説明

ガイド部材

【課題】 筐体の貫通穴において進退移動するスイッチのシャフトをスムーズに移動させることができ、スイッチの操作性をより向上させることのできるガイド部材を提供する。
【解決手段】 ガイド部材1は、シャーシCに形成された貫通孔26を貫通する、操作スイッチ21のシャフト23を支持するためのものであって、操作スイッチ21のシャフト23を貫通させる略リング状の本体部2と、本体部2からシャフト23の押圧操作方向に延び、かつ一端において外側に突出した爪部6が形成された第1延出部5とを有し、本体部2の直径は、貫通孔26の直径より大とされ、本体部2の下面と、第1延出部5の一端に形成された爪部6の上面との間の距離は、シャーシCの厚みより大とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば、DVDプレイヤ等の筐体に設けられる操作スイッチのガイド部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばDVD(digital versatile disc)プレイヤ等のオーディオ装置においては、その動作の設定を行うための複数の操作スイッチが設けられている。操作スイッチは、例えばスイッチ本体部と、それから延びたシャフトとによって構成され、シャフトの先端がユーザによって押圧操作されることにより、シャフトの変位がスイッチ本体部に伝達され、スイッチ本体部において押圧されたことが検知されるようになっている。このような操作スイッチにおいては、操作押圧時の押圧操作方向と直交する方向におけるがたつきを抑制する目的でシャフトに対してガイド部材が設けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−100260号公報
【0004】
図8は、上記公報に記載されたスイッチ操作装置の構造を示す図である。この図によると、取付部材31にスイッチ32が固定され、スイッチ32の内部に設けられた可動部33を前方側より押圧可能に構成した操作部材34が設けられている。そして、操作部材34の周方向への動きを抑制するガイド部材35が設けられている。
【0005】
上記公報に示すスイッチ操作装置におけるガイド部材35は、取付部材31に固定されているが、図9に示すように、シャーシCに形成された孔36に取り付けられることによって、操作部材の周方向への動きを抑制するガイド部材38もある。
【0006】
この図9によると、ガイド部材38は、シャーシCに形成された孔36を貫通する本体部40と、本体部40から延設されたフランジ部41とからなり、フランジ部41の上面41aがシャーシCと両面テープ等によって接着されて、ガイド部材40がシャーシCに固定されている。ガイド部材38の本体部40の内周面側には、操作スイッチのシャフト42が貫通自在に取り付けられ、図9における上下方向に進退可能とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図9に示すガイド部材38では、内周面側におけるシャフト42の押圧操作方向における長さBが比較的短いため、シャフト42の押圧操作方向と直交する方向にがたつきがある場合、それを矯正させながらシャフト42の進退動作を維持することは困難である。そこで、シャフト42のがたつきを矯正するために、ガイド部材38の内周面側の距離Bを長くすることが考えられるが、ガイド部材38の寸法が図9における上下方向に長くなるため、フランジ部41の上面41aとシャーシCとの接着性を高める必要がある。したがって、フランジ部41の上面41aの面積を広くとる必要があり、このガイド部材39では、スペースのない箇所における取り付けには不向きであった。
【0008】
一方、シャフト42を支持する方法として、図10に示すように、シャーシCに切り起こし部43のあるバーリング穴44を形成し、その切り起こし部43を利用してシャフト42を支持するものもある。しかしながら、図10に示すように、シャーシCにバーリング穴44を形成する場合には、内周面のエッジ部45にばりが生じることが多い。そのため、エッジ部45に生じたばりに、シャフト42がひっかかり、シャフトの進退動作を妨げるおそれがある。特に、シャフト42の直線性にばらつきがあるとき、その傾向が顕著に現れる。
【0009】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、筐体の貫通穴において進退移動するスイッチのシャフトをスムーズに移動させることができ、スイッチの操作性をより向上させることのできるガイド部材を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0011】
