ガス濃度検出装置
【課題】安価にかつ省スペースに被測定ガスのガス温度の影響を受けずに正確にガス濃度を検出することができるガス濃度検出装置を提供する。
【解決手段】抵抗/電圧変換回路20が、被測定ガスの供給路に配置されて温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体Rsに電流を供給してその測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧を発生させる。CPU25aが、測温抵抗体Rsの温度が周囲温度よりも高くなるような大きさの電流Is1と測温抵抗体Rsの温度が周囲温度と等しくなるような大きさの電流Is2との間において、FETQが測温抵抗体Rsに供給する電流を切り替える。CPU25aが、抵抗/電圧変換回路20が発生した測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧を検出し、検出した測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧に基づいて被測定ガスの濃度を検出する。
【解決手段】抵抗/電圧変換回路20が、被測定ガスの供給路に配置されて温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体Rsに電流を供給してその測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧を発生させる。CPU25aが、測温抵抗体Rsの温度が周囲温度よりも高くなるような大きさの電流Is1と測温抵抗体Rsの温度が周囲温度と等しくなるような大きさの電流Is2との間において、FETQが測温抵抗体Rsに供給する電流を切り替える。CPU25aが、抵抗/電圧変換回路20が発生した測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧を検出し、検出した測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧に基づいて被測定ガスの濃度を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス濃度検出装置に係り、特に、例えば水素ガスなどの被測定ガスの濃度を検出するガス濃度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述したガス濃度検出装置としては、発熱して温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体を用いたものが知られている。まず、この測温抵抗体を用いたガス濃度検出装置の原理について説明する。上記測温抵抗体は、被測定ガスの供給路に配置される。供給される被測定ガスの濃度が高くなるに従って被測定ガスの熱伝導率が高くなり、被測定ガスがより多くの熱量を測温抵抗体から奪う。この結果、測温抵抗体の抵抗値が下がる。即ち、測温抵抗体の抵抗値は被測定ガスの濃度に応じた値となり、この測温抵抗体の抵抗値に基づいてガス濃度を検出することができる。
【0003】
上述したガス濃度検出装置の一例として図10に示された湿度センサが提案されている(特許文献1)。この湿度センサは、雰囲気中の水蒸気(被測定ガス)の濃度を検出するセンサである。図中、Rは測温抵抗体である。この測温抵抗体Rには、スイッチSを介して抵抗R1H及び抵抗R1Lが直列に接続されている。抵抗R1H及び抵抗R1Lは互いに並列に接続されている。
【0004】
この測温抵抗体R及び抵抗R1Hまたは抵抗R1Lから成る直列回路には、抵抗R2及び抵抗R3から成る直列回路が並列に接続されている。即ち、測温抵抗体R、抵抗R1Hまたは抵抗R1L、抵抗R2及び抵抗R3によってブリッジ回路が組まれている。電源装置3は、スイッチSを介して測温抵抗体Rに電圧を印加して電流を流してジュール熱を発生して測温抵抗体Rを所定の温度にするものである。また、温度検出器5は測定雰囲気の温度の情報を補正装置4に与えるものである。
【0005】
上述したスイッチSは、切替制御装置SCにより動作が制御される。切替制御装置SCから出力される切替信号S1がHのとき(図11(a)参照)、スイッチSの接点が抵抗R1H側に接続される。これにより、抵抗R1H及び抵抗R1Lのうち抵抗R1Hのみが測温抵抗体Rに直列接続される。上記抵抗R1Hが測温抵抗体Rに接続されているとき、測温抵抗体Rに供給される電流IはIHとなり(図11(b)参照)、測温抵抗体Rの発熱温度が300°C以上になる。
【0006】
一方、切替制御装置SCから出力される切替信号S1がLのとき(図11(a)参照)、スイッチSの接点が抵抗R1L側に接続される。これにより、抵抗R1H及び抵抗R1Lのうち抵抗R1Lのみが測温抵抗体Rに直列接続される。上記抵抗R1Lが測温抵抗体Rに接続されているとき、測温抵抗体Rに供給される電流IはILとなり(図11(b)参照)、測温抵抗体Rの発熱温度が100°C〜150°Cとなる。
【0007】
測温抵抗体Rが300°C以上に発熱しているとき、測温抵抗体Rの抵抗値は雰囲気内に含まれる水蒸気量によって変動する。即ち、測温抵抗体Rが300°C以上に発熱しているときのブリッジ回路の出力電圧VHは、雰囲気内に含まれる水蒸気量、即ち湿度に応じた電圧となる(図11(c)参照)。
【0008】
一方、測温抵抗体Rが100°C〜150°Cの間で発熱しているときは、水蒸気量には不感となり測温抵抗体Rの抵抗値は周囲温度によって変動する。即ち、測温抵抗体Rが100°C〜150°Cに発熱しているときのブリッジ回路の出力電圧VLは、周囲温度に応じた電圧となる(図11(c)参照)。
【0009】
そこで、補正装置4は、湿度情報である電圧VHを周囲温度情報である電圧VLで補正して、周囲温度の影響を除去した湿度VIを検出することができる(図11(e)参照)。
【特許文献1】特開平8−184576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来のガス濃度検出装置としての湿度センサでは周囲温度情報である電圧VLに基づいて湿度情報である電圧VHを補正して、周囲温度の影響を除去した湿度VIを出力している。しかしながら、上述した電圧VLは正確に周囲温度に応じた値ではない。その理由としては、100°C〜150°Cとあるように測温抵抗体Rの温度を周囲温度よりも高くして、測温抵抗体Rを自己発熱させているからである。詳しく説明すると、測温抵抗体Rは下記の式(7)及び(8)に示すように表すことができる。
R=(1+αT)K0 …(7)
T=T0+TW …(8)
なお、R:測温抵抗体の抵抗値、K0:測温抵抗体の静抵抗値、α:抵抗温度係数、T:測温抵抗体の温度、T0:周囲温度、TW:自己発熱による温度
【0011】
上述した式(7)及び(8)に示すように、測温抵抗体Rの温度Tは、周囲温度T0と自己発熱による温度TWとを加算した値となる。測温抵抗体Rの自己発熱による熱分布は一様ではなく、測温抵抗体Rが何度°Cになっているかわからない。その為、自己発熱している測温抵抗体Rの抵抗値を測定しても周囲温度が分からず、即ち、電圧VLから正確な周囲温度を求めることができない。
【0012】
そこで、従来では、さらに温度検出器5を設けて、この温度検出器5から出力される温度信号(図11(d)参照)に基づいて湿度情報である電圧VHを補正して、周囲温度の影響を除去した湿度VIを検出している。
【0013】
このため、温度検出器5を設ける分だけ部品コストが上がり、湿度センサのサイズも大きくなる。また、湿度センサに温度検出器を設置する機構を設けなければならず、温度センサの筐体の加工費のコストが上がり、筐体の大きさも大きくなると言う問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、安価にかつ省スペースに被測定ガスのガス温度の影響を受けずに正確にガス濃度を検出することができるガス濃度検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、被測定ガスの供給路に配置されて温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体と、該測温抵抗体に電流を供給して当該測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を発生させる抵抗/電圧変換手段と、該抵抗/電圧変換手段が発生した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を検出する電圧検出手段と、該電圧検出手段が検出した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧に基づいて前記被測定ガスの濃度を検出する濃度検出手段とを備えたガス濃度検出装置において、前記測温抵抗体の温度が周囲温度よりも高くなるような大きさの第1の電流と前記測温抵抗体の温度が周囲温度と等しくなるような大きさの第2の電流との間において、前記抵抗/電圧変換手段が前記測温抵抗体に供給する電流を切り替える切替手段が設けられていることを特徴とするガス濃度検出装置に存する。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記抵抗/電圧変換手段が、前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を増幅する増幅器を有し、そして、前記ガス濃度検出装置が、前記増幅器が増幅した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換手段と、前記測温抵抗体に前記第2の電流を供給しているときの前記増幅器のゲインが前記測温抵抗体に前記第1の電流を供給しているときの前記増幅器のゲインよりも高くなるように前記増幅器のゲインを制御するゲイン制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載のガス濃度検出装置に存する。
