説明

ガスセンサおよびそれを備えた空燃比制御装置ならびに輸送機器

【課題】センサ素子と端子とが耐熱性に優れた接続構造によって接続されている、小型化に適したガスセンサを提供する。
【解決手段】本発明によるガスセンサは、所定のガスを検出するためのガス検出層11を有するセンサ素子10と、センサ素子10と外部との間で電気的な入出力を行うためのリード線20と、センサ素子10とリード線20とを電気的に接続する端子30と、端子30とセンサ素子10とを接合する接合部80とを備える。接合部80は、ガラス材料と、1000℃以上の融点を有する金属材料とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関し、特に、高温環境で使用されるガスセンサに関する。また、本発明は、そのようなガスセンサを備えた空燃比制御装置や輸送機器にも関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題やエネルギー問題の観点から、内燃機関の燃費を向上させたり、内燃機関の排気ガス中に含まれる規制物質(NOxなど)の排出量を低減したりすることが求められている。このためには、常に最適な条件で燃料の燃焼が行えるよう、燃焼状態に応じて燃料と空気との比率を適切に制御する必要がある。空気と燃料との比率は空燃比(A/F)と呼ばれ、三元触媒を用いる場合、最適な空燃比は理論空燃比である。理論空燃比とは、空気と燃料とが過不足なく燃焼する空燃比である。
【0003】
理論空燃比で燃料が燃焼している場合、排気ガス中には一定の酸素が含まれる。空燃比が理論空燃比よりも小さい(つまり燃料の濃度が相対的に高い)場合には、排気ガス中の酸素濃度が、理論空燃比の場合の酸素濃度に比べて減少する。一方、空燃比が理論空燃比よりも大きい(つまり燃料の濃度が相対的に低い)場合には、排気ガス中の酸素濃度は増加する。このため、排気ガス中の酸素濃度を計測することによって、空燃比が理論空燃比からどの程度ずれているかを推定し、空燃比を調節して最適な条件で燃料が燃焼するように制御することが可能となる。
【0004】
排気ガス中の酸素濃度を計測するための酸素センサとしては、特許文献1に開示されているような起電力型の酸素センサや、特許文献2に開示されているような抵抗型の酸素センサが知られている。起電力型の酸素センサは、固体電解質層の表面に設けられた基準電極および測定電極(それぞれ空気および排気ガスに晒される)間での酸素分圧の違いを起電力として検出することによって酸素濃度を測定する。これに対し、抵抗型の酸素センサは、排気ガスに晒される酸化物半導体層の抵抗率の変化を検出することによって酸素濃度を測定する。
【0005】
図14に、従来の酸素センサ800を示す。図14に示す酸素センサ800は、センサ素子810と、センサ素子810が挿通固定されるハウジング840とを備えている。
【0006】
センサ素子810は、酸素を検出するためのガス検出層811と、ガス検出層811を支持する基板812とを有する。センサ素子810は、ハウジング840の先端側にガス検出層811が露出するように配置されている。
【0007】
ハウジング840は、ねじ山が形成されたねじ部840a(ねじ山は不図示)をその外側面に有している。ハウジング840のねじ部840aを排気管に形成されたねじ孔に螺合させることにより、酸素センサ800が排気管に固定される。
【0008】
ハウジング840の先端部には、センサ素子810のガス検出層811を覆うように、先端側カバー850が設けられている。先端側カバー850は、内側カバー部材851および外側カバー部材852から構成されている。内側カバー部材851および外側カバー部材852のそれぞれには、排気ガスを内部に導入するための開口部(通気孔)853が形成されている。
【0009】
ハウジング840とセンサ素子810との間は、ガラスシール部870によって気密封止されている。ガラスシール部870は、ガラス材料を熱処理によって溶融させ、その後固化させることによって形成されている。
【0010】
ガラスシール部870を挟むように、一対のセラミックススリーブ871および872が配置されている。セラミックススリーブ871および872のそれぞれには、センサ素子810が挿通される孔が形成されている。
【0011】
センサ素子810と外部との電気的な入出力は、リード線820を介して行われる。リード線820とセンサ素子810とは、端子830によって接続されている。端子830とセンサ素子810との接続は、金属製の板ばね材から形成されている端子830を、セラミックスリーブ872に形成されている端子挿入孔872aに挿入することにより行われる。
【0012】
ハウジング840の基端側には、端子830等を収容するように筒状の基端側カバー860が設けられている。基端側カバー860の内部に、リード線820を挿通させるための貫通孔を有するゴム部材862が配置されている。金属材料から形成されている基端側カバー860の一部(ゴム部材862が配置されている部分)860aを内側にかしめることによって、リード線820が固定されるとともに、基端側カバー860が封口されている。
【0013】
図15に、センサ素子810の構造の一例を示す。図15に示すセンサ素子810は、抵抗型のセンサ素子であり、基板812の主面812a上には、ガス検出層として酸化物半導体層811が設けられている。また、基板812の主面812a上には、酸化物半導体層811の抵抗率を検出するための検出電極813も設けられている。酸化物半導体層811の抵抗率は、雰囲気ガス中の酸素分圧に応じて変化するので、この抵抗率の変化を検出電極813で計測することにより、酸素濃度を検出することができる。
【0014】
基板812の裏面812b側には、酸化物半導体層811を昇温させるためのヒータ814が設けられている。ヒータ814は、抵抗損失を利用して加熱を行う抵抗加熱型の発熱素子である。ヒータ814から引き延ばされたヒータ電極814aに電圧を印加すると、所定の形状に形成された発熱体に電流が流れて発熱体が発熱し、そのことによって加熱が行われる。ヒータ814によって酸化物半導体層811を昇温させて速やかに活性化させることにより、内燃機関の始動時における検出精度を向上させることができる。
