説明

ガス流からアンモニアを回収するためのプロセス

ガス流に含まれるアンモニアを回収するためのプロセスについて記載する。このプロセスは、以下の:(a)アンモニアを含有するガス流を、7.0未満のpHを有する水性洗浄液(5a)による洗浄(S)に供し、精製されたガス流(6)とアンモニア塩を含有する水溶液(7)とが生成される工程と、(b)工程(a)に由来するアンモニウム塩を含有する水溶液を、疎水性微孔性膜を使用した温度50〜250℃及び圧力50KPa〜4MPa(絶対圧)での蒸留プロセス(MD)に供し、再生された洗浄液(16)と、NH及びHOを含むガス流(18)とが生成される工程と、(c)再生された洗浄液を工程(a)に再循環させる工程とを含む。上記のプロセスを行うための装置についても記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流からアンモニアを回収するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的であるプロセスは、尿素の合成プロセスに由来するガス流からアンモニアを回収するのに特に適している。
【0003】
数々の工業活動によって発生するガス状アンモニアの大気中への放出は、特に重要な環境問題である。
【0004】
この汚染物質の環境への影響を制限するために、国内外の環境規制が、工業プロセス由来のアンモニアの大気中への放出により厳格な制限を課している。従って、数多くの工業プロセスにおける原料としてのアンモニアの高い市場価値を考えると、工業排出物中のアンモニアを除害する又はこれらの排出物流からアンモニアを回収するための新たな技術的解決策を見つけることが強く必要とされている。
【0005】
特に、尿素の合成プロセスは、アンモニアを含有する大量のガス流を発生する工業プロセスである。
【0006】
尿素の合成は、アンモニアと二酸化炭素とを高圧及び高温下で反応させ、続いて尿素を、未反応の生成物を含有する混合物から分離し、分離した未反応の生成物をリアクタに再循環させることによって行われる。
【0007】
従って、尿素を調製するための全ての工業プロセスは、以下の反応:
2NH3+CO2 ⇔ CO(NH22+H2O (A)
に従った直接合成に基づく。
【0008】
この合成は、2つの異なる反応工程:
NH3+CO2 ⇔ (NH2)COONH4 (A’)
(NH2)COONH4 ⇔ CO(NH22+H2O (A”)
において起きる。
【0009】
第1工程(A’)では、室温で高反応速度を有する発熱平衡反応が起きるが、この発熱平衡反応は、工程(A”)で必要とされる高温では、好適な平衡に到達するために高圧を必要とする。
【0010】
第2工程(A”)では吸熱反応が起き、この反応は高温(>150℃)でしか妥当な反応速度に到達せず、185℃の平衡状態では、化学量論比の反応物の混合物から始まって、約50%よりわずかに高いCO2転化率が得られる。この不十分な転化は、NH3/CO2比を上げることによって簡単に上昇させることができる。
【0011】
アンモニアと二酸化炭素から始める直接合成による尿素の製造プロセスは、当該分野の特定の文献において広く例示及び記載されている。尿素を製造するための最も一般的なプロセスの広範囲に亘る概説を、例えばKirk−Othmer編集のEncyclopedia of Chemical Technology(Wiley Interscience、第4版(1998)、増補版、pp.597〜621)に見ることができる。
【0012】
尿素製造の工業プロセスでは通常、合成を、NH3、CO2、並びに未転化の反応物の再循環流に由来する炭酸アンモニウム及び/又はカルバミン酸アンモニウムの水溶液が供給されたリアクタ内で、温度150〜215℃、圧力少なくとも130atm、供給流の合計に対して計算された、アンモニウム塩の形態のアンモニアを含むNH3/CO2モル比2.5〜5で行う。生成された水及び供給された過剰なNH3に加えて、リアクタ流出液は依然としてかなりの量のCO2を、主に未転化のカルバミン酸アンモニウムの形態で含有する。
【0013】
溶融尿素は、プラントの最終セクションにおいて、適切な製粒機又はプリル化タワー(prilling tower)内で空気による冷却によって顆粒形態に固化される。
【0014】
尿素製造プラントに関係した環境問題の多くが、特には上述の顆粒化又はプリル化セクションに関連している。
【0015】
このセクションで行われるプロセスは現在、実際のところ、アンモニア(約50〜250mg/Nm3空気)、尿素(約20〜200mg/Nm3空気)及び微量のホルムアルデヒドによって汚染された大量の空気の大気中への放出を引き起こしている。
【0016】
アンモニアは、コークスの蒸留で発生するもの等の工業ガス流にも同じく比較的高い濃度、最高10g/Nm3、で含まれており、このガス流からアンモニアを便利に抽出し、工業原料として使用することができる。
【0017】
最先端技術には、ガス流に含まれるアンモニアを除害するための様々なプロセスがある。様々な工業プロセスも開発されており、これらのプロセスは、純粋なアンモニアを分離するだけでなく回収することも可能にする。コークスガスからのアンモニアの回収に関し、例えば米国特許第3024090号明細書には、ガスを、リン酸アンモニウムの酸溶液(一酸リン酸塩(monoacid phosphate)と二酸リン酸塩(diacid phosphate)との混合物)での洗浄、続いて溶液のストリッピングに供するプロセスが記載されている。しかしながら、この方法では高効率に達せず、また低アンモニア含有量のガス流に応用することができない。
【0018】
米国特許第4424072号明細書には、ガス流に低濃度で含まれるアンモニアの、例えば硝酸を使用した酸洗浄による除害プロセスが記載されており、アンモニウム塩の水溶液が得られる。
