説明

ガスセンサ

【課題】衝撃や振動等によるダイヤフラム構造体上に設けられた層状部の剥離を抑制すると共に、生産性に優れたガスセンサを提供する。
【解決手段】ダイヤフラム構造体39D、49Dと、ダイヤフラム構造体の絶縁層上に形成されたガス検知層を含む層状部31、41と、ガス検知層を介して互いに接続する一対の検知電極36A,36B、46A,46Bと、電極取出し辺3P、4Pに沿って設置されて検知電極に接続する一対の検知パッド33、43とを有するガス検出素子3、4と、検知パッドに接続する基板側パッド23が表面に形成され、複数のガス検出素子が一列に並ぶよう実装された配線基板2とを備え、ガス検出素子の下面R1と配線基板の表面との間に介装される第1接着層61,62と、隣接するガス検出素子の下面R2同士を跨ぐように当該下面と配線基板の表面との間に介装される第2接着層63とを備えるガスセンサ10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に複数のガス検出素子を搭載したガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
被測定ガス中の特定ガス成分の濃度を検出するガス検出素子として、1つの基体上にガス検知層(感応膜)を設けた構造のものが用いられている。このガス検出素子は、ガス検知層に接触してガス検知層の電気的特性の変化を検出する一対の検知電極を有し、検知電極の検出値に応じて特定ガス成分の濃度を検出する。さらに、被測定ガス中の複数種のガス成分の濃度をそれぞれ検知するため、複数のガス検出素子を1つの配線基板(支持体)に実装したガスセンサも開発されている(特許文献1)。このガスセンサは、平面視多角形状のガス検出素子の一辺(取出し辺)に沿って検知電極に接続される検知パッドを配置して、その上で配線基板のパッドと検知パッドとをワイヤボンディング接続し、この取出し辺の裏面を配線基板に片持ち式にダイボンドで固定(接着)している。このように複数種のガス成分を検出可能なガスセンサは、例えば自動車のエアコンディショナーの内外気切替えを制御するフラップ開閉制御システムに用いられている。
又、複数のサーミスタをアレイ状に1個の半導体基板上に形成した赤外線検出素子の局所にダイボンドを塗布し、基板に固定して実装する方法が開示されている(特許文献2)。
これらの検出素子においては、半導体基板を含むダイヤフラム構造体を有し、このダイヤフラム構造体上にガス検知層やサーミスタを設けている。これにより、ガス検知層の熱が周囲に逃げ難くなり、検出精度を向上することができる。なお、ダイヤフラム構造体は、表裏面に貫通した空洞部を有するシリコン基板等の半導体基板と、空洞部の一方の開口部を覆うように当該半導体基板上に形成された絶縁層とを備える構造体として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-337110号公報
【特許文献2】特開平7-58134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術の場合、個々のダイヤフラム構造体のガス検出素子の固定が片持ち式であることから、ワイヤボンディング等の際に生じる衝撃や振動により、ガス検出素子が振動してガス検知層を含む層状部が剥離するおそれがある。
特許文献2記載の技術においても、赤外線検出素子の外周縁のみをダイボンドで固定しているため、赤外線検出素子上の個々のダイヤフラム構造体(サーミスタ)については一辺のみが単に固定されているに過ぎない。その結果、個々のダイヤフラム構造体の固定は片持ち式となり、ダイヤフラム構造体が振動する問題が同様に生じ易い。
【0005】