【0015】
図15に例示したセンサ素子810を用いる場合、セラミックスリーブ872の端子挿入孔872a内で端子830が検出電極813やヒータ電極814aに当接することにより、センサ素子810と端子830とが電気的に接続される。
【特許文献1】特開平8−114571号公報
【特許文献2】特開平5−18921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来の酸素センサは、その長手方向のサイズを小さくすることが難しく、小型化が難しいという問題を有していた。例えば図14に示した酸素センサ800では金属製(例えばNCF750に代表されるNi−Cr合金製)の板ばね材を端子830として用いており、板ばね材の耐熱性は600℃程度である。そのため、その温度以上に端子830が加熱されないように、高温の排気ガスに晒されるガス検出層811からセンサ素子810と端子830との接続部までの距離を長く確保する必要がある。従って、長手方向のサイズ、すなわち、酸素センサ800の中心軸(図中に鎖線で示している。)方向の長さを小さくすることが難しい。なお、ここでは板ばね材の弾性を利用してセンサ素子810と端子830とを接続する構造を例示したが、皿ばね、リングばね等の金属製ばね材の弾性を利用した接続構造を用いる場合には同様の問題が発生する。
【0017】
このように、従来の酸素センサでは、センサ素子と端子との接続構造の耐熱性が不足しているために、小型化が困難であった。一部の輸送機器(例えば自動二輪車)は、排気管の周囲に空間的な余裕が乏しいので、酸素センサのいっそうの小型化が要望されている。
【0018】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、センサ素子と端子とが耐熱性に優れた接続構造によって接続されている、小型化に適したガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によるガスセンサは、所定のガスを検出するためのガス検出層を有するセンサ素子と、前記センサ素子と外部との間で電気的な入出力を行うためのリード線と、前記センサ素子と前記リード線とを電気的に接続する端子と、前記端子と前記センサ素子とを接合する接合部と、を備え、前記接合部は、ガラス材料と、1000℃以上の融点を有する金属材料と、を含む。
【0020】
ある好適な実施形態において、前記金属材料は、白金、タングステン、モリブデン、ニッケル、鉄、レニウム、クロムおよびチタンのうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
ある好適な実施形態において、前記金属材料は白金である。
【0022】
ある好適な実施形態において、前記センサ素子は、前記ガス検出層の層法線方向が前記ガスセンサの長手方向に対して略平行になるように配置されている。
【0023】
ある好適な実施形態において、前記センサ素子は、前記ガス検出層を支持する基板をさらに有し、前記センサ素子は、前記基板の主面が前記ガスセンサの長手方向に対して略直交するように配置されている。
【0024】
ある好適な実施形態において、前記センサ素子の前記基板は、前記端子の先端部が挿入される端子挿入孔を有し、前記端子は前記端子挿入孔内で前記センサ素子に接合されている。
【0025】
ある好適な実施形態において、前記端子は、電極棒を含み、前記電極棒と前記センサ素子とは前記接合部によって接合されている。
【0026】
ある好適な実施形態において、前記電極棒は、1000℃以上の融点を有する金属材料から形成されている。
【0027】
ある好適な実施形態において、前記電極棒は白金から形成されている。
【0028】
ある好適な実施形態において、前記電極棒は、タングステン、モリブデン、ニッケル、鉄、レニウム、クロムおよびチタンのうちの少なくとも1つを含む金属材料から形成された電極棒本体と、前記電極棒本体の表面上に形成された白金めっき層とを有する。
【0029】
ある好適な実施形態において、本発明によるガスセンサは、前記電極棒が挿通されるセラミックス部材をさらに備え、前記セラミックス部材の前記センサ素子側の端部は、前記電極棒を包囲し、且つ、前記センサ素子に接合されている。
【0030】
ある好適な実施形態において、本発明によるガスセンサは、前記電極棒と前記セラミックス部材との間に設けられたガラスシール部をさらに備える。
【0031】
ある好適な実施形態において、本発明によるガスセンサは酸素センサである。
【0032】
本発明による空燃比制御装置は、上記構成を有するガスセンサを備えている。
【0033】
本発明による輸送機器は、上記構成を有する空燃比制御装置を備えている。
【0034】
本発明によるガスセンサでは、ガラス材料と1000℃以上の融点を有する金属材料とを含む接合部によってセンサ素子と端子とが接合されており、このような接合部は、耐熱性に優れている。また、接合部自体が耐熱性に優れていることに加え、このような接合部が設けられていることにより、端子の材料として、板ばね材のような特殊な物性を有する材料を用いる必要がなくなる。つまり、端子の材料の選択に制約が少なく、耐熱性の高い材料を用いることができる。そのため、本発明によるガスセンサでは、センサ素子と端子とを耐熱性に優れた接続構造によって接続することができる。従って、高温の排気ガスに晒されるガス検出層からセンサ素子と端子との接続箇所(つまり接合部)までの距離を長く確保する必要がない。そのため、ガスセンサの長手方向のサイズ、すなわち、ガスセンサの中心軸方向の長さを小さくすることができ、ガスセンサを小型化することができる。
【0035】
接合部に含まれる金属材料としては、白金、タングステン、モリブデン、ニッケル、鉄、レニウム、クロムおよびチタンのうちの少なくとも1つを含むものが好適に用いられる。
【0036】
ガスセンサの耐久性の観点からは、接合部に含まれる金属材料は、白金であることがもっとも好ましい。白金は、融点が高いだけでなく、耐酸化性に優れる。つまり、白金の表面は、高温の排気ガスに晒されても酸化しにくい。そのため、金属材料として白金のみを含む接合部は、導電率が低下しにくく、高温の排気ガス環境下でも長時間使用することができる。