【0017】
請求項3記載の発明は、前記増幅器が、前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧と基準電圧との差分を増幅し、そして、前記ガス濃度検出装置が、前記増幅器に前記基準電圧を供給する基準電圧供給手段と、前記測温抵抗体に前記第2の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧よりも前記測温抵抗体に前記第1の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧の方が高くなるように前記基準電圧供給手段を制御する基準電圧制御手段とを備えていることを特徴とする請求項2項記載のガス濃度検出装置に存する。
【0018】
請求項4記載の発明は、前記抵抗/電圧変換手段が、前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧と基準電圧との差分を増幅する増幅器とを有し、そして、前記ガス濃度検出装置が、前記増幅器が増幅した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換手段と、前記増幅器に前記基準電圧を供給する基準電圧供給手段と、前記測温抵抗体に前記第2の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧よりも前記測温抵抗体に前記第1の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧の方が高くなるように前記基準電圧供給手段を制御する基準電圧制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1項記載のガス濃度検出装置に存する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、ガス濃度を検出するための測温抵抗体を流用してガス濃度の影響を受けずにガス温度を正確に検出することができる。そして、濃度検出手段が、第1の電流が供給されているときに電圧検出手段が検出した測温抵抗体の抵抗値、即ちガス濃度に応じた電圧と第2の電流が供給されているときに電圧検出手段が検出した測温抵抗体の抵抗値、即ちガス温度に応じた電圧とに基づいて温度補正を行った正確な被測定ガスの濃度を検出することができるので、安価にかつ省スペースに被測定ガスのガス温度の影響を受けずに正確にガス濃度を検出することができる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、第2の電流は第1の電流より小さい。このため、第1の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動幅に比べて、第2の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動幅が小さくなる。ゲイン制御手段により第2の電流を供給しているときのゲインを高くすることにより、第2の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動幅を、第1の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動幅に近づけることができる。これにより、第1の電流及び第2の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動領域とアナログ/デジタル変換手段の電圧変換領域とを一致させることができるので、アナログ/デジタル変換手段の変換精度の向上を図って、精度良くガス濃度を検出することができる。
【0021】
請求項3及び4記載の発明によれば、第2の電流は第1の電流より小さい。このため、第2の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動領域に比べて、第1の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動領域が高くなる。基準電圧制御手段により第1の電流を供給しているときに増幅器に供給する基準電圧を高くすることにより、第1の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動領域を、第2の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動領域に近づけることができる。これにより、第1の電流及び第2の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動領域とアナログ/デジタル変換手段の電圧変換領域とを一致させることができるので、アナログ/デジタル変換手段の変換精度の向上を図って、精度良くガス濃度を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のガス濃度検出装置の一実施形態を示す回路図である。同図に示すように、ガス濃度検出装置は、被測定ガスとしての水素(H2)ガスの供給路に配置されて温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体Rsと、測温抵抗体Rsに電流を供給してその測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧ΔVを発生させる抵抗/電圧変換回路20(抵抗/電圧変換手段)とを備えている。
【0023】
上述した抵抗/電圧変換回路20は、測温抵抗体Rsと共にハーフブリッジ回路を形成する抵抗R11、R12と、定電圧源22と、差動増幅器OP(増幅器)と、電界効果トランジスタ(FET)Qから構成されている。抵抗R12とFETQは直列に接続されている。この抵抗R12及びFETQから成る直列回路及び抵抗R11は、互いに並列に接続されている。定電圧源22は、測温抵抗体Rs及び抵抗R11、R12から成る並列回路に定電圧Vaを供給している。
【0024】
上述したFETQは後述するμCOM25内のCPU25aによってオンオフが制御されている。FETQがオンすると、測温抵抗体Rsに抵抗R11と抵抗R12の並列抵抗が接続される。このとき、測温抵抗体Rsに流れる電流Is1は下記の式(1)で表される。
Is1=Va/(Rs+R11//R12) …(1)
【0025】
電流Is1を測温抵抗体Rsに流すと、測温抵抗体Rsにジュール熱が発生する。電流Is1の大きさは、上記測温抵抗体Rsに発生するジュール熱によって測温抵抗体Rsの温度が周囲温度よりも高くなるように設定されている。即ち、電流Is1の大きさは、測温抵抗体Rsが自己発熱するように設定されている。より詳しく説明すると、電流Is1を流すことにより測温抵抗体Rsに発生する熱量が周囲に放熱される熱量より多いと測温抵抗体Rsの温度が周囲温度よりも高くなる。
【0026】
一方、FETQがオフすると、測温抵抗体Rsには抵抗R11及びR12のうち抵抗R11のみが接続される。このとき、測温抵抗体Rsに流れる電流Is2は下記の式(2)で表される。
Is2=Va/(Rs+R11) …(2)
【0027】
電流Is2を測温抵抗体Rsに流すと、測温抵抗体Rsにジュール熱が発生する。電流Is2の大きさは、上記測温抵抗体Rsにジュール熱が発生しても測温抵抗体Rsの温度が周囲温度より高くならず、周囲温度と等しくなるように設定されている。即ち、電流Is2の大きさは、測温抵抗体Rsが自己発熱しないように設定されている。より詳しく説明すると、電流Is2を流すことにより測温抵抗体Rsに発生する熱量が周囲に放熱される熱量より小さいと測温抵抗体Rsの温度は周囲温度と等しいままである。