そこで、本発明は、ダイヤフラム構造体上にガス検知層を含む層状部を有するガス検出素子の複数を配線基板に実装したガスセンサにおいて、衝撃や振動等による層状部の剥離を抑制すると共に、生産性に優れたガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のガスセンサは、表裏面を貫通した空洞部を有する半導体基板及び該空洞部を覆うように当該半導体基板上に形成された絶縁層を含むと共に、平面視多角形状をなすダイヤフラム構造体と、該ダイヤフラム構造体の前記絶縁層上に形成された少なくともガス検知層を含む層状部と、前記ガス検知層を介して互いに電気的に接続する一対の検知電極と、前記ダイヤフラム構造体の周縁部の一辺である電極取出し辺に沿って設置されて前記一対の検知電極にそれぞれ電気的に接続する一対の検知パッドとを有するガス検出素子と、前記検知パッドに電気的に接続する基板側パッドが表面に一列に形成され、複数の前記ガス検出素子が、一列に、かつ前記電極取出し辺が前記電極パッドに対向して一方向に並ぶよう実装された配線基板とを備え、前記ガス検出素子の前記電極取出し辺に沿う下面と前記配線基板の表面との間に介装される第1接着層と、隣接する前記ガス検出素子の下面同士を跨ぐように当該下面と前記配線基板の表面との間に介装されると共に、前記第1接着層と離間して配置される第2接着層とを備える。
このようなガスセンサによれば、ダイヤフラム構造体を有するガス検出素子は、それぞれ第1接着層と第2接着層の少なくとも2箇所で配線基板に固定されるので、各ダイヤフラム構造体(ガス検出素子)が片持ち式でなく多点で固定される。その結果として、ワイヤボンディング等の際に生じる衝撃や振動により、ガス検出素子が振れて層状部が剥離することが抑制される。又、ガス検出素子のうち電極取出し辺に沿う下面に配置される第1接着層に離間して配置される第2接着層は、隣接するガス検出素子の下面同士を跨ぐように1箇所に配置されている。これにより、隣接するガス検出素子の各下面に別個に接着層を設ける必要がないので、生産効率が向上する。
【0007】
前記絶縁層内には発熱抵抗体が埋設されており、前記ダイヤフラム構造体の前記空洞部を形成する壁面に前記第1及び第2接着層が付着していないことが好ましい。
空洞部を形成する壁面に第1,第2接着層が付着すると、発熱抵抗体で生じた熱の熱逃げが壁面に付着した第1,第2接着層を介して周囲に生じることになり、発熱抵抗体による加熱精度、ひいてはガス検知層によるガス検出精度が低下する場合がある。また、応力の発生によりダイヤフラム構造体に破損が生じる可能性もある。そこで、空洞部を形成する壁面に第1,第2接着層を付着させないことで、ガス検知層による検出精度の低下を抑制すると共に、ダイヤフラム構造体の破損を防止することができる。
【0008】
前記配線基板の前記ガス検出素子に対向する表面には、前記周縁部のいずれかの辺を横断し、かつ前記空洞部に対向する部分に連通する通気凹部が設けられていることが好ましい。
このようなガスセンサによれば、接着層となる接着剤が周縁部全体へ広がっても、通気凹部には接着剤が広がらないため、通気凹部でダイヤフラム構造の内部と外部とが通気される。その結果として、ガス検出素子が加熱又は冷却された場合でも、ダイヤフラム構造内部の気圧の変動を抑制し、ダイヤフラム構造の破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ダイヤフラム構造体上にガス検知層を含む層状部を有するガス検出素子を、複数、配線基板に実装したガスセンサにおいて、衝撃や振動等による層状部の剥離を抑制すると共に、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るガスセンサの分解斜視図である。
【図2】保護キャップを外したガスセンサ本体の平面図である。
【図3】接着層によりガス検出素子を配線基板に固定(実装)する態様を示す平面図である。
【図4】図2のA−A’線に沿う断面図である。
【図5】図2のB−B’線に沿う断面図である。
【図6】通気凹部を設けない場合の接着剤の流動状態を示す平面図である。
【図7】通気凹部を設けた場合の接着剤の流動状態を示す平面図である。
【図8】別の通気凹部を設けた場合の接着剤の流動状態を示す平面図である。
