説明

ガスレーザ発振装置およびガスレーザ加工機

【課題】すなわち送風手段を用いずにレーザガスを冷却する事、および良質なレーザビームを取り出せる安定型共振器を両立させる事が大きな課題となっていた。
【解決手段】レーザガスを循環するレーザガス流路1のチャンバー2に、電極5、6と直流の電源7からなる放電手段を設け、この放電手段による直流電流方向13と直行方向に磁界を印加するための磁界発生手段12を設け、チャンバー2内の放電手段によりレーザガスに流れる電流と、この電流に直角方向に磁界を掛けたので、放電によりプラズマ化したレーザガスが電磁力によって移動するので従来のような送風手段を廃止できるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主として板金等の加工用途に用いられるガスレーザ発振装置およびガスレーザ加工機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5に従来の軸流型ガスレーザ発振装置の概略構成の一例を示す。以下、図5を参照しながら従来の軸流型ガスレーザ発振装置を説明する。
【0003】
この図に示す従来の軸流型ガスレーザ発振装置は、ガラスなどの誘電体よりなる放電管101は、前記放電管101の周辺に設けたリング状の電極102と103、前記電極102、103に接続した電源104、前記放電管101内の電極102、103間に挟まれた部分であり前記電源104から電極102、103に通電を行うことにより放電を行う放電空間105、全反射鏡106、部分反射鏡107、前記部分反射鏡107より出力されるレーザビーム108、レーザガスの流れる方向の矢印109、レーザガス流路110、熱交換機111、熱交換機112、送風手段113、レーザガス導入部114を備えている。
【0004】
この全反射鏡106、部分反射鏡107は前記放電空間105の両端に位置するように前記放電管101を支持する構成部材に固定配置され、光共振器を形成している。
【0005】
また、レーザガスは矢印109の方向にレーザガス流路110を流れ、レーザガス導入部114、放電管101内の放電空間105、熱交換機111、送風手段113、熱交換機112、レーザガス流路110の順に軸流型ガスレーザ発振装置の中を循環している。
【0006】
前記熱交換機111および112は放電空間105における放電と送風手段113の内部に配置した送風機の運転により温度上昇したレーザガスの温度を下げる。送風手段113は放電空間105にて約100m/sec程度のガス流を得るように送風している。レーザガス流路110と放電管101は、レーザガス導入部114で接続されている。
【0007】
図6にレーザ加工機の概略構成の一例を示す。以下、図6を参照しながらレーザ加工機を説明する。
【0008】
この図に於いて、上述した従来の軸流型ガスレーザ発振装置から出力したレーザビーム108をワーク116方向へ進行方向を反射鏡115で反射することにより変更し、トーチ117内部に備えられた集光レンズ118によって前記レーザビーム108を高密度のエネルギビームに集光して、ワーク116に照射する。
【0009】
なお、ワーク116は加工テーブル119上に固定されており、トーチ117をX軸モータ120あるいはY軸モータ121によって、ワーク116に対して相対的に移動する事で、所定の形状の加工を行うように構成している。
【0010】
このような従来の軸流型ガスレーザ発振装置では、送風手段113より送り出したレーザガスは、レーザガス流路110を通り、レーザガス導入部114より放電管101内へ導入される。この状態で電源104に接続された電極102、103から放電空間105に放電を発生させる。放電空間105内のレーザガスは、この放電エネルギーを得て励起され、その励起されたレーザガスは全反射鏡106および部分反射鏡107により形成された光共振器で共振状態となり、部分反射鏡7からレーザビーム108が出力される。このレーザビーム108がレーザ加工等の用途に用いられる。
【0011】
さて、一般にレーザ発振を行うためには放電管101内のレーザガス温度が一定温度以下である必要がある。例えばCOガスレーザの場合は、この温度が200℃であり、ガス温度が200℃を越えると、発振効率が急激に低下し、所定のレーザ出力が得られなくなる。
【0012】
従来の軸流型レーザ発振装置では、送風手段110および熱交換器111、112がレーザガス温度を常時30℃程度に保つために必要な構成要素である。レーザガスが放電管101内に送り込まれる時、レーザガス温度は約30℃である。