【0028】
上記差動増幅器OPの反転入力には測温抵抗体Rs及び抵抗R11、R12間の接続点に生ずる電圧が出力電圧Vとして供給されている。差動増幅器OPの被反転入力には後述するデジタル/アナログ(D/A)コンバーター23(基準電圧供給手段)から供給される基準電圧Vrefが供給されている。差動増幅器OPは、出力電圧Vと基準電圧でVrefとの差をゲインαで増幅した値を出力電圧ΔV(=α×(V−Vref))として出力する。
【0029】
FETQがオンしていて、測温抵抗体Rsに抵抗R11及びR12の並列抵抗が接続されているとき、上述した出力電圧Vは下記の式(3)で表される値となる。
V={(R11//R12)/(Rs+R11//R12)}×Va …(3)
従って、差動増幅器OPの出力電圧ΔVは下記の式(4)で表される値となる。
ΔV=α×[{(R11//R12)/(Rs+R11//R12)}×Va−Vref] …(4)
【0030】
一方、FETQがオフして、測温抵抗体Rsに抵抗R11及びR12のうち抵抗R11のみが直列接続されているとき、上述した出力電圧Vは下記の式(5)で表される値となる。
V={R11/(Rs+R11)}×Va …(5)
従って、差動増幅器OPの出力電圧ΔVは下記の式(6)で表される値となる。
ΔV=α×[{R11/(Rs+R11)}×Va−Vref] …(6)
【0031】
上述した抵抗R11、R12は温度に依存して抵抗値が変わるものではなく、抵抗値は常に固定である。従って、上記式(3)〜(6)から明らかなように出力電圧V、ΔVは、測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧である。また、式(4)及び(6)から明らかなように差動増幅器OPは測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧Vと基準電圧Vrefの差分を増幅する増幅器に相当する。
【0032】
上述した差動増幅器OPの出力電圧ΔVはアナログ/デジタル(A/D)コンバータ24(アナログ/デジタル変換手段)に供給される。A/Dコンバータ24は、アナログの出力電圧ΔVをデジタル値に変換してμCOM25に対して供給する。
【0033】
μCOM25は、処理プログラムに従って各種の処理を行う演算処理装置(以下CPU)25aと、CPU25aが行う処理のプログラムなどを格納した読出専用のメモリであるROM25bと、CPU25aでの各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ記憶エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM25cとを備えている。
【0034】
なお、上述した測温抵抗体Rsは、図2に示すようにSi基板26によって支持されるダイヤフラム27上に設けられている。
【0035】
次に、上述したように測温抵抗体Rsに電流Is1を流したときの測温抵抗体Rsの抵抗値変化と、測温抵抗体Rsに電流Is2を流したときの測温抵抗体Rsの抵抗値変化について図3〜図6を参照して以下説明する。一般的に抵抗に電流を流すと熱が発生する。この熱量は抵抗に流す電流の大きさに依存する。抵抗に流す電流が大きくなるに従って抵抗には大きな熱量が発生する。抵抗に流す電流が小さくなるに従って抵抗には小さな熱量が発生する。
【0036】
今、測温抵抗体Rsが自己発熱しない電流Is2を測温抵抗体Rsに流してH2ガスを供給すると、図3に示すように、測温抵抗体Rsの抵抗値はH2ガスのガス温度に応じた値となる。測温抵抗体Rsが自己発熱せずにその温度が周囲温度、即ちガス温度と等しいときは、H2ガスによって奪われる熱量がない。このため、図6に示すように、測温抵抗体Rsの抵抗値はH2ガスのガス濃度に対してまったく不感となる。
【0037】
測温抵抗体Rsの温度は、その周囲温度、即ちガス温度が高くなるに従って高くなり、ガス温度が低くなるに従って低くなる。このため、FETQがオフして自己発熱しない大きさの電流Is2を供給している間、測温抵抗体Rsの抵抗値はH2ガスのガス温度に応じた値となる。
【0038】
一方、測温抵抗体Rsが自己発熱する大きさの電流Is1を測温抵抗体Rsに流すと、測温抵抗体Rsが自己発熱してその温度が周囲温度、即ちガス温度より高くなる。このとき測温抵抗体RsにH2ガスを供給すると、H2ガスはその濃度に応じた熱量を測温抵抗体Rsから奪う。従って、図4に示すように、測温抵抗体Rsの温度はH2ガスのガス濃度に応じた値となる。測温抵抗体Rsは温度に応じて抵抗値が変化する抵抗であるため、図5に示すように測温抵抗体Rsの抵抗値はH2ガスのガス濃度に応じた値となる。
【0039】
上述した構成のガス濃度検出装置の動作について図7及び図8を参照して以下説明する。図7(a)はFETQのオンオフ状態、(b)は電流Is、(c)は出力電圧V、(d)は差動増幅器OPのゲイン、(e)は基準電圧Vref、(f)は差動増幅器OPの出力電圧ΔVのタイムチャートである。図8は、ガス濃度検出処理におけるCPU25aの処理手順を示すフローチャートである。
【0040】
まず、CPU25aは、FETQのオンオフを繰り返すオンオフ処理を行う(図7(a)参照)。これにより測温抵抗Rsには、自己発熱する大きさの電流Is1と自己発熱しない大きさ電流Is2とが交互に流れる(図7(b)参照)。即ち、CPU25aは請求項中の切替手段として働く。そして、測温抵抗体Rsに自己発熱しない電流Is2が供給されているとき、測温抵抗体Rsの抵抗値はH2ガスのガス温度に応じた値となる。一方、測温抵抗体Rsに自己発熱する電流Is1が供給されているとき、測温抵抗体Rsの抵抗値はH2ガスのガス濃度に応じた値となる。従って、ハーフブリッジ回路からは、ガス温度に応じた出力電圧Vと濃度に応じた出力電圧Vとが交互に出力される(図7(c)参照)。
【0041】
次に、CPU25aは、ゲイン制御手段として働き、上記オンオフ処理に同期して差動増幅器OPのゲインαを制御するゲイン制御処理を行う。ゲイン制御処理において、CPU25aは、測温抵抗体Rsに電流Is2を供給しているときの差動増幅器OPのゲインαが測温抵抗体Rsに電流Is1を供給しているときの差動増幅器OPのゲインよりも高くなるように差動増幅器OPのゲインを制御している(図7(d)参照)。
【0042】
また、CPU25aは、基準電圧制御供給手段として働き、上記オンオフ処理に同期して差動増幅器OPに供給する基準電圧Vを制御する基準電圧制御処理を行う。基準電圧制御処理において、CPU25aは、測温抵抗体Rsに電流Is2を供給しているときに差動増幅器OPに供給する基準電圧よりも測温抵抗体Rsに電流Is1を供給しているときに差動増幅器OPに供給する基準電圧の方が高くなるようにD/Aコンバータ24にデジタルの基準電圧を出力している(図7(e)参照)。
【0043】
図7(c)中、VEQ1は電流Is1が供給されているときの出力電圧Vの変動領域を示し、VEQ2は電流Is2が供給されているときの変動領域を示す。上述したように電流Is2は電流Is1に比べて小さい。このため、同図に示すように、変動領域VEQ2の幅が変動領域VEQ1の幅に比べて小さくなる。従って、上述したゲイン制御処理によって電流Is2を供給しているときのゲインαを高くすることにより、電流Is2を供給しているときの差動増幅器OPの出力電圧ΔVの変動幅を、電流Is1を供給しているときの差動増幅器OPの出力電圧ΔVの変動幅に近づけることができる。
【0044】
また、変動幅VEQ1及びVEQ2を比較しても分かるように、電流Is1が供給されているときの出力電圧Vは比較的高いところで変動している。一方、電流Is2が供給されているときの出力電圧Vは比較的低いところで変動している。従って、上述した基準電圧制御処理によって電流Is1を供給しているときの基準電圧を高くすることにより、電流Is1を供給しているときの差動増幅器OPの出力電圧ΔVの変動領域を、電流Is2を供給しているときの差動増幅器OPの出力電圧ΔVの変動領域に近づけることができる。そして、電流Is1及び電流Is2を供給しているとこの差動増幅器OPの出力電圧ΔVの変動領域とA/Dコンバータ24の変換領域VEQ3とを一致させることができ、A/Dコンバータ24による変換精度の向上を図って、精度良くガス濃度を検出することができる。
【0045】
理想的には電流Is1及びIs2を供給しているときの差動増幅器OPの出力電圧ΔVの変動領域が完全にA/Dコンバータ24の変換領域VEQ3と一致するように、差動増幅器OPのゲインや、差動増幅器OPに供給する基準電圧Vrefを制御するのが望ましい。
【0046】
また、CPU25aは、上述したオンオフ制御処理、ゲイン制御処理、基準電圧制御処理に並列して濃度検出処理を行う。この濃度検出処理におけるCPU25aの処理手順について図8のフローチャートを参照して以下説明する。
【0047】