【0019】
特に、酸洗浄に供されるアンモニアを含有するガス流が、尿素合成プロセスの最終プリル化又は顆粒化セクションに由来するガス流である場合、アンモニウム塩を含有する水溶液は、尿素と微量のホルムアルデヒドも含有する。
【0020】
アンモニウム塩を含有する水溶液をそのままで尿素合成及び/又は濃縮セクションに再循環させることはできない。なぜならこうして尿素がアンモニウム塩によって汚染される可能性があるからであり、アンモニウム塩は、後に尿素を特定の用途、例えばメラミンの合成に使用するにあたって全く望ましくない。
【0021】
更に、このようにして得られるアンモニウム塩は使い物にならないような仕様を有するものだが、これは市場が関心を寄せる目的に全く適していないからである。
【0022】
アンモニウム塩を含む水溶液の膜電解法(membrane electrolytic process:MEP)による処理は、欧州特許第1695755号明細書により公知である。この処理によって、アンモニアの除去に使用した酸を回収することができ、アンモニウム塩を含有する水溶液の尿素プラントへの再循環は回避され、その結果、考えられる汚染問題が克服される。
【0023】
欧州特許第1695755号明細書で提案の解決策は、アンモニウム塩を含む水溶液の膜電解プロセス(MEP)による処理を想定しており、この処理によって、ガス流中に存在するアンモニアを洗浄するために使用した酸を回収することができ、回収した酸を適切に再循環させることができる。水酸化アンモニウムの水溶液も得られ、この水溶液を熱処理することによって、尿素合成プラントに再循環させ得るガス状アンモニア流を得ることができる。
【0024】
しかしながら、欧州特許第1695755号明細書で提案の解決策は様々な欠点、特には電気透析セルからの水酸化アンモニウムの希釈溶液の形態でのアンモニアの生成を有しており、希釈溶液の形態の水酸化アンモニウムは、尿素合成プラントへの十分に濃縮された形態での再循環に先立って、特殊で高価な熱ストリッピング処理を必要とする。
【0025】
更に、欧州特許第1695755号明細書に記載されるような、アンモニウム塩を含む水溶液の膜電解法(MEP)による処理では、望ましくないイオンも通過してしまい、完全に再循環させることができない水酸化アンモニウムの水溶液の生成や、膜を通っての中性NH3の望ましくない逆流に起因するプロセス効率の低下につながる。
【0026】
アンモニアが溶解している溶液からガス状アンモニアを回収できる別の技法が、「メンブレンコンタクタ(membrane contactor:MC)」として知られる微孔性膜装置による膜蒸留である。
【0027】
MC装置は、ガス相と液相と接触させ、その中に存在する化学種を制御下で物質移動させ、一方の相のもう一方の相内での分散を回避することが可能な装置である。
【0028】
膜蒸留において、物質移動プロセスは、疎水性微孔性膜の表面、より具体的には膜の細孔の出口で起きる。膜の片側にある流体(供給流体又は流れ)から反対側の流体(輸送流体又は流れ)へと化学種を拡散させる推進力は、この2種類の流体間に存在する温度、圧力及び濃度勾配である。
【0029】
MC装置による分離プロセスは、逆浸透、精密濾過、ナノ濾過及び限外濾過プロセスとは異なる。これらのプロセスでは、膜の両側の2種類の流体間に高い圧力差の適用を必要としないからである。
【0030】
膜蒸留プロセスにおいては、異なる構成を有する疎水性膜、例えば平膜、スパイラル膜又は中空糸を使用することができる。
【0031】
膜の空隙率が高いことから、このタイプの蒸留プロセスは、従来の蒸留のものよりずっと広い2種類の流体間の接触面で行われ、生産性及び使用する装置のサイズの小型化という観点から有利なのは明らかである。
【0032】
アンモニアを含有する溶液の膜蒸留による処理は、例えばEL−Bourawiらによる論文「Application of vacuum membrane distillation for ammonia removal」(Journal of Membrane Science 301(2007),200〜209)から公知である。
【0033】
この文献は、アンモニアの回収が、溶液のpHに大きく影響を受けることを示し、塩基性化剤(basifying agent)の添加によって11前後の値にまでpHを上昇させた、アンモニアを含有する溶液の場合にのみ有効であることが判明している。工業規模では、上記の条件下で行われるアンモニアの分離は、大量の塩基性化剤を消費し、結果的にこのアンモニア回収プロセスのコストが上昇するという紛れもないデメリットを有する。
【発明の概要】
【0034】
出願人はここで、上述の従来技術における欠点を克服でき、ガス流からのアンモニアの回収プロセスを更に改善するプロセスを発見した。
【0035】
従って、本発明の目的は、ガス流に含まれるアンモニアを回収するためのプロセスに関し、このプロセスは以下の工程:
(a)アンモニアを含有するガス流を、7.0未満のpHを有する水性洗浄液による洗浄に供し、精製されたガス流とアンモニア塩を含有する水溶液とが生成される工程と、
(b)工程(a)に由来するアンモニウム塩を含有する水溶液を、疎水性微孔性膜を使用した温度50〜250℃及び圧力50KPa〜4MPa(絶対圧)での蒸留プロセスに供し、再生された洗浄液と、NH3及びH2Oを含むガス流とが生成される工程と、
(c)前記再生された洗浄液を工程(a)に再循環させる工程と
を含む。
【0036】
上記のプロセスの好ましい実施形態において、工程(b)から出るNH3及びH2Oを含むガス流は、尿素の合成プラントに再循環させられる。
【0037】