【0013】
そして放電が開始されると放電エネルギーによりレーザガス温度は上昇し、放電管を通過後、ガス温度は200℃近くにまで上昇している。このレーザガスは熱交換器111を通過する事で約30℃まで温度が下がる。送風手段113通過後、圧縮熱により再度150℃近くまでガス温度が上昇するが、再度、熱交換器112を通過し、約30℃まで温度が下がる。
【0014】
このレーザガスが再度、放電管101内へ導入される。レーザビームの出力が数kwクラスのCOレーザ発振装置の場合、放電管101を通過するガス流速は数100m/secであり、レーザガスが放電管101内に留まっている時間は、わずか数msecである。レーザガスがこれ以上の時間、放電管101内に留まると、温度上昇により200℃を超え、急激な発振効率の低下が発生する事になる。
【0015】
このように従来の軸流型ガスレーザ発振装置およびガスレーザ加工機、特にレーザビームの出力が数kw以上の出力が得られるCOレーザ発振装置においては、送風手段13を備える事は必須である。送風手段13としては、一般的にルーツブロアやターボブロアが用いられる。例えばターボブロア関して説明すると、レーザ用ターボブロアには、レーザガスに直接作用する翼車回転部は清浄に保つために、駆動用の機器、例えば電動機などを潤滑するオイルから発生するオイルミストが存在する翼車駆動部とを空気力学的に分離するシール構造を用いている。
【0016】
なお、上述した軸流型レーザ発振装置とは構成が異なるレーザ発振装置としては、送風機によるガス循環冷却を行わずにガスレーザの大出力化を行う構成として、対向させた平行平板状の2枚の電極間に放電空間を設け、放電によるガス温度上昇を平行平板との接触による拡散冷却によって抑制するいわゆるスラブレーザと呼ばれるものもあった(例えば特許文献1,2参考)。
【0017】
図7に従来のスラブレーザの概略構成の一例を示す。以下、図7を参照しながら従来のスラブレーザ発振装置を説明する。
【0018】
図7に示す従来のスラブレーザは、平行平板からなる電極102、103を有し、図示しないが内部に絶縁処理を施したパイプ状の冷却水流路を設けていて、図示しない冷却水循環装置と接続している。
【0019】
また電極102、103には電源104を接続しており、電極102、103に通電することにより、電極102、103の向かい合った空間を放電空間としている。
【0020】
この放電空間に位置するレーザガスが放電エネルギーを得て励起され、その励起されたレーザガスは全反射鏡106および部分反射鏡107により形成された光共振器で共振状態となり、部分反射鏡107からレーザビーム108が出力される構成になっている。
【0021】
なお、このスラブレーザでは拡散冷却の方法をとるため、冷却効率を上げるために平行平板からなる電極102、103間の距離を数mmオーダーに設定する必要がある。
【0022】
この場合、光共振器の空間も数mmオーダーの平行平板間により制限されるので、光共振器は平行平板表面での反射を用いた導波路型になり、導波路での散乱による不純光発生により、おのずと光の質は低下する。レーザビーム108は質の悪い矩形でしか取り出せない。
【特許文献1】特開昭63−192285号公報
【特許文献2】特開平8−97489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
さて、上述した軸流型レーザ発振装置に用いるシール構造は、翼車の高速高精度回転による送風能力との両立が求められ、そのためレーザ用ターボブロアはおのずと高価な部品となり、装置の全材料費の数10%を占める事から、イニシャルコスト低減の大きな阻害要因となっていた。
【0024】
またブロアは翼車の回転のためモータを用いており、その消費電力はガスレーザ発振装置の全消費電力の数10%を占めているため、消費電力を低減させランニングコストを抑制する上での大きな阻害要因となっていた。
【0025】
一方、シール構造を用いない、すなわち、送風手段によるガス冷却方式を用いずにレーザガスを冷却する手段としては、いわゆるスラブレーザが存在するが、このスラブレーザはレーザの光の質が悪いという致命的な欠点がある。
【0026】
レーザ光共振器の理想形は、折返し鏡での反射を一部介するものの、基本的に向かい合った1対のミラー表面での反射で光の定在波を形成する方式であり、いわゆる安定型共振器と呼ばれるものであり、最も良質な光を取り出す事が出来る。
【0027】