本願発明によって提供されるガイド部材は、筐体に形成された貫通孔を貫通する操作スイッチのシャフトを支持するためのガイド部材であって、前記操作スイッチのシャフトを貫通させる略リング状の本体部と、前記本体部から前記シャフトの押圧操作方向に延び、かつ一端において外側に突出した爪部が形成された延出部とを有し、前記本体部の直径は、前記貫通孔の直径より大とされ、前記本体部の下面と、前記延出部の一端に形成された爪部の上面との間の距離は、前記筐体の厚みより大とされていることを特徴としている(請求項1)。
【0012】
この発明によれば、本体部の直径は、貫通孔の直径より大とされ、延出部に形成された爪部が外側に突出しているので、本体部と爪部とによって筐体を挟み込むことにより、このガイド部材は、筐体に対して操作スイッチのシャフトの押圧操作方向と直交する方向に移動可能に取り付けられる。また、本体部の下面と、爪部の上面との間の長さは、筐体の厚みより大とされているので、シャフトの押圧操作方向においても移動可能に取り付けられる。したがって、シャフトが押圧操作されたとき、ガイド部材もシャフトとともに若干移動しながらシャフトを支持するため、シャフトの押圧操作方向における移動をスムーズなものにすることができる。
【0013】
好ましい実施の形態によれば、前記延出部は、弾性変形可能に構成されているとよい(請求項2)。
【0014】
他の好ましい実施の形態によれば、前記延出部の内面は、前記本体部の内周面と面一に形成されているとよい(請求項3)。
【0015】
本願発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
図1は、本願発明のガイド部材を示す外観図である。図2は、図1に示すガイド部材の外形図であり、(a) は上面図、(b) はB−B方向から見た断面図、(c) はC−C方向から見た断面図である。このガイド部材1は、例えばDVDプレイヤ等のオーディオ機器に適用されるものである。より具体的には、このガイド部材1は、オーディオ機器等に設けられ、ユーザによって操作される操作スイッチ等の移動を支持するために用いられるものである。
【0018】
ガイド部材1は、例えばABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂等からなる略リング状の本体部2を有している。本体部2の中央には、操作スイッチのシャフト23(図3参照、後述)が貫通する略円形状の貫通穴3が形成されている。貫通穴3の直径は、シャフト23の直径より大に形成されており、貫通穴3をシャフト23がスムーズに移動する程度、さらに若干の遊びを有する程度に形成されている。なお、本体部2の形状及び貫通穴3は、略円形状に限るものではない。
【0019】
本体部2の一端下面には、本体部2の外周面2aに沿うようにして延出された一対の第1延出部5が本体部2と一体的に形成されている。一対の第1延出部5は、互いに対向するようにして延びており、各第1延出部5の内面が本体部2の貫通穴3の内表面と面一になるように形成されている。各第1延出部5の先端には外側に向かって突出した爪部6が形成されている。この爪部6は、後述するように、ガイド部材1がオーディオ機器等のシャーシCに取り付けられた後、シャーシCからガイド部材1が離脱しないようにするためのものである。
【0020】
爪部6は、側面視で略台形状に形成され、第1延出部5の外側面と直交する面6aを有している。この直交する面6aは、ガイド部材1がシャーシCに取り付けられると、シャーシCの一部と当接又は離間する。
【0021】
なお、この爪部6を有する第1延出部5は、本体部2において対向する位置に2つ形成されているが、第1延出部5の数及び爪部6の数は、これらの数に限定されるものではない。
【0022】
第1延出部5は、本体部2と一体的に形成され、本体部2と同様、ABS樹脂等によって形成されていることから内側に向かって弾性変形可能とされている。これにより、ガイド部材1がシャーシCに取り付けられる際、シャーシCに形成された穴(後述)に対してガイド部材1を押し込めば、第1延出部5が弾性変形してそれが穴を通過し、ガイド部材1を容易にシャーシCに取り付けることができる。
【0023】
