説明

ガスセンサ

【課題】ガス検出室内のオフガスに生じる、半径方向の温度差を小さくし、オフガスを加熱するヒータの消費電力を抑えるとともに、ガス検出室内でのオフガスの結露を好適に防止する水素センサを提供することを課題とする。
【解決手段】ガス検出室25を形成する有底の円筒型のケース20の開口部を閉塞するベース部33に縁部33aを形成し、ベース部33を、縁部33aを介して結露防止ヒータ51で加熱する。そして、ガス検出室25内のオフガスを、ケース20の半径方向の温度差を生じないように、ベース部33で加熱する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば燃料電池車両に備わる燃料電池システムは、燃料電池(Fuel Cell)のアノードに水素が供給されるとともにカソードに酸素が供給され、アノード及びカソードでの電極反応によって発電する。
【0003】
このような燃料電池システムにおいては、燃料電池から排出されるガス(オフガス)に未反応の水素が含まれる場合があるため、オフガスの流路にガスセンサ(水素センサ)を設けて、水素濃度を監視している。
ところで、オフガスには、燃料電池の電極反応で発生した水蒸気(水分)が多く含まれることから、オフガスに含まれる水分が、水素センサの検出素子や水素センサのガス検出室を形成するケース等で結露する場合がある。そして結露水が、水素センサのガス検出素子に付着すると、水素センサの劣化や検出精度の低下などの問題が発生する。
【0004】
このような問題を解決するため、例えば特許文献1には、水素センサのガス検出室におけるオフガスの温度を、水素センサのガス検出室に流入する前のオフガスの温度より高くして、ガス検出室におけるオフガスの飽和水蒸気量を高め、ガス検出室での結露を防止する技術が開示されている。
【0005】
また、水素センサのガス検出室のオフガスを効率よく加熱するため、水素センサのガス検出室を円筒型に形成してその外周に沿ってヒータを配設し、オフガスをガス検出室の周縁部から加熱する技術も考案されている。
【特許文献1】特許第3833559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、円筒型のガス検出室の周縁部からオフガスを加熱する構成の場合、オフガスはガス検出室の周縁部から温度が高くなるため、オフガスには、ガス検出室の周縁部から中心部に向かって温度が低くなるように、ガス検出室の半径方向の温度差が生じる。そして、温度の低い中心部ではオフガスが結露しやすくなるという問題がある。
【0007】
また、水素センサのガス検出室でオフガスの温度を測定する場合、円筒型のガス検出室においてはその中心部に温度センサを備えることが好適であり、中心部の温度に基づいてガス検出室におけるオフガスの温度が管理される。
この場合、ガス検出室内のオフガスにガス検出室の半径方向の温度差が生じ、中心部の温度が低いと、中心部の温度を高めるためにヒータでの加熱が必要になり、仮にガス検出室の周縁部でオフガスの温度が充分に高い場合であっても、オフガスをヒータで加熱することになる。このことによって、消費電力が増大するという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、ガス検出室内のオフガスに生じる温度差を小さくし、オフガスを加熱するヒータの消費電力を抑えるとともに、ガス検出室内でのオフガスの結露を好適に防止できる水素センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、ケース内に形成されるガス検出室と、前記ガス検出室に臨むように備わるガス検出素子を固定するベース部と、前記ガス検出室にガスを導入するガス導入口と、前記ガス導入口から前記ガス検出室に導入された前記ガスを、前記ケースを介して加熱するヒータと、を有するガスセンサであって、前記ヒータの熱を前記ベース部に伝熱する第1伝熱部材を備えることを特徴とした。
【0010】
この発明によると、ガス検出素子を固定するベース部を、第1伝熱部材を介してヒータで加熱できる。したがって、ベース部の温度を好適に高めることができ、ガス検出室に導入されたガスに含まれる水分が、ベース部で結露することを防止できる。
【0011】