本発明の目的は、上記のプロセスを実行するための装置にも関し、この装置は、
洗浄ユニット(スクラバ)であって、その中でアンモニアを含有するガス流を水性洗浄液と接触させる洗浄ユニット(スクラバ)と、
アンモニウム塩の水流を疎水性微孔性膜を使用した蒸留に供し、アンモニア及びH2Oを含むガス流と再生された洗浄液とを生成するためのユニットであって、前記洗浄ユニットに接続されており、前記洗浄ユニットからアンモニウム塩の水流を受け取るユニットとを備える。
【0038】
本発明のプロセスに従って処理されるガス流は様々な工業プロセスに由来し得て、好ましくは、尿素の合成プロセスに由来するガス状パージ流である。
【0039】
ガス状パージ流は、尿素合成プロセスの様々なセクション及び装置に由来し得る。好ましく且つ最も関連性が高いケースにおいて、通常関わるガス体積の結果、ガス状パージ流は尿素固化セクション由来であり、この尿素固化セクションは、周知のように、溶融尿素又は濃縮溶液の形態の尿素が冷却され、輸送及び農業での使用に適した概して顆粒である形態に固化される、合成プラントの一部である。様々な固化技法が考えられ、上述したように、最も一般的で好ましい固化技法は顆粒化及びプリル化として知られており、これらの技法では、冷却剤として大量のガス流を使用する。
【0040】
しかしながら、十分な回収処理なしでは放出することができない、尿素プラントにおいて汚染物質としてアンモニアを含有するパージ又は通気ガス流の供給源は他にもあり、例えば、施設の様々な領域、貯蔵領域に位置する吸引ダクト内の流れ又は不活性生成物をパージするための流れがある。これらの流れは全て、本発明に従って処理することができ、環境への影響を改善し、またプラントに再循環させるアンモニアをより多く回収できるという2つの利点が得られる。
【0041】
尿素の合成プロセスに由来するガス状パージ流は一般に、アンモニア(約50÷250mg/Nm3ガス)、尿素(約30÷200mg/Nm3ガス)及び微量のホルムアルデヒドによって汚染されたガスから成る。
【0042】
このガスは通常、空気から成るが、空気とは異なる不活性ガスを使用するプロセスは本発明の範囲から排除されず、これらのケースにおいて、このガス状パージ流は主にこの不活性ガスから成る。
【0043】
ガス状パージ流は好ましくは、温度約45〜100℃で尿素合成プラントに由来して、水による予備的な洗浄に供されることによって、存在する尿素及びホルムアルデヒドの殆どが排除される。しかしながら、このケースにおいても、本発明のプロセスの工程(a)に供されるガス状パージ流は依然として尿素及び微量のホルムアルデヒドを含有する。
【0044】
続く工程(b)の処理を通じて、尿素は少なくとも部分的に加水分解されてCO2及びNH3が生成される。これが最先端のプロセスに対しての特筆すべき利点であるが、これは膜蒸留に由来する再生された洗浄液の再循環(工程(c))の結果として、洗浄液中の尿素の蓄積がスクラバの効率を次第に低下させ得るからである。更に、尿素の部分加水分解のおかげで、尿素からより多くのアンモニアを回収することが可能であり、同時に環境中へのその放出が回避される。
【0045】
工程(a)は好ましくは、処理対象であるガス流における尿素の存在又は不在に関わらず、pH5〜6.5を有する水性洗浄液を使用して行われる。この洗浄液の温度は便利には15〜70℃に維持される。
【0046】
工程(a)で使用する水性洗浄液は好ましくは、pHが上で定義された範囲内にある共役酸塩基対から成る緩衝液である。目的に適した典型的な緩衝液は、例えば、フタル酸、シュウ酸、リン酸、クエン酸、アリール−及びアルキル−ホスホン酸由来の共役酸塩基対から成るものである。共役酸塩基間のモル比は、化学平衡の法則に従った望ましいpHに基づいて決定される。
【0047】
工程(a)の洗浄はより好ましくは、共役酸塩基対H2PO4-/HPO42-(以下、二酸リン酸塩/一酸リン酸塩対とも称される)から成る温度40〜60℃の緩衝液を使用して行われる。
【0048】
このケースにおいて、工程(a)におけるガス流の処理中、共役酸塩基対H2PO4-/HPO42-の種はガス状アンモニアと反応し、平衡は、(NH4)HPO4-の生成へとシフトする。より一層好ましくは、緩衝液は、工程(a)の水溶液中に解離した形態で存在する同じアンモニウム塩(NH42HPO4及び(NH4)H2PO4の平衡にある混合物から成る。しかしながら、アンモニアの吸収によって(NH42HPO4の更なる生成が引き起こされることから、工程(a)から出る溶液は、処理されたガス流中に存在したアンモニアで富化される。
【0049】
工程(a)で使用される洗浄液中の共役酸塩基対の全体モル濃度は好ましくは0.5M〜5M、より好ましくは1M〜4Mである。二酸リン酸塩/一酸リン酸塩対から成る適切な緩衝液は、20〜40質量%、好ましくは30〜35質量%の種H2PO4-及びHPO42-の全体濃度を有する。
【0050】
本発明のプロセスを、尿素合成プラントに由来するアンモニアを含有するガス流に応用する場合、工程(a)から出るアンモニア塩を含有している水溶液もまた尿素及び微量のホルムアルデヒドを含有する。
【0051】
本発明のプロセスの工程(a)から出るガス流は、実質的にアンモニアを含有していない流れである。工程(a)から出るガス流は、実質的に純粋な空気又は別の不活性ガス(例えば、窒素)から成る。工程(a)で処理されるガス流が尿素合成プロセスに由来する場合、例えば、同じ工程(a)から出るガス流は典型的にはアンモニア含有量10〜25mg/Nm3ガス及び尿素含有量5〜30mg/Nm3ガスを有する。精製されたガス流が空気又は窒素から成るなら、施行中の環境規制に準拠していることから、更に処理することなく大気中に放出することができる。
【0052】