【0037】
センサ素子は、ガス検出層の層法線方向がガスセンサの長手方向に対して略平行になるように配置されていることが好ましい。このような配置(「横置き配置」)を採用することにより、ガスセンサの長手方向のサイズをより小さくすることができ、ガスセンサのいっそうの小型化を図ることができる。
【0038】
センサ素子がガス検出層を支持する基板をさらに有している場合には、センサ素子を、基板の主面がガスセンサの長手方向に対して略直交するように配置することにより、上記の横置き配置を実現することができる。
【0039】
横置き配置を採用する場合、センサ素子の基板は、典型的には、端子の先端部が挿入される端子挿入孔を有し、この端子挿入孔内で端子がセンサ素子に接合されている。
【0040】
端子が電極棒を含んでいる構成では、電極棒とセンサ素子とが接合部によって接合される。センサ素子と端子との接続構造の耐熱性を高くするためには、この電極棒も耐熱性の高い材料から形成されていることが好ましい。
【0041】
電極棒は、具体的には、1000℃以上の融点を有する金属材料から形成されていることが好ましい。
【0042】
電極棒は、白金から形成されていることがもっとも好ましい。白金から形成された電極棒は、その表面が酸化しにくいので、高温の排気ガスに晒されても導電率が低下しにくい。
【0043】
また、電極棒が、タングステン、モリブデン、ニッケル、鉄、レニウム、クロムおよびチタンのうちの少なくとも1つを含む金属材料から形成された電極棒本体と、電極棒本体の表面上に形成された白金めっき層とを有する構成を用いることも好ましい。このような構成を用いることにより、電極棒全体を白金から形成する場合よりも製造コストを低減することができ、また、電極棒の導電率の低下を十分に抑制することができる。
【0044】
ガスセンサが、電極棒が挿通されるセラミックス部材をさらに備える場合には、このセラミックス部材のセンサ素子側の端部が、電極棒を包囲し、且つ、センサ素子に接合されていると、センサ素子が、電極棒だけでなく、セラミックス部材によっても保持される。そのため、センサ素子をガスセンサに強固に接続することができ、振動や衝撃に対するガスセンサの信頼性を向上させることができる。
【0045】
また、電極棒と前記セラミックス部材との間にガラスシール部を設けると、電極棒とセラミックス部材とがガラスシール部によって接合されるので、電極棒の強度が向上し、振動や衝撃に対するガスセンサの信頼性をいっそう向上させることができる。
【0046】
本発明は、ガスセンサ全般に広く用いることができ、例えば、酸素を検出する酸素センサに好適に用いることができる。本発明による酸素センサは、内燃機関の空燃比を制御する空燃比制御装置に好適に用いられ、本発明による酸素センサを備えた空燃比制御装置は、各種の輸送機器に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によると、センサ素子と端子とが耐熱性に優れた接続構造によって接続されている、小型化に適したガスセンサが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、以下では酸素を検出するための酸素センサを例示するが、本発明は酸素センサに限定されず、ガスセンサ全般に好適に用いられる。
【0049】
図1に、本実施形態における酸素センサ100を示す。酸素センサ100は、所定のガス(ここでは酸素)を検出するためのガス検出層11を有するセンサ素子10と、センサ素子10と外部との間で電気的な入出力を行うためのリード線20と、センサ素子10とリード線20とを電気的に接続する端子30とを備えている。
【0050】
酸素センサ100は、さらに、酸素センサ100の構成要素の一部を収容し、酸素センサ100を排気管に固定するためのハウジング40を備えている。ハウジング40の外側面には、ねじ山が形成されたねじ部40a(ねじ山は図示していない)が設けられている。このねじ部40aを排気管に形成されたねじ孔に螺合させることにより、酸素センサ100を排気管に固定することができる。ハウジング40は、典型的には金属材料(例えばステンレス鋼)から形成されている。
【0051】
センサ素子10は、図1に示されているように、ハウジング40の先端側に位置するように配置されている。センサ素子10は、上述したガス検出層11に加え、ガス検出層11を支持する基板12を有している。基板12は、端子30の先端部が挿入される端子挿入孔12aを有し、端子挿入孔12a内で後述する接合部80によって端子30とセンサ素子10とが接合されている。本実施形態におけるセンサ素子10は、抵抗型のセンサ素子である。抵抗型のセンサ素子10の具体的な構成については後述する。
【0052】
センサ素子10を覆うように、ハウジング40の先端側に先端側カバー50が設けられている。先端側カバー50は、内側カバー部材51および外側カバー部材52から構成された二重構造を有している。内側カバー部材51および外側カバー部材52のそれぞれには、排気ガスを内部に導入するための開口部(通気孔)53が形成されている。内側カバー部材51および外側カバー部材52は、典型的には金属材料(例えばステンレス鋼)から形成されており、ハウジング40に例えば溶接によって接合されている。
【0053】
また、ハウジング40の基端側には、端子30のハウジング40から露出した部分を覆うように筒状(例えば円筒状)の基端側カバー60が設けられている。基端側カバー60は、典型的には金属材料(例えばステンレス鋼)から形成されており、ハウジング40に例えば溶接によって接合されている。基端側カバー60のハウジング40から遠い方の端部に、基端側カバー60を封口する封口部材62が配置されている。
【0054】
封口部材62は、リード線20および端子30が挿入される円柱状の貫通孔62aを有している。封口部材62は、耐熱性樹脂から形成されている。耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂のような熱可塑性樹脂を用いてもよいし、フェノール樹脂のような熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0055】