まず、CPU25aは、FETQをオフして測温抵抗体Rsに電流Is2を流す(ステップS1)。次に、CPU25aは、電圧検出手段として働き、A/Dコンバータ24から出力される測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた出力電圧ΔVを検出する(ステップS2)。次に、CPU25aは、ステップS2で検出した出力電圧ΔVをガス温度に応じた電圧としてRAM25c内に格納する(ステップS3)。
【0048】
次に、CPU25aは、FETQがオンして測温抵抗体Rsに電流Is1を流す(ステップS4)。次にCPU25aは、電圧検出手段として働き、A/Dコンバータ24から出力される測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた出力電圧ΔVを検出する(ステップS5)。次に、CPU25aは、ステップS6で検出した出力電圧ΔVをガス濃度に応じた電圧としてRAM25c内に格納する(ステップS6)。
【0049】
次に、CPU25aは、ガス濃度検出手段として働き、ガス温度に応じた出力電圧ΔVとガス濃度に応じた出力電圧ΔVとに基づいて補正演算することでガス温度の影響を除去したガス濃度を検出して(ステップS7)、再びステップS1に戻る。
【0050】
上述したガス濃度検出装置によれば、CPU25aが、抵抗/電圧変換回路20が測温抵抗体Rsに供給する電流を、測温抵抗体Rsの温度が周囲温度よりも高くなるような大きさの電流Is1と測温抵抗体Rsの温度が周囲温度と等しくなるような大きさの電流Is2との間で切り替える。測温抵抗体Rsに電流Is1を流すと測温抵抗体Rsが自己発熱してその温度が周囲温度、即ちガス温度よりも高くなる。このときH2ガスはガス濃度に応じた熱量を測温抵抗体Rsから奪い、測温抵抗体Rsの温度、即ち抵抗値はガス濃度に応じて変化する。測温抵抗体Rsに電流Is2を流すと測温抵抗体Rsは自己発熱せずにその温度が周囲温度、即ちガス温度と等しくなる。このため測温抵抗体Rsの温度、即ち抵抗値はガス濃度には全く不感となりガス温度に応じて変化する。
【0051】
従って、ガス濃度を検出するための測温抵抗体Rsを流用してガス濃度の影響を受けずにガス温度を正確に検出することができる。そして、CPU25aが、電流Is1が供給されているときに検出した測温抵抗体Rsの抵抗値、即ちガス濃度に応じた電圧と電流Is2が供給されているときに検出した測温抵抗体Rsの抵抗値、即ちガス温度に応じた電圧とに基づいて温度補正を行った正確な被測定ガスの濃度を検出することができる。このため、安価にかつ省スペースにH2ガスのガス温度の影響を受けずに正確にガス濃度を検出することができる。
【0052】
なお、上述した実施形態では、CPU25aがFETQのオンオフを制御することにより、測温抵抗体Rsと直列に接続する抵抗の抵抗値を変えて、測温抵抗体Rsに流す電流を切り替えていたが、本発明はこれに限ったものではない。即ち、抵抗/電圧変換回路20としては、測温抵抗体Rsに流す電流が変えられる構成であればなんでもよく、例えば図9に示すような構成であってもよい。
【0053】
同図に示すように、定電圧源22をその定電圧Vaが変換可能に構成し、CPU25aによって定電圧源22が供給する定電圧Vaを切り替えて、測温抵抗体Rsに流れる電流を切り替えるようにしてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、抵抗/電圧検出回路20は測温抵抗体Rsを含むハーフブリッジ回路により構成されていたが、本発明はこれに限ったものではない。即ち、抵抗/電圧検出回路20は、測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧を発生させる回路であればなんでもよく、例えば従来のようにブリッジ回路を構成してもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、定電圧源22を用いて測温抵抗体Rsに電流Is1、Is2を流していたが、本発明はこれに限ったものではなく、定電流源を用いて測温抵抗体Rsに電流を流してもよい。
【0056】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のガス濃度検出装置の一実施の形態を示す回路図である。
【図2】図1に示すガス濃度検出装置を構成する測温抵抗体Rsが搭載されたSi基台及びダイヤフラムを示す図である。
【図3】測温抵抗体Rsが自己発熱しない電流Is2を流したときの測温抵抗体Rsの抵抗値とガス温度との関係を示すグラフである。
【図4】測温抵抗体Rsが自己発熱する電流Is1を流したときの測温抵抗体Rsの温度とガス濃度との関係を示すグラフである。
【図5】測温抵抗体Rsが自己発熱する電流Is1を流したときの測温抵抗体Rsの抵抗値とガス濃度との関係を示すグラフである。
【図6】測温抵抗体Rsが自己発熱しない電流Is2を流したときの測温抵抗体Rsの抵抗値とガス濃度との関係を示すグラフである。
【図7】(a)はFETQのオンオフ状態、(b)は電流Is、(c)は出力電圧V、(d)は差動増幅器OPのゲイン、(e)は基準電圧Vref、(f)は差動増幅器OPの出力電圧ΔVのタイムチャートである。
【図8】ガス濃度検出処理におけるCPU25aの処理手順を示すフローチャートである。
【図9】他の実施形態におけるガス濃度検出装置の一例を示す回路図である。
【図10】従来のガス濃度検出装置の一例としての湿度センサを示す回路図である。
【図11】図10に示す湿度センサの各部の信号、電流、電圧のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0058】
Is1 電流(第1の電流)
Is2 電流(第2の電流)
OP 差動増幅器(増幅器)
Rs 測温抵抗体
20 抵抗/電圧変換回路(抵抗/電圧変換手段)
23 D/Aコンバータ(基準電圧供給手段)
24 A/Dコンバータ(アナログ/デジタル変換手段)
25a CPU(切替手段、ゲイン制御手段、基準電圧制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス濃度検出装置に係り、特に、例えば水素ガスなどの被測定ガスの濃度を検出するガス濃度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述したガス濃度検出装置としては、発熱して温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体を用いたものが知られている。まず、この測温抵抗体を用いたガス濃度検出装置の原理について説明する。上記測温抵抗体は、被測定ガスの供給路に配置される。供給される被測定ガスの濃度が高くなるに従って被測定ガスの熱伝導率が高くなり、被測定ガスがより多くの熱量を測温抵抗体から奪う。この結果、測温抵抗体の抵抗値が下がる。即ち、測温抵抗体の抵抗値は被測定ガスの濃度に応じた値となり、この測温抵抗体の抵抗値に基づいてガス濃度を検出することができる。
【0003】
上述したガス濃度検出装置の一例として図10に示された湿度センサが提案されている(特許文献1)。この湿度センサは、雰囲気中の水蒸気(被測定ガス)の濃度を検出するセンサである。図中、Rは測温抵抗体である。この測温抵抗体Rには、スイッチSを介して抵抗R1H及び抵抗R1Lが直列に接続されている。抵抗R1H及び抵抗R1Lは互いに並列に接続されている。
【0004】
この測温抵抗体R及び抵抗R1Hまたは抵抗R1Lから成る直列回路には、抵抗R2及び抵抗R3から成る直列回路が並列に接続されている。即ち、測温抵抗体R、抵抗R1Hまたは抵抗R1L、抵抗R2及び抵抗R3によってブリッジ回路が組まれている。電源装置3は、スイッチSを介して測温抵抗体Rに電圧を印加して電流を流してジュール熱を発生して測温抵抗体Rを所定の温度にするものである。また、温度検出器5は測定雰囲気の温度の情報を補正装置4に与えるものである。
【0005】
上述したスイッチSは、切替制御装置SCにより動作が制御される。切替制御装置SCから出力される切替信号S1がHのとき(図11(a)参照)、スイッチSの接点が抵抗R1H側に接続される。これにより、抵抗R1H及び抵抗R1Lのうち抵抗R1Hのみが測温抵抗体Rに直列接続される。上記抵抗R1Hが測温抵抗体Rに接続されているとき、測温抵抗体Rに供給される電流IはIHとなり(図11(b)参照)、測温抵抗体Rの発熱温度が300°C以上になる。
【0006】
一方、切替制御装置SCから出力される切替信号S1がLのとき(図11(a)参照)、スイッチSの接点が抵抗R1L側に接続される。これにより、抵抗R1H及び抵抗R1Lのうち抵抗R1Lのみが測温抵抗体Rに直列接続される。上記抵抗R1Lが測温抵抗体Rに接続されているとき、測温抵抗体Rに供給される電流IはILとなり(図11(b)参照)、測温抵抗体Rの発熱温度が100°C〜150°Cとなる。