本発明のプロセスの工程(b)において、工程(a)に由来するアンモニウム塩を含有する水溶液を、温度50〜250℃及び圧力50KPa〜4MPa(絶対圧)での疎水性膜蒸留プロセス(MD)に供すると、再生された洗浄液、すなわち、実質的にアンモニアを含有していない洗浄液と、蒸気の形態で微孔性膜を通過したアンモニアを含むガス流とが生成される。このガス流は、蒸気の形態の水も含む。
【0053】
工程(a)に供給されたガス流が、尿素合成プラントに由来するパージ流の場合、工程(b)から出るガス流は好ましくはCO2も含む。
【0054】
工程(b)において、適用した処理条件に起因して、緩衝液の共役酸塩基対の平衡のシフトが、膜の細孔を通してガスの形態で放出される中性アンモニアの生成と共に起きる。
【0055】
共役酸塩基対H2PO4-/HPO42-を含有する緩衝液から成る水性洗浄液を工程(a)において使用する非限定的なケースにおいては、以下の反応(1):
(NH4+2HPO42-(aq)+エネルギー ⇔ (NH4+)H2PO4-(aq)+NH3(g)(1)
が工程(b)において起き、ここで用語「エネルギー」は、工程(b)における膜蒸留に供されるアンモニウム塩を含有する溶液に供給される総エネルギーを表し、このエネルギーは、二酸リン酸塩イオン及び遊離アンモニアの生成への平衡のシフトに寄与する操作条件(温度、圧力、電磁波の照射等)に左右される。
【0056】
工程(b)の操作条件は、ガスの形態の遊離アンモニアの生成への反応(1)の平衡シフトが保証されるように当業者によって選択される。
【0057】
水溶液中のリン及びアンモニウムイオンの平衡シフトによって得られる遊離アンモニアは、プロセスの圧力及び温度条件下で相平衡に従って気相で移動し、ガス流として分離される。
【0058】
工程(b)は好ましくは、望ましい温度への到達及びアンモニアの除去を促進するために膜蒸留ユニットを加熱することによって行われる。
【0059】
工程(b)における温度及び圧力条件は、再生された洗浄液と、アンモニアを含有するガス流とが生成されるように選択されなくてはならない。特に、操作条件は、ガス状アンモニアが発生するようなものでなくてはならない。
【0060】
アンモニアを回収するガス流が尿素を含有していない場合、工程(b)は好ましくは温度100〜140℃及び圧力大気圧〜約200KPa(絶対圧)で行われる。
【0061】
工程(a)に供給されるガス流が尿素も含有する場合(例えば、尿素合成プラントに由来するパージ流)、工程(b)は好ましくは温度100〜200℃、より好ましくは130〜180℃及び圧力大気圧〜2MPa(絶対圧)、好ましくは0.15〜1.5MPa(絶対圧)で行われる。
【0062】
本発明の好ましい実施形態においては、尿素も含む水溶液の膜蒸留工程を約0.3MPa及び温度約150℃で行うことによって、NH3、H2O及びCO2を含み、5〜35質量%、より好ましくは10〜25質量%のアンモニア濃度を特徴とする流れを得ることが可能である。
【0063】
工程(b)において、膜の片側を流れる(蒸気側)アンモニアを含むガス流の圧力は、反対側(液体側)を流れる処理対象である溶液の圧力以下の値に維持されなくてはならない。更に、液体側の圧力と蒸気側の圧力との差は、膜の細孔を通じての液相(水)の溶媒の通過とそれに続く溶媒とアンモニアを含むガス流との混合を回避するために、細孔湿潤圧力未満でなくてはならない。細孔湿潤圧力は可変であり、膜の構造上の特徴及び膜自体を形成している材料のタイプに左右される。
【0064】
微孔性膜蒸留プロセスは好ましくは、いずれの形態の疎水性微孔性膜、例えば、中空糸、平膜、スパイラル膜等を備えたMC装置によって行われる。
【0065】
微孔性膜蒸留プロセスは好ましくは自己ストリッピングによって、すなわち、追加の輸送流が存在しないで行われる。より多くのNH3を抽出するために、ガス流又は液体流を輸送流として使用することができ、アンモニウム塩を含有する溶液(供給流)の圧力に近い圧力で維持される。このケースにおいて、輸送流は好ましくは水蒸気流だが、上記の圧力条件が保証されるなら、CO2又はその他の不活性ガスの流れ又は液体流(例えば、水)でもあり得る。
【0066】
本発明の目的のために使用される膜は典型的には疎水性ポリマー系の材料から成り、例えばフッ素化ポリマー及びコポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド又はNafion(登録商標)、高結晶性を有する特定のポリオレフィン、例えばアイソタクチックポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホンである。これらの材料によって、高い耐熱性(最高220〜250℃)、耐薬品性、機械的耐性が得られる。これらの膜が耐えられる最大圧力差は約100kPaである。このタイプの膜は、モジュラーMC装置の形態で市販されている。
【0067】
本発明のプロセスにおいて、MC装置の加熱は好ましくはマイクロ波範囲内の周波数を有する電磁放射線の照射によって行われる。これを目的として、最先端技術で公知のマイクロ波発生装置を使用することができる。マイクロ波を使用する利点は、液相中に存在する水分子、アンモニア及びその他の極性分子を選択的に加熱できることであり、蒸気の形態で存在する分子の著しい加熱が回避される。これが供給流への熱エネルギーの供給を可能にし、続くガス状アンモニア及び考えられるCO2の膜の透過が促進される。
【0068】
更に、マイクロ波の使用によって、膜の細孔の湿潤も防止される。処理対象の溶液が流れる側の膜上の過剰圧力によって細孔のフラッディングが起きても、マイクロ波による液体水分子の選択的加熱によって細孔内部を貫通した液体の水が蒸発するため、装置の機能を中断することなく、また逆圧の印加を回避しながら、インシチュで膜が再生される。