リード線20は、金属材料(例えば銅)から形成されており、絶縁材料(PTFEなどの樹脂)によって被覆されている。リード線20は、フッ素ゴムやシリコンゴムなどから形成された蛇腹状の防水キャップ64によってさらに覆われており、防水キャップ64ごと貫通孔62aに挿入されている。リード線20は、外部(例えば空燃比制御装置のコンピュータ)に接続されており、センサ素子10と外部との間での電気的な入出力(例えばセンサ素子10からの検出信号の出力や、センサ素子10への電力の供給)は、リード線20を介して行われる。
【0056】
端子30は、封口部材62の貫通孔62aに圧入固定された圧入部32と、圧入部32からセンサ素子10側に延びる電極棒(ワイヤー)34とを含んでいる。
【0057】
圧入部32は、金属材料(ステンレス鋼やニッケル合金など)から形成されている。圧入部32の中央部32aは、略円柱状であり、封口部材62の貫通孔62aよりも若干大きな外径を有している。従って、圧入部32を封口部材62の貫通孔62aに圧入することにより、貫通孔62aがほぼ完全に閉塞される。また、この圧入により、封口部材62の外径も本来の外径より若干大きくなる。つまり、基端側カバー60に対して封口部材62が圧入固定された状態となる。そのため、基端側カバー60と封口部材62との間もほぼ完全に閉塞される。
【0058】
圧入部32は、その一端部32bをかしめることによって、リード線20に接続されている。また、圧入部32は、その他端部32cをかしめることによって、電極棒34に接続されている。勿論、圧入部32の他端部32cと電極棒34とを溶接(例えば抵抗溶接やレーザー溶接)によって接続してもよい。
【0059】
電極棒34は、金属材料から形成されており、電極棒34の先端部が、基板12の端子挿入孔12a内でセンサ素子10に接合されている。電極棒34とハウジング40との間は、ガラスシール部70によって気密封止されている。ガラスシール部70は、ガラス材料を熱処理によって溶融させ、その後固化させることによって形成されている。ガラス材料としては、封止材として公知の種々の材料を用いることができる。ガラスシール部70が設けられていることにより、ハウジング40の基端側、すなわち、封口部材62や端子30、リード線20の設けられている空間への排気ガスの侵入が防止される。
【0060】
ガラスシール部70を挟むように、一対のセラミックス部材(セラミックススリーブ)71および72が配置されている。以下では、ガラスシール部70に対してセンサ素子10側に配置されたセラミックス部材71を「第1のセラミックス部材」と呼び、ガラスシール部70に対して第1のセラミックス部材71とは反対側に配置されたセラミックス部材72を「第2のセラミックス部材」と呼ぶ。第1および第2のセラミックス部材71および72は、耐熱性および絶縁性に優れたセラミックス材料(例えばアルミナ)から形成されており、電極棒34が挿通される孔をそれぞれ有している。
【0061】
次に、図2および図3を参照しながら、抵抗型のセンサ素子10の構成を具体的に説明する。図2は、酸素センサ100のセンサ素子10近傍を拡大して示す断面図である。また、図3(a)は、センサ素子10を酸素センサ100の中心軸(図1および図2中に鎖線で示されている。)方向から見た上面図であり、図3(b)は、図3(a)におけるガス検出層11を省略した図である。
【0062】
センサ素子10は、既に述べたように、ガス検出層11と、ガス検出層11を支持する基板12とを有する。
【0063】
ガス検出層11は、酸化物半導体から形成されており、基板12の主面12p上に設けられている。酸化物半導体から形成されたガス検出層11は、微小な酸化物半導体粒子を含む多孔質構造を有し、雰囲気(つまり排気ガス)中の酸素分圧に応じて酸素を放出あるいは吸収する。これにより、ガス検出層11中の酸素空孔濃度が変化するので、ガス検出層11の抵抗率が変化する。酸化物半導体としては、例えばチタニア(二酸化チタン)やセリア(ニ酸化セリウム)を用いることができる。
【0064】
基板12は、絶縁性を有する材料(典型的にはアルミナなどのセラミックス材料)から形成されている。基板12の主面12p上には、図3(a)および(b)に示しているように、ガス検出層11の抵抗率を検出するための検出電極13や、ガス検出層11を昇温させるためのヒータ14も設けられている。
【0065】
検出電極13は、導電性を有する材料から形成されており、典型的には、白金や白金ロジウム合金、金などの金属材料から形成されている。ガス検出層11の抵抗率の変化を効率よく計測するためには、検出電極13のガス検出層11に重なる部分は、図3(b)に示されているように、櫛歯状に形成されていることが好ましい。
【0066】
ヒータ14は、抵抗損失を利用して加熱を行う抵抗加熱型の発熱素子である。ヒータ14は、ガス検出層11の周囲に蛇行するようなパターンで形成されている。ヒータ14の材料としては、白金やタングステンなどの金属材料を用いることができる。また、非金属材料を用いることもでき、例えば、酸化レニウムなどの良導体酸化物を用いることができる。
【0067】
ヒータ14から引き延ばされたヒータ電極14aに電圧を印加することにより、加熱が行われる。ヒータ14によってガス検出層11を昇温させて速やかに活性化させることにより、内燃機関の始動時における検出精度を向上させることができる。なお、ここでは基板12の主面12p上にヒータ14が設けられている構成を例示したが、基板12の裏面上にヒータ14を設けてもよい。
【0068】
また、ここでは図示しないが、ガス検出層11上には、触媒層が設けられていることが好ましい。触媒層は、触媒金属を含んでおり、触媒金属の触媒作用によって、検出すべきガス(つまり酸素)以外の少なくとも1種の物質を分解する。具体的には、ガス検出層11による酸素の検出に悪影響を及ぼすガスや微粒子(例えば完全には燃焼しなかった炭化水素や炭素、窒素酸化物など)を分解し、そのようなガスや微粒子がガス検出層11の表面に付着するのを防止する。触媒金属としては、例えば白金が用いられる。