本体部2の一端下面には、上記第1延出部5と同様の方向に延びた一対の第2延出部8が一体的に形成されている。各第2延出部8は、断面視略円弧状に形成されており、本体部2の一端下面における上記一対の第1延出部5が形成された箇所以外の箇所であって、互いに対向する位置に形成されている。これら第2延出部8の内面は、第1延出部5と同様に、本体部2の貫通穴3の内表面と面一になるように形成されている。
【0024】
このように、第1延出部5及び第2延出部8の内面は、本体部2の内表面に沿って形成されているため、操作スイッチ21のシャフト23を包み込むようにしてその押圧操作方向において案内することができる。
【0025】
なお、図1、図2(a) 、及び図2(c) によれば、本体部2及び片方の第2延出部8には、切り欠き9が形成されているが、これは、オーディオ機器のシャーシCの形状に起因して加工されたものであり、このガイド部材1の本質的な特徴部分ではない。したがって、本体部2は、上面視で略真円状に形成されていてもよい。
【0026】
また、上記第2延出部8は、本体部2の外周面よりやや内側の箇所から下方へ延びているため、図2(c) に示すように、結果的に、本体部2によってフランジ部10が形成されるようになっている。実際には、フランジ部10は、第1延出部5及び切り欠き9を除く本体部2の外周面にわたって形成されている。この本体部2のフランジ部10によって、ガイド部材1は、シャーシCに取り付けられた後、シャーシCから離脱することが抑制される。
【0027】
次に、上記ガイド部材1がオーディオ機器のシャーシCに取り付けられる場合の状態について、図3及び図4を参照して説明する。
【0028】
図3及び図4によると、本願発明のガイド部材1が適用される操作スイッチ21は、スイッチ本体部22と、シャフト23とからなる。スイッチ本体部22は、オーディオ機器のシャーシCにビス止め等によって固定されたプリント基板24上に半田付けされて実装されている。シャフト23は、スイッチ本体部22の一端から延びて設けられ、その中央部の周囲にフランジ25が形成されている。このオーディオ装置は、操作スイッチ21のシャフト23の先端(ユーザの押圧操作部分)がシャーシCの外側に所定距離だけ突出するように、プリント基板24がオーディオ装置内部の適当な位置に位置決めされているとともに、スイッチ本体部22がプリント基板24上の適当な位置に位置決めされている。
【0029】
ガイド部材1は、シャーシCに形成された穴26に嵌め込まれて取り付けられる。具体的には、図5に示すように、シャーシCには、ガイド部材1が取り付けられ、かつシャフト23の先端が挿通される穴26が形成されている。穴26は、略円形状に形成され、その直径は、ガイド部材1の本体部2の直径よりやや小とされている。また、穴26には、ガイド部材1の第1延出部5の爪部6に対応する2つの切欠部27が形成されている。
【0030】
この穴26にガイド部材1を取り付ける際、まず、第1延出部5の爪部6を両側から挟みこんで押し込むと(図5の白矢印W参照)、第1延出部5は弾性変形して内側に変移する。そのまま、第1延出部5の爪部6が穴26の切欠部27に沿うようにしてガイド部材1を穴26に挿入する。ガイド部材1の本体部2がシャーシCに当接するまで押し込むと、第1延出部5は元の状態に復元され、爪部6がシャーシCの裏側に当接する状態となることにより、ガイド部材1は、シャーシCに離脱せずに取り付けられる。その後、ガイド部材1の貫通穴3にシャフト23が挿入されることにより、シャフト23の先端が外部に突出するようにされる。このとき、シャフト23の中央部から先端側に向かう外周面には、ガイド部材1がそれを包み込むようにして配される。
【0031】
図6及び図7は、ガイド部材1がシャーシCに取り付けられた後の状態を示す拡大図である。ガイド部材1は、シャーシCに対して接着等によって固定されておらず、遊嵌されている。すなわち、本体部2のフランジ部10及び上述した爪部6は、シャーシCを挟みようにして配され、ガイド部材1のシャーシCからの離脱を防止するとともに、ガイド部材1は、上面視において前後左右のあらゆる方向に若干の遊びをもつ程度に、シャーシCに対して移動可能とされている。
【0032】
また、図6及び図7に示すように、ガイド部材1がシャーシCに取り付けられ、ユーザによって押圧操作がされない通常状態にあっては、本体部2の下面と、爪部6の上面6aとの間の長さHが、シャーシCの板厚又は切り起こしにおける上下方向の長さより小とされている。すなわち、爪部6の上面6aとシャーシCとの間に、若干の隙間Aが生じている。したがって、ガイド部材1は、シャフト23の押圧操作方向においても移動可能とされる。