【0069】
更に、液体を加熱するためのマイクロ波の使用には、考えられるガス状輸送流におけるアンモニアの拡散を、その望ましくない加熱を引き起こしたりエネルギー消費を上昇させたりすることなく促進する更なる利点があることが判明している。
【0070】
マイクロ波の照射によって熱を供給するために、アウターケーシングがマイクロ波透過性材料、例えば、PTFE、ガラス、パイレックス(登録商標)等の材料から成るMC装置を使用しなくてはならない。
【0071】
マイクロ波による加熱は利用しやすいだけでなく、膜蒸留装置に供給される熱エネルギーの正確な調節も可能にする。更に、電気エネルギーからマイクロ波への変換効率が約70%オーダーのマイクロ波加熱装置は、より高い全体エネルギー収率のアンモニア回収プロセスを得るのに貢献する。
【0072】
工程(b)の膜蒸留によって以下の生成物:好ましくはpHが5〜6.5の再生された洗浄液及び尿素の加水分解由来のアンモニア及び場合によってはCO2を含有するガス流が得られる。
【0073】
再生された水性洗浄液は続いて、本発明のプロセスの工程(a)の開始ガス流から更にアンモニアを除害するために使用される。すなわち、再生された水性洗浄液は、考えられる含まれる熱の回収及び/又は例えば真空下での蒸発による濃縮後、いわゆるスクラバ工程に再循環される(工程(c))。工程(a)への再循環に先立って、再生された水性洗浄液は、望ましい濃度及びpHを維持するのに必要な量の水及び酸又は緩衝液(補給溶液)の添加を必要とする場合がある。
【0074】
工程(b)から出るガス流に含まれるアンモニアを、様々な形で使用することができる。上記のプロセスの好ましい実施形態において、工程(b)から出る、微量の尿素の加水分解に由来するNH3、H2O及び考えられるCO2を含むガス流は、尿素合成プロセスに再循環させられる。或いは、上記のガス流を、アンモニアの合成プロセスに供給することができる。両方のケースにおいて、これらのプラントへの供給に先立って、アンモニアを含むガス流を任意で、適切な熱交換器による含まれる熱の回収に供することができる。工程(b)から出るアンモニアを含むガス流を凝縮させることによって、別の工業プロセスに再循環させることができるアンモニアの水溶液を生成することもできる。
【0075】
共役酸塩基対がH2PO4-/HPO42-である緩衝液から成る洗浄液の工程(a)における使用を想定している好ましい実施形態において、工程(a)に由来し、膜蒸留に送られる(NH42HPO4及び(NH4)H2PO4の溶液は、3〜12質量%のNH4+イオン濃度を有する。
【0076】
一実施形態において、蒸留に使用するMC装置からは以下の主要生成物が得られる。
・20〜40質量%、好ましくは30〜35質量%のHPO42-種及びH2PO4-種を含有する緩衝液から成る再生された水性洗浄液。再生された水性洗浄液は、考えられる必要な量の水及び補給溶液の添加後、いわゆるスクラビング工程に再循環される。
・5〜35質量%、好ましくは15〜25質量%のアンモニアを含むガス流。
【0077】
従って、本発明の改善されたプロセスによって、ガス流に含まれるアンモニア、尿素等の汚染生成物が回収でき、有利には濃縮アンモニア溶液が得られる。これらの溶液は結果として、更なる工業プロセス、例えば、尿素の合成への再循環に先立って特殊な熱処理を必要としない。従って、このプロセスは高いエネルギー効率を有する。
【0078】
更に、本発明のプロセスは、膜蒸留の使用に由来する以下の更なる利点を有する。
・希釈溶液においても高いアンモニア分離効率。これは、界面が膜の細孔から成ることから、輸送流及び供給流のフロー条件の変動に伴って変化しないためである。
・流体間での分散現象がないことから、エマルションが生成されない。
・接触している流体が、異なる密度を有することを必要としない。
・膜蒸留プロセスのスケールアップ手順が簡略化される。これは処理対象である供給流の体積における上昇が、モジュールの数(MC装置)における直線的増加に対応しているためである。
・再生対象である又は再生された溶液の一部の、恐らくは尿素プラントに供給されるアンモニアを含有するガス流へのエントレインメントがない。これによって、尿素プラントのプロセス流がこのプロセスに関係しない物質によって汚染されることを防止する。
・摩耗又は考えられる破損を起こす可動性の機械部品がない。
・蒸留に必要な装置の負担の減少。
【0079】
更に、最先端技術で公知の膜蒸留プロセスに対して、本発明のアンモニア回収プロセスで使用される膜蒸留プロセスには、実質的に非塩基性の溶液を使用して行うことができるという利点があり、結果的に塩基性化化合物の消費量が削減される。
【0080】
本発明のプロセスはまた、膜蒸留装置を加熱するためのマイクロ波の好ましい使用に由来する高いエネルギー効率を有する。
【0081】
本発明のプロセスを、尿素も含むガス流からのアンモニアの回収に応用する場合、存在する全ての尿素を実質的に排除する可能性にも更なる利点を見出すことができる。実際、工程(b)において、温度及び圧力条件によって尿素の一部の加水分解が引き起こされるが、残りの尿素は工程(a)に再循環させられるため、環境中に尿素が分散することがない。
本発明のプロセスの好ましい実施形態を、同封の図1によって例示する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】尿素合成プロセスのプリル化又は顆粒化セクションから出発するガス状パージ流の処理工程を概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図式化されたプロセスの完全な理解にとって重要ではない、ポンプ、バルブ及び装置のその他の部品等の機能的な細部は、上記の図1に示されていない。本発明の目的であるプロセスは、いかなる場合も、同封の図に記載のものに限定されると見なされるべきではなく、図は純粋に例示を目的としたものである
