドライ状態で96時間の混練分散を行った。さらに、実施例1と同様の超音波湿式分散した。得られたスラリーをろ過して乾燥させた。
乾燥した混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、1400℃で5分間のプラズマ固化した。その際、昇温速度は200℃/Minとし、初め15MPa、次いで30MPaの圧力を負荷した。得られた複合材料の電気伝導率は、実施例1と同様範囲であった。得られた複合材料の電子顕微鏡写真図を図5に示す。
[実施例3−2]
平均粒子径0.6μmのアルミナ粉体と、0.5wt%の長鎖状のカーボンナノチューブとの混練解砕において、カーボンナノチューブのみを予め放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、575℃で5分間の放電プラズマ処理したものと同処理を行わないものを用意し、それぞれアルミナ製の容器を用いた遊星ミルで、分散メディアを使用することなくドライ状態で2時間以下の種々時分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、1400℃で5分間の放電プラズマ焼結した。その際、昇温速度は100℃/Minとし、初め20MPa、次いで60MPaの圧力を負荷し続けた。
得られた複合材料の熱伝導率を測定した結果、カーボンナノチューブのみを予め放電プラズマ処理した場合は50W/mK、放電プラズマ処理なしの場合は、30W/mKであった。なお、純アルミナ粉体のみを上記条件の放電プラズマ焼結して得た固化体の熱伝導率は、25W/mKであった。
[実施例4−1]
平均粒子径50μmの無酸素銅粉(三井金属アトマイズ粉)、または平均粒子径50μmの銅合金粉体(Cu90−Zn10、三井金属アトマイズ粉)と、10wt%の長鎖状のカーボンナノチューブとを、ステンレス鋼製のボウルとクロム鉄製のボールを用いたボールミルで分散した。まず、カーボンナノチューブを配合し、次いで十分に分散させた無酸素銅粉体または銅合金粉体を配合し、分散媒に非イオン性界面活性剤(トリトンX−100、1wt%)を用いて100時間以上の湿式混練分散を行った。
乾燥した混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、700℃〜900℃で5分間の放電プラズマ焼結した。その際、昇温速度は80℃/Minとし、10MPaの圧力を負荷し続けた。得られた2種の複合材料の熱伝導率を測定した結果、いずれも500〜800W/mKとなった。
[実施例4−2]
平均粒子径20μm〜30μmの無酸素銅粉(三井金属アトマイズ粉)と、0.5wt%の長鎖状のカーボンナノチューブとを、ステンレス鋼製の容器を用いた遊星ミルで、分散メディアを使用することなくドライ状態で2時間以下の種々時分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。
次いで、混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、575℃で5分間の放電プラズマ処理した。
その後、混練分散材を放電プラズマ焼結装置内で、800℃、15分間の放電プラズマ焼結した。その際、昇温速度は100℃/Minとし、60MPaの圧力を負荷し続けた。
得られた複合材料の強制破断面の電子顕微鏡写真図を図6Aに示す。スケールが50μmオーダーの図6Aを1.0μmオーダーに拡大した際の網状のカーボンナノチューブの電子顕微鏡写真図を図6Bに示す。
得られた複合材料の電気抵抗率を測定した結果、無酸素銅粉体のみを上記条件の放電プラズマ焼結して得た固化体の電気抵抗率は、約5×10−3Ωmであり、この発明による複合材料の電気抵抗率は、約56%(導電率は約1.7倍に上昇)となった。なお、導電率の単位に関して、Siemens/m=(Ωm)−1の関係にある。
[実施例5−1]
平均粒子径0.6μmのジルコニア粉体(住友大阪セメント社製)と、5wt%の長鎖状のカーボンナノチューブを、ジルコニア製のボウルとボールを用いたボールミルで分散させた。まず、カーボンナノチューブを配合し、予め十分に分散処理したジルコニア粉体を配合し、それらの粉末同士をドライ状態で100時間以上の混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、1200℃〜1400℃で5分間のプラズマ固化した。その際、昇温速度は100℃/Min、230℃/Minとし、15〜40MPaの圧力を負荷し続けた。得られた複合材料の電気伝導率を測定したところ、500〜600Siemens/mとなった。
[実施例5−2]
平均粒子径0.5μmのジルコニア粉体(住友大阪セメント社製)と、1wt%の長鎖状のカーボンナノチューブを、ジルコニア製の容器を用いた遊星ミルで分散させた。まず、カーボンナノチューブを配合し、予め十分に分散処理したジルコニア粉体を配合し、それらの粉末同士をドライ状態で、分散メディアを使用することなくドライ状態で2時間以下の種々時分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、1200℃℃で5分間のプラズマ固化した。その際、昇温速度は100℃/Minとし、50MPaの圧力を負荷し続けた。