また、本発明は、前記ケースは、有底の円筒型であって、前記ベース部は、前記ケースの開口部を閉塞するとともに前記ガス検出室に導入された前記ガスと接触し、前記ガス検出室に導入された前記ガスは、前記ケースの半径方向の温度差を生じないように、前記ベース部によって加熱されることを特徴とした。
【0012】
この発明によると、有底の円筒型のケースの開口部を閉塞するベース部は、ケースの半径方向の温度差を生じないように、ガス検出室に導入されたガスを加熱することができる。したがって、ケースを介して加熱されるガスに生じる、ケースの半径方向の温度差を小さくすることができる。
【0013】
また、本発明は、前記ヒータで直接加熱される第2伝熱部材が、前記ガス検出室の側から前記ケースの底壁部を覆うように配設され、前記ガス検出室に導入された前記ガスは、前記ケースの半径方向の温度差を生じないように、前記第2伝熱部材によって加熱されることを特徴とした。
【0014】
この発明によると、有底の円筒型のケースの底壁部に備わる第2伝熱部材は、ガス検出室に導入されたガスを、ケースの半径方向の温度差を生じないように加熱することができる。したがって、ケースを介して加熱されるガスに生じる、ケースの半径方向の温度差を小さくすることができる。
【0015】
また、本発明は、前記ガス検出室に導入された前記ガスの温度を検出する温度センサが、前記ケースの開口部の中心位置で前記ベース部に固定されて備わるとともに、前記温度センサが検出する前記ガスの温度に基づいて、前記ヒータを制御する制御手段が備わることを特徴とした。
【0016】
この発明によると、温度センサを、円筒型のケースの開口部の中心位置に備えることができるとともに、制御手段が、温度センサが検出する温度に基づいて、ヒータを制御することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガス検出室内のオフガスに生じる温度差を小さくし、オフガスを加熱するヒータの消費電力を抑えるとともに、ガス検出室内でのオフガスの結露を好適に防止できる水素センサを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。なお、以下は、例えば燃料電池システムに備わる水素センサをガスセンサの例にして説明する。
図1は、本実施形態に係る水素センサの平面図、図2は、図1におけるX1−X1断面図、図3は、水素センサの検出部の構造を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る水素センサ(ガスセンサ)1は、本体10と、本体10の下面に備わる検出部2を含んでなり、検出部2は、本体10の下面に形成された、有底の円筒型のケース20と、ケース20に収容されたガス検出素子31、31と、ケース20の外周に沿って配設される結露防止ヒータ(ヒータ)51を主に備えてなる。
そして、ケース20の内部空間がガス検出室25になり、ガス検出室25の温度を測定する温度センサ34が備わる。
このような構成の水素センサ1は、例えば燃料電池システムにおいて燃料電池から排出されたオフガスが流れるオフガス配管105(図2参照)の水素濃度を検出する場合や、その他、燃料電池システムを搭載した燃料電池車両の車内の水素濃度を検出する場合に使用される。
【0019】
本体10は、その外形が直方体形状であって、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)製の容器であり、図2に示すように制御基板11を収容している。本体10の長手方向の両端にはフランジ部12、12が形成されており、各フランジ部12にはカラー13が取り付けられている。そして、図2に示すように、各カラー13に挿入されたボルト14が、オフガスの流れるオフガス配管105に形成された取付座105Aに締結されることで、水素センサ1がオフガス配管105に固定されるようになっている。
【0020】
制御基板11は、例えば図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などからなるコンピュータおよび周辺回路などを備え、ガス検出素子31、31からの信号に基づいて、水素濃度を算出する機能と、温度センサ34が検出するガス検出室25の温度に基づいて、ガス検出室25内が結露しないように結露防止ヒータ51の発熱を制御する機能と、を有する。すなわち、制御基板11は、請求項に記載の制御手段になる。
【0021】