【0084】
更に、本説明を簡略化するために、用語「液体(liquid)」は、単一の液相又は液体・気体の混合相から成る流れ又は混合物に関して区別することなく使用される。用語「ガス(状)(gaseous)」は、液相が実質的に存在しない流れ又は混合物について使用される。
【0085】
図1のスキームはプリル化又は顆粒化セクションPを例示しており、ライン1を介して水洗浄セクションAに接続され、流れは恐らくは尿素プラントに由来し、またアンモニア及び尿素の不純物を含有している。このセクションAは、水流入ライン2、流出ライン3を備え、ライン4を介してスクラバセクションSに接続されている。スクラバセクションSは、流入ライン5a、空気流出ライン6を備え、ライン7を介して今度は蓄積タンクSAに接続されている。蓄積タンクSAは、ライン5及び5aを介してスクラバSに接続され、またライン10aを介して熱交換器SCに接続されている。熱交換器SCは次にライン10bを介して膜蒸留ユニットMDに接続され、この膜蒸留ユニットMDは、微孔性膜を使用したMC装置を備える(図1には図示せず)。MDユニットはライン16、16a、5aによってスクラビングセクションSに接続されている。MDユニットは、本発明のプロセスによってガス状パージ流から回収されたアンモニアを含む蒸気の流出ライン18も備える。
【0086】
図1を参照しながら、本発明のプロセスの考えられる実施形態を以下で説明するが、この説明は本発明それ自体の全範囲を限定しない。
【0087】
プリル化又は顆粒化セクションPからライン1を通ってくるガス状パージ流は、アンモニア(約50〜150mg/Nm3空気)、尿素(約100〜200mg/Nm3空気)及び微量のホルムアルデヒドによって汚染された空気から成る。この流れは水洗浄セクションAに送られる。このセクションAは2種類の供給流を有し、ライン2を通して供給される水から成る流れと、セクションPからライン1を通ってくるガス状パージ流である。水洗浄セクションAの流出口のライン4を通るガス流は、空気、アンモニア、尿素及び微量のホルムアルデヒドから成る。従って、最初のガス流中に存在した尿素の一部は水洗浄によって排除されてしまっており、またライン3を通る流出口における水溶液中に見ることができる。この尿素は好ましくは、尿素を回収するために、尿素合成プラントの真空濃縮セクション(図示せず)に送られる。
【0088】
水洗浄セクションAの流出口のガス流をライン4を通してスクラバセクションSに送り、ここで全体リン酸イオン濃度30〜40質量%、pH5〜6、温度30〜50℃を有する(NH42HPO4及び(NH4)H2PO4の酸性水溶液での洗浄に供すると、ライン6を通して大気中に放出される実質的に純粋な空気を含むガス流と、ライン7を通して蓄積タンクSAに供給される、(NH42HPO4で富化された水溶液とが生成される。水洗浄セクションAにおいては、ガス流におけるアンモニア含有量を望ましい値(通常は20mg/m3未満の値)、また考えられる尿素を通常は30mg/m3未満の値に削減するのに十分な量の洗浄液を使用する。使用する洗浄液の体積は好ましくは、ガス流1Nm3あたり0.5〜3リットルである。
【0089】
水洗浄セクションAがない場合もあり、この場合、セクションPからもたらされるガス状パージ流1は直接、スクラバセクションSに送られる。
【0090】
蓄積タンクSAが存在する場合、蓄積タンクSAによってライン5及び5aを通してスクラバセクションSに洗浄液をより大量に再循環させることができる。従って、再循環を伴う通常の動作モードに従って、プロセスを、より高濃度の共役酸塩基対溶液を使用して行うことができる。ライン16及び16aを通ってMDセクションからもたらされる再生された水溶液は、ライン5を通って蓄積タンクSAから出る洗浄液に、スクラバ及びMDセクションの膜蒸留において蒸発した分を補給するためのライン21を通した水の添加後、添加される。このようにして合流した流れ5及び16aは、ライン5aを通ってスクラバSに再循環される。
【0091】
(NH42HPO4及び(NH4)H2PO4を含有する酸性水溶液の一部、より好ましくはスクラバにおいて使用される流れの0.2〜5%は、例えばライン16を通ってセクションMDを後にする流れとの熱交換による、熱交換器SCにおける温度80〜100℃への加熱後(セクションMDから出る流れのライン16を通した熱交換器SCにおける使用は図1に図示せず)、ライン10a及び10bを通して蓄積タンクSAから膜蒸留セクションMDに送られる。
【0092】
MDユニットにおいて、(NH42HPO4及び(NH4)H2PO4を含有する水溶液を、温度120〜180℃圧力0.2〜1.5MPa(絶対圧)で処理すると、NH3、H2O及びCO2を含むガス流が生成され、このガス流は、流出ライン18を通して除去され、尿素プロセスの合成セクション又はアンモニアの合成プロセスに再循環させることができる。
【0093】
MDセクションの膜蒸留ユニットは、水平に配置された円筒形の装置から成り得る。この装置内には、円筒形の疎水性微孔性膜から成る一連の管状要素が並び、端部で分配チャンバ及び回収チャンバに接続されている。再生対象である緩衝液は好ましくは管状要素の外側、すなわちシェル側の空間を流れる。この好ましいケースにおいて、水、アンモニア及び考えられる二酸化炭素の蒸気は、膜を通って、管状要素内の空間内に放出され、次にライン18の流出口で回収される。
【0094】