【図9】ガス検出素子の配線形態を示す平面図である。
【図10】ガス検出素子の検知電極及びヒータ電極の形態を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るガスセンサ10の分解斜視図、図2は保護キャップを外したガスセンサ本体1の平面図である。
図1において、ガスセンサ10は、2つのガス検出素子3,4を搭載(実装)した配線基板(支持体)2からなるガスセンサ本体1と、このガスセンサ本体1(配線基板2)の被保護面2S及びこれに囲まれたキャビティ21(凹部)を覆う保護カバー9とを備える。
【0012】
ガス検出素子3、4は、いずれも平面視矩形状(平面視四角形状)をなしており、表裏面を貫通する空洞部301、401(図4参照)を有するシリコン基板と、空洞部301、401を覆うように各シリコン基板上に形成された絶縁層とを備えたダイヤフラム構造体39D、49D(図4参照)を有している。そして、この各ダイヤフラム構造体39D,49D上(詳細には絶縁層上)には、ガス感応膜(特許請求の範囲の「ガス検知層」に相当)31、41がそれぞれ形成されている。又、詳しくは後述するが、ガス検出素子3、4は、ガス感応膜31,41を介して互いに電気的に接続する一対の検知電極をそれぞれ有しており、検知電極によりガス感応膜31,41の電気的特性の変化(特定ガス成分の濃度に応じた抵抗値変化)を検出するようになっている。
そして、ガス検出素子3の一辺(図1、図2の下側の辺、特許請求の範囲の「電極取出し辺」に相当)上には、この検知電極にそれぞれ電気的に接続する一対の検知パッド33(外側検知パッド33A,内側検知パッド33B)が形成されている。又、各ダイヤフラム構造体39D,49Dの絶縁層内には、図示しないヒータ(発熱抵抗体)が埋設されており、上記電極取出し辺の上には、このヒータを通電する一対のヒータパッド34(外側ヒータパッド34A,内側ヒータパッド34B)が形成されている。このように、ガス検出素子3の電極取出し辺に沿って検知パッド33及びヒータパッド34を集約して配置することにより、ガス検出素子3とこれを実装する配線基板2との配線スペースをコンパクトにし、ガスセンサ10の小型化が図られる。
【0013】
なお、図1、図2の左側から、外側ヒータパッド34A,外側検知パッド33A,内側検知パッド33B,内側ヒータパッド34Bが、この順に一列に電極取出し辺上に並んでおり、これらのパッドは、ワイヤボンディング可能になっている。
ガス検出素子4はガス検出素子3とほぼ同一の構成を有し、ガス検出素子3と同様な一対の検知パッド43(外側検知パッド43A,内側検知パッド43B)、及び一対のヒータパッド44(外側ヒータパッド44A,内側ヒータパッド44B)が一辺(図1、図2の下側の辺、特許請求の範囲の「電極取出し辺」に相当)上に形成されている。
【0014】
配線基板2は、略直方体形状を有しており、略四角枠状の被保護面2Sに囲まれ、内部に2つのガス検出素子3,4を搭載する空間をなすキャビティ21が凹設されている。配線基板2の対向する短辺の側壁は内側に凹んだ案内凹部2A,2Bを構成している。また、この案内凹部2A,2Bは、被保護面2Sの裏面2E側(図4参照)でさらに一段内側に凹み、係合凹部2C,2Dが形成されている。
又、配線基板2はセラミック絶縁層、具体的には4層のアルミナ質のセラミック絶縁層24,25,26,27を積層してなる多層基板である。そして、配線基板2の対向する長辺の側壁には、略半円筒、あるいは1/4円筒状に凹設されたいわゆるキャステレーションが複数形成されている。配線基板2の内部配線は、このキャステレーション部分に引き出され、さらにこのキャステレーションを通じて、図示しないこの配線基板2の裏面2Eまで引き回され、プリント配線基板などにハンダ付け接続可能となっている。
【0015】