図3に示すように、検出部2に備わるケース20は、有底の円筒型であって、オフガス配管105(図2参照)に取り付けられる。そして、ケース20とオフガス配管105との間には、Oリング21(図2参照)が備わって気密性が高められ、オフガス配管105を通流するオフガスの漏洩を防止している。
【0022】
ケース20は、周壁部22と底壁部23とを有し、底壁部23と対向する側は開口している。
また、底壁部23の中央には、円形の貫通穴が形成されている。そして、この貫通穴がガス導入口24になり、オフガスのガス検出室25への出入口となる。
ケース20は、熱伝導性を有する、例えば、PPS、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、エポキシ等の樹脂や、ステンレス、アルミニウム合金等の金属で形成される。
【0023】
ガス導入口24には、積層体40が備わっている。積層体40は、撥水フィルタ41と防爆フィルタ42とフィルタ加熱ヒータ43とを備え、ガス検出素子31からオフガス配管105(図2参照)に向かう方向に、防爆フィルタ42、フィルタ加熱ヒータ43、撥水フィルタ41の順で積層されることで一体に構成された、3層構造を有する薄型の円盤体である。すなわち、フィルタ加熱ヒータ43は、撥水フィルタ41と防爆フィルタ42とではさまれており、これらは相互に接触している。
【0024】
撥水フィルタ41は、オフガス配管105(図2参照)を通流するオフガスを透過しつつ、オフガスに含まれる液体を透過しないフィルタであり、例えば、テトラフルオロエチレン膜から形成される。これにより、気体状のオフガスをガス検出室25に取り込みつつ、オフガス中に含まれる液体の水分が撥水フィルタ41ではじかれ、ガス検出室25に浸入できない構造になっている。
防爆フィルタ42は、防爆性を確保するためのフィルタであり、例えば、液体状の水を通すことが可能な程度の金属製のメッシュや多孔質体から構成される。
【0025】
フィルタ加熱ヒータ43は、撥水フィルタ41及び防爆フィルタ42を直接加熱する電気ヒータであり、結露防止ヒータ51と同様に、例えば、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ、セラミックスヒータ、ニクロム線などにより構成される。フィルタ加熱ヒータ43に電力を供給するための配線(図示せず)は、例えば、ケース20内を通って制御基板11と接続されており、制御基板11がフィルタ加熱ヒータ43の発熱を制御する。
そして、制御基板11の制御によってフィルタ加熱ヒータ43が発熱すると、撥水フィルタ41及び防爆フィルタ42が直接的に加熱される。
【0026】
すなわち、撥水フィルタ41によって、液体の水分がガス検出室25に浸入することを防止しつつ、フィルタ加熱ヒータ43によって、例えば撥水フィルタ41上の結露水(液体)やこれから滲み出た水、さらに、防爆フィルタ42に付着した水を加熱・気化させて水蒸気とし、この水蒸気をケース20外に積極的に排出可能となっている。その結果、結露水等の水分に遮られることなく、オフガスが、撥水フィルタ41及び防爆フィルタ42を通過して、ガス検出室25に出入りするようになっている。
なお、図3に示すように、フィルタ加熱ヒータ43には、オフガスを通過させるための複数の貫通孔43aが形成されている。
【0027】
ガス検出素子31は、ガス検出室25に導入されたオフガス中の水素濃度を検出する素子であり、ガス検出室25に臨むように備わる。詳細には、ガス検出素子31は金属製のステー32、32を介してベース部33に固定されており、ガス検出素子31が取り付けられたベース部33が本体10(図2参照)の下面に固定されている。また、ガス検出素子31は制御基板11(図2参照)と接続されており、制御基板11は水素濃度を検出可能になっている。
【0028】
ガス検出素子31の種類、数、及び配置は、水素濃度の検出方式に応じて決定される。
例えば、水素の検出方式がガス接触燃焼方式である場合、ガス検出素子31は検出素子と温度補償素子との対により構成される。そして、水素が各素子に接触し、燃焼する際に発生する熱を利用し、検出素子と温度補償素子との間の電気抵抗差に基づいて水素濃度が検出される。
【0029】