得られた複合材料の電気抵抗率を測定した結果、ジルコニア粉体のみを上記条件の放電プラズマ焼結して得た固化体の電気抵抗率に対し、この発明による複合材料の電気抵抗率は、約72%(導電率は約1.4倍に上昇)となった。
[実施例5−3]
平均粒子径0.5μmのジルコニア粉体(住友大阪セメント社製)と、予め放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、575℃で5分間の放電プラズマ処理した0.05wt%〜0.5wt%の長鎖状のカーボンナノチューブを、ジルコニア製の容器を用いた遊星ミルでドライ状態、分散メディアを使用することなくドライ状態で60分以下の種々分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。
混練分散材は、放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、575℃で5分間の放電プラズマ処理した。その後、混練分散材を放電プラズマ焼結装置内で、1350℃で5分間の放電プラズマ焼結した。その際、昇温速度は100℃/Minとし、60MPaの圧力を負荷し続けた。
得られた複合材料の強制破断面の電子顕微鏡写真図を図9に示す。スケールが10μmオーダーの図7Aを1.0μmオーダーに拡大した際の網状のカーボンナノチューブの電子顕微鏡写真図を図7Bに示す。
得られた複合材料(CNT0.5wt%添加)の熱伝導率を測定した結果、4.7W/mKであった。なお、ジルコニア粉体のみを上記条件の放電プラズマ焼結して得た固化体の熱伝導率は、2.9W/mKであり、この発明による複合材料の熱伝導率は、約60%上昇したことが分かる。
[実施例6]
平均粒子径0.5μmの窒化アルミニウム粉体(トクヤマ社製)と、5wt%の長鎖状のカーボンナノチューブとを、アルミナ製のボウルとボールを用いたボールミルで分散させた。まず、カーボンナノチューブを配合し、予め十分に分散処理した窒化アルミニウム粉体を配合し、それらの粉末同士をドライ状態で100時間以上の混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、1600℃〜1900℃で5分間のプラズマ固化した。その際、昇温速度は100℃/Min、230℃/Minとし、15〜40MPaの圧力を負荷し続けた。得られた複合材料の電気伝導率、熱伝導率を測定したところ、500〜600Siemens/m、500〜800W/mKとなった。
[実施例7−1]
平均粒子径0.3μmの炭化けい素粉体と、5wt%の長鎖状のカーボンナノチューブとを、アルミナ製のボウルとボールを用いたボールミルで分散させた。まず、カーボンナノチューブを配合し、予め十分に分散処理した炭化けい素粉体を配合し、それらの粉末同士をドライ状態で100時間以上の混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、1800℃〜2000℃で5分間のプラズマ固化した。その際、昇温速度は100℃/Min、230℃/Minとし、15〜40MPaの圧力を負荷し続けた。得られた複合材料の電気伝導率を測定したところ、500〜600Siemens/mとなった。
[実施例7−2]
平均粒子径0.3μmの炭化けい素粉体と、2wt%の長鎖状のカーボンナノチューブとを、アルミナ製の容器を用いた遊星ミルで分散させた。まず、カーボンナノチューブを配合し、予め十分に分散処理した炭化けい素粉体を配合し、それらの粉末同士をドライ状態で、分散メディアを使用することなくドライ状態で2時間以下の種々時分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、1850℃で5分間のプラズマ固化した。その際、昇温速度は100℃/Minとし、60MPaの圧力を負荷し続けた。
得られた複合材料の電気抵抗率を測定した結果、炭化けい素粉体のみを上記条件の放電プラズマ焼結して得た固化体の電気抵抗率に対し、この発明による複合材料の電気抵抗率は、約93%(導電率は約1.08倍に上昇)となった。
[実施例7−3]
平均粒子径0.3μmの炭化けい素粉体と、0.25wt%の長鎖状のカーボンナノチューブとを、アルミナ製の容器を用いた遊星ミルで分散させた。まず、カーボンナノチューブを配合し、予め十分に分散処理した炭化けい素粉体を配合し、それらの粉末同士をドライ状態で、分散メディアを使用することなくドライ状態で2時間以下の種々時分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、1850℃で5分間のプラズマ固化した。その際、昇温速度は100℃/Minとし、100MPaの圧力を負荷し続けた。
得られた複合材料の熱伝導率を測定した結果、92.3W/mKであった。なお、炭化けい素粉体のみを上記条件の放電プラズマ焼結して得た固化体の熱伝導率は、24.3W/mKであり、この発明による複合材料の熱伝導率は、約279%上昇したことが分かる。
[実施例8]
平均粒子径0.5μmの窒化けい素粉体(宇部興産社製)と、5wt%の長鎖状のカーボンナノチューブを、アルミナ製のボウルとボールを用いたボールミルで分散させた。まず、カーボンナノチューブを配合し、予め十分に分散処理した窒化けい素粉体を配合し、それらの粉末同士をドライ状態で100時間以上の混練分散を行った。