【0007】
測温抵抗体Rが300°C以上に発熱しているとき、測温抵抗体Rの抵抗値は雰囲気内に含まれる水蒸気量によって変動する。即ち、測温抵抗体Rが300°C以上に発熱しているときのブリッジ回路の出力電圧VHは、雰囲気内に含まれる水蒸気量、即ち湿度に応じた電圧となる(図11(c)参照)。
【0008】
一方、測温抵抗体Rが100°C〜150°Cの間で発熱しているときは、水蒸気量には不感となり測温抵抗体Rの抵抗値は周囲温度によって変動する。即ち、測温抵抗体Rが100°C〜150°Cに発熱しているときのブリッジ回路の出力電圧VLは、周囲温度に応じた電圧となる(図11(c)参照)。
【0009】
そこで、補正装置4は、湿度情報である電圧VHを周囲温度情報である電圧VLで補正して、周囲温度の影響を除去した湿度VIを検出することができる(図11(e)参照)。
【特許文献1】特開平8−184576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来のガス濃度検出装置としての湿度センサでは周囲温度情報である電圧VLに基づいて湿度情報である電圧VHを補正して、周囲温度の影響を除去した湿度VIを出力している。しかしながら、上述した電圧VLは正確に周囲温度に応じた値ではない。その理由としては、100°C〜150°Cとあるように測温抵抗体Rの温度を周囲温度よりも高くして、測温抵抗体Rを自己発熱させているからである。詳しく説明すると、測温抵抗体Rは下記の式(7)及び(8)に示すように表すことができる。
R=(1+αT)K0 …(7)
T=T0+TW …(8)
なお、R:測温抵抗体の抵抗値、K0:測温抵抗体の静抵抗値、α:抵抗温度係数、T:測温抵抗体の温度、T0:周囲温度、TW:自己発熱による温度
【0011】
上述した式(7)及び(8)に示すように、測温抵抗体Rの温度Tは、周囲温度T0と自己発熱による温度TWとを加算した値となる。測温抵抗体Rの自己発熱による熱分布は一様ではなく、測温抵抗体Rが何度°Cになっているかわからない。その為、自己発熱している測温抵抗体Rの抵抗値を測定しても周囲温度が分からず、即ち、電圧VLから正確な周囲温度を求めることができない。
【0012】
そこで、従来では、さらに温度検出器5を設けて、この温度検出器5から出力される温度信号(図11(d)参照)に基づいて湿度情報である電圧VHを補正して、周囲温度の影響を除去した湿度VIを検出している。
【0013】
このため、温度検出器5を設ける分だけ部品コストが上がり、湿度センサのサイズも大きくなる。また、湿度センサに温度検出器を設置する機構を設けなければならず、温度センサの筐体の加工費のコストが上がり、筐体の大きさも大きくなると言う問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、安価にかつ省スペースに被測定ガスのガス温度の影響を受けずに正確にガス濃度を検出することができるガス濃度検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、被測定ガスの供給路に配置されて温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体と、該測温抵抗体に電流を供給して当該測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を発生させる抵抗/電圧変換手段と、該抵抗/電圧変換手段が発生した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を検出する電圧検出手段と、該電圧検出手段が検出した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧に基づいて前記被測定ガスの濃度を検出する濃度検出手段とを備えたガス濃度検出装置において、前記測温抵抗体の温度が周囲温度よりも高くなるような大きさの第1の電流と前記測温抵抗体の温度が周囲温度と等しくなるような大きさの第2の電流との間において、前記抵抗/電圧変換手段が前記測温抵抗体に供給する電流を切り替える切替手段が設けられていることを特徴とするガス濃度検出装置に存する。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記抵抗/電圧変換手段が、前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を増幅する増幅器を有し、そして、前記ガス濃度検出装置が、前記増幅器が増幅した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換手段と、前記測温抵抗体に前記第2の電流を供給しているときの前記増幅器のゲインが前記測温抵抗体に前記第1の電流を供給しているときの前記増幅器のゲインよりも高くなるように前記増幅器のゲインを制御するゲイン制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載のガス濃度検出装置に存する。
【0017】
請求項3記載の発明は、前記増幅器が、前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧と基準電圧との差分を増幅し、そして、前記ガス濃度検出装置が、前記増幅器に前記基準電圧を供給する基準電圧供給手段と、前記測温抵抗体に前記第2の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧よりも前記測温抵抗体に前記第1の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧の方が高くなるように前記基準電圧供給手段を制御する基準電圧制御手段とを備えていることを特徴とする請求項2項記載のガス濃度検出装置に存する。
【0018】
請求項4記載の発明は、前記抵抗/電圧変換手段が、前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧と基準電圧との差分を増幅する増幅器とを有し、そして、前記ガス濃度検出装置が、前記増幅器が増幅した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換手段と、前記増幅器に前記基準電圧を供給する基準電圧供給手段と、前記測温抵抗体に前記第2の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧よりも前記測温抵抗体に前記第1の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧の方が高くなるように前記基準電圧供給手段を制御する基準電圧制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1項記載のガス濃度検出装置に存する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、ガス濃度を検出するための測温抵抗体を流用してガス濃度の影響を受けずにガス温度を正確に検出することができる。そして、濃度検出手段が、第1の電流が供給されているときに電圧検出手段が検出した測温抵抗体の抵抗値、即ちガス濃度に応じた電圧と第2の電流が供給されているときに電圧検出手段が検出した測温抵抗体の抵抗値、即ちガス温度に応じた電圧とに基づいて温度補正を行った正確な被測定ガスの濃度を検出することができるので、安価にかつ省スペースに被測定ガスのガス温度の影響を受けずに正確にガス濃度を検出することができる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、第2の電流は第1の電流より小さい。このため、第1の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動幅に比べて、第2の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動幅が小さくなる。ゲイン制御手段により第2の電流を供給しているときのゲインを高くすることにより、第2の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動幅を、第1の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動幅に近づけることができる。これにより、第1の電流及び第2の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動領域とアナログ/デジタル変換手段の電圧変換領域とを一致させることができるので、アナログ/デジタル変換手段の変換精度の向上を図って、精度良くガス濃度を検出することができる。
【0021】