また、ガス検出室25の温度を検出する温度センサ34が、ケース20の円形となる開口部の中心位置で、ベース部33に取り付けられている。そして、温度センサ34は制御基板11(図2参照)に接続されており、制御基板11はガス検出室25の温度に基づいて、結露防止ヒータ51及びフィルタ加熱ヒータ43の発熱を制御するように構成されている。
【0030】
ベース部33は、本体10(図2参照)の下方に円盤状に突出して備わる部材で、有底の円筒型のケース20の開口に嵌合して開口を閉塞し、ガス検出室25内のオフガスに接触する。
また、ベース部33の周縁部には縁部33aが形成される。縁部33aは、円周に沿って外側に広がった部分の端部が下方に折れ曲がって形成され、断面形状が逆L字型を呈する。
そして、縁部33aは、下方に折れ曲がった部分がケース20の周壁部22の端部を外側から覆うように構成される。
【0031】
結露防止ヒータ51は、ケース20の周壁部22の外周面に沿って配設される円筒型の電気ヒータであり、例えばフィルタ加熱ヒータ43と同様に、PTCヒータ、セラミックスヒータ、ニクロム線等から構成される。そして、結露防止ヒータ51は、図示しない配線を介して制御基板11(図2参照)と接続され、制御基板11によって、その発熱が制御される。
【0032】
この構成によって、結露防止ヒータ51の熱は、ケース20を介して、ガス検出素子31等に伝熱するようになっている。
さらに、結露防止ヒータ51は、ガス検出室25内のオフガスをケース20を介して加熱できる。
また、円筒型の結露防止ヒータ51の一端の側は半径方向に広がって拡径部51aが形成され、拡径部51aは、ケース20の周壁部22の外周の端部を覆うベース部33の縁部33aを、外側から覆う構成が好適である。
【0033】
制御基板11(図2参照)の制御によって結露防止ヒータ51が発熱すると、ケース20の周壁部22は外側から結露防止ヒータ51によって加熱され、その熱は内周面22aに伝熱される。そして、内周面22aに伝熱された熱で、ガス検出室25内のオフガスが加熱される。したがって、ガス検出室25内のオフガスは周縁部が高温で中心部に向かって温度が低くなり、ケース20の半径方向の温度差が生じる。
【0034】
本実施形態においては、ベース部33に縁部33aを形成してケース20の周壁部22を外側から覆い、さらに、その外周に結露防止ヒータ51の拡径部51aを配設した。この構成によって、ベース部33は、結露防止ヒータ51の拡径部51aで、縁部33aを介して加熱される。ベース部33が加熱されると、その熱によってガス検出室25内のオフガスが加熱される。したがって、ガス検出室25内のオフガスはベース部33の側からも加熱されることになる。
以上のように、縁部33aが、結露防止ヒータ51が発する熱をベース部33に伝熱する第1伝熱部材になる。
【0035】
また、ベース部33は、樹脂素材に比べて熱伝導率の高いステンレスやアルミニウム合金などの金属で形成することが好適である。このような素材からなるベース部33は、結露防止ヒータ51から最も離れた円形の中心部も結露防止ヒータ51によって速やかに加熱される。したがって、ベース部33は周縁部と中心部の温度差がほとんどなく、温度分布が一様な発熱体として、ガス検出室25内のオフガスを加熱できる。
すなわち、ガス検出室25に導入されたオフガスは、ケース20の半径方向の温度差を生じないように、ベース部33によって加熱される。
【0036】
図3に示すように、ベース部33には、ステー32を介してガス検出素子31が固定される。すなわち、ガス検出素子31は、ベース部33に近い位置に配設される。
前記したように、ガス検出室25内のオフガスがベース部33によって加熱されると、ガス検出素子31の周囲のオフガスは温度が高くなる。したがって、ガス検出素子31の周囲のオフガスは結露しにくくなり、ガス検出素子31での結露を防止できる。
【0037】
また、この構成によって、ガス検出室25のベース部33の側においては、ガス検出室25の周縁部と中心部に温度差を生じないようにオフガスを加熱することができ、ガス検出室25内のオフガスに生じる、ケース20の半径方向の温度差を小さくできる。
【0038】
さらに、ベース部33は、有底の円筒型のガス検出室25の周縁部と中心部で温度差が生じないようにオフガスを加熱し、その熱は、ベース部33と対向する底壁部23の側に向かって、ガス検出室25の周縁部と中心部で等しく伝熱する。
したがって、ガス検出室25内のオフガスに生じる、ガス検出室25の半径方向の温度差を、底壁部23の側に向かって小さくできる。