微孔性管のシェル側の緩衝液と内側の蒸気との間の圧力差は便利には40〜150kPaに維持され、細孔湿潤現象を回避するために、いかなる場合においても細孔湿潤限界未満である。圧力差に対するより高い耐性を得るために、微孔性膜は、場合によっては蒸気透過性の剛性材料上に支持され、この剛性材料は上記の好ましいケースにおいては中空管から成り、その上に膜が巻かれる。或いは、再生対象である溶液がMDユニット内の装置の管側を流れる場合、膜をその内部に有する管であり得る。
【0095】
熱は、例えば、ライン11から送られる中圧又は高圧の蒸気によってMDユニットに供給することができ、この蒸気は管束又は加熱ジャケットを通過し、凝縮されてライン12を通って流出する。しかしながら、より便利には、必要な熱を、マイクロ波ビームを2300〜2700MHz、好ましくは2400〜2600MHzの範囲の周波数で発生させるMO装置によって、微孔性膜と接触している溶液に適切に照射することによって供給することができる。処理する溶液中に存在する極性分子の最適な吸収に最も適した周波数は、当業者によって、溶液の組成及び温度との関連で、文献に記載の吸収特性又は簡単な予備スキャンテストに基づいて容易に選択することができる。このケースにおいて、装置を形成している剛性材料(蒸気透過性材料から成るマントル及び考えられる円筒形支持体)は、使用する周波数範囲内のマイクロ波を透過するものから選択されなくてはならない。
【0096】
MDセクションは、流入水溶液より高い二酸リン酸塩含有量を有するが、高いHPO42-及びH2PO4-種全体濃度並びに結果としての高い緩衝作用により実質的に同じpHを有する再生されら洗浄液も戻す。この溶液は、ライン16、16a及び5aを通して酸スクラバセクションSに再循環させられる。必要な場合は、リン酸又はリン酸アンモニウムをこの溶液に添加して、例えばガス流の洗浄工程(a)における液体の微滴のエントレインメントによる緩衝液の考えられる損失を補うことができる。
【0097】
以下の実施形態例は、純粋に本発明を例示する目的で挙げたものであり、同封の請求項によって定義される保護範囲を限定すると見なされるべきではない。
【実施例】
【0098】
実施例1
尿素製造プラントに由来する、アンモニア(94mg/Nm3空気)、尿素(185mg/Nm3空気)及び微量のホルムアルデヒドで汚染された空気から成るガス状パージ流を、本発明のプロセスに供した。レジーム条件下でプラントを機能させながら、300000Nm3/時間の上記の流れを直接、(NH42HPO4及び(NH4)H2PO4の緩衝液から成り、約5.3のpHを有する洗浄液で動作するスクラバに送った。
【0099】
このようにして、以下の生成物がスクラバから得られた。
・約9.4mg/Nm3のアンモニア濃度(約90%のスクラバ除害効率)及び約27.8mg/Nm3の尿素濃度(約85%のスクラバ除害効率)を有する精製ガス流(300000Nm3/時間)。
・水(323944kg/時間)、H2PO4-/HPO42-イオン(221129kg/時間)、NH3及びNH4+の形態のアンモニア(52638kg/時間)及び尿素(10120kg/時間)から成るアンモニア塩を含有する607381kg/時間の水溶液流。
【0100】
スクラバから出た水溶液は次に蓄積タンク(SA)に供給され、そこから同じ組成を有する流れが連続的に抽出され、次に疎水性膜蒸留ユニット(MDユニット)に流量2.34m3/時間、2831.4kg/時間(溶液密度1210Kg/m3)で供給された。pH5.3を有し、水(1509.0kg/時間)、H2PO4-/HPO42-イオン(1030.1kg/時間)、NH3及びNH4+の形態のアンモニア(245.2kg/時間)及び尿素(47.1kg/時間)から成る流れが膜蒸留ユニットに進入する。
【0101】
MDユニットは、温度150℃、圧力0.3MPaに維持された。このようにして以下の生成物がMDユニットで分離された。
・アンモニアを含有し、また以下の組成:
水(蒸気)=123.2kg/時間、
NH3=38.8kg/時間、
CO2=34.6kg/時間、
を有するガス流(196.6kg/時間)。
・pH5.3及び以下の組成:
水(蒸気)=1385.8kg/時間、
2PO4-/HPO42-=1030.0kg/時間、
NH3/NH4+=219.8kg/時間
を有する再生洗浄液(2635.6kg/時間)。
【0102】
MDユニットから出たガス流18中に存在するアンモニアの量(38.8kg/時間)を、MDユニットに進入する流れ中のアンモニウム(NH4+)の含有量(245.2kg/時間)と比較すると、本発明の工程(b)の分離効率は、アンモニアの15.5質量%であると観察された。
【0103】
上記の再生洗浄液はスクラバに再循環させられて、タンクSAに由来する溶液流(605000kg/時間)に合流した。この再循環に関し、2123.2kg/時間の補給水流を再生洗浄液に添加することによって、スクラビング工程中の蒸発によって精製されたガス流に移動した、また膜蒸留工程で蒸発した水の量を補った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流に含まれるアンモニアを回収するためのプロセスであって、以下の工程:
(a)アンモニアを含有するガス流を、7.0未満のpHを有する水性洗浄液による洗浄に供し、精製されたガス流と、アンモニア塩を含有する水溶液とが生成される工程と、
(b)工程(a)に由来するアンモニウム塩を含有する水溶液を、疎水性微孔性膜を使用した温度50〜250℃及び圧力50KPa〜4MPa(絶対圧)での蒸留プロセスに供し、再生された洗浄液と、NH3及びH2Oを含むガス流とが生成される工程と、
(c)前記再生された洗浄液を工程(a)に再循環させる工程と
を含むプロセス。
【請求項2】