請求項3及び4記載の発明によれば、第2の電流は第1の電流より小さい。このため、第2の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動領域に比べて、第1の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動領域が高くなる。基準電圧制御手段により第1の電流を供給しているときに増幅器に供給する基準電圧を高くすることにより、第1の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動領域を、第2の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動領域に近づけることができる。これにより、第1の電流及び第2の電流を供給したときの測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧の変動領域とアナログ/デジタル変換手段の電圧変換領域とを一致させることができるので、アナログ/デジタル変換手段の変換精度の向上を図って、精度良くガス濃度を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のガス濃度検出装置の一実施形態を示す回路図である。同図に示すように、ガス濃度検出装置は、被測定ガスとしての水素(H2)ガスの供給路に配置されて温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体Rsと、測温抵抗体Rsに電流を供給してその測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧ΔVを発生させる抵抗/電圧変換回路20(抵抗/電圧変換手段)とを備えている。
【0023】
上述した抵抗/電圧変換回路20は、測温抵抗体Rsと共にハーフブリッジ回路を形成する抵抗R11、R12と、定電圧源22と、差動増幅器OP(増幅器)と、電界効果トランジスタ(FET)Qから構成されている。抵抗R12とFETQは直列に接続されている。この抵抗R12及びFETQから成る直列回路及び抵抗R11は、互いに並列に接続されている。定電圧源22は、測温抵抗体Rs及び抵抗R11、R12から成る並列回路に定電圧Vaを供給している。
【0024】
上述したFETQは後述するμCOM25内のCPU25aによってオンオフが制御されている。FETQがオンすると、測温抵抗体Rsに抵抗R11と抵抗R12の並列抵抗が接続される。このとき、測温抵抗体Rsに流れる電流Is1は下記の式(1)で表される。
Is1=Va/(Rs+R11//R12) …(1)
【0025】
電流Is1を測温抵抗体Rsに流すと、測温抵抗体Rsにジュール熱が発生する。電流Is1の大きさは、上記測温抵抗体Rsに発生するジュール熱によって測温抵抗体Rsの温度が周囲温度よりも高くなるように設定されている。即ち、電流Is1の大きさは、測温抵抗体Rsが自己発熱するように設定されている。より詳しく説明すると、電流Is1を流すことにより測温抵抗体Rsに発生する熱量が周囲に放熱される熱量より多いと測温抵抗体Rsの温度が周囲温度よりも高くなる。
【0026】
一方、FETQがオフすると、測温抵抗体Rsには抵抗R11及びR12のうち抵抗R11のみが接続される。このとき、測温抵抗体Rsに流れる電流Is2は下記の式(2)で表される。
Is2=Va/(Rs+R11) …(2)
【0027】
電流Is2を測温抵抗体Rsに流すと、測温抵抗体Rsにジュール熱が発生する。電流Is2の大きさは、上記測温抵抗体Rsにジュール熱が発生しても測温抵抗体Rsの温度が周囲温度より高くならず、周囲温度と等しくなるように設定されている。即ち、電流Is2の大きさは、測温抵抗体Rsが自己発熱しないように設定されている。より詳しく説明すると、電流Is2を流すことにより測温抵抗体Rsに発生する熱量が周囲に放熱される熱量より小さいと測温抵抗体Rsの温度は周囲温度と等しいままである。
【0028】
上記差動増幅器OPの反転入力には測温抵抗体Rs及び抵抗R11、R12間の接続点に生ずる電圧が出力電圧Vとして供給されている。差動増幅器OPの被反転入力には後述するデジタル/アナログ(D/A)コンバーター23(基準電圧供給手段)から供給される基準電圧Vrefが供給されている。差動増幅器OPは、出力電圧Vと基準電圧でVrefとの差をゲインαで増幅した値を出力電圧ΔV(=α×(V−Vref))として出力する。
【0029】
FETQがオンしていて、測温抵抗体Rsに抵抗R11及びR12の並列抵抗が接続されているとき、上述した出力電圧Vは下記の式(3)で表される値となる。
V={(R11//R12)/(Rs+R11//R12)}×Va …(3)
従って、差動増幅器OPの出力電圧ΔVは下記の式(4)で表される値となる。
ΔV=α×[{(R11//R12)/(Rs+R11//R12)}×Va−Vref] …(4)
【0030】
一方、FETQがオフして、測温抵抗体Rsに抵抗R11及びR12のうち抵抗R11のみが直列接続されているとき、上述した出力電圧Vは下記の式(5)で表される値となる。
V={R11/(Rs+R11)}×Va …(5)
従って、差動増幅器OPの出力電圧ΔVは下記の式(6)で表される値となる。
ΔV=α×[{R11/(Rs+R11)}×Va−Vref] …(6)
【0031】
上述した抵抗R11、R12は温度に依存して抵抗値が変わるものではなく、抵抗値は常に固定である。従って、上記式(3)〜(6)から明らかなように出力電圧V、ΔVは、測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧である。また、式(4)及び(6)から明らかなように差動増幅器OPは測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧Vと基準電圧Vrefの差分を増幅する増幅器に相当する。
【0032】
上述した差動増幅器OPの出力電圧ΔVはアナログ/デジタル(A/D)コンバータ24(アナログ/デジタル変換手段)に供給される。A/Dコンバータ24は、アナログの出力電圧ΔVをデジタル値に変換してμCOM25に対して供給する。
【0033】
μCOM25は、処理プログラムに従って各種の処理を行う演算処理装置(以下CPU)25aと、CPU25aが行う処理のプログラムなどを格納した読出専用のメモリであるROM25bと、CPU25aでの各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ記憶エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM25cとを備えている。
【0034】
なお、上述した測温抵抗体Rsは、図2に示すようにSi基板26によって支持されるダイヤフラム27上に設けられている。
【0035】
次に、上述したように測温抵抗体Rsに電流Is1を流したときの測温抵抗体Rsの抵抗値変化と、測温抵抗体Rsに電流Is2を流したときの測温抵抗体Rsの抵抗値変化について図3〜図6を参照して以下説明する。一般的に抵抗に電流を流すと熱が発生する。この熱量は抵抗に流す電流の大きさに依存する。抵抗に流す電流が大きくなるに従って抵抗には大きな熱量が発生する。抵抗に流す電流が小さくなるに従って抵抗には小さな熱量が発生する。
【0036】
今、測温抵抗体Rsが自己発熱しない電流Is2を測温抵抗体Rsに流してH2ガスを供給すると、図3に示すように、測温抵抗体Rsの抵抗値はH2ガスのガス温度に応じた値となる。測温抵抗体Rsが自己発熱せずにその温度が周囲温度、即ちガス温度と等しいときは、H2ガスによって奪われる熱量がない。このため、図6に示すように、測温抵抗体Rsの抵抗値はH2ガスのガス濃度に対してまったく不感となる。
【0037】
測温抵抗体Rsの温度は、その周囲温度、即ちガス温度が高くなるに従って高くなり、ガス温度が低くなるに従って低くなる。このため、FETQがオフして自己発熱しない大きさの電流Is2を供給している間、測温抵抗体Rsの抵抗値はH2ガスのガス温度に応じた値となる。
【0038】
一方、測温抵抗体Rsが自己発熱する大きさの電流Is1を測温抵抗体Rsに流すと、測温抵抗体Rsが自己発熱してその温度が周囲温度、即ちガス温度より高くなる。このとき測温抵抗体RsにH2ガスを供給すると、H2ガスはその濃度に応じた熱量を測温抵抗体Rsから奪う。従って、図4に示すように、測温抵抗体Rsの温度はH2ガスのガス濃度に応じた値となる。測温抵抗体Rsは温度に応じて抵抗値が変化する抵抗であるため、図5に示すように測温抵抗体Rsの抵抗値はH2ガスのガス濃度に応じた値となる。
【0039】
上述した構成のガス濃度検出装置の動作について図7及び図8を参照して以下説明する。図7(a)はFETQのオンオフ状態、(b)は電流Is、(c)は出力電圧V、(d)は差動増幅器OPのゲイン、(e)は基準電圧Vref、(f)は差動増幅器OPの出力電圧ΔVのタイムチャートである。図8は、ガス濃度検出処理におけるCPU25aの処理手順を示すフローチャートである。