【0039】
前記したように、ガス検出室25内のオフガスに、ケース20の半径方向の温度差が生じると、ガス検出室25内でオフガスの温度が低い箇所では、オフガスに含まれる水分が結露するが、ガス検出室25内のオフガスに生じる、ケース20の半径方向の温度差を小さくすることで、ガス検出室25内のオフガスの温度を一様に高くすることができ、オフガスの結露を抑制できる。
【0040】
また、ガス検出室25内のオフガスの温度を検出するため、ガス検出室25には温度センサ34が備えられる。この場合、検出部2に備わるガス検出素子31などの部品の配置や実装密度を考慮すると、円形となるケース20の開口の中心位置に温度センサ34を備えることが好適である。
【0041】
しかしながら、ガス検出室25内のオフガスに、ケース20の半径方向の温度差が生じると、中心部の温度が最低になり、温度センサ34は、ガス検出室25内のオフガスの最低温度を検出することになる。
その結果、仮にガス検出室25の周縁部でオフガスの温度が充分に高い場合であっても、温度センサ34が検出する温度が低くなり、温度センサ34が検出する温度に基づいて結露防止ヒータ51の発熱を制御する制御基板11は、結露防止ヒータ51の発熱を継続する。したがって、結露防止ヒータ51での消費電力が増える。
【0042】
本実施形態に係る水素センサ1(図1参照)は、ガス検出室25内のオフガスに生じる、ケース20の半径方向の温度差を小さくできることから、温度センサ34がガス検出室25の中心部で検出するオフガスと、ガス検出室25の周縁部におけるオフガスの温度差が小さくなる。
換言すると、ガス検出室25の周縁部でオフガスの温度が充分に高くなると、温度センサ34が検出する温度も高くなり、制御基板11は結露防止ヒータ51の発熱を停止する。したがって、結露防止ヒータ51における消費電力を抑制できる。
【0043】
また、本実施形態に係る水素センサ1(図1参照)は、ケース20の周壁部22とベース部33でオフガスを加熱することから、ガス検出室25におけるオフガスの温度を速やかに高めることができる。
したがって、ガス導入口24を介してガス検出室25内に導入されたオフガスの温度が低い場合であっても、ガス検出室25におけるオフガスの温度を速やかに高めることができ、オフガスの結露を防止できる。
【0044】
図4は、ベース部に伝熱プレートを備えたことを示す図である。
図4に示すように、ベース部33に縁部33a(図3参照)を形成せず、結露防止ヒータ51の熱を伝熱する伝熱プレート35を備える構成であってもよい。
伝熱プレート35は、例えば円盤状のベース部33の周縁部を覆う平面部35aと、平面部35aの周囲がベース部33の本体10からの突出に沿って屈曲して、さらに外側に広がり、外側に広がった周囲が下方に折れ曲がって形成される伝熱部35bとからなる。
すなわち、伝熱プレート35の伝熱部35bは、平面部35aの周囲に溝状に形成される。そして、ケース20の周壁部22が溝状の伝熱部35bに嵌合するように組み込まれ、伝熱部35bの下方に折れ曲がった部分は、ケース20の周壁部22の端部を外側から覆うように構成される。
【0045】
そして、円筒型の結露防止ヒータ51の一端の側に形成される拡径部51aが、伝熱プレート35の伝熱部35bを外側から覆う構成とする
【0046】
伝熱プレート35は、例えばステンレスやアルミニウムなど、樹脂素材に比べて熱伝導率の高い金属のプレス加工品であることが好適で、この構成によって、図3に示すようにベース部33に縁部33aを形成する場合と同等の効果を奏する。すなわち、伝熱プレート35は、請求項に記載の第1伝熱部材となる。
【0047】
図5は、凹面のベース部を有する検出部の断面図である。
本実施形態に係る水素センサ1は、図5に示すように、ベース部33のガス検出室25側の面を凹面形状にして、ベース部33が上方になるように水素センサ1をオフガス配管105(図2参照)に備えたときに、ベース部33の中心部が高くなる構成としてもよい。
【0048】
ガス検出室25内のオフガスは、結露防止ヒータ51によってケース20の周壁部22から加熱されることから、ガス検出室25内のオフガスは、周壁部22の側の温度が高くなる。