図4に示すように、配線基板2は、最下層に位置する略矩形平板状のセラミック絶縁層24上に、後述する通気凹部25A(図示せず)を有するセラミック絶縁層25が積層され、さらに、略矩形枠状のセラミック絶縁層26が積層されている。さらに、この上には、セラミック絶縁層26より幅細で略矩形枠状のセラミック絶縁層27が積層されている。これにより、セラミック絶縁層25がキャビティ21の底部21B(図5参照)を構成し、セラミック絶縁層26がキャビティ21内の段部22を構成している。段部22は被保護面2Sより段状に下がりつつ、底部21Bを矩形枠状に囲んでいる。
そして、段部22のうち、一辺(図1、図2の下側の辺)に相当するパッド形成辺部22P(図2参照)には、5つの基板側パッド23が一列に並んで形成されている。具体的には図2に示すように、図2の左から、基板側第1ヒータパッド23A,基板側第1検知パッド23B,基板側共通パッド23C,基板側第2検知パッド23D,基板側第2ヒータパッド23Eがこの順に一列に並んでいる。このように、パッド形成辺部22Pに基板側パッド23を集約して配置することにより、ガス検出素子3との配線スペースをコンパクトにし、ガスセンサ10の小型化が図られる。
【0016】
なお、これらの基板側パッド23は、公知の構造によって外部と接続可能となっている。具体的には、基板側パッド23は、それぞれ図示しない内部配線を通じて、配線基板2の側面に形成されたキャステレーションに引き出され、このキャステレーションに形成された導電層を通じて、その裏面2Eの接続パッド(図示しない)に接続している。これにより、プリント配線基板などの支持基板に、このガスセンサ10を搭載することができる。
【0017】
そして、配線基板2のキャビティ21内には、パッド形成辺部22Pに各ガス検出素子3、4の電極取出し辺が対向するようにして各ガス検出素子3、4が収容され、後述する第1,第2接着剤を介して両者が固定(接着)される。このようにして、複数(2個)のガス検出素子3,4が電極取出し辺を一方向に並ぶ(隣接する)ようにして配線基板2に搭載される。
さらに、図2に示すように、ガス検出素子3の外側ヒータパッド34Aは配線基板2の基板側第1ヒータパッド23Aに、外側検知パッド33Aは基板側第1検知パッド23Bに、内側検知パッド33B及び内側ヒータパッド34Bは基板側共通パッド23Cに、それぞれボンディングワイヤ51A,51B,51C,51Dを介して接続される。
同様に、ガス検出素子4の内側ヒータパッド44A及び内側検知パッド43Aは基板側共通パッド23Cに、外側検知パッド43Bは基板側第2検知パッド23Dに、外側ヒータパッド44Bは基板側第2ヒータパッド23Eに、それぞれボンディングワイヤ52A,52B,52C,52Dを介して接続される。
【0018】
なお、基板側共通パッド23Cを共通の電位(接地電位)としても、ガス検出素子3、4の各ヒータに流す電流を別個に制御することができる。又、各ガス感応膜31、41の抵抗値も別個に測定することができる。そして、例えばガス検出素子3において、NOx等の酸化性ガスの濃度変化を検知し、ガス検出素子4において、CO,HC等の還元性ガスの濃度変化を検知することができる。
【0019】
そして、後述する第1,第2接着層によりガス検出素子3,4が配線基板2に実装されてガスセンサ本体1が構成され、このガスセンサ本体1を保護すべく保護カバー9が取り付けられる。
保護カバー9は、略平板状で配線基板2の被保護面2S及びキャビティ21を覆う大きさの保護プレート部91と、この保護プレート部91の両端部分から直角に折り曲げられて延びる係合部92,93とを有し、側面視、略コ字状となっている。このうち、保護プレート部91には、複数の所定位置に通気孔91Aが穿孔され、この通気孔91Aを通じて、被測定ガスが2つのガス検出素子3,4に導かれる。また、保護プレート部91には、この保護カバー9の取り付け方向を示す方向指示切り欠き91Bがその周縁に形成されて、180度回転した状態で誤ってガスセンサ本体1(配線基板2)に取り付けられるのを防止している。また、係合部92,93には、それぞれその先端付近に、係止爪部92A等(係合部93側は図示しない)が形成されている。