図8は軸流型ガスレーザ発振装置の光共振器部分を示した図であり、図8にしめしたように円錐対象形の質の良いレーザビーム108を取り出す事が可能である。
【0028】
すなわち送風手段を用いずにレーザガスを冷却する事、および良質なレーザビームを取り出せる安定型共振器を両立させる事が大きな課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、上記問題点を解決するために、レーザガスを循環するレーザガス流路と、前記レーザガス流路に配置したチャンバーと、前記チャンバー内に配置した放電手段を備え、前記放電手段による電流の流れる方向と直行方向に磁界を印加するための磁界発生手段を設けたものである。
【0030】
この構成により、チャンバー内の放電手段によりレーザガスに流れる電流と、この電流に直角方向に磁界を掛けたので、放電によりプラズマ化したレーザガスが電磁力によって移動する。
【0031】
また、前記磁界発生手段として電磁石を用い、前記電磁石に供給する電力を制御して磁界強度を可変する磁界制御装置を設けたものである。
【0032】
この構成により、レーザガスの移動速度を可変することができる。
【0033】
さらに、前記放電手段の近傍にガス温度検出手段と、前記ガス温度検出手段からの信号を入力して前記磁界制御装置に信号を出力する電磁力制御装置を設けたものである。
【0034】
この構成により、レーザガスの温度に応じたレーザガスの移動速度を制御することができる。
【0035】
また、前記レーザガス流路のレーザガスの循環方向の前記チャンバーから前記熱交換器の間の位置に第2の放電手段を設け、前記第2の放電手段による電流の流れる方向と直行方向に磁界を印加するための第2の磁界発生手段を設けたものである。
【0036】
この構成により、第2の放電手段によりレーザガスに流れる電流と、この電流に直角方向に磁界を掛けたので、放電によりプラズマ化したレーザガスが電磁力によって移動する。
【0037】
また、前記第2の磁界発生手段として電磁石を用い、前記電磁石に供給する電力を制御して磁界強度を可変する第2の磁界制御装置を設けたものである。
【0038】
この構成により、レーザガスの移動速度を可変することができる。
【0039】
さらに、前記放電手段の近傍にガス温度検出手段と、前記ガス温度検出手段からの信号を入力して前記第2の磁界制御装置に信号を出力する第2の電磁力制御装置を設けたものである。
【0040】
この構成により、レーザガスの温度に応じたレーザガスの移動速度を制御することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明により、送風機によるガス循環冷却を行わずにガスレーザの大出力化および高い光品質を容易に実現でき、大幅なイニシャルおよびランニングコストを図ったガスレーザ発振装置およびガスレーザ加工機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるレーザ発振装置の構成図である。図1(a)はレーザビームの進行方向に対して直角方向の装置断面を示した図、図1(b)は図1(a)のA方向の装置断面を示した図である。
【0043】
図に示す本発明の実施の形態1におけるレーザ発振装置は、CO・窒素・ヘリウムからなるレーザガスを循環するレーザガス流路1を有し、このレーザガス流路1には、チャンバー2と熱交換器3を、レーザガス流路1のレーザガス流れ4の方向に配置していて、熱交換器3で循環してきたレーザガスを冷却するよう構成している。
【0044】
チャンバー2内には、電極5、6をそれぞれ配置しており、これら電極5、6は直流でパルス出力可能な電源7に接続している。そして、電極5、6、電源7とで放電手段を構成している。
【0045】
また、チャンバー2内には、前記放電手段によってレーザガスに放電をおこなう空間である放電空間8を設けており、この放電空間8を光学的に挟むように全反射鏡9と部分反射鏡10を配置して光共振器を構成し、レーザビーム11を出力するように構成している。
【0046】
そして、チャンバー2には磁界発生手段12を設け、放電空間8での直流電流方向13に対して磁界方向14が直角方向になるように配置している。その直流電流方向13と磁界方向14とレーザガス流れ4の方向は3軸方向に互いに直交し、直流電流方向13とレーザガス流れ4の方向に合わせて磁界方向14を決めるようにしている。
【0047】
次に動作について説明する。
【0048】