【0069】
続いて、酸素センサ100におけるセンサ素子10と端子30との接続構造を説明する。
【0070】
本実施形態における酸素センサ100は、図1および図2に示すように、端子30とセンサ素子10とを接合する接合部80を備えている。ここでは、接合部80は、基板12の端子挿入孔12a内に設けられており、端子挿入孔12a内で端子30の電極棒34とセンサ素子10(より具体的にはセンサ素子10の検出電極13やヒータ電極14a)とが接合部80によって接合されている。
【0071】
本実施形態における接合部80は、ガラス材料と、1000℃以上の融点を有する金属材料とを含んでいる。つまり、接合部80は、ガラス材料と高融点金属材料とを含む混合物から形成されている。このような接合部80によって、センサ素子10と端子30とが物理的に結合されるとともに電気的に接続されている。
【0072】
上述したように、本実施形態における酸素センサ100では、ガラス材料と1000℃以上の融点を有する金属材料とを含む接合部80によってセンサ素子10と端子30とが接合されており、このような接合部80は、耐熱性に優れている。また、接合部80自体が耐熱性に優れていることに加え、このような接合部80が設けられていることにより、端子30の材料として、板ばね材のような特殊な物性を有する材料を用いる必要がなくなる。つまり、端子30の材料の選択に制約が少なく、耐熱性の高い材料を用いることができる。そのため、本実施形態における酸素センサ100では、センサ素子10と端子30とを耐熱性に優れた接続構造によって接続することができる。従って、高温の排気ガスに晒されるガス検出層11からセンサ素子10と端子30との接続箇所(つまり接合部80)までの距離を長く確保する必要がない。そのため、酸素センサ100の長手方向のサイズ、すなわち、酸素センサ100の中心軸方向の長さを小さくすることができ、酸素センサ100を小型化することができる。
【0073】
接合部80は、具体的には、ガラス材料と、1000℃以上の融点を有する金属材料の粉末とを含む混合物を加熱して溶融させ、その後固化させることによって形成される。ガラス材料としては、封止材として公知の種々の材料を用いることができ、例えば、ZnO−SiO2−MgO系ガラス材料やZnO−B23−Bi23系ガラス材料、SiO2−B23−MgO系ガラス材料などを用いることができる。センサ素子10と端子30との電気的な接続を十分に確保するためには、接合部80は、金属材料を20wt%以上含むことが好ましい。金属材料の含有率が20wt%を下回ると、接合部80の抵抗値が急増してしまう。ただし、ガラス材料による接合強度を十分に高く保つため、および、高価な金属材料を用いたときの製造コストの増加を抑制するためには、金属材料の含有率は70wt%以下であることが好ましい。
【0074】
接合部80に含まれる金属材料としては、具体的には、白金(Pt)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、レニウム(Re)、クロム(Cr)およびチタン(Ti)のうちの少なくとも1つを含むものを用いることができる。白金、タングステン、モリブデン、ニッケル、鉄、レニウム、クロムおよびチタンの融点は下記表1に示すようにいずれも1000℃以上である。接合部80を形成する際には、ガラス材料に対し、上記金属元素の粉末を1種類だけ添加してもよいし、2種類以上添加してもよく、上記金属元素を含む合金の粉末を添加してもよい。1000℃以上の融点を有する合金としては、例えばW−Re(タングステン−レニウム)合金やPt−Re(白金−レニウム)合金を用いることができる。
【0075】
【表1】

【0076】
酸素センサ100の耐久性の観点からは、接合部80に含まれる金属材料は、白金であることがもっとも好ましい。白金は、融点が高いだけでなく、耐酸化性に優れる。つまり、白金の表面は、高温の排気ガスに晒されても酸化しにくい。そのため、金属材料として白金のみを含む接合部80は、導電率が低下しにくく、高温の排気ガス環境下でも長時間使用することができる。ただし、白金は高価であるので、製造コストを低減する観点からは、例示した他の材料を用いることが好ましい。
【0077】
また、本実施形態における酸素センサ100では、図1および図2に示しているように、センサ素子10は、ガス検出層11の層法線方向(図2中に矢印Dとして示している。)が酸素センサ100の長手方向(中心軸方向)に対して略平行になるように配置されている。言い換えると、センサ素子10は、基板12の主面12pが酸素センサ100の長手方向に対して略直交するように配置されている。これに対し、図14に示した従来の酸素センサ800では、センサ素子810は、ガス検出層811の層法線方向が酸素センサ800の長手方向に対して略直交するように(言い換えると基板812の主面が酸素センサ800の長手方向に対して略平行になるように)配置されている。
【0078】
つまり、本実施形態では、センサ素子10の配置角度が従来とはほぼ90°異なっている。本願明細書では、本実施形態のように、ガス検出層11の層法線方向が酸素センサ100の長手方向(中心軸方向)に対して略平行になるようなセンサ素子10の配置を「横置き配置」と呼び、従来のように、ガス検出層811の層法線方向が酸素センサ800の長手方向に対して略平行になるようなセンサ素子810の配置を「縦置き配置」と呼ぶ。
【0079】
本実施形態のように横置き配置を採用することにより、酸素センサ100の長手方向のサイズをより小さくすることができるので、酸素センサ100のいっそうの小型化を図ることができる。図4に、横置き配置が採用された本実施形態における酸素センサ100と、縦置き配置が採用された従来の酸素センサ800とについて、試作例のサイズを比較して示す。図4に示されているように、本実施形態における酸素センサ100の長さL1が29mmであるのに対し、従来の酸素センサ800の長さL2は46mmであった。つまり、本実施形態の酸素センサ100では、従来に比べ、長手方向のサイズを約2/3にすることができた。
【0080】