乾燥した混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、1500℃〜1600℃で5分間のプラズマ固化した。その際、昇温速度は100℃/Min、230℃/Minとし、15〜40MPaの圧力を負荷し続けた。得られた複合材料の電気伝導率を測定したところ、400〜500Siemens/mとなった。
[実施例9−1]
平均粒子径100μmの純アルミニウム粉体と平均粒子径0.6μmのアルミナ粉体の混合粉体(90wt%)と、長鎖状のカーボンナノチューブ(10wt%)とを、アルミナ製の容器を用いた遊星ミルで分散させた。まず、カーボンナノチューブを配合し、予め十分に分散処理した純アルミニウム粉体(95wt%)とアルミナ粉体(5wt%)との混合粉体を配合し、それらの粉末同士をドライ状態で、分散メディアを使用することなくドライ状態で2時間以下の種々時分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。さらに、分散剤として非イオン性界面活性剤(トリトンX−100、1wt%)を加え、2時間以上、超音波をかけて湿式分散した。得られたスラリーをろ過して乾燥させた。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、500℃〜600℃で5分間のプラズマ固化した。その際、昇温速度は100℃/Min、230℃/Minとし、15〜40MPaの圧力を負荷し続けた。得られた複合材料の熱伝導率を測定したところ、250〜400W/mKとなった。
[実施例9−2]
平均粒子径100μmの純アルミニウ厶粉体と平均粒子径0.6μmのアルミナ粉体の混合粉体(95wt%、アルミニウム粉体:アルミナ粉体=95:5)と、長鎖状のカーボンナノチューブ(5wt%)とを、アルミナ製の容器を用いた遊星ミルで分散させた。
まず、カーボンナノチューブを配合し、分散剤として非イオン性界面活性剤(トリトンX−100)を加えてアルミナ粉体との混合分散材を作製し、これを乾燥させた。
次に、純アルミニウ厶粉体とそれらの乾燥分散材をドライ状態で、分散メディアを使用することなくドライ状態で2時間以下の種々時分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、500℃〜600℃で5分間のプラズマ固化した。その際、昇温速度は100℃/Min、230℃/Minとし、15〜40MPaの圧力を負荷し続けた。得られた複合材料の熱伝導率を測定したところ、300〜450W/mKとなった。
[実施例10]
平均粒子径50μmのチタン粉体と平均粒子径0.6μmのジルコニア粉体との混合粉体(90%)と、10wt%の長鎖状のカーボンナノチューブを、ステンレス鋼製のボウルとクロ厶鉄製のボールを用いたボールミルで、まず、カーボンナノチューブを配合し、予め十分に分散処理したチタン粉体(90%)とジルコニア粉体(10%)との混合粉体を配合し、それらの粉末同士をドライ状態で100時間以上の混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、1400℃で5分間の放電プラズマ焼結した。その際、昇温速度は250℃/Minとし、10MPaの圧力を負荷し続けた。得られた複合材料の電気伝導率を測定した結果、750〜1000Siemens/mとなった。
[実施例11]
平均粒子径50μmの無酸素銅粉(三井金属アトマイズ粉)と平均粒子径0.6μmのアルミナ粉体との混合粉体と、10wt%の長鎖状のカーボンナノチューブとを、ステンレス鋼製のボウルとクロム鉄製のボールを用いたボールミルで分散させた。まず、カーボンナノチューブを配合し、分散媒に非イオン性界面活性剤(トリトンX−100、1wt%)を用いて予め十分に分散処理した無酸素銅粉(90%)とアルミナ粉体との混合粉体とを、100時間以上の湿式混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、700℃〜900℃で5分間の放電プラズマ焼結した。その際、昇温速度は250℃/Minとし、10MPaの圧力を負荷し続けた。得られた2種の複合材料の熱伝導率を測定した結果、いずれも500〜800W/mKとなった。
[実施例12−1]
平均粒子径30μmのアルミニウム合金(3003)粉体と、0.5wt%の長鎖状のカーボンナノチューブとの混練解砕において、カーボンナノチューブのみを予め放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、575℃で5分間の放電プラズマ処理したものと同処理を行わないものを用意し、それぞれアルミナ製の容器を用いた遊星ミルで、分散メディアを使用することなくドライ状態で2時間以下の種々時分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。
混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、575℃で60分間の放電プラズマ焼結した。その際、昇温速度は100℃/Minとし、50MPaの圧力を負荷し続けた。