図5に示すように、ガス検出室25の側でベース部33を凹面形状にして、ベース部33が上方になるように水素センサ1をオフガス配管105(図2参照)に備えた場合、周壁部22の側で加熱された温度の高いオフガスは、矢印で示すように、ベース部33の凹面形状に沿って上昇する。その結果、ガス検出室25内にオフガスの対流が発生して、ガス検出室25内におけるオフガスの温度分布を一様にすることができる。
また、ベース部33の中央部に結露した結露水を、凹面形状に沿って周壁部22の側に流すことができ、さらに周壁部22の内周面22a(図3参照)に沿って下方に流すことができる。
【0049】
また、本実施形態においては、図3に示すように、ベース部33に縁部33aを形成してベース部33を縁部33aを介して結露防止ヒータ51で加熱し、ガス検出室25内のオフガスをベース部33の側から加熱する構成とした。
この構成によると、ベース部33と対向する底壁部23の側は、周壁部22からのみ加熱されるため、ガス検出室25内のオフガスには、ケース20の半径方向の温度差が生じる場合がある。
そこで、例えば底壁部23の側からもガス検出室25内のオフガスを加熱する構成としてもよい。
【0050】
図6の(a)は、底壁部に底部伝熱プレートを配設した図、(b)は、底部伝熱プレートの形状を示す図である。
図6の(a)に示すように、底部伝熱プレート(第2伝熱部材)26は、ケース20の底壁部23の形状と等しく形成され、ケース20が有底の円筒型の場合、底部伝熱プレート26の平面形状は円盤形状になる。
底部伝熱プレート26は、ガス検出室25の側から底壁部23を覆うように配設され、ガス検出室25内のオフガスと直接接触する。
さらに、底部伝熱プレート26の中心には、ガス導入口24と略同形の開口部26aがあり、ガス導入口24を介してガス検出室25に導入されるオフガスの流れを妨げない構成とする。
【0051】
底部伝熱プレート26は、例えばステンレスやアルミニウムなど、樹脂素材に比べて熱伝導率の高い金属のプレス加工品であることが好適で、図6の(b)に示すように、周縁部には、円周から外側に向かって突出する複数(図6には3つ記載)の伝熱部26bが形成される。
伝熱部26bの先端は、ケース20の周壁部22を貫通孔22bを介して貫通し、周壁部22の外周に沿うように、上方に折り曲げられる。
このように底部伝熱プレート26が備わるケース20は、例えばケース20を成形する金型に、金属のプレス加工品である底部伝熱プレート26をあらかじめインサートしておくインサート成形によって作成できる。
【0052】
ケース20の周壁部22の外周面に沿って備わる結露防止ヒータ51は、例えば底部伝熱プレート26の伝熱部26bに対応する位置が外側に張り出し、伝熱部26bの上方に折れ曲がった部分を外側から覆うように備わる。
制御基板11(図2参照)の制御によって結露防止ヒータ51が発熱すると、伝熱部26bは外側から結露防止ヒータ51によって加熱され、その熱が底部伝熱プレート26に伝熱する。すなわち、底部伝熱プレート26は結露防止ヒータ51によって直接加熱され、温度分布が一様な発熱体となる。
【0053】
この構成によって、ケース20の底壁部23の側においては、ガス検出室25の周縁部と中心部で温度差が生じないように、ガス検出室25内のオフガスを加熱することができ、ガス検出室25内のオフガスに生じる、ケース20の半径方向の温度差を小さくできる。
【0054】
さらに、底部伝熱プレート26は、ガス検出室25の周縁部と中心部で温度差が生じないようにオフガスを加熱し、その熱は、底壁部23と対向するベース部33(図3参照)の側に向かって、ガス検出室25の周縁部と中心部で等しく伝熱する。
したがって、ガス検出室25内のオフガスに生じる、ケース20の半径方向の温度差を、ベース部33の側に向かって小さくできる。
【0055】
以上、図3に示すように、ベース部33に形成される縁部33aを結露防止ヒータ51で加熱することでベース部33を直接加熱する構成と、図6の(a)に示すように、ケース20の底壁部23に配設される底部伝熱プレート26を、結露防止ヒータ51で直接加熱する構成を共に備えるガス検出室25とすることで、本実施形態に係る水素センサ1(図2参照)は、ガス検出室25内のオフガスに生じる、ケース20の半径方向の温度差を小さくできるという優れた効果を奏する。
【0056】
もちろん、ベース部33に縁部33aを形成して、ベース部33を縁部33aを介して結露防止ヒータ51で加熱する構成と、ケース20の底壁部23に底部伝熱プレート26を備え、底部伝熱プレート26を結露防止ヒータ51で直接加熱する構成のどちらか一方を単独に備えるガス検出室25であってもよい。