なお、横置き配置において、ガス検出層11の層法線方向は酸素センサ100の長手方向に対して厳密に平行でなくてもよい。ガス検出層11の層法線方向は酸素センサ100の長手方向に略平行であればよく、具体的には、ガス検出層11の層法線方向と酸素センサ100の長手方向とのなす角が10°以下であればよい。両者のなす角が10°以下であれば、酸素センサ100の長手方向のサイズはほとんど増加しないので、ガス検出層11の層法線方向と酸素センサ100の長手方向とが平行である場合とほぼ同様の小型化を図ることができる。
【0081】
また、本発明は、縦置き配置を採用する場合にも好適に用いられる。縦置き配置を採用した場合、従来の耐熱性に欠ける接続構造では、ガス検出層からセンサ素子と端子との接続箇所までの距離を十分に確保するために長い基板(例えば図14に示されている基板812)を用いる必要があった。これに対し、本発明によれば、センサ素子と端子との接続箇所がガス検出層と近接しても問題ないので、長い基板を用いる必要がない。そのため、縦置き配置を採用した場合にも、酸素センサの小型化を実現することができる。
【0082】
センサ素子10と端子30との接続構造の耐熱性を高くするためには、電極棒34も耐熱性の高い材料から形成されていることが好ましい。具体的には、電極棒34は、1000℃以上の融点を有する金属材料から形成されていることが好ましい。既に述べたように、白金は優れた耐酸化性を有しているので、その表面が酸化しにくい。そのため、高温の排気ガスに晒されることによる電極棒34の導電率の低下を抑制する観点からは、電極棒34は、白金から形成されていることがもっとも好ましい。
【0083】
ただし、白金は高価である。そのため、製造コストの観点から、電極棒34の材料として、1000℃以上の融点を有する他の(白金以外の)金属材料を用いてもよく、具体的には、タングステン、モリブデン、ニッケル、鉄、レニウム、クロムおよびチタンのうちの少なくとも1つを含む金属材料を用いてもよい。
【0084】
また、図5に示すように、電極棒34が、タングステン、モリブデン、ニッケル、鉄、レニウム、クロムおよびチタンのうちの少なくとも1つを含む金属材料から形成された電極棒本体34aと、電極棒本体34aの表面上に形成された白金めっき層34bとを有する構成を用いることも好ましい。このような構成を用いることにより、電極棒34全体を白金から形成する場合よりも製造コストを低減することができ、また、電極棒34の導電率の低下(特にセンサ素子10と接続される部分近傍が酸化されることによる導電率の低下)を十分に抑制することができる。
【0085】
続いて、図6および図7を参照しながら、本実施形態における他の酸素センサ200を説明する。図6は、酸素センサ200を模式的に示す断面図であり、図7は、酸素センサ200のセンサ素子10近傍を拡大して示す図である。
【0086】
酸素センサ200では、第1のセラミックス部材(セラミックススリーブ)71のセンサ素子10側の端部71aが、電極棒34を包囲するようにハウジング40の先端側に延びている。また、この端部71aは、センサ素子10に接合されている。具体的には、センサ素子10と端子30とを接合するための接合部80が、基板12の端子挿入孔12aの上方にも延びており、このような接合部80によって、第1のセラミックス部材71の端部71aとセンサ素子10とが接合されている。
【0087】
このように酸素センサ200では、第1のセラミックス部材71のセンサ素子10側の端部71aが、電極棒34を包囲し、且つ、センサ素子10に接合されているので、センサ素子10は、電極棒34だけでなく、第1のセラミックス部材71によっても保持される。そのため、図1などに示したように電極棒34がむき出しになっている(つまり電極棒34のみでセンサ素子10が保持されている)場合に比べ、センサ素子10を酸素センサ200に強固に接続することができる。従って、振動や衝撃に対する酸素センサ200の信頼性が向上する。
【0088】
また、図8および図9に示す本実施形態におけるさらに他の酸素センサ300のように、電極棒34と第1のセラミックス部材71との間にもガラスシール部70を設けると、電極棒34と第1のセラミックス部材71とがガラスシール部70によって接合されるので、電極棒34の強度が向上する。そのため、振動や衝撃に対する酸素センサ300の信頼性がいっそう向上する。
【0089】
なお、ここまでの説明では抵抗型のセンサ素子10を例示したが、センサ素子10としては、酸素を検出し得る種々の素子を用いることができる。例えば、図10に示すような起電力型のセンサ素子10を用いてもよい。
【0090】
図10に示すセンサ素子10のガス検出層11Aは、固体電解質から形成されている。固体電解質としては、ジルコニアなどを用いることができる。ガス検出層11Aの中央付近には、測定基準となるガスすなわち大気が導入される基準大気室15が形成されている。
【0091】
ガス検出層11Aに接触し、且つ、大気に晒されるように基準電極16Aが設けられている。また、ガス検出層11Aに接触し、且つ、排気ガスに晒されるように測定電極16Bが設けられている。基準電極16Aおよび測定電極16Bは、基板12の端子挿入孔12a内で接合部80を介して電極棒34に接続されている。なお、ここでは図示していないが、基板12の裏面上には、ガス検出層11Aを昇温させるためのヒータが設けられている。
【0092】
基準電極16Aと測定電極16Bとの間には、それぞれのガス(大気および排気ガス)中の酸素分圧に応じた起電力が発生する。そのため、この起電力を測定することによって、排気ガス中に含まれる酸素を検出することができる。
【0093】
また、図11に示すような限界電流式のセンサ素子10を用いてもよい。図11に示すセンサ素子10のガス検出層11Bも、固体電解質から形成されている。ガス検出層11Bを挟むように、陰極18Aと陽極18Bとが設けられている。陰極18Aと陽極18Bとの間に電圧を印加すると、陰極18Aでは、酸素が電子を奪われてイオン化し、ガス検出層11Bへの酸素イオンの注入が行われる。また、陽極18Bでは、ガス検出層11B内を陰極18A側から陽極18B側に移動してきた酸素イオンが電子を受け取って酸素として放出される。この現象は、固体電解質の酸素ポンプ作用として知られている。