【0040】
まず、CPU25aは、FETQのオンオフを繰り返すオンオフ処理を行う(図7(a)参照)。これにより測温抵抗Rsには、自己発熱する大きさの電流Is1と自己発熱しない大きさ電流Is2とが交互に流れる(図7(b)参照)。即ち、CPU25aは請求項中の切替手段として働く。そして、測温抵抗体Rsに自己発熱しない電流Is2が供給されているとき、測温抵抗体Rsの抵抗値はH2ガスのガス温度に応じた値となる。一方、測温抵抗体Rsに自己発熱する電流Is1が供給されているとき、測温抵抗体Rsの抵抗値はH2ガスのガス濃度に応じた値となる。従って、ハーフブリッジ回路からは、ガス温度に応じた出力電圧Vと濃度に応じた出力電圧Vとが交互に出力される(図7(c)参照)。
【0041】
次に、CPU25aは、ゲイン制御手段として働き、上記オンオフ処理に同期して差動増幅器OPのゲインαを制御するゲイン制御処理を行う。ゲイン制御処理において、CPU25aは、測温抵抗体Rsに電流Is2を供給しているときの差動増幅器OPのゲインαが測温抵抗体Rsに電流Is1を供給しているときの差動増幅器OPのゲインよりも高くなるように差動増幅器OPのゲインを制御している(図7(d)参照)。
【0042】
また、CPU25aは、基準電圧制御供給手段として働き、上記オンオフ処理に同期して差動増幅器OPに供給する基準電圧Vを制御する基準電圧制御処理を行う。基準電圧制御処理において、CPU25aは、測温抵抗体Rsに電流Is2を供給しているときに差動増幅器OPに供給する基準電圧よりも測温抵抗体Rsに電流Is1を供給しているときに差動増幅器OPに供給する基準電圧の方が高くなるようにD/Aコンバータ24にデジタルの基準電圧を出力している(図7(e)参照)。
【0043】
図7(c)中、VEQ1は電流Is1が供給されているときの出力電圧Vの変動領域を示し、VEQ2は電流Is2が供給されているときの変動領域を示す。上述したように電流Is2は電流Is1に比べて小さい。このため、同図に示すように、変動領域VEQ2の幅が変動領域VEQ1の幅に比べて小さくなる。従って、上述したゲイン制御処理によって電流Is2を供給しているときのゲインαを高くすることにより、電流Is2を供給しているときの差動増幅器OPの出力電圧ΔVの変動幅を、電流Is1を供給しているときの差動増幅器OPの出力電圧ΔVの変動幅に近づけることができる。
【0044】
また、変動幅VEQ1及びVEQ2を比較しても分かるように、電流Is1が供給されているときの出力電圧Vは比較的高いところで変動している。一方、電流Is2が供給されているときの出力電圧Vは比較的低いところで変動している。従って、上述した基準電圧制御処理によって電流Is1を供給しているときの基準電圧を高くすることにより、電流Is1を供給しているときの差動増幅器OPの出力電圧ΔVの変動領域を、電流Is2を供給しているときの差動増幅器OPの出力電圧ΔVの変動領域に近づけることができる。そして、電流Is1及び電流Is2を供給しているとこの差動増幅器OPの出力電圧ΔVの変動領域とA/Dコンバータ24の変換領域VEQ3とを一致させることができ、A/Dコンバータ24による変換精度の向上を図って、精度良くガス濃度を検出することができる。
【0045】
理想的には電流Is1及びIs2を供給しているときの差動増幅器OPの出力電圧ΔVの変動領域が完全にA/Dコンバータ24の変換領域VEQ3と一致するように、差動増幅器OPのゲインや、差動増幅器OPに供給する基準電圧Vrefを制御するのが望ましい。
【0046】
また、CPU25aは、上述したオンオフ制御処理、ゲイン制御処理、基準電圧制御処理に並列して濃度検出処理を行う。この濃度検出処理におけるCPU25aの処理手順について図8のフローチャートを参照して以下説明する。
【0047】
まず、CPU25aは、FETQをオフして測温抵抗体Rsに電流Is2を流す(ステップS1)。次に、CPU25aは、電圧検出手段として働き、A/Dコンバータ24から出力される測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた出力電圧ΔVを検出する(ステップS2)。次に、CPU25aは、ステップS2で検出した出力電圧ΔVをガス温度に応じた電圧としてRAM25c内に格納する(ステップS3)。
【0048】
次に、CPU25aは、FETQがオンして測温抵抗体Rsに電流Is1を流す(ステップS4)。次にCPU25aは、電圧検出手段として働き、A/Dコンバータ24から出力される測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた出力電圧ΔVを検出する(ステップS5)。次に、CPU25aは、ステップS6で検出した出力電圧ΔVをガス濃度に応じた電圧としてRAM25c内に格納する(ステップS6)。
【0049】
次に、CPU25aは、ガス濃度検出手段として働き、ガス温度に応じた出力電圧ΔVとガス濃度に応じた出力電圧ΔVとに基づいて補正演算することでガス温度の影響を除去したガス濃度を検出して(ステップS7)、再びステップS1に戻る。
【0050】
上述したガス濃度検出装置によれば、CPU25aが、抵抗/電圧変換回路20が測温抵抗体Rsに供給する電流を、測温抵抗体Rsの温度が周囲温度よりも高くなるような大きさの電流Is1と測温抵抗体Rsの温度が周囲温度と等しくなるような大きさの電流Is2との間で切り替える。測温抵抗体Rsに電流Is1を流すと測温抵抗体Rsが自己発熱してその温度が周囲温度、即ちガス温度よりも高くなる。このときH2ガスはガス濃度に応じた熱量を測温抵抗体Rsから奪い、測温抵抗体Rsの温度、即ち抵抗値はガス濃度に応じて変化する。測温抵抗体Rsに電流Is2を流すと測温抵抗体Rsは自己発熱せずにその温度が周囲温度、即ちガス温度と等しくなる。このため測温抵抗体Rsの温度、即ち抵抗値はガス濃度には全く不感となりガス温度に応じて変化する。
【0051】
従って、ガス濃度を検出するための測温抵抗体Rsを流用してガス濃度の影響を受けずにガス温度を正確に検出することができる。そして、CPU25aが、電流Is1が供給されているときに検出した測温抵抗体Rsの抵抗値、即ちガス濃度に応じた電圧と電流Is2が供給されているときに検出した測温抵抗体Rsの抵抗値、即ちガス温度に応じた電圧とに基づいて温度補正を行った正確な被測定ガスの濃度を検出することができる。このため、安価にかつ省スペースにH2ガスのガス温度の影響を受けずに正確にガス濃度を検出することができる。
【0052】
なお、上述した実施形態では、CPU25aがFETQのオンオフを制御することにより、測温抵抗体Rsと直列に接続する抵抗の抵抗値を変えて、測温抵抗体Rsに流す電流を切り替えていたが、本発明はこれに限ったものではない。即ち、抵抗/電圧変換回路20としては、測温抵抗体Rsに流す電流が変えられる構成であればなんでもよく、例えば図9に示すような構成であってもよい。
【0053】
同図に示すように、定電圧源22をその定電圧Vaが変換可能に構成し、CPU25aによって定電圧源22が供給する定電圧Vaを切り替えて、測温抵抗体Rsに流れる電流を切り替えるようにしてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、抵抗/電圧検出回路20は測温抵抗体Rsを含むハーフブリッジ回路により構成されていたが、本発明はこれに限ったものではない。即ち、抵抗/電圧検出回路20は、測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧を発生させる回路であればなんでもよく、例えば従来のようにブリッジ回路を構成してもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、定電圧源22を用いて測温抵抗体Rsに電流Is1、Is2を流していたが、本発明はこれに限ったものではなく、定電流源を用いて測温抵抗体Rsに電流を流してもよい。
【0056】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のガス濃度検出装置の一実施の形態を示す回路図である。
【図2】図1に示すガス濃度検出装置を構成する測温抵抗体Rsが搭載されたSi基台及びダイヤフラムを示す図である。
【図3】測温抵抗体Rsが自己発熱しない電流Is2を流したときの測温抵抗体Rsの抵抗値とガス温度との関係を示すグラフである。
【図4】測温抵抗体Rsが自己発熱する電流Is1を流したときの測温抵抗体Rsの温度とガス濃度との関係を示すグラフである。
【図5】測温抵抗体Rsが自己発熱する電流Is1を流したときの測温抵抗体Rsの抵抗値とガス濃度との関係を示すグラフである。