【0057】
以上のように、本実施形態に係る水素センサ1(図1参照)は、ガス検出室25(図3参照)を形成する、有底の円筒型のケース20(図3参照)の開口部を閉塞するベース部33(図3参照)に、第1伝熱部材である縁部33a(図3参照)を形成して、ベース部33を結露防止ヒータ51(図3参照)で加熱する構成とした。この構成によって、ガス検出室25内のオフガスに生じる、ケース20の半径方向の温度差を小さくできる。
さらに、ケース20の底壁部23(図3参照)には、第2伝熱部材である底部伝熱プレート26(図6の(a)参照)を配設し、底壁部23の側からガス検出室25のオフガスを加熱する構成とした。この構成によって、ガス検出室25内のオフガスに生じる、ケース20の半径方向の温度差をさらに小さくできる。
そして、ケース20の半径方向の温度差を小さくすることで、ガス検出室25内におけるオフガスの結露を好適に防止できるとともに、結露防止ヒータ51による消費電力を好適に抑制できるという優れた効果を奏する。
【0058】
なお、本実施形態は、ガス検出室にガスを導入する構成のガスセンサであれば、水素センサに限らず適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態に係る水素センサの平面図である。
【図2】図1におけるX1−X1断面図である。
【図3】水素センサの検出部の構造を示す図である。
【図4】ベース部に伝熱プレートを備えたことを示す図である。
【図5】凹面のベース部を有する検出部の断面図である。
【図6】(a)は、底壁部に底部伝熱プレートを配設した図、(b)は、底部伝熱プレートの形状を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 水素センサ
11 制御基板(制御手段)
20 ケース
22 周壁部
23 底壁部
24 ガス導入口
25 ガス検出室
26 底部伝熱プレート(第2伝熱部材)
31 ガス検出素子
33 ベース部
33a 縁部(第1伝熱部材)
34 温度センサ
35 伝熱プレート(第1伝熱部材)
51 結露防止ヒータ(ヒータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に形成されるガス検出室と、
前記ガス検出室に臨むように備わるガス検出素子を固定するベース部と、
前記ガス検出室にガスを導入するガス導入口と、
前記ガス導入口から前記ガス検出室に導入された前記ガスを、前記ケースを介して加熱するヒータと、を有するガスセンサであって、
前記ヒータの熱を前記ベース部に伝熱する第1伝熱部材を備えることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記ケースは、有底の円筒型であって、
前記ベース部は、前記ケースの開口部を閉塞するとともに前記ガス検出室に導入された前記ガスと接触し、
前記ガス検出室に導入された前記ガスは、前記ケースの半径方向の温度差を生じないように、前記ベース部によって加熱されることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記ヒータで直接加熱される第2伝熱部材が、前記ガス検出室の側から前記ケースの底壁部を覆うように配設され、
前記ガス検出室に導入された前記ガスは、前記ケースの半径方向の温度差を生じないように、前記第2伝熱部材によって加熱されることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記ガス検出室に導入された前記ガスの温度を検出する温度センサが、前記ケースの開口部の中心位置で前記ベース部に固定されて備わるとともに、
前記温度センサが検出する前記ガスの温度に基づいて、前記ヒータを制御する制御手段が備わること、を特徴とする請求項2または請求項3に記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−2217(P2010−2217A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159343(P2008−159343)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】