電極5,6間に電源7から直流の高圧電力を印加してレーザガス中に放電を行い、チャンバー2内に放電空間8を形成し、レーザガスを励起し、光共振器で共振させてレーザビーム11を出力する。そして、この放電空間8に対して、磁界発生手段12により磁界を磁界方向14の方向に掛ける。このように放電空間8の直流電流方向13に対して磁界方向14の磁界をかけると放電空間8のプラズマ状のレーザガスに直流電流方向13および磁界方向14に直角な方向に電磁力が掛かる。
【0049】
この電磁力の方向をレーザガス流れ方向4と一致させることにより、レーザガスは電磁力によってレーザガス流れ方向4へ移動させることができる。
【0050】
この電磁力によって放電空間8のレーザガスはレーザガス流路1を通って熱交換器3へと流れて行き、冷却された後、再度チャンバー2へと導入される。
【0051】
このように、放電空間8に導入されたレーザガスに対して直流放電、磁界を印加することにより、レーザガス流路1でレーザガスを循環させることができる。
【0052】
なお、電磁力F[N]は電流をI[A]、磁界をH[A/m]、放電空間の長さをL[m]、透磁率をμとすると、F=μ・H・I・Lという式であらわされる。
【0053】
よって放電電流Iが大きいほど、電磁力Fは大きくなり、ガスの移動速度も大きくなる。放電電流が大きいほど、レーザガスの温度上昇も大きくなるため、ガスをより速く移動させる必要が発生する。この点より、電磁力によってレーザガスを移動させる方式は、ガスレーザの放電ガス移動に関して、原理的に相性が良い方式である事が判る。
【0054】
(実施の形態2)
図2は本発明の実施の形態2に関するレーザ発振装置の構成図である。図2(a)はレーザビームの進行方向に対して直角方向の装置断面を示した図、図2(b)は図2(a)のA方向の装置断面を示した図である。
【0055】
なお、実施の形態1で説明した構成と同じ構成については同じ符号を付与してその説明を省略する。
【0056】
本実施の形態2と実施の形態1とで異なる点は、磁界発生手段12は電磁石となっており、磁界制御装置15によって磁界強度を可変出来るようになっていることと、放電空間8の近傍に熱電対やサーミスタなどのガス温度検出手段16を設置し、電磁力制御装置17に検出した温度信号を出力していることと、この電磁力制御装置17は電源7および磁界制御装置15に接続されていることである。
【0057】
この構成によって常時レーザガス温度を監視し、レーザガス温度がレーザ発振に適した200度以下に保たれるように放電電流値および磁界のいずれか、あるいは両方を最適値に制御し、電磁力を変える事が出来る。
【0058】
具体的には、レーザガス温度が200度に近づくとレーザガスの循環速度を上げるように制御する。たとえばレーザ出力を変動させない範囲で電源7からの直流電力値を制御しながら磁界制御装置15を制御し、磁界発生手段12に供給する電力を上げてレーザガスの循環速度を上げる。
【0059】
なお、本実施の形態ではレーザガス温度をガス温度検出手段16で検出しているが、例えば、電源7の出力状態を検出してレーザガス温度の代わりとしてもよい。その場合は、電源7の出力状態とレーザガスの温度上昇の関係を予め測定して、そのデータベースを用いる。
【0060】
また、本実施の形態ではレーザガス温度をガス温度検出手段16で検出しているが、例えば、レーザ出力の指定値を検出してレーザガス温度の代わりとしてもよい。その場合は、レーザ出力の指定値とレーザガスの温度上昇の関係を予め測定して、そのデータベースを用いる。
【0061】
(実施の形態3)
図3は本発明の実施の形態3に関するレーザ発振装置の構成図である。図3(a)はレーザビームの進行方向に対して直角方向の装置断面を示した図、図3(b)は図3(a)のA方向の装置断面を示した図、図3(c)は図3(a)のB方向の装置断面を示した図である。なお、実施の形態1、2で説明した構成と同じ構成については同じ符号を付与してその説明を省略する。
【0062】
本実施の形態3と実施の形態1とで異なる点は、レーザガス流路1のレーザガスの循環方向のチャンバー2から熱交換器3の間の位置に設けた第2の電極18、19と、この第2の電極18、19に直流でパルス出力可能な第2の電源20から第2の放電手段を構成し、第2の電極18、19で挟まれた第2の放電空間21に流れる第2の直流電流方向22に対して第2の磁界方向23が直角方向になるように第2の磁界発生装置24を配置し、その直流電流方向22と磁界方向23とレーザガス流れ4の方向は3軸方向に互いに直交し、直流電流方向22とレーザガス流れ4の方向に合わせて磁界方向23を決めるようにしていることである。
【0063】