工程(a)が、pH5〜6.5で行われることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程(a)に供給されるガス流が、尿素の合成プロセス、好ましくは固化セクション、より一層好ましくは尿素の顆粒化又はプリル化セクションに由来するガス状パージ流であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ガス状パージ流が、アンモニア(約50÷250mg/Nm3空気)、尿素(約30÷200mg/Nm3空気)及び微量のホルムアルデヒドによって汚染された空気から成ることを特徴とする、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ガス状パージ流が、温度約45〜100℃であり、かつ、水での予備的な洗浄に供されることを特徴とする、請求項3又は4に記載のプロセス。
【請求項6】
工程(a)において使用される水性洗浄液が、フタル酸、シュウ酸、リン酸、クエン酸、アリール−及びアルキル−ホスホン酸由来の共役酸塩基対から成る緩衝液であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記緩衝液が、pH5〜6.5、及び0.5M〜5M、好ましくは1M〜4Mの共役酸塩基対の全体モル濃度を有する、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
緩衝液が、H2PO4-/HPO42-の対から構成され、H2PO4-/HPO42-種の全体濃度が20〜40質量%、好ましくは30〜35質量%である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項9】
工程(a)に供給されるガス流が尿素を含有しない場合、工程(b)が、100〜140℃の温度及び大気圧〜0.2MPa(絶対圧)の圧力で行われることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
工程(a)に供給されるガス流が尿素も含有する場合、工程(b)が、温度100〜200℃、好ましくは130〜180℃、及び大気圧〜2MPa(絶対圧)、好ましくは0.15〜1.5MPa(絶対圧)の圧力で行われることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
工程(b)が、約0.3MPa及び温度約150℃で行われ、NH3、H2O及びCO2を含む、アンモニアの濃度が5〜35質量%、好ましくは10〜25質量%であるガス流が生成されることを特徴とする、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
工程(a)で生成される前記精製されたガス流が、大気中に放出される、請求項1〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
工程(a)で生成される前記精製されたガス流が、10〜25mg/Nm3空気のアンモニア含有量及び場合によって5〜30mg/Nm3空気の尿素含有量を有する空気又は他の不活性ガスから成ることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
工程(b)で生成されるNH3及びH2Oを含む前記ガス流が、尿素の合成プロセス又はアンモニアの合成プロセスに再循環されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
工程(b)が、電磁波、好ましくはマイクロ波による工程(b)への熱の供給によって行われることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
望ましい濃度及びpHを維持するために必要な量の水又は酸が、工程(b)に由来する再生された水性洗浄液に添加される、請求項1〜15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
工程(b)の疎水性膜蒸留プロセスにおいて、追加の輸送流、好ましくは水蒸気流が使用されることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
請求項1に記載のプロセスを行うための装置であって、
洗浄ユニット(スクラバ)であって、その中でアンモニアを含有するガス流を水性洗浄液と接触させる洗浄ユニット(スクラバ)と、
アンモニウム塩の水流を疎水性微孔性膜を使用して蒸留し、アンモニア及びH2Oを含むガス流と再生された洗浄液とを生成するためのユニットであって、前記洗浄ユニットに接続されており、前記洗浄ユニットからアンモニウム塩の水流を受け取るユニットと
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項19】
マイクロ波発生装置から成る膜蒸留ユニットの加熱手段をまた備える、請求項18に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2012−515131(P2012−515131A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544851(P2011−544851)
【出願日】平成22年1月11日(2010.1.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000189
【国際公開番号】WO2010/081707
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(593182347)サイペム・ソシエタ・ペル・アチオニ (5)
【氏名又は名称原語表記】SAIPEM S.P.A.
【Fターム(参考)】