【0033】
このとき、ユーザによって、操作スイッチ21が押圧操作されると、シャフト23が押圧操作方向に沿って進退されるが、ガイド部材1は、シャーシCに対して遊嵌されているため、ガイド部材1自体も同方向に若干移動する。そのため、ガイド部材1とシャフト23との摩擦を抑えながら、シャフト23の押圧操作方向における移動をスムーズなものにすることができる。
【0034】
また、従来の構成(図9参照)では、シャーシCにガイド部材1を接着等により固定していたために、ガイド部材38の本体部40を延ばそうとすれば、接着面積を広げる必要があったが、本実施形態にかかるガイド部材1はシャーシCに対して固定する必要がないので、例えば、操作スイッチ21をオーディオ装置においてスペースに余裕がないような箇所に取り付けなければならないような場合であっても、十分に対応することができる。
【0035】
また、本実施形態では、ガイド部材1の本体部2、第1延出部5、及び第2延出部8を必要に応じて延ばすことにより、シャフト23の押圧操作方向の長さを長くすることができる。そのため、ガイド部材1は、押圧操作方向におけるシャフト23をより一層包み込むようにして案内するとともにそれを支持することができ、シャフト23の移動をより確実なものにすることができる。
【0036】
また、例えば操作スイッチ21のスイッチ本体部22がプリント基板24に良好に実装されておらず、本来進行すべきシャフト23の軸方向からややずれて、やや斜め方向にシャフト23が進退するような場合であっても、シャーシCに対して遊嵌されているガイド部材1によってその斜め方向における進退動作を吸収することができる。
【0037】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ガイド部材が取り付けられる機器としてDVDプレイヤ等のオーディオ機器について説明したが、オーディオ機器に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本願発明のガイド部材を示す外観図である。
【図2】図1に示すガイド部材の外形図であり、(a) は上面図、(b) はB−B方向から見た断面図、(c) はC−C方向から見た断面図である。
【図3】ガイド部材をシャーシに取り付けた場合の一例を示す図である。
【図4】ガイド部材をシャーシに取り付けた場合の一例を示す図である。
【図5】ガイド部材をシャーシに取り付けるときの状態を示す図である。
【図6】ガイド部材がシャーシに取り付けられた後の状態を示す拡大図である。
【図7】ガイド部材がシャーシに取り付けられた後の状態を示す拡大図である。
【図8】従来のガイド部材の構造を示す図である。
【図9】従来の他のガイド部材の構造を示す図である。
【図10】従来の、スイッチをシャーシに取り付ける場合の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ガイド部材
2 本体部
3 貫通孔
5 第1延出部
6 爪部
8 第2延出部
10 フランジ
21 操作スイッチ
23 シャフト
24 プリント基板
C シャーシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に形成された貫通孔を貫通する、操作スイッチのシャフトを支持するためのガイド部材であって、
前記操作スイッチのシャフトを貫通させる略リング状の本体部と、
前記本体部から前記シャフトの押圧操作方向に延び、かつ一端において外側に突出した爪部が形成された延出部とを有し、
前記本体部の直径は、前記貫通孔の直径より大とされ、
前記本体部の下面と、前記延出部の一端に形成された爪部の上面との間の距離は、前記筐体の厚みより大とされていることを特徴とする、ガイド部材。
【請求項2】
前記延出部は、弾性変形可能に構成されている、請求項1に記載のガイド部材。
【請求項3】
前記延出部の内面は、前記本体部の内周面と面一に形成されている、請求項1又は2に記載のガイド部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−12653(P2006−12653A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189110(P2004−189110)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】