【0020】
そして、保護カバー9の係合部92,93を配線基板2の案内凹部2A,2Bに沿わせて、保護プレート部91を配線基板2の被保護面2S及びキャビティ21に近付ける。さらに、保護カバー9の係止爪部92A等を、配線基板2の係合凹部2C,2Dに係合させることで、保護カバー9がガスセンサ本体1(配線基板2)に係止される。
【0021】
なお、配線基板としては、セラミック製の配線基板に限られず、樹脂製またはグレーズ製の配線基板であっても良い。また、配線基板とガス検出素子との接続は、両者のパッド同士をボンディングワイヤで接続するほか、TABリードを用いることもできる。
【0022】
次に、図3を参照し、第1接着層61,62、第2接着層63によりガス検出素子3、4を配線基板2に固定(実装)する態様について説明する。まず、配線基板2のセラミック絶縁層25上の所定位置に第1接着層61,62及び第2接着層63となる接着剤を供給(塗着)した後、キャビティ21内に2つのガス検出素子3,4を収容する。
これにより、ガス検出素子3の電極取出し辺3Pに沿う下面R1と配線基板2の表面との間に第1接着層61が介装される。同様に、ガス検出素子4の電極取出し辺4Pに沿う下面R1と配線基板2の表面との間に第1接着層62が介装される。
さらに、本発明の場合、隣接するガス検出素子3,4の下面R2同士(周縁部(辺)3Q,4Qに沿う下面R2同士)を跨ぐ(つなぐ)1箇所の領域Rxと、配線基板2の表面との間にも第2接着層63が介装されている。なお、領域Rxは下面R1を含まず、第2接着層63は、第1接着層61,62と離間して配置される。
このようにして、ガス検出素子3、4は、それぞれR1とR2(Rx)の2箇所で配線基板2に固定(接着)されるので、ガス検出素子3、4のダイヤフラム構造部分が片持ち式でなく2点で固定される。その結果として、ワイヤボンディング等の際に生じる衝撃や振動により、ガス検出素子3,4が振れてガス感応膜31,41が剥離することが抑制される。
【0023】
ここで、領域Rxは、ガス検出素子3,4の下面R2同士をつなぐ1箇所に形成されている。これにより、ガス検出素子3,4の各下面R2にそれぞれ別個に(2箇所)接着層を設ける必要がなく、例えば、接着層(第2接着層63)となる接着剤をノズルで点状(ドット状)に1箇所供給すればよいので、生産効率が向上する。さらに、図3の例では、領域Rxの第2接着層63は、辺3Q,4Qのうち電極取出し辺3P、4Pと反対側の対辺3R、4R側に介装され、さらに配線基板2の段部22寄りにはみ出し、全体として1つの円(ドット状)になっている。
なお、領域Rxは辺3Q,4Qの中央側に位置していてもよいが、ガス検出素子3、4のダイヤフラム構造体39D,49D(図4参照)を確実に固定するためには、領域Rxを電極取出し辺3P、4Pからできるだけ遠ざけ、辺3Q,4Qの端に位置させるのがよい。
【0024】
第1接着層61,62、第2接着層63としては、エポキシ樹脂等の樹脂を用いることができるが、粘着テープ等を用いてもよい。
【0025】
本発明において、「ガス検出素子の下面」とは、実装時にガス検出素子3,4が配線基板2に対向する面であり、「配線基板の表面」とは、実装時に配線基板2がガス検出素子3,4に対向する面である。
又、ガス検出素子3、4は、空洞部301、401が形成されたダイヤフラム構造体39D、49Dを有し、「ガス検出素子の下面」には、空洞部301、401を形成する壁面39A、49A及び空洞部301、401に露出する絶縁層の表面は含まれないものとする。
【0026】
図4は、図2のA−A’線に沿う断面図である。ガス検出素子3、4は、それぞれ周縁部39E、49Eから表面3B、4B側に向かって薄くなるダイヤフラム構造体39D,49Dを有している。又、空洞部301、401は、周縁部39E、49Eからダイヤフラム構造体39D,49Dへ向かって先細るテーパー状の壁面39A、49Aによって形成されている。