得られた複合材料の熱伝導率を測定した結果、198W/mKであった。なお、アルミニウム合金粉体のみを上記条件の放電プラズマ焼結して得た固化体の熱伝導率は、157W/mKであり、この発明による複合材料の熱伝導率は、約21%上昇したことが分かる。
[実施例12−2]
平均粒子径30μmのアルミニウ厶合金(3003)粉体と、2.5wt%の長鎖状のカーボンナノチューブとの混練解砕において、カーボンナノチューブのみを予め放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、800℃で5分間の放電プラズマ処理したものと同処理を行わないものを用意し、それぞれアルミナ製の容器を用いた遊星ミルで、分散メディアを使用することなくドライ状態で2時間以下の種々時分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。
混練分散材は、放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、800℃で5分間の放電プラズマ処理した。その後、混練分散材を放電プラズマ焼結装置内で、600℃で5分間の放電プラズマ焼結した。その際、昇温速度は100℃/Minとし、50MPaの圧力を負荷し続けた。
得られた複合材料の熱伝導率を測定した結果、221W/mKであった。なお、上記条件のカーボンナノチューブと混練分散材への各放電プラズマ処理を行うことなく、放電プラズマ焼結して得た固化体の熱伝導率は、94.1W/mKであった。
[実施例12−3]
平均粒子径30μmのアルミニウ厶粉体と、0.25wt%の長鎖状のカーボンナノチューブとの混練解砕において、カーボンナノチューブのみを予め放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、800℃で5分間の放電プラズマ処理し、ステンレス製の容器を用いた遊星ミルで、分散メディアを使用することなくドライ状態で2時間以下の種々時分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。
混練分散材は、放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、400℃で5分間の放電プラズマ処理した。その後、混練分散材を放電プラズマ焼結装置内で、600℃で5分間の放電プラズマ焼結した。
混練分散材のアルミニウ厶粒子の電子顕微鏡写真図を図8Aに示す。スケールが30μmオーダーの図8Aを1.0μmオーダーに拡大した際の電子顕微鏡写真図を図8Bに示す。
また、混練分散材に放電プラズマ処理を施した後のアルミニウム粒子の電子顕微鏡写真図を図9Aに示す。40μmオーダーの図9Aを3.0μm、1.0μmオーダーに拡大した際の電子顕微鏡写真図を図9B、図10に示す。
図8では、混練分散にてカーボンナノチューブがアルミニウム粒子に付着するも、単に載るように見られるが、混練分散材に放電プラズマ処理を施すと、図9、10に示すようにカーボンナノチューブがアルミニウム粒子に食い込むように付着することが分かる。
[実施例13]
平均粒子径20μm〜30μmのステンレス鋼粉(SUS316L)と、0.5wt%の長鎖状のカーボンナノチューブとを、ステンレス鋼製の容器を用いた遊星ミルで、分散メディアを使用することなくドライ状態で2時間以下の種々時分単位と容器の回転数を組み合せた混練分散を行った。
次いで、混練分散材を放電プラズマ焼結装置のダイ内に装填し、575℃で5分間の放電プラズマ処理した。その後、混練分散材を放電プラズマ焼結装置内で、900℃、10分間の放電プラズマ焼結した。その際、昇温速度は100℃/Minとし、60MPaの圧力を負荷し続けた。
得られた複合材料の熱伝導率を測定した結果、ステンレス鋼粉のみを上記条件の放電プラズマ焼結して得た固化体の熱伝導率に対し、この発明による複合材料は、約18%上昇した。
また、得られた複合材料の電気抵抗率を測定した結果、ステンレス鋼粉体のみを上記条件の放電プラズマ焼結して得た固化体の電気抵抗率に対し、この発明による複合材料の電気抵抗率は、約60%(導電率は約1.65倍に上昇)となった。
【産業上の利用可能性】
この発明によるカーボンナノチューブ分散複合材料は、例えば、セラミックス粉体を用いて、耐腐食性、耐高温特性に優れた電極材料、発熱体、配線材料、熱交換器、燃料電池などを製造することができる。また、セラミックス粉体、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属粉体を用いて高熱伝導度に優れた熱交換器やヒートシンク、燃料電池のセパレータなどを製造することができる。
【図1】

【図2】


【図4】

【図5】





【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス粉体又は金属(その合金を含む)粉体あるいは前記両方の混合粉体と10wt%以下の長鎖状カーボンナノチューブとを混練分散する工程、混練分散材を放電プラズマ焼結する工程とを含むカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法。
【請求項2】