【0094】
陰極18Aへの酸素の供給は、ガス検出層11Bを取り囲むように設けられた拡散律速層17を通じて行われる。拡散律速層17は、多孔質のセラミックス材料(例えば多孔質スピネル)から形成されており、酸素のガス拡散を律速する。つまり、陰極18Aへの酸素の供給は、拡散律速層17によって制限される。そのため、陰極18Aおよび陽極18B間の電流−電圧特性には、飽和電流特性が現れる。このような飽和電流は、限界電流と呼ばれ、その大きさは、雰囲気中の酸素濃度によって決定される。
【0095】
このように、限界電流式のセンサ素子10では、陰極18Aへの酸素の供給をガス拡散によって行い、酸素濃度に比例した限界電流を測定することによって、酸素濃度を検出する。なお、ここでは図示していないが、基板12の裏面側には、固体電界質から形成されたガス検出層11Bをイオン伝導に適した温度に昇温させるためのヒータが設けられている。
【0096】
本実施形態における酸素センサ100、200および300は、各種輸送機器の内燃機関から排出される排気ガス中の酸素の検出に好適に用いられる。本実施形態における酸素センサ100、200および300は、小型化に適しているので、自動二輪車のように、排気管の周囲に空間的な余裕が乏しい輸送機器に特に好適に用いられる。
【0097】
図12に、本実施形態における酸素センサ100を備えた自動二輪車500を模式的に示す。自動二輪車500は、本体フレーム501と内燃機関600とを備える。本体フレーム501の前端にヘッドパイプ502が設けられている。ヘッドパイプ502にはフロントフォーク503が左右方向に揺動可能に設けられている。また、フロントフォーク503の下端に前輪504が回転可能に支持されている。ヘッドパイプ502の上端にはハンドル505が取り付けられている。
【0098】
本体フレーム501の後端上部から後方に伸びるようにシートレール506が取り付けられている。本体フレーム501の上部には燃料タンク507が設けられ、シートレール506上にメインシート508aおよびタンデムシート508bが設けられている。また、本体フレーム501の後端に後方へ伸びるリアアーム509が取り付けられている。リアアーム509の後端に後輪510が回転可能に支持されている。
【0099】
本体フレーム501の中央部には内燃機関600が保持されている。内燃機関600の前部にはラジエータ511が取り付けられている。内燃機関600の排気ポートには排気管630が接続されている。排気管630には、酸素センサ100、三元系触媒604および消音器606が設けられている。酸素センサ100は、排気管630内を流れる排気ガス中の酸素を検出する。
【0100】
内燃機関600には、変速機515が連結されており、変速機515の出力軸516は駆動スプロケット517に取り付けられている。駆動スプロケット517はチェーン518を介して後輪510の後輪スプロケット519に連結されている。
【0101】
図13は、内燃機関600の制御系の主要な構成を示している。内燃機関600のシリンダ601には吸気弁610、排気弁606および点火プラグ608が設けられている。またエンジンを冷却する冷却水の水温を計測する水温センサ616が設けられている。吸気弁610は、空気吸入口をもつ吸気管622に接続されている。吸気管622にはエアーフローメータ612、スロットルセンサ614および燃料噴射装置611が設けられている。
【0102】
エアーフローメータ612、スロットルセンサ614、燃料噴射装置611、水温センサ616、点火プラグ608および酸素センサ100は、制御部であるコンピュータ618に接続されている。コンピュータ618には自動二輪車500の速度を示す車速信号620も入力される。
【0103】
図示しないセルモータによって、ライダーが内燃機関600を始動させると、コンピュータ618はエアーフローメータ612、スロットルセンサ614および水温センサ616から得られる検出信号および車速信号620に基づき、最適な燃料量を計算し、計算結果に基づいて、燃料噴射装置611へ制御信号を出力する。燃料噴射装置611から噴射される燃料は、吸気管622から供給される空気と混合され、適切なタイミングで開閉される吸気弁610を介してシリンダ601へ噴出される。シリンダ601において噴出された燃料は燃焼し、排気ガスとなって排気弁606を介して排気管630へ導かれる。
【0104】
酸素センサ100は排気ガス中の酸素を検出し、検出信号をコンピュータ618へ出力する。コンピュータ618は、酸素センサ100からの信号に基づき、空燃比が理想空燃比からどの程度ずれているかを判断する。そして、エアーフローメータ612およびスロットルセンサ614から得られる信号によって定まる空気量に対して、理想空燃比となるように燃料噴射装置611から噴出する燃料量を制御する。このように、酸素センサ100と、酸素センサ100に接続されたコンピュータ(制御部)618とを含む空燃比制御装置によって、内燃機関の空燃比が適切に制御される。
【0105】
なお、ここでは、自動二輪車を例示したが、本実施形態における酸素センサ100(あるいは200、300)は、四輪自動車などの他の自動車両にも好適に用いられる。内燃機関は、ガソリンエンジンに限られず、ディーゼルエンジンであってもよい。
【0106】
また、本実施形態では、酸素センサを例として本発明を説明したが、本発明は、酸素センサに限定されず、種々のガスを検出するためのセンサに好適に用いられる。例えば、本発明は、NOx濃度を検出するためのNOxセンサや、CO濃度を検出するためのCOセンサ、HC濃度を検出するためのHCセンサなどにも好適に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によると、センサ素子と端子とが耐熱性に優れた接続構造によって接続されている、小型化に適したガスセンサが提供される。本発明は、酸素センサをはじめとする種々のガスセンサに好適に用いられる。
【0108】
本発明によるガスセンサは、乗用車、バス、トラック、オートバイ、自動三輪車、トラクター、飛行機、モーターボート、土木車両などの種々の輸送機器用の空燃比制御装置に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の好適な実施形態における酸素センサ100を模式的に示す断面図である。