そして、ガス検出素子3,4同士の隣接する周縁部39E、49E(図3の下面R2)をつなぐ1箇所の領域Rxと配線基板2の表面との間に、第2接着層63が介装されている。
【0027】
図5は、図2のB−B’線に沿う断面図である。ガス検出素子3の電極取出し辺3Pに沿う周縁部39Eの下面R1と配線基板2の表面との間には、第1接着層61が介装され、領域Rxと配線基板2の表面との間に第2接着層63が介装されている。
又、ボンディングワイヤ51Dを介して、ガス検出素子3の内側ヒータパッド34Bが基板側共通パッド23Cに接続されている。
【0028】
なお、第1接着層61、第2接着層63がダイヤフラム構造体39Dの空洞部301を形成する壁面39Aに付着しないよう、接着剤の供給(塗着)量が調整されている。空洞部301を形成する壁面39Aに第1,第2接着層61,63が付着すると、空洞部301の開口容積が小さくなり、ダイヤフラム構造体39Dの絶縁膜の内部に配置されるヒータで生じた熱逃げが生じやすくなり、ヒータによるガス感応膜31の加熱精度が低下し、ガス感応膜31によるガス検出精度が低下する場合がある。
また、配線基板2のセラミック絶縁層25には、電極取出し辺3Pに平行で、かつ電極取出し辺3Pと対辺3Rとのほぼ中間の位置に通気凹部25Aが形成されている。以下、通気凹部25Aの機能について説明する。
【0029】
図6は、通気凹部25Aを設けない場合の接着剤6Aの流動状態を示す平面図である。なお、接着剤6Aは、硬化して第1接着層61,62、第2接着層63となるものである。上記したガス検出素子3の下面R1及び領域Rxに相当するセラミック絶縁層25上に接着剤6Aを供給(塗着)した後、ガス検出素子3を押し付けると、ガス検出素子3とセラミック絶縁層25との隙間の毛管現象により、下面R1及び領域Rxの接着剤6Aが周囲へ広がってゆく。この場合、接着剤6Aの供給量が多くなると、接着剤6Aが周縁部39E,49E全体へ広がり(図の矢印)、下面R1と領域Rxの接着剤6Aが離間した状態を保てずに繋がり、枠上の周縁部39E全体が接着剤(接着層)で封止されることがある。すると、ダイヤフラム構造体39D,49Dの内部と外部とが通気されず、ガス検出素子3が加熱又は冷却された場合に、ダイヤフラム構造体39D,49Dの内部(空洞部301、401)の気圧が高くなりすぎ、あるいは低くなりすぎて、ダイヤフラム構造体39D,49Dが破損するおそれがある。
【0030】
そこで、図7に示すように、セラミック絶縁層25上に、ガス検出素子3の周縁部のいずれかの辺(この例では、辺3Q及びその対辺3S)を横断し、かつダイヤフラム構造体39Dの空洞部301に対向する部分に連通する通気凹部25Aを設けると、接着剤6Aが周縁部39E全体へ広がっても(図の矢印)、通気凹部25Aには接着剤6Aが広がらないため、通気凹部25Aでダイヤフラム構造体39D(空洞部301)の内部と外部とが通気される。その結果として、ガス検出素子3が加熱又は冷却された場合でも、ダイヤフラム構造体39Dの内部の気圧の変動を抑制し、ダイヤフラム構造体39Dの破損を防止することができる。ガス検出素子4についても同様に、通気凹部25Aは辺4Q及びその対辺4Sを横断し、かつダイヤフラム構造対49Dの空洞部401に対向する部分に連通する。
なお、図8に示すように、通気凹部25Aは、ガス検出素子3,4の周縁部の少なくともいずれか1つの辺(この例では、対辺3S、4S)を横断すればよい。この場合、辺3Q、4Q側で接着剤6Aが周縁部39E,49E全体へ広がっても、対辺3S、4S側では通気が可能となる。
【0031】
次に、図9を参照し、ガス検知素子3(4)の詳細な構成について説明する。なお、ガス検知素子4は、ガス感応膜の構成が異なること以外はガス検知素子3と同一の構成を有するので、ガス検知素子3と同一部分については図9の符号に()を付けて対応させ、説明を省略する。