【図6】測温抵抗体Rsが自己発熱しない電流Is2を流したときの測温抵抗体Rsの抵抗値とガス濃度との関係を示すグラフである。
【図7】(a)はFETQのオンオフ状態、(b)は電流Is、(c)は出力電圧V、(d)は差動増幅器OPのゲイン、(e)は基準電圧Vref、(f)は差動増幅器OPの出力電圧ΔVのタイムチャートである。
【図8】ガス濃度検出処理におけるCPU25aの処理手順を示すフローチャートである。
【図9】他の実施形態におけるガス濃度検出装置の一例を示す回路図である。
【図10】従来のガス濃度検出装置の一例としての湿度センサを示す回路図である。
【図11】図10に示す湿度センサの各部の信号、電流、電圧のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0058】
Is1 電流(第1の電流)
Is2 電流(第2の電流)
OP 差動増幅器(増幅器)
Rs 測温抵抗体
20 抵抗/電圧変換回路(抵抗/電圧変換手段)
23 D/Aコンバータ(基準電圧供給手段)
24 A/Dコンバータ(アナログ/デジタル変換手段)
25a CPU(切替手段、ゲイン制御手段、基準電圧制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガスの供給路に配置されて温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体と、該測温抵抗体に電流を供給して当該測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を発生させる抵抗/電圧変換手段と、該抵抗/電圧変換手段が発生した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を検出する電圧検出手段と、該電圧検出手段が検出した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧に基づいて前記被測定ガスの濃度を検出する濃度検出手段とを備えたガス濃度検出装置において、
前記測温抵抗体の温度が周囲温度よりも高くなるような大きさの第1の電流と前記測温抵抗体の温度が周囲温度と等しくなるような大きさの第2の電流との間において、前記抵抗/電圧変換手段が前記測温抵抗体に供給する電流を切り替える切替手段が設けられていることを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項2】
前記抵抗/電圧変換手段が、前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を増幅する増幅器を有し、そして、
前記ガス濃度検出装置が、前記増幅器が増幅した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換手段と、前記測温抵抗体に前記第2の電流を供給しているときの前記増幅器のゲインが前記測温抵抗体に前記第1の電流を供給しているときの前記増幅器のゲインよりも高くなるように前記増幅器のゲインを制御するゲイン制御手段とを備えている
ことを特徴とする請求項1記載のガス濃度検出装置。
【請求項3】
前記増幅器が、前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧と基準電圧との差分を増幅し、そして、
前記ガス濃度検出装置が、前記増幅器に前記基準電圧を供給する基準電圧供給手段と、前記測温抵抗体に前記第2の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧よりも前記測温抵抗体に前記第1の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧の方が高くなるように前記基準電圧供給手段を制御する基準電圧制御手段とを備えている
ことを特徴とする請求項2項記載のガス濃度検出装置。
【請求項4】
前記抵抗/電圧変換手段が、前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧と基準電圧との差分を増幅する増幅器とを有し、そして、
前記ガス濃度検出装置が、前記増幅器が増幅した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換手段と、前記増幅器に前記基準電圧を供給する基準電圧供給手段と、前記測温抵抗体に前記第2の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧よりも前記測温抵抗体に前記第1の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧の方が高くなるように前記基準電圧供給手段を制御する基準電圧制御手段とを備えている
ことを特徴とする請求項1項記載のガス濃度検出装置。
【請求項1】
被測定ガスの供給路に配置されて温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体と、該測温抵抗体に電流を供給して当該測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を発生させる抵抗/電圧変換手段と、該抵抗/電圧変換手段が発生した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を検出する電圧検出手段と、該電圧検出手段が検出した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧に基づいて前記被測定ガスの濃度を検出する濃度検出手段とを備えたガス濃度検出装置において、
前記測温抵抗体の温度が周囲温度よりも高くなるような大きさの第1の電流と前記測温抵抗体の温度が周囲温度と等しくなるような大きさの第2の電流との間において、前記抵抗/電圧変換手段が前記測温抵抗体に供給する電流を切り替える切替手段が設けられていることを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項2】
前記抵抗/電圧変換手段が、前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を増幅する増幅器を有し、そして、
前記ガス濃度検出装置が、前記増幅器が増幅した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換手段と、前記測温抵抗体に前記第2の電流を供給しているときの前記増幅器のゲインが前記測温抵抗体に前記第1の電流を供給しているときの前記増幅器のゲインよりも高くなるように前記増幅器のゲインを制御するゲイン制御手段とを備えている
ことを特徴とする請求項1記載のガス濃度検出装置。
【請求項3】
前記増幅器が、前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧と基準電圧との差分を増幅し、そして、
前記ガス濃度検出装置が、前記増幅器に前記基準電圧を供給する基準電圧供給手段と、前記測温抵抗体に前記第2の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧よりも前記測温抵抗体に前記第1の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧の方が高くなるように前記基準電圧供給手段を制御する基準電圧制御手段とを備えている
ことを特徴とする請求項2項記載のガス濃度検出装置。
【請求項4】
前記抵抗/電圧変換手段が、前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧と基準電圧との差分を増幅する増幅器とを有し、そして、
前記ガス濃度検出装置が、前記増幅器が増幅した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換手段と、前記増幅器に前記基準電圧を供給する基準電圧供給手段と、前記測温抵抗体に前記第2の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧よりも前記測温抵抗体に前記第1の電流を供給しているときに前記増幅器に供給される基準電圧の方が高くなるように前記基準電圧供給手段を制御する基準電圧制御手段とを備えている
ことを特徴とする請求項1項記載のガス濃度検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−285849(P2007−285849A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113105(P2006−113105)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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