この構成は、光共振用の放電空間8とは別にレーザガス移動のための電磁力を発生させるための第2の放電空間21を設けていることにより、光共振用の放電強度と電磁力発生のための放電強度とを分離でき、自由度の高いよりフレキシブルな制御を行う事が可能となる。
【0064】
(実施の形態4)
図4は本発明の実施の形態4に関するレーザ発振装置の構成図である。図4(a)はレーザビームの進行方向に対して直角方向の装置断面を示した図、図4(b)は図4(a)のA方向の装置断面を示した図、図4(c)は図4(a)のB方向の装置断面を示した図である。なお、実施の形態1、2、3で説明した構成と同じ構成については同じ符号を付与してその説明を省略する。
【0065】
本実施の形態4と実施の形態2とで異なる点は、レーザガス流路1のレーザガスの循環方向のチャンバー2から熱交換器3の間の位置に設けた第2の電極18、19と、この第2の電極18、19に直流でパルス出力可能な第2の電源20から第2の放電手段を構成し、第2の電極18、19で挟まれた第2の放電空間21に流れる第2の直流電流方向22に対して第2の磁界方向23が直角方向になるように第2の磁界発生装置24を配置し、その直流電流方向22と磁界方向23とレーザガス流れ4の方向は3軸方向に互いに直交し、直流電流方向22とレーザガス流れ4の方向に合わせて磁界方向23を決めるようにしていることである。
【0066】
この構成は、光共振用の放電空間8とは別にレーザガス移動のための電磁力を発生させるための第2の放電空間21を設けていることにより、光共振用の放電強度と電磁力発生のための放電強度とを分離でき、自由度の高いよりフレキシブルな制御を行う事が可能となる。
【0067】
また、ガス温度がレーザ発振に適した200℃以下に保たれるように放電電流値および磁界のいずれか、あるいは両方を最適値に制御し、電磁力を変える事が出来るものである。
【0068】
なお、本実施の形態ではレーザガス温度をガス温度検出手段16で検出しているが、例えば、電源7の出力状態を検出してレーザガス温度の代わりとしてもよい。その場合は、電源7の出力状態とレーザガスの温度上昇の関係を予め測定して、そのデータベースを用いる。
【0069】
また、本実施の形態ではレーザガス温度をガス温度検出手段16で検出しているが、例えば、レーザ出力の指定値を検出してレーザガス温度の代わりとしてもよい。その場合は、レーザ出力の指定値とレーザガスの温度上昇の関係を予め測定して、そのデータベースを用いる。
【0070】
さらに、実施の形態1と実施の形態4、実施の形態2と実施の形態3を組み合わせても、いっそうの効果がある。
【0071】
以上の構成の本発明の実施の形態にかかるガスレーザ発振装置は、図6に示すガスレーザ加工機に使用可能であり、その概略構成を図6を参照しながら説明する。
【0072】
この図に於いて、上述した本発明の実施の形態にかかるガスレーザ発振装置から出力したレーザビーム108(各実施の形態の説明では符号11)をワーク116方向へ進行方向を反射鏡115で反射することにより変更し、トーチ117内部に備えられた集光レンズ118によって前記レーザビーム108を高密度のエネルギビームに集光して、ワーク116に照射する。
【0073】
なお、ワーク116は加工テーブル119上に固定されており、トーチ117をX軸モータ120あるいはY軸モータ121によって、ワーク116に対して相対的に移動する事で、所定の形状の加工を行うように構成している。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、送風機によるガス循環冷却を行わずにガスレーザの大出力化を容易に実現でき、大幅なイニシャルおよびランニングコストを可能にできるガスレーザ発振装置およびガスレーザ加工機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態1に関するガスレーザ発振装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態2に関するガスレーザ発振装置の構成図
【図3】本発明の実施の形態3に関するガスレーザ発振装置の構成図
【図4】本発明の実施の形態4に関するガスレーザ発振装置の構成図
【図5】従来のガスレーザ発振装置の構成図
【図6】ガスレーザ加工機の構成図
【図7】従来のスラブ型拡散冷却方式における光共振器部の構成図
【図8】軸流型ガスレーザ発振装置における光共振器部の構成図
【符号の説明】
【0076】
1 レーザガス流路
2 チャンバー
3 熱交換器
4 レーザガスの流れる方向