【図2】酸素センサ100が備えるセンサ素子近傍を拡大して示す断面図である。
【図3】(a)は、センサ素子を酸素センサの中心軸方向から見た上面図であり、(b)は、(a)におけるガス検出層を省略した図である。
【図4】本発明の好適な実施形態における酸素センサ100および従来の酸素センサ800について、試作例のサイズを比較して示す図である。
【図5】酸素センサ100が備えるセンサ素子近傍を拡大して示す断面図である。
【図6】本発明の好適な実施形態における他の酸素センサ200を模式的に示す断面図である。
【図7】酸素センサ200が備えるセンサ素子近傍を拡大して示す断面図である。
【図8】本発明の好適な実施形態におけるさらに他の酸素センサ300を模式的に示す断面図である。
【図9】酸素センサ300が備えるセンサ素子近傍を拡大して示す断面図である。
【図10】起電力型のセンサ素子を模式的に示す断面図である。
【図11】限界電流式のセンサ素子を模式的に示す断面図である。
【図12】酸素センサ100を備えた自動二輪車500を模式的に示す側面図である。
【図13】図12に示す自動二輪車500における内燃機関の制御系を模式的に示す図である。
【図14】従来の酸素センサ800を模式的に示す断面図である。
【図15】酸素センサ800が備えるセンサ素子を模式的に示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0110】
10 センサ素子
11、11A ガス検出層
12 基板
12a 端子挿入孔
13 検出電極
14 ヒータ
14a ヒータ電極
15 基準大気室
16A 基準電極
16B 測定電極
17 拡散律速層
18A 陰極
18B 陽極
20 リード線
30 端子
32 圧入部
34 電極棒
34a 電極棒本体
34b 白金めっき層
40 ハウジング
50 先端側カバー
60 基端側カバー
62 封口部材
64 防水キャップ
70 ガラスシール部
71 第1のセラミックス部材
71a 第1のセラミックス部材のセンサ素子側の端部
72 第2のセラミックス部材
80 接合部
100、200、300 酸素センサ
500 自動二輪車
600 内燃機関

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のガスを検出するためのガス検出層を有するセンサ素子と、
前記センサ素子と外部との間で電気的な入出力を行うためのリード線と、
前記センサ素子と前記リード線とを電気的に接続する端子と、
前記端子と前記センサ素子とを接合する接合部と、を備え、
前記接合部は、ガラス材料と、1000℃以上の融点を有する金属材料と、を含むガスセンサ。
【請求項2】
前記金属材料は、白金、タングステン、モリブデン、ニッケル、鉄、レニウム、クロムおよびチタンのうちの少なくとも1つを含む請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記金属材料は白金である請求項1または2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記センサ素子は、前記ガス検出層の層法線方向が前記ガスセンサの長手方向に対して略平行になるように配置されている請求項1から3のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記センサ素子は、前記ガス検出層を支持する基板をさらに有し、
前記センサ素子は、前記基板の主面が前記ガスセンサの長手方向に対して略直交するように配置されている請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記センサ素子の前記基板は、前記端子の先端部が挿入される端子挿入孔を有し、
前記端子は前記端子挿入孔内で前記センサ素子に接合されている請求項5に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記端子は、電極棒を含み、
前記電極棒と前記センサ素子とが前記接合部によって接合されている請求項1から6のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記電極棒は、1000℃以上の融点を有する金属材料から形成されている請求項7に記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記電極棒は白金から形成されている請求項8に記載のガスセンサ。
【請求項10】
前記電極棒は、タングステン、モリブデン、ニッケル、鉄、レニウム、クロムおよびチタンのうちの少なくとも1つを含む金属材料から形成された電極棒本体と、前記電極棒本体の表面上に形成された白金めっき層とを有する請求項8に記載のガスセンサ。
【請求項11】
前記電極棒が挿通されるセラミックス部材をさらに備え、
前記セラミックス部材の前記センサ素子側の端部は、前記電極棒を包囲し、且つ、前記センサ素子に接合されている請求項7から10のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項12】
前記電極棒と前記セラミックス部材との間に設けられたガラスシール部をさらに備える、請求項11に記載のガスセンサ。
【請求項13】
酸素センサである請求項1から12のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項14】
請求項13に記載のガスセンサを備えた空燃比制御装置。
【請求項15】
請求項14に記載の空燃比制御装置を備えた輸送機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−175135(P2009−175135A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312239(P2008−312239)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】