セラミックス粉体又は金属(その合金を含む)粉体あるいは前記両方の混合粉体と予めカーボンナノチューブのみを放電プラズマ処理した10wt%以下の長鎖状カーボンナノチューブとを混練分散する工程、混練分散材を放電プラズマ焼結する工程とを含むカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法。
【請求項3】
セラミックス粉体又は金属(その合金を含む)粉体あるいは前記両方の混合粉体と10wt%以下の長鎖状カーボンナノチューブとを混練分散する工程、分散剤を用いて前記粉体とカーボンナノチューブとを湿式分散させる工程、乾燥した混練分散材を放電プラズマ焼結する工程とを含むカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法。
【請求項4】
セラミックス粉体又は金属(その合金を含む)粉体あるいは前記両方の混合粉体と予めカーボンナノチューブのみを放電プラズマ処理した10wt%以下の長鎖状カーボンナノチューブとを混練分散する工程、分散剤を用いて前記粉体とカーボンナノチューブとを湿式分散させる工程、乾燥した混練分散材を放電プラズマ焼結する工程とを含むカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法。
【請求項5】
セラミックス粉体又は金属(その合金を含む)粉体あるいは前記両方の混合粉体と10wt%以下の長鎖状カーボンナノチューブとを混練分散する工程、混練分散材を放電プラズマ処理する工程、得られた分散材を放電プラズマ焼結する工程とを含むカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法。
【請求項6】
セラミックス粉体又は金属(その合金を含む)粉体あるいは前記両方の混合粉体と予めカーボンナノチューブのみを放電プラズマ処理した10wt%以下の長鎖状カーボンナノチューブとを混練分散する工程、混練分散材を放電プラズマ処理する工程、得られた分散材を放電プラズマ焼結する工程とを含むカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法。
【請求項7】
セラミックス粉体又は金属(その合金を含む)粉体あるいは前記両方の混合粉体と10wt%以下の長鎖状カーボンナノチューブとを混練分散する工程、分散剤を用いて前記粉体とカーボンナノチューブとを湿式分散させる工程、乾燥した混練分散材を放電プラズマ処理する工程、得られた分散材を放電プラズマ焼結する工程とを含むカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法。
【請求項8】
セラミックス粉体又は金属(その合金を含む)粉体あるいは前記両方の混合粉体と予めカーボンナノチューブのみを放電プラズマ処理した10wt%以下の長鎖状カーボンナノチューブとを混練分散する工程、分散剤を用いて前記粉体とカーボンナノチューブとを湿式分散させる工程、乾燥した混練分散材を放電プラズマ処理する工程、得られた分散材を放電プラズマ焼結する工程とを含むカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法。
【請求項9】
混練分散材を放電プラズマ焼結する工程が、低圧下で低温のプラズマ放電を行い、その後高圧下で低温の放電プラズマ焼結を行う2工程である請求項1から請求項8のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法。
【請求項10】
セラミックス粉体の平均粒径が10μm以下、金属粉体の平均粒径が200μm以下である請求項1から請求項8のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法。
【請求項11】
セラミックス粉体は、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウ厶、炭化けい素、窒化けい素のうち、1種または2種以上である請求項1から請求項8のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法。
【請求項12】
金属粉体は、純アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅合金、ステンレス鋼のうち、1種または2種以上である請求項1から請求項8のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散複合材料の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/040068
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【発行日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515076(P2005−515076)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016498
【国際出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【Fターム(参考)】