5、6 電極
7 電源
8 放電空間
9 全反射鏡
10 部分反射鏡
11 レーザビーム
12 磁界発生手段
13 直流電流方向
14 磁界方向
15 磁界制御装置
16 ガス温度検出手段
17 電磁力制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザガスを循環するレーザガス流路と、前記レーザガス流路に配置したチャンバーと、前記チャンバー内に配置した放電手段と、前記レーザガス流路に配置した熱交換器を備え、前記放電手段による電流の流れる方向と直行方向に磁界を印加するための磁界発生手段を設けたガスレーザ発振装置。
【請求項2】
前記磁界発生手段として電磁石を用い、前記電磁石に供給する電力を制御して磁界強度を可変する磁界制御装置を設けた請求項1記載のガスレーザ発振装置。
【請求項3】
前記放電手段の近傍にガス温度検出手段と、前記ガス温度検出手段からの信号を入力して前記磁界制御装置に信号を出力する電磁力制御装置を設けた請求項2記載のガスレーザ発振装置。
【請求項4】
レーザガスを循環するレーザガス流路と、前記レーザガス流路に配置したチャンバーと、前記チャンバー内に配置した放電手段と、前記レーザガス流路に配置した熱交換器を備え、前記レーザガス流路のレーザガスの循環方向の前記チャンバーから前記熱交換器の間の位置に第2の放電手段を設け、前記第2の放電手段による電流の流れる方向と直行方向に磁界を印加するための第2の磁界発生手段を設けたガスレーザ発振装置。
【請求項5】
前記第2の磁界発生手段として電磁石を用い、前記電磁石に供給する電力を制御して磁界強度を可変する第2の磁界制御装置を設けた請求項4記載のガスレーザ発振装置。
【請求項6】
前記放電手段の近傍にガス温度検出手段と、前記ガス温度検出手段からの信号を入力して前記第2の磁界制御装置に信号を出力する第2の電磁力制御装置を設けた請求項5記載のガスレーザ発振装置。
【請求項7】
レーザガスを循環するレーザガス流路と、前記レーザガス流路に配置したチャンバーと、前記チャンバー内に配置した放電手段と、前記レーザガス流路に配置した熱交換器を備え、前記放電手段による電流の流れる方向と直行方向に磁界を印加するための磁界発生手段を設けたガスレーザ発振装置を用い、ワークを載置するテーブルと、前記ガスレーザ発振装置から出力したレーザビームを前記ワークの方向に進行方向を変更する光学手段と、前記レーザビームを高密度のエネルギビームに集光する集光手段を内部に配置したトーチと、前記ワークとトーチを相対移動させる駆動手段を備えたガスレーザ加工機。
【請求項8】
前記磁界発生手段として電磁石を用い、前記電磁石に供給する電力を制御して磁界強度を可変する磁界制御装置を設けた請求項7記載のガスレーザ加工機。
【請求項9】
前記放電手段の近傍にガス温度検出手段と、前記ガス温度検出手段からの信号を入力して前記磁界制御装置に信号を出力する電磁力制御装置を設けた請求項2記載のガスレーザ加工機。
【請求項10】
レーザガスを循環するレーザガス流路と、前記レーザガス流路に配置したチャンバーと、前記チャンバー内に配置した放電手段と、前記レーザガス流路に配置した熱交換器を備え、前記レーザガス流路の前記チャンバー以外の位置に第2の放電手段を設け、前記第2の放電手段による電流の流れる方向と直行方向に磁界を印加するための第2の磁界発生手段を設けたガスレーザ発振装置を用い、ワークを載置するテーブルと、前記ガスレーザ発振装置から出力したレーザビームを前記ワークの方向に進行方向を変更する光学手段と、前記レーザビームを高密度のエネルギビームに集光する集光手段を内部に配置したトーチと、前記ワークとトーチを相対移動させる駆動手段を備えたガスレーザ加工機。
【請求項11】
前記第2の磁界発生手段として電磁石を用い、前記電磁石に供給する電力を制御して磁界強度を可変する第2の磁界制御装置を設けた請求項10記載のガスレーザ加工機。
【請求項12】
前記放電手段の近傍にガス温度検出手段と、前記ガス温度検出手段からの信号を入力して前記第2の磁界制御装置に信号を出力する第2の電磁力制御装置を設けた請求項11記載のガスレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−212555(P2010−212555A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59092(P2009−59092)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】