ガス検知素子3は、矩形平板状のシリコン基板からなる半導体基板上に絶縁層を形成した上記のダイヤフラム構造体39Dを有しており、その絶縁膜の内部であって、平面視したときに空洞部(図9において図示せず)に重なる位置に、2重渦巻き状のヒータ38(図10参照)が形成されている。さらにヒータ38が埋設された絶縁層上には、互いに噛み合うように間隔を空けて配置された一対の櫛歯状の検知電極36A,36B(図10参照)が、互いに電気的に絶縁されつつ重なって形成されている。さらに検知電極36A,36Bの上には、金属酸化物半導体(具体的にはSnO2)からなる矩形状のガス感応膜31がこれらを覆うように被着して、一対の検知電極36A,36Bに電気的に接続している。なお、本実施例では、ガス感応膜31は、SnO2の表面に触媒としてのAuが分散して付着してなる。
従って、ヒータ38に通電すると、ガス感応膜31が加熱されて活性化し、NOxなどの酸化性ガス(第1のガス種)に反応して、その抵抗値が変化する。そこで、一対の検知電極36A,36B間におけるガス感応膜31の抵抗値を測定することで、酸化性ガスの濃度変化を検知することができる。
【0032】
第1検知電極36A,36Bの端部はガス感応膜31の外まで引き出され、それぞれ検知接続配線35A,35Bに電気的に接続している。同様に、ヒータ38の端部は、それぞれヒータ接続配線37A,37Bに電気的に接続している。
一方、ガス検出素子3の電極取出し辺3P上には、図9の左側から外側ヒータパッド34A,外側検知パッド33A,内側検知パッド33B、内側ヒータパッド34Bが順に形成されている。そして、外側検知パッド33A,内側検知パッド33Bにそれぞれ検知接続配線35A,35Bが電気的に接続され、外側ヒータパッド34A,内側ヒータパッド34Bにそれぞれヒータ接続配線37A,37Bが電気的に接続されている。
【0033】
なお、ガス検出素子4のガス感応膜41の材質は、SnO2の表面に触媒としてPdを分散させてなる。このため、ガス検出素子4は、ガス検出素子3とは異なり、ガス感応膜41を加熱して活性化することで、CO,HCなどの還元性ガス(第2のガス種)に反応して、その抵抗値が変化する。従って、一対の検知電極46A,46B間におけるガス感応膜41の抵抗値を測定することで、還元性ガスの濃度変化を検知することができる。
【0034】
又、ガス検出素子3,4の平面形状は四角形状に限らず、多角形状であればよく、その大きさ、厚み、各部材の配置も限定されるものではない。
ガス感応膜31、41としては、特定のガス種に反応してその電気的特性が変化するものであれ使用することができるが、例えば、酸化物半導体膜を挙げることができる。このガス感応膜に用いる酸化物半導体としては、上述したSnO2の他に、例えば、ZnO,WO3,In23,TiO2,V25等が挙げられる。検知したいガス種に応じて、適宜その主体となる酸化物半導体の組成を選択すればよい。また、酸化物半導体の主体となる組成を共通とした上で、それに添加する触媒の種類を検知したいガス種に応じて適宜変更するようにしても良い。具体的には、ガス感応膜31をWO3を主体とした酸化物半導体で構成する一方、他のガス感応膜41をSnO2を主体とした酸化物半導体で構成するガスセンサが挙げられる。
【0035】
なお、本発明における「層状部」は、ガス感応膜(ガス検知層)単体からなる場合にはガス感応膜に相当し、ガス感応膜の表面に触媒(Au,Pd,Pt等)が設けられている場合はガス感応膜と触媒の全体を指すものとする。又、ガス感応膜の内部に触媒を含有させた場合には、ガス感応膜が「層状部」に相当する。さらに、ガス感応膜(触媒を含有させた構成、触媒を非含有の構成の双方を含む)、又はガス感応膜と触媒からなる層をさらにガス透過性を有する保護層で覆っている場合は、ガス感応膜を含むこれらの各層(膜)の全体を「層状部」とする。なお、保護層としては、酸化チタン等の酸化物粒子を分散したゾルを塗工し、乾燥させてガス透過性としたものが挙げられる。
本発明においては、上記ガス感応膜を含む層状部の厚みが1μm以上であると本発明の効果が大きい。また、ガス感応膜を含めた層状部がスクリーン印刷等の厚膜形成される構成であると本発明の効果が大きい。これらの層状部は厚みが比較的厚いため、衝撃や振動等によって層状部が剥がれ易い傾向にあるため、本発明の第1,第2接着層によるガス検知素子の配線基板への固定(接着)の効果が有効に発揮されるためである。
【0036】
絶縁層中に埋設されるヒータ(発熱抵抗体)としては、通電により発熱するものであればいずれのものでも良いが、例えば、導電路をなす材質を体積固有抵抗の高いものとしたり、導電路の線幅、断面積を小さくして抵抗を大きくするなどにより、発熱をさせる線状のヒータが挙げられる。この線状のヒータでは、導電路を直線状とするほか、ジグザグや二重渦巻きの形態などとすることもできる。また、抵抗体を平面状に配置して面全体を発熱させるヒータなども挙げられる。
【0037】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。例えば、上記実施形態では2個のガス検出素子を配線基板に実装したが、3個以上のガス検出素子を配線基板に実装してもよい。この場合、図3のガス検出素子4の左側に第3のガス検出素子が並び、ガス検出素子4と第3のガス検出素子の隣接する周縁部の間に跨るように、領域Rxと同様の第2接着層を配置すればよい。
【符号の説明】
【0038】
10 ガスセンサ
2 配線基板
61,62 第1接着層
63 第2接着層
23 基板側パッド
25A 通気凹部
3、4 ガス検出素子
3P、4P 電極取出し辺
31、41 ガス検知層(層状部)
301、401 空洞部
39A、49A 空洞部を構成する壁面
39D、49D ダイヤフラム構造体
39E、49E 周縁部
36A,36B、46A,46B 検知電極
33、43 検知パッド
R1 ガス検出素子の電極取出し辺に沿う下面
R2 ガス検出素子同士の隣接する周縁部に沿う下面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏面を貫通した空洞部を有する半導体基板及び該空洞部を覆うように当該半導体基板上に形成された絶縁層を含むと共に、平面視多角形状をなすダイヤフラム構造体と、該ダイヤフラム構造体の前記絶縁層上に形成された少なくともガス検知層を含む層状部と、前記ガス検知層を介して互いに電気的に接続する一対の検知電極と、前記ダイヤフラム構造体の周縁部の一辺である電極取出し辺に沿って設置されて前記一対の検知電極にそれぞれ電気的に接続する一対の検知パッドとを有するガス検出素子と、
前記検知パッドに電気的に接続する基板側パッドが表面に一列に形成され、複数の前記ガス検出素子が、一列に、かつ前記電極取出し辺が前記電極パッドに対向して一方向に並ぶよう実装された配線基板とを備え、前記ガス検出素子の前記電極取出し辺に沿う下面と前記配線基板の表面との間に介装される第1接着層と、隣接する前記ガス検出素子の下面同士を跨ぐように当該下面と前記配線基板の表面との間に介装されると共に、前記第1接着層と離間して配置される第2接着層とを備えるガスセンサ。
【請求項2】
前記絶縁層内には発熱抵抗体が埋設されており、前記ダイヤフラム構造体の前記空洞部を形成する壁面に前記第1及び第2接着層が付着していない請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記配線基板の前記ガス検出素子に対向する表面には、前記周縁部のいずれかの辺を横断し、かつ前記空洞部に対向する部分に連通する通気凹部が設けられている請求項1又は2に記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−2721(P2012−2721A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139072(P2010−139072)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】